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  • 特開-新しい非毒性ポリイミド溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190680
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】新しい非毒性ポリイミド溶液
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20221219BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20221219BHJP
   C09D 179/08 20060101ALI20221219BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08L79/08
C09D17/00
C09D179/08
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022091559
(22)【出願日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】21179346.8
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509316589
【氏名又は名称】エボニック ファイバース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Fibres GmbH
【住所又は居所原語表記】Gewerbepark 4, A-4861 Schoerfling am Attersee, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオナルド ウィリアム ハーヴェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ビアー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J037
4J038
4J043
【Fターム(参考)】
4J002CM041
4J002GH00
4J002HA05
4J037AA01
4J037AA08
4J037CC21
4J037FF29
4J038DJ021
4J038HA036
4J038HA166
4J038HA316
4J038HA376
4J038KA08
4J038NA27
4J038PC02
4J038PC08
4J043PA02
4J043QB26
4J043RA35
4J043SA06
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA051
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB152
4J043UB401
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA051
4J043VA062
4J043ZB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存のポリイミド溶液と比較して環境学的および毒物学的な利益を有する新しいポリイミド溶液、ならびに特にコーティング用途のためのそれらの使用を提供すること。
【解決手段】特定の溶媒混合物と、1種または複数種のポリイミド、好ましくは芳香族ポリイミドとを含むポリイミド溶液であって、ポリイミド溶液は、全重量に対して合計で5~35重量%の1種または複数種のポリイミドを含む、ポリイミド溶液である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種または複数種のポリイミド、好ましくは芳香族ポリイミドと、
b)a.55~90重量%、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%のジメチルスルホキシド、
b.合計で0.1~20重量%、好ましくは0.5~19重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは2~13重量%の、3~15個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~9個の炭素原子を有する1種または複数種の第1級、第2級および/または第3級アルカノールアミン、
c.0~40、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは5~15重量%のベンジルアルコール、
d.0~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%のシクロヘキサノン、
e.0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%のキシレン、
f.合計で0~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、最も好ましくはプロピレンカーボネート、
g.0~5重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、より一層好ましくは0.001~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.5重量%、最も好ましくは0重量%のプロピレングリコール、
h.合計で0~10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~3重量%、より一層好ましくは0~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.1重量%、最も好ましくは0重量%のDMF、NEP、NMPおよび/またはDMAc、
i.任意選択で、さらなる共溶媒
を含み、
成分a.~i.について示される重量パーセンテージは、溶媒混合物b)の総重量に対するものであり、
成分a.~i.の量は、それらが合計で100重量%の溶媒混合物になるように選択される、
溶媒混合物と
を含むポリイミド溶液であって、
ポリイミド溶液は、ポリイミド溶液の全重量に対して合計で5~35重量%の成分a)を含む、
ポリイミド溶液。
【請求項2】
成分
a.、b.およびc.
または
a.、b.およびd.
または
a.、b.、c.およびd.
または
a.、b.、c.、d.およびe.
または
a.、b.、e.およびf.
または
a.、b.、d.、e.およびf.
を含むことを特徴とし、
成分a.およびb.の量は、請求項1に示される範囲から選択され、成分c.、d.、e.およびf.の量は、含まれる場合、以下の範囲:
c.0.1~40、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは5~15重量%、
d.1~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%、
e.0.1~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%、
f.合計で1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、最も好ましくはプロピレンカーボネート
から選択される、
請求項1に記載のポリイミド溶液。
【請求項3】
成分
a.、b.およびc.
または
a.、b.およびd.
または
a.、b.、c.およびd.
または
a.、b.、c.、d.およびe.
または
a.、b.、e.およびf.
または
a.、b.、d.、e.およびf.
からなることを特徴とし、
成分a.およびb.の量は、請求項1に示される範囲から選択され、成分c.、d.、e.およびf.の量は、含まれる場合、以下の範囲
c.0.1~40、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは5~15重量%、
d.1~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%、
e.0.1~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%、
f.合計で1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、最も好ましくはプロピレンカーボネート
から選択され、
各々の成分の量は、成分の量が合計で100%の溶媒混合物b)になるように選択される、
請求項2に記載のポリイミド溶液。
【請求項4】
成分a.~h.の量は、それらが合計で100重量%の溶媒混合物になるように選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミド溶液。
【請求項5】
3~15個の炭素原子を有する1種または複数種の第1級、第2級または第3級アルカノールアミンが、トリエタノールアミンおよび2-(ジメチルアミノ)エタノールならびにそれらの混合物からなる群から選択され、
