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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190655
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】除菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20221219BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61L9/01 E
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013936
(22)【出願日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021098391
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】松本 伎朗
(72)【発明者】
【氏名】福本 将秀
【テーマコード(参考)】
4C180
4D061
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180CA06
4C180EA58X
4C180HH01
4C180HH05
4C180KK06
4C180LL06
4C180MM08
4D061DA01
4D061DB09
4D061EA02
4D061EB02
4D061EB16
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB37
4D061EB39
4D061ED12
4D061ED13
4D061GA04
4D061GC06
4D061GC15
(57)【要約】
【課題】装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出する除菌装置を提供する。
【解決手段】除菌装置2は、内部に所定の濃度の次亜塩素酸水溶液6を貯留する貯留部5と、外部(個室空間1)の空気3を吸い込み、次亜塩素酸水溶液6に気泡8として供給する空気供給部7と、次亜塩素酸水溶液6内を浮上した気泡8を、次亜塩素酸ガスを含む空気4として外部(個室空間1)に放出する空気放出部9と、空気3に含まれる水分を冷却し、貯留部5に結露水12として供給する水供給部11と、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度に調整する次亜塩素酸水調整部20(塩化物供給部13、電極14)とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に所定の濃度の次亜塩素酸水溶液を貯留する貯留部と、
外部の空気を吸い込み、前記次亜塩素酸水溶液に気泡として供給する空気供給部と、
前記次亜塩素酸水溶液内を浮上した前記気泡を、次亜塩素酸ガスを含む空気として前記外部に放出する空気放出部と、
空気に含まれる水分を冷却し、前記貯留部に結露水として供給する水供給部と、
前記貯留部に貯留される前記次亜塩素酸水溶液を前記所定の濃度に調整する次亜塩素酸水調整部と、
を備えることを特徴とする除菌装置。
【請求項2】
前記次亜塩素酸水調整部は、塩化物水溶液を貯留するタンクと、前記タンクから前記貯留部に前記塩化物水溶液を送出するポンプと、前記ポンプから送出された前記塩化物水溶液を電気分解することで次亜塩素酸を生成する電極と、を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記水供給部は、前記貯留部に貯留される前記次亜塩素酸水溶液が規定量減少した場合に、前記貯留部に前記結露水を供給することを特徴とする請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記次亜塩素酸水調整部は、前記貯留部に貯留される前記次亜塩素酸水溶液を一定時間ごとに前記所定の濃度に調整することを特徴とする請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項5】
前記空気放出部の放出口を開閉可能に構成された開閉部をさらに備え、
前記開閉部は、前記空気供給部による前記気泡の供給が停止した場合に、前記放出口を閉塞することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の除菌装置。
【請求項6】
前記次亜塩素酸水調整部は、次亜塩素酸水原液を貯留するタンクと、前記タンクから前記貯留部に前記次亜塩素酸水原液を送出するポンプと、を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の除菌装置。
【請求項7】
前記水供給部は、前記貯留部に貯留される前記次亜塩素酸水溶液が規定量減少した場合に、前記貯留部に対して、前記次亜塩素酸水調整部による前記次亜塩素酸水原液の供給に合わせて前記結露水を供給することを特徴とする請求項6に記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個室空間などの除菌に用いられる除菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、居住空間などを除菌し、感染症のリスクを低減させる装置として、次亜塩素酸水溶液から次亜塩素酸を気化させて放出する気化式のもの、あるいは、次亜塩素酸水溶液を噴霧する超音波式のものなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-133521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気化式あるいは超音波式などの従来の除菌装置では、次亜塩素酸の放出に連動して居住空間への水の放出量が多いために必要な給水量が多くなる。したがって、自動給水を実現するためには外部の給水設備との間で接続する必要があり、除菌装置が大型化してしまうという課題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出する除菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る除菌装置は、内部に所定の濃度の次亜塩素酸水溶液を貯留する貯留部と、外部の空気を吸い込み、次亜塩素酸水溶液に気泡として供給する空気供給部と、次亜塩素酸水溶液内を浮上した気泡を、次亜塩素酸ガスを含む空気として外部に放出する空気放出部と、空気に含まれる水分を冷却し、貯留部に結露水として供給する水供給部と、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液を所定の濃度に調整する次亜塩素酸水調整部と、を備えるものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る除菌装置によれば、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出する除菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る除菌装置の個室空間への設置例を示す概略図である。
図2図2は、除菌装置の構成を示す概略側面図である。
図3図3は、除菌装置における水供給部の構成を示す概略側面図である。
図4図4は、除菌装置の運転フローを示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る除菌装置の構成を示す概略側面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態3に係る除菌装置の構成を示す概略側面図である。
