IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特開2022-190690エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法
<>
  • 特開-エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法 図1
  • 特開-エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法 図2
  • 特開-エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法 図3
  • 特開-エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法 図4
  • 特開-エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190690
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】エフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/27 20100101AFI20221219BHJP
   G01C 21/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01S19/27
G01C21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094885
(22)【出願日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】10 2021 206 038.2
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トマシュ ビエン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュトローベル
(72)【発明者】
【氏名】マルコ リンベアガー
【テーマコード(参考)】
2F129
5J062
【Fターム(参考)】
2F129AA01
2F129BB02
5J062AA09
5J062BB01
5J062CC07
5J062EE00
5J062FF01
5J062FF04
5J062HH05
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両(1)のGNSSに基づく位置特定方法に関する。
【解決手段】この方法は、少なくとも、a)衛星軌道データの第1のセットを受信するステップと、b)第1の位置特定結果を決定する際に衛星軌道データの第1のセットを使用するステップと、c)衛星軌道データの第2のセットを受信するステップと、d)衛星軌道データの第2のセットを用いて衛星軌道データの第1のセットを妥当性検査するステップと、e)妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの第1のセット及び/又は第1の位置特定結果及び/又は位置特定フィルタに影響を与えるステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のGNSSに基づく位置特定方法であって、
少なくとも、
a)衛星軌道データの第1のセットを受信するステップと、
b)第1の位置特定結果を決定する際に衛星軌道データの前記第1のセットを使用するステップと、
c)衛星軌道データの第2のセットを受信するステップと、
d)衛星軌道データの前記第2のセットを用いて衛星軌道データの前記第1のセットを妥当性検査するステップと、
e)前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの前記第1のセット及び/又は前記第1の位置特定結果及び/又は位置特定フィルタに影響を与えるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記位置特定フィルタの初期化のために衛星軌道データの前記第1のセットを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の位置特定結果は、最初の車両位置を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、前記第1の位置特定結果をリセットする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの前記第1のセットをリセットする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、前記位置特定フィルタをリセットする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップa)乃至e)を、事前規定可能な時間間隔の後に繰り返す、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムが格納されている機械可読記憶媒体。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている、車両(1)用の位置特定装置(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にエフェメリスデータの妥当性検査を伴う、車両のGNSSに基づく位置特定方法に関する。さらに、この方法を実施するためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムが格納されている機械可読記憶媒体及びこの方法を実施するように構成されている、車両用の位置特定装置が提示される。本発明は、特に、自律運転又は半自律運転のためのGNSSに基づく位置特定システムにおいて使用可能である。
