(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190647
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】データ収集システム及び遠隔制御システム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/84 20190101AFI20221219BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221219BHJP
【FI】
G06F16/84
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021171134
(22)【出願日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2021099000
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 稔
(72)【発明者】
【氏名】島内 護
(72)【発明者】
【氏名】加茂 隆康
(72)【発明者】
【氏名】山本 輝哉
(72)【発明者】
【氏名】竹下 聡子
(72)【発明者】
【氏名】萩森 翔
【テーマコード(参考)】
5B175
5L049
【Fターム(参考)】
5B175CA02
5B175CA07
5B175FB03
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】半構造データを収集し、収集した半構造データをデータベースに記憶することができるデータ収集システムを提供すること。
【解決手段】実施形態によるデータ収集システムは、第1階層の第1データと、第1データに含まれ、第2識別情報が夫々設定される第2階層の複数の第2データを含む半構造データを受信する手段と、データベースと、前記データベースにおける前記複数の第2識別情報の格納位置を示す格納位置情報を記憶する情報記憶手段と、格納位置情報に基づいて複数の第2データをデータベースに書き込む登録手段を具備する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1階層の第1データと、前記第1データに含まれる第2階層の複数の第2データを含む半構造データであって、前記複数の第2データには複数の第2識別情報が夫々設定されている半構造データを受信する受信手段と、
データベースと、
前記データベースにおける前記複数の第2識別情報の格納位置を示す格納位置情報を記憶する情報記憶手段と、
前記格納位置情報に基づいて前記複数の第2データを前記データベースに書き込む登録手段と、を具備するデータ収集システム。
【請求項2】
前記データベースは、複数のテーブルを含む第2データベースと、
前記第1データには第1識別情報が設定されており、
前記格納位置情報は、前記第1識別情報と前記複数のテーブルの中の少なくとも2つの第1テーブルのカラムとの対応関係を示す第1情報と、前記複数の第2識別情報のいずれかと前記複数のテーブルの中の第2テーブルのカラムとの対応関係を示す第2情報を含み、
前記登録手段は、前記第1情報に基づいて前記第1データに含まれる前記複数の第2データの中の少なくとも2つのデータを前記少なくとも2つの第1テーブルのカラムに書き込み、前記第2情報に基づいて前記第2データを前記第2テーブルのカラムに書き込む、請求項1記載のデータ収集システム。
【請求項3】
前記第2データはアセットに関するデータを含み、
前記アセットは設備、装置、製品、材料、治具、工具、ソフトウェア、システム、社員、従業員、工場、プラント、生産計画情報、保守計画情報、保守対応情報、仕様情報、又は注文情報の少なくとも一つを含み、
前記第1データは前記アセットの側面に関する第2データの集合を含み、
前記第2データは製品特性、プロセス変数、外部へのリンク、前記アセットの能力、前記アセットの属性、又は前記アセットの稼働状況を含む、請求項2記載のデータ収集システム。
【請求項4】
前記受信手段はアセット管理シェルを受信し、
前記アセット管理シェルはヘッダとボディを含み、
前記ヘッダはアセット識別子とアセット管理シェル識別子を含み、
前記ボディは前記第1データを含む、請求項3記載のデータ収集システム。
【請求項5】
前記半構造データは、センサに関する第1半構造データを含み、
前記第1半構造データの前記第2データは、前記センサの計測値と、センサ識別情報と、計測時刻を含み、
前記データベースは、前記センサ識別情報毎に前記計測値の時系列データを格納する第1時系列データベースを含む、請求項1記載のデータ収集システム。
【請求項6】
前記格納位置情報は、前記第1半構造データの前記第2識別情報と前記第1時系列データベースにおける格納位置との対応関係を示す、請求項5記載のデータ収集システム。
【請求項7】
前記半構造データは、前記センサが検出する状態変化に関する第2半構造データを含み、
前記第2半構造データの前記第2データは、前記状態変化の識別情報と、前記状態変化の時刻と、前記状態変化の種類を含み、
前記データベースは、前記状態変化の識別情報毎に前記状態変化の時刻と前記状態変化の種類からなる時系列データを格納する第2時系列データベースを含む、請求項5記載のデータ収集システム。
【請求項8】
前記状態変化は、前記センサの計測値が許容範囲を超えたイベントである、請求項7記載のデータ収集システム。
【請求項9】
前記格納位置情報は、前記第2半構造データの前記第2識別情報と前記第2時系列データベースにおける格納位置との対応関係を示す、請求項7記載のデータ収集システム。
【請求項10】
複数の制御対象に関する第1階層の第1データと前記複数の制御対象に関する第2階層の複数の第2データを含む半構造データであって、前記複数の第2データには複数の第2識別情報が夫々設定されている半構造データを受信する受信手段と、
データベースと、
前記複数の第2識別情報と前記データベースにおける格納位置を示す格納位置情報を記憶する情報記憶手段と、
前記格納位置情報に基づいて前記第2データを前記データベースに書き込む登録手段と、
前記データベースに格納された前記第2データに基づき前記複数の制御対象の何れに関する情報を出力する通知手段と、を具備する遠隔制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態はデータ収集システム及び遠隔制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場やプラントの設備や機器を遠隔で制御する遠隔制御システムがある。遠隔制御システムは制御対象の設備や機器に関するデータを収集するデータ収集システムを含む。データ収集システムは収集したデータを記憶するデータベースを含む。遠隔制御システムは、データ収集システムのデータベースに記憶されているデータに基づき、制御対象を制御する。例えば、データ収集システムは制御対象の稼働状況に関するデータを収集する。遠隔制御システムは、制御対象の稼働状況が異常であることを検出すると、制御対象を遠隔制御する。
【0003】
