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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190644
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A01K89/01 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021123205
(22)【出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2021098830
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503230070
【氏名又は名称】シマノコンポネンツ マレーシア エスディーエヌ.ビーエッチディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フーン ウェイ カン
(72)【発明者】
【氏名】チャン イック フイ
(72)【発明者】
【氏名】ムハマンド ヒシャムディン ビン カムニ
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BH02
2B108BH04
(57)【要約】
【課題】第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができるスピニングリールを、提供する。
【解決手段】スピニングリール1は、リール本体3と、ハンドル軸6と、スプール軸9と、オシレーティング機構30と、摺動部材40と、を備える。オシレーティング機構30は、摺動用ギア31と、カムギア33と、スライダ35と、を有する。摺動用ギア31は、ハンドル軸6の回転に連動して第1回転方向R1に回転する。カムギア33は、第1回転方向R1とは反対の第2回転方向R2に回転する。カムギア33は、摺動用ギア31に噛合するギア本体38と、ギア本体38から突出するボス部39と、を含む。スライダ35は、スプール軸9に装着され、ボス部39が係合する係合溝37を含む。摺動部材40は、リール本体3及びカムギア33との間に配置され、第1回転方向R1におけるカムギア33の回転を制限する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
前記リール本体に対して回転可能に支持されるハンドル軸と、
前記リール本体に対して前後方向に移動可能に支持されるスプール軸と、
前記ハンドル軸の回転に連動して第1回転方向に回転する第1ギアと、前記第1ギアに噛合するギア本体と前記ギア本体から突出する第1ボス部とを含み前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転する第2ギアと、前記スプール軸に装着され前記第1ボス部が係合する係合溝を含むスライダと、を有する往復移動機構と、
前記リール本体及び前記第2ギアとの間に配置され、前記第1回転方向における前記第2ギアの回転を制限する回転制限部材と、
を備えるスピニングリール。
【請求項2】
前記回転制限部材は、前記第2ギアと一体的に回転し前記リール本体と摺動する摺動部材である、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記リール本体は、前記第2ギアを回転可能に支持する第2ボス部、を有し、
前記摺動部材は、前記第2ギア及び前記第2ボス部の間に配置され、前記第2ボス部に対して摺動する、
請求項2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記第2ギアは、前記ギア本体に設けられる溝部、を有し、
前記摺動部材は、前記溝部に係合する係合部と、前記係合部と一体に形成され前記第2ボス部の外面に沿って延び前記第2ボス部の外面と摺動する摺動部と、を有する、
請求項3に記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記摺動部は、円弧状に形成され、前記係合部から前記第2回転方向に前記第2ボス部の外面に沿って延びる、
請求項4に記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記第2ボス部は、ボス本体と、前記ボス本体の外周に相対回転不能に装着される筒状部材と、を有し、
前記摺動部材は、前記第2ギア及び前記筒状部材の間に配置され、前記筒状部材に対して摺動する、
請求項3から5のいずれか1項に記載のスピニングリール。
【請求項7】
前記リール本体は、前記第2ギアを回転可能に支持する第2ボス部、を有し、
前記回転制限部材は、前記第2ギア及び前記第2ボス部の間に配置されるワンウェイクラッチであり、
前記ワンウェイクラッチは、前記第2回転方向における前記第2ギアの回転を許可し、前記第1回転方向における前記第2ギアの回転を規制する、
