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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190677
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】運用装置および方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/875 20180101AFI20221219BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20221219BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20221219BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20221219BHJP
【FI】
F24F11/875
F24F11/47
F24F11/64
F24F11/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085352
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2021098633
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA45
3L260CB42
3L260CB81
3L260DA12
3L260DA13
3L260EA04
3L260EA27
3L260FA02
3L260FB32
3L260FB57
(57)【要約】
【課題】負荷を予測せずに蓄積装置と熱供給装置を最適に運用する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る運用装置は、蓄熱装置および熱供給装置を制御する運用装置であって、前記蓄熱装置および前記熱供給装置から熱供給が行われた実績負荷と、蓄熱量と、をセンサーから取得するセンサー入力装置と、前記蓄熱装置および前記熱供給装置の特性と、基準負荷と、の入力を受け付ける入力装置と、前記実績負荷と、前記蓄熱量と、前記特性と、前記基準負荷と、から前記蓄熱装置および前記熱供給装置の出力を算出する計算装置と、前記算出した結果を出力する出力装置と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱装置および熱供給装置を制御する運用装置であって、
前記蓄熱装置および前記熱供給装置から熱供給が行われた実績負荷と、蓄熱量と、をセンサーから取得するセンサー入力装置と、
前記蓄熱装置および前記熱供給装置の特性と、基準負荷と、の入力を受け付ける入力装置と、
前記実績負荷と、前記蓄熱量と、前記特性と、前記基準負荷と、から前記蓄熱装置および前記熱供給装置の出力を算出する計算装置と、
前記算出した結果を出力する出力装置と
を備えた運用装置。
【請求項2】
前記計算装置は、前記実績負荷をもとに前記基準負荷を補正する、請求項1に記載の運用装置。
【請求項3】
前記計算装置は、前記実績負荷の積算値をもとに前記基準負荷を補正する、請求項2に記載の運用装置。
【請求項4】
前記計算装置は、前記実績負荷の直近の値をもとに前記基準負荷を補正する、請求項2に記載の運用装置。
【請求項5】
前記計算装置は、前記蓄熱量が高コスト時間帯に不足することになると判断した場合、前記高コスト時間帯以外の時間帯に前記蓄熱装置および前記熱供給装置に蓄熱を行わせる、請求項1または2に記載の運用装置。
【請求項6】
前記計算装置は、前記蓄熱量が高コスト時間帯に余ることになると判断した場合、前記高コスト時間帯以外の時間帯に前記蓄熱装置および前記熱供給装置に放熱を行わせる、請求項1または2に記載の運用装置。
【請求項7】
前記計算装置は、前記熱供給装置で生じるコストをもとに、前記蓄熱装置および前記熱供給装置の出力を算出する、請求項1または2に記載の運用装置。
【請求項8】
前記計算装置は、前記基準負荷を補正する、請求項1または2に記載の運用装置。
【請求項9】
蓄熱装置および熱供給装置を制御する運用装置が実行する方法であって、
前記蓄熱装置および前記熱供給装置から熱供給が行われた実績負荷と、蓄熱量と、をセンサーから取得するステップと、
前記蓄熱装置および前記熱供給装置の特性と、基準負荷と、の入力を受け付けるステップと、
前記実績負荷と、前記蓄熱量と、前記特性と、前記基準負荷と、から前記蓄熱装置および前記熱供給装置の出力を算出するステップと、
前記算出した結果を出力するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運用装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱装置と該蓄熱装置に熱(エネルギー)を蓄えさせる熱供給装置とにより負荷に熱供給を行うエネルギープラントが知られている。例えば、蓄熱装置としては、水の相変化を用いる氷蓄熱、温水や冷水を貯水する蓄熱槽等がある。従来の蓄熱装置および熱供給装置の運用では、負荷のピークを抑えることと、コストが高い時間帯の熱供給装置の運転を抑えることと、を目的としている。この場合、未来の負荷の状態を知る必要があり、そのための技術として、負荷の予測をもとに制御する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-115062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、負荷を予測するためには、気象条件や工場の操業の状態等の負荷の予測に影響を与える因子の入力、過去の負荷の実績の蓄積が必要であり、高精度の予測を行うためにはデータベースを含めた高価なシステムが必要となる。
