(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190682
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムおよびそれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221219BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20221219BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221219BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
G09F9/00 313
G09F9/30 308Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022092272
(22)【出願日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076548
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
【テーマコード(参考)】
4F071
4J043
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
4F071AA60X
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4J043UB012
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4J043XA16
5C094AA03
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5G435AA01
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5G435GG32
5G435GG43
5G435HH03
5G435HH05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】無色透明で、光学ムラがなく、耐熱性および機械的物性に優れたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】二無水物から誘導された構造単位として、下記構造の化合物から誘導された構造単位:
および2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物から誘導された構造単位を含み、ジアミンから誘導された構造単位として、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンから誘導された構造単位、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンから誘導された構造単位を含む、ポリイミドフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含み、
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、および下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、
前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位、および下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含むカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムであって、
前記ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmであり、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値が500nm以下であり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.5以下である、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
【請求項2】
前記ポリイミドフィルムは、
波長分散性が下記式1および式2を満たす、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
[式1]
1.06≦Rth(450nm)/Rth(550nm)≦1.10
[式2]
0.95≦Rth(650nm)/Rth(550nm)≦0.98
前記式1および式2中、
Rth(450nm)は、450nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)であり、
Rth(550nm)は、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)であり、
Rth(650nm)は、650nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)である。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムは、
ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上であり、破断伸びが15%以上である、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位は、
前記二無水物から誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含まれる、請求項1に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位は、
前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含まれる、請求項4に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記ポリイミドフィルムは、
厚さが40~80μmであり、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が50~250nmであり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が1.0~2.7であり、ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上であり、破断伸びが15%以上である、請求項5に記載のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム。
【請求項7】
基板の一面に形成された請求項1~6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムを含む積層体。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムと、
前記ポリイミドフィルム上に形成されたコーティング層と、
を含むディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項9】
前記コーティング層は、
ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせである、請求項8に記載のディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムおよびそれを含むディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドフィルム(PI)は、不溶、不融の超高耐熱性を有し、優れた耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性を有する。そこで、ポリイミドフィルムは、自動車素材、航空素材、宇宙船素材などの耐熱先端素材、および絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT-LCDの電極保護膜などの電子材料など、広範囲の技術分野で用いられており、近年、携帯用電子機器および通信機器のカバーウィンドウとして用いられる高価の強化ガラスを代替するための素材としても注目されている。
【0003】
携帯用電子機器および通信機器のカバーウィンドウは、印刷配線基板、半導体集積回路のリードフレームなどの電子部品を保護するためのものであって、一定レベル以上の絶縁性を有しなければならない。また、携帯用電子機器および通信機器が薄膜化、スリム化、およびフレキシブル化されることに伴い、高硬度、高剛性などの機械的物性とともに柔軟性が求められる。また、一般的に多様な物性を付与するために基板上にコーティング層が積層されるにつれ、カバーウィンドウに光の乱反射が誘発され、光学ムラが発生して視認性が悪化し得るため、表示品質が高く、ムラ(Mura)現象が発生しないなどの光学的物性も求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2019-0038268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、高度化されたカバーウィンドウの要求性能を満たすことができるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供する。