請求項1に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスピニングリールには、往復移動機構が開示されている(特許文献1を参照)。従来の往復移動機構は、ハンドル軸の回転に連動して回転する摺動用ギアと、摺動用ギアに噛合するカムギアと、スライダと、を有する。カムギアは、摺動用ギアに噛合するギア本体と、ギア本体から突出するボス部と、を有する。ボス部は、スライダの係合溝に係合する。ボス部が係合溝に沿って移動することによって、スプールがスプール軸を介して前後方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-065119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の往復移動機構においてスプールがスプール軸を介して前後方向に移動する場合、スプールに作用するスプール軸方向の力によって、摺動用ギア及びカムギアの噛み合いが不安定になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、摺動用ギア及びカムギアの噛み合いの不安定化を抑えることができるスピニングリールを、提供することにある。すなわち、本発明の目的は、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができるスピニングリールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るスピニングリールは、リール本体と、ハンドル軸と、スプール軸と、往復移動機構と、回転制限部材と、を備える。ハンドル軸は、リール本体に対して回転可能に支持される。スプール軸は、リール本体に対して前後方向に移動可能に支持される。
【0007】
往復移動機構は、第1ギアと、第2ギアと、スライダと、を有する。第1ギアは、ハンドル軸の回転に連動して第1回転方向に回転する。第2ギアは、第1回転方向とは反対の第2回転方向に回転する。第2ギアは、第1ギアに噛合するギア本体と、ギア本体から突出する第1ボス部とを含む。スライダは、スプール軸に装着され、第1ボス部が係合する係合溝を含む。回転制限部材は、リール本体及び第2ギアとの間に配置される。回転制限部材は、第1回転方向における第2ギアの回転を制限する。
【0008】
本発明のスピニングリールでは、第1ギアが第1回転方向に回転すると、第2ギアが第2回転方向に回転する。この際に、回転制限部材は、第1回転方向における第2ギアの回転を制限するので、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0009】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、回転制限部材は、第2ギアと一体的に回転しリール本体と摺動する摺動部材であることが好ましい。この場合、摺動部材はリール本体と摺動するので、摺動部材及びリール本体の間には摩擦力が生じる。すなわち、摩擦力は摺動部材を介して第2ギアに作用する。これにより、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0010】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、リール本体が、第2ギアを回転可能に支持する第2ボス部、を有することが好ましい。この場合、摺動部材は、第2ギア及び第2ボス部の間に配置され、第2ボス部に対して摺動する。
【0011】
このスピニングリールでは、摺動部材がリール本体の第2ボス部に対して摺動するので、摩擦力が摺動部材を介して第2ギアに作用する。これにより、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0012】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、第2ギアが、ギア本体に設けられる溝部、を有することが好ましい。この場合、摺動部材は、溝部に係合する係合部と、係合部と一体に形成され第2ボス部の外面に沿って延び第2ボス部の外面と摺動する摺動部と、を有する。
【0013】
このスピニングリールでは、摺動部材の係合部を第2ギアの溝部に係合させることによって、摺動部材は第2ギアと一体的に回転する。この状態において、摺動部材の摺動部が第2ボス部の外面と摺動するので、摩擦力が摺動部材を介して第2ギアに作用する。これにより、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0014】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、摺動部は円弧状に形成される。摺動部は、係合部から第2回転方向に第2ボス部の外面に沿って延びる。
【0015】