- トリエタノールアミンは、好ましくは、溶媒混合物b)の総重量に対して、0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは1~14重量%、より一層好ましくは2~13重量%、最も好ましくは3~12重量%の量で含まれ、
- 2-(ジメチルアミノ)エタノールは、好ましくは、溶媒混合物b)の総重量に対して、0~20重量%、より好ましくは0.1~8重量%、より一層好ましくは1~7重量%、特に好ましくは2~6重量%、最も好ましくは3~5重量%の量で含まれ、
トリエタノールアミンおよび2-(ジメチルアミノ)エタノールの量は、両方の成分が合計で、溶媒混合物b)の0.1~20重量%、好ましくは0.5~19重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは2~13重量%となるように、上記に示した範囲から選択される
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項6】
ポリイミドa)は、同一のまたは異なる式(1)の反復単位
【化1】
(式中、
官能基Rは、部分RA1、RA2およびRA3
【化2】
からなる群から選択される1つまたは複数の同一のまたは異なる部分を表し、
官能基Rは、部分RB1、RB2およびRB3
【化3】
(式中、Y、Y、YおよびYは、H、またはCH、または2~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルのいずれかであり、Y=-CH-、-(CHC-、SO、-(CF)C-、-CO-、-COO-、-CONH-、-O-である)
からなる群から選択される1つまたは複数の同一のまたは異なる部分を表す)
を含む芳香族ポリイミドであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項7】
少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトライルであり、少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、2,4-トルエンジイル、2,6-トルエンジイルまたは4,4’-メチレンジフェニルジイルであり、2,4-トルエンジイル対2,6-トルエンジイルのモル比は1:9~9:1であり、2,4-トルエンジイルと2,6-トルエンジイルとを合わせた量対4,4’-メチレンジフェニルジイルの量のモル比は70:30~100:0であることを特徴とする、請求項6に記載のポリイミド溶液。
【請求項8】
少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトライルまたは1,2,4,5-フェニレンテトライルであり、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトライル対1,2,4,5-フェニレンテトライルのモル比は50:50~95:5、好ましくは55:45~65:35であり、少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、2,4-トルエンジイルまたは2,6-トルエンジイルであり、2,4-トルエンジイル対2,6-トルエンジイルのモル比は1:9~9:1であることを特徴とする、請求項6に記載のポリイミド溶液。
【請求項9】
溶媒可溶性芳香族ポリイミドは、次式(3)に従うブロック(A)および次式(4)に従うブロック(B):
【化4】
(式中、
官能基Rは、その中に以下の官能基:
【化5】

のうちのいずれかまたは両方を含み、
は、以下の官能基
【化6】
のうち少なくとも1つまたは2つもしくは3つを含み、
は、以下の官能基:
【化7】
のうちの少なくとも1つまたは複数を含み、
R4は、以下の官能基
【化8】
(式中、Y、Y、YおよびYは、H、またはCH、または2~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルのいずれかであり、Z=-CH-、-(CHC-、SO、-(CF)C-、-CO-、-COO-、-CONH-、-O-であり、ただし、ラジカルY~Yのうちの少なくとも1つ、好ましくはラジカルY~Yのうちの少なくとも2つ、より好ましくはラジカルY~Yのうちの少なくとも3つ、最も好ましくはラジカルY~Yのすべては、CHまたはC~Cアルキルラジカルに等しいことを条件とする)
のうちの1つまたは複数を含む)
を含む、好ましくはそれらからなるブロック-コポリイミドであることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項10】
ポリイミド溶液の全重量に対して、合計で10~30重量%、より好ましくは15~25重量%の成分a)を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項11】
ポリイミド溶液の全重量に対して、合計で95~65重量%、好ましくは90~70重量%、より好ましくは85~75重量%の成分b)を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリイミド溶液。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のポリイミド溶液を含む分散液であって、さらに成分c)として、グラファイト、金属硫化物、例えば二硫化モリブデンおよび二硫化タングステン、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、無機窒化物、例えば窒化アルミニウム、窒化ケイ素および六方晶窒化ホウ素、シリカ、研摩粒子、例えば、立方晶窒化ホウ素、ダイアモンドからなる群から選択される1種または複数種のフィラーを含む、分散液。
【請求項13】
ポリイミド溶液を調製するための方法であって、
i.1種または複数種のポリイミドa)、好ましくは芳香族ポリイミドを用意するステップと、
ii.a.55~90重量%、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%のジメチルスルホキシド、
b.合計で0.1~20重量%、好ましくは0.5~19重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは2~13重量%の、3~15個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~9個の炭素原子を有する1種または複数種の第1級、第2級または第3級アルカノールアミン、
c.0~40重量%、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは5~15重量%のベンジルアルコール、
d.0~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%のシクロヘキサノン、
e.好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%のキシレン、
f.合計で0~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、最も好ましくはプロピレンカーボネート、
g.0~5重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、より一層好ましくは0.001~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.5重量%、最も好ましくは0重量%のプロピレングリコール、
h.合計で0~10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~3重量%、より一層好ましくは0~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.1重量%、最も好ましくは0重量%のDMF、NEP、NMPおよび/またはDMAc、
i.任意選択で、さらなる共溶媒
を含み、
成分a.~i.について示される重量パーセンテージは、溶媒混合物b)の総重量に対するものであり、
成分a.~i.の量は、それらが合計で100重量%の溶媒混合物b)になるように選択される、
ステップと、
iii.ステップi.で用意したポリイミドを、ステップii.で用意した溶媒混合物に溶解するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
ポリイミド溶液を調製するための方法であって、
I.1種または複数種のポリイミドa)、好ましくは芳香族ポリイミドを用意するステップと、
II.ステップI.で用意したポリイミドを、部分的にまたは完全にDMSOに溶解するステップと、
III.溶媒混合物b)の残りの成分を、ステップII.で得られたポリイミド溶液に、溶媒混合物b)を得る量で添加するステップと
を含み、
溶媒混合物b)は
a.55~90重量%、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%のジメチルスルホキシド、