【0005】
負荷を予測せずに蓄熱装置および熱供給装置を運用する場合には、あらかじめ決められたスケジュールにしがたって運用を行うことになる。しかし、デマンドレスポンス等でコストのピークが複数ある場合、最適な運用は困難となる。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態では、負荷を予測せずに蓄積装置と熱供給装置を最適に運用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る運用装置は、蓄熱装置および熱供給装置を制御する運用装置であって、前記蓄熱装置および前記熱供給装置から熱供給が行われた実績負荷と、蓄熱量と、をセンサーから取得するセンサー入力装置と、前記蓄熱装置および前記熱供給装置の特性と、基準負荷と、の入力を受け付ける入力装置と、前記実績負荷と、前記蓄熱量と、前記特性と、前記基準負荷と、から前記蓄熱装置および前記熱供給装置の出力を算出する計算装置と、前記算出した結果を出力する出力装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、負荷を予測せずに蓄積装置と熱供給装置を最適に運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る蓄熱装置として氷蓄熱を用い、熱供給装置としてターボ冷凍機を用いたときの冷水系統を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る運用装置の機能ブロックを示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係る蓄熱装置および熱供給装置を運用する処理のフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る冷水負荷と電力コスト単価の例である。
図6】本発明の一実施形態に係る基準負荷と当日負荷実績と当日負荷補正値の例である。
図7】本発明の一実施形態に係る低コスト・中コスト時間帯の蓄熱運転について説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態に係る運用装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
<全体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。図1に示されるように、エネルギープラント1は、運用装置10と、蓄熱装置21と、熱供給装置22と、を含む。なお、蓄熱装置21と熱供給装置22とをあわせて蓄熱システム20とも呼ぶ。以下、それぞれについて説明する。
【0012】
運用装置10は、蓄熱システム20(蓄熱装置21および熱供給装置22)を制御する装置である。具体的には、運用装置10は、エネルギープラント1の実績をもとに、蓄熱システム20(蓄熱装置21および熱供給装置22)を運用することができる。
【0013】
蓄熱装置21は、熱(エネルギー)が蓄えられる装置である。例えば、蓄熱装置21は、図2を参照しながら説明する氷蓄熱である。また、例えば、蓄熱装置21は、冷水・温水を貯める蓄熱槽、湯を貯める貯湯槽である。なお、蓄熱装置21は、これらに限定されない。
【0014】
熱供給装置22は、負荷に熱供給を行う装置である。熱供給装置22は、蓄熱装置21に熱(エネルギー)を蓄えさせることができる。例えば、熱供給装置22は、図2を参照しながら説明する冷凍機である。また、例えば、熱供給装置22は、冷水を貯める場合には、スクリュー冷凍機、吸収式冷凍機、ヒートポンプである。また、例えば、熱供給装置22は、温水を貯める場合には、ボイラ、ヒートポンプである。なお、熱供給装置22は、これらに限定されない。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る蓄熱装置21として氷蓄熱201を用い、熱供給装置22としてターボ冷凍機202を用いたときの冷水系統を示す図である。
【0016】
本例では、運用装置10は、氷蓄熱201およびターボ冷凍機202からなる蓄熱システム20を制御する。ターボ冷凍機202には冷媒の冷却のため冷却塔203が必要である。なお、ターボ冷凍機1、ターボ冷凍機2、ターボ冷凍機3、ターボ冷凍機4を総称してターボ冷凍機202と呼ぶ。また、冷却塔1、冷却塔2、冷却塔3、冷却塔4を総称して冷却塔203と呼ぶ。
【0017】
ターボ冷凍機202は、電力を消費してブラインを冷却し氷蓄熱201に蓄熱を行う。放熱時には、ターボ冷凍機202を全停止させるか、一部起動させて追い掛け運転を行い、氷蓄熱201から冷水負荷へ供給を行う。また、バイパス管を通すことで、蓄氷量を維持して冷水負荷に供給を行うこともできる。冷水需要により温まった冷水は、還配管によりターボ冷凍機202に戻り再び冷却される。
【0018】
<<負荷とコストの関係>>
ここで、負荷(図2の例では、冷水負荷)とコスト(図2の例では、電力コスト)の関係について図5を参照しながら説明する。
【0019】