【0006】
詳細には、一実施形態は、可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差を有することで、広い視野角での反射防止に効果があり、ムラ現象を顕著に減少させることができるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供する。
【0007】
詳細には、一実施形態は、無色透明な光学的物性が低下せず、かつ、光学ムラがなく、視認性などに優れた光学的物性を有し、耐熱性および機械的物性に優れたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを提供する。
【0008】
他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
また他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムまたは前記カバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、および下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位、および下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含むカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムであって、厚さが30~150μmであり、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が500nm以下であり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.5以下である、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムであってもよい。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
前記ポリイミドフィルムは、波長分散性が下記式1および下記式2を満たしてもよい。
[式1]
1.06≦Rth(450nm)/Rth(550nm)≦1.10
[式2]
0.95≦Rth(650nm)/Rth(550nm)≦0.98
【0015】
[前記式1および式2中、
Rth(450nm)は、450nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)であり、
Rth(550nm)は、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)であり、
Rth(650nm)は、650nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)である。]
【0016】
前記ポリイミドフィルムは、ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上であり、破断伸びが15%以上であってもよい。
前記ポリイミドフィルムにおいて、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位は、前記二無水物から誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含まれてもよい。
【0017】
前記ポリイミドフィルムにおいて、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含まれてもよい。
【0018】
前記ポリイミドフィルムは、厚さが40~80μmであり、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が50~250nmであり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が1.0~2.7であり、ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上であり、破断伸びが15%以上であってもよい。
【0019】
また、他の実施形態に係る積層体は、基板の一面に形成された前記ポリイミドフィルムを含んでもよい。
また、また他の実施形態に係るディスプレイ装置用カバーウィンドウは、前記ポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルム上に形成されたコーティング層と、を含んでもよい。
【0020】
前記コーティング層は、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、衝撃吸収層、またはこれらの組み合わせであってもよい。
また、さらに他の実施形態に係るフレキシブルディスプレイ装置は、前記ポリイミドフィルムを含んでもよい。
【発明の効果】
【0021】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、視認性に劣化を引き起こすムラ現象、特に位相差によるレインボー現象を顕著に改善することができる。
【0022】
また、強化ガラスと類似レベルの機械的強度を有する厚さ範囲においても無色透明な光学的物性を実現することができる。さらに、広い可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差(Rth)を有することで、反射外観を画期的に改善させることができる。それとともに、前記言及した高強度特性はいうまでもなく、曲げ特性に優れるため、屈曲による割れやクラックを防止することができる。したがって、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置などの光学用途として有用に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように一実施形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、種々の他の形態で実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。また、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限しようとするものでもない。
【0024】
また、本明細書で用いられる技術用語および科学用語は、他の定義がなければ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有してもよい。
【0025】
本明細書の全般にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味し得る。
【0026】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分の「上部に」または「上に」存在するとする際、これは、他の部分の「真上に」存在する場合だけでなく、その間にまた他の部分が存在する場合も含んでもよい。
【0027】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「Aおよび/またはB」とは、AおよびBを同時に含む態様を意味してもよく、AおよびBの中から択一された態様を意味してもよい。
【0028】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「誘導された」とは、化合物の官能基のうち少なくともいずれか1つが変形されたことを意味し、具体的に、化合物の反応基および/または離脱基が反応に応じて変形または離脱した形態を含んでもよい。また、互いに異なる化合物から誘導された構造が互いに同一であれば、いずれか1つの化合物から誘導された構造は、他のいずれか1つの化合物から誘導されて同一の構造を有する場合も含んでもよい。
【0029】
本明細書において、他に定義しない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子をいい、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含んでもよい。一態様において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、分岐(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらを全て含む共重合体(例えば、1種よりも多い単量体を含む共重合体)であってもよい。他の態様において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む共重合体)であってもよい。
