(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190699
(43)【公開日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法およびその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20221219BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221219BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20221219BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08G73/10
C08J5/18 CFG
B32B9/00 A
B32B27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095892
(22)【出願日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076667
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】519214271
【氏名又は名称】エスケー アイイー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK IE TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 03188 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユン チョル ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ヒェ ジン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AF34Y
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB13
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4F100JN28A
4J043PA02
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4J043UA122
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4J043ZA33
4J043ZA35
4J043ZA52
4J043ZB11
4J043ZB21
4J043ZB47
(57)【要約】
【課題】一具現例は、ポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法およびその用途に関する。
【解決手段】一具現例よると、無色透明な光学的物性が低下しないとともに、耐熱性に優れ、且つ柔軟で曲げ特性に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。また、一具現例によるポリイミドフィルムは、様々なフレキシブルディスプレイ装置に有用に活用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、
アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、
下記関係式1を満たすポリイミドフィルム形成用組成物であって、
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含む、ポリイミドフィルム形成用組成物。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[関係式1]
3,000≦V
PI≦10,000
[前記関係式1中、
V
PIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の全重量に対して、固形分含量が19重量%である時のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で、52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である。]
【請求項2】
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
[化学式3]
【化5】
[化学式4]
【化6】
【請求項3】
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、化学式2で表される化合物から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項2に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
[化学式1]
【化7】
[化学式2]
【化8】
【請求項4】
前記アミド系溶媒は、ジメチルプロピオンアミドを含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項5】
前記炭化水素系溶媒は、環状炭化水素系溶媒である、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項6】
前記環状炭化水素系溶媒は、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサンまたはこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項7】
前記ポリイミドフィルム形成用組成物の固形分は、
前記ポリイミドフィルム形成用組成物の全重量に対して、10~40重量%含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項8】
前記ポリイミドフィルム形成用組成物は、
前記アミド系溶媒および前記炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含む、請求項1に記載のポリイミドフィルム形成用組成物。
【請求項9】
i)アミド系溶媒下で、下記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の二無水物および前記化学式4で表されるジアミンを反応させてポリアミン酸溶液を製造するステップと、
ii)下記関係式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して粘度を調節するステップとを含む、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
[化学式1]
【化9】
[化学式2]
【化10】
[化学式3]
【化11】
[化学式4]
【化12】
[関係式1]
3,000≦V
PI≦10,000
前記関係式1中、V
PIは、請求項1における関係式1での定義と同様である。
【請求項10】
前記ステップii)は、
前記ステップi)のアミド系溶媒100重量部に対して5~50重量部の炭化水素系溶媒を追加投入して撹拌させるステップと、
前記関係式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を追加投入するステップとを含む、請求項9に記載のポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物を硬化して取得する、ポリイミドフィルム。