【背景技術】
【0002】
先行技術
グローバルナビゲーション衛星システム(GNSS)は、位置データと時間データとをGNSS受信機に伝達する、宇宙空間からの信号を供給する衛星コンステレーションを指す。そして、受信機は、これらのデータを使用して現在地を特定する。GNSSシステムは、多くの適用領域、例えば、自動車工業、測量、航空電子工学又は農業において広く使用されており、低コストで継続的かつグローバルな測位ソリューションを提供する。自動化され、支援されている運転用途における精度、可用性及び完全性に対する高い要件を満たすために、多くの場合、マルチGNSS(例えば、GPS、Galileo、GLONASS及び/又はBeiDou)及び/又はマルチ周波数信号が処理され、GNSS補正サービスが、信号ランタイムエラー(信号インスペースエラー)の修正のために考慮され、これによって、可能な限り正確かつ確実な測位ソリューションが計算される。
【0003】
各GNSS衛星は、いわゆるナビゲーションメッセージの一部として、現在の時刻と自身の位置に関するデータとを含む無線信号を継続的に送信する。電波の速度は、一定であり、衛星の速度に関連しないため、衛星が信号を送信する時点と、受信機がこの信号を受信する時点との間の時間遅延は、受信機に対する衛星の距離に比例する。GNSS受信機は、複数の衛星を監視し、方程式を解いて、受信機の正確な位置と実際の時刻からの偏差とを特定する。4つの未知の量(3つの位置座標及び受信機のクロックエラー)を計算することができるようにするために、少なくとも4つの衛星が受信機の視野内に位置しているべきである。GNSSアルマナックとエフェメリスとは、通常、各衛星によって伝送されるナビゲーションメッセージを形成し、例えば、週番号、衛星の精度及び状態、データの経過時間、衛星時計補正係数及び/又は軌道パラメータを含む。パラメータの有効期間はGNSSによって異なる。GPSの場合、パラメータは、エフェメリスの時点(TOE)の2時間前及び2時間後に有効になる。TOEは、GNSSコントロールセグメントからのデータが計算された時点と考えられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらのデータは、位置計算に特に有利であるリアルタイム衛星座標計算に使用される。従って、可能な限り確実な位置計算に対する、可能な限り信頼し得るエフェメリスの可能な限り高い可用性が特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
請求項1によれば、車両のGNSSに基づく位置特定方法がここで提案され、この方法は、少なくとも、
a)衛星軌道データの第1のセットを受信するステップと、
b)第1の位置特定結果を決定する際に衛星軌道データの第1のセットを使用するステップと、
c)衛星軌道データの第2のセットを受信するステップと、
d)衛星軌道データの第2のセットを用いて衛星軌道データの第1のセットを妥当性検査するステップと、
e)妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの第1のセット及び/又は第1の位置特定結果及び/又は位置特定フィルタに影響を与えるステップと、
を含む。
【0006】
本明細書において、衛星軌道データは、それぞれエフェメリスデータ及び/又はアルマナックデータに関連するものとしてよく、又は、エフェメリスデータ及び/又はアルマナックデータを含むものとしてよい。各衛星軌道データは、好ましくは、エフェメリスデータである。
【0007】
この方法を実施するために、ステップa)、b)、c)、d)及びe)が、例えば、記載された順序により少なくとも1回及び/又は繰り返し実行されるものとしてよい。さらに、ステップa)、b)、c)、d)及びe)、特にステップc)及びd)は、少なくとも部分的に並行して又は同時に実行されるものとしてよい。特に、ステップa)、b)、c)、d)及びe)は、車両側において、又は、車両のGNSS受信機及び/又はGNSSセンサによって、実行されるものとしてよい。この方法は、有利には、GNSSナビゲーションデータの確性検査に寄与し得る。
【0008】
車両は、例えば、好ましくは、少なくとも部分的に自動化された運転動作及び/又は自律運転動作のために構成されている自動車であるものとしてよい。GNSSに基づく位置特定とは、例えば、GNSSに基づく位置特定だけであるものとしてよく、又は、専らGNSSに基づく位置特定であるものとしてよく、又は、例えば、GNSSデータだけでなく、車両の他のセンサデータ及び/又は地図データにも基づく位置特定であるものとしてよい。センサデータは、例えば、慣性センサデータ(IMUデータ)及び/又は環境センサデータであるものとしてよい。
【0009】
ステップa)において、衛星軌道データの第1のセットが受信される。この関連において、(第1及び/又は第2の)衛星軌道データは、例えば、車両のGNSS受信機又はGNSSアンテナを介して受信され得る。GNSS受信機は、受信されたGNSS信号から衛星軌道データをデコードすることができる。対応するデコーディングプロセス内において、GNSSペイロードを、測位に引き続き使用され得る、軌道に関する情報を含むビットストリームに変換することができる。ただし、原則として、対応するデコーディングプロセスは、特にGNSS信号など、ノイズレベルに比べて信号強度が弱い信号の場合に、デコーディングエラーの影響を受け易いことがある。この方法は、対応するデコーディングエラーを識別するのに役立ち得る。