図5は、本発明の一実施形態に係る冷水負荷と電力コスト単価(例えば、高コスト、中コスト、低コストの3つに分けられているとする)の例である。本例では、電力コスト単価は、朝の立ち上がり時と夕方に単価が高コストとなる設定としている。この場合、コストとしては、8:00~10:00、17:00~20:00が最も高くなっているため、この期間は熱供給装置22(図2の例では、ターボ冷凍機202)を全停止することが求められる。上記高コスト時に蓄熱装置21(図2の例では、氷蓄熱201)で熱供給をした際に、蓄熱量(図2の例では、蓄氷量)が余っている場合、中コストである10:00~17:00、20:00~22:00で放熱をするとコストメリットが出る運用となる。
【0020】
中コスト帯でどれだけ放熱できるかは、高コスト帯での放熱量にかかっているが、負荷の予測が無い場合、後半の高コスト帯(17:00~20:00)でどれだけ放熱をするのか分からない。そのため、従来の手法では、中コスト帯の10:00~17::00でターボ冷凍機202を運転させ氷量を維持することを行うが、その後の冷水負荷量によっては大量に蓄氷量が余ることになり、中コスト帯で無駄にターボ冷凍機202の運転を行うことになる。
【0021】
上記を解決するため、本発明では、以下で説明するように基準負荷と実績負荷による放熱補正を行う。
【0022】
第一に、運用装置10は、基準負荷と実績負荷から当日負荷補正を行う。図6は、本発明の一実施形態に係る基準負荷と当日負荷実績と当日負荷補正値の例である。
【0023】
基準負荷は、入力装置102によりあらかじめ設定されている負荷のパターンであり、例えば、プラントの熱設計時の想定負荷(通常は、想定最大負荷)、測定した最大負荷等を設定しておく。
【0024】
当日負荷実績は、センサーにより得られた実績である。
【0025】
図5で示した電力コストでは10:00から中コストとなるため、図6では、10:00段階での負荷補正を例示している。補正は、基準負荷と実績負荷の比率から下式で行うものである。
【0026】
当日負荷補正(例えば、10:00~24:00)[kWh]=基準負荷(例えば、10:00~24:00)[kWh]×負荷比率・・・(式1)
【0027】
(式1)における負荷比率は、当日の処理時点までの積算値を使う場合(式2)と、直近実績を使う場合(式3)と、があり、そのいずれでもよい。
【0028】
負荷比率=Σ当時負荷実績(例えば、0:00~10:00)[kWh]÷Σ基準負荷(例えば、0:00~10:00)[kWh]・・・(式2)
【0029】
負荷比率=当時負荷実績[kWh](例えば、9:30)÷基準負荷[kWh](例えば、9:30)・・・(式3)
【0030】
第二に、運用装置10は、(式1)により求めた当日負荷補正量をもとに、高コスト帯での放熱量を算出する。本例では、8:00~10:00、17:00~20:00が高コスト帯であるが、前半の8:00~10:00はすでに過ぎているため、後半の高コスト帯での放熱量を算出する。
【0031】
高コスト帯放熱量[kWh]=Σ当日負荷補正(例えば、17:00~20:00)[kWh]・・・(式4)
【0032】
第三に、運用装置10は、上記の高コスト帯放熱量と蓄熱量(図2の例では、蓄氷量)の直近実績値から、(式5)にて蓄熱量残量(図2の例では、蓄氷量残量)を計算する。
【0033】
蓄熱量(蓄氷量)残量[kWh]=蓄熱量(蓄氷量)直近実績値[kWh]-高コスト帯放熱量[kWh]・・・(式5)
【0034】
ここで計算した蓄氷量残量が負の場合、現状の蓄氷量では高コスト帯のみの放熱でも氷量が不足することを意味するため、中コスト帯での放熱は行わない。蓄氷量残量が正の場合、中コスト帯での放熱余地があるため、放熱処理に移る。
【0035】
<<低コスト・中コストの時間帯の放熱運転>>
中コスト帯での放熱処理として以下を実施する。放熱処理としてはいくつかの方法があるが、一例として、前時間優先で放熱を割り当てる方法を示す。
【0036】
(式6)に示す通り、時刻tにおける蓄熱量残量(図2の例では、蓄氷量残量)を順次求めていき、蓄熱量残量(図2の例では、蓄氷量残量)が負となるまで繰り返す。本例では、tは10:00から始まり、10:30、11:00と繰り返していくことになる。
【0037】
蓄熱量(蓄氷量)残量(t)[kWh]=蓄熱量(蓄氷量)残量(t-1)[kWh]-当日負荷補正(t)[kWh]・・・(式6)
【0038】
このようにして、蓄氷量残量が正となる時刻を放熱とすることで、氷蓄熱を有効に使うことが可能となる。
【0039】
中コスト帯でどのような放熱方法をとるかはその設備の運用次第ではあるが、例えば、以下のような判断基準を持つことが考えられる。当然のことながら、そのいずれの方法をとっても良い。
【0040】
(1)中コスト帯の前優先で放熱を行う。
本例で示した通り、中コスト帯の前が高コスト帯で、冷凍機が停止していることが多い場合、冷凍機停止状態を維持するため前優先で放熱を行う。
【0041】
(2)中コスト帯の後優先で放熱を行う。
中コスト帯から高コスト帯へ放熱を継続することで、熱変動を抑える。
【0042】
(3)中コスト帯のピークを抑える。
熱ピークを抑えるように放熱を行う。なお、当日負荷補正を用いてピークを算出することになるため、基準負荷の形が当日負荷とほぼ一致するような場合に有効である。
【0043】
上述した制御を行う間隔としては、簡易的に行うのであれば1日1回、本例でいえば10:00に1回だけ行う方法と、30分毎など定周期で実績値を取得し補正を行う方法がある。定周期実行を行う場合、(式1)は、例えば、10:00~24:00から始まり、10:30~24:00、11:00~24:00と随時時間を変更していけばよい。
