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特開2022-190674向上したβ相結晶化度を有する酸化グラフェンドープポリフッ化ビニリデン粒子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190674
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】向上したβ相結晶化度を有する酸化グラフェンドープポリフッ化ビニリデン粒子
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/16 20060101AFI20221219BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221219BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08J3/16 CEW
C08K3/04
C08L27/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083209
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】17/346,737
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・エム.・ファルジア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・クラリッジ
(72)【発明者】
【氏名】ホジャット・セイエド・ジャマリ
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA23
4F070AA52
4F070AB09
4F070AC04
4F070AC47
4F070AE28
4F070DA11
4F070DA37
4F070DC07
4F070DC08
4F070DC09
4F070FA03
4F070FA04
4F070FB05
4F070FC03
4J002BD141
4J002DA026
4J002FD016
4J002GF00
4J002GQ00
4J002HA08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】圧電用途で使用するための高球形度粒子、該粒子を作製及び使用する方法を提供する。
【解決手段】酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)複合体と、PVDFと不混和性である分散媒と、任意選択的に乳化安定剤とを含む混合物を、PVDFの融点又は軟化温度以上の温度で混合して、GO-PVDF複合体を分散媒中に分散させることであって、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、分散させることと、混合物をPVDFの融点又は軟化温度未満に冷却して、GO-PVDF粒子を形成することと、GO-PVDF粒子を分散媒から分離することと、で生成され得、GO-PVDF粒子は、PVDF中に分散された酸化グラフェンを含み、GO-PVDF粒子は、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散された酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)複合体を提供することであって、前記GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、提供することと、
GO-PVDF複合体と、前記PVDFと不混和性である分散媒と、任意選択的に乳化安定剤とを含む混合物を、前記PVDFの融点又は軟化温度以上の温度で混合して、前記分散媒中に前記GO-PVDF複合体を分散させることと、
前記混合物を前記PVDFの前記融点又は軟化温度未満に冷却して、GO-PVDF粒子を形成することと、
前記GO-PVDF粒子を前記分散媒から分離することと、を含み、前記GO-PVDF粒子が、前記PVDF中に分散された前記酸化グラフェンを含み、前記GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、方法。
【請求項2】
前記酸化グラフェンと、前記PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、
前記混合物から前記溶媒を蒸発させて、約1重量%以下の前記溶媒を含む前記GO-PVDF複合体を得ることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸発させることが、前記溶媒の沸点+10℃未満の温度(前記溶媒のTBP+10C)においてである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
蒸発させることが、前記混合物を前記溶媒の沸点+10℃未満の温度(前記溶媒のTBP+10C)に加熱することと、前記混合物の表面上にガスを通すことと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
蒸発させることが、前記混合物を、減少した空気圧に曝露することと、前記混合物を、前記減少した空気圧で前記溶媒の沸点+10℃未満の温度(前記溶媒のTBP+10C)に加熱することと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物を生成することが、前記酸化グラフェンを前記溶媒中に分散させることと、前記PVDFを、内部に前記酸化グラフェンが分散された前記溶媒中に溶解させることと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記GO-PVDF粒子が、約0.1μm~約125μmのD10と、約0.5μm~約200μmのD50と、約3μm~約300μmのD90とを有し、D10<D50<D90である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記GO-PVDF粒子が、約0.2~約10の直径スパンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記GO-PVDF粒子が、約0.90~約1.0の真円度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物が、乳化安定剤を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
酸化グラフェンと、PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、
前記溶媒を前記混合物から蒸発させて、約1重量%以下の前記溶媒を含むGO-PVDF複合体を得ることと、を含み、蒸発させることが、前記溶媒の沸点+10℃未満の温度(前記溶媒のTBP+10C)においてであり、前記GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、方法。
【請求項12】
蒸発させることが、前記酸化グラフェンと前記溶媒中に溶解した前記PVDFとの混合物を、前記溶媒の前記TBP+10Cに加熱することと、前記混合物の表面上にガスを通すことと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
蒸発させることが、前記酸化グラフェンと前記溶媒中に溶解した前記PVDFとの混合物を、減少した空気圧に曝露することと、前記混合物を前記溶媒の前記TBP+10C未満の温度に、かつ前記減少した空気圧で、加熱することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記混合物を生成することが、前記酸化グラフェンを前記溶媒中に分散させることと、前記PVDFを、内部に前記酸化グラフェンが分散された前記溶媒中に溶解させることと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記GO-PVDF複合体を溶融乳化させて、GO-PVDF粒子を生成することを更に含み、前記GO-PVDF粒子が、約0.1~約1.5の前記GO-PVDF複合体からのβ相保持率を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
乳化安定剤が、前記溶融乳化中存在しない、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ヘキサメチル-ホスホラミド(HMPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散された酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)粒子を含み、前記GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、組成物。
【請求項19】
前記GO-PVDF粒子が、約0.55g/cm~約0.8g/cmの空気含有密度を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記GO-PVDF粒子が、流動助剤を含まない、請求項18に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化グラフェン及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む粒子であって、PVDFが、有利にはβ相結晶化度を有する、粒子に関する。当該粒子は、酸化グラフェンドープポリフッ化ビニリデン粒子又はGO-PVDF粒子と呼ばれる。本開示は更に、そのようなGO-PVDF粒子を作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形としても知られる三次元(3D)印刷は、急速に成長している技術分野である。積層造形は、従来、ラピッドプロトタイピング作業に使用されてきたが、積層造形は、ラピッドプロトタイプとは完全に異なる構造的及び機械的許容誤差を有し得る商業的及び産業的物体を製造するために採用されることが増えてきている。積層造形の利点を十分に活用するために、ハードウェア、ソフトウェアなどの改善に加えて、より広範囲の物理化学的特性を有する新しい材料の開発が必要である。新しい材料の開発は、積層造形原料の機能性及び印刷品質を向上させるのを支援し得る。
【0003】
積層造形技術は、主に、エネルギー源を使用した溶融材料の固化又は粉末床材料の選択的融合に基づく。選択的レーザー焼結(Selective Laser Sintering、SLS)などの粉末床融合法を使用することにより、正しい原料粉末が使用された場合、極めて微細なマイクロ構造を有する複雑な部品を生成することが可能である。一例として、SLS技術は、人間の骨の構造に一致するように、傾斜多孔性を有するインプラント及び人工足場を生成するために使用されている。一時的な交換用骨充填から永久的な交換への移行は達成されているが、組織-足場界面の不十分な統合、長い修復サイクル、及び修復能力に対する制御の欠如などのいくつかの問題が、依然として存在する。
【0004】
積層造形が拡張している別の領域は、3D印刷物体が刺激(例えば、熱、光、化学物質、電気、及び磁場、又は任意の他の種類のエネルギー源)に応答し得る四次元印刷の概念である。例えば、刺激に対する応答は、別の形状又は構造に物体を変化及び/又は変形し得る。この高度な技術は、ソフトロボット、生医学工学、エレクトロニクス、及び機能的なモダンテキスタイルなどのハイテク分野において有用であり得る。
【0005】
人工骨の3D印刷における前述の欠点に対処するために、4D印刷技術が、可能な解決策として示唆されている。印刷骨足場に追加される次元は、細胞又は組織成長の電気的微小環境を再構築する能力を有する、圧電生体材料などの電気活性材料の導入である。圧電材料は、外部電源の影響なしに、身体動作中に電気刺激を発生する能力を有し得る。この電気刺激は、細胞内経路活性化及び細胞骨格再構成に関連する様々な細胞機能の調節を可能にし得る。
【0006】
従来、圧電材料は、鉛系セラミック又は他の無機材料である。鉛系材料の低コスト及び良好な圧電効率にもかかわらず、そのような材料は、高毒性、不十分な機械的柔軟性、化学的安定性の問題、加工困難性、及び生体非適合性を含むいくつかの重大な欠点を被る。鉛を含まない及び/又はポリマー系の圧電材料(例えば、PVDF)に関連する研究が、分散溶液、薄膜、繊維、膜、及び成形部品に容易に加工される軽量で安価かつ可撓性の生体適合圧電材料で高い関心を集めている。SLS技術のような積層造形方法へのそのような材料の組み込みは、圧電特性を有する高球形度のポリマー粒子を必要とするであろう。
【0007】
PVDFは、少なくとも5つの結晶形態(α、β、γ、δ、及びεとして識別される)を有し、ガンマ(γ)相結晶化度及びベータ(β)相結晶化度が、圧電特性を示す。2つの形態のうち、β相結晶構造が、より強く圧電特性を促進する。したがって、β相結晶化度の比率におけるいかなる改善も、より大きな圧電応答、及び任意の所与の用途の最終部品のより高い効率につながり得る。圧電材料としてのPVDFのβ相結晶構造は、電気エネルギーが機械的エネルギーに変換され、逆もまた同様である環境の変化に反応し得る。例えば、機械的刺激が表面に適用される場合、高いβ相結晶化度を有するPVDFの表面における電荷は、追加のエネルギー源又は電極を必要とせずに変化し得る。他の非圧電結晶相に対するPVDFのβ相結晶化度のパーセンテージを増加させることに、多大な努力がなされてきた。PVDFのβ相結晶構造と酸化グラフェンとの間の水素結合相互作用のために、ある見込みを示した1つの添加剤が、酸化グラフェンナノシート(本明細書では酸化グラフェンとも呼ばれる)である。
【0008】
PVDFと酸化グラフェンとの複合体に関する初期の研究は、概して、粉末の乾式ブレンド又は粉末の湿式ブレンドに関連していた。理論に限定されるものではないが、これは、PVDF中の酸化グラフェンの好適な分散を提供しないと考えられる。むしろ、複合構造は、PVDF粒子を覆う酸化グラフェンナノシート及び酸化グラフェンナノシートの凝集体を含む。
【0009】