図7図7は、除菌装置の運転フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る除菌装置は、内部に所定の濃度の次亜塩素酸水溶液を貯留する貯留部と、外部の空気を吸い込み、次亜塩素酸水溶液に気泡として供給する空気供給部と、次亜塩素酸水溶液内を浮上した気泡を、次亜塩素酸ガスを含む空気として外部に放出する空気放出部と、空気に含まれる水分を冷却し、貯留部に結露水として供給する水供給部と、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液を所定の濃度に調整する次亜塩素酸水調整部とを備える。
【0010】
こうした構成によれば、空気供給部により次亜塩素酸水溶液中に少量の空気を気泡として流通させると、少量の気泡(流通空気)に多量の次亜塩素酸ガスを含ませて空気放出部から外部に放出することができる。このとき、次亜塩素酸水溶液への気泡(流通空気)を少量に抑えられるため、次亜塩素酸水溶液から気泡(流通空気)中に気化して外部に放出される水の量が抑制され、貯留部への必要な給水量を低減することができる。その結果、水供給部(水供給部による貯留部への結露水の供給)によって必要な給水量を確保することが可能となり、自動給水のために外部の給水設備との間で接続する必要がなくなる。つまり、除菌装置は、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出することができる。
【0011】
また、本発明に係る除菌装置では、次亜塩素酸水調整部は、塩化物水溶液を貯留するタンクと、タンクから貯留部に塩化物水溶液を送出するポンプと、ポンプから送出された塩化物水溶液を電気分解することで次亜塩素酸を生成する電極とを有して構成される。こうした構成によれば、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液に塩化物水溶液を混合して電気分解することにより次亜塩素酸水溶液を所定の濃度に容易に調整することができる。
【0012】
また、本発明に係る除菌装置では、水供給部は、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液が規定量減少した場合に、貯留部に結露水を供給することが好ましい。このようにすることで、貯留部の次亜塩素酸水溶液の量を所定の範囲内に保つことができる。その結果、所定の条件下で次亜塩素酸ガスを生成でき、除菌装置による安定した次亜塩素酸の放出が可能となる。
【0013】
また、本発明に係る除菌装置では、次亜塩素酸水調整部は、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液を一定時間ごとに所定の濃度に調整することが好ましい。このようにすることで、次亜塩素酸の放出により低下した次亜塩素酸水溶液に含まれる次亜塩素酸の濃度を所定の範囲内に保つことができる。その結果、所定の条件下で次亜塩素酸ガスを生成でき、除菌装置による安定した次亜塩素酸の放出が可能となる。
【0014】
また、本発明に係る除菌装置は、空気放出部の放出口を開閉可能に構成された開閉部をさらに備える。そして、開閉部は、空気供給部による気泡の供給が停止した場合に、放出口を閉塞するように構成してもよい。このようにすることで、空気供給部による気泡の供給が停止した際に、次亜塩素酸水溶液の液面から気化した次亜塩素酸が空気放出部の放出口から外部に放出されることを抑制できる。つまり、除菌装置から不必要な次亜塩素酸が放出されない状態とすることができる。
【0015】
また、本発明に係る除菌装置では、次亜塩素酸水調整部は、次亜塩素酸水原液を貯留するタンクと、タンクから貯留部に次亜塩素酸水原液を送出するポンプと、を有して構成される。こうした構成によれば、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液に対して、次亜塩素酸水原液と水供給部から結露水とを混合することにより次亜塩素酸水溶液を所定の濃度以上となるように容易に調整することができる。
【0016】
また、本発明に係る除菌装置では、水供給部は、貯留部に貯留される次亜塩素酸水溶液が規定量減少した場合に、貯留部に対して、次亜塩素酸水調整部による次亜塩素酸水原液の供給に合わせて結露水を供給することが好ましい。このようにすることで、貯留部の次亜塩素酸水溶液の量を所定の範囲内に保つことができる。その結果、所定の条件下で次亜塩素酸ガスを生成でき、除菌装置による安定した次亜塩素酸の放出が可能となる。 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0017】
(実施の形態1)
まず、図1及び図2を参照して、本実施の形態1に係る除菌装置2の概略について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る除菌装置2の個室空間1への設置例を示す概略側面図である。図2は、除菌装置2の構成を示す概略側面図である。図3は、除菌装置2における水供給部11の構成を示す概略図である。ここで、図3の(a)は、水供給部11を上方から見た状態の概略上面図であり、図3の(b)は、水供給部11を側方から見た状態の概略側面図である。
【0018】
図1に示す通り、除菌装置2は、個室空間1の壁面の所定の高さの位置に設置される。除菌装置2は、個室空間1の空気3を取り込み、取り込んだ空気3に次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)を付加して、次亜塩素酸を含む空気4として個室空間1に放出する。その結果、放出された空気4(次亜塩素酸を含む空気4)により個室空間1が除菌される。つまり、除菌装置2は、個室空間1に次亜塩素酸を放出して除菌する装置と言える。なお、除菌装置2は、外部電源との接続ができるのであれば、個室空間1での設置場所に制約を受けない。
【0019】
個室空間1は、利用者が打合せあるいは休憩などで使用する空間であり、壁及び扉などの構造体によって構成される。個室空間1内には、テーブルあるいは椅子が設置されていてもよい。また、個室空間1内の空調(冷房、暖房)を行う空調機などが設置されていてもよい。
【0020】
空気3は、個室空間1から除菌装置2に取り込まれる空気である。図1の矢印は、空気3の主な流れを示す。
【0021】
空気4は、除菌装置2から個室空間1に吹き出される空気である。図1の矢印は、空気4の主な流れを示す。詳細は後述するが、空気4には、除菌装置2の内部において発生させる次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)が含まれている。
【0022】
次に、除菌装置2の具体的な構成について説明する。
【0023】
図2に示す通り、除菌装置2は、貯留部5、空気供給部7、空気放出部9、エリミネータ10、水供給部11、塩化物供給部13、電極14、及び水位センサ16(満水センサ16a、渇水センサ16b)を有して構成される。
【0024】
貯留部5は、内部に次亜塩素酸水溶液6を貯留する容器である。貯留部5は、四角柱状の形状を有しており、空気放出部9の放出口9aを正面視した場合には、その外形寸法は、例えば、幅246mm、奥行き66mm、高さ115mmである。なお、貯留部5は、除菌装置2の外枠を構成する筐体とも言える。
【0025】
貯留部5は、次亜塩素酸水溶液6が満水の状態において、次亜塩素酸水溶液6の液面の上方に内部空間5aが形成されるようになっている。そして、内部空間5a部分を構成する容器の側壁には、水供給部11からの結露水12が導入される導入口、及び、塩化物供給部13から塩化物水溶液15が導入される導入口がそれぞれ設置されている。また、貯留部5の底部には、次亜塩素酸水溶液6に沈んだ状態で空気供給部7及び電極14が設置されている。また、貯留部5には、内部に貯留する次亜塩素酸水溶液6の水位を検出するための水位センサ16(満水センサ16a、渇水センサ16b)が所定の位置に設置されている。また、貯留部5には、その上面(上端部)に空気放出部9と連通接続するための開口部(図示せず)が設けられている。
