(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190673
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20221219BHJP
H01G 4/10 20060101ALI20221219BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
H01G4/30 201L
H01G4/30 201K
H01G4/30 201C
H01G4/30 515
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/10
H01G4/12 270
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083123
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076761
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ウー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、チャン ハク
(72)【発明者】
【氏名】ヨーン、セオク ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、キ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジョン ミョン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AE05
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC39
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】
信頼性に優れたセラミック電子部品を提供し、誘電率の低下なしに誘電体層の薄層化を図る。
【解決手段】
本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、複数の結晶粒及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界を含み、上記結晶粒界はSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含み、上記希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、上記液相元素はSi、Mg及びAlのいずれか一つ以上を含むことができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を備え、
前記誘電体層は、複数の結晶粒及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界を有し、
前記結晶粒界はSn、希土類元素及び第1副成分を含む二次相を含み、
前記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、
前記第1副成分はSi、Mg及びAlのいずれか一つ以上を含む、セラミック電子部品。
【請求項2】
前記二次相に含まれたSn、希土類元素及び第1副成分の元素比率がSn:希土類元素:第1副成分=1:x:yのとき、xは0.01以上、10.0以下であり、yは0.01以上、10.0以下である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記希土類元素はDyであり、前記第1副成分はSiである、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第1結晶粒を含み、
前記第1結晶粒は、コア及び前記コアを囲むシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記第1結晶粒のシェルは、前記コアを囲む第1領域及び前記第1領域を囲む第2領域を含み、
前記結晶粒界のSn平均含有量をCgと定義し、前記第1結晶粒のコア、第1領域及び第2領域のSn平均含有量をそれぞれC1、C2、及びC3と定義するとき、
C2>Cg>C3>C1を満たす、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記Cg、C1、C2、C3は、Cg≧1.1*C3、Cg≧2.0*C1、及びC2≧1.3*Cgのいずれか一つ以上を満たす、請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記結晶粒界の希土類元素の平均含有量をCg'と定義し、前記第1結晶粒のコア、第1領域及び第2領域の希土類元素の平均含有量をそれぞれC1'、C2'、及びC3'と定義するとき、
C2'>Cg'>C3'>C1'を満たす、請求項4に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記Cg'、C1'、C2'、C3'はCg'≧1.1*C3'、Cg'≧2.0*C1'、及びC2'≧1.3*Cg'のいずれか一つ以上を満たす、請求項6に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1結晶粒の個数は、前記複数の結晶粒の全体個数のうち5%以上50%以下である、請求項4から7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第2結晶粒を含み、
前記第2結晶粒は、コア及び前記コアを囲むシェルを含むコア-シェル構造を有し、
前記第2結晶粒のコア及びシェルのSn平均含有量をそれぞれC4及びC5と定義するとき、
Cg>C5>C4を満たす、請求項4から7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記Cg、C4、C5はCg≧1.1*C5、Cg≧3.0*C4を満たす、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第3結晶粒を含み、
前記第3結晶粒の内部には、Snが均一に分布している、請求項9に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記複数の結晶粒は、BaTiO3を主成分として含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
前記誘電体層の平均厚さは、0.4μm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項14】