PVDF中の酸化グラフェンの改善された分散が、必要である。更に、SLS技術のように、PVDFと酸化グラフェとの複合体を積層造形方法に組み込むために、PVDF中に十分に分散した酸化グラフェンの高球形度ポリマー粒子が必要とされるであろう。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、酸化グラフェンとPVDFとを含む粒子であって、PVDFが、有利にはβ相結晶化度を有する、粒子に関する。当該粒子は、酸化グラフェンドープポリフッ化ビニリデン粒子又はGO-PVDF粒子と呼ばれる。本開示は更に、そのようなGO-PVDF粒子を作製及び使用する方法に関する。
【0011】
本明細書に開示されるのは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散した酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)複合体を提供することであって、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、提供することと、GO-PVDF複合体と、PVDFと不混和性である分散媒と、任意選択的に乳化安定剤とを含む混合物を、PVDFの融点又は軟化温度以上の温度で混合して、分散媒中にGO-PVDF複合体を分散させることと、混合物をPVDFの融点又は軟化温度未満に冷却して、GO-PVDF粒子を形成することと、GO-PVDF粒子を分散媒から分離することと、を含み、GO-PVDF粒子が、PVDF中に分散された酸化グラフェンを含み、GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する方法である。
【0012】
本明細書に開示されるのは、酸化グラフェンと、PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、溶媒を混合物から蒸発させて、約1重量%以下の溶媒を含むGO-PVDF複合体を得ることと、を含み、蒸発させることが、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)においてであり、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する方法である。
【0013】
本明細書に開示されるのは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散した酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)粒子を含み、GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する組成物である。
【0014】
本明細書に開示されるのは、表面上に、前述のGO-PVDF粒子を、任意選択的に熱可塑性ポリマー粒子と組み合わせて堆積させることと、堆積されると、粒子の少なくとも一部分を加熱して、その固結化を促進し、固結化体を形成することと、を含み、固結化体が、約0.1~約1.5のGO-PVDF粒子からのβ相保持率を有する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図は、実施形態の特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態として見られるべきではない。開示される主題は、本開示の利益を有する当業者に想到されるような、形態及び機能において相当な修正、変更、組み合わせ、及び等価物が可能である。
【0016】
図1】本開示の非限定的な例示的方法のフローチャートである。
【0017】
図2】本開示の非限定的な例示的方法のフローチャートである。
【0018】
図3A】PVDF粒子の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)画像である。
図3B】PVDF粒子の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、SEM)画像である。
【0019】
図4】PVDF粒子の断面SEM画像である。
【0020】
図5A】本開示のGO-PVDF粒子のSEM画像である。
図5B】本開示のGO-PVDF粒子のSEM画像である。
図5C】本開示のGO-PVDF粒子のSEM画像である。
【0021】
図6A】本開示のGO-PVDF粒子の断面SEM画像である。
図6B】本開示のGO-PVDF粒子の断面SEM画像である。
図6C】本開示のGO-PVDF粒子の断面SEM画像である。
【0022】
図7】本開示のGO-PVDF粒子を含む、実施例の項に記載の試料の正規化されたフーリエ変換赤外(Fourier-Transform Infrared、FTIR)スペクトルである。
【0023】
図8】本開示のGO-PVDF粒子を含む、実施例の項に記載の試料の正規化されたFTIRスペクトルである。
【0024】
図9A】本開示のGO-PVDF粒子を含む、実施例の項に記載の試料のX線粉末回折(X-Ray powder Diffraction、XRD)スペクトルである。
図9B】本開示のGO-PVDF粒子を含む、実施例の項に記載の試料のX線粉末回折(X-Ray powder Diffraction、XRD)スペクトルである。
図9C】本開示のGO-PVDF粒子を含む、実施例の項に記載の試料のX線粉末回折(X-Ray powder Diffraction、XRD)スペクトルである。
【0025】
図10】本開示のGO-PVDF粒子から生成された焼結層の光学顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、ポリフッ化ビニリデン中に分散した酸化グラフェンを含む粒子であって、ポリフッ化ビニリデンが、有利にはβ相結晶化度を有する、粒子、に関する。当該粒子は、酸化グラフェンドープポリフッ化ビニリデン粒子又はGO-PVDF粒子と呼ばれる。本開示は更に、そのようなGO-PVDF粒子を作製及び使用する方法に関する。
【0027】
本明細書に記載の方法は、GO-PVDF複合体を作製することであって、酸化グラフェンが、PVDF中に分散し、酸化グラフェンの凝集が軽減される、作製すること、を含み得る。理論に限定されるものではないが、PVDF中の酸化グラフェンの分散を改善することによって、酸化グラフェンのより多くの表面積が、PVDFに曝露され、酸化グラフェンが、β相結晶構造内のPVDFを優先的に配向させるため、β相結晶化度の量を増加させ得ると考えられる。
【0028】
本明細書に記載の追加の方法は、高いβ相結晶化度を有する前述のGO-PVDF複合体を使用する溶融乳化法によって、高球形度のGO-PVDF粒子を作製することを含む。有利には、溶融乳化法中、有意な量のβ相結晶化度が、維持される。更に、高いβ相結晶化度を有する高球形度のGO-PVDF粒子を使用するSLS技術は、たとえあったとしても、β相結晶化度の量を大幅に低減するようには思われない。したがって、本明細書に記載の高いβ相結晶化度を有する高球形度のGO-PVDF粒子は、SLS技術によって、良好な圧電特性を有する物体を生成するのに有用であり得る。
【0029】
定義及び試験方法
【0030】
本明細書で使用するとき、「不混和性」という用語は、組み合わされたときに、周囲気圧及び室温で、又は室温で固体である場合は成分の融点で、互いに5重量%未満の溶融度を有する2つ以上の相を形成する成分の混合物を指す。例えば、10,000g/molの分子量を有するポリエチレンオキシドは、室温で固体であり、65℃の融点を有する。したがって、室温で液体である材料及び当該ポリエチレンオキシドが65℃で5重量%未満の溶融度を有する場合、当該ポリエチレンオキシドは当該材料と不混和性である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「酸化グラフェン」及び「酸化グラフェンナノシート」という用語は、酸化グラフェンの1~約30層の構造を指す。一般に、酸化グラフェンは、グラファイトを強い酸化剤及び/又は酸で処理することによって生成される。しかしながら、「酸化グラフェン」及び「酸化グラフェンナノシート」という用語は、製造方法によって限定されない。
【0032】
本明細書で使用される場合、酸化グラフェンの「酸化度」は、Mater.Chem.Phys.2015,153,209-220,DOI:10.1016に記載のように、900cm-1~1850cm-1の波数範囲のFTIRスペクトル内で観測する全ての官能基の存在に対する酸素含有官能基(RPOCFG)の相対パーセンテージによって決定される。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、同じ又は異なるマー単位のうちの2つ以上を有する。「ホモポリマー」は、同じであるマー単位を有するポリマーである。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどを含むが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語はまた、インパクトコポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、ランダムコピリマー、及び交互コポリマーを含む。
【0034】
本明細書で使用される場合、「モノマー」又は「コモノマー」という用語は、ポリマーを形成するために使用されるモノマー(すなわち、重合前の形態の未反応化合物)を指し得、本明細書では「[モノマー]由来単位」とも呼ばれる、ポリマーに組み込まれた後のモノマーも指し得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、ポリマーが、モノマー(若しくはコモノマー)又はモノマー由来単位(若しくはコモノマー由来単位)を「含む」、「からなる」、又は「から本質的になる」として言及される合、モノマー(若しくはコモノマー)は、モノマー(若しくはコモノマー)の重合された/誘導体の形態でポリマー中に存在する。例えば、コポリマーが、35重量%~55重量%のポリフッ化ビニリデン含有量を有すると言われる場合、コポリマー中のマー単位は、重合反応においてポリフッ化ビニリデンから誘導され、当該誘導単位は、コポリマーの重量に基づいて、35重量%~55重量%で存在することが理解される。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ポリフッ化ビニリデン」及び「PVDF」という用語は、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー、フッ化ビニリデン由来単位を含むコポリマー、及びそれらの混合物を包含する。
【0037】
本明細書で使用するとき、「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱及び冷却において可逆的に軟化及び硬化するプラスチックポリマー材料を指す。熱可塑性ポリマーは、熱可塑性エラストマーを包含する。
【0038】
本明細書で使用するとき、「エラストマー」という用語は、結晶性「硬質」部分及び非晶性「軟質」部分を含むコポリマーを指す。ポリウレタンの場合、結晶性部分は、ウレタン官能性及び任意選択の鎖延長基を含むポリウレタンの一部分を含んでもよく、軟質部分は、例えば、ポリオールを含んでもよい。
【0039】
本明細書で使用するとき、「ポリウレタン」という用語は、ジイソシアネートと、ポリオールと、任意選択の鎖延長剤との間のポリマー反応生成物を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、「酸化物」という用語は、金属酸化物及び非金属酸化物の両方を指す。本開示の目的では、ケイ素は、金属であるとみなされる。
【0041】
本明細書で使用するとき、粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)及びポリマー粒子の表面に関して「埋め込む」という用語は、粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)が、ポリマー粒子の表面上に単に置かれた場合よりも大きな程度に、ポリマーが粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)と接触するように、粒子が、ポリマー粒子の表面内に少なくとも部分的に延在していることを指す。
【0042】
本明細書で使用するとき、粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)及びポリマー粒子に関して「カプセル化された」という用語は、ポリマー粒子によって封入されている粒子を指す。つまり、当該粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)の部分は、ポリマー粒子の表面を越えて延在しない。「カプセル化物」という用語は、粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)表面の表面がポリマーと接触する程度を意味しない。例えば、粒子(例えば、ナノ粒子及び/又は酸化グラフェン)は、少なくとも部分的にポリマー粒子内の空隙内にあり、粒子の表面の一部分のみがポリマーと接触していてもよい。
【0043】
以下本明細書では、D10、D50、D90、及び直径スパンは、粒径を記載するために主に使用される。本明細書で使用するとき、「D10」という用語は、粒子集団の10%(別途指定のない限り、体積ベースの分布に対して)に見出される粒径を指す。本明細書で使用するとき、「D50」、「平均粒子直径」、及び「平均粒径」という用語は、直径であって、それ未満に、粒子集団の50%(別途指定のない限り、体積基準のメジアン平均に関して)が見出される、直径、を指す。本明細書で使用するとき、「D90」という用語は、直径であって、それ未満に、粒子集団の90%(別途指定のない限り、体積基準の分布に関して)が見出される、直径、を指す。本明細書で使用するとき、直径に言及する際の「直径スパン」及び「スパン」並びに「スパンサイズ」という用語は、粒径分布の広がりの指標を提供し、(D90-D10)/D50として計算される。
【0044】
