(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190671
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】コイル装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20221219BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20221219BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20221219BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01F27/24 Q
H01F27/24 H
H01F27/24 P
H01F30/10 J
H01F30/10 S
H01F27/32 170
H01F27/28 176
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079645
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2021099050
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】森田 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 正明
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 勝
【テーマコード(参考)】
5E043
5E044
【Fターム(参考)】
5E043DA02
5E044AC01
5E044AD07
5E044CA02
5E044CA08
5E044CA09
(57)【要約】
【課題】コアの破損を有効に防止することが可能なコイル装置を提供する。
【解決手段】コイル装置10は、Z軸方向に沿って配置され、接合用樹脂200を介して互いに接合される上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bと、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部とは反対側で、Z軸方向に垂直な面に沿って、下部コア40b,40bと接触するケース60の底板62と、を有する。接合用樹脂200のヤング率は、90MPa以下である。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸方向に沿って配置され、接合用樹脂を介して互いに接合される第1コアおよび第2コアと、
前記第1コアと前記第2コアとの接合部とは反対側で、前記第1軸方向に垂直な面に沿って、前記第2コアと接触する板状部材と、を有し、
前記接合用樹脂のヤング率は90MPa以下であるコイル装置。
【請求項2】
前記接合用樹脂のガラス転移点は0℃以下である請求項1に記載のコイル装置。
【請求項3】
前記板状部材は、前記第1コアおよび前記第2コアが収容されるケースの一部を構成する請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項4】
前記ケースの内部にはポッティング樹脂が充填されている請求項3に記載のコイル装置。
【請求項5】
前記ケースの内部に充填された前記ポッティング樹脂の上面は、前記第1コアと前記第2コアとの接合部よりも、前記ケースの上方に位置している請求項4に記載のコイル装置。
【請求項6】
前記ポッティング樹脂のヤング率は10MPa以下である請求項4または5に記載のコイル装置。
【請求項7】
前記接合用樹脂のヤング率は、前記ポッティング樹脂のヤング率よりも大きい請求項4または5に記載のコイル装置。
【請求項8】
前記第1コアおよび前記第2コアの少なくとも一方は、一対の側脚部と、一対の前記外脚部の各々の間に形成される中脚部とを有し、
一対の前記外脚部の位置において、前記第1コアと前記第2コアとは前記接合用樹脂を介して接合されており、
前記中脚部の位置において、前記第1コアと前記第2コアとは前記接合用樹脂を介して接合されてはおらず、前記第1コアと前記第2コアとの間にはギャップが形成されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【請求項9】
前記第1コアと前記第2コアとが組み合わされることにより、EEコア、EIコア、UUコアまたはUIコアが構成されている請求項1または2に記載のコイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル装置の放熱性を高めるための技術として、例えば特許文献1に示す技術が知られている。特許文献1に記載のコイル装置は、上下に配置された上部コアおよび下部コアと、上部コアおよび下部コアを収容するケースと、を有する。ケースの底板は冷却機構を備えた台座に固定されており、ケースの底板を介して、上部コアおよび下部コアの熱を台座に伝熱させることにより、上部コアおよび下部コアの熱を放熱させることが可能となっている。
【0003】
この種のコイル装置では、上部コアと下部コアとを強く接合した状態で、これらのコアをケースの内部に収容する場合がある。しかしながら、特許文献1に記載のコイル装置のように、下部コアのみケースの底板に当接している場合、上部コアと下部コアとの間の放熱性に差異が生じるため、上部コアと下部コアとの間に温度差が発生する。その結果、該温度差に起因して、上部コアに変位が生じるとともに、これに追随する形で下部コアが変位し、下部コアに過大な応力がかかる結果、その一部にクラックが生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、コアの破損を有効に防止することが可能なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコイル装置は、
第1軸方向に沿って配置され、接合用樹脂を介して互いに接合される第1コアおよび第2コアと、
前記第1コアと前記第2コアとの接合部とは反対側で、前記第1軸方向に垂直な面に沿って、前記第2コアと接触する板状部材と、を有し、
前記接合用樹脂のヤング率は90MPa以下である。
【0007】
本発明に係るコイル装置は、第1軸方向に沿って配置され、接合用樹脂を介して互いに接合される第1コアおよび第2コアと、第1コアと第2コアとの接合部とは反対側で、第1軸方向に垂直な面に沿って、第2コアと接触する板状部材と、を有する。そのため、板状部材を例えば冷却機構に直接または間接的に固定した場合、板状部材が接触している第2コアが第1コアに比べて効率的に冷却され、第1コアと第2コアとの間に温度差が発生する。その結果、第1コアの方が第2コアよりも温度が高くなり、第2コアに比較して第1コアの変位が大きくなる。このような状態にあっても、本発明に係るコイル装置では、第1コアと第2コアとを接合する接合用樹脂のヤング率が90MPa以下であり、接合用樹脂には柔軟性が具備されているため、第1コアと第2コアとが機械的に比較的弱く接合し、第1コアの変位の影響が第2コアに及び難い。そのため、第1コアの変位に追随する形で第2コアが変位することを回避することが可能であり、第2コアに過大な応力がかかることを防止し、その一部にクラックが生じることを有効に防止することができる。したがって、本発明に係るコイル装置によれば、コアの破損を有効に防止することが可能なコイル装置を実現することができる。
【0008】
また、第1コアと第2コアとは接合用樹脂を介して熱的に接続されており、第1コアの熱は第2コアを通じて板状部材に良好に伝熱されるため、第1コアおよび第2コアの放熱性を良好な状態に維持することができる。
【0009】
好ましくは、前記接合用樹脂のガラス転移点は0℃以下である。このような構成とした場合、接合用樹脂は比較的低い温度(例えば、0℃~室温)においても軟質のゴム状態となる。したがって、このような接合用樹脂で第1コアと第2コアとを接合することにより、第1コアと第2コアとが機械的に比較的弱く接合し、第1コアと第2コアとの間に温度差が生じた場合であっても、コアの破損を有効に防止することができる。