前記内部電極の平均厚さは、0.4μm以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の結晶粒及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界を含み、
前記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第1結晶粒を含み、
前記第1結晶粒は、コア及び前記コアを囲むシェルを含むコア-シェル構造を有し、前記第1結晶粒のシェルは、前記コアを囲む第1領域及び前記第1領域を囲む第2領域を含み、
前記結晶粒界のSn平均含有量をCgと定義し、前記第1結晶粒のコア、第1領域及び第2領域のSn平均含有量をそれぞれC1、C2、及びC3と定義するとき、
C2>Cg>C3>C1を満たし、Cg≧1.1*C3、Cg≧2.0*C1、及びC2≧1.3*Cgのいずれか一つ以上を満たす、セラミック電子部品。
【請求項16】
前記結晶粒界の希土類元素の平均含有量をCg'と定義し、前記第1結晶粒のコア、第1領域及び第2領域の希土類元素の平均含有量をそれぞれC1'、C2'、及びC3'と定義するとき、
C2'>Cg'>C3'>C1'を満たし、Cg'≧1.1*C3'、Cg'≧2.0*C1'、及びC2'≧1.3*Cg'のいずれか一つ以上を満たす、請求項15に記載のセラミック電子部品。
【請求項17】
前記結晶粒界はSn、希土類元素及び第1副成分を含む二次相を含み、
前記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、
前記第1副成分はSi、Mg及びAlのいずれか一つ以上を含む、請求項15または16に記載のセラミック電子部品。
【請求項18】
前記二次相はSn-Dy-Siである、請求項17に記載のセラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミック電子部品のうち一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。最近、コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器が小型化、高出力化し、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化に対する要求も増加しつつある。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増やす必要がある。現在、誘電体層の厚さが約0.6μmレベルまで到達した状態であり、薄層化が進みつつある。しかし、誘電体層の厚さが薄くなるほど、同一の作動電圧で誘電体に印加される電界が大きくなるため、誘電体の信頼性の確保が必須である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明のいくつかの目的の一つは、信頼性に優れたセラミック電子部品を提供することである。
【0006】
本発明のいくつかの目的の一つは、誘電率の低下なしに誘電体層の薄層化を図ることである。
【0007】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、複数の結晶粒及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界を含み、上記結晶粒界はSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含み、上記希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、上記液相元素はSi、Mg及びAlのいずれか一つ以上を含むことができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、複数の結晶粒及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界を含み、上記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第1結晶粒を含み、上記第1結晶粒は、コア及び上記コアを囲むシェルを含むコア-シェル構造を有し、上記第1結晶粒のシェルは、上記コアを囲む第1領域及び上記第1領域を囲む第2領域を含み、上記結晶粒界のSn平均含有量をCgと定義し、上記第1結晶粒のコア、第1領域及び第2領域のSn平均含有量をそれぞれC1、C2、及びC3と定義するとき、C2>Cg>C3>C1を満たし、Cg≧1.1*C3、Cg≧2.0*C1及びC2≧1.3*Cgのいずれか一つ以上を満たすことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の様々な効果のうち一効果として、誘電体粒界にSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を配置することで、信頼性を向上させることができる。
【0011】
本発明の様々な効果のうち一効果として、結晶粒界及び結晶粒内部に含まれたSn分布を制御することで、信頼性を向上させることができる。
【0012】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図5】
図2のP領域を拡大した図面であり、本発明の一実施形態に係る誘電体層の結晶粒構造を示した模式図である。
【
図6】第1結晶粒のSn濃度分布を示したグラフである。
【
図7】第2結晶粒のSn濃度分布を示したグラフである。
【
図8】発明例の誘電体層の断面をSTEMを用いてスキャンしたイメージ(a)、Sn元素をSTEM-EDSを用いてマッピング(mapping)したイメージ(b)、及びDy元素をSTEM-EDSを用いてマッピングしたイメージ(c)である。
【
図9】比較例の誘電体層の断面をSTEMを用いてスキャンしたイメージ(a)、Sn元素をSTEM-EDSを用いてマッピング(mapping)したイメージ(b)、及びDy元素をSTEM-EDSを用いてマッピングしたイメージ(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0015】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成のサイズ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0016】
図面において、第1方向は、積層方向又は厚さ(T)方向、第2方向は、長さ(L)方向、第3方向は、幅(W)方向と定義することができる。