粒子直径及び粒径分布は、Malvern MASTERSIZER(商標)3000を使用する光散乱技術によって決定される。光散乱技術については、対照試料は、Malvern Analytical Ltd.から入手した商標名Quality Audit Standards QAS4002(商標)の15μm~150μmの範囲内の直径を有するガラスビーズであった。別途記載のない限り、試料は乾燥粉末として分析した。分析した粒子は、空気中に分散させ、MASTERSIZER(商標)3000により、AERO S(商標)乾燥粉体分散モジュールを使用して分析した。粒径は、サイズの関数としての体積密度のプロットから、計器ソフトウェアを使用して導出した。
【0045】
本明細書で使用するとき、篩過について言及する場合、孔/スクリーンサイズは、U.S.A.Standard Sieve(ASTM E11-17)により説明されているものである。
【0046】
本明細書で使用する場合、粒子に関する「真円度」という用語は、粒子が完全な球体にどの程度近いかを指して用いられる。真円度を測定するために、フロー粒子撮像を使用した光学顕微鏡画像を撮影する。顕微鏡画像の平面内の粒子の周囲の長さ(P)及び面積(A)を(例えば、Malvern Instrumentsから入手可能なSYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器を使用して)計算する。粒子の真円度はCEA/Pであり、式中、CEAは、実際の粒子の面積(A)に相当する面積を有する円の外周である。本明細書では、真円度は、SYSMEX FPIA 3000粒子形状及び粒径分析器による3回の分析に基づいており、1回ごとに6,000~10,000個の粒子を分析する。報告された真円度は、粒子数に基づいた中央平均真円度である。分析では、背景画素と粒子画素との間のグレースケールレベル(greyscale level)を区別するための閾値(例えば、不均一な照明条件を補正するため)を背景モーダル値の90%に設定した。
【0047】
本明細書で使用するとき、「剪断力」という用語は、流体中で機械的撹拌を誘導する撹拌又は類似のプロセスを指す。
【0048】
本明細書で使用するとき、「アスペクト比」という用語は、長さを幅で除したものを指し、ここで、長さは幅よりも大きい。
【0049】
別途指定のない限り、ポリマーの融点は、ASTM E794-06(2018)により、昇温速度及び冷却速度10℃/分で決定する。
【0050】
別途指定のない限り、ポリマーの軟化温度又は軟化点は、ASTM D6090-17により決定される。軟化温度は、1℃/分の加熱速度で0.50グラムの試料を使用して、Mettler-Toledoから入手可能なカップアンドボール装置を使用することで測定することができる。
【0051】
安息角は、粉体の流動性の尺度である。安息角の測定値は、ASTM D6393-14「Standard Test Method for Bulk Solids Characterized by Carr Indices」を使用するHosokawa MicronのPowder Characteristics Tester PT-Rを使用して決定した。
【0052】
空気含有密度(aerated density)(ρaer)は、ASTM D6393-14に従って測定される。
【0053】
嵩密度(ρbulk)は、ASTM D6393-14に従って測定される。
【0054】
タップ密度(ρtap)は、ASTM D6393-14に従って測定される。
【0055】
ハウスナー比(H)は、粉体の流動性の尺度であり、H=ρtap/ρbulkにより計算し、式中、ρbulkは、ASTM D6393-14による嵩密度であり、ρtapはASTM D6393-14によるタップ密度である。
【0056】
本明細書で使用するとき、分散媒の粘度は、別途記載のない限り、ASTM D445-19により測定して、25℃での動粘度である。商業的に調達された分散媒(例えば、ポリジメチルシロキサン油)については、本明細書に引用される動粘度データは、前述のASTM又は別の標準的な測定技法に従って測定されるかどうかにかかわらず、製造業者によって提供された。
【0057】
PVDFコポリマーは、約75kDa~約600kDa(又は約75kDa~約250kDa、又は約200kDa~約400kDa、又は約300kDa~約600kDa)の重量平均分子量(M)を有し得る。
【0058】
PVDFコポリマーは、約30kDa~約300kDa(又は約300kDa~約150kDa、又は約100kDa~約200kDa、又は約150kDa~約300kDa)の数平均分子量(M)を有し得る。
【0059】
PVDFコポリマーは、約1.5~約2.5(約1.5~約2.0、又は約2.0~約2.5)の多分散指数(M/M)を有し得る。
【0060】
Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である。特に明記しない限り、Mw及びMnは、g/mol又はkDa(1,000g/mol=1kDa)の単位を有し、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。多分散指数又はPDIは、Mw/Mnである。
【0061】
試料の透過フーリエ変換赤外線(FTIR)は、使用して実行され、Diamond Crystal ATR(減衰全内部反射)アクセサリを有するBruker Alpha II FTIR分光計であった。液体試料及び固体試料の測定は、塩板又は特殊な試料取り扱いを必要とせずに、直接行われ得る。
【0062】
試料が、ダイヤモンド結晶板上に直接配置された。固体の場合、結晶を約1mmの厚さの材料でコーティングするのに十分な粉末が適用された。圧力アームが、試料上に位置付けられ、圧力が、試料に印加された。
【0063】
本明細書で使用される場合、β相PVDFの透過FTIR最小透過率(t-FTIR-β)は、840cm-1~820cm-1の最小透過率(%)である。
【0064】
本明細書で使用される場合、α相PVDFの透過FTIR最小透過率(t-FTIR-α)は、775cm-1~750cm-1の最小透過率(%)である。
【0065】
本明細書で使用される場合、α相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比は、t-FTIR-βをt-FTIR-αで除算したものである。
【0066】
本明細書で使用される場合、第1の材料から第2の材料へのβ相保持率は、第1の材料のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を、第2の材料のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比で除算したものとして定義される。例えば、0.5%のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有するGO-PVDF粒子を生成するために使用される、0.3%のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有するGO-PVDF複合体は、0.3%/0.5%=0.6のβ相保持率を有する。
【0067】
GO-PVDF複合体及び作製方法
【0068】
本開示は、約1以下(又は約0.9以下、又は約0.8以下、又は約0.7以下、又は約0.6以下、又は約0.5以下、又は0~約1、又は0~約0.9、又は0~約0.8、又は0~約0.7、又は0~約0.6、又は0~約0.5)のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、PVDF中に分散した酸化グラフェンを含むGO-PVDF複合体を生成するための方法を含む。もしα相PVDFの透過FTIR最小透過率が、
【0069】
酸化グラフェンは、約0.3nm~約5nm(又は約0.3nm~約1nm、又は約0.5nm~約3nm、又は約1nm~約5nm)の平均厚さを有し得る。
【0070】
酸化グラフェンは、約30%~約80%(又は約30%~約50%、又は約40%~約65%、又は約50%~約80%の酸化度を有し得る。
【0071】
酸化グラフェンは、約300m/g~約1000m/g(又は約300m/g~約600m/g、又は約450m/g~約750m/g、又は約600m/g~約1000m/g)の窒素BET表面積を有し得る。
【0072】
酸化グラフェンは、凝集酸化グラフェンの粉末であり得、当該粉末は、約0.1ミクロン~約10ミクロン(又は約0.1ミクロン~約5ミクロン、又は約0.5ミクロン~約3ミクロン、又は約2ミクロン~約10ミクロン)の平均径(D50)を有する。
【0073】
市販の酸化グラフェンの例としては、以下に限定されないが、ACS Materialから入手可能な単層酸化グラフェンフレーク(H法)、ACS Materialから入手可能な単層酸化グラフェン粉末(H法)、ACS Materialから入手可能な酸化グラフェン(S法)、ACS Materialから入手可能な高表面積酸化グラフェン、SigmaAldrichから入手可能な酸化グラフェン粉末(15~20シート)、SigmaAldrichから入手可能な酸化グラフェンシートなど、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0074】
PVDFは、ポリフッ化ビニリデンホモポリマー、フッ化ビニリデン由来単位と、コモノマー由来単位とを含むコポリマー、又はそれらの混合物であり得る。コモノマーの例としては、以下に限定されないが、トリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)など、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。PVDFコポリマーは、約50mol%~約95mol%(又は約50mol%~約75mol%、又は約65mol%~約85mol%、又は約75mol%~約95mol%)のフッ化ビニリデン由来単位と、約5mol%~約50mol%(又は約5mol%~約25mol%、又は約15mol%~約35mol%、又は約25mol%~約50mol%)の1つ以上のコモノマーを(累積的に)含み得る。
【0075】
PVDFコポリマーは、約150℃~約200℃(又は約150℃~約180℃、又は約175℃~約200℃)の融点を有し得る。
【0076】
PVDFコポリマーは、約75kDa~約600kDa(又は約75kDa~約250kDa、又は約200kDa~約400kDa、又は約300kDa~約600kDa)の重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0077】
PVDFコポリマーは、約30kDa~約300kDa(又は約300kDa~約150kDa、又は約100kDa~約200kDa、又は約150kDa~約300kDa)の数平均分子量(Mn)を有し得る。
【0078】
PVDFコポリマーは、約1.5~約2.5(約1.5~約2.0、又は約2.0~約2.5)の多分散指数(Mw/Mn)を有し得る。
【0079】
GO-PVDF複合体中のPVDFに対する酸化グラフェンの重量比は、約0.01:99.99~約10:90(又は約0.01:99.99~約1:99、又は約1:99~約5:95、又は約5:95~約10:90)であり得る。
【0080】
概して、本明細書に記載のGO-PVDF複合体は、酸化グラフェン及びPVDFを溶媒中に分散及び/又は溶解させることと、溶媒を蒸発させて、GO-PVDF複合体を得ることと、によって生成され得る。蒸発させることは、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)においてであり得る。例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)の沸点は、約1バールの圧力で約153℃である。したがって、約1バールの圧力で、溶媒としてDMFを使用する方法は、約163℃未満の温度で蒸発させることを含み得る。好ましくは、蒸発させることは、溶媒中の気泡形成による破壊を軽減するために、溶媒の沸点未満の温度においてである。
【0081】
図1は、GO-PVDF複合体114を生成するための本開示の非限定的な方法100の図である。この例では、酸化グラフェン102と、PVDF104とが、溶媒106中で混合されて108、混合物110が得られる。PVDF104は、好ましくは、溶媒106に可溶性である。酸化グラフェン102は、好ましくは、ある程度可溶性でないとしても、溶媒106中に分散性である。
【0082】
混合物110におけるPVDF104に対する酸化グラフェン102の重量比は、好ましくは、所望のGO-PVDF複合体114における重量比であり、これは、約0.01:99.99~約10:90(又は約0.01:99.99~約1:99、又は約1:99~約5:95、又は約5:95~約10:90)であり得る。
【0083】
溶媒106は、混合物110の総重量に基づいて、約50重量%~約95重量%(又は約50重量%~約75重量%、又は約65重量%~約85重量%、又は約75重量%~約95重量%)で、混合物110中に存在し得る。
【0084】
溶媒106の例としては、以下に限定されないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ヘキサメチル-ホスホラミド(HMPA)など、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0085】
酸化グラフェン102、PVDF104、及び溶媒106を混合すること108は、1つ以上の混合ステップで達成され、様々な混合及び/又は分散方法を利用し得る。混合すること108は、以下に限定されないが、撹拌、均質化、ブレンド、超音波処理など、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る、混合及び/又は分散方法を利用し得る。
【0086】
例えば、成分202、204、及び206が全て、容器内に一緒に入れられて、混合され得る108。
【0087】
別の例では、酸化グラフェン102は、溶媒106の一部分内に分散され得、PVDF104は、溶媒106の別の部分内に溶解され得る。次いで、2つの混合物が、組み合わされて、混合物110を生成し得る。
【0088】
更に別の例では、酸化グラフェン102は、PVDF104を添加して混合物110を生成する前に、溶媒106中に分散され得る。
【0089】