【0010】
前記板状部材は、前記第1コアおよび前記第2コアが収容されるケースの一部を構成してもよい。このような構成とすることにより、第1コアおよび第2コア等の熱がケースの各部を介して放熱されるため、コイル装置の放熱性能を一層高めることができる。
【0011】
好ましくは、前記ケースの内部にはポッティング樹脂が充填されている。このような構成とすることにより、ポッティング樹脂を介して第1コアおよび第2コア等の熱をケースに伝熱させ、これらの熱を効果的に放熱させることができる。
【0012】
好ましくは、前記ケースの内部に充填された前記ポッティング樹脂の上面は、前記第1コアと前記第2コアとの接合部よりも、前記ケースの上方に位置している。このような構成とすることにより、ケースの内部では、第2コアだけでなく、第1コアについてもその少なくとも一部がポッティング樹脂で覆われるため、ポッティング樹脂を介して、第1コアおよび第2コアの熱を効果的に放熱させることができる。
【0013】
前記ポッティング樹脂のヤング率は10MPa以下であってもよい。
【0014】
好ましくは、前記接合用樹脂のヤング率は、前記ポッティング樹脂のヤング率よりも大きい。このような構成とすることにより、上述したようにコアの破損を有効に防止しつつ、接合用樹脂を介して第1コアと第2コアとを良好な接合強度で接合することができる。
【0015】
前記第1コアおよび前記第2コアの少なくとも一方は、一対の側脚部と、一対の前記外脚部の各々の間に形成される中脚部とを有し、一対の前記外脚部の位置において、前記第1コアと前記第2コアとは前記接合用樹脂を介して接合されており、前記中脚部の位置において、前記第1コアと前記第2コアとは前記接合用樹脂を介して接合されてはおらず、前記第1コアと前記第2コアとの間にはギャップが形成されていてもよい。このような構成とすることにより、例えば、ギャップの幅に応じてコイル装置のインダクタンス特性を調整することができる。
【0016】
前記第1コアと前記第2コアとが組み合わされることにより、EEコア、EIコア、UUコアまたはUIコアが構成されてもよい。EコアあるいはUコアには少なくとも外脚部が具備されているため、第1コアおよび第2コアの少なくとも一方をEコアあるいはUコアで構成することにより、外脚部の位置で、第1コアと第2コアとを接合用樹脂を介して接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】
図1Aは本発明の第1実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図1B】
図1Bは
図1Aに示すコイル装置からケースを取り外したときの状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は
図2に示すボビン、ボビンカバーおよびキャップ部材の斜視図である。
【
図5】
図5は
図2に示すボビンにボビンカバーを取り付けたときの状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は
図5に示すボビンカバーに第2ワイヤを巻回したときの状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は本発明の第2実施形態に係るコイル装置の斜視図である。
【
図12A】
図12Aは接合用樹脂のヤング率を90MPaとしたときにコア組立体に加わる応力の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図12B】
図12Bは接合用樹脂のヤング率を2MPaとしたときにコア組立体に加わる応力の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13A】
図13Aは接合用樹脂のヤング率を90MPとしたときのコア組立体の変位量のシミュレーション結果を示す図である。
【
図13B】
図13Bは接合用樹脂のヤング率を2MPaとしたときのコア組立体の変位量のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
第1実施形態
図1Aおよび
図1Bに示す本発明の第1実施形態に係るコイル装置10は、例えばトランスとして用いられ、車載用の電源回路等に用いられる。コイル装置10は、コア組立体40と、コア組立体40の少なくとも一部が収容されるケース60とを有する。コア組立体40およびケース60の詳細については後述する。
【0020】
図2に示すように、コイル装置10は、コア組立体40およびケース60の他、ボビン20と、仕切りカバー50と、放熱カバー(天板)70と、キャップ部材80a,80bと、ボビンカバー90a,90b(
図4)とを有する。以下、これら各部材の構成について説明する。なお、図面において、X軸は、第1コア40a,40aの各々が並ぶ方向と一致している。また、Y軸は、ボビン20の第1台座25aと第2台座25bとが並ぶ方向に一致している。また、Z軸は、トランス10の高さ(厚み)に対応し、後述するコイル部31,32の巻軸に平行である。
【0021】
図3に示すように、ボビン20は、ボビン基板21を有する。ボビン基板21は、略楕円形平板状からなり、ボビン20の底部を構成する。ボビン基板21のY軸方向の各端部には、脚部22,22が形成されている。脚部22は、ボビン基板21の下方に向かって突出しており、ボビン20を支持する役割を果たす。脚部22の底面には凹状部22aが形成されており、凹状部22aの内部には
図2に示すブロック102を、
図5に示すような態様で配置することが可能となっている。ブロック102は、熱伝導性を有するブロック形状からなる部材からなり、例えば金属で構成されている。
【0022】
ボビン基板21の略中央部には、第1中空筒部23が上方に伸びるように一体成形されている。第1中空筒部23は、筒形状を有し、その外面には第1ワイヤ37(
図4)が巻回される。第1中空筒部23の内面には、分離用板固定部28が形成されている。第1中空筒部23の内面には分離用板固定部28が一対形成されており、図面ではその一方のみが図示されている。
図2に示すように、分離用板固定部28には、略平板形状からなる分離用板部106が、ボビン基板21に対して略直角に配置されるように固定される。なお、分離用板部106はアルミ等の金属材料等で構成される。
【0023】
分離用板固定部28は、Z軸方向に延びており、X軸方向に向かい合う2つの第1コア40a,40aの中脚部46a,46aの間、および第2コア40b,40bの中脚部46b,46bの間に配置される。分離用固定板部28は、X軸方向に向かい合う中脚部46a,46a(中脚部46b,46b)の相互が、第1中空筒部23の内部において所定の隙間で向き合い、接触しないようにするためのものである。分離用固定板部28に固定される分離用板部106も同様の機能を有する。
【0024】
第1中空筒部23の上部には、ボビン上鍔部24が形成されている。ボビン上鍔部24は、第1中空筒部23の上端部に一体成形されており、XY平面に平行な向きで径方向に突き出ている。ボビン上鍔部24のY軸方向の一方側の端部には台座25aが一体的に形成されており、他方側の端部には台座25bが一体的に形成されている。台座25aと台座25bとは同様の構成を有するため、以下において台座25bの構成についてはその説明を省略する。
【0025】
台座25aは、底面部250を有する。底面部250は、台座25aの底面を構成し、X軸方向に細長い形状を有する。底面部250の周囲には、これを取り囲むように、絶縁壁251と、外壁252a~252cとが形成されている。絶縁壁251と、外壁252a~252cとは、上方に突出するように形成されている。
【0026】
絶縁壁251は、底面部250のうち、ボビン上鍔部24との境界部分に形成されている。絶縁壁251は、ボビン20に
図2に示す第1コア40a,40aを取り付けたときに、そのベース部44a,44bが台座25aの内側を挿通する第2ワイヤ38の第2リード部38aに接触することを防止する役割を果たす。
【0027】