【0030】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ポリアミック酸」は、アミック酸(amic acid)モイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミドモイエティを有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0031】
以下、本明細書において、特に定義しない限り、「ムラ現象」は、特定の角度で引き起こされ得る光による歪み現象を全て包括する意味として解釈されてもよい。例えば、ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置において、画面が黒く見えるブラックアウト現象、ホットスポット現象、または虹色のムラを有するレインボー現象などの光による歪みが挙げられる。
【0032】
以下、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを説明する。
従来のカバーウィンドウとして用いられていた高価の強化ガラスを代替するための素材としてポリイミドフィルムが注目されているが、ポリイミドフィルムは、光による歪みが発生する。しかし、ディスプレイ装置の最外側に形成されるカバーウィンドウは、光により発生する現象が直接的に目に見えるため、光により歪みが発生しないことが非常に重要である。そこで、光の歪みによる問題を根本的に解決できるポリイミドフィルムが必要である。
【0033】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含み、具体的に、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、および下記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位、および下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含んでもよい。ここで、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmであり、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が500nm以下であり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.5以下であってもよい。これにより、30μm以上の厚さにおいても、優れた透明性を有し、光の歪みを低下させることで、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むカバーウィンドウの光の歪みを低下させることができる。また、強化ガラスを代替可能でありがらも、多様な角度から見た際に、虹色のムラが形成される虹ムラを顕著に改善することで、従来のポリイミドフィルムに比べて優れた光学的物性を付与することができる。
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
前記厚さ方向位相差値は、フィルムを加熱する前の常温(normal temperature)で測定してもよく、前記常温は、人為的に温度調節をしていない状態の温度であってもよい。例えば、前記常温は、20℃~40℃、または20℃~30℃、または23℃~26℃であってもよい。
【0039】
前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムが上述したように前記化学式1~化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含むことで、リジッドな構造からなるポリイミド重合体を含むポリイミドフィルムに比べて、光の歪み現象がさらに改善されることができる。例えば、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムにおいて、前記二無水物から誘導された構造単位は、リジッドな構造単位を含まなくてもよく、例えば、2つの無水物基が1つの環に縮合した二無水物に由来した構造単位を含まなくてもよい。前記環は、単環または縮合環であってもよく、芳香族環、脂肪族環、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的に、前記二無水物から誘導された構造単位は、ピロメリット酸二無水物(PMDA)から誘導された構造単位、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせを含まなくてもよい。
【0040】
これにより、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、30μm以上の厚さにおいても、透明でありながらも、低い厚さ方向位相差を実現することができ、視認性をさらに向上させることができるため、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むカバーウィンドウを用いる場合に目の疲労をさらに減らすことができる。また、30μm以上の厚さを有しても上述したように優れた光学的特性を有することができるため、モジュラスなどの機械的強度をさらに向上させることができ、動的曲げ(dynamic bending)特性がさらに向上し、繰り返し折り畳んで広げる動作を繰り返すフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウに適用するのにさらに好適である。
【0041】
一例として、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、下記式1を満たしてもよい。前記式1を満たすことで、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、正波長分散(positive dispersion)特性を有することができ、長波長領域に移動時にもほぼ一定の厚さ方向位相差値を有することができる。これにより、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、さらに優れた視野角および視認性を付与することができ、波長分散性を最小化させることで、反射外観をさらに改善することができる。
【0042】
[式1]
1.06≦Rth(450nm)/Rth(550nm)≦1.10
[前記式1中、
Rth(450nm)は、450nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)であり、
Rth(550nm)は、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)である。]
例えば、前記式1中、Rth(450nm)/Rth(550nm)は、1.095以下であってもよく、例えば、1.09以下であってもよい。
【0043】
一例として、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、下記式2を満たしてもよい。前記式2を満たすことで、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、長波長領域に移動時にもさらに安定した正波長分散性を示すことができる。これにより、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムが前記式2を満たすことで、視認性がさらに向上することができる。
【0044】
[式2]
0.95≦Rth(650nm)/Rth(550nm)≦0.98
[前記式2中、
Rth(550nm)は、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)であり、
Rth(650nm)は、650nm波長での厚さ方向位相差の絶対値(単位、nm)である。]
例えば、前記式2中、Rth(650nm)/Rth(550nm)は、0.955以上であってもよく、例えば、0.96以上であってもよい。
【0045】
より具体的に、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、前記式1および式2を同時に満たしてもよく、これにより、正波長分散性がさらに向上することができる。
【0046】
一例として、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位は、前記二無水物から誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含まれてもよい。ここで、前記二無水物から誘導された構造単位は、具体的に、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、および化学式2で表される化合物から誘導された構造単位であってもよく、その総モルを100モル%と定義してもよい。上述したように二無水物から誘導された構造単位を含むことで、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの厚さが30μm以上である場合にも、さらに透明でありながらも、低い厚さ方向位相差を付与できるだけでなく、さらに優れたモジュラス、破断伸びなどの機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0047】