混合している間108、溶媒106中の成分102及び104の分散及び/又は溶解を支援するために、熱が使用され得る。
【0090】
混合物110が調製されると、溶媒108が、混合物110から蒸発され得る112。好ましくは、これはゆっくりと、最小限の撹拌で行われる。理論に限定されるものではないが、撹拌(例えば、沸騰又は還流中に形成される気泡によって引き起こされる)は、酸化グラフェン102を凝集させるか、又は得られたGO-PVDF複合体114内の他の不均質性を生成するソースになり得ると考えられる。したがって、蒸発112は、好ましくは、溶媒108の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)(より好ましくは、溶媒108の沸点超未満)で実施され得、蒸発を促進するために、温度以外の手段が使用される。例えば、圧力が低減されてもよい。別の例では、ガス流が、混合物の表面上に流されてもよい。両方の例において、目標は、混合物の表面上の環境内の溶媒の低い分圧を維持して、蒸発を促進することである。
【0091】
GO-PVDF複合体114は、約1重量%以下(又は0重量%~約1重量%、又は0重量%~約0.5重量%、又は0重量%~約0.1重量%)の溶媒を含み得る。
【0092】
次いで、GO-PVDF複合体114は、極低温粉砕、溶融乳化、又は他の方法によって、粒子を形成するための出発材料として使用され得る。
【0093】
GO-PVDF粒子及び作製方法
【0094】
本明細書に記載のGO-PVDF複合体は、GO-PVDF粒子の溶融乳化物生成に含まれ得る。
【0095】
図2は、本開示の非限定的な例示的方法200のフローチャートである。GO-PVDF複合体202、分散媒204、及び任意選択的に乳化安定剤206が組み合わされて208、混合物210を生成する。成分202、204、及び206は、任意の順序で添加され、成分202、204、及び206を組み合わせる208プロセス中、混合及び/又は加熱を含み得る。
【0096】
次いで、GO-PVDF複合体202の融点又は軟化温度以上の温度で混合物210に十分に高い剪断力を印加することによって、混合物210が処理されて212、溶融乳化物214を形成し得る。温度が、GO-PVDF複合体202の融点又は軟化温度を上回るため、GO-PVDF複合体202のPVDFは、内部にGOが分散したポリマー溶融物になる。剪断速度は、ポリマー溶融物を液滴(すなわち、ポリマー乳化物214)として分散媒204中に分散させるのに十分であるべきである。理論に限定されるものではないが、全ての他の要因が同じである場合、剪断力を高めると、分散媒204中のポリマー溶融物の液滴のサイズが減少するはずであると考えられる。しかしながら、ある時点では、剪断を増加させ、液滴サイズを減少させた際に戻りが減少する場合がある、又は液滴の内容物が崩壊して、それから製造される粒子の品質が低下する場合がある。
【0097】
次いで、混合容器の内側及び/又は外側の溶融乳化物214が冷却されて216、冷却された混合物218を生成し、ポリマーの液滴をGO-PVDF粒子222(固化GO-PVDF粒子とも称される)に固化させる。
【0098】
次いで、冷却された混合物218が処理されて220、GO-PVDF粒子222を他の成分224(例えば、分散媒204及び過剰な乳化安定剤206)から単離し、GO-PVDF粒子222を洗浄するか、又はさもなければ精製し得る。乳化安定剤206の少なくとも一部分が、含まれる場合、GO-PVDF粒子222の外面を被覆し得る。乳化安定剤206、又はその一部分が、GO-PVDF粒子222上にコーティング、おそらく均一なコーティングとして堆積され得る。温度(冷却速度を含む)、並びに乳化安定剤206の種類及びサイズなどの非限定的な要因に依存し得るいくつかの場合には、乳化安定剤206のナノ粒子は、GO-PVDF粒子222の外表面内に少なくとも部分的に埋め込まれた状態になり得る。埋め込みが起こらなかった場合でも、乳化安定剤206内のナノ粒子の少なくとも一部分が、GO-PVDF粒子222と強固に会合されたままであり、それらの更なる使用を容易にし得る。対照的に、既に形成されたポリマー微粒子(例えば、低温粉砕又は沈殿のプロセスによって形成された)とシリカナノ粒子のような流動助剤との乾燥ブレンドによって、ポリマー微粒子上の流動助剤の強固で均一なコーティングは得られない。
【0099】
GO-PVDF粒子222が、任意選択的に更に精製されて226(以下により詳細に記載される)、精製されたGO-PVDF粒子228を得ることができる。
【0100】
分散媒204は、様々な処理温度(例えば、室温からプロセス温度まで)において、GO-PVDF複合体202と、分散媒204とが不混和性であるように選択されるべきである。考慮され得る追加の要因は、溶融GO-PVDF複合体と、分散媒204との間のプロセス温度における粘度の差(例えば、差又は比)である。粘度の差は、液滴破壊及び粒径分布に影響を及ぼし得る。理論に限定されるものではないが、溶融GO-PVDF複合体及び分散媒204の粘度及び/又は疎水性が類似しすぎると、生成物の真円度が総じて低減され得、粒子が、より卵形になり、より細長い構造が、観察されると考えられる。
【0101】
好適な分散媒204は、約1,000cSt~約150,000cSt(又は約1,000cSt~約60,000cSt、又は約40,000cSt~約100,000cSt、又は約75,000cSt~約150,000cSt)の25℃での粘度を有する。
【0102】
分散媒204の例としては、以下に限定されないが、シリコーンオイル、フッ素化シリコーンオイル、ペルフッ素化シリコーンオイル、ポリエチレングリコール、アルキル末端ポリエチレングリコール(例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TDG)のようなC1~C4末端アルキル基)、パラフィン、流動ワセリン、ミンクオイル、タートルオイル、大豆油、ペルヒドロスクアレン、スイートアーモンドオイル、カロフィルムオイル、パームオイル、パールリームオイル、グレープシードオイル、ゴマ油、トウモロコシ油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、杏油、ヒマシ油、アボカド油、ホホバ油、オリーブ油、穀物胚芽油、ラノリン酸のエステル、オレイン酸のエステル、ラウリン酸のエステル、ステアリン酸のエステル、脂肪族エステル、高級脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸で修飾されたポリシロキサン、脂肪族アルコールで修飾されたポリシロキサン、ポリオキシアルキレンで修飾されたポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。シリコーンオイルの例としては、限定するものではないが、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性メチルフェニルポリシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性メチルフェニルポリシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性メチルフェニルポリシロキサンなど、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。分散媒204が、前述のうちの2つ以上を含む場合、分散媒204は、1つ以上の相を有し得る。例えば、脂肪酸で修飾されたポリシロキサン及び脂肪族アルコールで修飾されたポリシロキサン(好ましくは、脂肪酸及び脂肪族アルコールと同様の鎖長を有する)は、単相分散媒204を形成し得る。別の例では、シリコーンオイルと、アルキル末端ポリエチレングリコールとを含む分散媒204は、二相分散媒204を形成し得る。好ましくは、分散媒204は、極性であり、GO-PVDF複合体114のPVDFとは異なる疎水性を有する。
【0103】
分散媒204は、組み合わされたGO-PVDF複合体202及び分散媒204の約40重量%~約95重量%(又は約75重量%~約95重量%、又は約70重量%~約90重量%、又は約55重量%~約80重量%、又は約50重量%~約75重量%、又は約40重量%~約60重量%)で、混合物210中に存在し得る。
【0104】
場合によっては、分散媒204は、約0.6g/cm~約1.5g/cmの密度を有し得、GO-PVDF複合体202は、約0.7g/cm~約1.7g/cmの密度を有し、熱可塑性ポリマーは、分散媒の密度と同様であるか、それより低いか、又はそれより高い密度を有する。
【0105】
本開示の方法及び組成物に使用される乳化安定剤206は、ナノ粒子(例えば、酸化物ナノ粒子、カーボンブラック、ポリマーナノ粒子、及びそれらの組み合わせ)、界面活性剤など、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0106】
酸化物ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子、非金属酸化物ナノ粒子、又はこれらの混合物であってもよい。酸化物ナノ粒子の例としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、酸化鉄、酸化銅、酸化スズ、酸化ホウ素、酸化セリウム、酸化タリウム、及び酸化タングステンなど、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩、ホウケイ酸塩、及びアルミノホウケイ酸塩のような混合された金属酸化物及び/又は非金属酸化物も、金属酸化物という用語に含まれる。酸化物ナノ粒子は、親水性であっても疎水性であってもよく、天然の粒子であっても粒子の表面処理の結果であってもよい。例えば、ジメチルシリル、トリメチルシリルなどのような疎水性表面処理を有するシリカナノ粒子が本開示の方法及び組成物に使用されてもよい。加えて、メタクリレート官能基のような機能的な表面処理を施したシリカが、本開示の方法及び組成物に使用されてもよい。非官能化酸化物ナノ粒子もまた同様に、使用に好適であり得る。
【0107】
シリカナノ粒子の市販の例としては、Evonikから入手可能なAEROSIL(登録商標)(例えば、AEROSIL(登録商標)R812S(疎水変性表面及び260±30m/gのBET表面積を有する平均直径約7nmのシリカナノ粒子)、AEROSIL(登録商標)RX50(疎水変性表面及び35±10m/gのBET表面積を有する平均直径約40nmのシリカナノ粒子)、AEROSIL(登録商標)380(疎水変性表面及び380±30m/gの表面積を有するシリカナノ粒子)など、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
カーボンブラックは、本明細書に開示される組成物及び方法において乳化安定剤として存在し得る別の種類のナノ粒子である。様々な等級のカーボンブラックが当業者に馴染みのあるものであり、そのうちのいずれかが本明細書で使用され得る。赤外線を吸収することができる他のナノ粒子が同様に使用されてもよい。
【0109】
ポリマーナノ粒子は、本明細書の開示において乳化安定剤として存在し得る別の種類のナノ粒子である。好適なポリマーナノ粒子は、本明細書の開示による溶融乳化によって処理されたときに溶融しないように、熱硬化性である及び/又は架橋されている1つ以上のポリマーを含んでもよい。高い融点又は分解点を有する高分子量熱可塑性ポリマーも同様に、好適なポリマーナノ粒子乳化安定剤を含んでもよい。
【0110】
ナノ粒子は、平均直径(体積を基準としたD50)が、約1nm~約500nm(又は約10nm~約150nm、又は約25nm~約100nm、又は約100nm~約250nm、又は約250nm~約500nm)であってもよい。
【0111】
ナノ粒子は、BET表面積が、約10m/g~約500m/g(又は約10m/g~約150m/g、又は約25m/g~約100m/g、又は約100m/g~約250m/g、又は250m/g~約500m/g)であってもよい。
【0112】
ナノ粒子は、GO-PVDF複合体202の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%(又は約0.01重量%~約1重量%、又は約0.1重量%~約3重量%、又は約1重量%~約5重量%、又は約5重量%~約10重量%)の濃度で、混合物210中に含まれ得る。
【0113】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は双性イオン性であり得る。界面活性剤の例としては、以下に限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ソルビタン、ポリ[ジメチルシロキサン-コ-[3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)プロピルメチルシロキサン]]、ドキュセートナトリウム(ナトリウム1,4-ビス(2-エチルヘキソキシ)-1,4-ジオキソブタン-2-スルホネート)など、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。界面活性剤の市販の例としては、CALFAX(登録商標)DB-45(ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム、Pilot Chemicalsから入手可能)、SPAN(登録商標)80(ソルビタンマレエート非イオン性界面活性剤)、MERPOL(登録商標)界面活性剤(Stepan Companyから入手可能)、TERGITOL(商標)TMN-6(水溶性非イオン性界面活性剤、DOWから入手可能)、TRITON(商標)X-100(オクチルフェノールエトキシレート、SigmaAldrichから入手可能)、IGEPAL(登録商標)CA-520(ポリオキシエチレン(5)イソオクチルフェニルエーテル、SigmaAldrichから入手可能)、BRIJ(登録商標)S10(ポリエチレングリコールオクタデシルエーテル、SigmaAldrichから入手可能)など、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