外壁252a~252cは、絶縁壁251に対して、Y軸方向に対向するように形成されている。外壁252aは絶縁壁251に対して一体的に形成されており、外壁252aの一部は底面部250のX軸方向の一方側の端部に沿うように延在している。底面部250のX軸方向の他方側の端部は、
図2に示す第2ワイヤ38の第2リード部38a,38bを引き出すことができるように開放されている。なお、台座25bでは、底面部250のX軸方向の他方側の端部は、第1ワイヤ37の第1リード部37a,37bを引き出すことができるように開放されている。
【0028】
外壁252aと外壁252bとは外壁切欠部253aを挟んでX軸方向に隣接して形成されており、外壁252bと外壁252cとは外壁切欠部253bを挟んでX軸方向に隣接して形成されている。底面部250には、外壁切欠部253aに対してY軸方向に連続するように底面切欠部254aが形成されており、外壁切欠部253bに対してY軸方向に連続するように底面切欠部254bが形成されている。
【0029】
絶縁壁251と外壁252cとの間には、仕切壁255が形成されている。仕切壁255は、絶縁壁251と外壁252cとに対して略平行に配置されており、X軸方向に沿って延びている。
【0030】
仕切壁255のY軸方向の一方側には、第1挿通路256aが形成されている。第1挿通路256aは、
図2に示す第2ワイヤ38の第2リード部38bを挿通させるためのものである。第1挿通路256aは、底面切欠部254aが形成された位置から、外壁252bおよび252cに沿って、底面切欠部254bを跨ぎつつ、X軸方向に向かって延在している。なお、台座25bでは、第1挿通路256aには、
図2に示す第1ワイヤ37の第1リード部37aが挿通する。
【0031】
仕切壁255のY軸方向の他方側には、第2挿通路256bが形成されている。第1挿通路256bは、
図2に示す第2ワイヤ38の第2リード部38aを挿通させるためのものである。第2挿通路256bは、底面切欠部254bが形成された位置から、仕切壁255に沿って、X軸方向に向かって延在している。第2挿通路256bと第1挿通路256aの各々の延在方向は略平行となっている。なお、台座25bでは、第2挿通路256bには、
図2に示す第1ワイヤ37の第1リード部37bが挿通する。
【0032】
絶縁壁251のX軸方向の一方側に位置する外面には係合凸部257aが形成されており、他方側に位置する外面には係合凸部257bが形成されている。係合凸部257a,257bは、後述するキャップ部材80aに形成された係合凹部82a,82bを係合させるためのものである。なお、台座25bでは、係合凸部257a,257bには、キャップ部材80bの係合凹部82a,82bが係合される。
【0033】
第1中空筒部23の外周面には、複数の位置決め凸部26が、第1中空筒部23の周方向に沿ってそれぞれ所定の間隔で形成されている。各位置決め凸部26は、第1中空筒部23の外周面の下端部に形成されており、その外周面から外方に向かって径方向に突出している。位置決め凸部26は、その外周に取り付けられるボビンカバー90a,90b(
図4)の位置決めを行うために設けられるものである。ボビン20にボビンカバー90a,90bを取り付けたときに、位置決め凸部26の径方向への突出長分だけ、ボビンカバー90a,90bの第2中空筒部91の内周面を第1中空筒部23の外周面から離間した位置に配置させることが可能となっている。
【0034】
第1中空筒部23の外周面には、第1ワイヤ固定部27が形成されている。第1ワイヤ固定部27は、位置決め凸部26に対して、凡そ第1ワイヤ37のワイヤ1本分の幅だけ上方に離間した位置に形成されている。第1ワイヤ固定部27は、第1中空筒部23の外周面から径方向外側に突出している。第1ワイヤ固定部27の形状は薄板形状となっているが、その形状は特に限定されるものではなく、突起形状を有する種々の形状を採用することができる。第1ワイヤ固定部27には、第1ワイヤ37の第1リード部37bを引っ掛けて固定することが可能となっている。また、第1ワイヤ固定部27と位置決め凸部26との間のZ軸方向の隙間には、第1ワイヤ37を挿通させることが可能となっており、第1中空筒部23の下端部においてその周方向に第1ワイヤ37を巻回することができる。
【0035】
図5に示すように、台座25aの底面には、嵌合溝29が形成されている。嵌合溝29は、台座25aのX軸方向の略中央部に形成されており、Y軸方向に沿って延びている。嵌合溝29は、所定の深さの溝からなり、その内部にはボビンカバー90aのカバー仕切部94a(
図4)の上端部を嵌合させることが可能となっている。なお、台座25bでは、嵌合溝29の内部には、ボビンカバー90bのカバー仕切部94bの上端部が嵌合される。
【0036】
図4に示すように、第1中空筒部23の外周面には、第1ワイヤ37が巻回される。より詳細には、第1ワイヤ37は、第1中空筒部23の外周面のうち、第1ワイヤ固定部27の上方に複数ターンで巻回されるとともに、第1ワイヤ固定部27の下方(第1中空筒部23の下端部)に1ターンで巻回される。これにより、第1中空筒部23の外周面には、第1ワイヤ37が巻回されてなる第1コイル部31が形成される。なお、第1ワイヤ37の巻回方法としては、整列巻やα巻等を採用することができる。
【0037】
第1ワイヤ37の第1リード部37bは、第1ワイヤ固定部27の下方の位置から、台座25bに向けて立ち上げられる。より詳細には、第1リード部37bは、第1ワイヤ固定部27に引っ掛けられつつ上方に向けて立ち上げられ、外壁切り欠き部253bを介して、台座25bのY軸方向の外側から内側へと案内される。第1リード部37bは、底面切欠部254bを介して、台座25bのY軸方向のさらに内側へと案内され、X軸正方向側に向けて略垂直に屈曲した状態で、第2挿通路256bの内部を挿通しつつX軸方向の外側へと引き出される。
【0038】
一方、第1リード部37aは、第1中空筒部23の外周面の上端部から、台座25bに向けて立ち上げられる。より詳細には、第1リード部37aは、外側切欠部253aを介して、台座25bのY軸方向の外側から内側へと案内される。第1リード部37aは、底面切欠部254aを介して、台座25bのY軸方向のさらに内側へと案内され、X軸正方向側に向けて略垂直に屈曲した状態で、第1挿通路256aの内部を挿通しつつX軸方向の外側へと引き出される。
【0039】
ボビンカバー90a,90bは、第1中空筒部23の外周面に第1ワイヤ37が巻回された状態で、ボビン20に取り付けられる。ボビンカバー90a,90bの各々は半割れ体からなり、これらは組み合わせ可能に構成されている。以下において、ボビンカバー90a,90bのうち、重複する構成については、ボビンカバー90aについてのみ説明し、ボビンカバー90bについてはその説明を省略する。
【0040】
ボビンカバー90aは、第2中空筒部91を有する。第2中空筒部91は半割れ体からなり、ボビンカバー90aの第2中空筒部91とボビンカバー90bの第2中空筒部91とを組み合わせたとき円筒状の筒体が形成される。第2中空筒部91の外周面には、第2ワイヤ38を巻回することが可能となっている。
【0041】
第2中空筒部91の外周面には、カバー仕切部94aが形成されている。カバー仕切部94aは、第2中空筒部91の上端部に形成されており、第2中空筒部91の外周面から径方向外側に向かって突出している。カバー仕切部94aは、Z軸方向に所定の長さを有し、
図5に示すような態様でその上端部が台座25aの嵌合溝29の内部に嵌合される。
【0042】
第2中空筒部91の上部には、一対のカバー上鍔部92a,92aが形成されている。一方のカバー上鍔部92aはカバー仕切部94aの一方側に形成され、他方のカバー上鍔部92aはカバー仕切部94aの他方側に形成されている。カバー上鍔部92a,92aは、第2中空筒部91の上端部に一体成形されており、XY平面に平行な向きで径方向に突き出ている。
【0043】
カバー仕切部94aとその一方側に形成されたカバー上鍔部92aとの間にはリード挿通路95が形成され、カバー仕切部94aとその他方側に形成されたカバー上鍔部92aとの間にはリード挿通路96が形成されている。リード挿通路95には第2ワイヤ38の第2リード部38aを挿通させ、リード挿通路96には第2ワイヤ38の第2リード部38bを挿通させることが可能となっている。