工場やプラントの設備や機器は、異なるメーカーにより製造されたものを含むことがある。異なるメーカーにより製造された設備や機器は、夫々異なる形式のデータを出力する可能性がある。データ収集システムが異なるメーカーの制御対象から出力される異なる形式のデータを収集できるように、制御対象から出力されるデータの形式を統一する提案がある。提案の一例は、Industrie4.0で規格化が進んでいるアセット管理シェルAAS(Asset Administration Shell)データである。AASデータは半構造データである。
【0004】
データ収集システムのデータベースはその事業者独自のデータベースであることが多い。そのため、半構造データであるAASデータのデータエレメントフィールドの名称とデータベースのフィールドの名称が一致せず、データ収集システムは半構造データをデータベースに記憶することができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6162821号公報
【特許文献2】特許第6577546号公報
【特許文献3】特開2020-57089号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】SPECIFICATION Details of the Asset Administration Shell, Part 1, Federal Ministry for Economic Affairs and Energy (BMWi), 2020年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、半構造データを収集し、収集した半構造データをデータベースに記憶することができるデータ収集システム及び遠隔制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るデータ収集システムは、受信手段と、データベースと、情報記憶手段と、登録手段と、を具備する。受信手段は、第1階層の第1データと、前記第1データに含まれる第2階層の複数の第2データを含む半構造データを受信する。前記複数の第2データには複数の第2識別情報が夫々設定されている。情報記憶手段は、前記データベースにおける前記複数の第2識別情報の格納位置を示す格納位置情報を記憶する。登録手段は、前記格納位置情報に基づいて前記複数の第2データを前記データベースに書き込む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態による遠隔制御システムの一例を示すブロック図。
【
図5】マッピング処理部の処理の一例を示すフローチャート。
【
図12】サブモデルマッピングのさらに他の例を示す図。
【
図13】アセットデータベースへのデータ登録の一例を示す図。
【
図14】アセットデータベースへのデータ登録の他の例を示す図。
【
図16】第2実施形態による遠隔制御システムの一例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施形態を説明する。以下の説明は、実施形態の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、実施形態の技術的思想は、以下に説明する構成要素の構造、形状、配置、材質等に限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各要素のサイズ、厚み、平面寸法又は形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、互いの寸法の関係や比率が異なる要素が含まれることもある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して重複する説明を省略する場合もある。いくつかの要素に複数の呼称を付す場合があるが、これら呼称の例はあくまで例示であり、これらの要素に他の呼称を付すことを否定するものではない。また、複数の呼称が付されていない要素についても、他の呼称を付すことを否定するものではない。なお、以下の説明において、「接続」は直接接続のみならず、他の要素を介して接続されることも意味する。
【0011】
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態によるデータ収集システムを応用した遠隔制御システムの一例を示す。データ収集システムは監視対象に関する様々なデータを収集する。遠隔制御システムは、データ収集システムにより収集したデータに基づいて、監視対象を制御、又は監視対象のオペレータに対して何らかの指示を送信する。遠隔制御システムから監視対象の制御に関する部分を削除したものがデータ収集システムとなる。遠隔制御システムは、クラウドサーバ10、エッジ12、アセット管理シェルサーバ(AASサーバ)14、18、アセット16、20、意味IDデータベース(意味ID DB)22、監視対象36、及びIoT(Internet of Things)サーバ38を含む。
【0013】
アセット16、20はIndustrie4.0で定義されており、組織、企業、業界により所有又は管理される物理的又は論理的なオブジェクトである。アセット16、20も遠隔制御システムの監視対象である。オブジェクトは、組織、企業、業界にとって価値のある「もの」である。「もの」は、機械等の物質的なものと、ドキュメント等の非物質的なものを含む。アセットの例は、設備、装置、製品、材料、治具、工具、ソフトウェア、システム、社員、従業員、工場、プラント、生産計画情報、保守計画情報、保守対応情報、仕様情報、注文情報の少なくとも一つである。
【0014】
AASサーバ14、18は監視対象であるアセット16、20に関するあらゆるデータを包括的に管理するAASデータを生成する。
【0015】
図2は、AASサーバ14、18が生成するAASデータのデータ表現の一例を示す。
図2のデータ表現は、OPC UA(OLE for Process Control Unified Architecture)通信インターフェースに従ったデータ表現の例を示す。AASデータはヘッダとボディを含む。AASデータはアセットのデジタル表現である。AASデータは、アセットをインターネットで繋がったデジタル世界に接続する通信インターフェースである。
【0016】
ヘッダはAASのID(AASID)とアセットIDを含む。AASIDにはIRI(Internationalized Resource Identifier)又はURL(Uniform Resource Identifier)を用いることができる。アセットIDにはIRIを用いることができる。ヘッダは他のAASデータと情報交換を行う外部のネットワークと接続するためのインターフェースを持つ。
【0017】