界面活性剤は、GO-PVDF複合体202の重量に基づいて、約0.01重量%~約10重量%(又は約0.01重量%~約1重量%、又は約0.5重量%~約2重量%、又は約1重量%~約3重量%、又は約2重量%~約5重量%、又は約5重量%~約10重量%)の濃度で、混合物210中に含まれ得る。代替的に、混合物210は、界面活性剤を含まなくても(又は界面活性剤が不存在であっても)よい。
【0115】
界面活性剤に対するナノ粒子の重量比は、約1:10~約10:1(又は約1:10~約1:1、又は約1:5~約5:1、又は約1:1~約10:1)であり得る。
【0116】
上記のように、成分202、204、及び206は、任意の順序で加えられ、成分202、204、及び206を組み合わせるプロセス208中の混合及び/又は加熱を含み得る。例えば、乳化安定剤206は、GO-PVDF複合体202を添加する前に、まず分散媒204中に分散され得、任意選択的に当該分散液の加熱を伴う。別の非限定的な例では、GO-PVDF複合体202が加熱されて、ポリマー溶融物が生成され、これに、分散媒204及び乳化安定剤206が一緒に又はいずれかの順序で添加され得る。更に別の非限定的な例では、GO-PVDF複合体202及び分散媒204は、GO-PVDF複合体202のPVDFの融点又は軟化温度以上の温度で、及び分散媒204中に熱可塑性ポリマー溶融物を分散させるのに十分な剪断速度で、混合され得る。次いで、乳化安定剤206が添加されて、混合物210を形成し、設定された期間の間、好適なプロセス条件で維持され得る。
【0117】
成分202、204、及び206を任意の組み合わせで組み合わせること208は、処理212に使用される混合装置及び/又は別の好適な容器内で行われ得る。非限定的な例として、GO-PVDF複合体202は、処理212に使用される混合装置内で、GO-PVDF複合体202のPVDFの融点又は軟化温度以上の温度に加熱され得、乳化安定剤206は、別の容器内で分散媒204中に分散され得る。次いで、当該分散液が、処理212に使用される混合装置内のGO-PVDF複合体202の溶融物に添加され得る。
【0118】
溶融乳化物214を生成するための処理212に使用される混合装置は、溶融乳化物214をGO-PVDF複合体202のPVDFの融点又は軟化温度以上の温度に維持すること、及びポリマー溶融物を液滴として分散媒204中に分散させるのに十分な剪断速度を適用することが、可能であるべきである。
【0119】
溶融乳化物214を生成するための処理212に使用される混合装置の例としては、以下に限定されないが、押出機(例えば、連続押出機、バッチ押出機など)、撹拌反応器、ブレンダ、インラインホモジナイザシステムを備える反応器など、及びそこから派生する装置が挙げられる。
【0120】
設定された期間、好適なプロセス条件(例えば、温度、剪断速度など)での処理212及び溶融乳化物214の形成。
【0121】
処理212及び溶融乳化物214の形成の温度は、GO-PVDF複合体202のPVDFの融点又は軟化温度よりも高く、かつ混合物210中の任意の成分202、204、及び206の分解温度未満であるべきである。例えば、処理212及び溶融乳化物214の形成の温度は、処理212及び溶融乳化物214の形成の温度が、混合物210中の任意の成分202、204、及び206の分解温度未満であるという条件で、GO-PVDF複合体202のPVDFの融点又は軟化温度よりも約1℃~約50℃(又は約1℃~約25℃、又は約5℃~約30℃、又は約20℃~約50℃)高くあり得る。
【0122】
処理212及び溶融乳化物214の形成の剪断速度は、ポリマー溶融物を液滴として分散媒204中に分散させるのに十分な高さであるべきである。当該液滴は、直径が約1000μm以下(又は約1μm~約1000μm、又は約1μm~約50μm、又は約10μm~約100μm、又は約10μm~約250μm、又は約50μm~約500μm、又は約250μm~約750μm、又は約500μm~約1000μm)の液滴を含むべきである。
【0123】
処理212及び溶融乳化物214の形成ための当該温度及び剪断速度を維持する時間は、10秒~18時間以上(又は10秒~30分、又は5分~1時間、又は15分~2時間、又は1時間~6時間、又は3時間~18時間)であり得る。理論に限定されるものではないが、液滴サイズの定常状態に到達した時点で、処理212が停止され得ると考えられる。その時間は、とりわけ、温度、剪断速度、GO-PVDF複合体202の組成、分散媒204の組成、及び乳化安定剤206の組成に依存し得る。
【0124】
次いで、溶融乳化物214が、冷却216され得る。冷却216は、低速(例えば、溶融乳化物を周囲条件下で放冷する)から高速(例えば、急冷)であり得る。例えば、冷却速度は、約10℃/時間~約100℃/秒、更には(例えば、ドライアイス中の)急冷でのほぼ瞬時まで(又は約10℃/時間~約60℃/時間、又は約0.5℃/分~約20℃/分、又は約1℃/分~約5℃/分、又は約10℃/分~約60℃/分、又は約0.5℃/秒~約10℃/秒、又は約10℃/秒~約100℃/秒)の範囲であり得る。
【0125】
冷却中216、剪断力は、ほとんど又は全く溶融乳化物214に印加されなくてもよい。いくつかの場合、加熱中に適用される剪断力が冷却中に適用されてもよい。
【0126】
溶融乳化物214の冷却216から得られる冷却された混合物218は、固化したGO-PVDF粒子222及び他の成分224(例えば、分散媒204、過剰な乳化安定剤206など)を含む。GO-PVDF粒子222は、分散媒中に分散されるか、又は分散媒中に沈降し得る。
【0127】
次いで、冷却された混合物218が処理されて220、GO-PVDF粒子222を他の成分224から分離し得る。好適な処理としては、洗浄、濾過、遠心分離、及びデカントなど、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
GO-PVDF粒子222を洗浄するために使用される溶媒は、概して、(a)分散媒204と混和性であり、かつ(b)GO-PVDF複合体202と非反応性(例えば、非膨潤性及び非溶解性)であるべきである。溶媒の選択は、とりわけ、分散媒の組成及びGO-PVDF複合体202の組成に依存するであろう。
【0129】
溶媒の例としては、炭化水素溶媒(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカン、及びテトラデカン)、芳香族炭化水素溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、2-メチルナフタレン、及びクレゾール)、エーテル溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、及びジオキサン)、ケトン溶媒(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、アルコール溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びn-プロパノール)、エステル溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、及び酪酸ブチル)、ハロゲン化溶媒(例えば、クロロホルム、ブロモフォーム、1,2-ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン、及びヘキサフルオロイソプロパノール)、水など、並びにこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
溶媒は、空気乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥、又はそれらの混成などの適切な方法を使用する乾燥によって、GO-PVDF粒子222から除去され得る。加熱は、好ましくは、熱可塑性ポリマーのガラス転移点より低い温度(例えば、約50℃~約150℃)で行われてもよい。
【0131】
有利には、本明細書に記載のシステム及び方法(例えば、方法200)の分散媒及び洗浄溶媒は、再生及び再利用され得る。当業者であれば、再生プロセスに必要な使用済み分散媒及び溶媒の任意の必要な洗浄を認識するであろう。
【0132】
他の成分224から分離された後のGO-PVDF粒子222は、任意選択的に、更に精製され得る226。例えば、粒径分布を狭くする(又は直径スパンを低減する)ために、GO-PVDF粒子222は、約10μm~約250μm(又は約10μm~約100μm、又は約50μm~約200μm、又は約150μm~約250μm)の細孔径を有するふるいを通過させることができる。
【0133】
別の例示的な精製技法では、GO-PVDF粒子222は、GO-PVDF粒子222の表面に会合するナノ粒子の実質的に全てを維持しながら界面活性剤を除去するために、水で洗浄され得る。更に別の例示的な精製技法では、GO-PVDF粒子222は、所望の最終生成物を達成するために、添加剤とブレンドされ得る。明確にするために、そのような添加剤は、粒子が固化した後に、本明細書に記載の方法から得られたGO-PVDF粒子222又は他の粒子とブレンドされるので、そのような添加剤は、本明細書では「外部添加剤」と称される。外部添加剤の例としては、流動助剤、他のポリマー粒子、充填剤など、及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0134】
場合によっては、GO-PVDF粒子222を作製する際に使用される界面活性剤は、下流用途においては望ましくないことがある。したがって、更に別の例示的な精製技法としては、GO-PVDF粒子222からの界面活性剤の少なくとも実質的な除去(例えば、洗浄及び/又は熱分解による)が挙げられ得る。
【0135】
GO-PVDF粒子222及び/又は精製されたGO-PVDF粒子228(GO-PVDF粒子222/228と称される)は、組成、物理的構造などによって特徴付けられ得る。
【0136】
上述のように、乳化安定剤は、ポリマー溶融物と分散媒との間の界面にある。その結果、混合物が冷却されると、乳化安定剤は、当該界面に、又はその付近に留まる。したがって、GO-PVDF粒子222/228の構造は、概して、乳化安定剤が使用されるとき、(a)GO-PVDF粒子222/228の外面上に分散している、及び/又は(b)GO-PVDF粒子222/228の外側部分(例えば、外側の1体積%)に埋め込まれている乳化安定剤を含む。
【0137】
更に、ポリマー溶融物液滴の内部に空隙が形成される場合、乳化安定剤206は、概して、空隙の内部と、熱可塑性ポリマーとの間の界面にある(及び/又は埋め込まれる)べきである。空隙は、概して、熱可塑性ポリマーを含まない。むしろ、空隙は、例えば、分散媒を含んでも、空気を含んでも、空であってもよい。GO-PVDF粒子222/228は、GO-PVDF粒子222/228の約5重量%以下(又は約0.001重量%~約5重量%、又は約0.001重量%~約0.1重量%、又は約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.1重量%~約2重量%、又は約1重量%~約5重量%)で、分散媒を含み得る。
【0138】
GO-PVDF複合体202は、GO-PVDF粒子222/228の約90重量%~約99.5重量%(又は約90重量%~約95重量%、又は約92重量%~約97重量%、又は約95重量%~約99.5重量%)で、GO-PVDF粒子222/228中に存在し得る。
【0139】
含まれる場合、乳化安定剤206は、GO-PVDF粒子222/228の約10重量%以下(又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約1重量%、又は約0.5重量%~約5重量%、又は約3重量%~約7重量%、又は約5重量%~約10重量%)で、GO-PVDF粒子222/228中に存在し得る。界面活性剤又は別の乳化安定剤を少なくとも実質的に除去するように精製される場合、乳化安定剤206は、0.01重量%未満(又は0重量%~約0.01重量%、又は0重量%~0.001重量%)で、粒子130/136中に存在し得る。
【0140】
微粒子状乳化安定剤を使用して、本明細書の開示に従って熱可塑性微粒子を形成する際、シリカナノ粒子などの微粒子状乳化安定剤の少なくとも一部分が、GO-PVDF粒子222/228の外面上のコーティングとして配設されてもよい。界面活性剤の少なくとも一部分は、使用される場合、同様に外側表面に会合し得る。コーティングは、外側表面上に実質的に均一に配置され得る。コーティングに関して本明細書で使用するとき、「実質的に均一」という用語は、コーティング組成物(例えば、ナノ粒子及び/又は界面活性剤)によって被覆される表面位置、特に外側表面全体における、均一なコーティング厚さを指す。乳化安定剤206は、GO-PVDF粒子222/228の表面積の少なくとも5%(又は約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%)を被覆するコーティングを形成し得る。界面活性剤又は別の乳化安定剤を少なくとも実質的に除去するように精製される場合、乳化安定剤206は、粒子130/136の表面積の25%未満(又は0%~約25%、又は約0.1%~約5%、又は約0.1%~約1%、又は約1%~約5%、又は約1%~約10%、又は約5%~約15%、又は約10%~約25%)で、粒子130/136中に存在し得る。GO-PVDF粒子222/228の外表面上の乳化安定剤206の被覆率は、走査型電子顕微鏡画像(SEM顕微鏡写真)の画像解析を用いて決定され得る。乳化安定剤206は、GO-PVDF粒子222/228の表面積の少なくとも5%(又は約5%~約100%、又は約5%~約25%、又は約20%~約50%、又は約40%~約70%、又は約50%~約80%、又は約60%~約90%、又は約70%~約100%)を被覆するコーティングを形成し得る。界面活性剤又は別の乳化安定剤を少なくとも実質的に除去するように精製される場合、乳化安定剤206は、粒子130/136の表面積の25%未満(又は0%~約25%、又は約0.1%~約5%、又は約0.1%~約1%、又は約1%~約5%、又は約1%~約10%、又は約5%~約15%、又は約10%~約25%)で、粒子130/136中に存在し得る。GO-PVDF粒子222/228の外表面上の乳化安定剤206の被覆率は、SEM顕微鏡写真の画像解析を用いて決定され得る。
【0141】