b.合計で0.1~20重量%、好ましくは0.5~19重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは2~13重量%の、3~15個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~9個の炭素原子を有する1種または複数種の第1級、第2級または第3級アルカノールアミン、
c.0~40重量%、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは5~15重量%のベンジルアルコール、
d.0~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%のシクロヘキサノン、
e.好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%のキシレン、
f.合計で0~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、最も好ましくはプロピレンカーボネート、
g.0~5重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、より一層好ましくは0.001~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.5重量%、最も好ましくは0重量%のプロピレングリコール、
h.合計で0~10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~3重量%、より一層好ましくは0~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.1重量%、最も好ましくは0重量%のDMF、NEP、NMPおよび/またはDMAc、
i.任意選択で、さらなる共溶媒
を含み、
成分a.~i.について示される重量パーセンテージは、溶媒混合物b)の総重量に対するものであり、
成分a.~i.の量は、それらが合計で100重量%の溶媒混合物b)になるように選択される、
方法。
【請求項15】
ステップiii.またはステップII.は、25~90℃、より好ましくは50~70℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項13または14に記載のポリイミド溶液を調製するための方法。
【請求項16】
基材、好ましくは、鋼、アルミニウム、銅およびポリエーテルエーテルケトンから作製された基材をコーティングするための、請求項1から12のいずれか一項に記載のポリイミド溶液の使用。
【請求項17】
加工における請求項1から12のいずれか一項に記載のポリイミド溶液の使用であって、ポリイミド溶液が、スプレーコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティングを介して、またはスキージにより塗布される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のポリイミド溶液と比較して環境学的および毒物学的な利益を有する新しいポリイミド溶液、ならびに特にコーティング用途のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの可溶性芳香族ポリイミドが開発され、様々な用途のために市販されている。例えば、WO2011/009919A1は、P84(登録商標)タイプのいくつかの可溶性ポリイミド、ならびにそれらを生成するための方法および膜を製造するためのそれらの使用を開示している。WO2011/009919A1によると、P84(登録商標)タイプのポリイミドは、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド(Dimethylacetamid))、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、NEP(N-エチル-2-ピロリドン)、スルホラン(Sulfolan)(テトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド)およびDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解しうる。
【0003】
ポリイミドに最も適した市販の溶媒は、DMF、DMAc、NMPおよびNEPである。しかしながらこれらの溶媒は、CMR(発がん性、変異原性、および生殖毒性)物質に分類される。これに加えて、DMFおよびNMPは、SVHC(高懸念物質)候補リストに列挙されている。結果として、そのような溶媒を含むポリイミド溶液の加工、すなわち、製造、輸送および使用は、厳格な安全性要件の対象である。実際、これらの制限は、多くの潜在的顧客、特に中小規模の企業にとって切実な問題である。
【0004】
ポリイミドまたはポリアミドイミド樹脂のための溶媒のようなNMPによって引き起こされる環境学的、毒物学的および管理上の問題に起因して、塗料メーカーは代替物を模索している。例えば、DE102014104223A1は、塗料用途の溶媒として、NMPの代わりに3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドを使用することを提案している。
【0005】
WO2011/009919A1に列挙されている溶媒の中でも、DMSOは批判の少ない代替物である。しかしながら、DMSO中のポリイミドの溶液を加工するにはいくつかの不都合が存在する。1つには、18℃という高融解温度により、例えば輸送中に、DMSO中のポリイミド溶液の凍結が生じる可能性がある。他方、DMSO中のP84(登録商標)溶液は、空気中で不十分な保存安定性を示す。湿気と接触すると、水分の吸収に起因する位相反転が、短時間(1時間未満)内で起こる。現象として、これは、溶液の表面上での白色の硬い皮膜の形成によって確認できる。とりわけコーティング用途では、これは、DMSO中のポリイミド溶液の使用を妨げる。
【0006】
US2004/0266979は、溶媒可溶性ポリイミドを生成するための方法を開示している。ポリイミドは、触媒としての第3級アミンの存在下で、少なくとも1種のテトラカルボン酸成分を溶媒中の少なくとも1種のジアミン成分と重縮合することによって生成される。WO2011/009919A1と同様に、使用できる溶媒のリストには、CMR分類化合物であるDMF(ジメチルホルムアミド)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)、ヘキサメチルホスホラミド(hexamethylphosphoramid)、スルホランだけでなく、DMSO(ジメチルスルホキシド)も含まれる。US2004/0266979の例によると、重縮合反応の終了時に不均質な反応混合物が得られる。重縮合の完了後、大量のDMAcを反応混合物に添加して、均一な溶液が得られる。US2004/0266979では、主溶媒としてDMAcを使用しないと、均一な溶液は得られなかった。結果として、US2004/0266979は、WO2011/009919A1について先に記載したのと同じ不都合がある。
【0007】
US6,916,772B2は、ポリイミドなどのフォトレジスト化合物を基材から剥離するための組成物であって、a)約5重量%~約50重量%のアルキル置換ピロリドン、アルキル置換ピペリドンまたはこれらの混合物、b)約0.2%~約20%の1種または複数種のアルカノールアミン、およびc)約50%~約94%のスルホキシド、スルホキサンまたはこれらの混合物を含む、組成物を開示している。US6,916,772B2に開示される組成物の大部分は、CMR分類溶媒であるNMPを含む。したがって、US’772において使用される溶媒は、先に議論したのと同じ環境学的、毒物学的および管理上の問題を引き起こす。US6,916,772B2は、そこに開示されるポリイミド溶液がコーティング用途に使用されうること、またはポリイミド溶液が本発明によって解決される問題のうちいずれかを解決することについて何らのヒントも提供していない。US6,916,772B2は、まったく異なる技術分野に関する。
【0008】
結果として、ポリイミド、特に芳香族ポリイミドのための新しい溶媒または溶媒混合物への強い需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2011/009919A1
【特許文献2】DE102014104223A1
【特許文献3】US2004/0266979
【特許文献4】US6,916,772B2
【特許文献5】DE2143080
【特許文献6】WO2015/091122
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Handbook of Specialty Fluorinated Polymers、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする問題は、先行技術のポリイミド溶液の不都合を有さないか、または低減されてわずかな程度でそのような不都合を有する、新しいポリイミド溶液、またはポリイミドのための新しい溶媒もしくは溶媒混合物を提供することであった。さらなる問題は、そのような新しいポリイミド溶液を製造するための方法を提供すること、および異なる適用分野、特にコーティング用途における新しいポリイミド溶液の使用を可能にすることであった。