【0044】
カバー上鍔部92aの上面には、複数の上方突出部97が形成されている。上方突出部97は、
図5に示すようにボビン20にボビンカバー90a,90bを固定したときに、カバー上鍔部92aとボビン20の台座25aの底面(あるいはボビン上鍔部24の底面)との間に隙間を形成するためのものである。
【0045】
図4に示すように、一対のカバー上鍔部92a,92aの各々の端部には、一対の係合部98,98の各々が形成されている。係合部98,98は、それぞれ凸部または凹部で形成され、ボビンカバー90bのカバー上鍔部92bの両端部に形成された係合部98,98と係合可能に構成されている。
【0046】
第2中空筒部91の下部には、カバー下鍔部93が形成されている。カバー下鍔部93は、第2中空筒部91の下端部に一体成形されており、XY平面に平行な向きで径方向に突き出ている。
【0047】
図5に示すように、第2中空筒部91の外周面には、第2ワイヤ固定部99が形成されている。第2ワイヤ固定部99は、カバー下鍔部93に対して、凡そ第2ワイヤ38のワイヤ1本分の幅だけ上方に離間した位置に形成されている。第2ワイヤ固定部99は、第2中空筒部91の外周面から外方に向かって突出している。第2ワイヤ固定部99の形状は薄板形状となっているが、その形状は特に限定されるものではなく、突起形状を有する種々の形状を採用することができる。
【0048】
第2ワイヤ固定部99は、第1中空筒部23の外周面に形成された第1ワイヤ固定部27(
図4)と同様の機能を有する。すなわち、第2ワイヤ固定部99には、第2ワイヤ38の第2リード部38bを引っ掛けて固定することが可能となっている。第2ワイヤ固定部99とカバー下鍔部93との間の隙間には、第2ワイヤ38を挿通させることが可能となっており、第2中空筒部91の下端部においてその周方向に第2ワイヤ38を巻回することができる。
【0049】
図4に示すように、ボビンカバー90bにおけるカバー上鍔部92bおよびカバー仕切部94bの構成は、ボビンカバー90aにおけるカバー上鍔部92a,92aおよびカバー仕切部94aの構成とは異なっている。より詳細には、カバー上鍔部92bは、第2中空筒部91の上部において、その外周に沿って連続的に形成されている。
【0050】
カバー仕切部94bは、カバー上鍔部92bの上面から上方に向かって突出するように形成されている。カバー仕切部94bはY軸方向に所定の長さを有し、その上端部は台座25bの嵌合溝29に嵌合される。
【0051】
図6に示すように、ボビンカバー90a,90bの第2中空筒部91の外周面には、第2ワイヤ38が巻回される。より詳細には、第2ワイヤ38は、第2中空筒部91の外周面のうち、第2ワイヤ固定部99の上方に複数ターンで巻回されるとともに、第2ワイヤ固定部99の下方(第2中空筒部91の下端部)に1ターンで巻回される。これにより、第2中空筒部91の外周面には、第2ワイヤ38が巻回されてなる第2コイル部32が形成される。
【0052】
第2ワイヤ38の第2リード部38bは、第2ワイヤ固定部99の下方の位置から、台座25aに向けて立ち上げられる。より詳細には、第2リード部38bは、第2ワイヤ固定部99に引っ掛けられつつ上方に向けて立ち上げられ、外壁切り欠き部253aを介して、台座25aのY軸方向の外側から内側へと案内される。第2リード部38bは、底面切欠部254aを介して、台座25aのY軸方向のさらに内側へと案内され、X軸正方向側に向けて略垂直に屈曲した状態で、第1挿通路256aの内部を挿通しつつX軸方向の外側へと引き出される。
【0053】
一方、第2リード部38aは、第2中空筒部91の外周面の上端部から、台座25aに向けて立ち上げられる。より詳細には、第2リード部38aは、外側切欠部253bを介して、台座25aのY軸方向の外側から内側へと案内される。第2リード部38aは、底面切欠部254bを介して、台座25aのY軸方向のさらに内側へと案内され、X軸正方向側に向けて略垂直に屈曲した状態で、第2挿通路256bの内部を挿通しつつX軸方向の外側へと引き出される。
【0054】
図4に示すように第1中空筒部23の外周面に第1ワイヤ37を巻回し、
図6に示すように第2中空筒部91の外周面に第2ワイヤ38を巻回することにより、
図7Aに示すように、第1コイル部31が内側に配置され、第2コイル部32が外側に配置されてなる二重構造のコイル部が形成される。第1コイル部31および第2コイル部32のいずれか一方は一次側コイルを構成し、他方は二次側コイルを構成する。
【0055】
図4に示すように、台座25aにはキャップ部材80aが取り付けられ、台座25bにはキャップ部材80bが取り付けられる。キャップ部材80aとキャップ部材80bとは同様の構成を有するため、以下においてキャップ部材80bの構成についてはその説明を省略する。
【0056】
キャップ部材80aは、天板部81を有する。天板部81の側方には、一対の内側側方壁82,82と一対の外側側方壁83,83とが形成されている。外側側方壁83,83は天板部81のY軸方向の一方側の端部に形成され、内側側方壁82,82は天板部81のY軸方向の他方側の端部に形成されている。
【0057】
キャップ部材80aの外側側方壁83,83は台座25aの外壁252a~252cと重複するように配置され、キャップ部材80bの外側側方壁83,83は台座25bの外壁252a~252cと重複するように配置される。
【0058】
一対の内側側方壁82,82の各々は、X軸方向に所定の間隔をあけて配置されている。一方の内側側方壁82には係合凹部82aが形成され、他方の内側側方壁82には係合凹部82bが形成されている。係合凹部82aに
図3に示す係合凸部257aを係合させ、係合凹部82bに係合凸部257bを係合させることにより、キャップ部材80aを台座25aに取り付けることが可能となっている。
【0059】
図2に示すように、ボビンカバー90a,90bの外側には、仕切りカバー50,50が配置される。一方の仕切りカバー50はボビンカバー90a,90bのX軸方向の一方側に形成され、他方の仕切りカバー50はボビンカバー90a,90bのX軸方向の他方側に形成される。
【0060】
仕切りカバー50は、カバー本体52と、カバー本体52のZ軸方向の両端に形成された一対の係止片54,54とを有する。カバー本体52は、ボビンカバー90a,90bの第2中空筒部91,91の外周面に形成された第2コイル部32の周囲を覆うように湾曲している。係止片54は、カバー本体52から内側に向けて略垂直方向に折り曲げられている。一対の係止片54,54は、ボビンカバー90a,90bの第2中空筒部91,91の上端部に形成されたカバー上鍔部92a,92bと、下端部に形成されたカバー下鍔部93,93とを挟み込むように取り付けられる。
【0061】
図7Bに示すように、ボビンカバー90a,90bの外側には、
図2に示す絶縁カバー103,103が配置される。絶縁カバー103は、カバー本体104と折返部105とを有する。カバー本体104は後述するケース60の側板64の内面に沿って配置され、折返部105は側板64の上端部に係合可能に構成されている。絶縁カバー103は、ボビンカバー90a,90bの第2中空筒部91の外周面に形成された第2コイル部32が側板64に接触することを防止するためのものである。
【0062】
図2に示すように、第1ワイヤ37の第1リード部37a,37bの各々の端部には、端子100,100が取り付けられている。また、第1リード部37a,37bは、絶縁性のワイヤカバー101で纏められている。同様に、第2ワイヤ38の第2リード部38a,38bの各々の端部には、端子100,100が取り付けられている。また、第2リード部38a,38bは、絶縁性のワイヤカバー101で纏められている。
【0063】
図7Aに示すように、ケース60には、コア組立体40の少なくとも一部が収容される。図示の例では、ケース60の内部には、上部コア40a,40aの一部と下部コア40b,40bの全部が収容されている。ベース部44b,44bのベース面440b,440bは、ケース60の底板(底部)62に載置され、下部コア40b,40bの載置側面となる。ケース60は、板状の部材で構成され、例えばアルミ等の熱伝導性の高い金属材料で構成されており、放熱用ケースとして機能する。