【0044】
<<低コスト・中コストの時間帯の蓄熱運転>>
上記の(式5)において、蓄熱量(蓄氷量)残量[kWh]が負となった場合、高コスト帯のみの放熱でも熱量(氷量)が不足することになるため、蓄熱運転を実施する(図7参照)。
【0045】
蓄熱運転は、下記の(式7)にて蓄熱量(畜氷量)残量が正となる最小の時間tを求める。「熱供給装置(冷凍機)最大出力[kWh]-当日負荷補正(t)[kWh]」は各時間における熱供給装置(冷凍機)の余力であり、この余力分を蓄熱に回すことで蓄熱(蓄氷)を行う。ただし、ここで求めた蓄熱運転時間が高コスト帯にかかる場合は、その時点で蓄熱運転を停止する。
【0046】
蓄熱量(畜氷量)残量(t+1)[kWh]=蓄熱量(畜氷量)残量(t)[kWh]+(熱供給装置(冷凍機)最大出力[kWh]-当日負荷補正(t)[kWh])・・・(式7)
【0047】
なお、蓄熱(蓄氷)の設備によってはこのような蓄熱(蓄氷)運転ができない場合があるため、蓄熱(蓄氷)運転が可能な場合のみ蓄熱(蓄氷)を行うものとする。蓄熱(蓄氷)運転ができない例としては以下がある。
・夜間は蓄氷用のマイナス温度送水、昼間は冷水用のプラス温度送水など、冷凍機の送り出し温度を変えている場合。
・蓄氷方式により、一度融氷を始めたら氷を使い切るまで蓄氷できない場合。
このような場合は入力装置により、事前に特性をセットしておき、途中蓄熱(蓄氷)不可とする必要がある。
【0048】
<<基準負荷の補正>>
上述までは、設定した基準負荷と実際の負荷のパターンが近いことを前提としているが、負荷設備経年劣化、設備の更新、生産計画の変更、操業計画の変更などにより、負荷のパターンが大きく変化することがある。その場合、設定した基準負荷を補正する仕組みが必要となる。補正手順例を以下に示す。
【0049】
第一に、運用装置10は、必要となる実績データを選択する。蓄熱システム20の運用を決定することから実績データとしては、高負荷時のデータを用いることが有効であり、例えば、ピーク負荷上位10%、1日積算負荷上位10%、などの上位負荷を基準とする方法がある。また、高負荷上位は特異日として除外するのであれば、上位10日は除外して上位10%を選択する、などの方法を用いてもよい。
【0050】
第二に、運用装置10は、基準負荷の補正を行う。生産計画が完全に変わった場合などは、もともと設定されていた基準負荷(以下、補正前基準負荷ともいう)にあまり意味はないため、抽出した実績データをもとに補正後基準負荷を作成する。一方で、設備がわずかに変わった、操業時間が少し変わった、など、変化が少ない場合は補正前基準負荷を残したほうが良いこともあり、この場合、抽出した実績データと補正前基準負荷を同時に考慮することで補正後基準負荷を作成する。なお、抽出した実績負荷の日数mが多い場合、補正前基準負荷変動が実績負荷に埋もれてしまうため、日数分に対応する重みnをつける。
【0051】
補正後基準負荷(t)=(抽出実績負荷(m,t)+補正前基準負荷(t)×重みn)÷(m+n)・・・(式8)
【0052】
<機能ブロック>
図3は、本発明の一実施形態に係る運用装置10の機能ブロックを示す図である。運用装置10は、センサー入力装置101と、入力装置102と、計算装置103と、出力装置104と、を備える。また、運用装置10は、プログラムを実行することによって、センサー入力装置101、入力装置102、計算装置103、出力装置104として機能する。以下、それぞれについて説明する。
【0053】
センサー入力装置101は、蓄熱装置21および熱供給装置22から熱供給が行われた実績負荷(センサーによって計測された負荷の実績値)と、蓄熱量(センサーによって計測された蓄熱装置21に蓄えられている熱(エネルギー)の量)と、をセンサーから取得する。なお、蓄熱装置21および熱供給装置22には、センサーが取り付けられているものとする。
【0054】
入力装置102は、蓄熱装置21と熱供給装置22の特性(例えば、蓄熱の性能、熱供給の性能)と、基準負荷と、の入力を受け付ける。具体的には、蓄熱装置21と熱供給装置22の特性と、基準負荷と、がユーザによって入力されたとする。そうすると、入力装置102は、蓄熱装置21および熱供給装置22の特性と、基準負荷と、の入力を受け付ける。
【0055】
計算装置103は、センサー入力装置101が取得した実績負荷と蓄熱量と、入力装置102が入力を受け付けた蓄熱装置21と熱供給装置22の特性と、基準負荷とから、蓄熱装置21の出力(例えば、放熱量)および熱供給装置22の出力(例えば、熱供給量)を算出する(例えば、熱供給装置22の出力=特性a×消費電力+特性bといった線形で表すことができる)。また、計算装置103は、基準負荷を補正することができる。
【0056】
出力装置104は、計算装置103が算出した結果を出力する。蓄熱装置21および熱供給装置22は、計算装置103が算出した結果にしたがって、放熱の処理を行うことができる。
【0057】
<方法>
図4は、本発明の一実施形態に係る蓄熱装置および熱供給装置を運用する処理のフローチャートである。
【0058】
ステップ1(S1)において、センサー入力装置101は、蓄熱装置21および熱供給装置22のセンサーが計測した実績を取得する。具体的には、センサー入力装置101は、蓄熱装置21および熱供給装置22から熱供給が行われた実績負荷と、蓄熱量と、をセンサーから取得する。
【0059】