このスピニングリールでは、釣り糸を巻き取るためにハンドル軸及び第1ギアが第1回転方向に回転した場合、第2ギアは第2回転方向に回転する。円弧状の摺動部が第2ボス部の外面に沿って延びる方向は、第2ギアが回転する第2回転方向と同じである。このため、釣り糸が巻き取られる際には、円弧状の摺動部の内径が広がるので、摺動部材に作用する摩擦力を低減することができる。これにより、糸巻き取り時にハンドル軸をスムーズに回転させることができる。
【0016】
一方で、第2ギアは第1回転方向に回転しようとした場合、円弧状の摺動部の内径が締まるので、摺動部材に作用する摩擦力を増加させることができる。これにより、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0017】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、第2ボス部は、ボス本体と、ボス本体の外周に相対回転不能に装着される筒状部材と、を有することが好ましい。この場合、摺動部材は、第2ギア及び筒状部材の間に配置され、筒状部材に対して摺動する。
【0018】
このスピニングリールでは、筒状部材がボス本体の外周に相対回転不能に装着される。この状態において、摺動部材が筒状部材に対して摺動する。このように構成しても、摩擦力は摺動部材を介して第2ギアに作用する。これにより、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。また、この構成では、筒状部材が摩耗した場合に、筒状部材を容易に取り換えることができる。
【0019】
本発明の他の側面に係るスピニングリールでは、リール本体が、第2ギアを回転可能に支持する第2ボス部、を有することが好ましい。この場合、回転制限部材は、第2ギア及び第2ボス部の間に配置されるワンウェイクラッチである。ワンウェイクラッチは、第2回転方向における第2ギアの回転を許可し、第1回転方向における第2ギアの回転を規制する。
【0020】
このスピニングリールでは、釣り糸を巻き取るためにハンドル軸及び第1ギアが第1回転方向に回転した場合、第2ギアは第2回転方向に回転する。ここで、ワンウェイクラッチは、第2回転方向における第2ギアの回転を許可するので、糸巻き取り時にハンドル軸をスムーズに回転させることができる。一方で、ワンウェイクラッチは、第1回転方向における第2ギアの回転を規制するので、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、スピニングリールにおいて、第1ギア及び第2ギアの噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態によるスピニングリールの側面図。
図2】スピニングリールから側カバー及び駆動体を取り外した側面図。
図3】オシレーティング機構の部分拡大側面図。
図4】摺動部材及び筒状部材の構成を説明するための分解斜視図。
図5】摺動部材及び筒状部材の装着形態を説明するための断面図。
図6】本発明の変形例としてのカムギアの溝部の形状を説明するための図。
図7】本発明の変形例における摺動部材の装着形態を説明するための断面図。
図8】本発明の第2実施形態によるワンウェイクラッチの構成を説明するための分解斜視図。
図9】本発明の第2実施形態によるワンウェイクラッチの装着形態を説明するための断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1実施形態>
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリール1は、図1に示すように、リール本体3と、ハンドル5と、ロータ7と、スプール11と、駆動体13(図2を参照)と、オシレーティング機構30(往復移動機構の一例、図2を参照)と、摺動部材40(回転制限部材の一例;図4を参照)と、を備える。
【0024】
図1に示すように、ハンドル5は、リール本体3に回転可能に支持される。本実施形態では、ハンドル5がリール本体3の左側に配置される場合の例が示される。ハンドル5はリール本体3の右側に配置されてもよい。図2に示すように、リール本体3の内部空間には、スプール11を前後方向に移動するためのオシレーティング機構30が、配置される。
【0025】
ロータ7は、スプール11に釣り糸を巻き付けるために用いられる。図1及び図2に示すように、ロータ7は、リール本体3の前部に配置される。ロータ7は、リール本体3に対して回転可能に構成される。例えば、図2に示すように、ロータ7は、ピニオンギア17に一体回転可能に連結される。ピニオンギア17は、リール本体3に回転可能に支持される。ロータ7は、ピニオンギア17の回転に連動して回転する。
【0026】
スプール11には、釣り糸が巻き付けられる。スプール11は、スプール軸9と一体的に移動可能に構成される。例えば、図2に示すように、スプール11は、スプール軸9の先端部に装着される。
【0027】