【0064】
図2および
図7Aに示すように、ケース60は、底板62と側板64とを有する。側板64は、上方に向かって延びており、底板62の周縁部に形成されている。より詳細には、側板64は、上方から見たときに略四角形状からなる底板62の各側部に形成されており、YZ平面に平行な対向する2つの面と、XZ平面に略平行な対向する2つの面とを有する。側板64のXZ平面に略平行な2つの面の各々には、膨出部66が形成されている。膨出部66はY軸方向の外方に向かって膨出した部分からなり、膨出部66が形成された位置においてケース60の内部には窪みが形成されている。この窪みの内部には、
図6に示す第2コイル部32の一部が配置される。ケース60(例えば、底板62)は、図示しない冷却機構に直接または間接的に固定されている。
【0065】
底板62の隅部には、2つのボス部68,68が形成されている。ボス部68には開口部(例えば、ボルト孔)が形成されており、この開口部に留め具等を固定することにより、ケース60を例えば冷却機構等に固定することが可能となっている。
【0066】
ケース60の内部には、ポッティング樹脂300が充填されている。ポッティング樹脂300は、高熱伝導性を有する放熱性樹脂であり、コア組立体40の側方とケース60の側板64との間や、第1コイル部31の周辺部あるいは第2コイル部32の周辺部等に充
填されている。
【0067】
ポッティング樹脂300のヤング率は、好ましくは10MPa以下であり、さらに好ましくは0.1~10MPaである。ポッティング樹脂300を構成する材料としては、注入後も軟質なシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0068】
コア組立体40は、上部コア40a,40aと、下部コア40b,40bとを有する。コア組立体40はいわゆる縦型コアを構成し、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとはZ軸方向に組み合わせ可能に構成されている。各コア40a,40bの材質は、金属、フェライト等の軟磁性材料が挙げられるが、特に限定されない。
【0069】
上部コア40a,40aは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア42a,42aからなり、YZ平面に平行な面で分割されている。上部コア40a,40aは、X軸方向に各々組み合わせた状態において、断面E字形状(ただし、XZ平面に平行な断面)を有し、いわゆるE型コアを構成する。なお、上部コア40a,40aはE型コアに限定されるものではなく、例えばU型コア等(好ましくは、外脚部を有するコア)で構成されていてもよい。
【0070】
下部コア40b,40bは、それぞれ同じ形状を持つ2つの分割コア42b,42bからなり、YZ平面に平行な面で分割されている。下部コア40b,40bは、X軸方向に各々組み合わせた状態において、断面E字形状(ただし、XZ平面に平行な断面)を有し、いわゆるE型コアを構成する。なお、下部コア40b,40bはE型コアに限定されるものではなく、例えばU型コア等(好ましくは、外脚部を有するコア)で構成されていてもよい。
【0071】
上部コア40a,40aの各々は、X軸方向に延びるベース部44aと、ベース部44aのX軸方向の一方の端部からZ軸方向に突出している中脚部46aと、他方の端部からZ軸方向に突出していると外脚部48aを有する。上部コア40a,40aは、中脚部46a,46aの位置において、X軸方向に組み合わされる。すなわち、本実施形態における上部コア40a,40aは、中脚部46a,46aの位置において分割されており、外脚部48a,48aの位置では分割されていない。
【0072】
上部コア40a,40aをX軸方向に組み合わせた状態において、中脚部46a,46aは、上部コア40a,40aの外脚部48a,48aの各々の間に配置される。一対の中脚部46a,46aは、ボビン20の第1中空筒部23の貫通孔の内部にZ軸方向の上方から挿入されるようになっている。なお、以下において、ベース部44a,44aの表面をベース面440a,440aと呼ぶ。
【0073】
下部コア40b,40bの各々は、X軸方向に延びるベース部44bと、ベース部44bのX軸方向の一方の端部からZ軸方向に突出している中脚部46bと、他方の端部からZ軸方向に突出している外脚部48bとを有する。下部コア40b,40bは、中脚部46b,46bの位置において、X軸方向に組み合わされる。すなわち、本実施形態における下部コア40b,40bは、中脚部46b,46bの位置において分割されており、外脚部48b,48bの位置では分割されていない。
【0074】
下部コア40b,40bをX軸方向に組み合わせた状態において、中脚部46b,46bは、下部コア40b,40bの外脚部48b,48bの各々の間に配置される。一対の中脚部46b,46bは、ボビン20の第1中空筒部23の貫通孔の内部にZ軸方向の下方から挿入されるようになっている。なお、以下において、ベース部44b,44bの表面をベース面440b,440bと呼ぶ。
【0075】
上部コア40a,40aの外脚部48a,48aおよび下部コア40b,40bの外脚部48b,48bの各々のZ軸方向の先端同士は、ボビン20の外側で、Z軸方向に突き合わされる。上部コア40a,40aの中脚部46a,46aおよび下部コア40b,40bの中脚部46b,46bの各々のZ軸方向の先端同士は、ボビン20の内側で、Z軸方向に突き合わされる。下部コア40b,40bのベース面440b,440bは、この上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部(突き合わせ面)とは反対側で、Z軸方向に垂直な面(XY平面)に沿って、底板62と接触している。
【0076】
図7Aの拡大図に示すように、上部コア40a,40aの外脚部48a,48aおよび下部コア40b,40bの外脚部48b,48bの各々のZ軸方向の先端同士は、接合用樹脂(例えば、接着剤)200を介して互いに接合されている。また、上部コア40a,40aの中脚部46a,46aおよび下部コア40b,40bの中脚部46b,46bの各々のZ軸方向の先端同士も、接合用樹脂200を介して互いに接合されている。そのため、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部には、接合用樹脂200からなる薄層(緩衝層)が形成されている。なお、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとは、後述するように機械的に弱く接合されており、接合用樹脂200を介して完全に一体とはなっていない。
【0077】
上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとが上下に接合された状態において、コア組立体40のX軸方向の寸法は25mm以上であり、Y軸方向の寸法は25mm以上であり、Z軸方向の寸法は20mm以上である。本発明は、このような比較的大型のコア組立体40において良好な効果が奏される。
【0078】
接合用樹脂200は軟質の樹脂で構成され、接合用樹脂200のヤング率は、20~150℃において、好ましくは90MPa以下であり、さらに好ましくは2~20MPaである。また、接合用樹脂200のガラス転移点Tgは0℃以下である。
【0079】
接合用樹脂200のヤング率あるいはガラス転移点Tgを上記の範囲内とすることにより、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの間の機械的な接合度を比較的弱く維持し、後述するように下部コア40b,40bの破損を防止することができる。接合用樹脂200を構成する材料としては、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができ、このような樹脂は注入後も軟質な状態を維持することができる。なお、接合用樹脂200は複数の樹脂を混合したものでもよい。
【0080】