【0010】
ステップb)において、第1の位置特定結果を決定する際に衛星軌道データの第1のセットが(媒介なしに又は直接的に)使用される。これは、有利には、衛星軌道データの受信された第1のセットが第1の又は最初の位置特定(いわゆる「first fix(初回測位)」)に既に使用されることによって、特に高い可用性を可能にする。特に、衛星軌道データの第1のセットは、衛星軌道データの他のセットを用いた検査又は妥当性検査が(事前に)行われることなく使用される。例として、衛星軌道データの第1のセットは、特に、衛星軌道データの第2のセットが受信される前に(媒介なしに又は直接的に)使用され得る。
【0011】
ステップc)において、衛星軌道データの第2のセットが受信される。衛星軌道データの第2のセットは、例えば、これが、より後の時点で受信されたという点において、衛星軌道データの第1のセットとは異なり得る。原則として、衛星軌道データの第2のセットは、衛星軌道データの第1のセットと同一の衛星コンステレーションに関連するものとするとよい。
【0012】
ステップd)において、衛星軌道データの第2のセットを用いて衛星軌道データの第1のセットが妥当性検査される。妥当性検査には、例えば、衛星軌道データのこれら2つのセットの相互比較が含まれるものとしてよい。衛星軌道データの2つのセットが実質的に同等である又は一貫性を有している場合、妥当性検査は、首尾よく行われたとみなされ得る又はこれらの衛星軌道データは妥当であるとみなされ得る。衛星軌道データの2つのセットが(ビットレベルで)互いに有意差を有している又は一貫性を有していない場合、妥当性検査は首尾よく行われなかったとみなされ得る、又は、これらの衛星軌道データは妥当でないとみなされ得る。
【0013】
衛星軌道データの第2のセットを用いた衛星軌道データの第1のセットの妥当性検査は、有利には、受信した衛星軌道データの信頼性を高めるのに役立ち得る。妥当性検査は、例えば、衛星軌道監視ステップの様式で実行され得る。さらに、ステップe)では、相応の対応がユーザ側において行われ得る。例えば、衛星軌道データセット間の相互妥当性検査に基づくアプローチが、監視アプローチとして使用され得る。特に、これに関連して、エフェメリス及び/又はアルマナックデータの新たに受信された各データセットを、以前に受信されたデータセットと比較することができる。
【0014】
ステップe)において、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの第1のセット及び/又は第1の位置特定結果及び/又は位置特定フィルタに影響が与えられ、特にリセットされる。この影響には、例えば、重み付け又はリセットが含まれ得る。重み付けには、例えば、衛星の相応の重み付けが含まれ得る。リセットには、例えば、第1の位置特定結果及び/又は衛星軌道データの第1のセットの削除又は無効化が含まれ得る。従って、この方法は、有利には、多くの使用ケースにおいて可用性を損なうことなく、衛星軌道データ(衛星軌道情報)が検証されることによって、GNSS測位のための付加的な安全性のメカニズム/完全性のメカニズムを提供する。この方法の特別な利点は、特に、誤った(例えば、誤ってデコードされた)衛星軌道データが提供された場合にのみ、妥当性検査が、GNSS受信機の可用性に作用するということである。特に、上記の妥当性検査又は監視は、並行して実行され、衛星軌道データの正確さを検証するので、妥当性検査又は監視は、有利には、特に、衛星軌道データが正しい場合には、衛星軌道データの可用性に可能な限り影響を与えない。
【0015】
少なくとも、ステップd)による妥当性検査及び/又はステップe)による影響は、車両が現在位置している状況を考慮して行われ得る。従って、有利には、安全性と可用性とに対する、状況に関連した要件が考慮され得る。例えば、車両が始動状況にあるか又は運転動作状況にあるかを考慮に入れることができる。選択的又は付加的に、例えば、車両が都市又は(都市峡谷を伴う)建物密集地域などの、GNSS受信障害が予想されるエリアにあるかを考慮に入れることができる。
【0016】
有利には、提案された方法が完全性と可用性との間の可能な限り良好な妥協点を示すことを可能にするために、これが用いられるものとしてよく、例えば、始動中(エフェメリス及び/又はアルマナックデータの最初の受信)及び動作中の種々異なる反応によって行われ、ここでは、より高い安全性又は可用性が必要な場合に、特に、状況を考慮して、適当な対応に焦点が置かれる。このような柔軟性によって、ステップd)による妥当性検査の適当な調整及び/又はステップe)によるリセットが有利に可能になり、これは、例えば、衛星信号障害によって発生するナビゲーションデータのビットエラーの確率が、屋外の高速道路におけるシナリオの場合よりも格段に高い都市における使用ケースの場合である。
【0017】