【0026】
次亜塩素酸水溶液6は、後述する塩化物水溶液15を電気分解して生成される次亜塩素酸を含んだ水溶液である。次亜塩素酸水溶液6は、後述する空気供給部7から供給される気泡8が浮力により液中を流通する過程で、気泡8の内部に次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)を含ませる役割を有する。このため、次亜塩素酸水溶液6の濃度を増減させることで、気泡8に含ませる次亜塩素酸の量を増減させることができる。また、次亜塩素酸水溶液6の水素イオン濃度(pH)を5~7程度にすることで、次亜塩素酸水溶液6から次亜塩素酸が気化しやすくなり、気泡8に含ませる次亜塩素酸の量を増加させることができる。また、気泡8が浮力により上昇する距離(気泡8が次亜塩素酸水溶液6中を流通する距離)を増加させ、次亜塩素酸水溶液6と気泡8の接触時間を増加させることで、気泡8に含ませる次亜塩素酸の量を増加させることができる。これらのことから、本実施の形態では、次亜塩素酸水溶液6の濃度を100mg/L程度とし、次亜塩素酸水溶液6のpHを7程度とし、上述した貯留部5の外径寸法に基づいて内部に貯留する次亜塩素酸水溶液6の容量(満水時の容量)を1L程度としている。なお、次亜塩素酸水溶液6の濃度は、気化式あるいは超音波式などの従来の除菌装置に用いられる次亜塩素酸水溶液の濃度よりも、数倍濃く調整されている。
【0027】
空気供給部7は、個室空間1の空気3を吸い込み、吸い込んだ空気3を次亜塩素酸水溶液6に気泡8として供給する部材である。より詳細には、空気供給部7は、エアストーン7a、エアポンプ7b、及びエアチューブ7cを有して構成されている。
【0028】
エアストーン7aは、エアチューブ7cを介してエアポンプ7bからに送り込まれる空気3を細かい泡状にして気泡8として次亜塩素酸水溶液6中に放出する石(例えば、多孔質セラミックスあるいは多孔質合成樹脂製などからなる石)である。エアストーン7aは、貯留部5の底部において次亜塩素酸水溶液6に沈んだ状態で設置される。
【0029】
エアポンプ7bは、貯留部5の外部に配置される。そして、エアポンプ7bは、図示しない吸込口から個室空間1の空気3を吸い込み、圧力を高くしてエアストーン7aに送り込む部材である。
【0030】
エアチューブ7cは、エアストーン7aとエアポンプ7bとの間を連通接続し、エアポンプ7bから吐出された空気3をエアストーン7aまで流通させるための部材である。エアチューブ7cは、貯留部5の側壁を貫通して設置される。
【0031】
空気供給部7は、以上のように構成される。
【0032】
そして、空気供給部7では、次亜塩素酸水溶液6への空気3の供給量、及び、発生させる気泡8の大きさ(径)を制御するによって、空気放出部9から個室空間1の放出される空気4に含ませる次亜塩素酸(次亜塩素酸ガス)の量を調整することができる。
【0033】
具体的には、空気供給部7では、次亜塩素酸水溶液6への空気3の供給量が増加すれば、それに応じて気泡8の発生量(発生数)が多くなり、空気放出部9から放出する空気4に含ませる次亜塩素酸を増加させることができる。また、空気供給部7では、次亜塩素酸水溶液6に放出する気泡8の大きさ(径)を小さくすることで、浮上する際の気泡8の上昇速度を低下させて次亜塩素酸水溶液6と気泡8との間の接触時間を増加させることができる。さらに、気泡8の大きさ(径)が大きい場合と比較して、次亜塩素酸水溶液6と液中を流通する気泡8との間の接触面積を増加させることができる。これらの結果、次亜塩素酸水溶液6を流通する気泡8が、浮上する過程で気泡8内に取り込む次亜塩素酸の量が増加し、空気放出部9から放出する空気4に含ませる次亜塩素酸を増加させることができる。
【0034】
ここで、空気供給部7による次亜塩素酸水溶液6への空気3の供給量は、エアポンプ7bの空気の吐出量によって制御することができる。また、気泡8の大きさ(径)は、エアストーン7aの細孔の大きさ(及びエアポンプ7bの空気の吐出量)によって制御することができる。これらを踏まえ、本実施の形態では、空気供給部7による次亜塩素酸水溶液6への空気3の供給量を0.1m/h程度とし、エアストーン7aにおいて発生させる気泡8の大きさ(径)を1mm~2mm程度としている。
【0035】
気泡8は、空気供給部7(エアストーン7a)により個室空間1から吸い込まれた空気3が泡状に微細化された空気であり、次亜塩素酸水溶液6によって空気が閉じ込められた状態となっている。空気供給部7から放出された気泡8は、次亜塩素酸水溶液6に含まれる次亜塩素酸(及び水分)を内部の空気に取り込みながら浮上する。その後、気泡8は、次亜塩素酸水溶液6の液面まで浮上すると弾けてなくなる。そして、気泡8内の空気は、空気内に含まれていた次亜塩素酸(及び水分)とともに、内部空間5a内の空気と混合される。その後、内部空間5a内の空気(次亜塩素酸を含む空気)は、空気放出部9から空気4として個室空間1に放出される。このことから、気泡8が次亜塩素酸を含む空気4として放出されるとも言える。
【0036】
空気放出部9は、貯留部5からの次亜塩素酸を含む空気(内部空間5a内の空気)を、放出口9aから個室空間1に空気4として放出する部材である。空気放出部9は、貯留部5の上面に設置される。より詳細には、空気放出部9は、放出口9aと、風路9bと、エリミネータ10とを有している。
【0037】
放出口9aは、貯留部5の内部空間5a内の空気(次亜塩素酸を含む空気)を空気4として個室空間1に放出するスリット状の開口である。放出口9aは、例えば、除菌装置2が設置される壁面とは反対側の方向に空気4を吹き出すように設けられる(図1参照)。
【0038】
風路9bは、放出口9aと貯留部5の上面に設けられた開口部とを連通接続するように構成される。
【0039】
エリミネータ10は、貯留部5内において気泡8が液面で弾けることで生じる水滴などを取り除く部材である。エリミネータ10は、空気が流通可能な多孔体であり、貯留部5の上面に設けられた開口部を塞ぐように、風路9b(貯留部5側の風路9b)上に設置される。なお、エリミネータ10は、エリミネータ10を通過する空気に含まれる水滴を捕集するので、水滴除去器とも言える。これにより、除菌装置2では、空気放出部9から水滴が個室空間1に放出されることを防ぐことができる。
【0040】
水供給部11は、外部(個室空間1)の空気3に含まれる水分を冷却し、貯留部5内の次亜塩素酸水溶液6に結露水12として供給する部材である。水供給部11は、貯留部5の外側に設置され、内部空間5aを構成する容器の側壁に設けられた導入口を介して貯留部5内に結露水12を導入するように構成される。
【0041】
具体的には、水供給部11は、図3の(a)及び(b)に示す通り、ペルチェ素子11a、ヒートシンク11b1、ヒートシンク11b2、放熱ファン11c、及びガイド11dを有して構成される。
【0042】
ペルチェ素子11aは、ペルチェ効果を用いた板状の半導体熱電素子の一種(電子部品)である。ペルチェ素子11aは、ある方向に直流電流を流すことで、素子の一方の面で吸熱(冷却)し、他方の面で放熱(加熱)する。そして、直流電流の向きを変えると、ペルチェ素子11aの吸熱面(冷却面)と放熱面(加熱面)とが入れ替わる。本実施の形態では、ペルチェ素子11aとして、幅40mm、高さ40mmの寸法を有する素子を用いている。
【0043】