外脚部48a,48aおよび外脚部48b,48bの各々のZ軸方向の先端同士を接合する接合用樹脂200のヤング率と、中脚部46a,46aおよび中脚部46b,46bの各々のZ軸方向の先端同士を接合する接合用樹脂200のヤング率とは異なっていてもよく、いずれか一方のヤング率が他方のヤング率よりも大きくてもよい。
【0081】
接合用樹脂200により形成される樹脂層(接着層)の厚みは、好ましくは8~100μmであり、さらに好ましくは8~20μmである。接合用樹脂200の厚みを上記の範囲内とすることにより、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの間の機械的な接合度を比較的弱く維持し、後述するように下部コア40b,40bの破損を防止することができる。
【0082】
図示の例では、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとは、外脚部48a,48aおよび中脚部46a,46aの位置で接合用樹脂200を介して接合されているが、外脚部48a,48aの位置のみにおいて、接合用樹脂200を介して接合されていてもよい。
【0083】
接合用樹脂200とポッティング樹脂300とでは、ヤング率が異なっており、接合用樹脂200のヤング率は、ポッティング樹脂300のヤング率よりも大きくなっている。
【0084】
ケース60の内部に充填されたポッティング樹脂300の上面は、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部よりも、ケース60の上方に位置している。上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部には接合用樹脂200が充填されているため、ポッティング樹脂300は上記接合部には入り込んでおらず、上記接合部に充填された接合用樹脂200と接しているのみである。なお、コイル装置10の放熱性を高める観点では、ポッティング樹脂300の熱伝導率は、接合用樹脂200の熱伝導率よりも大きい方が好ましい。
【0085】
外脚部48a,48aあるいは中脚部46a,46aの周囲(周縁部)はポッティング樹脂300で覆われているため、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部において、接合用樹脂200により形成される樹脂層は、ポッティング樹脂300によってその周囲を覆われている(取り囲まれている)。
【0086】
図2に示すように、コア組立体40には、一対の放熱カバー70,70が取り付けられる。放熱カバー70は、上面カバー72と側面カバー74とを有する。
図1Bに示すように、上面カバー72はベース部44aのベース面440aに固定され、側面カバー74は外脚部48a,48bに跨るように各々の外面に固定される。
【0087】
コイル装置10の製造においては、まず
図2に示す各部材を準備する。次に、
図4に示すように、ボビン20の第1中空筒部23の外周面に第1ワイヤ37を巻回し、第1コイル部31を形成する。また、第1中空筒部23の下端部から、第1ワイヤ37の第1リード部37bを第1ワイヤ固定部27に引っ掛けつつ、台座25bに向けて引き出す。このとき、台座25bまで立ち上げた第1リード部37bを、台座25bの外側から、外壁切欠部253bおよび底面切欠部254bを介して第2挿通路256bの位置までY軸方向に引き出し、第2挿通路256bを介してX軸方向の外側に引き出す。
【0088】
また、第1中空筒部23の上端部から、第1ワイヤ37の第1リード部37aを台座25bに向けて引き出す。このとき、第1リード部37aを、台座25bの外側から、外壁切欠部253aおよび底面切欠部254aを介して第1挿通路256aの位置までY軸方向に引き出し、第1挿通路256aを介してX軸方向の外側に引き出す。
【0089】
次に、
図5に示すように、第1コイル部31の周囲を覆うように、ボビン20にボビンカバー90a,90bを取り付け、
図6に示すように、第2中空筒部91の外周面に第2ワイヤ38を巻回し、第2コイル部32を形成する。次に、第2中空筒部91の下端部から、第2ワイヤ38の第2リード部38bを第2ワイヤ固定部99に引っ掛けつつ、台座25aに向けて引き出す。このとき、第2リード部38bを、台座25aの外側から、外壁切欠部253aおよび底面切欠部254aを介して第1挿通路256aの位置までY軸方向に引き出し、第1挿通路256aを介してX軸方向の外側に引き出す。
【0090】
また、第2中空筒部91の上端部から、第2ワイヤ38の第2リード部38aを台座25aに向けて引き出す。このとき、第2リード部38aを、台座25aの外側から、外壁切欠部253bおよび底面切欠部254bを介して第2挿通路256bの位置までY軸方向に引き出し、第2挿通路256bを介してX軸方向の外側に引き出す。
【0091】
次いで、第2コイル部32の周囲を覆うように、
図2に示す仕切りカバー50,50を
図7Aに示すような態様でボビンカバー90a,90bに取り付けるとともに、分離用板固定部28に分離用板部106を取り付ける。
【0092】
次いで、中脚部46a,46aを第1中空筒部23の貫通孔の内部に上から挿入しつつ上部コア40a,40aをボビン20に取り付けるとともに、中脚部46b,46bを第1中空筒部23の貫通孔の内部に下から挿入しつつ下部コア40b,40bをボビン20に取り付け、コア組立体40を構成する。
【0093】
このとき、中脚部46a,46aまたは/および中脚部46b,46bの先端に接合用樹脂200を付着しておくとともに、外脚部48a,48aまたは/および外脚部48b,48bの先端に接合用樹脂200を付着しておく。これにより、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとを上下に組み合わせたときに、接合用樹脂200を介して、中脚部46a,46aおよび中脚部46b,46bの各々の先端同士が接合されるとともに、外脚部48a,48aおよび外脚部48b,48bの各々の先端同士が接合される。なお、接合用樹脂200で上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとを接合する工程を実施するタイミングについては、適宜変更してもよい。
【0094】
その前後において、台座25a,25bに
図4に示すキャップ部材80a,80bを取り付けるとともに、コア組立体40に
図2に示す放熱カバー70,70を
図1Bに示すような態様で取り付ける。また、
図2に示すブロック102,102をボビン20の脚部22,22の凹状部22a,22a(
図5)の内部に固定する。
【0095】
次いで、コア組立体40等が装着されたボビン20をケース60の内部に収容するとともに、ケース60の側板64の上端部に絶縁カバー103,103を
図7Bに示すような態様で係合させる。次いで、ケース60の内部にポッティング樹脂300を注入し、コア組立体40の側方部と側板64との間の隙間や、コイル部31,32の周囲等にポッティング樹脂300を所定量だけ充填させる。以上のようにして、
図1Aに示すコイル装置10が得られる。なお、必要に応じて、第1リード部37a,37bおよび第2リード部38a,38bに端子100およびワイヤカバー101を取り付ける。
【0096】
本実施形態に係るコイル装置10は、
図7Aに示すように、接合用樹脂200を介して互いに接合される上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bと、下部コア40b,40bのベース面440b,440bと接触するケース60の底部62と、を有する。そのため、底部62を例えば冷却機構(例えば、水冷手段)に直接または間接的に固定した場合、底部62が接触している下部コア40b,40bが上部コア40a,40aに比べて効率的に冷却され、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの間に温度差が発生する。その結果、上部コア40a,40aの方が下部コア40b,40bよりも温度が高くなり、下部コア40b,40bに比較して上部コア40a,40aの変位が大きくなる。