【0017】
[セラミック電子部品]
図1は、本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、
図4は、本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図5は、
図2のP領域を拡大した図面であり、本発明の一実施形態に係る誘電体層の結晶粒構造を示した模式図である。
【0018】
以下、
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品100について詳細に説明する。また、セラミック電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明がこれに限定されるものではなく、セラミック材料を用いる様々なセラミック電子部品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0019】
本発明の一実施形態に係るセラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体に配置され、上記内部電極と連結される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は、複数の結晶粒11、12、13及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界14を含み、上記結晶粒界14はSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含み、上記希土類元素はY、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、上記液相元素はSi、Mg及びAlのいずれか一つ以上を含むことができる。
【0020】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。
【0021】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は、六面体状やこれと類似した形状になることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0022】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、且つ第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0023】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認し難いほど一体化されることができる。
【0024】
誘電体層111は、複数の結晶粒11、12、13及び隣接した結晶粒間に配置された結晶粒界14を含み、上記結晶粒界14はSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含み、上記希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tb、Tm、La、Gd、及びYbのいずれか一つ以上を含み、上記液相元素はSi、Mg及びAlのいずれか一つ以上を含むことができる。
【0025】
セラミック電子部品のうち一つである積層型キャパシタ(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)は、高容量化及び薄層化する傾向にある。誘電体層の厚さを薄くするためには、母材の微粒化が必須である。しかし、単に母材を微粒化するだけでは、粒成長の制御が難しく、誘電体層の厚さが局部的に薄くなることがあり、結晶粒界(Grain boundary)数の減少に応じて粒界抵抗が低下し、破壊電圧(BDV、breaking down voltage)及び信頼性劣化の主な原因として作用することができる。
【0026】
粒界抵抗を強化することができる方案としては、液相元素の添加量を増加させる方案があるが、液相元素の添加量が過度になると焼成温度の増加などの副効果を誘発するため、液相元素の増加量を最小限に抑えながら、粒界抵抗を強化することができる方案が必要である。
【0027】
本発明の一実施形態によると、結晶粒界にSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含むことによって液相元素の増加量を最小限に抑えながらも、粒界抵抗を強化することができる。一般的に、結晶粒界14には、希土類元素及び液相元素が含まれることができるが、結晶粒界14にSnが含まれていない場合、粒界抵抗の向上効果が不十分であることがあり、十分な粒界抵抗の向上効果を確保するためには、液相元素の含有量が過度になることがある。結晶粒界にSnが含まれる場合、希土類元素及び液相元素と二次相を形成することにより、粒界抵抗を効果的に向上させることができる。これにより、誘電体層を薄層化しながらも高信頼性を実現することができる。
【0028】
上記二次相に含まれたSn、希土類元素及び液相元素の含有量は、特に限定する必要はない。例えば、上記二次相に含まれたSn、希土類元素及び液相元素の原子比率がSn:希土類元素:液相元素=1:x:yのとき、xは0.01以上、10.0以下であり、yは0.01以上、10.0以下であることができる。
【0029】
この時、結晶粒界14に含まれたSn、希土類元素及び液相元素の原子量は結晶粒界に垂直な方向に5nmの長さを有し、中心が結晶粒界の中心と一致するラインをSTEM-EDSを用いてライン-プロファイル(Line-profile)して測定したものであることができる。
【0030】
一実施形態において、上記希土類元素はDyであり、上記液相元素はSiであることができる。これにより、結晶粒界はSn-Dy-Si二次相を含むことができる。
【0031】
一実施形態において、上記複数の結晶粒は少なくとも一つ以上の第1結晶粒13を含み、上記第1結晶粒はコア13a及び上記コアを囲むシェル13bを含むコア-シェル構造を有し、上記第1結晶粒のシェル13bは、上記コアを囲む第1領域13b1及び上記第1領域を囲む第2領域13b2を含むことができる。
【0032】
図6を参照すると、上記結晶粒界14のSn平均含有量をCgと定義し、上記第1結晶粒のコア13a、第1領域13b1及び第2領域13b2のSn平均含有量をそれぞれC1、C2、及びC3と定義するとき、C2>Cg>C3>C1を満たすことができる。
【0033】
すなわち、Sn含有量は、コア13aで最も低い値を有し、コアを囲む第1領域13b1で最も高い値を有し、第2領域13b2ではSn含有量が低下して結晶粒界14に行くほど再度Sn含有量が高くなる濃度勾配を有することができる。