【請求項12】
熱変形解析法(TMAMethod)により100~450℃の温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)が15ppm/℃以下である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項13】
厚さが4~12μmであり、ASTM E313による黄色度(YI)が15以下である、請求項11に記載のポリイミドフィルム。
【請求項14】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、
前記ポリイミドフィルム形成用組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項15】
前記硬化ステップは、30℃~80℃で乾燥した後、100℃~450℃で加熱して行われる、請求項14に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項16】
前記塗布ステップの後、常温で放置するステップをさらに含む、請求項14に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項17】
基板の一面に、請求項11に記載のポリイミドフィルムおよび半導体層を含む、多層構造体。
【請求項18】
前記半導体層は、低温ポリシリコン(LTPS)、低温ポリオキシド(LTPO)、インジウムスズ酸化物(ITO)およびインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)からなる群から選択される一つまたは二つ以上を含む、請求項17に記載の多層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリイミドフィルム形成用組成物、その製造方法およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレイ装置の軽量化、スリム化およびフレキシブル化が重要視されている。既存のディスプレイに広く使用されてきたガラス基板は、重く割れやすく、柔軟でなく連続工程が難しいという欠点を有していることから、ガラス基板の代わりに、軽く柔軟で連続工程が可能な利点を有する高分子基板をフレキシブルディスプレイに適用するための研究が活発になされている。中でも、合成が容易であり、耐熱性および耐薬品性などに優れた高分子であるポリイミド(PI)が主に使用されている。
【0003】
次世代ディスプレイ装置の基板素材は、優れた光学的物性だけでなく、フォールダブルまたはフレキシブルディスプレイ装置への適用を可能にするための柔軟性および機械的な物性の向上が伴われなければならない。さらに、フレキシブルデバイスは、高温工程を伴うが、特に、LTPS(low temperature polysilicon)工程を使用するOLED(organic light emitting diode)デバイスの場合、工程温度が350℃以上500℃に近いことから、優れた耐熱性を要する。
【0004】
一方、通常のポリイミドの色は、褐色または黄色を帯びるが、これは、ポリイミドの分子内(intra molecular)および分子間(inter molecular)の相互作用による電子移動複合体(Chrage Trensfer Complex、CTC)が主な原因である。これは、ポリイミドフィルムの光透過度を低下させ、複屈折を高めてディスプレイ装置の視感性に影響を及ぼす。
【0005】
これを解決するために、様々な構造の単量体を組み合わせるか変更してCTC効果を減少させ、無色透明なポリイミドを製造することができる。しかし、光学的な物性と耐熱性は、互いにトレードオフ(trade-off)関係にあり、このような試みは、ポリイミドの光学的物性が良好になっても、機能性が低下するか耐熱性が劣化するという極めて一般的な結果を得るしかなかった。そのため、ポリイミドの耐熱性および機械的物性が大きく低下しない範囲で色の透明度および光学的特性を向上させる研究が行われ続けているが、これらのすべてを満たすには限界がある状況である。
【0006】
したがって、無色透明な性能が低下しないとともに向上した光学的物性の実現と同時に優れた耐熱性をすべて満たし、強化ガラスの代わりに使用可能なフレキシブルディスプレイ基板素材の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2020-0096070号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一具現例は、高度化したディスプレイ基板素材の要求性能を満たすことができる、ポリイミドフィルム形成用組成物およびこれより製造されたポリイミドフィルムを提供する。
【0009】
具体的には、一具現例は、優れた光学的特性および優れた耐熱性を同時に実現することができるポリイミドフィルムおよびこれを含む多層構造体を提供する。
【0010】
また、一具現例は、上述の物性の実現のためのポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法およびポリイミドフィルムの製造方法を提供する。
【0011】
また、一具現例は、強化ガラスなどの代わりに使用可能なポリイミドフィルムおよびこれを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供するものであり、優れた光学的物性および耐熱性を同時に満たすことができる新たなディスプレイ基板素材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、下記関係式1を満たすものであり、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含む、ポリイミドフィルム形成用組成物であることができる。
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[関係式1]
3,000≦V
PI≦10,000
[前記関係式1中、
V
PIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の全重量に対して、固形分含量が19重量%である時のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で、52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である。]
【0013】
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含むものであることができる。
[化学式3]
【化5】
[化学式4]
【化6】
【0014】
前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、化学式2で表される化合物から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせをさらに含むものであることができる。
[化学式1]
【化7】
[化学式2]
【化8】
【0015】
前記アミド系溶媒は、ジメチルプロピオンアミドを含むものであることができる。
【0016】
前記炭化水素系溶媒は、環状炭化水素系溶媒であることができる。
【0017】
前記環状炭化水素系溶媒は、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサンまたはこれらの組み合わせであることができる。
【0018】
前記ポリイミドフィルム形成用組成物は、固形分を前記ポリイミドフィルム形成用組成物の全重量に対して、10~40重量%含むものであることができる。