ステップ2(S2)において、機器特性(具体的には、蓄熱装置21と熱供給装置22の特性)と、計算条件(具体的には、基準負荷)と、がユーザによって入力されたとする。そうすると、入力装置102は、機器(具体的には、蓄熱装置21および熱供給装置22)の特性と、計算条件(具体的には、基準負荷)と、の入力を受け付ける。なお、計算条件は、基準負荷のほか、実績負荷をもとに基準負荷を補正する周期(例えば、30分ごと、1日ごと)、時間(電力料金の変動)の設定を含むことができる。
【0060】
ステップ3(S3)において、計算装置103は、蓄熱装置21および熱供給装置22の出力を計算する。計算装置103は、S1で取得した実績負荷および蓄熱量と、S2で入力を受け付けた特性および基準負荷と、から蓄熱装置21および熱供給装置22の出力を算出する。
【0061】
ステップ4(S4)において、出力装置104は、S3で算出した結果を出力する。
【0062】
<効果>
このように、本発明では、限られた運用実績をもとに蓄熱装置と熱供給装置を運用することができる。具体的には、未来の負荷を予測せず現状の計測情報をもとに蓄積装置と熱供給装置を運用することができる。そのため、安価なシステム構成にて蓄熱装置の有効活用が可能となる。また、基準負荷を補正する仕組みを備えることで、設備変更、プラント運用変更に対応することが可能となる。
【0063】
<ハードウェア構成>
図7は、本発明の一実施形態に係る運用装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。運用装置10は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003を有する。CPU1001、ROM1002、RAM1003は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0064】
また、運用装置10は、補助記憶装置1004、表示装置1005、操作装置1006、I/F(Interface)装置1007、ドライブ装置1008を有することができる。なお、運用装置10の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。
【0065】
CPU1001は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0066】
ROM1002は、不揮発性メモリである。ROM1002は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムをCPU1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM1002はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0067】
RAM1003は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM1003は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムがCPU1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0068】
補助記憶装置1004は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0069】
表示装置1005は、運用装置10の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0070】
操作装置1006は、運用装置10の管理者が運用装置10に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0071】
I/F装置1007は、ネットワークに接続し、他の装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0072】
ドライブ装置1008は記憶媒体1009をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体1009には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体1009には、EPROM (Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0073】
なお、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体1009がドライブ装置1008にセットされ、該記憶媒体1009に記録された各種プログラムがドライブ装置1008により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、I/F装置1007を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 エネルギープラント
10 運用装置
20 蓄熱システム
21 蓄熱装置
22 熱供給装置
101 センサー入力装置
102 入力装置
103 計算装置
104 出力装置
201 氷蓄熱
202 ターボ冷凍機
203 冷却塔
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 補助記憶装置
1005 表示装置
1006 操作装置
1007 I/F装置
1008 ドライブ装置
1009 記憶媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8