GO-PVDF粒子222/228は、PVDF中に分散された酸化グラフェン、及び約1以下(又は約0.9以下、又は約0.8以下、又は約0.7以下、又は約0.6以下、又は約0.5以下、又は0~約1、又は0~約0.9、又は0~約0.8、又は0~約0.7、又は0~約0.6、又は0~約0.5)のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を含む。GO-PVDF粒子222/228は、約0.1~約1.5(又は約0.1~約0.5、又は約0.3~約0.7、又は約0.5~約0.9、又は約0.7~約1.3、又は約0.9~約1.5)の、GO-PVDF複合体202からのβ相保持率(GO-PVDF粒子222/228のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比で除算された、GO-PVDF複合体202のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比)を有し得る。
【0142】
GO-PVDF粒子222/228は、約0.1μm~約125μm(又は約0.1μm~約5μm、約1μm~約10μm、約5μm~約30μm、又は約1μm~約25μm、又は約25μm~約75μm、又は約50μm~約85μm、又は約75μm~約125μm)のD10と、約0.5μm~約200μm(又は約0.5μm~約10μm、又は約5μm~約50μm、又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約70μm、又は約25μm~約50μm、又は約50μm~約100μm、又は約75μm~約150μm、又は約100μm~約200μm)のD50と、約3μm~約300μm(又は約3μm~約15μm、又は約10μm~約50μm、又は約25μm~約75μm、又は約70μm~約200μm、又は約60μm~約150μm、又は約150μm~約300μm)のD90とを有し得、D10<D50<D900である。GO-PVDF粒子222/228はまた、約0.2~約10(又は約0.2~約0.5、又は約0.4~約0.8、又は約0.5~約1.0、又は約1~約3、又は約2~約5、又は約5~約10)の直径スパンを有し得る。限定するものではないが、1.0以上の直径スパン値は広いとみなされ、直径スパン値0.75以下は狭いとみなされる。
【0143】
第1の非限定的な例では、GO-PVDF粒子222/228は、約0.1μm~約10μmのD10と、約0.5μm~約25μmのD50と、約3μm~約50μmのD90とを有し得、D10<D50<D90である。当該GO-PVDF粒子222/228は、約0.2~約2の直径スパンを有し得る。
【0144】
第2の非限定的な例では、GO-PVDF粒子222/228は、約5μm~約30μmのD10と、約30μm~約70μmのD50と、約70μm~約120μmのD90とを有し得、D10<D50<D90である。当該GO-PVDF粒子222/228は、約1.0~約2.5の直径スパンを有し得る。
【0145】
第3の非限定的な例では、GO-PVDF粒子222/228は、約25μm~約60μmのD10と、約60μm~約110μmのD50と、約110μm~約175μmのD90とを有し得、D10<D50<D90である。当該GO-PVDF粒子222/228は、約0.6~約1.5の直径スパンを有し得る。
【0146】
第4の非限定的な例では、GO-PVDF粒子222/228は、約75μm~約125μmのD10と、約100μm~約200μmのD50と、約125μm~約300μmのD90とを有し得、D10<D50<D90である。当該GO-PVDF粒子222/228は、約0.2~約1.2の直径スパンを有し得る。
【0147】
第5の非限定的な例では、GO-PVDF粒子222/228は、約1μm~約50μm(又は約5μm~約30μm、又は約1μm~約25μm、又は約25μm~約50μm)のD10と、約25μm~約100μm(又は約30μm~約100μm、又は約30μm~約70μm、又は約25μm~約50μm、又は約50μm~約100μm)のD50と、約60μm~約300μm(又は約70μm~約200μm、又は約60μm~約150μm、又は約150μm~約300μm)のD90とを有し得、D10<D50<D90である。GO-PVDF粒子222/228はまた、約0.4~約3(又は約0.6~約2、又は約0.4~約1.5、又は約1~約3)の直径スパンを有し得る。
【0148】
GO-PVDF粒子222/228は、約0.9以上(又は約0.90~約1.0、又は約0.93~約0.99、又は約0.95~約0.99、又は約0.97~約0.99、又は約0.98~1.0)の真円度を有し得る。
【0149】
GO-PVDF粒子222/228は、約25°~約45°(又は約25°~約35°、又は約30°~約40°、又は約35°~約45°)の安息角を有し得る。
【0150】
GO-PVDF粒子222/228は、約1.0~約1.5(又は約1.0~約1.2、又は約1.1~約1.3、又は約1.2~約1.35、又は約1.3~約1.5)のハウスナー比を有し得る。
【0151】
GO-PVDF粒子222/228は、約0.3g/cm~約0.8g/cm(又は約0.3g/cm~約0.6g/cm、又は約0.4g/cm~約0.7g/cm、又は約0.5g/cm~約0.6g/cm、又は約0.5g/cm~約0.8g/cm)の嵩密度を有し得る。
【0152】
GO-PVDF粒子222/228は、約0.5g/cm~約0.8g/cm(又は約0.5g/cm~約0.7g/cm、又は約0.55g/cm~約0.80g/cm)の空気含有密度を有し得る。
【0153】
GO-PVDF粒子222/228は、約0.6g/cm~約0.9g/cm(又は約0.60g/cm~約0.75g/cm、又は約0.65g/cm~約0.80g/cm、又は約0.70g/cm~約0.90g/cm)のタップ密度を有し得る。
【0154】
処理212の温度及び剪断速度、並びに成分202、204、及び206の組成及び相対濃度に応じて、GO-PVDF粒子222/228を構成する構造の異なる形状が、観察された。典型的には、GO-PVDF粒子222/228は、実質的に球形の粒子(約0.97以上の真円度を有する)を含む。しかしながら、ディスク構造及び細長い構造を含む他の構造が、GO-PVDF粒子222/228内に観察された。したがって、GO-PVDF粒子222/228は、(a)0.97以上の真円度を有する実質的に球形の粒子、(b)約2~約10のアスペクト比を有するディスク構造、及び(c)10以上のアスペクト比を有する細長い構造のうちの1つ以上を含み得る。上記の(a)、(b)、及び(c)構造の各々は、乳化安定剤が、(a)、(b)、及び(c)構造の外側表面上に分散されている、及び/又は(a)、(b)、及び(c)構造の外側部分に埋め込まれている。(a)、(b)、及び(c)構造のうちの少なくともいくつかは凝集し得る。例えば、(c)の細長い構造は、(a)の実質的に球状の粒子の表面上に位置し得る。
【0155】
GO-PVDF粒子222/228は、GO-PVDF複合体を生成するために使用されるPVDFの焼結窓の10℃以内、好ましくは5℃以内の焼結窓を有し得る。
【0156】
GO-PVDF粒子の用途
【0157】
本明細書に記載のGO-PVDF粒子は、様々な物品を製造するために使用され得る。非限定的な例として、本開示の3D印刷プロセスは、本明細書に記載のGO-PVDFを表面上に(例えば、層に、及び/又は特定の形状に)堆積させることと、堆積されると、粒子の少なくとも一部分を加熱して、粒子の固結化を促進し、固結化体(又は物体)を形成することと、を含み得る。固結化体は、固結後の空隙率が、約5%以下(例えば、0%~約5%、又は約0.5%~約2%、又は約1%~約3%、又は約2%~約5%)であってもよい。例えば、GO-PVDF粒子(及び含まれる場合、熱可塑性ポリマー粒子)の加熱及び固結化は、加熱及び固結化が選択的レーザー焼結によって行われるように、レーザーを用いた3D印刷装置内で行われ得る。
【0158】
本明細書に記載のGO-PVDF粒子から形成された固結化体(又はその一部分)は、約1以下(又は約0.9以下、又は約0.8以下、又は約0.7以下、又は約0.6以下、又は約0.5以下、又は0~約1、又は0~約0.9、又は0~約0.8、又は0~約0.7、又は0~約0.6、又は0~約0.5)のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有し得る。本明細書に記載のGO-PVDF粒子から形成された固結化体(又はその一部分)は、約0.1~約1.5(又は約0.1~約0.5、又は約0.3~約0.7、又は約0.5~約0.9、約0.7~約1.3、又は約0.9~約1.5)のGO-PVDF複合体202からのβ相保持率(固結化体又はその一部分のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比で除算された、GO-PVDF粒子のβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比)を有し得る。
【0159】
前述の方法に使用され得る熱可塑性ポリマー粒子の少なくとも一部分であり得る熱可塑性ポリマーの例としては、以下に限定されないが、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエテン、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸)、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリフェニレンスルフィド、ビニルポリマー、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアミド-イミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを含むコポリマー(PEBA又はポリエーテルブロックアミド)、グラフト化又は非グラフト化熱可塑性ポリオレフィン、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマーポリマー、官能化又は非官能化エチレン/アルキル(メタ)アクリレート、官能化又は非官能化(メタ)アクリル酸ポリマー、官能化又は非官能化エチレン/ビニルモノマー/アルキル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン/ビニルモノマー/カルボニルターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/カルボニルターポリマー、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)型コアシェルポリマー、ポリスチレン-ブロック-ポリブタジエン-ブロック-ポリ(メチルメタクリレート)(SBM)ブロックターポリマー、塩素化又はクロロスルホン化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フェノール樹脂、ポリ(エチレン/ビニルアセテート)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン系ブロックコポリマー、ポリアクリロニトリル、シリコーンなど、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。また、前述の1つ以上を含むコポリマーが本開示の方法及びシステムにおいて使用されてもよい。
【0160】
そのような方法によって製造され得る物品であって、当該物品の全て又は一部分を形成するためにGO-PVDF粒子が使用され得る、物品、の例としては、以下に限定されないが、粒子、フィルム、パッケージング、玩具、家庭用品、自動車部品、宇宙/航空機関連部品、容器(例えば、食品、飲料、化粧品、パーソナルケア組成物、医薬など用)、靴底、家具部品、装飾家庭用品、プラスチックギア、ねじ、ナット、ボルト、ケーブルタイ、装身具、アート、彫刻作品、医療品、義肢、整形外科インプラント、教育での学習を支援するアーチファクトの製造、外科手術を支援するための3D解剖モデル、ロボット工学、生物医学装置(装具)、家庭電化製品、歯科学、エレクトロニクス、スポーツ用品、エンジンノックセンサ、圧力センサ、ソナー装置、ディーゼル燃料噴射装置、高速応答ソレノイド、光学調整、超音波洗浄、超音波溶接、圧電モータ、スタックアクチュエータ、ストライプアクチュエータ、圧電リレー、超音波画像診断装置、圧電プリンタ(インクジェット)、圧電スピーカ(携帯電話、小型イヤホン、音響発生玩具、ミュージカルグリーティングカードなど)、圧電ブザー(進入防止警報、医療機器、PINパッド、キーフォブ、目覚まし時計、腕時計アラーム、火災警報器、CO検出器、運動器具、電子レンジ、コンピュータマザーボード、超音波昆虫及び齧歯動物リペラー、超音波ペットトレーニングカラー)、圧電加湿器、電動歯ブラシ、マイクロホン、圧電点火装置、発電、マイクロ電子機械システム(MEMS)、テニスラケット(ハンドル内のマイクロコントローラとともに圧電繊維をテニスラケットのスロート内に統合する)、マイクロロボティクス、進路を変える兵器などが挙げられる。更に、粒子は、塗料、粉体コーティング、インクジェット材料、電子写真トナー、3D印刷などが挙げられるがこれらに限定されない用途において有用であってもよい。
【0161】
有利には、本明細書に記載のGO-PVDF粒子を使用して生成された物体又はその部分は、圧電応答を有し得る。
【0162】
例示的実施形態
【0163】