【0097】
このような状態にあっても、本実施形態に係るコイル装置10では、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとを接合する接合用樹脂200のヤング率が90MPa以下であり、接合用樹脂200には柔軟性が具備されているため、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとが機械的に比較的弱く接合し、上部コア40a,40aの変位の影響が下部コア40b,40bに及び難い。そのため、上部コア40a,40aの変位に追随する形で下部コア40b,40bが変位することを回避することが可能であり、下部コア40b,40bに過大な応力がかかることを防止し、その一部にクラックが生じることを有効に防止することができる。したがって、本実施形態に係るコイル装置10によれば、コアの破損を有効に防止することが可能なコイル装置を実現することができる。
【0098】
なお、本発明者らにより行われたシミュレーション結果によると、
図7Aに示すように、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの各々の先端同士をヤング率が2MPaの接合用樹脂200(具体的には、シリコーン樹脂)で接合したところ、下部コア40b,40bに加わる応力が半分以下まで低減され、下部コア40b,40bにおいて、ベース部44b,44bにおける外脚部48b,48bの付け根付近にクラックが生じることを有効に防止することができることが確認できた。また、上部コア40a,40aについても、ベース部44a,44aにおける外脚部48a,48aの付け根付近に加わる応力が低減され、上部コア40a,40a自体の変位が小さくなることが確認できた。
【0099】
図12Aは、接合用樹脂200のヤング率を90MPaとしたときにコア組立体40に加わる応力の分布のシミュレーション結果を示す図である。また、
図12Bは、接合用樹脂200のヤング率を2MPaとしたときにコア組立体40に加わる応力の分布のシミュレーション結果を示す図である。
図12A,12Bでは、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bに加わる応力の度合(相対的な大きさ)を斜線で示している。具体的には、斜線の密度が小さい部分ほど比較的大きな応力が加わっていることを示しており、斜線の密度が大きい部分ほど比較的小さな応力が加わっていることを示している。
【0100】
図12Aと
図12Bとを対比すれば明らかなように、接合用樹脂200のヤング率を90MPaから2MPaに低減すると、下部コア40b,40b(特にベース部44b,44bにおける外脚部48b,48bの付け根付近)に加わる応力を効果的に低減することができる。また、接合用樹脂200のヤング率を90MPaから2MPaに低減すると、上部コア40a,40aに加わる応力についても効果的に低減することができる。また、
図12Aに示すように、接合用樹脂200のヤング率を90MPaとしたときには、下部コア40b,40b(特にベース部44b,44bにおける外脚部48b,48bの付け根付近)に加わる応力を比較的小さくすることができる。
【0101】
図13Aは、接合用樹脂200のヤング率を90MPaとしたときのコア組立体40の変位量の分布を示すシミュレーション結果を示す図である。また、
図13Bは、接合用樹脂200のヤング率を2MPaとしたときのコア組立体40
の変位量の分布のシミュレーション結果を示す図である。
図13A,13Bでは、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの変位量の度合(相対的な大きさ)を斜線で示している。具体的には、斜線の密度が小さい部分ほど変位量が比較的大きくなっていることを示しており、斜線の密度が大きい部分ほど変位量が比較的小さくなっていることを示している。
【0102】
図13Aと
図13Bとを対比すれば明らかなように、接合用樹脂200のヤング率が90MPaのときと接合用樹脂200のヤング率が2MPaのときとでは、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの変位量はほとんど変化していない。すなわち、接合用樹脂200のヤング率を90MPaとした場合には、接合用樹脂200のヤング率を2MPaとしたときと同程度の水準で、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの変位量を抑える効果を得ることができる。
【0103】
また、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとは接合用樹脂200を介して熱的に接続されており、上部コア40a,40aの熱は下部コア40b,40bを通じて底板62に良好に伝熱されるため、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの放熱性を良好な状態に維持することができる。
【0104】
また、接合用樹脂200のガラス転移点は0℃以下であるため、接合用樹脂200は比較的低い温度(例えば、0℃~室温)においても軟質のゴム状態となる。したがって、このような接合用樹脂200で上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとを接合することにより、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとが機械的に比較的弱く接合し、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの間に温度差が生じた場合であっても、これらのコアの破損を有効に防止することができる。
【0105】
また、底部62は、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bが収容されるケース60の一部を構成しているため、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40b等の熱がケース60の各部を介して放熱され、コイル装置10の放熱性能を一層高めることができる。
【0106】
また、ケース60の内部にはポッティング樹脂300が充填されているため、ポッティング樹脂300を介して上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40b等の熱をケース60に伝熱させ、これらの熱を効果的に放熱させることができる。
【0107】
また、ポッティング樹脂300の上面は、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとの接合部よりも、ケース60の上方に位置しているため、ケース60の内部では、下部コア40b,40bだけでなく、上部コア40a,40aについてもその少なくとも一部がポッティング樹脂300で覆われる。したがって、ポッティング樹脂300を介して、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの熱を効果的に放熱させることができる。
【0108】
また、ポッティング樹脂300のヤング率は10MPa以下であり、接合用樹脂200のヤング率は、ポッティング樹脂300のヤング率よりも大きいため、上述したようにコアの破損を有効に防止しつつ、接合用樹脂200を介して上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとを良好な接合強度で接合することができる。
【0109】
第2実施形態
図8に示す本発明の第2実施形態に係るコイル装置110は、以下の点が相違するのみであり、その他の構成は、前述した第1実施形態と同様であり、同様な作用効果を奏する。図面において、第1実施形態と共通する部材には、共通する符号を付し、重複する部分の説明については省略する。
【0110】