ヒートシンク11b1及びヒートシンク11b2は、ペルチェ素子11aのそれぞれの面に接着され、ペルチェ素子11aによる吸熱及び放熱を促進する部材である。ペルチェ素子11aの吸熱面と放熱面とは、定期的に変化させるため、ヒートシンク11b1及びヒートシンク11b2は、吸熱と放熱の双方を行うことになる。本実施の形態では、ヒートシンク11b1及びヒートシンク11b2として、剣山状に配置された複数の放熱フィンを有して構成され、幅40mm、奥行き20mm、高さ40mmの外径寸法を有するアルミニウム製のヒートシンクを用いた。
【0044】
放熱ファン11cは、放熱側となるヒートシンク11b1またはヒートシンク11b2に風を送り、冷却することで、ペルチェ素子11aによる放熱を促進するための部材である。このため、放熱ファン11cは、ヒートシンク11b1及びヒートシンク11b2の双方に跨って送風できるように配置される。
【0045】
ガイド11dは、ヒートシンク11b1またはヒートシンク11b2から滴下する結露水12を貯留部5に誘導する水路を構成する部材である。ガイド11dは、図3の(b)に示す通り、ヒートシンク11b1及びヒートシンク11b2の鉛直方向下方に跨って配置され、貯留部5の側壁に設けられた導入口(図示せず)と接続される。
【0046】
次に、水供給部11の動作の流れを説明する。
【0047】
水供給部11では、ペルチェ素子11aにある方向に直流電流を流すことで、ヒートシンク11b1で吸熱を行い、ヒートシンク11b2で放熱を行う。これにより、ヒートシンク11b1をマイナス5℃程度に、ヒートシンク11b2を45℃程度にする。このようにすることで、吸熱側であるヒートシンク11b1の近傍の空気3の温度が氷点下まで低下し、空気3中の水分が結露及び凝固する。また、放熱ファン11cにより、ヒートシンク11b2(及びヒートシンク11b1)に風を送る。これにより、放熱側であるヒートシンク11b2が冷却され、ペルチェ素子11aによる放熱が促進される。そして、ある程度の時間が経つと、吸熱側であるヒートシンク11b1は、ある程度の量の凝固した結露水が付着した状態になる。
【0048】
所定の時間経過後、ペルチェ素子11aに流れる直流電流の方向を反転させることで、ペルチェ素子11aの吸熱面と放熱面を反転させる。これにより、ヒートシンク11b1では、放熱が行われ、ヒートシンク11b1の温度が45℃程度になる。一方、ヒートシンク11b2では、吸熱が行われ、ヒートシンク11b2の温度がマイナス5℃程度になる。その結果、ヒートシンク11b1に付着した凝固した結露水12が融解し、その直下に滴下する。一方、ヒートシンク11b2では、空気3中の水分が結露及び凝固する。その後、一定時間毎にペルチェ素子11aの吸熱面と放熱面を反転させることで、上記のように、ヒートシンク11b1及びヒートシンク11b2で結露・凝固・融解が繰り返され、結露水12を滴下させることができる。そして、滴下した結露水12は、ガイド11dによって受けられ、貯留部5に誘導及び供給される。
【0049】
このように動作することで、水供給部11は、結露水12を貯留部5に供給することができる。ここで、空気3の温度を、例えばマイナス5℃などの氷点を下回る低温にすることで、凝固した結露水12を融解させる必要はあるが、低湿な空気からも結露水を取得することができる。
【0050】
次に、塩化物供給部13及び電極14について説明する。
【0051】
塩化物供給部13及び電極14は、次亜塩素酸水調整部20を構成し、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度に調整する。具体的には、次亜塩素酸水調整部20では、塩化物供給部13が次亜塩素酸水溶液6に所定量の塩化物水溶液15を供給し、電極14が供給された塩化物水溶液15を電気分解して次亜塩素酸を生成することで、次亜塩素酸水溶液6の濃度を調整している。
【0052】
塩化物供給部13は、塩化物水溶液15を貯留部5に供給する部材である。塩化物供給部13は、貯留部5の外側に設置され、内部空間5aを構成する容器の側壁に設けられた導入口を介して貯留部5内に塩化物水溶液15を導入するように構成される。より詳細には、塩化物供給部13は、塩化物タンク13a、塩化物ポンプ13b、及びチューブ13cを有して構成されている。
【0053】
塩化物タンク13aは、内部に予め指定された所定濃度の塩化物水溶液15を貯留する容器である。塩化物タンク13aは、塩化物ポンプ13bの動作によりチューブ13cを介して貯留部5に塩化物水溶液15を供給可能になっている。
【0054】
塩化物水溶液15は、電気分解によって次亜塩素酸水を生成可能な電解質であればよく、少量でも塩化物イオンを含んで入れば特に制限はなく、例えば、溶質として塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどを溶解した水溶液が挙げられる。また、水溶液のpHを調整するためにリン酸カリウムなどを加えてもよい。本実施の形態では、塩化物水溶液15として、塩化ナトリウム水溶液(塩水)にリン酸カリウムを加えた水溶液を使用している。また、塩化物水溶液15は、塩化ナトリウムが高濃度であることが望ましい。高濃度の塩化物水溶液15を使用することで、次亜塩素酸水溶液6の水量を大きく変化させることなく、次亜塩素酸水溶液6に塩化物(塩化物水溶液)を供給することができる。
【0055】
塩化物ポンプ13bは、制御部(図示せず)からの出力信号に応じて、塩化物タンク13aから貯留部5に塩化物水溶液15を送出させる部材である。
【0056】
チューブ13cは、塩化物タンク13aと貯留部5(内部空間5aを構成する容器の側壁に設けられた導入口)とを、塩化物ポンプ13bを介して接続し、塩化物タンク13aから貯留部5にかけて塩化物水溶液15を流通させるための部材である。
【0057】
塩化物供給部13は、以上のように構成される。
【0058】
そして、塩化物供給部13は、塩化物ポンプ13bを動作させることで、チューブ13cを通じて所定量の塩化物水溶液15を塩化物タンク13aから貯留部5に供給する。これにより、貯留部5に貯留されている次亜塩素酸水溶液6に対して塩化物水溶液15が混合されることになる。
【0059】
電極14は、塩化物イオンを含む水溶液である塩化物水溶液15を電気分解するための部材である。電極14は、例えば、貯留部5の底部において次亜塩素酸水溶液6に沈んだ状態で設置される。電極14は、陽極と陰極との一対からなり、導電性基体の表面に触媒被膜を有して構成される。導電性基体には、例えば、チタン、タンタル、ニッケル、ステンレス等が使用できるが、次亜塩素酸に対する耐食性が大きいチタンが好ましい。また、触媒被膜に含まれる触媒には、例えば、イリジウム、白金族金属等が使用される。これにより、電極14での電気分解反応を活性化させることができる。
【0060】
電極14では、一対の電極間に電流を流すことで塩化物(塩化物水溶液15)が電気分解し、次亜塩素酸が生成される。この結果、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6と塩化物水溶液15の混合水溶液は、所定の濃度を有する次亜塩素酸水溶液6として調整される。ここで、電極14への通電時間は、例えば、貯留部5に供給された塩化物の量に基づいて予め実験的に求められた時間に設定される。
【0061】
次に、次亜塩素酸水調整部20の動作の流れを説明する。
【0062】
次亜塩素酸水調整部20では、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度に調整するために、一定時間ごとに次亜塩素酸水溶液6に次亜塩素酸を供給する。つまり、詳細は後述するが、次亜塩素酸水調整部20では、塩化物供給部13による既定量の塩化物水溶液15の供給と、電極14による電気分解を一定時間ごとに実行する。
【0063】