【0012】
本発明が解決しようとする第1の特定の問題は、ポリイミドのための新しい溶媒または溶媒混合物を提供することであった。好ましくは、これらの新しい溶媒または溶媒混合物は、本発明がなされた時点で市販されているポリイミド溶液において使用される溶媒と比較して、または上記で引用される先行技術において開示されるポリイミドコーティング溶液と比較して、毒性が低くなる、および/または有益な環境学的特性を有するものとする。好ましくは、CMR物質の使用は、低減するかまたは回避するべきである。
【0013】
本発明が解決しようとする第2の特定の問題は、空気中での良好な保存安定性、好ましくは、純粋なDMSO中溶液と比較して空気中での改善された保存安定性を有し、より好ましくは、空気中で保存された場合、少なくとも2時間、より一層好ましくは少なくとも4時間、特に好ましくは少なくとも6時間、および最も好ましくは少なくとも8時間の皮膜形成時間を有するポリイミド溶液を生成することを可能にする、ポリイミドのための新しい溶媒または溶媒混合物を提供することであった。
【0014】
本発明が解決しようとする第3の特定の問題は、広い温度範囲、特に低温、とりわけ0℃未満の温度で、ポリイミド溶液を生成、輸送および使用することを可能にする新しい溶媒または溶媒混合物を提供することであった。
【0015】
本発明が解決しようとする第4の特定の問題は、高い溶解度を有する、すなわち、高固体含有量を有し、より好ましくは低粘度も有するポリイミド溶液を生成することを可能にする、ポリイミドのための新しい溶媒または溶媒混合物を提供することであった。
【0016】
本発明が解決しようとする第5の特定の問題は、多様な用途、とりわけコーティング用途に使用することができるポリイミド溶液を生成することを可能にするポリイミドのための新しい溶媒または溶媒混合物を提供することであった。好ましくは、良好な性能特性を有する高品質のコーティングを得ることが可能であるべきである。
【0017】
本発明が解決しようとする第6の特定の問題は、より少ない安全性および管理上の要件を有するポリイミド溶液を生成、輸送および使用することを可能にするポリイミドのための新しい溶媒または溶媒混合物を提供することであった。
【0018】
先に言及されていないさらなる問題は、以下に続く記載、実施例および特許請求の範囲を考慮して、明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、驚くべきことに、請求項1または従属請求項のうちの一項に定義されるDMSOおよび共溶媒を含む溶媒混合物が、本発明の問題を解決するポリイミド溶液を生成するために使用できることを見出した。
【0020】
本発明の溶媒混合物は、溶媒または共溶媒としてNMP、NEP、DMAcおよびDMFのようないかなるCMRおよびSVHC分類物質も使用せずに、ポリイミド、特に芳香族ポリイミドを溶解するために使用でき、それ自体は毒性に分類されない。
【0021】
本発明の溶媒混合物はDMSOに基づくが、本発明の配合物、すなわちポリイミド溶液は、純粋なDMSO中のポリイミド溶液よりも大幅に良好な加工特性を示す。0℃未満から-24℃までの融点が達成された。これにより、非常に低温の領域において本発明のポリイミド溶液を生成、輸送および使用することが可能になる。
【0022】
空気中での2時間から8時間超までの継続時間後でさえ、本発明のポリイミド配合物は、湿気と接触した場合、いずれの有害な皮膜形成も示さない。
【0023】
良好なまたはさらに非常に良好な、すなわち低い粘度を有する、少なくとも25重量%のポリイミド含有量を有する溶液が得られた。
【0024】
先に言及されていないさらなる利益は、以下に続く記載、実施例および特許請求の範囲を考慮して、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】比較例、すなわち純粋なDMSO中のP84(登録商標)タイプ70の溶液、ならびに本発明の実施例E5およびE6の保存安定性試験を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の対象は、請求項1のポリイミド溶液、請求項13または14に記載のポリイミド溶液を製造するための方法、および請求項16または17に記載の本発明のポリイミド溶液の使用である。好ましい実施形態は、従属請求項において特許請求される。
【0027】
「ポリイミド溶液」および「ポリイミド配合物」という用語は、本発明において同義に使用され、溶媒混合物および少なくとも1種のポリイミドを含む配合物に関し、ここで、「溶液」という用語は、ポリイミドが溶媒混合物に溶解しており、肉眼で見える未溶解のポリイミド粒子は存在しないことを意味する。
【0028】
本発明は、
a)1種または複数種のポリイミド、好ましくは芳香族ポリイミドと、
b)a.55~90重量%のジメチルスルホキシド、
b.合計で0.1~20重量%の、3~15個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~9個の炭素原子を有する1種または複数種の第1級、第2級および/または第3級アルカノールアミン、
c.0~40重量%のベンジルアルコール、
d.0~25重量%のシクロヘキサノン、
e.0~15重量%のキシレン、
f.合計で、0~20重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、
g.0~5重量%のプロピレングリコール、
h.合計で、0~10重量%のDMF、NEP、NMPおよび/またはDMAc、
i.任意選択で、さらなる共溶媒
を含み、
成分a.~i.について示される重量パーセンテージは、溶媒混合物b)の総重量に対するものであり、
成分a.~i.の量は、それらが合計で100重量%の溶媒混合物になるように選択される、
溶媒混合物と
を含む、ポリイミド溶液を提供する。
【0029】
好ましくは、成分a.~h.の量は、それらが合計で100重量%の溶媒混合物になるように選択され、すなわち、さらなる共溶媒i.は含まれない。
【0030】
ポリイミドa)として、脂肪族または芳香族ポリイミドを使用できる。好ましくは、芳香族ポリイミドが使用される。芳香族ポリイミド、好ましくは二無水物およびジイソシアネートまたはジアミンから作製された芳香族ポリイミド、ならびにそれらを製造するための方法は、当業者に公知である。様々なポリイミドのポリマーのホモ、ランダムもしくはコポリマー、または混合物もしくはブレンドを使用してもよい。すべての種類の溶媒可溶性芳香族ポリイミドを本発明において使用できる。
【0031】
とりわけ先行技術の節で先に記載した通り、CMRとして分類されている溶媒およびSVHC物質を含まない、または非常に低含有量で有する、芳香族ポリイミドのための溶媒または溶媒混合物への強い需要が存在する。下記の実施例に示される通り、本発明の溶媒混合物は、これらの要件を満たし、少なくとも80mol%の芳香族モノマーを含む芳香族ポリイミドと組み合わせて優れた性能を示す。したがって、本発明のポリイミド溶液は、ポリイミド成分a)として、80~100%の芳香族モノマーを含む、より好ましくは90~100%の芳香族モノマーを含む、より一層好ましくは95~100%の芳香族モノマーを含む、特に好ましくは97~100%の芳香族モノマーを含む、最も好ましくは100%の芳香族モノマーを含む、ポリイミドを含むことが好ましい。
【0032】
好ましくは、芳香族ポリイミドは、同一のまたは異なる式(1)の反復単位
【0033】
【化1】
【0034】
(式中、
官能基Rは、部分RA1、RA2およびRA3
【0035】
【化2】
【0036】
からなる群から選択される1つまたは複数の同一のまたは異なる部分を表し、
官能基Rは、部分RB1、RB2およびRB3
【0037】
【化3】
【0038】
(式中、Y、Y、YおよびYは、H、またはCH、または2~4個の炭素原子、およびZ=-CH-、-(CHC-、SO、-(CF)C-、-CO-、-COO-、-CONH-、-O-を有するアルキルラジカルのいずれかである)
からなる群から選択される1つまたは複数の同一のまたは異なる部分を表す)
を含む。
【0039】
より好ましくは、ポリイミドa)は、
3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、3,4,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロピリデンジフタル酸二無水物(6-FDA)、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)およびこれらの混合物からなる群から選択される二無水物を、
双極性非プロトン性溶媒中、トルエン-2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)、トルエン-2,6-ジイソシアネート(2,4-TDI)、4,4’-メチレンジフェニル-ジイソシアネート(MDI)、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジイソシアネート(MesDI)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジイソシアネート、ジエチルメチルベンゼンジイソシアネートおよびこれらの混合物からなる群から選択されるジイソシアネートと反応させて、ポリイミドを得るか、