第1の非限定的な例示的実施形態は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散された酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)複合体を提供することであって、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、提供することと、GO-PVDF複合体と、PVDFと不混和性である分散媒と、任意選択的に乳化安定剤とを含む混合物(例えば、混合物は、乳化安定剤を含んでもよいか、又は混合物は、乳化安定剤を含まなくても(若しくは、乳化安定剤が不存在であっても)よい)を、PVDFの融点若しくは軟化温度以上の温度で(例えば、及び、十分に高い剪断速度で)混合して、GO-PVDF複合体を分散媒中に分散させることと、混合物をPVDFの融点又は軟化温度未満に冷却して、GO-PVDF粒子を形成することと、GO-PVDF粒子を分散媒から分離することと、を含み、GO-PVDF粒子が、PVDF中に分散された酸化グラフェンを含み、GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する方法である。第1の非限定的な例示的実施形態は、酸化グラフェンと、PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、溶媒を混合物から蒸発させて、約1重量%以下の溶媒を含むGO-PVDF複合体を得ることと、を更に含む、要素1と、要素1、かつ蒸発させることが、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)においてである、要素2と、要素1、かつ蒸発させることが、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)に混合物を加熱することと、混合物の表面上にガスを通すことと、を含む、要素3と、要素1、かつ蒸発させることが、混合物を、減少した空気圧に曝露することと、混合物を、減少した空気圧で、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)に加熱することと、を含む、要素4と、要素1、かつ混合物を生成することが、酸化グラフェンを溶媒中に分散させることと、内部に酸化グラフェンが分散された溶媒中にPVDFを溶解させることと、を含む、要素5と、GO-PVDF粒子が、約0.1μm~約125μmのD10と、約0.5μm~約200μmのD50と、約3μm~約300μmのD90とを有し、D10<D50<D90である、要素6と、GO-PVDF粒子が、約0.2~約10の直径スパンを有する、要素7と、GO-PVDF粒子が、約0.90~約1.0の真円度を有する、要素8と、GO-PVDF粒子が、約1.0~約1.5のハウスナー比を有する、要素9と、のうちの1つ以上を更に含み得る。組み合わせの例としては、以下に限定するものではないが、要素1と、要素2~5のうちの1つ以上との組み合わせ、要素1(任意選択的に、要素2~5のうちの1つ以上と組み合わされた)と要素6~9のうちの1つ以上との組み合わせ、及び要素6~9のうちの2つ以上の組み合わせが、挙げられる。
【0164】
第2の非限定的な例示的実施形態は、酸化グラフェンと、PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、溶媒を混合物から蒸発させて、約1重量%以下の溶媒を含むGO-PVDF複合体を得ることと、を含み、蒸発させることが、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)においてであり、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する方法である。第2の非限定的な例示的実施形態は、蒸発させることが、酸化グラフェンと溶媒中に溶解したPVDFとの混合物を、溶媒のTBP+10Cに加熱することと、混合物の表面上にガスを通すことと、を含む、要素10と、蒸発させることが、酸化グラフェンと溶媒中に溶解したPVDFとの混合物を、減少した空気圧に曝露することと、混合物を溶媒のTBP+10Cに、かつ減少した空気圧で、加熱することと、を含む、要素11と、混合物を生成することが、酸化グラフェンを溶媒中に分散させることと、内部に酸化グラフェンが分散された溶媒中にPVDFを溶解させることと、を含む、要素12と、方法が、GO-PVDF複合体を溶融乳化させて、GO-PVDF粒子を生成することを更に含み、GO-PVDF粒子が、約0.1~約1.5のGO-PVDF複合体からのβ相保持率を有する、要素13と、混合物中のPVDFに対する酸化グラフェンの重量比が、約0.01:99.99~約10:90である、要素14と、溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ヘキサメチル-ホスホラミド(HMPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、要素15と、のうちの1つ以上を更に含み得る。
【0165】
第3の非限定的な例示的実施形態は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散された酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)粒子を含み、GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する組成物である。第3の非限定的な例示的実施形態は、GO-PVDF粒子が、約0.55g/cm~約0.8g/cmの空気含有密度を有する、要素16と、GO-PVDF粒子が、約0.90~約1.0の真円度を有する、要素17と、GO-PVDF粒子が、約25°~約45°の安息角を有する、要素18と、GO-PVDF粒子が、約1.0~約1.5のハウスナー比を有する、要素19と、GO-PVDF粒子が、約0.1μm~約125μmのD10と、約0.5μm~約200μmのD50と、約3μm~約300μmのD90とを有し、D10<D50<D90である、要素20と、GO-PVDF粒子が、約0.2~約10の直径スパンを有する、要素21と、GO-PVDF粒子が、約0.5g/cm(又は約0.6g/cm)~約0.8g/cmの空気含有密度を有する、要素22と、GO-PVDF粒子が、約0.3g/cm~約0.8g/cmの嵩密度を有する、要素23と、GO-PVDF粒子が、約0.6g/cm~約0.9g/cmのタップ密度を有する、要素24と、GO-PVDF粒子が、約10m/g~約500m/gのBET表面積を有する、要素25と、GO-PVDF粒子が、GO-PVDF粒子の表面の少なくとも一部分を被覆している乳化安定剤を更に含む、要素26と、GO-PVDF粒子が、GO-PVDF粒子の表面内に埋め込まれているナノ粒子乳化安定剤を更に含む、要素27と、GO-PVDF粒子が、PVDFではない熱可塑性物質を更に含む、要素28と、GO-PVDF粒子が、乳化安定剤及び/又は流動助剤を含まない、要素29と、のうちの1つ以上を更に含み得、組み合わせの例としては、以下に限定されないが、要素16と、要素17~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素16と、要素17~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素17と、要素18~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素18と、要素19~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素19と、要素20~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素20と、要素21~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素21と、要素22~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素22と、要素23~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素23と、要素24~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素24と、要素25~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素25と、要素26~28のうちの1つ以上との組み合わせ、要素26~28のうちの2つ以上の組み合わせ、要素28と、要素29との組み合わせ、及び任意選択的に、要素17~24のうちの1つ以上との組み合わせ、並びに要素28と、要素17~24のうちの1つ以上と組み合わせが、挙げられる。
【0166】
第4の非限定的な例示的実施形態は、表面上に、第3の非限定的な例示的実施形態のGO-PVDF粒子を、任意選択的に熱可塑性ポリマー粒子と組み合わせて堆積させることと、堆積されると、粒子の少なくとも一部分を加熱して、その固結化を促進し、固結化体を形成することと、を含み、固結化体が、約0.1~約1.5のGO-PVDF粒子からのβ相保持率を有する方法である。
【0167】
条項
【0168】
条項1.ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散された酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)複合体を提供することであって、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、提供することと、GO-PVDF複合体と、PVDFと不混和性である分散媒と、任意選択的に乳化安定剤とを含む混合物を、PVDFの融点又は軟化温度以上の温度で(例えば、及び十分に高い剪断速度で)混合して、分散媒中にGO-PVDF複合体を分散させることと、混合物をPVDFの融点又は軟化温度未満に冷却して、GO-PVDF粒子を形成することと、GO-PVDF粒子を分散媒から分離することと、を含み、GO-PVDF粒子が、PVDF中に分散された酸化グラフェンを含み、GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、方法。
【0169】
条項2.酸化グラフェンと、PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、溶媒を混合物から蒸発させて、約1重量%以下の溶媒を含むGO-PVDF複合体を得ることと、を更に含む、条項1に記載の方法。
【0170】
条項3.蒸発させることが、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)において(好ましくは、溶媒の沸点未満の温度において)である、条項2に記載の方法。
【0171】
条項4.蒸発させることが、混合物を溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)に(好ましくは、溶媒の沸点未満の温度に)加熱することと、混合物の表面上にガスを通すことと、を含む、条項2に記載の方法。
【0172】
条項5.蒸発させることが、混合物を、減少した空気圧に曝露することと、混合物を溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)に(好ましくは、溶媒の沸点未満の温度に)、かつ減少した空気圧で、加熱することと、を含む、条項2に記載の方法。
【0173】
条項6.混合物を生成することが、酸化グラフェンを溶媒中に分散させることと、PVDFを、内部に酸化グラフェンが分散された溶媒中に溶解させることと、を含む、条項2に記載の方法。
【0174】
条項7.GO-PVDF粒子が、約0.1μm~約125μmのD10と、約0.5μm~約200μmのD50と、約3μm~約300μmのD90とを有し、D10<D50<D90である、条項1に記載の方法。
【0175】
条項8.GO-PVDF粒子が、約0.2~約10の直径スパンを有する、条項1に記載の方法。
【0176】
条項9.GO-PVDF粒子が、約0.90~約1.0の真円度を有する、条項1に記載の方法。
【0177】
条項10.GO-PVDF粒子が、約1.0~約1.5のハウスナー比を有する、条項1に記載の方法。
【0178】
条項11.混合物が、乳化安定剤を含まない、条項1に記載の方法。
【0179】
条項12.酸化グラフェンと、PVDFと、溶媒とを含む混合物を生成することと、溶媒を混合物から蒸発させて、約1重量%以下の溶媒を含むGO-PVDF複合体を得ることと、を含み、蒸発させることが、溶媒の沸点+10℃未満の温度(溶媒のTBP+10C)において(好ましくは、溶媒の沸点未満の温度において)であり、GO-PVDF複合体が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、方法。
【0180】
条項13.蒸発させることが、酸化グラフェンと溶媒中に溶解したPVDFとの混合物を、溶媒のTBP+10Cに加熱することと、混合物の表面上にガスを通すことと、を含む、条項12に記載の方法。
【0181】
条項14.蒸発させることが、酸化グラフェンと溶媒中に溶解したPVDFとの混合物を、減少した空気圧に曝露することと、減少した空気圧で、混合物を溶媒のTBP+10C未満の温度に加熱することと、を含む、条項12に記載の方法。
【0182】
条項15.混合物を生成することが、酸化グラフェンを溶媒中に分散させることと、PVDFを、内部に酸化グラフェンが分散された溶媒中に溶解させることと、を含む、条項12に記載の方法。
【0183】
条項16.GO-PVDF複合体を溶融乳化させて、GO-PVDF粒子を生成することを更に含み、GO-PVDF粒子が、約0.1~約1.5のGO-PVDF複合体からのβ相保持率を有する、条項12に記載の方法。
【0184】
条項17.混合物内のPVDFに対する酸化グラフェンの重量比が、約0.01:99.99~約10:90である、条項12に記載の方法。
【0185】
条項18.溶媒が、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、ヘキサメチル-ホスホラミド(HMPA)、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、条項12に記載の方法。
【0186】
条項19.乳化安定剤が、溶融乳化中存在しない、条項12に記載の方法。
【0187】
条項20.ポリフッ化ビニリデン(PVDF)中に分散した酸化グラフェンを含む酸化グラフェン-ポリフッ化ビニリデン(GO-PVDF)粒子を含み、GO-PVDF粒子が、約1以下のα相PVDFに対するβ相PVDFの透過FTIR最小透過率比を有する、組成物。
【0188】
条項21.GO-PVDF粒子が、約0.55g/cm~約0.8g/cmの空気含有密度を有する、条項20に記載の組成物。
【0189】
条項22.GO-PVDF粒子が、約0.90~約1.0の真円度を有する、条項20に記載の組成物。