スプール軸9は、リール本体3に進退可能に構成される。スプール軸9は、リール本体3に対して前後方向に移動可能に支持される。スプール軸9は、筒状のピニオンギア17の内周部に挿通される。スプール軸9は、オシレーティング機構30の作動によって、リール本体3に対して前後方向に往復移動する。前後方向は、スプール軸9のスプール軸心X1が延びる方向である。
【0028】
図2に示すように、駆動体13は、駆動軸21と、駆動ギア23と、摺動用ギア31(第1ギアの一例)と、を有する。駆動軸21は、ハンドル5の回転に連動して回転する。例えば、駆動軸21には、ハンドル5のハンドル軸6が装着される。
【0029】
駆動軸21は、駆動軸心X2を有する。例えば、駆動軸21は筒状に形成される。駆動軸21の内周部には、ハンドル軸6が着脱可能に装着される。ハンドル軸6は、リール本体3に回転可能に支持される。ハンドル軸6の軸心は、駆動軸心X2と同心である。
【0030】
駆動ギア23は、ロータ7を回転させるために用いられる。駆動ギア23は、駆動軸21に設けられる。駆動ギア23は、ピニオンギア17に噛み合う。
【0031】
摺動用ギア31は、スプール軸9を移動させるために用いられる。摺動用ギア31は、ハンドル軸6の回転に連動して第1回転方向R1に回転する。摺動用ギア31は、駆動軸心X2が延びる軸方向において、駆動ギア23と間隔を隔てて駆動軸21に設けられる。駆動ギア23及び摺動用ギア31の間には、スプール軸9及びガイド軸34(後述する)が配置される。摺動用ギア31は、後述するカムギア33(第2ギアの一例)に噛み合う。
【0032】
駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア31は、一体に形成される。駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア31は、互いに別体に形成されてもよい。駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア31は、ハンドル軸6の回転に連動して回転する。駆動ギア23及び摺動用ギア31が回転すると、ピニオンギア17及びカムギア33が回転する。
【0033】
例えば、本実施形態では、釣り糸を巻き取るために、ハンドル軸6、駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア31が回転する回転方向が、第1回転方向R1と定義される。第1回転方向R1とは反対の回転方向が、第2回転方向R2と定義される。なお、駆動軸心X2及び軸心X3それぞれに対して、第1回転方向R1及び第2回転方向R2が定義される。
【0034】
ハンドル軸6、駆動軸21、駆動ギア23、及び摺動用ギア31が駆動軸心X2を基準として第1回転方向R1に回転する場合、カムギア33は軸心X3を基準として第2回転方向R2に回転する。
【0035】
オシレーティング機構30は、ハンドル軸6の回転に連動してスプール軸9を前後方向に移動させる。図3に示すように、オシレーティング機構30は、摺動用ギア31と、カムギア33と、ガイド軸34と、スライダ35と、を有する。なお、図3では、摺動用ギア31の歯部及びカムギア33の歯部は、簡略化して示されている。
【0036】
摺動用ギア31は、上述したように駆動体13を構成する。カムギア33は、スライダ35を前後方向に移動させるために用いられる。カムギア33は、リール本体3に回転可能に支持される。例えば、カムギア33は、リール本体3のボス部3b(第2ボス部の一例)に回転可能に支持される。カムギア33は、リール本体3及びスライダ35の間に配置される。
【0037】
ここで、図2及び図3に示すように、ボス部3bはリール本体3に含まれる。すなわち、リール本体3は、本体部3aと、ボス部3bと、側カバー3e(図1を参照)と、を有する。本体部3a及び側カバー3eによって、オシレーティング機構30を配置するための空間が形成される。
【0038】
ボス部3bは、ボス本体32と、筒状部材41と、を有する。ボス本体32は、本体部3aから突出する。詳細には、ボス本体32は、駆動軸心X2と平行な軸心X3が延びる軸方向において、本体部3aの側壁から突出する。
【0039】
図4及び図5に示すように、筒状部材41は、カムギア33及びリール本体3の間に配置される。筒状部材41は、ボス本体32の外周に相対回転不能に配置される。例えば、筒状部材41は、軸心X3から離れる径方向において、ボス本体32の外周面とカムギア33の段差部38b(後述する)の内周面との間に配置される。また、図5に示すように、筒状部材41は、軸心X3が延びる軸方向において、カムギア33の段差部38bの底面と本体部3aとの間に配置される。
【0040】
図4及び図5に示すように、筒状部材41は、筒部41aと、環状溝部41bと、突出部41cと、を有する。筒部41aは筒状に形成される。図5に示すように、筒部41aの内部にはボス本体32が配置される。
【0041】