【0034】
かかるSn濃度勾配を満たすことによって結晶粒の成長を抑制することができ、結晶粒界にSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を容易に形成することができ、粒界抵抗を効果的に向上させることができる。
【0035】
一実施形態において、上記Cg、C1、C2、C3は、Cg≧1.1*C3、Cg≧2.0*C1、及びC2≧1.3*Cgのいずれか一つ以上を満たすことができる。すなわち、Cg≧1.1*C3、Cg≧2.0*C1、及びC2≧1.3*Cgのうち1つまたは2つの条件を満たすか、またはCg≧1.1*C3、Cg≧2.0*C1、及びC2≧1.3*Cgをすべて満たすことができる。
【0036】
結晶粒界のSn平均含有量(Cg)が第2領域のSn平均含有量(C3)の1.1倍以上である場合、耐電圧特性を向上させることができる効果がある。
【0037】
結晶粒界のSn平均含有量(Cg)がコアのSn平均含有量(C1)の2.0倍以上である場合、結晶粒の過粒成長を抑制する効果がある。
【0038】
第1領域のSn平均含有量(C2)が結晶粒界のSn平均含有量(Cg)の1.3倍以上である場合、高温信頼性を向上させることができる効果がある。
【0039】
一方、希土類元素の濃度勾配もSn濃度勾配のような形を有することができる。
【0040】
すなわち、結晶粒界14の希土類元素の平均含有量をCg'と定義し、上記第1結晶粒のコア13a、第1領域13b1及び第2領域13b2の希土類元素の平均含有量をそれぞれC1、C2'、及びC3'と定義するとき、C2'>Cg'>C3'>C1'を満たすことができる。
【0041】
また、上記Cg'、C1'、C2'、C3'は、Cg'≧1.1*C3'、Cg'≧2.0*C1'、及びC2'≧1.3*Cg'のいずれか一つ以上を満たすことができる。すなわち、Cg'≧1.1*C3'、Cg'≧2.0*C1'、及びC2'≧1.3*Cg'のうち1つまたは2つの条件を満たすか、またはCg'≧1.1*C3'、Cg'≧2.0*C1'、及びC2'≧1.3*Cg'をすべて満たすことができる。
【0042】
一実施形態において、第1結晶粒13の個数は、複数の結晶粒の全体個数のうち5%以上50%以下であることができる。
【0043】
第1結晶粒13の個数割合が5%未満の場合には、結晶粒界にSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含ませることが難しく、これにより、十分な粒界抵抗を確保することができないことがある。
【0044】
一方、第1結晶粒13の個数割合が50%を超える場合には、粒成長が過度に抑制され、誘電率が低下するおそれがあり、2600以上の誘電率を確保することが難しいことがある。
【0045】
一方、第1結晶粒13の個数割合を制御する方法を特に限定する必要はない。例えば、コア-シェル構造を有し、シェルにおけるSn含有量が0.5mol%以上、2.0mol%以下であり、サイズが70nm以下であるBaTiO3系誘電体粉末を含む誘電体組成物を利用する場合、より容易に第1結晶粒13の個数割合を5%以上、50%以下に制御することができる。BaTiO3系誘電体粉末のサイズが70nm超過であり、シェルに含まれたSn含有量が2.0mol%超過である誘電体粉末を用いる場合には、第1結晶粒の割合があまりにも過度になるおそれがある。
【0046】
一実施形態において、
図7を参照すると、上記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第2結晶粒12を含むことができ、上記第2結晶粒12は、コア12a及び上記コアを囲むシェル12bを含むコア-シェル構造を有し、上記第2結晶粒のコア及びシェルのSn平均含有量をそれぞれC4及びC5と定義するとき、Cg>C5>C4を満たすことができる。
【0047】
また、上記Cg、C4、C5は、Cg≧1.1*C5、Cg≧2.0*C4を満たすことができる。
【0048】
第1結晶粒11とは異なり、第2結晶粒12のシェル12bには、Sn含有量が結晶粒界よりも高いSn含有量を有する第1領域が存在しない。第2結晶粒12のシェル12bのSn含有量は、第1結晶粒のシェルの第2領域11b2と類似したSn含有量を有することができ、コアまたは結晶粒界とのSn含有量の割合も第1結晶粒のシェルの第2領域11b2と類似することができる。
【0049】
また、上記複数の結晶粒は、少なくとも一つ以上の第3結晶粒13を含むことができ、上記第3結晶粒13は、Snが結晶粒の内部全体に均一に分布されていることができる。
【0050】
一実施形態において、上記複数の結晶粒は、BaTiO3を主成分として含むことができる。
【0051】
また、上述したSn、希土類元素及び液相元素以外にMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上を副成分として含むことができ、Zr、Al、Mg、及びCaのうち少なくとも一つ以上を副成分として含むことができる。
【0052】
このような追加的な副成分の場合、母材粉末に添加されるか、母材粉末にコーティングされた形で添加されることができる。
【0053】
一方、誘電体層111の厚さ(td)は、特に限定する必要はない。
【0054】
但し、一般的に誘電体層を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に誘電体層の厚さが0.4μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがある。
【0055】
上述したように、本発明の一実施形態によると、結晶粒界14にSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含むことにより、粒界抵抗を高め、信頼性を向上させることができるため、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0056】
したがって、誘電体層111の厚さが0.4μm以下である場合に、本発明の粒界抵抗強化による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。
【0057】
上記誘電体層111の厚さ(td)は、上記第1及び第2内部電極121、122間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0058】