または
双極性非プロトン性溶媒中、トルエン-2,4-ジアミン(2,4-TDA)、トルエン-2,6-ジアミン(2,6-TDI)、4,4’-メチレンジフェニル-ジアミン(MDA)、2,4,6-トリメチル-1,3-フェニレンジアミン(MesDA)、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-フェニレンジアミン、ジエチルメチルベンゼンジアミンおよびこれらの混合物からなる群から選択されるジアミンと反応させて、ポリアミン酸を得ること
によって調製される。この場合、ポリアミン酸は、中間体として形成され、後にイミド化される。
【0040】
より一層好ましくは、
少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトライルであり、少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、2,4-トルエンジイル、2,6-トルエンジイルもしくは4,4’-メチレンジフェニルジイルであり、2,4-トルエンジイル対2,6-トルエンジイルのモル比は1:9~9:1であり、2,4-トルエンジイルと2,6-トルエンジイルとを合わせた量対4,4’-メチレンジフェニルジイルの量のモル比は70:30~100:0であるか
または
少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトライルもしくは1,2,4,5-フェニレンテトライルであり、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトライル対1,2,4,5-フェニレンテトライルのモル比は50:50~95:5、好ましくは55:45~65:35であり、少なくとも90mol%のビルディングブロックRは、2,4-トルエンジイルもしくは2,6-トルエンジイルであり、2,4-トルエンジイル対2,6-トルエンジイルのモル比は1:9~9:1である。
【0041】
本発明の第1の特に好ましい実施形態では、ポリイミドは、式(2)に従う以下の構造:
【0042】
【化4】
【0043】
(式中、0≦x≦0.5および1≧y≧0.5であり、xおよびyの合計=1であり、Rは、部分L1、L2、L3およびL4
【0044】
【化5】
【0045】
からなる群から選択される1つまたは複数の同一のまたは異なる部分を表す)
を有する。
【0046】
ポリイミドは、非常に特に好ましくは、式(2)(式中、x=0、y=1であり、Rは、64mol%のL2、16mol%のL3および20mol%のL4からなる)に従うポリマーである。そのような溶媒可溶性ポリイミドは、P84(登録商標)またはP84(登録商標)タイプ70として公知であり、CAS番号:9046-51-9を有する。
【0047】
また、非常に特に好ましくは、式(2)のポリイミドは、組成x=0.4、y=0.6を有し、Rが80mol%のL2および20mol%のL3からなるポリマーでもある。この溶媒可溶性ポリイミドは、P84(登録商標)HTまたはP84(登録商標)HT325として公知であり、CAS番号:134119-41-8を有する。
【0048】
式(2)に従うこれらのおよびさらなる同様のポリイミドの生成に関する詳細は、WO2011/009919A1から抽出でき、この文書の全内容は、参照により本発明の記載に明示的に組み込まれる。WO2011/009919A1の実施例に記載されているすべてのポリマーは、本発明の方法に特に好ましく使用される。
【0049】
DE2143080は、BTDA、ならびにトルエン-2,4-ジイソシアネート、トルエン-2,6-ジイソシアネートおよび4,4’-メチレンジフェニル-ジイソシアネートの混合物から作製された溶媒可溶性ポリイミドの製造を記載している。DE2143080は、BTDA、およびトルエン-2,4-ジアミン、トルエン-2,6-ジアミン、4,4’-メチレンジフェニル-ジアミンの混合物からの溶媒可溶性ポリアミン酸の製造、ならびに対応するポリイミドへの後続のイミド化も記載している。これらのおよびさらなる同様のポリイミドおよびポリアミン酸の生成に関する詳細は、DE2143080から抽出でき、両文書の全内容は、参照により本発明の記載に明示的に組み込まれる。DE2143080の実施例に記載されているすべてのポリマーは、本発明の方法に特に好ましく使用される。
【0050】
さらに、本発明に使用できる好ましいポリイミドは、ブロック-コポリイミド、すなわち、次式(3)に従うブロック(A)および次式(4)に従うブロック(B):
【0051】
【化6】
【0052】
を含む、好ましくはこれらからなるコポリマーである。
【0053】
ブロックAおよびBは、異なる組成を有し、すなわち、一方でRとRとの対、および他方でRとRとの対は各々、一度に同時に同一にはなりえない。
【0054】
ブロックコポリイミドは、ブロックAの連続相を含む。官能基Rは、その中に以下の官能基:
【0055】
【化7】
【0056】
のうちのいずれかまたは両方を含む。
【0057】
は、以下の官能基
【0058】
【化8】
【0059】
のうちの少なくとも1つまたは2つもしくは3つを含む。
【0060】
ブロックAは、最も好ましい実施形態において以下の組成を有する:
AF1:100mol%のRb、ならびに64mol%のRa、16mol%のRbおよび20mol%のRc。
AF2:40mol%のRa、60mol%のRbおよび80mol%のRa、20mol%のRb。
【0061】
言及されるモルパーセンテージは、官能基RおよびRに関し、種々のユニットの量が、これらの基の各々について合計が100mol%であるように各々選択される。
【0062】
ブロックBのRは、以下の官能基:
【0063】
【化9】
【0064】
のうちの少なくとも1つまたは複数を含む。
【0065】
R4は、以下の官能基
【0066】
【化10】
【0067】
(式中、Y、Y、YおよびYは、H、またはCH、または2~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルのいずれかであり、Z=-CH-、-(CHC-、SO、-(CF)C-、-CO-、-COO-、-CONH-、-O-であり、ただし、ラジカルY~Yのうちの少なくとも1つ、好ましくは、ラジカルY~Yのうちの少なくとも2つ、より好ましくはラジカルY~Yのうちの少なくとも3つ、最も好ましくはラジカルY~Yのすべては、CHまたはC~Cアルキルラジカルに等しいことを条件とする)
のうちの少なくとも1つまたは複数を含む。
【0068】
4cのZは、好ましくは、-CH-、-(CHC-、-(CFC-または-O-であり、より好ましくはZ=-CH-または-(CHC-である。Rcについては、以下の組成:Y、YおよびY=H、Y=CHもしくはC~Cアルキルラジカル、ならびにZ=-CH-もしくは-(CHC-、または、YおよびY=CHもしくはC~Cアルキルラジカル、YおよびY=HもしくはCH、ならびにZ=-CH-もしくは-(CHC-を有することが、非常に特に好ましい。Rcついては、以下の組成:Y、Y、YおよびY=CHまたはC~Cアルキルラジカル、ならびにZ=-CH-または-(CHC-、好ましくは-CH-を有することが、最も好ましい。上述の好ましい実施形態のラジカルY~Yは、Hでない場合、CHであることが最も好ましい。
【0069】
特定の好ましい一実施形態では、ブロック(B)は、以下の組成を有する:
AF3:40~60mol%のRa、0~10mol%のRb、60~30mol%のRcならびに90~100mol%のRa、0~10mol%のRbおよび0~10mol%のRc。
AF4:50mol%のRa、50mol%のRcおよび100mol%のRa。
【0070】
AF3およびAF4について述べられたモルパーセンテージは、全体でそれぞれ官能基RおよびRに関し、そのため、種々のユニットの量は、これらの基の各々について合計で100mol%となるように各々選択される。
【0071】
上述のAF1および/またはAF2とAF3および/またはAF4との組合せが非常に特に好ましい。AF1またはAF2とAF4との組合せが最も好ましい。
【0072】
ブロックAおよびBのブロック長nおよびmは、好ましくは、1~1000の範囲、より好ましくは1~500の範囲、より一層好ましくは1~200の範囲、さら一層好ましくは5~150の範囲、さらに一層好ましくは10~100の範囲、さらに一層好ましくは10~50の範囲、最も好ましくは10~40の範囲である。
【0073】
ブロックAおよびBのブロック長は、同じであっても異なっていてもよい。ブロック-コポリイミドは、さらに、ブロックAおよびBの特定のブロック長に関していくらかの分布を示しうる、つまり、すべてのブロックAまたはすべてのブロックBが同じ長さを有する必要はない。したがって、ブロックAおよびB間の比は、幅広い範囲にわたって変動しうる。本発明のこの第2の好ましい実施形態のブロックコポリイミ中での割合は、ブロックBについて5~90%、およびブロックAについて10~95%でありうる。A:B=80:20、または70:30、または60:40、または最も好ましくは50:50の比が特に好ましい。