筒部41aは、第1端面41a1と、第2端面41a2と、を有する。第1端面41a1は、段差部38bの底面に対向して配置される。第2端面41a2は、本体部3aに対向して配置される。
【0042】
図4及び図5に示すように、環状溝部41bは、筒部41aの外周面に形成される。例えば、環状溝部41bは、軸心X3まわりの周方向において筒部41aの外周面に形成される。図5に示すように、環状溝部41bには、摺動部材40の摺動部40b(後述する)が配置される。
【0043】
図4及び図5に示すように、突出部41cは筒部41aから突出する。例えば、突出部41cは、筒部41aの第2端面41a2から突出する。図5に示すように、突出部41cは、リール本体3に設けられる凹部3cに、嵌合される。例えば、凹部3cは、リール本体3の本体部3aの側壁に設けられる。このように、突出部41cを凹部3cに嵌合することによって、筒状部材41は、ボス本体32の外周に配置された状態で、本体部3aに対して回転不能に構成される。
【0044】
図3に示すように、カムギア33は、ギア本体38と、ボス部39(第1ボス部の一例)と、を有する。ギア本体38は、軸心X3まわりに回転可能にリール本体3に支持される。ギア本体38の歯部は、摺動用ギア31の歯部に噛合する。例えば、図4に示すように、ギア本体38は、孔部38aと、段差部38bと、溝部38cと、を有する。孔部38aには、リール本体3のボス本体32が配置される。軸心X3は孔部38aの中心を通過する。段差部38bは、環状に形成される。段差部38bには、上述した筒状部材41が配置される。
【0045】
図4及び図5に示すように、溝部38cは、ギア本体38においてボス部39が形成される面とは反対側の面において、ギア本体38に設けられる。例えば、溝部38cは、軸心X3から離れる径方向において、段差部38bの内周面から外側に延びる。図5に示すように、溝部38cには、摺動部材40の係合部40a(後述する)が配置される。
【0046】
図4及び図5に示すように、ボス部39は、ギア本体38から突出する。例えば、ボス部39は、駆動軸心X2が延びる軸方向にギア本体38から突出する。ボス部39は、後述するスライダ35の係合溝37に係合する。
【0047】
図3に示すように、ボス部39は、係合溝37の内部に配置された状態で、ギア本体38の回転に連動して係合溝37に沿って移動する。ボス部39は、円柱状に形成される。本実施形態では、ボス部39が円柱状に形成される場合の例が示されるが、ボス部39は円錐台状に形成されてもよい。
【0048】
図2及び図3に示すように、ガイド軸34は、スライダ35を前後方向に案内するために用いられる。ガイド軸34は、スプール軸9の上方に配置される。ガイド軸34は、スプール軸9(スプール軸心X1)と平行に配置され、リール本体3(本体部3a)に固定される。
【0049】
図2及び図3に示すように、スライダ35は、スプール軸9を前後方向に移動させるために用いられる。スライダ35は、スプール軸9に装着される。例えば、スライダ35は、スライダ本体36と、係合溝37と、を有する。スライダ本体36は、スプール軸9の後端に固定される。また、スライダ本体36には、ガイド軸34が挿通される。スライダ本体36は、ガイド軸34に沿って前後方向に移動する。
【0050】
図3に示すように、係合溝37には、ボス部39が配置される。係合溝37は、スライダ本体36に設けられる。例えば、スライダ本体36がスプール軸9及びガイド軸34に装着された状態において、係合溝37はスプール軸9から上方に向かって延びる。
【0051】
駆動軸心X2が延びる軸方向において係合溝37をハンドル5側から見た場合(図3の場合)、係合溝37は湾曲した形状に形成される。例えば、この場合、係合溝37はS字形状に形成される。係合溝37には、ボス部39が係合する。
【0052】
図4及び図5に示す摺動部材40は、カムギア33と一体的に回転する。摺動部材40は、第1回転方向R1におけるカムギア33の回転を、制限する。例えば、摺動部材40は、リール本体3と摺動する。具体的には、摺動部材40は、リール本体3に含まれる筒状部材41に対して、摺動する。
【0053】
図5に示すように、摺動部材40は、軸心X3が延びる軸方向において、カムギア33及びリール本体3(本体部3a)の間に配置される。摺動部材40は、軸心X3から離れる径方向において、カムギア33及び筒状部材41の間に配置される。
【0054】
図4及び図5に示すように、摺動部材40は、係合部40aと、摺動部40bと、を有する。係合部40aは、カムギア33の溝部38cに係合する。図4に示すように、摺動部40bは係合部40aと一体に形成される。図4及び図5に示すように、摺動部40bは筒状部材41の外面に沿って延びる。
【0055】
例えば、図4に示すように、摺動部40bは、係合部40aから第2回転方向R2に筒状部材41の外面に沿って延びる。摺動部40bは筒状部材41の外面と摺動する。詳細には、摺動部40bは円弧状に形成される。摺動部40bは、係合部40aから第2回転方向R2に環状溝部41bに沿って延びる。摺動部40bは、環状溝部41bと摺動する。