上記誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0059】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層に対して、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0060】
上記等間隔である30個の地点で測定した厚さは、第1及び第2内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部(Ac)で測定されることができる。
【0061】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含み、容量が形成される容量形成部(Ac)と、上記容量形成部(Ac)の第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。
【0062】
また、上記容量形成部(Ac)は、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0063】
カバー部112、113は、上記容量形成部(Ac)の第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部(Ac)の第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0064】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部(Ac)の上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的には物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0065】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同様の材料を含むことができる。
【0066】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0067】
一方、カバー部112、113の厚さは、特に限定する必要はない。但し、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにカバー部112、113の厚さ(tp)は20μm以下であることができる。
【0068】
また、上記容量形成部(Ac)の側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0069】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と第6面6に配置されたマージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。
【0070】
マージン部114、115は、
図3に示したように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切った断面において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0071】
マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0072】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される部分を除いて、導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであることができる。
【0073】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部(Ac)の両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0074】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層される。
【0075】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0076】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は、第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。
【0077】
この時、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0078】
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0079】
内部電極121、122は、Niを含むことができる。但し、内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のいずれか一つ以上を含むことができる。
【0080】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のいずれか一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0081】
一方、内部電極121、122の厚さ(te)は、特に限定する必要はない。
【0082】
但し、一般的に内部電極を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.4μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがある。
【0083】
上述したように、本発明の一実施形態によると、結晶粒界14にSn、希土類元素及び液相元素を含む二次相を含むことにより、粒界抵抗を高め、信頼性を向上させることができるため、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0084】
したがって、内部電極121、122の厚さが0.4μm以下である場合に、本発明の粒界抵抗強化による信頼性の向上効果がより顕著になることができ、セラミック電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0085】
上記内部電極121、122の厚さ(te)は、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0086】
上記内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。
【0087】