有利な構成によれば、位置特定フィルタの初期化のために衛星軌道データの第1のセットが使用されることが提案される。位置特定フィルタは、例えば、カルマンフィルタ又は最小二乗フィルタであるものとしてよい。位置特定フィルタは、例えば、本明細書において説明もされる位置特定装置の一部であるものとしてよい。位置特定フィルタは、例えば、車両のさまざまなセンサからデータを受信し、特に、車両の現在の位置、速度及び/又は配向を含む位置特定結果を出力することができる。車両のセンサは、例えば、少なくとも1つのGNSSアンテナ、少なくとも1つの慣性センサ(IMU)及び/又は少なくとも1つの環境センサを含み得る。さらに、位置特定フィルタは、例えば、いわゆるMap-Matchingの方式により、デジタルマップからの地図データを考慮に入れることができる。
【0018】
さらなる有利な構成によれば、第1の位置特定結果が、最初の車両位置を含むことが提案される。最初の車両位置は、いわゆる「first fix」と記述され得る。最初の車両位置は、通常、第1の特定された車両位置又は車両の始動後に初めて特定された車両位置である。第1の位置特定結果は、例えば、ステップd)による妥当性検査の後に又はステップd)による妥当性検査によって確認することができる暫定的な最初の車両位置を表すことができる。
【0019】
さらなる有利な構成によれば、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、第1の位置特定結果がリセットされることが提案される。これには、例えば、第1の位置特定結果の削除が含まれ得る。
【0020】
さらなる有利な構成によれば、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの第1のセットがリセットされることが提案される。これには、例えば、衛星軌道データの第1のセットの削除が含まれ得る。さらに、この関連において、例えば、特に車両側の衛星軌道データベースのリセット又は削除を行うことができる。
【0021】
さらなる有利な構成によれば、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、位置特定フィルタがリセットされることが提案される。対応するリセットには、例えば、位置特定フィルタの少なくとも1つの設定パラメータの変更、特に削除が含まれ得る。
【0022】
さらなる有利な構成によれば、ステップa)乃至e)が、事前規定可能な時間間隔の後に繰り返されることが提案される。この時間間隔は、例えば、現在利用可能な又は受信されたGNSSサービスに関連して定義されるものとしてよい。GPSの場合、この時間間隔は、例えば2時間である。
【0023】
さらなる態様によれば、本明細書に提示された方法を実施するためのコンピュータプログラムが提案される。換言すれば、これは、特に、プログラムがコンピュータによって実行されるときに、コンピュータに、本明細書に記載された方法を実施させる命令を含むコンピュータプログラム(製品)に関する。
【0024】
さらなる態様によれば、機械可読記憶媒体が提案され、この機械可読記憶媒体に、本明細書において提案されたコンピュータプログラムが保存又は格納されている。機械可読記憶媒体は通常、コンピュータ可読データキャリアである。
【0025】
さらなる態様によれば、車両用の位置特定装置が提案され、この位置特定装置は、本明細書に記載された方法を実施するように構成されている。位置特定装置は、例えば、この方法を実施するために命令を実行することができるコンピュータ及び/又は制御装置(コントローラ)を含み得る。このために、コンピュータ又は制御装置は、例えば、記載されたコンピュータプログラムを実行することができる。例えば、コンピュータ又は制御装置は、コンピュータプログラムを実行することができるようにするために、記載された記憶媒体にアクセスすることができる。位置特定装置は、例えば、特に、車両内に若しくは車両に接して配置され得る若しくは配置されている運動センサ及び位置センサの構成要素であるものとしてよく、又は、情報交換のためにこのようなセンサと接続されているものとしてよい。
【0026】
方法に関連して論述される詳細、特徴及び有利な構成は、相応に、本明細書において提示されるコンピュータプログラム及び/又は記憶媒体及び/又は位置特定装置にも当てはまり、その逆も当てはまる。この点については、特徴のより詳細な特徴付けのために、その箇所の説明を全面的に参照されたい。
【0027】
本明細書において提示されるソリューション及びその技術環境については、以下において、図面を参照しながら、より詳細に説明する。本発明は、示された実施例によって限定されるべきものではないことを指摘しておく。特にそうでないことが明記されていない限り、特に、図面において説明されている事項の部分的な側面を抜き出し、それらを他の構成要素及び/又は他の図面及び/又は本明細書からの認識と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本明細書において提示される方法の例示的なフローを示す図である。
図2】方法の実施例に従って実現され得るフローチャートを示す図である。
図3】タイムラインに基づいて、方法の例示的なフローを示す図である。
図4】タイムラインに基づいて、方法のさらなる例示的なフローを示す図である。
図5】本明細書に記載される位置特定装置を備えた車両の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本明細書において提示される方法の例示的なフローを概略的に示している。この方法は、車両1のGNSSに基づく位置特定に使用される。ブロック110、120、130、140及び150によって示されるステップa)、b)、c)、d)及びe)の順序は例示的であり、この方法を実施するために、示されている順序により、例えば、少なくとも1回実行されるものとしてよい。
【0030】