次亜塩素酸水調整部20では、まず、一定時間が経過すると、塩化物ポンプ13bにより塩化物タンク13aから貯留部5に既定量の塩化物水溶液15を送り込み、次亜塩素酸水溶液6に対して塩化物水溶液15を供給して混合する。そして、次亜塩素酸水調整部20では、電極14に電流を流し、次亜塩素酸水溶液6に混合された塩化物、つまり塩化ナトリウムを電気分解し、塩化物水溶液15として供給された塩化ナトリウムの量に対応した次亜塩素酸を生成する。これにより、次亜塩素酸水溶液6に対して次亜塩素酸が供給されたのと同等の状態となる。つまり、次亜塩素酸水調整部20によって、次亜塩素酸水溶液6の濃度(次亜塩素酸の濃度)が調整されたことになる。この際、次亜塩素酸水調整部20の動作において、次亜塩素酸水溶液6に供給する塩化物水溶液15の量(供給量)を調整することで、次亜塩素酸水溶液6に供給する次亜塩素酸の量を制御できる。なお、塩化ナトリウムを電気分解することで、次亜塩素酸水溶液6のpHは上昇するが、塩化物水溶液15に含まれるリン酸カリウムによって中和され、所定のpHに調整されるようにしている。
【0064】
次に、水位センサ16(満水センサ16a、渇水センサ16b)について説明する。
【0065】
水位センサ16は、貯留部5の内部に貯留する次亜塩素酸水溶液6の水位を検出する部材であり、満水センサ16aと渇水センサ16bとを有している。水位センサ16のそれぞれは、貯留部5内の所定の高さの位置に設置されている。
【0066】
満水センサ16aは、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6の水位が満水状態(満水水位)であることを検出する。一方、渇水センサ16bは、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6の水位が渇水状態(渇水水位)であることを検出する。なお、本実施の形態では、渇水水位は、満水水位での次亜塩素酸水溶液6の容量(満水時の容量)1Lから30%減少した700mLとなる水位に設定している。
【0067】
そして、水位センサ16が検出した水位情報をもとにして、次亜塩素酸水調整部20による貯留部5への次亜塩素酸の供給が制御される。検出した水位情報は、制御部(図示せず)の入力信号として用いられる。
【0068】
以上のように、除菌装置2は各部材によって構成される。
【0069】
次に、図4を参照して、除菌装置2の運転動作について説明する。図4は、除菌装置2の運転フローを示す図である。
【0070】
除菌装置2は、図4に示す通り、空気供給部7、水供給部11、及び次亜塩素酸水調整部20(塩化物供給部13、電極14)を停止した停止状態と、空気供給部7が動作した運転状態とを備える。ここで、図4における矢印R1は、停止状態から運転状態への遷移を表す。また、図4における矢印R4は、運転状態から停止状態への遷移を表す。
【0071】
停止状態(ステップS01)にすることで、除菌装置2は、次亜塩素酸水溶液6からの次亜塩素酸の気化が抑制され、次亜塩素酸の放出量を抑制することができる。ただし、次亜塩素酸は、次亜塩素酸水溶液6から気泡8へ気化するだけでなく、次亜塩素酸水溶液6から内部空間5aへも液面から直接気化するため、停止状態においても、多少の次亜塩素酸の気化及び放出が生じる。
【0072】
一方、運転状態にすることで、除菌装置2は、個室空間1に次亜塩素酸を放出することができる。運転状態においては、次亜塩素酸水溶液6から次亜塩素酸及び水が気化するため、次亜塩素酸水溶液6の水量及び水位と、次亜塩素酸水溶液6が含有する次亜塩素酸の量が低下する。
【0073】
より詳細には、運転状態において、除菌装置2は、基本的に標準運転(ステップS02)を行う。ここで、標準運転とは、空気供給部7のみを動作させ、次亜塩素酸を放出する運転である。つまり、標準運転では、水供給部11、塩化物供給部13、及び電極14は、動作させない。したがって、標準運転では、空気供給部7のバブリングによって次亜塩素酸水溶液6に気泡8が供給され、上述した通り、空気放出部9から次亜塩素酸を含む空気4として個室空間1に放出される。
【0074】
その後、ステップS02において標準運転が連続的に実行され、次亜塩素酸水溶液6の水位が満水時の水位L1から減少していき、渇水時の水位L2となったことを渇水センサ16b(図2参照)が検知する(ステップS03)と、除菌装置2は、水供給部11を動作させ、給水運転として次亜塩素酸水溶液6に結露水12を供給させる(ステップS04)。これにより、次亜塩素酸水溶液6の水位L3が上昇していく。そして、次亜塩素酸水溶液6の水位が満水時の水位L4(水位L1と同じ水位)となったことを満水センサ16aが検知する(ステップS05)と、除菌装置2は、水供給部11の動作を停止させ、標準運転に戻る(ステップS02)。
【0075】
このようにすることで、除菌装置2は、貯留部5に貯留する次亜塩素酸水溶液6の水量を一定の範囲内に維持することができる。図4における矢印R2は、標準運転、渇水センサ16bによる水位L2の検知、水供給部11による結露水12の給水、満水センサ16aによる水位L4の検知、標準運転への復帰、の流れを表す。なお、矢印R2で表される一連の流れにおいて、空気供給部7の動作及びそれに伴う次亜塩素酸を含む空気4の放出は継続される。
【0076】
一方、除菌装置2は、一定時間が経過する毎に、次亜塩素酸水調整部20を動作させ、塩化物供給部13による次亜塩素酸水溶液6への塩化物水溶液15の供給と、電極14による供給された塩化物の電気分解を行う。より詳細には、ステップS02において標準運転が連続的に実行され、一定時間(例えば、1時間)が経過する(ステップS06)と、除菌装置2は、塩化物供給部13を動作させ、塩化物導入として次亜塩素酸水溶液6に所定量の塩化物水溶液15を供給させる(ステップS07)。そして、除菌装置2は、電極14に電流を流し、次亜塩素酸水溶液6に混合された塩化ナトリウムを電気分解(電解とも言う)し、塩化物水溶液15として供給された塩化ナトリウムの量に対応した次亜塩素酸を生成する(ステップS08)。これにより、次亜塩素酸水溶液6は、水溶液中に次亜塩素酸が供給され、所定の濃度に調整された状態となる。ここで、次亜塩素酸の供給量は、予め実験的に見積もられた量であり、一定時間の間に次亜塩素酸水溶液6から減少する次亜塩素酸の量と同等とする。そして、次亜塩素酸水調整部20による次亜塩素酸の供給が完了次第、除菌装置2は、次亜塩素酸水調整部20の動作を停止し、標準運転に戻る(ステップS02)。
【0077】
このようにすることで、次亜塩素酸水溶液6に含有される次亜塩素酸の量を一定の範囲内に保つことができる。また、次亜塩素酸水溶液6の水量は、一定の範囲内で制御されるため、次亜塩素酸水溶液6の濃度を一定の範囲内に保つことができる。図4における矢印R3は、標準運転、一定時間経過、塩化物供給部13による塩化物水溶液15の供給、電極14による電気分解、標準運転への復帰、の流れを表す。なお、矢印R3で表される一連の流れにおいて、空気供給部7の動作及び次亜塩素酸の放出は継続される。
【0078】
以上のようにして、除菌装置2を運転することで、除菌装置2は、次亜塩素酸水溶液6の水量と次亜塩素酸水溶液6が含有する次亜塩素酸の量を一定の範囲内に保ちつつ、連続して次亜塩素酸を個室空間1に放出することができる。
【0079】
以上、本実施の形態1に係る除菌装置2によれば、以下の効果を享受することができる。
【0080】
(1)除菌装置2は、内部に所定の濃度の次亜塩素酸水溶液6を貯留する貯留部5と、外部(個室空間1)の空気3を吸い込み、次亜塩素酸水溶液6に気泡8として供給する空気供給部7と、次亜塩素酸水溶液6内を浮上した気泡8を、次亜塩素酸ガスを含む空気4として外部(個室空間1)に放出する空気放出部9と、外部の空気3に含まれる水分を冷却し、貯留部5に結露水12として供給する水供給部11と、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度に調整する次亜塩素酸水調整部20(塩化物供給部13、電極14)とを備える。