例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の第1及び第2内部電極121、122に対して、長さ方向に等間隔である30個の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0088】
上記等間隔である30個の地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部(Ac)で測定されることができる。
【0089】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0090】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0091】
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されることができる。
【0092】
本実施形態においては、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形やその他の目的に応じて変わることができる。
【0093】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、如何なる物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0094】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。
【0095】
電極層131a、132aに対するより具体的な例として、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0096】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0097】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定しない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びそれらの合金のうち1つ以上であることができる。
【0098】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定せず、Ni、Sn、Pd、及びこれらの合金のいずれか一つ以上を含むめっき層であることができ、複数層で形成されることができる。
【0099】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例として、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順に形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0100】
セラミック電子部品100のサイズは、特に限定する必要はない。
【0101】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有するセラミック電子部品100において、本発明に係る信頼性及び絶縁抵抗の向上効果がより顕著になることができる。
【0102】
したがって、製造誤差、外部電極サイズなどを考慮すると、セラミック電子部品100の長さが1.1mm以下であり、幅が0.55mm以下である場合、本発明に係る信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、セラミック電子部品100の長さは、セラミック電子部品100の第2方向のサイズを意味し、セラミック電子部品100の幅は、セラミック電子部品100の第3方向のサイズを意味することができる。
【0103】
(実験例)
誘電体組成物を用意した後、上記誘電体組成物を含むセラミックグリーンシート上にNiを含む内部電極用導電性ペーストを塗布して内部電極パターンを形成した。その後、上記内部電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを積層して得られた積層体をチップ単位で切断した後、焼成してプロトタイプ積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)を用意した。
【0104】
発明例の場合、BaTiO3 100モルに対してSnを2モル含むシェルと、BaTiO3であるコアを有し、平均サイズが70nmであるコア-シェル構造の誘電体粉末を含む誘電体組成物を用いた。
【0105】
比較例の場合、Snを含まず、BaTiO3粉末を含む誘電体組成物を用いた。
【0106】
プロトタイプ積層セラミックキャパシタ(Proto-type MLCC)を第3方向の中央で第1及び第2方向に切断した後、第1及び第2方向の中央をSTEMを用いてイメージをスキャンした。
図8は、発明例の誘電体層の断面をSTEMを用いてスキャンしたイメージ(a)、Sn元素をSTEM-EDSを用いてマッピング(mapping)したイメージ(b)、及びDy元素をSTEM-EDSを用いてマッピングしたイメージ(c)である。
図9は、比較例の誘電体層の断面をSTEMを用いてスキャンしたイメージ(a)、Sn元素をSTEM-EDSを用いてマッピング(mapping)したイメージ(b)、及びDy元素をSTEM-EDSを用いてマッピングしたイメージ(c)である。
【0107】
図8を参照したところ、四角で示した領域で結晶粒界にSn及びDyが存在することが確認できた。また、Siも結晶粒界に存在することが確認できた。したがって、結晶粒界にSn-Dy-Si二次相が存在することが確認できた。
【0108】
これに対し、
図9の場合、結晶粒界にDyは存在するが、Snが存在しないことが確認できた。
【0109】
発明例及び比較例の信頼性は、高温加速寿命試験で評価した。
【0110】
高温加速寿命試験は、発明例及び比較例のそれぞれ100個のサンプルチップを用意し、105℃で12時間の間9.45Vの電圧を印加した後、絶縁抵抗が初期値の1/10以下に低下したサンプルチップを不良と判断した。
【0111】
比較例の場合、100個のサンプルのうち22個のサンプルが不良と判定された。これに対し、発明例の場合、100個のサンプルのうち1つのサンプルだけが不良と判定され、信頼性が顕著に向上したことが確認できた。
【0112】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【符号の説明】
【0113】
100 セラミック電子部品
110 本体
111 誘電体層
11 第1結晶粒
12 第2結晶粒
13 第3結晶粒
14 結晶粒界
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 電極層
131b、132b めっき層