ブロック110において、ステップa)では、衛星軌道データの第1のセットが受信される。ブロック120において、ステップb)では、第1の位置特定結果を決定する際に衛星軌道データの第1のセットが使用される。ブロック130において、ステップc)では、衛星軌道データの第2のセットが受信される。ブロック140において、ステップd)では、衛星軌道データの第2のセットを用いて衛星軌道データの第1のセットが妥当性検査される。ブロック150において、ステップe)では、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの第1のセット及び/又は第1の位置特定結果及び/又は位置特定フィルタに影響が与えられる。
【0031】
例えば、衛星軌道データのデコーディングの際のハードウェア側又はソフトウェア側におけるエラーによって、軌道情報が誤ったものになり、これによって、GNSS測位に、誤りを有する、偽りの距離が使用されてしまう可能性がある。その結果、これが測位において重大なエラーを引き起こす可能性があり、このようなエラーは、特に、自律運転又は自動運転などの安全性と完全性とが重要な用途において問題になり得る。他方、安全性が重要なシステムにおいては、可能な限り高い可用性が目指されており、特に、起動フェーズを不必要に延長すると、システムの受け入れが低下する場合がある。
【0032】
(衛星軌道又は軌道の)妥当性検査によって、この方法は、衛星軌道データにデコーディングエラーがない場合に、有利には、特に可用性を損なうことなく、付加的な安全マージンを可能にする。付加的な安全マージンにもかかわらず、妥当性検査の前に衛星軌道データの第1のセットを(媒介なしに)使用することにより、この方法によって、可用性を高めるための有利な貢献が成し遂げられ得る。
【0033】
例えば、位置特定フィルタの初期化のために、衛星軌道データの第1のセットが使用され得る。さらに、第1の位置特定結果には、最初の車両位置(いわゆるfirst fix)が含まれ得る。特に、この場合には、(場合によっては暫定的な)最初の車両位置が特定されるまで、衛星軌道データの第2のセットの受信が待たれることはない。
【0034】
妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、場合によっては、第1の位置特定結果がリセットされるものとしてよい。特に、衛星軌道データのこれら2つのセットが一貫性を有していない場合には、妥当性検査は、首尾よく行われなかったことになる。
【0035】
さらに、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの第1のセットがリセットされるものとしてよい。特に、衛星軌道データの2つのセットが一貫性を有していない場合、少なくとも、衛星軌道データの第1のセットを削除して、(場合によっては、衛星軌道データの第1のセットとして衛星軌道データの第2のセットが使用されて)1つ又は複数の衛星に対して、この方法が少なくとも部分的に最初から開始されるものとしてよい。
【0036】
さらに、妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、位置特定フィルタがリセットされるものとしてよい。位置特定フィルタは、例えば、カルマンフィルタであるものとしてよい。
【0037】
さらに、ステップa)乃至e)が、事前規定可能な時間間隔の後に繰り返されるものとしてよい。例として、GNSSシステムの場合には、2時間の時間間隔が設定されるものとしてよい。
【0038】
図2は、この方法の実施例が実現され得るフローチャートを概略的に示している。図2においては、この方法が、(概念的には)2つのセクション、即ち、エフェメリスデータの監視(ブロック210乃至240)とエフェメリスエラーの場合の処置(ブロック250)とに分けられるものとしてよい。
【0039】
ブロック210において、エフェメリスデータが初めて受信される。ステップa)によれば、これは、衛星軌道データの第1のセットの受信を表し得る。
【0040】
ブロック220において、エフェメリスデータの第1のセットが、GNSS位置計算(例えば、GNSSカルマンフィルタの初期化)のために既に使用されるものとしてよく、これによって、有利には、迅速な始動が可能になる。ステップb)によれば、これは、第1の位置特定結果を決定する際の衛星軌道データの第1のセットの使用を表し得る。
【0041】
ブロック230において、第1のセットと同一の、エフェメリスの発行番号(IODE)を有するエフェメリスデータの第2のセットが受信されるものとしてよい。これは、場合によってはステップc)のように、衛星軌道データの第2のセットの受信が行われ得ることの例を表している。
【0042】
ブロック240において、2つのセットのエフェメリスデータが互いに比較されるものとしてよい。これらのデータが同一でない場合、モニタはエラーを有するエフェメリスセットを検出する。これは、場合によってはステップd)のように、衛星軌道データの第2のセットを用いた衛星軌道データの第1のセットの妥当性検査が行われ得ることの例を表している。
【0043】
監視部分(ブロック210乃至240)が、誤りを有するエフェメリスデータを確認した場合、この方法は、処置部分(ブロック250)に進み得る。ブロック250において、第1の位置特定結果及び/又はエフェメリスデータの第1のセットに影響を与えるための以下の措置のうちの1つ又は複数の措置が(互いに組み合わせて又は別々に)、(ステップcに従って)実行され得る。