具体的に、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位は、前記二無水物から誘導された構造単位100モル%を基準として70~90モル%、より具体的には70~85モル%で含まれてもよい。前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位が上述した範囲で含まれることで、機械的物性および光学的物性に同時にさらに優れることができる。
【0048】
一例として、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含まれてもよい。ここで、前記ジアミンから誘導された構造単位は、具体的に、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位、および前記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位であってもよく、その総モルを100モル%と定義してもよい。上述したようにジアミンから誘導された構造単位を含むことで、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの厚さが30μm以上である場合にも、さらに安定した正波長分散性により視認性がさらに向上することができ、さらに優れたモジュラス、破断伸びなどの機械的物性を有することができる。これにより、強化ガラスと同等または優れた光学的物性および機械的物性の実現が可能である。
【0049】
具体的に、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位は、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として70~90モル%、より具体的には75~90モル%で含まれてもよい。前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位が上述した範囲で含まれることで、光学的物性にさらに優れることができる。
【0050】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際に、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が400nm以下、または350nm以下、または50~300nmであってもよい。
【0051】
また、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが40~80μmである際に、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が50~250nm、または80~240nm、または90~240nm、または90~220nmであってもよい。
【0052】
また、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際に、黄色度が3.0以下、または2.7以下、または1~2.7であってもよい。
【0053】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが40~80μmである際に、前記黄色度が1.0~2.7、または1.5~2.5であってもよい。
【0054】
具体的に、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際の550nm波長での前記厚さ方向位相差(Rth)および黄色度を同時に満たしてもよい。さらに、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが40~80μmである際の550nm波長での前記厚さ方向位相差(Rth)および黄色度を同時に満たしてもよい。
【0055】
また、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際に、(a)ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上であり、(b)破断伸びが15%以上を満たしてもよく、より具体的には、上述した550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)および黄色度とともに、このような機械的特性を満たしてもよい。
【0056】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、具体的に、ASTM E111に準じたモジュラスが4.1GPa以上、または4.1~6GPaであってもよい。また、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、破断伸びが15%以上、または16%以上、または18%以上、または20%以上、または25~40%であってもよく、具体的には、上述したモジュラスおよび破断伸びを同時に満たしてもよい。これにより、カバーウィンドウに適用するのに十分な機械的物性および耐久性を提供することができる。
【0057】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、上述した範囲の厚さ方向位相差、黄色度、モジュラス、および破断伸びを全て満たすことにより、光によるイメージ歪みを防止し、さらに向上した視認性を付与することができる。また、フィルムの中央部および辺部に全体的にさらに均一な機械的物性(モジュラスなど)および光学的物性(厚さ方向位相差など)を示すことができ、フィルムのロス(loss)をさらに減少させることができる。また、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、柔軟で、曲げ(bending)特性に優れるため、所定の変形が繰り返し起こっても、フィルムの変形および/または損傷が発生せず、本来の形態にさらに容易に戻ることができる。
【0058】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むカバーウィンドウは、さらに優れた視認性を有することができ、折り畳み跡および微細クラックの発生を防止し、フレキシブルディスプレイ装置のさらに優れた耐久性および長期寿命性を付与することができる。
【0059】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、上記で例示されたジアミンおよび二無水物から誘導された構造単位を含むポリイミド樹脂から製造されてもよく、具体的に、前記ポリイミド樹脂は、10,000~80,000g/mol、または10,000~70,000g/mol、または10,000~60,000g/molの重量平均分子量(Mw)を有してもよいが、これに限定されない。
【0060】
以下、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法を説明する。
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、i)有機溶媒下で、前記化学式1および化学式2で表される化合物と前記化学式3および化学式4で表される化合物を反応させてポリアミック酸および/またはポリイミド溶液を製造するステップと、ii)前記ステップで得られたポリアミック酸および/またはポリイミド溶液を基板上に塗布し加熱して硬化させるステップと、を含む方法により製造されてもよい。ここで、前記化学式1および化学式2で表される化合物は、二無水物であってもよく、前記化学式3および化学式4で表される化合物は、ジアミンであってもよい。
【0061】
具体的に、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液は、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位を、前記二無水物から誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含んでもよい。この際、残りのモル%である5~30モル%は、前記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位であってもよい。
【0062】
具体的に、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液は、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位を、前記ジアミンから誘導された構造単位100モル%を基準として70~95モル%で含んでもよい。この際、残りのモル%である5~30モル%は、前記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位であってもよい。
【0063】
また、このようなモル%を満たす前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液は、総重量を基準として10~40重量%の固形分含量を有してもよい。ここで、固形分は、前記ポリアミック酸および/またはポリイミドであってもよく、残量は、有機溶媒であってもよい。