ボディは第1階層の複数のデータ項目(サブモデルと称される)を含む。複数のサブモデルによりAASデータはアセットの様々な側面(例えば、セキュリティ面、安全面、エネルギー効率、組み立て能力)について記述することができる。或る1つの側面に関する情報は1つのサブモデルに纏められる。サブモデルは、標準化された共通の基礎サブモデルと、業界や企業毎に作成され流通する自由サブモデルを含む。各サブモデルは第2階層の複数のデータ項目(サブモデルエレメントと称される)を含む。サブモデルエレメントの例はプロパティ(Prop)とサブモデルエレメントコレクション(SMC)である。プロパティは製品特性、プロセス変数、外部へのリンク、アセットの能力、属性の集合等のアセットに関するあらゆる情報を含む。プロパティは製品又は部品を表現又は区別するに適する特性を定義する。SMCは、プロパティを含む。すなわち、プロパティはサブモデルに直接含まれるものと、サブモデルに含まれるSMCに含まれるものを含む。サブモデルに直接含まれるプロパティは第2階層のデータ項目であり、SMCに含まれるプロパティは第3階層のデータ項目である。
【0018】
サブモデルにはIDに加えて意味ID(Semantic ID)が設定されている。サブモデルの意味IDはそのサブモデルが表現する内容の意味に対応した、外部の標準化辞書のIDであり、IRDI(International Registration Data Identifier)、IRI又はURIを用いることができる。
【0019】
サブモデルエレメント(プロパティ)にもidShortに加えて意味IDが設定されている。idShortはプロパティの識別子であり、サブモデルのIDと区別するためにプロパティの識別子はidShortと称される。サブモデルエレメントの意味IDもサブモデルエレメントが表現する内容の意味を表す。サブモデルエレメントの意味IDはConceptDescriptionのIDにリンクされている。サブモデルエレメントの意味IDにもIRDI、IRI又はURIを用いることができる。
【0020】
AASサーバ14、18は、意味ID DB22を参照して、AASデータの中のデータ項目に意味IDを設定する(詳細は後述する)。意味ID DB22は、データ項目と意味IDの対応関係を示す情報を記憶している。
【0021】
説明の簡単化のためにAASサーバ14、18とアセット16、20の数は2個としたが、これらの数は2個に限定されない。データ収集システムは、多数のAASサーバと多数のアセットを含み得る。また、1個のAASサーバに1個のアセットが接続されているが、1個のAASサーバに複数個のアセットが接続されてもよい。例えば、アセットの稼働状態を示すデータをAASデータに含めたい場合、アセット16、20はセンサを含む。
【0022】
AASデータのユースケースを説明する。ここでは、生産システムにおけるAASデータを説明する。複数のAASデータが生産システムの各段階において夫々生成される。設計段階では、AASサーバはメーカーの設計部門が設備を設計する時に生成した製品仕様や図面マニュアルを含むAASデータを生成する。調達段階では、AASサーバはサプライヤが必要な部品を提供する時に生成した部品情報や契約情報を含むAASデータを生成する。製造段階では、AASサーバはメーカー製造部門が設備を製造する時に生成した製品構成や品質情報を含むAASデータを生成する。設置段階では、AASサーバはインテグレータが製造ラインを設置、稼働する時に生成したシステム仕様書、設置情報、設定情報を含むAASデータを生成する。AASデータは、機器・設備の属性や構成に関するデータを含む。属性や構成に関するデータは、時間の属性を含まない。AASデータは稼働状況データも含む。稼働状況データは、センサにより測定したアセットに関する測定値の瞬時値や瞬時値の変化に基づき検出したイベントを表す。稼働状況データは、時間の属性を含み、時間経過とともに値が変化する時系列データである。機器・設備の属性や構成に関するデータは静的なデータであり、時系列データは動的なデータである。保守段階では、AASサーバはメーカーや保守会社がシステム保守やメンテナンスをする時に生成した点検情報、メンテナンス情報を含むAASデータを生成する。
【0023】
遠隔制御システムはAASデータを用いることにより、異なるメーカーの様々な設備や機器、人に関するあらゆる情報を1つの方式で包括的に繋げることができ、生産システムを管理する複数のアプリケーションを連携させることができる。
【0024】
図1の説明に戻り、AASクライアント32、44は、データ取得要求を一定周期でAASサーバ14、18へ夫々送信する。AASサーバ14、18は、AASクライアント32、44からのデータ取得要求を受信すると、
図2のデータ表現のスナップショットを所定のデータ形式で表現したアセットの属性や構成に関するAASデータを一定周期でAASクライアント32、44へ送信する。AASサーバ14、18は、AASクライアント32、44からのデータ取得要求が無くても、アセット16、20の属性や構成が変化することによりAASデータの値が変化した場合、AASデータをAASクライアント32、44へ夫々送信してもよい。データ形式の例はJSON(Java Script Object Notification)、XML、RDF(Resource Description Framework)である。AASクライアント32は、取得したAASデータをエッジデータ通信処理部34へ送信する。
【0025】
AASサーバ14は、AASデータをOPC UA(OLE for Process Control Unified Architecture)通信インターフェースに従ってAASクライアント32に送信する。エッジ12はAASクライアント32とエッジデータ通信処理部34を含む。
【0026】
AASサーバ18は、アセット20の属性や構成に関するAASデータをOPC UA通信インターフェースに従ってAASクライアント44へ送信する。
【0027】
監視対象36は、アセット以外の遠隔制御の監視対象であり、センサ36aを含む。IoTサーバ38は、監視対象36に関する種々のデータを取得し、取得したデータをエッジデータ通信処理部34に送信する。
【0028】
種々のデータは、センサ36aのセンシングデータ(IoTデータと称される)やイベント履歴データを含む。IoTデータは、センサ36aにより検出された監視対象36の稼働状態(温度、電圧値等)と検出時刻を示すデータである。イベント履歴データは、監視対象36に関して何時、何が、どのような状態となったかの記録を示すデータである。遠隔制御システムは、監視対象36が正常に動作しているか否かを監視している。監視対象36の動作が正常の場合は、センサ36aから出力されるIoTデータは許容範囲内に収まっている。監視対象36の動作が異常になると、センサ36aから出力されるIoTデータが許容範囲を超える。IoTサーバ38は、IoTデータが許容範囲内にあるか否かに基づいて、監視対象36が正常に動作しているか否を判断し、IoTデータが許容範囲を超えたイベントの発生を検出しイベント履歴データを生成する。
【0029】
エッジデータ通信処理部34は、データ取得要求を一定周期でIoTサーバ38に送信する。IoTサーバ38は、エッジデータ通信処理部34からのデータ取得要求に応じて一定周期でIoTデータをエッジデータ通信処理部34へ送信する。IoTサーバ38は、エッジデータ通信処理部34からのデータ取得要求が無くても、IoTデータの値が変化した時に、IoTデータをエッジデータ通信処理部34へ送信してもよい。IoTサーバ38は、エッジデータ通信処理部34からのデータ取得要求とは無関係にイベントの検出時に生成されたイベント履歴データをエッジデータ通信処理部34へ送信する。
【0030】