【0081】
これにより、空気供給部7により次亜塩素酸水溶液6中に少量の空気3を気泡8として流通させると、少量の気泡8(流通空気)に多量の次亜塩素酸ガスを含ませて空気放出部9から外部(個室空間1)に放出することができる。このとき、次亜塩素酸水溶液6への気泡8(流通空気)を少量に抑えられるため、次亜塩素酸水溶液6から気泡8(流通空気)中に気化して外部(個室空間1)に放出される水の量が抑制され、貯留部5への必要な給水量を低減することができる。その結果、水供給部11(水供給部11による貯留部5への結露水12の供給)によって必要な給水量を確保することが可能となり、自動給水のために外部の給水設備との間で接続する必要がなくなる。つまり、除菌装置2は、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出することができる。
【0082】
(2)除菌装置2では、次亜塩素酸水調整部20を、塩化物水溶液15を貯留する塩化物タンク13aと、塩化物タンク13aから貯留部5に塩化物水溶液15を送出する塩化物ポンプ13bと、塩化物ポンプ13bから送出された塩化物水溶液15を電気分解することで次亜塩素酸を生成する電極14とを有して構成した。これにより、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6に塩化物水溶液15を混合して電気分解することにより次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度に容易に調整することができる。
【0083】
(3)除菌装置2では、水供給部11を、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6が規定量減少した場合に、貯留部5に結露水12を供給するようにした。これにより、貯留部5の次亜塩素酸水溶液6の量を所定の範囲内に保つことができる。その結果、所定の条件下で次亜塩素酸ガスを生成でき、除菌装置2による安定した次亜塩素酸の放出が可能となる。
【0084】
(4)除菌装置2では、貯留部5に対して、ペルチェ素子11aによる吸熱と放熱を繰り返すことによって生成される結露水12を供給するように構成した。このように構成したことで、結露水12には、水道水に含まれるようなスケール成分(カルシウム分、マグネシウム分)が含まれないため、連続運転に伴うスケール成分の蓄積が生じず、貯留部5からの排水設備を不要とすることができる。
【0085】
(5)除菌装置2では、自動給水のための外部の給水設備及び貯留部5からの排水設備を接続する必要がなくなるので、装置を小型化することができる。
【0086】
(6)除菌装置2では、次亜塩素酸水調整部20を、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を一定時間ごとに所定の濃度に調整するようにした。これにより、次亜塩素酸の放出により低下した次亜塩素酸水溶液6に含まれる次亜塩素酸の濃度を所定の範囲内に保つことができる。その結果、所定の条件下で次亜塩素酸ガスを生成でき、除菌装置2による安定した次亜塩素酸の放出が可能となる。
【0087】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る除菌装置2aは、空気放出部9の放出口9aを開閉可能に構成された開閉部21を備える点で実施の形態1と異なる。これ以外の除菌装置2aの構成は、実施の形態1に係る除菌装置2と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0088】
図4及び図5を参照して、本実施の形態2に係る除菌装置2aについて説明する。図5は、本発明の実施の形態2に係る除菌装置2aの構成を示す概略側面図である。
【0089】
図5に示す通り、除菌装置2aは、空気放出部9の放出口9aの開口を開閉可能に構成された開閉部21を備える。
【0090】
開閉部21は、放出口9aを閉塞するための蓋である。開閉部21は、放出口9aに取り付けられ、モータ等によって駆動可能となっている。より詳細には、開閉部21は、放出口9aの面に対し、同形状の少なくとも1つ以上の平板で形成される。開閉部21は、例えば片側の1辺を軸にして回転自在とし、ステッピングモータ(不図示)を軸に連結して、ステッピングモータの回転量によって開閉可能となっている。そして、開閉部21は、放出口9aが閉塞され、空気放出部9から個室空間1に空気4が流出しない閉塞状態と、放出口9aが開放され、空気放出部9から個室空間1に空気4が流出可能な開放状態とを切り替え可能となっている。なお、開閉部21は、制御部(図示せず)と無線又は有線で接続されている。
【0091】
具体的には、開閉部21は、制御部からの制御信号に基づいて、除菌装置2aの停止状態(図4のステップS01)において閉塞状態に切り替えられる。つまり、開閉部21は、空気供給部7による気泡8の供給を停止した場合に、放出口9aを閉塞する。これにより、除菌装置2aから個室空間1への次亜塩素酸の放出を防ぐことができる。一方、開閉部21は、除菌装置2aの運転状態(図4のステップS02~ステップS08)において開放状態に切り替えられる。つまり、開閉部21は、空気供給部7による気泡8の供給を開始した場合に、放出口9aを開放する。これにより、除菌装置2aから個室空間1に向けて次亜塩素酸を含む空気4の放出を行うことができる。
【0092】
以上、本実施の形態2に係る除菌装置2aによれば、以下の効果を享受することができる。
【0093】
(7)除菌装置2aでは、空気放出部9の放出口9aを開閉可能に構成された開閉部21を備える。そして、開閉部21は、空気供給部7による気泡8の供給が停止した場合に、放出口9aを閉塞するようにした。これにより、空気供給部7による気泡8の供給が停止した際に、次亜塩素酸水溶液6の液面から気化した次亜塩素酸が空気放出部9の放出口9aから外部(個室空間1)に放出されることを抑制できる。つまり、除菌装置2から不必要な次亜塩素酸が放出されない状態とすることができる。この結果、除菌装置2が運転を停止している際に、不必要に次亜塩素酸を消費することを抑制することができる。
【0094】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る除菌装置2bは、次亜塩素酸水調整部20に代えて次亜塩素酸水供給部23を備える点で実施の形態1と異なる。これ以外の除菌装置2bの構成は、実施の形態1に係る除菌装置2と同様である。以下、実施の形態1で説明済みの内容は再度の説明を適宜省略し、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0095】
図6を参照して、本実施の形態3に係る除菌装置2bについて説明する。図6は、本発明の実施の形態3に係る除菌装置2bの構成を示す概略側面図である。
【0096】
図6に示す通り、除菌装置2bは、次亜塩素酸水調整部20に代えて次亜塩素酸水供給部23を備える。なお、次亜塩素酸水供給部23は、次亜塩素酸水調整部とも言える。
【0097】
次亜塩素酸水供給部23は、次亜塩素酸水原液15aを貯留部5に供給する部材である。次亜塩素酸水供給部23は、所定量(例えば、0.5mL)の次亜塩素酸水原液15aを供給することで、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度以上となるように調整する。ここで、次亜塩素酸水原液15aは、次亜塩素酸水溶液6の所定の濃度として設定される濃度よりも高濃度の次亜塩素酸水である。
【0098】
次亜塩素酸水供給部23は、貯留部5の外側に設置され、内部空間5aを構成する容器の側壁に設けられた導入口を介して貯留部5内に次亜塩素酸水原液15aを導入するように構成される。より詳細には、次亜塩素酸水供給部23は、次亜塩素酸水タンク23a、次亜塩素酸水ポンプ23b、及びチューブ23cを有して構成されている。