【0019】
前記ポリイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含むものであることができる。
【0020】
また、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、i)アミド系溶媒下で、下記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の二無水物および前記化学式4で表されるジアミンを反応させてポリアミン酸溶液を製造するステップと、ii)下記関係式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して粘度を調節するステップとを含むことができる。
[化学式1]
【化9】
[化学式2]
【化10】
[化学式3]
【化11】
[化学式4]
【化12】
[関係式1]
3,000≦V
PI≦10,000
前記関係式1中、V
PIは、前記関係式1での定義と同様である。
前記ステップii)は、前記ステップi)のアミド系溶媒100重量部に対して5~50重量部の炭化水素系溶媒を追加投入して撹拌させるステップと、前記関係式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を追加投入するステップとを含むものであることができる。
【0021】
また、一具現例によるポリイミドフィルムは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物から製造されることができる。
【0022】
前記ポリイミドフィルムは、熱変形解析法(TMAMethod)により100~450℃の温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)が15ppm/℃以下であることができる。
【0023】
前記ポリイミドフィルムは、厚さが4~12μmであり、ASTM E313による黄色度(YI)が15以下であることができる。
【0024】
また、さらに他の具現例による前記ポリイミドフィルムの製造方法は、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含むものであることができる。
【0025】
前記硬化ステップは、30℃~80℃で乾燥した後、100℃~450℃で加熱して行われるものであることができ、前記塗布ステップの後、常温で放置するステップをさらに含むものであることができる。
【0026】
また、さらに他の具現例による多層構造体は、基板の一面に前記ポリイミドフィルムおよび半導体層を含むものであることができる。
【0027】
前記半導体層は、低温ポリシリコン(LTPS)、低温ポリオキシド(LTPO)、インジウムスズ酸化物(ITO)およびインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)からなる群から選択される一つまたは二つ以上を含むものであることができる。
【発明の効果】
【0028】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、ポリアミン酸と混合溶媒の相互作用(interaction)を阻害させて、硬化時に分子間の充填密度を著しく減少させることができる。これにより、無色透明な性能が低下しないとともに、優れた光学的物性および優れた耐熱性を同時に実現することができるポリイミドフィルムを提供することができる。
【0029】
また、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒を使用することで、高含量の固形分を含んでも組成物の粘度を著しく下げることができる。これにより、高固形分・底粘度で薄膜コーティング工程への適用が可能であり、目的とする物性を効果的に実現することができる。
【0030】
具体的には、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、著しく改善した黄色度を実現するとともに低い熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを提供することができる。これにより、高温工程に求められるLTPSおよび/またはLTPO用ディスプレイ装置の基板素材に適用することができる。
【0031】
また、一具現例によるポリイミドフィルムは、柔軟性にも優れ、フレキシブルディスプレイの基板素材などに有用に活用することができる。一具現例によるポリイミドフィルムをフレキシブルディスプレイの基板素材として採用することにより、ディスプレイ装置の視感性を向上させるだけでなく、ディスプレイ装置の信頼度および熱安定性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、一具現例について、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。ただし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する具現例に限定されない。また、特許請求の範囲により限定される保護範囲を制限するものでもない。
【0033】
また、本明細書で使用される技術用語および科学用語において他の定義がなければ、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明で本発明の要旨を不明瞭にし得る公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0034】
本明細書の全般にわたり、ある部分がある構成要素を「含む」ということは、特別に逆の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味し得る。
【0035】
以下、本明細書において特別な定義がない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」または「上に」あるとした時に、これは、他の部分の「真上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部分がある場合も含むことができる。
【0036】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「これらの組み合わせ」とは、構成物の混合または共重合を意味し得る。
【0037】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「Aおよび/またはB」とは、AとBを同時に含む様態を意味し得、AとBから選択された様態を意味し得る。
【0038】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「重合体」は、相対的に高分子量の分子を意味し、その構造は、低分子量の分子から誘導された単位の多重繰り返しを含むことができる。一様態において、重合体は、交互(alternating)共重合体、ブロック(block)共重合体、ランダム(random)共重合体、枝分かれ(branched)共重合体、架橋(crosslinked)共重合体、またはこれらをすべて含む共重合体(例えば、1種より多い単量体を含む共重合体)であり得る。他の様態において、重合体は、単独重合体(homopolymer)(例えば、1種の単量体を含む共重合体)であることができる。
【0039】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、「ポリアミン酸」は、アミン酸(amic acid)部分(moiety)を有する構造単位を含む重合体を意味し、「ポリイミド」は、イミド部分を有する構造単位を含む重合体を意味し得る。