エッジデータ通信処理部34は、エッジデータをAMQP(Advanced Message Queuing Protocol)やMQTT(Message Queuing Telemetory Transport)通信インターフェースに従ってクラウドサーバ10へ送信する。エッジデータは、AASクライアント32がAASサーバ14からから取得したアセット16の属性や構成に関するAASデータと、エッジデータ通信処理部34がIoTサーバ38から取得した監視対象36のIoTデータとイベント履歴データを含む。
【0031】
クラウドサーバ10が受信するアセットの属性や構成に関するAASデータは、AASサーバ18からAASクライアント44に送信されるものと、AASサーバ14からエッジ12を介してエッジデータ通信処理部42に送信されるものを含む。
【0032】
クラウドサーバ10は、エッジデータ通信処理部42、AASクライアント44、収集部46、蓄積部48、ストレージ部50、API(Application Program Interface)部52、ユーザインタフェース(UI)部54及び認証・許可部56を含む。
【0033】
エッジデータ通信処理部42はエッジ12からAMQP通信インターフェースに従って送信されたエッジデータを受信する。AASクライアント44はAASサーバ18からOPC UA通信インターフェースに従って送信されたデータを受信する。エッジデータ通信処理部42は受信したエッジデータを収集部46へ送信する。収集部46は、IoTデータキュー62、イベント履歴データキュー64及びAASデータキュー66を含む。エッジデータ通信処理部42は、エッジデータの中のIoTデータをIoTデータキュー62へ送信し、エッジデータの中のイベント履歴データをイベント履歴データキュー64へ送信し、エッジデータの中のAASデータをAASデータキュー66へ送信する。AASクライアント44は受信したAASデータをAASデータキュー66へ送信する。
【0034】
蓄積部48は、IoTデータ蓄積処理部72、イベント履歴データ蓄積処理部74及びマッピング処理部76を含む。ストレージ部50は、IoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84、アセットデータベース(アセットDB)86及びマッピング辞書88を含む。
【0035】
IoTデータ蓄積処理部72は、IoTデータキュー62からIoTデータを読み出して、読み出したIoTデータをIoTデータストレージ82へ書き込む。イベント履歴データ蓄積処理部74は、イベント履歴データキュー64からイベント履歴データを読み出して、読み出したイベント履歴データをイベント履歴データストレージ84へ書き込む。IoTデータとイベント履歴データは、時刻に関する属性情報を持つデータである。IoTデータストレージ82とイベント履歴データストレージ84は、時系列データを格納するように構成されている。IoTデータ蓄積処理部72は、IoTデータを時系列データとして、IoTデータストレージ82へ書き込む。イベント履歴データ蓄積処理部74は、イベント履歴データを時系列データとして、イベント履歴データストレージ84へ書き込む。
【0036】
マッピング処理部76は、AASデータキュー66からAASデータを読み出して、読み出したAASデータをマッピング辞書88から読み出したマッピング情報に従ってアセットDB86へ書き込む。マッピング処理部76は、登録バッファ78を備える。登録バッファ78は、マッピング処理部76が内蔵するメモリに作成される。
【0037】
アセットDB86は多数のテーブルからなるリレーショナルデータベースである。リレーショナルデータベースは構造化データベースとも称される。各テーブルは複数の行(レコード)と複数の列(カラム)を含む。2つのテーブルが同一のカラムを含む場合、2つのテーブルの同一カラムのフィールドは外部キーにより関連付けられる。
【0038】
マッピング辞書88はAASデータの各データ項目をアセットDB86のどのテーブルのどのカラムに書き込むかを示すマッピング情報を記憶する。AASデータの各データ項目には固有の意味IDが設定されているので、マッピング辞書88は、意味ID毎にアセットDB86のどのテーブルのどのカラムに書き込むかを示すマッピング情報を記憶する。マッピング情報は、プロパティ単位のマッピング情報と、サブモデル又はSMC単位のグループマッピング情報と、AASの親子関係を示すエンティティ単位のマッピング情報を含む。エンティティは他のAAS又はアセットへの参照を示すデータである。
【0039】
API部52はデータ収集と遠隔制御に関する種々の機能を実現するAPIを記憶する。ユーザはUI部54を操作してAPI部52に記憶されているAPIのいずれかを実行させる。例えば、APIは、イベント履歴情報に基づきアセットが異常な動作をしていることを検出した場合、アセットに問合せメールを送信することや保守・点検会社に保守員の派遣を依頼するメールを送信することである。
【0040】
図3は、AASデータのデータ構造の一例を示す。
図3は、JSON、XML等の種々の半構造データ形式のAASデータに共通する統一的なデータ構造を表現する。
図3の左側は、AASデータ“ABCD_Compact System”は4個のサブモデル、すなわちサブモデル“Nameplate”、サブモデル“Document”、サブモデル“Service”、サブモデル“Identification”を含むことを示す。
【0041】
各サブモデルは複数のサブモデルエレメントを含む。サブモデル“Nameplate”はサブモデルエレメント“Prop”、サブモデルエレメント“SMC”を含む。サブモデル“Document”はサブモデルエレメント“SMC”を含む。サブモデルエレメント“SMC”はサブモデルエレメント“Prop”を含む。サブモデル“Document”は操作マニュアル等のPDF文書のデータを管理する。サブモデル“Service”はサブモデルエレメント“SMC”を含む。サブモデル“Identification”はサブモデルエレメント“Prop”を含む。
【0042】
図3の右側は、マッピング処理で選択中のサブモデル“Nameplate”のサブモデルエレメント“Prop”(ManufacturerName)102のデータ構造の一例を示す。サブモデルエレメント“Prop”は意味ID104を含む。意味ID104の値は“0173-1#02-AAO677#002”である。
【0043】
図4は、AASデータのデータ構造の他の例を示す。AASデータは単数/複数のサブモデルSMを含む。サブモデルSMは単数/複数のプロパティ(Prop)と単数/複数のサブモデルエレメントコレクション(SMC)を含むこともあるし、サブモデルエレメントコレクション(SMC)を含まず、単数/複数のプロパティ(Prop)のみを含むこともあるし、プロパティ(Prop)まず、単数/複数のサブモデルエレメントコレクション(SMC)を含むこともある。サブモデルエレメントコレクション(SMC)は単数/複数のプロパティ(Prop)と単数/複数のサブモデルエレメントコレクション(SMC)を含むこともある。プロパティ(Prop)は単数/複数のプロパティ(Prop)と単数/複数のサブモデルエレメントコレクション(SMC)を含むこともある。このようにサブモデルSMは、複数階層のサブモデルエレメントコレクション(SMC)/プロパティ(Prop)を含むことがある。