【0056】
上述したスピニングリール1は、以下のような特徴を有する。本スピニングリール1では、摺動用ギア31が第1回転方向R1に回転すると、カムギア33が第2回転方向R2に回転する。この際に、摺動部材40は、第1回転方向R1におけるカムギア33の回転を制限するので、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0057】
例えば、摺動用ギア31の回転に連動してカムギア33が第1回転方向R1に回転すると、摺動部材40がカムギア33と一体的に回転する。この際に、摺動部材40は、リール本体例えば筒状部材41と摺動するので、摺動部材40及びリール本体3の間には摩擦力が生じる。すなわち、この摩擦力は摺動部材40を介してカムギア33に作用する。
【0058】
これにより、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を抑えることができる。また、この構成では、筒状部材41がリール本体3の本体部3aに装着される。具体的には、筒状部材41の突出部41cが、リール本体3(本体部3a)の凹部3cに嵌合される。これにより、筒状部材41が摩耗した場合に、筒状部材41を容易に取り換えることができる。
【0059】
本スピニングリール1では、摺動部材40の係合部40aをカムギア33の溝部38cに係合させることによって、摺動部材40はカムギア33と一体的に回転する。この状態において、摺動部材40の摺動部40bが筒状部材41の外面と摺動するので、上記の摩擦力が摺動部材40を介してカムギア33に作用する。これにより、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を好適に抑えることができる。
【0060】
本スピニングリール1では、円弧状の摺動部40bが筒状部材41の外面に沿って延びる方向は、カムギア33が回転する第2回転方向R2と同じである。このため、釣り糸が巻き取られる際には、円弧状の摺動部40bの内径が広がるので、摺動部材40に作用する摩擦力を低減することができる。これにより、糸巻き取り時にハンドル軸6をスムーズに回転させることができる。
【0061】
一方で、カムギア33は第1回転方向R1に回転しようとした場合、円弧状の摺動部40bが締まり円弧状の摺動部40bの内径が小さくなるので、摺動部材40に作用する摩擦力を増加させることができる。これにより、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【0062】
(変形例1)
前記実施形態では、筒状部材41が本体部3aに装着される場合の例が、示された。これに代えて、筒状部材41はボス本体32に装着されてもよい。この場合、筒状部材41の筒部41aの内周面が、ボス本体32の外周面に圧入される。また、この場合、図4及び図5に示す突出部41cは、筒状部材41の構成から省略されてもよい。
【0063】
このように構成しても、摺動部材40及び筒状部材41の摺動によって生じる摩擦力は、摺動部材40を介してカムギア33に作用する。これにより、前記実施形態と同様に、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を抑えることができる。また、筒状部材41が摩耗した場合に、筒状部材41を容易に取り換えることができる。
【0064】
(変形例2)
前記実施形態では、摺動部材40の係合部40aがカムギア33の溝部38cに配置される場合の例が、示された。図6に示すように、カムギア33の溝部138cは、第1当接部138c1と、第2当接部138c2と、を有していてもよい。この場合、第1当接部138c1には、摺動部材40における係合部40aの基端部が当接する。第2当接部138c2には、摺動部材40における係合部40aの先端部が当接する。
【0065】
この構成では、摺動部材40の係合部40aは第1当接部138c1及び第2当接部138c2によって保持される。これにより、摺動部材40及び筒状部材41の摺動によって生じる摩擦力を、摺動部材40を介してカムギア33に好適に作用させることができる。
【0066】
(変形例3)
前記実施形態では、摺動部材40が筒状部材41と摺動する場合の例が、示された。これに代えて、図7に示すように、筒状部材41を用いることなく、摺動部材40はボス本体32と摺動するように構成してもよい。
【0067】
この場合、摺動部材40は、軸心X3から離れる径方向において、カムギア33及びボス部3bの間に配置される。ボス本体32は、環状溝部3dを有する。環状溝部3dは、ボス本体32の外周面に形成される。例えば、環状溝部3dは、軸心X3まわりの周方向においてボス本体32の外周面に形成される。
【0068】