【0074】
ブロック-コポリイミドの生成に関する詳細は、WO2015/091122から抽出でき、その全内容は、参照により本発明の記載に明示的に組み込まれる。WO2015/091122の実施例に記載されるすべてのポリマーは、本発明の方法においてポリマーとして特に好ましく使用される。
【0075】
本発明に使用できるさらに好ましいポリイミドは、
- 式5に従うMatrimid 5128(CAS番号104983-64-4、BTDA DAPI[ジアミノフェニルインダン]をベースとする)
【0076】
【化11】
【0077】
またはBr-Matrimidのようなその誘導体、
- 例えば、Handbook of Specialty Fluorinated Polymers、2015に開示されるポリイミドをベースとする6-FDA
のうちの1つ
からなる群から選択される。
【0078】
本発明の溶媒混合物b)は、主成分a.として、溶媒混合物b)の総重量の55~90重量%、好ましくは55~85重量%、より好ましくは60~80重量%の量のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む。DMSOの含有量が低すぎる場合、溶媒混合物は、ポリイミドの不十分な溶解度を有することが見出された。溶媒混合物に依存して、ポリイミドの部分的な溶解のみまたは膨張のみが見出された。含有量が高すぎる場合、溶解度は、非常に良好でありうるが、得られるポリイミド溶液は、不十分な適用特性、特に高い溶解温度を示し、その結果、輸送中に溶液が凍結する可能性を示した。
【0079】
成分b.として、溶媒混合物b)は、3~15個、好ましくは4~10個、より好ましくは4~9個の炭素原子を有する1種もしくは複数種の第1級もしくは第2級および/もしくは第3級アルカノールアミン、またはこれらの混合物を含む。
【0080】
本発明者らは、成分b.が溶媒混合物に含まれないと、不十分な溶解度、または良好な溶解度が達成できない場合には空気中で1時間以内の急速な皮膜形成のいずれかが観察されることを見出した。成分a.およびb.からなる溶媒混合物b)であって、a.およびb.が下記に特定される量で含まれる溶媒混合物を提供することが可能であるが、好ましくはない。しかしながら、本発明者らは、皮膜形成および融点の点で、溶媒混合物b)が、共溶媒として、成分c.~e.のうちの少なくとも1種、好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも3種を含むことが好ましいことを見出した。この場合、成分b.は、少量で使用することもできる。溶媒混合物b)中の成分b.の含有量が高すぎる場合、溶媒混合物の溶解度は低下する。したがって、成分b.は、合計で、溶媒混合物b)の総重量の0.1~20重量%、好ましくは0.5~19重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは2~13重量%の量で溶媒混合物b)に含まれることが好ましい。
【0081】
溶解度、適用特性および毒性分類の点で最も好ましいアルカノールアミンは、トリエタノールアミンおよび2-(ジメチルアミノ)エタノール、ならびにこれらの混合物からなる群から選択され、
- トリエタノールアミンは、好ましくは、溶媒混合物b)の総重量に対して、0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは1~14重量%、より一層好ましくは2~13重量%、最も好ましくは3~12重量%の量で含まれ、
- 2-(ジメチルアミノ)エタノールは、好ましくは、溶媒混合物b)の総重量に対して、0~20重量%の量で含まれる。溶解度を考慮すると、0~20重量%の範囲の2-(ジメチルアミノ)エタノールの含有量が可能であり好ましいが、良好な溶解度に加えて、低毒性またはさらには非毒性として分類される混合物を提供することが望ましい場合、2-(ジメチルアミノ)エタノールの含有量は、溶媒混合物b)の総重量に対して、好ましくは0.1~8重量%、より好ましくは1~7重量%、より一層好ましくは2~6重量%、最も好ましくは3~5重量%に低減され、
トリエタノールアミンおよび2-(ジメチルアミノ)エタノールの量は、両方の成分が合計で、溶媒混合物b)の0.1~20重量%、好ましくは0.5~19重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは2~13重量%となるように、先に示される範囲から選択される。
【0082】
成分c.、すなわちベンジルアルコールを共溶媒として使用することもできる。ポリイミド溶液の溶解度および皮膜形成に関する最良の結果は、成分c.を、成分a.およびb.と組み合わせて、または成分a.、bおよびd.と組み合わせて使用する場合に見出された。成分a.、b.、c.、d.およびe.の組合せも使用できる。したがって、成分c.は、溶媒混合物b)の総重量の0~40重量%、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%の量で溶媒混合物b)に含まれる場合が好ましい。
【0083】
成分d.、すなわちシクロヘキサノンを共溶媒として使用することもできる。ポリイミド溶液の溶解度および皮膜形成に関する最良の結果は、成分d.を、成分a.およびb.と組み合わせて、もしくは成分a.、b.およびc.と組み合わせて使用する場合、または成分a.、b.、c.、d.およびe.の組合せを使用する場合に見出された。しかしながら、成分a.、b.、d.、e.およびf.を含む溶媒混合物b)を使用することも可能である。したがって、成分d.は、溶媒混合物b)の総重量の0~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%の量で溶媒混合物b)に含まれる場合が好ましい。
【0084】
成分e.、すなわちキシレンを共溶媒として使用することもできる。コーティング用途におけるポリイミド溶液の溶解度および適用特性に関する最良の結果は、成分e.を、成分a.、b.、c.およびd.と組み合わせて使用するか、または成分a.、b.、e.およびf.の組合せを使用する場合に見出された。しかしながら、成分a.、b.、d.、e.およびf.を含む溶媒混合物b)を使用することも可能である。したがって、成分e.は、溶媒混合物b)の総重量の0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%の量で溶媒混合物b)に含まれる場合が好ましい。
【0085】
成分f.、すなわちアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネートを、成分a.およびb.と一緒に共溶媒として使用でき、好ましくは、成分f.は、成分a.、b.、d.および/またはe.と組み合わせて使用されて、良好な溶解度および適用特性を有するポリイミド溶液が得られる。好ましくは、成分f.は、合計で、溶媒混合物b)の総重量の0~20重量%、より好ましくは1~15重量%、より一層好ましくは5~15重量%の量で溶媒混合物b)に含まれる。
【0086】
成分g.、すなわちプロピレングリコールに関して、この成分は、ポリイミドのための溶媒混合物の溶解度に不都合であることが見出された。したがって、成分g.は、5重量%、好ましくは0.1~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、より一層好ましくは0.001~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.5重量%の最大量で溶媒混合物b)に含まれる。最も好ましくは、プロピレングリコールは含まれない、すなわちその含有量は、溶媒混合物b)の総重量の0重量%である。
【0087】
DMF、NEP、NMPおよび/またはDMAcは、CMRおよび部分的にSVHC物質として分類されるため、批判対象となる溶媒である。これらの共溶媒は溶媒混合物に少量で含まれうるが、それらの量は最小化されることが好ましく、これらの化合物は含まれないことが最も好ましい。合計で、DMF、NEP、NMPおよび/またはDMAcは、溶媒混合物b)の総重量の0~10重量%、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0~3重量%、より一層好ましくは0~1重量%、とりわけ好ましくは0~0.1重量%、最も好ましくは0重量%の量で、成分h.として溶媒混合物b.に含まれてもよい。
【0088】
任意選択で、共溶媒i.、好ましくはグリコールエーテル、とりわけ商品名Dowanol(登録商標)で市販されているプロピレングリコールエーテル、例えば1-メトキシ-2-プロパノール(Dowanol(登録商標)PM)が、成分i.として含まれうる。好ましくは、成分i.は、特にスプレーコーティング用途のために調製された溶液に含まれる。
【0089】
溶媒混合物b)は、好ましくは、成分の以下の組合せ:
I)a.、b.およびc.