【0044】
図5は、マッピング処理部76の処理の一例を示すフローチャートである。
【0045】
AASデータは複数のAASに関するデータを含むことができる。1つのAASに関するデータはAASオブジェクトと称される。
【0046】
マッピング処理部76は、AASデータキュー66からAASデータを取得すると、S402で、AASデータからAASオブジェクトを抽出する。
【0047】
図6は、入力されたAASデータと抽出されたAASオブジェクト群の一例(JSON形式のデータ)を示す。AASデータはAASID(=XXX)のAASに関するオブジェクトと、AASID(=YYY)のAASに関するオブジェクトを含む。AASID(=XXX)のAASに関するオブジェクトは、AASID(=XXX)のAASに関するデータと、AASID(=XXX)のアセットに関するデータと、AASID(=XXX)のサブモデル1と、AASID(=XXX)のサブモデル2と、…AASID(=XXX)のサブモデルNを含む。AASID(=YYY)のAASに関するオブジェクトは、AASID(=YYY)のAASに関するデータと、AASID(=YYY)のアセットに関するデータと、AASID(=YYY)のサブモデル1と、AASID(=YYY)のサブモデル2と、…AASID(=YYY)のサブモデルNを含む。
【0048】
マッピング処理部76は、S404で、親子関係辞書を作成する。親子関係辞書は、子AASIDから親デバイスIDを引くための辞書である。
図7は、親子関係辞書の一例を示す。
【0049】
S408で、マッピング処理部76は今回取得したAASオブジェクトからマッピング情報に従って取得したデータのマッピング先のテーブルに対応する登録バッファ78を作成する。
【0050】
【0051】
図8(a)は、登録バッファ78としてのデバイス(アセット)に関する情報を記憶するデバイステーブル“Device_Info”を示す。デバイステーブル“Device_Info”はデバイスID、企業CD(企業IDとも称される)、デバイス名、アセットID、AASID、製品シリアルID、親デバイスID等のカラムを含む。
【0052】
図8(b)は、登録バッファ78としての企業マスタテーブル“Enterprise_mst”を示す。企業マスタテーブル“Enterprise_mst”は企業CD、企業所在国、企業名称等のカラムを含む。
【0053】
図8(c)は、登録バッファ78としてのドキュメントテーブル“Documents”を示す。ドキュメントテーブル“Documents”はname(文書名)、type(文書タイプ)、title(タイトル)、author(著者)等のカラムを含む。
【0054】
図8(d)は、登録バッファ78としての子AASIDリストを示す。
【0055】
図5の説明に戻り、S410で、マッピング処理部76は今回取得したAASオブジェクトからAASIDを取得し、AASIDを登録バッファ78内のデバイステーブル“Device_Info”に設定する。また、マッピング処理部76はAASIDから既定の方法に従ってデバイスIDを生成し、デバイスIDを登録バッファ78内のデバイステーブル“Device_Info”に設定する。既定の方法は、例えば、AASIDのハッシュ値をデバイスIDとすることである。
図9は、AASID取得(S410)の処理の一例を示す。
図9の左側は、AASデータ“ABCD_Compact System”106は5個のサブモデル、すなわちサブモデル“Nameplate”、サブモデル“Document”、サブモデル“Service”、サブモデル“Identification”、サブモデル“TechnicalSpecification”を含むことを示す。
図3は各サブモデルのサブモデルエレメントを示したが、
図9は各サブモデルのサブモデルエレメントの図示を省略する。
【0056】
図9の右側は、現在選択中のAASデータ“ABCD_Compact System”106のデータ構造の一例を示す。AASデータ“ABCD_Compact System”はAASID108を含む。AASID108のタイプはIRDIであり、IDの値はURL(http://abcd.com/shells/…)である。マッピング処理部76はAASID108をデバイステーブル“Device_Info”のAASIDのカラムに書き込む。また、マッピング処理部76はAASID108のハッシュ値を取りデバイスIDとしてデバイステーブル“Device_Info”のデバイスIDのカラムに書き込む。
【0057】
S412で、マッピング処理部76は取得したAASIDの値が親子関係辞書(
図7)の子AASIDの欄に存在するか否かを判定する。
【0058】
存在する場合、S414で、マッピング処理部76は親子関係辞書から親デバイスIDを取得し、取得した親デバイスIDを登録バッファ78内のデバイステーブル“Device_Info”(
図8(a))の親デバイスIDのカラムに書き込む。
【0059】
存在しない場合、又はS414の処理の後、S418で、マッピング処理部76はサブモデルの各サブモデルエレメントのデータをマッピング辞書88の定義に従って登録バッファ78に書き込む(サブモデルマッピング)。サブモデルマッピング(S418)の詳細は、
図10乃至
図12を参照して後述する。
【0060】
マッピング処理部76はサブモデルマッピング(S418)をAASオブジェクトに含まれるサブモデルの数だけ繰り返す。
【0061】
サブモデルマッピングとは、AASデータ(半構造データ)を、サブモデル又はサブモデルエレメントに付与されている意味IDに対応する登録バッファ78のカラムへ書き込むことである。
【0062】
サブモデルマッピングは、プロパティ単位でマッピングする例と、サブモデル又はSMC単位で複数のプロパティトを纏めてマッピングする例と、AASの親子関係を示すエンティティ単位でマッピングする例を含む。
【0063】
図10はプロパティ単位のマッピングの一例を示す。
図3と同様に、
図10の左側は、AASデータ“ABCD_Compact System”は4個のサブモデル、すなわちサブモデル“Nameplate”、サブモデル“Document”、サブモデル“Service”、サブモデル“Identification”を含むことを示す。ただし、
図3はサブモデルエレメントの名称だけを図示し、その値の図示を省略しているが、
図10は一部のサブモデルエレメント“Prop”(ManufacturerName)102aについてはその値“ABCD”も表示する。
【0064】
図10の右側は、選択中のサブモデルエレメント“Prop”(ManufacturerName)のデータ構造の一例を示す。サブモデルエレメント“Prop”(ManufacturerName)は意味ID104を含む。意味ID104のタイプはIRDIであり、意味ID104の値は“0173-1#02-AAO677#002”である。
【0065】