図8に示すように、本実施形態におけるコイル装置110では、中脚部46a,46aと中脚部46b,46bとの間にはギャップGが形成されており、ギャップGの内部にはポッティング樹脂300が充填されている。ギャップGのZ軸方向幅は、好ましくは10~100μmである。本実施形態では、中脚部46a,46aと中脚部46b,46bとは、接合用樹脂200を介して接合されてはおらず、中脚部46a,46aおよび中脚部46b,46bの位置において、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの各々の先端同士の間には、接合用樹脂200が充填されてはいない。
【0111】
中脚部46a,46aと中脚部46b,46bとは、ポッティング樹脂300を介して接合されている。なお、ギャップGの内部にはポッティング樹脂300が充填されていなくてもよく、空洞となっていてもよい。
【0112】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。加えて、本実施形態では、ギャップGのZ軸方向幅に応じてコイル装置110のインダクタンス特性を調整することができる。
【0113】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0114】
(1)
図9に示すように、底板62に複数(8個)の支持部622が一体的に形成され、これらの支持部622に下部コア40b,40bが載置されてもよい。支持部622は、底板62の上面620から突出する凸部(突起部)からなる。複数の支持部622の各々は、底板62の上面620に離散的(局所的)に形成されており、下部コア40b,40bのベース面440b,440bに対して、面接触あるいは点接触している。支持部622は、底板62の上面620から上方に離間した位置で、ベース面440b,440bを支持する。支持部622の上方への突出長は、好ましくは0.05~1.5mmであり、さらに好ましくは0.1~1.0mmである。図示の例では、支持部622の突出長は、底板62の板厚よりも小さくなっている。
【0115】
底板62の上面620とベース面440b,440bとの間には、隙間624が形成されており、その内部にはポッティング樹脂300が充填されている。ベース面440b,440bは、底板62に部分的に接触しており、ポッティング樹脂300を介して底板62に部分的に接続されている。
【0116】
ベース面440b,440bは、支持部622が設けられた位置以外の位置においては、底板62の上面620から浮いた状態となっており、ベース面440b,440bの全体が底板62の上面620に接触することがない。そのため、ベース面440b,440bと底板62との接触面積を小さくすることが可能となり、両者の熱膨張率の差に起因して作用する下部コア40b,40bへの応力を低減し、下部コア40b,40b(特にベース部44b,44bにおける外脚部48b,48bの付け根付近)にクラックが生じることを防止することができる。
【0117】
また、支持部622が設けられた位置においては、支持部622を介してコア組立体40等で発生する熱を底板62に伝搬させ、底板62を介して上記熱を放熱させることができる。また、支持部622が設けられた位置以外の位置においては、隙間624に充填されたポッティング樹脂300および底板62を介して、コア組立体40等で発生する熱を放熱させることができる。
【0118】
(2)
図10に示すように、下部コア40b,40bのベース面440b,440bに複数(8個)の当接部441が一体的に形成されていてもよい。複数の当接部441の各々は、ベース部44b,44bのベース面440b,440bから突出する凸部(突起部)からなる。当接部441の形状および大きさは、上記変形例(1)における支持部622の形状および大きさと同様である。当接部441は、ベース面440b,440bに離散的(局所的)に形成されており、ベース面440b,440bから下方に離間した位置でケース60の底板62の上面620に当接する。
【0119】
底板62の上面620に下部コア40b,40bを載置したときに、ベース部44b,44bは底板62に対して局所的(部分的)に当接(接合)する。底板62の上面620とベース面440b,440bとの間の隙間624には、ポッティング樹脂300が充填されており、下部コア40b,40bは底板62に部分的に接触し、ベース面440b,440bは底板62にポッティング樹脂300を介して部分的に接続されている。
【0120】
図10に示す例においても、下部コア40b,40bと底部62との接触面積を小さくし、両者の熱膨張率の差に起因して作用する下部コア40b,40bへの応力を低減して下部コア40b,40b(特にベース部44b,44bにおける外脚部48b,48bの付け根付近)にクラックが生じることを防止することができる。また、当接部441が形成された位置以外の位置においては、ポッティング樹脂300および底板62を介して、コア組立体40等で発生する熱を効果的に放熱させることができる。また、当接部441が形成された位置においては、当接部441を介して上記熱を底板62に伝搬させ、放熱させることができる。なお、図示のように、上部コア40a,40aのベース面440a,440aにも、複数(8個)の当接部441が一体的に形成されていてもよい。
【0121】
(3)
図11に示すように、ケース60の底板62に段差部69を形成し、段差部69の上面に下部コア40b,40bを載置してもよい。段差部69は、底板62とは別体として形成されており、側板64の一部を構成している。この場合も、ベース面440b,440bと底板62との間に隙間624が形成されるため、下部コア40b,40bと底部62との接触面積が小さくなり、上記変形例(1)および(2)と同様の効果が得られる。
【0122】
(4)上記各実施形態では、
図7Aに示すように、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bはケース60の内部に収容されていたが、ケース60は必須ではない。例えば、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bは、平板形状等からなる金属等の板材(放熱板)に載置されているのみでもよい。なお、この場合も、上記板材は、冷却機構に直接または間接的に固定されていることが好ましい。
【0123】
(5)上記各実施形態において、底板62および側板64はいずれも金属で構成されていたが、側板64については例えば樹脂成形体で構成されていてもよい。
【0124】
(6)上記各実施形態では、
図2に示すように、コア組立体40はE型コア同士の組み合わせによって構成されていたが、U型コア同士の組み合わせ、E型コアとI型コアとの組み合わせ、E型コアとI型コアとの組み合わせ、あるいはその他の形状からなるコアの組み合わせにより構成されていてもよい。E型コアあるいはU型コア等には少なくとも外脚部が具備されているため、上部コア40a,40aおよび下部コア40b,40bの少なくとも一方をE型コアあるいはU型コアで構成することにより、外脚部の位置で、上部コア40a,40aと下部コア40b,40bとを接合用樹脂を介して接合することができる。
【0125】
(7)上記各実施形態では、
図2に示すように、上部コア40a,40aは、それぞれX軸方向に分割された分割コアで構成されていたが、一体で形成されていてもよい。下部コア40b,40bについても同様である。
【0126】
(8)上記各実施形態では、本発明のトランスへの適用例について示したが、他のコイル装置に本発明を適用してもよい。
【0127】
(9)上記第2実施形態において、ギャップGの内部には、ポッティング樹脂300に代えて接合用樹脂200が充填されていてもよい。
【符号の説明】
【0128】
10,110…コイル装置
20…ボビン
31…第1コイル部
32…第2コイル部
40…コア組立体
40a…上部コア
40b…下部コア
42a,42b…分割コア
44a,44b…ベース部
440a,440b…ベース面
441…当接部
46a,46b…中脚部
48a,48b…外脚部
50…仕切りカバー
60…ケース
62…底板
620…上面
622…支持部
624…隙間
64,264…側板
66…膨出部
68…ボス部
69…段差部
200…接合用樹脂
300…ポッティング樹脂