【0099】
次亜塩素酸水タンク23aは、内部に予め指定された高濃度の次亜塩素酸水原液15aを貯留する容器である。次亜塩素酸水タンク23aは、次亜塩素酸水ポンプ23bの動作によりチューブ23cを介して貯留部5に次亜塩素酸水原液15aを供給可能になっている。
【0100】
次亜塩素酸水原液15aは、塩水(塩化ナトリウム水溶液)の電気分解によって予め生成された次亜塩素酸水である。また、次亜塩素酸水原液15aは、次亜塩素酸水が高濃度であることが望ましい。高濃度の次亜塩素酸水原液15aを使用することで、次亜塩素酸水溶液6の水量を大きく変化させることなく、次亜塩素酸水溶液6に次亜塩素酸水を供給することができる。
【0101】
次亜塩素酸水ポンプ23bは、制御部(図示せず)からの出力信号に応じて、次亜塩素酸水タンク23aから貯留部5に次亜塩素酸水原液15aを送出させる部材である。
【0102】
チューブ23cは、次亜塩素酸水タンク23aと貯留部5(内部空間5aを構成する容器の側壁に設けられた導入口)とを、次亜塩素酸水ポンプ23bを介して接続し、次亜塩素酸水タンク23aから貯留部5にかけて次亜塩素酸水原液15aを流通させるための部材である。
【0103】
次亜塩素酸水供給部23は、以上のように構成される。
【0104】
そして、次亜塩素酸水供給部23は、次亜塩素酸水ポンプ23bを動作させることで、チューブ23cを通じて所定量の次亜塩素酸水原液15aを次亜塩素酸水タンク23aから貯留部5に供給する。これにより、貯留部5に貯留されている次亜塩素酸水溶液6に対して次亜塩素酸水原液15aが混合されることになる。
【0105】
次に、図7を参照して、除菌装置2bの運転動作について説明する。図7は、除菌装置2bの運転フローを示す図である。
【0106】
除菌装置2bは、図7に示す通り、空気供給部7、水供給部11、及び次亜塩素酸水供給部23を停止した停止状態と、空気供給部7が動作した運転状態とを備える。ここで、図7における矢印R1は、停止状態から運転状態への遷移を表す。また、図7における矢印R4は、運転状態から停止状態への遷移を表す。
【0107】
停止状態(ステップS11)にすることで、除菌装置2bは、次亜塩素酸水溶液6からの次亜塩素酸の気化が抑制され、次亜塩素酸の放出量を抑制することができる。ただし、次亜塩素酸は、次亜塩素酸水溶液6から気泡8へ気化するだけでなく、次亜塩素酸水溶液6から内部空間5aへも液面から直接気化するため、停止状態においても、多少の次亜塩素酸の気化及び放出が生じる。
【0108】
一方、運転状態にすることで、除菌装置2bは、個室空間1に次亜塩素酸を放出することができる。運転状態においては、次亜塩素酸水溶液6から次亜塩素酸及び水が気化するため、次亜塩素酸水溶液6の水量及び水位と、次亜塩素酸水溶液6が含有する次亜塩素酸の量が低下する。
【0109】
より詳細には、運転状態において、除菌装置2bは、基本的に標準運転(ステップS12)を行う。ここで、標準運転とは、空気供給部7のみを動作させ、次亜塩素酸を放出する運転である。つまり、標準運転では、水供給部11及び次亜塩素酸水供給部23は、動作させない。したがって、標準運転では、空気供給部7のバブリングによって次亜塩素酸水溶液6に気泡8が供給され、上述した通り、空気放出部9から次亜塩素酸を含む空気4として個室空間1に放出される。
【0110】
その後、ステップS12において標準運転が連続的に実行され、次亜塩素酸水溶液6の水位が満水時の水位L1から減少していき、渇水時の水位L2となったことを渇水センサ16b(図6参照)が検知する(ステップS13)と、除菌装置2bは、次亜塩素酸水供給部23を動作させ、所定量の次亜塩素酸水原液15aを供給するとともに、水供給部11を動作させ、給水運転として次亜塩素酸水溶液6に結露水12を供給させる(ステップS14)。これにより、次亜塩素酸水溶液6の水位L3が上昇していく。そして、次亜塩素酸水溶液6の水位が満水時の水位L4(水位L1と同じ水位)となったことを満水センサ16aが検知する(ステップS15)と、除菌装置2bは、水供給部11の動作を停止させ、標準運転に戻る(ステップS12)。
【0111】
このようにすることで、除菌装置2bは、貯留部5に貯留する次亜塩素酸水溶液6の水量を一定の範囲内に維持することができる。図7における矢印R2は、標準運転、渇水センサ16bによる水位L2の検知、次亜塩素酸水供給部23による次亜塩素酸水原液15aの供給&水供給部11による結露水12の給水、満水センサ16aによる水位L4の検知、標準運転への復帰、の流れを表す。なお、矢印R2で表される一連の流れにおいて、空気供給部7の動作及びそれに伴う次亜塩素酸を含む空気4の放出は継続される。
【0112】
以上のようにして、除菌装置2bを運転することで、除菌装置2bは、次亜塩素酸水溶液6の水量と次亜塩素酸水溶液6が含有する次亜塩素酸の濃度を所定濃度以上に保ちつつ、連続して次亜塩素酸を個室空間1に放出することができる。
【0113】
以上、本実施の形態3に係る除菌装置2bによれば、以下の効果を享受することができる。
【0114】
(8)除菌装置2bは、内部に所定の濃度の次亜塩素酸水溶液6を貯留する貯留部5と、外部(個室空間1)の空気3を吸い込み、次亜塩素酸水溶液6に気泡8として供給する空気供給部7と、次亜塩素酸水溶液6内を浮上した気泡8を、次亜塩素酸ガスを含む空気4として外部(個室空間1)に放出する空気放出部9と、外部の空気3に含まれる水分を冷却し、貯留部5に結露水12として供給する水供給部11と、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度以上に調整する次亜塩素酸水供給部23とを備える。
【0115】
これにより、空気供給部7により次亜塩素酸水溶液6中に少量の空気3を気泡8として流通させると、少量の気泡8(流通空気)に多量の次亜塩素酸ガスを含ませて空気放出部9から外部(個室空間1)に放出することができる。このとき、次亜塩素酸水溶液6への気泡8(流通空気)を少量に抑えられるため、次亜塩素酸水溶液6から気泡8(流通空気)中に気化して外部(個室空間1)に放出される水の量が抑制され、貯留部5への必要な給水量を低減することができる。その結果、水供給部11(水供給部11による貯留部5への結露水12の供給)によって必要な給水量を確保することが可能となり、自動給水のために外部の給水設備との間で接続する必要がなくなる。つまり、除菌装置2bは、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出することができる。
【0116】
(9)除菌装置2bでは、次亜塩素酸水供給部23は、次亜塩素酸水原液15aを貯留する次亜塩素酸水タンク23aと、次亜塩素酸水タンク23aから貯留部5に次亜塩素酸水原液15aを送出する次亜塩素酸水ポンプ23bと、を有して構成した。こうした構成によれば、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6に対して、次亜塩素酸水原液15aと水供給部11から結露水12とを混合することにより次亜塩素酸水溶液6を所定の濃度以上となるように容易に調整することができる。
【0117】
(10)除菌装置2bでは、水供給部11は、貯留部5に貯留される次亜塩素酸水溶液6が規定量減少した場合に、貯留部5に対して、次亜塩素酸水供給部23による次亜塩素酸水原液15aの供給に合わせて結露水12を供給するようにした。これにより、貯留部5の次亜塩素酸水溶液6の量を所定の範囲内に保つことができる。その結果、所定の条件下で次亜塩素酸ガスを生成でき、除菌装置2bによる安定した次亜塩素酸の放出が可能となる。