II)a.、b.およびd.
III)a.、b.、c.およびd.
IV)a.、b.、c.、d.およびe.
V)a.、b.、e.およびf.
VI)a.、b.、d.、e.およびf.
を含むかまたはそれらからなり、
成分a.およびb.の量は、先に定義される範囲から選択され、成分c.、d.、e.およびf.の量は、含まれる場合、以下の範囲
c.0.1~40重量%、好ましくは0.1~25重量%、より好ましくは1~20重量%、より一層好ましくは5~15重量%、
d.1~25重量%、好ましくは1~25重量%、より好ましくは2~20重量%、より一層好ましくは2~15重量%、
e.0.1~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%、最も好ましくは1~5重量%、
f.合計で1~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは5~15重量%のアセトフェノンおよび/またはアルキレンカーボネート、好ましくはプロピレンカーボネートもしくはエチレンカーボネート、最も好ましくはプロピレンカーボネート
から選択される。
【0090】
成分a.およびb.からなる溶媒混合物、または成分a.およびb.ならびに任意選択で成分c.~f.のうちの1種もしくは複数種を含む溶媒混合物中、好ましくは溶媒混合物I)~VI)中、各々の成分a.~f.は、上記で定義される範囲から選択される量で含まれ、各々の成分の量は、成分の量が合計で100%の溶媒混合物b)となるように選択される。
【0091】
組合せI)、III)およびIV)がより好ましく、組合せIII)およびIV)が最も好ましい。
【0092】
輸送費用を削減するため、および環境学的理由から、ポリイミド溶液中の溶媒混合物b)の量を低減することが好ましい。本発明者らは、本発明の溶媒混合物b)を用いて、良好な、すなわち低粘度ないし許容される粘度を有する高濃縮ポリイミド溶液を調製できることを見出した。好ましくは、本発明のポリイミド溶液は、合計で、ポリイミド溶液の全重量に関して5~35重量%、好ましくは10~30重量%、より好ましくは15~25重量%のポリイミドa)を含む。ポリイミド含有量が高くなるにつれて、粘度の強い増加が見られた。
【0093】
本発明の好ましいポリイミド溶液は、ポリイミド溶液の全重量の95~65重量%、好ましくは90~70重量%、より好ましくは85~75重量%の量の成分b)を含む。
【0094】
代替の実施形態では、ポリイミド溶液を使用して、無機粒子を含有する分散液が調製される。分散液は、追加の成分c)として、好ましくは、グラファイト、金属硫化物、例えば二硫化モリブデンおよび二硫化タングステン、金属酸化物、例えば酸化アルミニウム、無機窒化物、例えば窒化アルミニウム、窒化ケイ素および六方晶窒化ホウ素、シリカ、研摩粒子、例えば、立方晶窒化ホウ素、ダイアモンドからなる群から選択される1種または複数種のフィラーを含む。フィラーは、分散液の全固体成分の0~20重量%の量で含まれうる。分散液の固体とは、230℃で真空オーブン中2.5時間の全溶媒の蒸発後に得られる残留物の重量を意味する。フィラーが含まれる場合、成分a)およびb)の上記の所与の量は、それに従って適合される。
【0095】
本発明のポリイミド溶液は、
i.上記で定義される1種または複数種のポリイミドa)を用意するステップと、
ii.上記で定義される溶媒混合物b)を用意するステップと、
iii.ステップi.で用意したポリイミドを、ステップii.で用意した溶媒混合物に溶解するステップと
を含む方法によって調製できる。
【0096】
代替の実施形態では、本発明のポリイミド溶液は、
I.上記で定義される1種または複数種のポリイミドa)を用意するステップと、
II.ステップI.で用意したポリイミドを、部分的にまたは完全にDMSOに溶解するステップと、
III.溶媒混合物b)の残りの成分を、ステップII.で得られたポリイミド溶液に、先に定義される溶媒混合物b)を得る量で添加するステップと
を含む方法によって調製できる。
【0097】
フィラーを含む分散液が調製される場合、フィラーは、好ましくは、ステップiii.またはIII.の後に添加される。あるいは、フィラーは、ステップi.とii.、またはI.とII.の間に添加されてもよい。
【0098】
溶解時間を最小化し、方法効率を増加させるために、ステップiii.またはステップII.を、25~90℃、より好ましくは50~70℃の温度で実施することが好ましい。ポリイミドの溶解は、当業者に公知の技術および装置により容易に行うことができる。好ましくは、ポリイミド溶液の調製および/または保存は、不活性条件下で行われる。
【0099】
本発明のポリイミド溶液を使用して、基材、好ましくは、鋼、アルミニウム、銅およびPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)をコーティングすることができる。本発明者らは、本発明のポリイミド溶液が、スプレーコーティング、ディップコーティング、ローラーコーティングを介して、またはスキージにより塗布できることを見出した。
【実施例0100】
下記の実施例は、本発明をより詳細に例示し説明することを意図するが、特許請求の範囲をどのようにも限定すると解釈されることはない。
【0101】
ポリイミド溶液の調製
いくつかの本発明によるポリイミド溶液および比較のポリイミド溶液を調製し、試験した。ポリイミド溶液の生成のために、乾燥ポリイミド粉末を、撹拌しながら、60℃で、様々な溶媒混合物に最大25%の重量含有量で溶解する。使用した成分およびそれらの量を、表1に要約する。
【0102】
使用した化学物質:
Evonik Fibres GmbH(オーストリア)から得たP84(登録商標)タイプ70