マッピング辞書88は、意味ID104の値“0173-1#02-AAO677#002”はサブモデルエレメント“Prop”(ManufacturerName)が「企業名称」を意味することを示すマッピング情報を記憶する。このため、マッピング処理部76は、AASデータ“ABCD_Compact System”のサブモデル“Nameplate”のサブモデルエレメント“Prop”(ManufacturerName)102aの値“ABCD”を企業マスタテーブル“Enterprise_mst”(
図8(b))の「企業名称」のカラムに書き込む。
【0066】
図11はサブモデル又はSMC単位で複数のプロパティを纏めてマッピングする一例を示す。
図11の左側は、AASデータ“ABCD_Compact System”は2個のサブモデル、すなわちサブモデル“Nameplate”、サブモデル“Document”110を含むことを示す。サブモデル“Document”110はサブモデルエレメントコレクションSMCを含む。サブモデルエレメントコレクションSMCは複数のサブモデルエレメント“Prop”を含む。
【0067】
図11の右側は、サブモデル“Document”110のデータ構造の一例を示す。サブモデル“Document”は意味ID112を含む。意味ID112の値はURL“https:www.hsu-hh.de/…”である。
【0068】
マッピング辞書88は、意味ID112の値であるURL“https:www.hsu-hh.de/…2はサブモデル“Document”のサブモデルエレメント“Prop”(VDI2770_OrganisationName)114aが「author」を意味することを示し、サブモデルエレメント“Prop”(VDI2770_Title)114bが「title」を意味することを示し、サブモデルエレメント“Prop”(VDI2770_FileFormat)114cが「type」を意味することを示すマッピングパターン情報を記憶する。マッピングパターン情報は、複数のサブモデルエレメントの意味を纏めて示すものである。
【0069】
このため、マッピング処理部76は、サブモデル“Document”のサブモデルエレメント“Prop”(VDI2770_OrganisationName)114aの値“abcd”をドキュメントテーブル“Document”(
図8(c))のauthorのカラムに書き込み、サブモデルエレメント“Prop”(VDI2770_Title)114bの値“****”をドキュメントテーブル“Document”の「title」のカラムに書き込み、サブモデルエレメント“Prop”(VDI2770_FileFormat)114cの値“application/pdf”をドキュメントテーブル“Document”の「type」のカラムに書き込む。
【0070】
図12は、AASの親子関係を示すエンティティのマッピングの一例を示す。サブモデル“BillofMaterial”がプロパティ“Entity”116を含む。Entityは他のAAS又はアセットへの参照を示すデータである。選択中のエンティティ116の意味IDと値の例はURLである。マッピング辞書88は、意味116a“https://xxx/BillofMatetial”は親子関係情報を意味することを示すマッピング情報を記憶する。このため、マッピング処理部76は、親子関係を示すエンティティ116bの値“http://AAA/BBB”を子AASIDリストに追加する。
【0071】
図5の説明に戻り、AASオブジェクトに含まれる全てのサブモデルに含まれるデータ項目のマッピングが終了すると、S422で、マッピング処理部76は登録バッファ78のデータをアセットDB86の対応するテーブルのレコードに書き込む(データ登録)。
【0072】
図13はアセットDB86へのデータ登録の一例を示す図である。登録バッファ78の企業マスタテーブル“Enterprise_mst”をデータ登録する際、マッピング処理部76はアセットDB86の企業マスタテーブル“Enterprise_mst”に同じ企業名称(例えばAaAa)をもつレコードが存在するか調べる。存在しない場合、マッピング処理部76は企業CD(例えば100)を新規に決定し、アセットDB86の企業マスタテーブル“Enterprise_mst”に新レコードを生成し、その企業CD(100)を新レコードの企業CDのカラムと、デバイステーブル“Device_Info”の企業CDのカラムに設定する。存在する場合、マッピング処理部76は企業マスタテーブル“Enterprise_mst”の同じ企業名称をもつレコードの企業CDをそのレコードの企業CDのカラムと、デバイステーブル“Device_Info”の企業CDのカラムに設定する。
【0073】
図14はアセットDB86へのデータ登録の他の例を示す図である。
図14は、AASオブジェクトの企業名称がAaAaからBbBbに変更された場合を示す。
図13に示すように、アセットDB86の企業マスタテーブル“Enterprise_mst”では企業名称がAaAaであり、企業CDが100であるとする。この状態で、同じAASオブジェクトの企業名称がBbBbに変更されたとする。そのため、アセットDB86の企業マスタテーブル“Enterprise_mst”には企業名称がBbBbであり、企業CDが200のレコードが追加される。
【0074】
データ登録が終了すると、S424で、マッピング処理部76は親子関係辞書を更新する。
図15は親子関係辞書更新の一例を示す。
【0075】
この結果、半構造データであるAASデータのサブモデルエレメントのデータ項目が構造化データベースであるアセットDB86の対応するテーブルのカラムに書き込まれる。
【0076】
なお、ドキュメントテーブル“Documents”は他のテーブルと外部キーで接続されていないので、アセットDB86とは別のデータベースとしてもよい。
【0077】
API部52は、IoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84、アセットDB86に格納されているデータを解析し、アセット16、20、監視対象36の動作が異常であることを検出すると、制御用APIをエッジデータ通信処理部42又はAASクライアント44に送信する。エッジデータ通信処理部42はエッジデータ通信処理部34、IoTサーバ38を介して監視対象36の動作を制御する、又はAASクライアント32、AASサーバ14を介してアセット16の動作を制御することができる。AASクライアント44はAASサーバ18を介してアセット20の動作を制御することができる。
【0078】
これにより、異常な動作をしているアセット16、20、監視対象36の動作を正常に戻すことができる。あるいは、エッジデータ通信処理部42はエッジデータ通信処理部34、IoTサーバ38を介して監視対象36に異常動作を知らせる通知を送信する、又はAASクライアント32、AASサーバ14を介してアセット16に異常動作を知らせる通知を送信することができる。AASクライアント44はAASサーバ18を介してアセット20に異常動作を知らせる通知を送信することができる。これらの通知は、アセット16、20、監視対象36の制御盤の表示部に表示されてもよいし、アセット16、20、監視対象36のオペレータが所持するスマートフォン等に送信されてもよい。
【0079】