【0064】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液の固形分含量は、10~30重量%、または10~20重量%であってもよい。より具体的に、一実施形態によると、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液の固形分含量が10~15重量%である場合においても、低い粘度を有するため、工程上の利点を提供することができる。一般的に、厚さ方向位相差(Rth)の絶対値とモジュラスのような機械的物性は互いにトレードオフ(trade-off)関係にあるため、これらの物性を同時に改善させることは難しかった。しかし、一実施形態によると、30μm以上の厚さにおいても、これらの物性を同時に改善できるという面で意味を有することができる。
【0065】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記i)ステップは、極性溶媒、具体的にはアミド系溶媒下で行われてもよい。
【0066】
前記アミド系溶媒は、アミドモイエティを含む化合物を意味し得る。前記アミド系溶媒は、芳香族または脂肪族であってもよいが、例えば、脂肪族であってもよい。また、例えば、前記アミド系溶媒は、環式化合物または鎖式化合物であってもよく、具体的には、2~15の炭素数を有してもよく、例えば、3~10の炭素数を有してもよい。
【0067】
前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミドモイエティを含んでもよく、前記ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに縮合して環を形成するか、または前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基が分子内の他の置換基と縮合して環を形成してもよく、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも1つのアルキル基がアミドモイエティのカルボニル炭素に連結されたアルキル基と縮合して環を形成してもよい。ここで、前記環は、4~7員環であってもよく、例えば、5~7員環であってもよく、例えば、5員または6員環であってもよい。前記アルキル基は、例えば、C1~C10アルキル基、例えば、C1~C8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであってもよい。
【0068】
より具体的に、前記アミド系溶媒は、ポリアミック酸および/またはポリイミド重合に一般的に用いられるものであれば制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドン、またはこれらの組み合わせであってもよく、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含んでもよい。
【0069】
上述したように、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液は、総重量を基準として、10~40重量%の固形分含量を有してもよい。これにより、前記ポリアミック酸および/またはポリイミド溶液の結晶化度をさらに下げることができ、低い厚さ方向位相差を実現することができる。具体的に、強化ガラスの機械的物性に匹敵する機械的物性を満たすことができる厚さ30μm以上での低い厚さ方向位相差を実現することができる。
【0070】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記ii)ステップは、熱硬化により行われてもよい。ここで、前記熱硬化の他に、化学硬化法、赤外線硬化法、バッチ式硬化法、連続式硬化法などの公知の多様な方法に代替されるか、または異種の硬化方式に代替されてもよい。
【0071】
前記熱硬化は、80~300℃、または100~280℃、または150~250℃で行われてもよい。
前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、または100超過~200℃で1分~2時間、または200超過~300℃で1分~2時間行われてもよく、これらから選択される2以上の温度条件下で段階的な熱硬化が行われてもよい。また、熱硬化は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われてもよいが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0072】
また、前記熱硬化以前に、必要に応じて乾燥ステップをさらに行ってもよい。前記乾燥ステップは、30~70℃、または35~65℃、または40~55℃で行われてもよいが、これに制限されない。
【0073】
また、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリイミドフィルムを形成するための前記塗布は、当該分野で通常用いられるものであれば制限されずに用いられてもよい。その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)、およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順次適用可能であることはいうまでもない。
【0074】
前記基板は、当該分野で通常用いられるものであれば制限されずに用いられてもよく、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロハン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などを用いてもよい。
【0075】
以下、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの用途を説明する。
第1態様は、一実施形態のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含む積層体であってもよい。ここで、前記積層体は、本発明のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムと互いに異なる組成の単量体を含むポリイミドフィルムを2層以上のコーティング層として含んでもよい。
【0076】
また、第2態様は、一実施形態のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムと、前記フィルム上に形成されたコーティング層と、を含むディスプレイ装置用カバーウィンドウであってもよい。
また、第3態様は、一実施形態のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ装置であってもよい。
【0077】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmであり、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値が500nm以下であり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.0以下であってもよい。具体的に、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際に、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値は、400nm以下、または350nm以下、または50~300nmであってもよい。また、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際に、黄色度が3.0以下、または2.7以下、または1~2.7であってもよい。より具体的に、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、上述した550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)および黄色度などの光学的物性を同時に満たしてもよい。
【0078】
一例として、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの厚さが40~80μmである際に、550nm波長での厚さ方向位相差(Rth)の絶対値は、50~250nm、または80~240nm、または90~220nmであってもよい。
【0079】
一例として、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの厚さが40~80μmである際に、黄色度は、1.0~2.7、または1.5~2.5であってもよい。
【0080】
一例として、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが40~80μmである際に、上述した550nm波長での厚さ方向位相差および黄色度を同時に満たしてもよい。
【0081】