・誤りを有するエフェメリスを伴う、該当する衛星の(第1の)エフェメリスデータセットは、破棄されるものとしてよく、又は、GNSS位置計算のために、付加的な(低く見積もられた)重み付けパラメータと共に使用されるものとしてよい。
・誤りを有するエフェメリスを伴う、該当する衛星の(第1の)エフェメリスデータセットは、破棄されるものとしてよく、又は、(週番号若しくはうるう秒情報のデコーディングが誤っている可能性があることによる)時間測定に対する付加的な警告と共に使用されるものとしてよい。
・誤りを有するエフェメリスデータに基づいている可能性のある計算は、破棄されるものとしてよく、又は、付加的な(低く見積もられた)重み付けと共に使用されるものとしてよい。
【0044】
直前に挙げられたこれらの計算は、以下に示すもののうちの1つ又は複数に関連するものとしてよく、ただし、これらに限定されるものではない。
・GNSS位置特定及び/又は時間計算に対する初期化パラメータ(例えば、カルマンフィルタの状態など)、
・学習されたセンサオフセット(例えば、GNSS位置計算に基づいて学習されたIMUオフセットなど)、及び/又は、
・推定される衛星補正(例えば、受信機が基準局として使用されている場合)。
【0045】
図3は、タイムラインに基づいて、方法の例示的なフローを概略的に示している。
【0046】
時点t1において、車両が始動する。時点t2において、衛星トラッキング又は衛星追跡が開始される。時点t3において、衛星軌道データの第1のセットが受信される。時点t4において、第1の位置特定結果(いわゆる「first fix」)を決定するために、衛星軌道データの第1のセットが使用される。時点t5において、衛星軌道データの第2のセットが受信される。時点t6において、ここでは例示的に、妥当性検査が首尾よく行われて、通常の位置特定が続行され得る。
【0047】
図4は、タイムラインに基づいて、方法のさらなる例示的なフローを概略的に示している。図3に示されたフローとは異なり、図4においては、時点t5において、以前にt3で受信された、衛星軌道データの第1のセットに対して一貫性を有していない、衛星軌道データの第2のセットが受信され、従って、妥当性検査は首尾よく行われなかったことになる。次に、この方法は、例えば、時点t3(衛星軌道データの新しい第1のセットの受信)において再び開始されるものとしてよい。しかし、有利には、特に、時点t5において受信された衛星軌道データの(第2の)セットが衛星軌道データの新しい第1のセットとして定義される場合、この方法は、(選択的に)新しい時点t4(first fix)において継続されるものとしてもよい。
【0048】
図5は、本明細書に記載された位置特定装置2を備えた車両1の例を概略的に示している。位置特定装置2は、本明細書に記載された方法を実施するように構成されている。
【0049】
この方法は、有利には、可能な限り確実な位置計算に対する、可能な限り信頼し得るエフェメリス及び/又はアルマナックデータの可能な限り高い可用性を可能にすることに寄与する。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-08-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)のGNSSに基づく位置特定方法であって、
少なくとも、
a)衛星軌道データの第1のセットを受信するステップと、
b)第1の位置特定結果を決定する際に衛星軌道データの前記第1のセットを使用するステップと、
c)衛星軌道データの第2のセットを受信するステップと、
d)衛星軌道データの前記第2のセットを用いて衛星軌道データの前記第1のセットを妥当性検査するステップと、
e)前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの前記第1のセット及び/又は前記第1の位置特定結果及び/又は位置特定フィルタに影響を与えるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記位置特定フィルタの初期化のために衛星軌道データの前記第1のセットを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の位置特定結果は、最初の車両位置を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、前記第1の位置特定結果をリセットする、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、衛星軌道データの前記第1のセットをリセットする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記妥当性検査が首尾よく行われなかった場合、前記位置特定フィルタをリセットする、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップa)乃至e)を、事前規定可能な時間間隔の後に繰り返す、請求項に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがコンピュータ又は制御装置により実行されたときに、前記コンピュータ又は前記制御装置に請求項に記載の方法を実施させるためのコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムが格納されている機械可読記憶媒体。
【請求項10】
請求項に記載の機械可読記憶媒体備えている、車両(1)用の位置特定装置(2)。
【外国語明細書】