実施形態によるデータ収集システムは、AASデータを収集し、AASデータの各データ項目を、その意味IDにより表される意味を持つアセットDB86内のテーブルの対応するカラムに書き込む。AASデータを利用しない場合、様々なメーカーの多種多様な装置や機器等の制御対象のデータを網羅的に収集するためには、メーカー個々の仕様に基づいて個別に収集しなければならない、あるいは制御対象の管理情報を個別に設定しなければならないため、手間が係っていた。しかし、このデータ収集システムが応用された遠隔制御システムは、工場やプラントに設置された様々なメーカーの設備や機器等の制御対象の稼働状態を網羅的に収集することができる。このため、遠隔制御システムは、制御対象の稼働状態をリアルタイムに捉え、稼働状態に応じた最適な運転や保守業務の効率化を達成できる。
【0080】
[第2実施形態]
図16は、第2実施形態によるデータ収集システムを応用した遠隔制御システムの一例を示す。第2実施形態において、第1実施形態と同じ構成は同じ参照数字を付して詳細な説明は省略する。
【0081】
アセット20は、センサ20a、20bを含む。センサ20a、20bは、監視対象36のセンサ36aと同様に、アセット20に関する種々のデータを計測する。AASサーバ18は、アセット20の属性や構成に関するAASデータとともに、センサ20a、20bが計測したIoTデータを保持する。
【0082】
AASクライアント44は、データ取得要求を一定周期でAASサーバ18へ送信する。AASサーバ18は、AASクライアント44からのデータ取得要求を受信すると、アセット20の属性や構成に関する第1AASデータと、センサ20a、20bが計測したIoTデータを含む第2AASデータを一定周期でAASクライアント44へ送信する。AASサーバ18は、AASクライアント44からのデータ取得要求が無くても、第1AASデータ又は第2AASデータの値が変化した場合、第1AASデータ又は第2AASデータをAASクライアント32へ送信してもよい。AASサーバ18は、IoTデータが許容範囲内にあるか否かを判定し、IoTデータが許容範囲を超える場合、イベントの発生を検出し、イベントの発生時刻と、イベントの種類を示すイベント履歴データを含む第3AASデータをAASクライアント44へ送信する。
【0083】
このようにAASクライアント44が受信したAASデータは、属性や構成に関するデータ以外にIoTデータ、イベント履歴データを含む。
【0084】
AASクライアント44は、AASデータをAASデータキュー66へ送信する。マッピング処理部76は、AASデータキュー66に記憶されているAASデータをストレージ部50に書き込む。マッピング処理部76は、アセットDB86、IoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84に接続される。マッピング処理部76は、マッピング辞書88に記憶されているマッピング情報に基づいて、アセットの属性や構成に関する第1AASデータをアセットDB86に書き込み、IoTデータを含む第2AASデータをIoTデータストレージ82に書き込み、イベント履歴データを含む第3AASデータをイベント履歴ストレージ84に書き込む。このように、マッピング処理部76のマッピング先は、アセットDB86に限らず、IoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84も含む。
【0085】
登録バッファ78は、第1実施形態の登録バッファ(
図8)に加えて、
図17に示す登録バッファも含む。
図17(a)は、IoTデータを含む第2AASデータのためのIoTデータ登録バッファの一例を示す。
図17(b)は、イベント履歴データを含む第3AASデータのためのイベント履歴データ登録バッファの一例を示す。
【0086】
IoTデータ登録バッファ(
図17(a))は、デバイスID、センサID、計測時刻、計測値を含み、デバイスIDとセンサIDの組に対して、計測時間と計測値を記録する。
【0087】
デバイスIDは、監視対象36又はアセット16、20の識別情報である。センサIDは、監視対象36又はアセット16、20における複数のセンサの識別情報である。本実施形態においてセンサIDは、デバイスID毎に一意としている。それ故、デバイスIDとセンサIDとの組み合わせで、システムとして1つのセンサが特定される。例えば、デバイスID=XXXのデバイスがセンサID=sensor0のセンサを持つ場合、デバイスID=YYYのデバイスもセンサID=sensor0のセンサを持ち得る。単一のセンサが監視対象36又はアセット16、20に設けられている場合、センサIDとデバイスIDは等しくてもよい。
【0088】
なお、センサをどのような識別子で識別するかはシステムの設計による。本実施形態では、センサはデバイスに付随するものと考えて、デバイスIDとセンサIDでセンサを識別している。このとき、デバイスIDはシステム全体で一意だが、センサIDは対応するセンサが付随するデバイスのデバイスIDについて一意であれば良い。従って、上述のようにデバイスID=XXXのデバイスがセンサID=sensor0のセンサを持つときに、デバイスID=YYYのデバイスもセンサID=sensor0のセンサを持ち得る。本実施形態の他にも、センサマスタ(後述)に登録されているセンサが、センサ毎にシステム全体で一意なセンサIDを付与されて識別するシステムが考えられる。
【0089】
計測時刻は、ISO8601の拡張方式に従う形式で表記される。ISO8601の拡張方式は、年=YYYY(グレゴリオ暦)、月=MM、日=DD、時=hh、分=mm、秒=ssにより表される。なお、協定世界時刻(UTC)との時差がある場合は、時差が最後に付加される。
図17(a)のIoTデータは、1分毎に取得されたことを示す。
【0090】
IoTデータ登録バッファに書き込まれるセンサIDと、それに関連する定義(センサ計測値の単位等)は、センサマスタとして、アセットDB86に記憶されている。
【0091】
イベント履歴データ登録バッファ(
図17(b))は、デバイスID、イベントID、イベント発生時刻、イベント種別、詳細情報を含む。デバイスIDは、監視対象36又はアセット16、20の識別情報である。イベントIDは、イベントの識別情報である。イベント発生時刻も、ISO8601の拡張方式に従う形式で表記される。
【0092】
イベント履歴データ登録バッファに書き込まれるイベントIDと、それに関連する定義(イベントIDに対応するイベントの意味や、発生するイベント種類)は、イベントマスタとして、アセットDB86に記憶されている。
【0093】
マッピング処理部76は、IoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84、アセットDB86に接続される。
【0094】
第2実施形態の他の構成は、第1実施形態の構成と同じである。
【0095】
第2実施形態に係るマッピング処理部76の動作は、
図5に示す第1実施形態に係るマッピング処理部76の動作とは、サブモデルマッピング(S418)とデータ登録(S422)の2つが異なる。
【0096】
アセット20の一例は、モータにより駆動される搬送システムである。センサ20aの一例は、モータに流れる電流を計測する電流計である。アセット20はセンサ20aのみを含み、センサ20bを含まないとする。アセット20の機器の名称は“ABCD_CompactSystem”であり、電流計のIDは“Sensor1”であるとする。