また、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが30~150μmである際に、(a)ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上であり、(b)破断伸びが15%以上を満たしてもよく、最も具体的には、上述した光学的物性とともに、これらの機械的物性を満たしてもよい。さらに、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、厚さが40~80μmである際にも、上述した機械的物性を同一に満たしてもよい。
【0082】
一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、具体的に、ASTM E111に準じたモジュラスが4GPa以上、または4.1GPa以上、または4.1~6GPaであってもよい。それとともに、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、破断伸びが15%以上、または16%以上、または18%以上、または20%以上、または25~40%であってもよい。このような物性を有することで、カバーウィンドウに適用するのにさらに適した機械的物性および耐久性を提供することができる。
【0083】
一実施形態に係る前記第1態様、第2態様、または第3態様は、広い可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差および黄色度を実現することで、光による歪み現象を顕著に低減させるとともに、モジュラス、破断伸びなどの機械的物性を満たすことができるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含んでもよい。また、必要に応じて、機能性コーティング層をさらに含んでもよい。
【0084】
前記機能性コーティング層は、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムまたは基板の少なくとも1つの他面に形成されてもよい。その非限定的な一例としては、ハードコーティング層、帯電防止層、指紋防止層、防汚層、スクラッチ防止層、低屈折層、反射防止層、および衝撃吸収層などが挙げられ、これらから選択される少なくとも1つまたは2つ以上の機能性コーティング層を含んでもよいことはいうまでもない。この際、前記機能性コーティング層の厚さは、1~500μm、または2~450μm、または2~200μmであってもよいが、これに限定されない。
【0085】
前述したように、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、優れた光学的物性および機械的物性を有することで、ディスプレイ装置のカバーウィンドウをはじめとする、多様な角度でも十分な位相差を示すことができ、これにより、広い視野角の確保が求められる多様な産業分野にその応用が可能である。
【0086】
一例として、ディスプレイ装置は、優れた光学的物性が求められる分野であれば特に制限されず、それに合うディスプレイパネルを選択して提供することができる。具体的には、前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置に適用することができる。その非限定的な一例としては、液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種画像表示装置などが挙げられるが、これに制限されない。
【0087】
また、上述した一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを含むディスプレイ装置は、表示される表示品質に優れるだけでなく、光による歪み現象が顕著に低減されることで、特に虹色のムラが発生するレインボー現象が顕著に改善され、優れた視認性によりユーザの目の疲労感を最小化させることができる。特に、ディスプレイ装置の画面サイズが大きくなることに伴い、側面から画面を見る場合が多くなるが、一実施形態に係るカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムをディスプレイ装置に適用する場合、側面から見ても視認性に優れるため、大型ディスプレイ装置に有用に適用することができる。
【0088】
以下、一実施形態の具体的な説明のために一実施例を挙げて説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
下記実験において、物性は次のように測定した。
【0089】
<位相差(Rth)>
AxoScan(OPMF、Axometrics Inc.)を用いて測定した。450nm~650nmの波長に対して厚さ方向の位相差(Rth)を測定し、450nm、550nm、および650nmの波長それぞれにおける厚さ方向位相差を絶対値で示した。単位はnmである。
【0090】
<黄色度(YI)>
ASTM E313の規格に準じて、分光光度計(Spectrophotometer)(Nippon Denshoku社、COH-5500)を用いて測定した。
【0091】
<モジュラスおよび破断伸び>
ASTM E111に準じて、厚さ50μm、長さ50mm、および幅10mmの試験片を、25℃で、50mm/minで引っ張る条件で、Instron社のUTM 3365を用いて測定した。モジュラスの単位はGpaであり、破断伸びの単位は%である。
【0092】
[実施例1]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造(TFMB(0.9)/DDS(0.1)/BPAF(0.7)/6FDA(0.3)、単位:モル比)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)406.4gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)26.9gおよび4,4’- ジアミノジフェニルスルホン (4,4’-Diaminodiphenyl Sulfone、DDS)2.32gを溶解させた。これに、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride、BPAF)30gおよび2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2’-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)12.45gを25℃で添加し、24時間撹拌させつつ溶解および反応させた。その後、固形分含量が14重量%となるようにDMPA溶媒をさらに投入し、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物1を製造した。
【0093】
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られた前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物1を#20 mayer barで塗布し、窒素気流下で、80℃で15分間、その後、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さが50μmの実施例1のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0094】
[実施例2]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造(TFMB(0.85)/DDS(0.15)/BPAF(0.7)/6FDA(0.3)、単位:モル比)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)404.5gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)25.4gおよび4,4’- ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-Diaminodiphenyl Sulfone、DDS)3.47gを溶解させた。これに、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride、BPAF)30gおよび2,2’-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(2,2’-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)12.45gを25℃で添加し、24時間撹拌させつつ溶解および反応させた。その後、固形分含量が14重量%となるようにDMPA溶媒をさらに投入し、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物2を製造した。
【0095】
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られた前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物2を#20 mayer barで塗布し、窒素気流下で、80℃で15分間、その後、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さが50μmの実施例2のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0096】