【0118】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0119】
本実施の形態に係る除菌装置2では、水供給部11として、ペルチェ素子11aを使用したが、これに限られない。例えば、ヒートポンプ装置を水供給部11として使用してもよい。このようにすることで、除菌装置自体は大型化するものの、より多くの結露水12を小さな消費電力で取得できるという効果を享受することができる。
【0120】
また、本実施の形態に係る除菌装置2では、塩化物を電気分解することで次亜塩素酸水溶液6に次亜塩素酸を供給したが、これに限られない。例えば、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなどの有機系塩素薬剤を次亜塩素酸水溶液6に供給することで、次亜塩素酸水溶液6に次亜塩素酸を供給するようにしてもよい。こうした構成によれば、電極14を用いることなく次亜塩素酸を供給できるので、装置の低消費電力化を図ることができる。 また、本実施の形態に係る除菌装置2では、次亜塩素酸水溶液6の濃度を計測するセンサを備え、センサの出力に応じて次亜塩素酸水調整部20を制御するようにしてもよい。具体的には、センサの出力する次亜塩素酸水溶液6の濃度が規定値を下回ると、次亜塩素酸水調整部20を動作させ、センサの出力する次亜塩素酸水溶液6の濃度が規定値となったら次亜塩素酸水調整部20を停止するように制御する。これにより、次亜塩素酸水溶液6の濃度をより確実に一定の範囲内に制御することができる。
【0121】
また、本実施の形態に係る除菌装置2では、ステップS04において、給水運転として水供給部11から結露水12のみを貯留部5に供給するようにしたが、これに限られない。例えば、貯留部5に供給された結露水12が、次亜塩素酸を含んだ供給水に相当する状態となるようにしてもよい。具体的には、水供給部11による結露水12の供給を行う場合に、貯留部5に供給される水量(水位L1と水位L2の差分の水量)の結露水12を所定の濃度の次亜塩素酸水溶液にするのに必要な塩化物水溶液15を塩化物供給部13から供給する。そして、電極14によって、塩化物供給部13から供給した塩化物水溶液15を次亜塩素酸にするのに必要な時間、電気分解を実行する。これにより、ステップS05において、次亜塩素酸水溶液6の水位が満水時の水位L4となった際には、所定の濃度の次亜塩素酸を含んだ供給水が供給されたことになる。つまり、ステップS02の標準運転に戻った際には、所定の濃度範囲となった次亜塩素酸水溶液6とすることができる。したがって、上記のように制御した除菌装置2では、個室空間1に対して、安定した濃度の次亜塩素酸を含む空気4を放出することができる。
【0122】
また、本実施の形態に係る除菌装置2では、水供給部11は、外部(個室空間1)の空気3に含まれる水分を冷却し、貯留部5内の次亜塩素酸水溶液6に結露水12として供給するように構成したが、これに限られない。例えば、水供給部11を貯留部5の内部空間5aに設け、内部空間5a内の空気に含まれる水分を冷却し、結露水12として供給するようにしてもよい。このようにしても上述した効果を享受することができる。
【0123】
また、本実施の形態に係る除菌装置2では、次亜塩素酸水溶液6に気泡8を流通させ、次亜塩素酸を含む空気4として放出したが、これに限られない。変形例では、例えば、貯留部5に貯留する溶液として、クロラス酸水、オゾン水または過酸化水素水等の除菌成分を含む薬液を用い、気泡8が除菌成分を含む薬液を流通する過程で、気泡8に塩素ガス、オゾンガスまたは過酸化水素ガス等の除菌成分を含むガスを含ませ、空気4として放出するようにしてもよい。このようにしても、個室空間1の除菌をおこなうことができる。
【0124】
具体的には、変形例に係る除菌装置は、内部に所定の濃度の除菌成分を含む薬液を貯留する貯留部5と、外部の空気3を吸い込み、除菌成分を含む薬液に気泡8として供給する空気供給部7と、除菌成分を含む薬液内を浮上した気泡8を、除菌成分を含むガスを含む空気4として外部に放出する空気放出部9と、空気に含まれる水分を冷却し、貯留部5に結露水12として供給する水供給部11と、貯留部5に貯留される除菌成分を含む薬液を所定の濃度に調整する薬液濃度調整部と、を備える。ここで、薬液濃度調整部は、貯留部5に貯留される除菌成分を含む薬液に対して、水供給部11からの結露水12の供給量に合わせて、比較的高濃度の除菌成分を含む薬液を供給する。
【0125】
これにより、空気供給部7により除菌成分を含む薬液中に少量の空気3を気泡8として流通させると、少量の気泡8(流通空気)に多量の除菌成分を含むガスを含ませて空気放出部9から外部(個室空間1)に放出することができる。このとき、除菌成分を含む薬液への気泡8(流通空気)を少量に抑えられるため、除菌成分を含む薬液から気泡8(流通空気)中に気化して外部(個室空間1)に放出される水の量が抑制され、貯留部5への必要な給水量を低減することができる。その結果、水供給部11(水供給部11による貯留部5への結露水12の供給)によって必要な給水量を確保することが可能となり、自動給水のために外部の給水設備との間で接続する必要がなくなる。つまり、除菌装置は、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に除菌成分を含むガスを放出することができる。
【0126】
また、本実施の形態に係る除菌装置2bでは、次亜塩素酸水原液15aは、塩水(塩化ナトリウム水溶液)の電気分解によって予め生成された次亜塩素酸水としたが、これに限られない。例えば、塩酸の電気分解によって生成された次亜塩素酸水あるいはジクロロイソシアヌル酸ナトリウムを水に溶かして生成された次亜塩素酸水などを用いてもよい。このようにしても上述した効果を享受することができる。
【0127】
また、本実施の形態に係る除菌装置2bでは、貯留部5内の水位が渇水時の水位L2となったことを渇水センサ16bが検知すると、次亜塩素酸水供給部23を動作させ、所定量の次亜塩素酸水原液15aを供給するとしたが、渇水検知の際に毎回、次亜塩素酸水原液15aを供給しなくてもよい。例えば、前回の次亜塩素酸水原液15a供給から所定時間経過しており、かつ、渇水センサ16bが渇水時の水位L2となったことを検知した際に所定量の次亜塩素酸水原液15aを供給するとしてもよい。このようにすることで、所定時間に貯留部5に供給される次亜塩素酸の量をコントロールでき、所定時間あたりに対象空間に放出される次亜塩素酸の量をコントロールすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本実施の形態に係る除菌装置では、装置を大型化することなく自動給水を可能とし、対象空間に次亜塩素酸を放出することができるので、個室空間などを除菌する装置として有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 個室空間
2 除菌装置
2a 除菌装置
2b 除菌装置
3 空気
4 空気
5 貯留部
5a 内部空間
6 次亜塩素酸水溶液
7 空気供給部
7a エアストーン
7b エアポンプ
7c エアチューブ
8 気泡
9 空気放出部
9a 放出口
10 エリミネータ
11 水供給部
11a ペルチェ素子
11b1 ヒートシンク
11b2 ヒートシンク
11c 放熱ファン
11d ガイド
12 結露水
13 塩化物供給部
13a 塩化物タンク
13b 塩化物ポンプ
13c チューブ
14 電極
15 塩化物水溶液
15a 次亜塩素酸水原液
16 水位センサ
16a 満水センサ
16b 渇水センサ
20 次亜塩素酸水調整部
21 開閉部
23 次亜塩素酸水供給部
23a 次亜塩素酸水タンク
23b 次亜塩素酸水ポンプ
23c チューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7