Evonik Fibres GmbH(オーストリア)から得たP84(登録商標)HT
WO2015/091122の実施例13に従って調製したブロック-co-PI
【0103】
以下の化学物質のすべてを、研究室グレードの化学物質として使用した:
abcr GmbHから得たDMSO
Merck KGaAから得た2-(ジメチルアミノ)エタノール
Sigma-Aldrich Chemie GmbHから得たトリエタノールアミン
Merck KGaAから得たアセトフェノン
Sigma-Aldrich Chemie GmbHから得たベンジルアルコール
Sigma-Aldrich Chemie GmbHから得たシクロヘキサノン
Sigma-Aldrich Chemie GmbHから得たプロピレングリコール
Sigma-Aldrich Chemie GmbHから得たキシレン
Carl Roth GmbH + Co.KGから得たプロピレンカーボネート
【0104】
保存安定性
図1は、比較例、すなわち純粋なDMSO中のP84(登録商標)タイプ70の溶液、ならびに本発明の実施例E5およびE6の保存安定性試験を示す。比較例は、空気と接触した場合、不十分な保存安定性を示す。30分後、目に見える皮膜形成が開始した。これとは対照的に、本発明の実施例E5およびE6は、8時間後でさえ、いかなる皮膜形成も示さない。
【0105】
調製したポリイミド溶液を、コーティング溶液として以下の通りに試験した:
ポリイミド溶液を、ドクターブレードを介してまたは希釈後、スプレーコーティングプロセスを介して、コーティングとして鋼またはアルミニウム表面に塗布した。コーティングの接着を、クロスハッチ試験を介して研究した。
【0106】
乾燥後、試験した本発明のコーティングは、NMP中P84(登録商標)タイプ70溶液を使用することによって調製したコーティングに匹敵する品質を示した。様々なコーティングの評価および比較を、ISO2409に従うクロスカット試験によって実施した。
【0107】
様々な20%PI溶液についての溶解温度を、DSC測定を介して決定した。
【0108】
【表1】
【0109】
LS=低溶解性 <10重量%ポリイミド(PI)
MS=中程度溶解性 15%PI可溶
GS=良好な溶解性 20重量%PI可溶、又は≧25重量%PI可溶だが、20重量%溶液の粘度≧10Pa・s
VS=非常に良好な溶解性 ≧25重量%PI可溶、且つ20重量%溶液の粘度<10Pa・s
PS=貧溶解性
SW=ポリマーの膨張のみ
PD=部分溶解
N.D.=非検出
【0110】
【表2】
【0111】
LS=低溶解性 <10重量%ポリイミド(PI)
MS=中程度溶解性 15%PI可溶
GS=良好な溶解性 20重量%PI可溶、又は≧25重量%PI可溶だが、20重量%溶液の粘度≧10Pa・s
VS=非常に良好な溶解性 ≧25重量%PI可溶、且つ20重量%溶液の粘度<10Pa・s
PS=貧溶解性
SW=ポリマーの膨張のみ
PD=部分溶解
【0112】
表1は、比較例のいずれのポリイミド溶液も、本発明の問題のすべては解決しないことを示している。最も匹敵する溶媒混合物は、未溶解ポリイミドおよび/または膨張を伴う不十分な溶解度を有した。本発明の実施例E15は、本発明による量でDMSOおよび第3級アルカノールアミンからなる二元溶媒混合物を含む本発明の溶液が、比較例CE5と比較して、優れた保存安定性、優れた溶解度および大幅に改善された融点を示すことを示す。CE5は、E15との直接比較であり、すなわち、DMSOおよび2-(ジメチルアミノ)エタノールからなるが、両方の溶媒の本発明によらない含有量を有する二元溶媒混合物との直接比較でもある。E15およびCE5の両方は、良好な溶解度を示す一方、CE15は、4時間後に皮膜形成を示し、DMSOおよび第3級アルカノールアミンからなる二元溶媒混合物が使用される場合、ならびに溶媒混合物中のアミンの含有量が低すぎる場合、保存安定性が悪化することを示している。CE9は、非常に良好な溶解度および低融点を示すが、1時間後には既に皮膜形成が開始した。それとは対照的に、すべての本発明の実施例は、少なくとも中程度であるが、大部分は良好または非常に良好な溶解度を有する。良好および非常に良好な溶解度を有する本発明の実施例を、それらの粘度、皮膜形成時間、融点について、および基材のコーティング後のクロスカット試験においてさらに試験した。すべての試験した本発明の実施例は、0℃未満の融点を有することが判明した。すべての試験した本発明の実施例は、少なくとも2時間、大部分は8時間超の皮膜形成時間を有し、これは、それらの適用に関して大きな利益である。試験した本発明の実施例の粘度は、良好またはさらに非常に良好であり、クロスカット試験におけるコーティングの品質もまた、良好または非常に良好である。実施例E1~E15は、本発明が商業用途への高い柔軟性を提示することを示している。非常に低融点であるが限られた保存安定性(4時間)を有する溶液が提供されうる一方、非常に良好な保存安定性であるが、0℃をわずかに超える融点を有する溶液を提供することも可能であり、最後に、非常に低融点および優れた保存安定性の両方を有する溶液を提供することも可能である。したがって、当業者は、商業要件に応じて適当な溶媒混合物を選択することができる。しかしながら、いずれの場合においても、本発明の溶媒は、良好またはさらに非常に良好な溶解度性能を示し、かつ非毒性として分類され、これは、DMF、DMAc、NMPおよびNEP中の市販のポリイミド溶液と比較して、大きな利益である。
【0113】
表1は、本発明の溶媒混合物が、すべての発明を解決し、先行技術の溶液および市販のポリイミド溶液および非毒性として分類されうる代替のポリイミド溶液(CE2~CE9)に優る大きな利点を提供することを確証する。
図1
【外国語明細書】