【0097】
マッピング処理部76は、
図5のマッピング処理のサブモデルマッピング(S418)において、AASデータのサブモデルの各サブモデルエレメントのデータをマッピング辞書88の定義に従って、
図8に示す第1実施形態の登録バッファ、
図17(a)に示すIoTデータ登録バッファ、又は
図17(b)に示すイベント履歴データ登録バッファに書き込む。
【0098】
図18は、AASクライアント44が取得したセンサ20aからのIoTデータを含む第2AASデータの一例を示す。第2AASデータ“ABCD_CompactSystem”のサブモデルSM“OperationalData”は、サブモデルエレメントSMC“Sensor1”(センサ20aのセンサID)、サブモデルエレメントProp“MeasurementTime”(センサ20aの計測時刻=2021年9月24日00時00分00秒)、サブモデルエレメントProp“MeasurementValue”(計測値=100)、及びサブモデルエレメントProp“unit”(単位=アンペア)を含む。第2AASデータのサブモデルSM、サブモデルエレメントSMC、サブモデルエレメントPropのデータから、マッピング辞書88の定義に従って、センサID、計測時刻、計測値が取り出され
図17(a)に示すIoTデータ登録バッファに記憶される。また、AASID取得・デバイスID設定(S410)の処理によって
図8(a)に示す登録バッファに記憶されているデバイスIDが
図17(a)に示すIoTデータ登録バッファにコピーされる。
【0099】
図18の右側は、選択中のサブモデルエレメントProp“MeasurementValue”のデータ構造の一例を示す。サブモデルエレメントProp“MeasurementValue”は意味ID204を含む。意味ID204のタイプはURIであり、意味ID204の値はURI“http://abcd.com/aas/sid/operationaldata/sensor/measurementvalue”である。
【0100】
マッピング辞書88は、意味ID204を持つサブモデルエレメントProp“MeasurementValue”の値は、センサID(Sensor1)で識別されるセンサ20aの測定値であることを示す。そのため、マッピング処理部76は、AASデータ“ABCD_CompactSystem”のサブモデルエレメントProp“MeasurementValue”の値(=100)をIoTデータ登録バッファのデバイスIDとセンサIDの組により指定される計測値のフィールドに書き込む。
【0101】
同様に、マッピング処理部76は、AASデータ“ABCD_CompactSystem”のサブモデルエレメントProp“MeasurementTime”の値(=2021年9月24日00時00分00秒)をIoTデータ登録バッファのデバイスIDとセンサIDの組により指定される計測時刻のフィールドに書き込む。
【0102】
図19は、AASクライアント44が取得したイベント履歴データを含む第3AASデータの一例を示す。第3AASデータ“ABCD_CompactSystem”のサブモデルSM“OperationalData”は、サブモデルエレメントSMC“Event1”(イベントID)、サブモデルエレメントProp“OccurrenceTime”(イベントの発生時刻=2021年9月24日00時00分00秒)、サブモデルエレメントProp“EventType”(イベント種類=H)、及びサブモデルエレメントProp“Description”(詳細情報=上限超過)を含む。第3AASデータのサブモデルSM、サブモデルエレメントSMC、サブモデルエレメントPropのデータから、マッピング辞書88の定義に従って、イベントID、イベント発生時刻、イベント種別、詳細情報が取り出され
図17(b)に示すイベント履歴データ登録バッファに記憶される。また、AASID取得(S410)の処理によって
図8(a)に示す登録バッファに記憶されているデバイスIDが
図17(b)に示すイベント履歴データ登録バッファにコピーされる。
【0103】
図19の右側は、選択中のサブモデルエレメントProp“EventTytpe”のデータ構造の一例を示す。サブモデルエレメントProp“EventType”は意味ID206を含む。意味ID206のタイプはURIであり、意味ID206の値はURI“http://abcd.com/aas/sid/operationaldata/event/eventtype”である。
【0104】
マッピング辞書88は、意味ID206を持つサブモデルエレメントProp“EventType”の値は、イベントID(Event1)で識別されるイベントの種別であることを示す。そのため、マッピング処理部76は、AASデータ“ABCD_CompactSystem”のサブモデルエレメントProp“EventType”の値(=H)をイベント履歴データ登録バッファのデバイスIDとセンサIDの組により指定されるイベント種別のフィールドに書き込む。
【0105】
同様に、マッピング処理部76は、AASデータ“ABCD_CompactSystem”のサブモデルエレメントProp“OccurrenceTime”の値(=2021年9月24日00時00分00秒)をイベント履歴データ登録バッファのデバイスIDとセンサIDの組により指定されるイベント発生時刻のフィールドに書き込み、サブモデルエレメントProp“Description”のテキスト(=上限超過)をイベント履歴データ登録バッファのデバイスIDとセンサIDの組により指定される詳細情報のフィールドに書き込む。
【0106】
第2実施形態によるデータ収集システムによれば、アセット20がセンサ20a、20bを含み、AASサーバ18は、アセットの属性や構成に関する第1AASデータと、センサ20a、20bが収集したIoTデータを含む第2AASデータと、イベント履歴データを含む第3AASデータをAASクライアント44へ送信する。第1、第2、第3AASデータの各データ項目には意味IDが設定されている。マッピング辞書86は、意味ID毎にデータ項目のマッピング先をIoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84、又はアセットDB86に設定するマッピング情報を記憶する。AASクライアント44からのAASデータを受信するマッピング処理部76は、AASデータの各データ項目を、その意味IDのマッピング情報に従ってIoTデータストレージ82、イベント履歴データストレージ84、又はアセットDB86に書き込むことができる。
【0107】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を生成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0108】
10…クラウドサーバ、12…エッジ、14,18…AASサーバ、16,20…アセット、66…AASデータキュー、76…マッピング処理部、78…登録バッファ、86…アセットDB、88…マッピング辞書