【0190】
条項23.GO-PVDF粒子が、約25°~約45°の安息角を有する、条項20に記載の組成物。
【0191】
条項24.GO-PVDF粒子が、約1.0~約1.5のハウスナー比を有する、条項20に記載の組成物。
【0192】
条項25.GO-PVDF粒子が、約0.1μm~約125μmのD10と、約0.5μm~約200μmのD50と、約3μm~約300μmのD90とを有し、D10<D50<D90である、条項20に記載の組成物。
【0193】
条項26.GO-PVDF粒子が、約0.2~約10の直径スパンを有する、条項20に記載の組成物。
【0194】
条項27.GO-PVDF粒子が、約0.5g/cm(又は約0.6g/cm)~約0.8g/cmの空気含有密度を有する、条項20に記載の組成物。
【0195】
条項28.GO-PVDF粒子が、約0.3g/cm~約0.8g/cmの嵩密度を有する、条項20に記載の組成物。
【0196】
条項29.GO-PVDF粒子が、約0.6g/cm~約0.9g/cmのタップ密度を有する、条項20に記載の組成物。
【0197】
条項30.GO-PVDF粒子が、約10m/g~約500m/gのBET表面積を有する、条項20に記載の組成物。
【0198】
条項31.GO-PVDF粒子が、GO-PVDF粒子の表面の少なくとも一部分を被覆している乳化安定剤を更に含む、条項20に記載の組成物。
【0199】
条項32.GO-PVDF粒子が、GO-PVDF粒子の表面内に埋め込まれているナノ粒子乳化安定剤を更に含む、条項20に記載の組成物。
【0200】
条項33.GO-PVDF粒子が、PVDFではない熱可塑性物質を更に含む、条項20に記載の組成物。
【0201】
条項34.GO-PVDF粒子が、流動助剤を含まない、条項20に記載の組成物。
【0202】
条項35.表面上に、条項20のGO-PVDF粒子を、任意選択的に熱可塑性ポリマー粒子と組み合わせて堆積させることと、堆積されると、粒子の少なくとも一部分を加熱して、その固結化を促進し、固結化体を形成することと、を含み、固結化体が、約0.1~約1.5のGO-PVDF粒子からのβ相保持率を有する、方法。
【0203】
別途記載のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される成分の量、分子量などの特性、プロセス条件などを表す全ての数字は、あらゆる場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、それぞれの数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入法を適用することによって解釈されるべきである。
【0204】
本明細書に開示される本発明の実施形態を組み込む1つ以上の例示的実施形態が、本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装の全ての特徴が本出願に記載又は表示されているわけではない。本発明の実施形態を組み込む物理的実施形態の開発において、実装によって、また時によって異なる、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約を伴うコンプライアンスなどの開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことが理解される。開発者の努力には時間がかかる場合があるが、それにもかかわらず、そのような努力は、当業者にとって日常的な作業であり、本開示の利益を得るものとなるであろう。
【0205】
組成物及び方法は、様々な成分又は工程を「含む」という用語で本明細書に記載されているが、組成物及び方法はまた、様々な成分及び工程「から本質的になる」又は「からなる」可能性がある。
【0206】
本発明の実施形態のより良好な理解を容易にするために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例を付与する。以下の実施例は、決して、本発明の範囲を制限するか、又は定義するように読解されるべきではない。
【実施例0207】
実施例1.(比較例)球状PVDF粉末(約200nmの平均径)及び酸化グラフェン粉末(約0.5ミクロン~約3ミクロンの平均径、約0.55nm~約1.2nmの平均厚さ)が、エタノール中で一緒に混合された。PVDFと酸化グラフェンとの相互作用が、超音波処理(約2時間)及び機械的撹拌(約10時間)を通して増強された。最終生成物は、PVDFと酸化グラフェンとの間の相互作用が、PVDF粉末粒子上の酸化グラフェンの表面層形成を介した厳密に物理的な接着である、ナノサイズの複合体であると考えられた。粉末のサイズは、SLS積層造形方法に適していなかった。
【0208】
実施例2.(比較例)ポリエチレングリコール(PEG)(表1に従った分子量、SigmaAldrichから入手可能)及びPVDF(Arkemaから入手可能なKYNAR(登録商標)710)が、表1に従った重量比で、P4インペラ及びNフローを有するガラス反応器(表1に従ったサイズ)に添加された。いくつかの実験(表1に従った)では、乳化安定剤(AEROSIL(登録商標)R812S)が、組み合わされたPVDFの総重量に基づいた1重量%で、混合物に添加された。混合物が、約220℃に加熱され、混合が、約500RPMまでゆっくりと上昇された。混合物が、約220℃で約35分間撹拌された。約35分間加熱した後、加熱マントルが取り除かれ、混合が停止され、スラリーが、室温までゆっくり放冷された。次いで、スラリーが、メタノールで希釈され、濾過された。続いて、得られたPVDF粒子が、メタノールで3回洗浄された。真空下で一晩乾燥させた後、PVDF粒子が、150ミクロンのふるいで濾された。表1は、調製条件の追加の細目を提供する。表2は、得られたPVDF粒子の特性を提供する。
【表1】
【表2】
【0209】
乳化安定剤を有しないPVDF粒子の流れ(試料7及び8)は、優れていた。
【0210】
図3A及び3Bは、PVDF粒子の表面上のコーティングとして存在する乳化安定剤を有する高球形度のPVDF粒子を示す、試料1の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【0211】
図4は、PVDF粒子のコア内に空隙がほとんど又は全くないことを示す、試料1の断面SEM画像(エポキシで固定され、次いでミクロトームされた試料)である。
【0212】
表2のPVDF粒子の単層焼結は、焼結正方形(sintered square)の層の上下での粉末のブロッキング又は付着を示さなかった。層は、30~35%のレーザー電力で焼結を開始し、より高いレーザー電力で、わずかな縁部のカールのみが認められた。焼結層の多孔性は、非常に低いか全くなかった。
【0213】
実施例3.約0.075gの酸化グラフェン(ACS Materialから入手可能な単層酸化グラフェンフレーク(H法))及び約50gのジメチルホルムアミドが、混合された。混合物が、磁気撹拌棒を用いて、室温において約400RPMで約30分間撹拌された。次いで、分散液が氷浴中に配置され、約1.5時間超音波処理された(10%の電力、90%のデューティ)。分散液が、氷浴から取り出され、追加の50.7gのDMFが添加された。分散液が、約500RPM及び室温で、一晩撹拌された。
【0214】
翌日、分散液が再び氷浴中に配置され、約1時間超音波処理された(10%の電力、90%のデューティ)。次いで、約20.35gのKYNAR(登録商標)710 PVDFが添加され、約50RPM及び約60℃で、約75分間撹拌された。完了時に、分散液が、アルミニウムプレートに注がれ、磁気撹拌棒を用いて撹拌された。同時に、プレートが、分散液上の空気流を伴って、約60℃に加熱された。溶媒の蒸発後、GO-PVDF複合体フィルムが得られた。
【0215】
実施例4.試料9の調製:約22.85gのPEG(20kDa)及び約5.66gのPVDF-GO複合体(実施例3から)が、P4インペラ及びN2フローを備えた100mLのガラス反応器に添加された。混合物が、約220℃に加熱され、混合が、約500RPMまでゆっくりと上昇された。混合物が、約220℃で約30分間撹拌された。約30分間加熱した後、加熱マントルが取り除かれ、混合が停止され、スラリーが、室温までゆっくり放冷された。次いで、スラリーが、メタノールで希釈され、濾過された。その後、得られたGO-PVDF粒子が、メタノールで3回洗浄された。真空下で一晩乾燥させた後、GO-PVDF粒子が、150ミクロンのふるいで濾過された。
【0216】
試料10の調製:試料9の調製が、繰り返された。
【0217】
試料11の調製:試料9の調製が、約8の倍率でスケールアップされたことを除いて、繰り返された。
【0218】
表3は、GO-PVDF粒子の特性を提供する。
【表3】
【0219】
図5A図5B、及び図5Cは、GO-PVDF粒子の表面上に酸化グラフェンの痕跡を有する高球形度のGO-PVDF粒子を示す、試料10のSEM画像である。
【0220】
図6A図6B、及び図6Cは、GO-PVDF粒子のコア内の酸化グラフェン凝集体(図6A)、GO-PVDF粒子のコア内の空隙中の酸化グラフェン(図6B)、及びGO-PVDF粒子のPVDF内に分散した酸化グラフェン(図6Cは、画像の左側から画像の上部の左部分まで延在する酸化グラフェンナノシートを有するように見える)の痕跡を有する高球形度のGO-PVDF粒子を示す、試料10の断面SEM画像(エポキシで固定され、次いでミクロトームされた試料)を示す。
【0221】
図7は、β相結晶化度(約832cm-1)が、PVDF粒子よりも高い程度でGO-PVDF粒子中に存在し、かつα相結晶化度(約760cm-1)が、PVDF粒子よりも低い程度でGO-PVDF粒子中に存在することを示す、試料8(PVDF粒子)及び試料9(GO-PVDF粒子)の正規化されたフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルである。
【表4】
(11のt-FTIR-β/焼結11のt-FTIR-β)
【0222】
図8は、実施例3、試料10、試料11、及びKYNAR(登録商標)710 PVDFの、調製されたままのGO-PVDF複合体フィルムの正規化されたFTIRスペクトルである。これらのスペクトルは、GO-PVDF複合体フィルムであって、それから生成されたGO-PVDF粒子内に残った、GO-PVDF複合体フィルム、の中に強いβ相結晶化度のピークが存在することを示す(試料10及び11)。対照的に、KYNAR(登録商標)710 PVDFは、β相結晶化度ピークをほとんど又は全く有さず、強いα相結晶化度ピークを有する。
【表5】
【0223】
図9A図9B、及び図9Cは、それぞれ、KYNAR(登録商標)710 PVDF、実施例3のGO-PVDF複合体フィルム、及び試料9のX線粉末回折(XRD)スペクトルである。これらのスペクトルは、KYNAR(登録商標)710 PVDFが、α相結晶化度(約26.5°の2θ)及びβ相結晶化度(約20°の2θ)の両方を有し、GO-PVDF複合体フィルムが、β相結晶化度を有し、α相結晶化度をほとんど又は全く有さず、試料9が、圧倒的にβ相結晶化度を有するが、いくらかのα相結晶化度が、再出現したことを示す。
【0224】
実施例5.試料11のGO-PVDF粒子が、Sharebot(SnowWhite)SLSプリンタを使用して、焼結された。熱サイクル後のGO-PVDF粒子のブロッキングはなく、焼結層の背面には、粉末がほとんど付着しなかった。GO-PVDF粒子層が、約25%の電力で焼結した。層のカール又は反りは最小限であり、層の多孔性は、約6%であった。より高いレーザー電力設定により、多孔性が低下する可能性がある。
【0225】
試料11のGO-PVDF粒子が、酸化グラフェンを含まないPVDF粒子を焼結開始するために必要な35%と比較して、25%のより低いレーザー電力設定で、焼結を開始した。更に、GO-PVDF粒子から生成された層の多孔性は、PVDF粒子から生成された層よりも高かった(6%対0.3%)。図10は、隣接粒子及びGO-PVDF粒子全体に分散した酸化グラフェンの焼結を示す、GO-PVDF粒子から生成された焼結層の光学顕微鏡画像である。
【0226】
FTIR分光法が、試料11のGO-PVDF粒子及びそれから生成された焼結層で実施された。β相結晶化度は、焼結プロセスで維持された。すなわち、GO-PVDF粒子から生成された焼結層は、GO-PVDF粒子と実質的に同じβ相結晶化度を示した。
【0227】
したがって、本発明は、上述した目的及び利点、並びにその中の固有の利点を達成するように十分に適合されている。上記に開示された特定の実施形態は、例示的なものに過ぎず、本発明は、本明細書の教示の利益を有する当業者には明らかな、異なるが同等の様式で修正及び実施することができる。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示される特定の例示的実施形態は、変更、組み合わせ、又は修正されてもよく、そのような全ての変形は、本発明の範囲及び趣旨内であるとみなされることは明らかである。本明細書で例示的に開示される本発明は、本明細書に具体的に開示されていないいずれかの要素、及び/又は本明細書に開示されるいずれかの任意選択的な要素の非存在下で実施されてもよい。組成物及び方法は、様々な成分又は工程を「含む(comprising)」、「含む(containing)」、又は「含む(including)」という用語で記載されているが、組成物及び方法はまた、様々な成分及び工程「から本質的になる」又は「からなる」可能性がある。上に開示された全ての数及び範囲は、多少異なる場合がある。下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。とりわけ、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値の全ての範囲は、広範な値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。加えて、請求項で使用するとき、不定冠詞「a」又は「an」は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ又は1つ超を意味するように定義される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10