[実施例3]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、実施例1のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物1を#20 mayer barで塗布し、窒素気流下で、80℃で15分間、その後、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さが80μmの実施例3のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0097】
[実施例4~実施例9]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造
TFMB、DDS、BPAF、および6FDAのモル比を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法により、厚さが50μmの実施例4~実施例9のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0098】
[比較例1]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造(TFMB(0.99)/BPAF(1)、単位:モル比)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPA 370gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB 20.74gを溶解させた。これに、BPAF 30gを25℃で添加し、24時間撹拌させつつ溶解および反応させた。その後、固形分含量が12重量%となるようにDMPA溶媒を添加し、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Aを製造した。
【0099】
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られた前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Aを#20 mayer barで塗布し、窒素気流下で、80℃で15分間、その後、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さが50μmの比較例1のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0100】
[比較例2]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造(TFMB(0.99)/6FDA(1)、単位:モル比)
窒素気流が流れる撹拌器内にDMPA 260gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB 21.4gを溶解させた。これに、6FDA 30gを常温で添加して一定時間溶解し、24時間撹拌させつつ溶解および反応させた。その後、固形分濃度が12重量%となるようにDMPA溶媒をさらに投入し、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Bを製造した。
【0101】
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られた前記カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Bを#20 mayer barで塗布し、窒素気流下で、80℃で15分間、その後、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さが50μmの比較例2のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0102】
[比較例3]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造((TFMB(1)/PMDA(0.3)/BPAF(0.7)、単位:モル比)
窒素気流が流れる撹拌器内にN,N-ジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)484gを充填した後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、2,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFMB)29.9gを溶解させた。これに、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(9,9-Bis(3,4-dicarboxyphenyl)fluorene Dianhydride、BPAF)30gおよびピロメリット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)6.1gを25℃で添加し、24時間撹拌させつつ溶解および反応させた。その後、固形分含量が12重量%となるようにDMPA溶媒をさらに投入し、カバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Cを製造した。
【0103】
ガラス基板(1.0T)の一面に、得られたカバーウィンドウ用ポリイミドフィルム形成組成物Cを#20 mayer barで塗布し、窒素気流下で、80℃で15分間、その後、350℃で15分間加熱して硬化し、ガラス基板から剥離し、厚さが50μmの比較例3のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0104】
[比較例4]
カバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの製造((TFMB(1)/PMDA(0.7)/BPAF(0.3)、単位:モル比)
TFMB、PMDA、およびBPAFのモル比を下記表1のように変更したことを除いては、比較例3と同様の方法により、厚さが50μmの比較例4のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムを得た。
【0105】
評価:光学的物性および機械的物性
実施例1~実施例9および比較例1~比較例4のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムの黄色度(YI)、位相差、モジュラス、および破断伸びを測定し、下記表2および表3に示した。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
前記表2および表3を参照すると、実施例1~9によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、カバーウィンドウ用として用いるのに十分な厚さである50μm以上の厚さにおいても、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値が500nm以下であり、ASTM E313に準じた黄色度(YI)が3.5以下であることを確認することができる。したがって、実施例1~9によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、広い可視光線領域帯で低い厚さ方向位相差(Rth)を有することで、反射外観を画期的に改善させながらも、高強度特性とともに高い破断伸びを有することで、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置などのカバーウィンドウに適用するのに好適である。
【0110】
これに対し、比較例1によるカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、5%以下の低い破断伸びを有するため、機械的物性が低いので、カバーウィンドウ用に適用するのに適しておらず、比較例2~4のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値が500nm以上として高いため、カバーウィンドウ用に適用するのに適していないことを確認することができる。また、比較例3および比較例4のカバーウィンドウ用ポリイミドフィルムは、550nm波長での厚さ方向位相差の絶対値が1800nm、2800nmとして非常に高いだけでなく、53、80の非常に高い黄色度を有する視認性が不良な有色フィルムであるため、カバーウィンドウ用に適用するのに適していないことを確認することができる。
【0111】
以上、限定された実施例により一実施形態を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0112】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。