摺動部材40は、前記実施形態と同様に、係合部40aと、摺動部40bと、を有する。係合部40a及び摺動部40bの構成は、前記実施形態と実質的に同じである。摺動部40bは、ボス本体32の外面に沿って延びる。例えば、摺動部40bは、円弧状に形成される。摺動部40bは、係合部40aから第2回転方向R2にボス本体32の外面に沿って延びる。摺動部40bはボス本体32の外面に配置される。例えば、摺動部40bはボス本体32の環状溝部3dに配置される。この状態において、摺動部40bはボス本体32の環状溝部3dと摺動する。
【0069】
この構成では、摺動部材40がリール本体3のボス本体32に対して摺動するので、摺動部材40及びボス本体32の摺動によって生じる摩擦力が、摺動部材40を介してカムギア33に作用する。これにより、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を抑えることができる。また、釣り糸が巻き取られる際には、円弧状の摺動部40bの内径が広がるので、摺動部材40に作用する摩擦力を低減することができる。これにより、糸巻き取り時にハンドル軸6をスムーズに回転させることができる。
【0070】
(変形例4)
前記実施形態及び前記変形例1及び2では、摺動部材40を筒状部材41の外周面に摺動させるために筒状部材41の外周面に環状溝部41bが形成される場合の例が、示された。摺動部材40を筒状部材41の外周面と摺動させることができれば、摺動部材40が筒状部材41と摺動する部分の形状は、どのように形成してもよい。例えば、環状溝部41bの代わりに、筒状部材41の外周面に環状の段差部が形成されてもよい。
【0071】
<第2実施形態>
第2実施形態におけるスピニングリール101は、図1に示すように、リール本体3と、ハンドル5と、ロータ7と、スプール11と、駆動体13(図2を参照)と、オシレーティング機構30(往復移動機構の一例、図2を参照)と、ワンウェイクラッチ140(回転制限部材の一例;図8を参照)と、を備える。
【0072】
スピニングリール101の構成は、ワンウェイクラッチ140を除いて、第1実施形態の構成と実質的に同じである。ここでは、第1実施形態の構成と同じ構成の説明は、省略される。
【0073】
図8及び図9に示すように、ワンウェイクラッチ140は、カムギア33及びボス部3b(第2ボス部の一例)の間に配置される。例えば、ワンウェイクラッチ140は、軸心X3から離れる径方向において、ギア本体38及びボス本体32の間に配置される。
【0074】
これにより、ボス部3bのボス本体32は、ワンウェイクラッチ140を介して、カムギア33のギア本体38を回転可能に支持する。この状態において、ワンウェイクラッチ140は、第2回転方向R2におけるカムギア33の回転を許可し、第1回転方向R1におけるカムギア33の回転を規制する。
【0075】
ワンウェイクラッチ140は、転動体140aと、外輪140bと、を有する。転動体140aは、ボス本体32の外周面に配置される。例えば、転動体140aは、軸心X3から離れる径方向において、ボス本体32の外周面及び外輪140bの間に配置される。
【0076】
なお、ワンウェイクラッチ140は、内輪をさらに有していてもよい。この場合、内輪は、ボス本体32の外周面に配置される。転動体140aは、軸心X3から離れる径方向において、内輪及び外輪140bの間に配置される。
【0077】
外輪140bは、軸心X3から離れる径方向において、転動体140aの外側に配置される。外輪140bは、ギア本体38の段差部38bに配置される。例えば、外輪140bは、ギア本体38の段差部38bの内周面に回転不能に装着される。具体的には、外輪140bは、ギア本体38の段差部38bの内周面に圧入される。
【0078】
上述したスピニングリール1は、以下のような特徴を有する。例えば、本スピニングリール1では、摺動用ギア31が第1回転方向R1に回転すると、カムギア33が第2回転方向R2に回転する。この際に、ワンウェイクラッチ140は、第1回転方向R1におけるカムギア33の回転を制限するので、摺動用ギア31及びカムギア33の噛み合いの不安定化を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、スピニングリールに利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 スピニングリール
3 リール本体
3b ボス部
3c 凹部
6 ハンドル軸
9 スプール軸
11 スプール
13 駆動体
21 駆動軸
23 駆動ギア
30 オシレーティング機構
31 摺動用ギア
32 ボス本体
33 カムギア
38 ギア本体
39 ボス部
38c 溝部
35 スライダ
37 係合溝
40 摺動部材
40a 係合部
40b 摺動部
41 筒状部材
140 ワンウェイクラッチ
R1 第1回転方向
R2 第2回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9