【0040】
以下、本明細書で特別な定義がない限り、ポリイミドフィルムは、ポリイミドを含むフィルムであることができ、具体的には、二無水物化合物とジアミン化合物またはジイソシアネート化合物を溶液重合してポリアミン酸を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化して製造される高耐熱性フィルムであることができる。
【0041】
以下、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物について説明する。
【0042】
一具現例によるポリイミドフィルム形成のための組成物(以下、ポリイミドフィルム形成用組成物ともいう)は、溶媒条件を変更することで、具体的には、ポリアミン酸(以下、ポリイミド前駆体ともいう)および/またはポリイミドの重合溶媒として使用することができず、ポリイミドと親和性がない無極性溶媒を適用することで、光学的物性および耐熱性を同時に改善することができる。
【0043】
具体的には、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、ポリアミン酸および/またはポリイミドと、極性溶媒と、無極性溶媒とを含むことができる。前記極性溶媒は、親水性溶媒であることができ、例えば、ポリアミン酸および/またはポリイミドと親和性を有することができ、例えば、アミド系溶媒であることができる。また、前記無極性溶媒は、ポリアミン酸および/またはポリイミドと親和性がほとんどないことができ、例えば、炭化水素系溶媒であることができる。
【0044】
特定の理論に拘束されるものではないが、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を使用することで、重合体と重合体との分子間相互作用(intermolecular interaction)および/または重合体と溶媒との相互作用を効果的に阻害させることができ、硬化時に分子間の充填密度が著しく低下して優れた光学的物性と耐熱性を同時に付与することができる。また、前記混合溶媒を使用することで、組成物の粘度を下げ、高い固形分含量を有するポリイミドフィルム形成用組成物を製造することができる。これにより、高固形分・底粘度で薄膜コーティング工程への適用が可能であり、目的とする物性を実現するのに卓越した利点を提供することができる。
【0045】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、単純にポリアミン酸の重合ステップで混合溶液を添加することとは相違する分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミン酸を重合するステップで前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を妨害する要因として作用し、高分子量のポリアミン酸を取得できないことがある。一方、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物では、十分な高分子量のポリアミン酸および/またはポリイミドを取得した後、炭化水素系溶媒が混合されることで、重合体間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割を果たすことができ、以降、硬化時に優れた光学的物性を付与することができる。
【0046】
ポリイミドフィルム形成用組成物
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、二無水物から誘導された構造単位、およびジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸またはポリイミドと、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒とを含み、前記二無水物から誘導された構造単位は、下記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、下記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含むことができる。
【0047】
また、一具現例による前記ポリイミドフィルム形成用組成物は、下記関係式1を満たすことができる。特定の理論に拘束されるものではないが、このような条件を満たすポリイミドフィルム形成用組成物は、フィルムの形成時に薄膜工程への適用が有利であることができ、硬化時にポリイミドフィルムの充填密度を阻害し、無定形(amorphous)化して光学的物性が向上する。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
[関係式1]
3,000≦VPI≦10,000
【0053】
[前記関係式1中、
VPIは、前記ポリイミドフィルム形成用組成物の全重量に対して、固形分含量が19重量%である時のポリイミドフィルム形成用組成物の粘度であり、前記粘度は、ブルックフィールド回転粘度計で、25℃で、52Zスピンドルを用いて、トルク80%2分基準で測定された粘度(単位、cp)である。]
【0054】
一具現例において、前記二無水物から誘導された構造単位は、前記化学式3で表される化合物から誘導された構造単位を含み、前記ジアミンから誘導された構造単位は、前記化学式4で表される化合物から誘導された構造単位を含むことができる。ここで、前記二無水物から誘導された構造単位は、前記化学式1で表される化合物から誘導された構造単位、前記化学式2で表される化合物から誘導された構造単位、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0055】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、前記アミド系溶媒および前記炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含むことができ、具体的には、7.5:2.5~5:5の重量比、より具体的には、7.5:2.5~5.5:4.5の重量比で含むことができる。上述の重量比で混合した溶媒を含むことにより、前記ジアミンと前記二無水物の反応性を優秀に維持することができ、ポリイミドフィルム形成用組成物の硬化時に分子間の充填密度を適切に阻害し、無定形(amorphous)化することができる。これにより、耐熱性および機械的物性を低下させないとともに、黄色度がより改善したカバーウィンドー用ポリイミドフィルムを提供することができる。
【0056】
一具現例による前記ポリイミドフィルム形成用組成物の粘度(VPI)は、10,000cp以下、または8,000cp以下、または3,000~8,000cp、または3,000~7,000cpを満たすことができる。
【0057】
これにより、高含量の固形分を含むポリイミドフィルム形成用組成物を薄膜工程により容易に適用することができ、無色透明な性能、光学的物性および耐熱性により優れたポリイミドフィルムを提供することができる。前記固形分は、前記ポリアミン酸および/またはポリイミドであることができる。
【0058】
具体的には、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を硬化して形成された硬化膜、すなわち、ポリイミドフィルムは、柔軟で無色透明であるとともに、優れた耐熱性を実現することができる。これにより、一具現例によるポリイミドフィルムは、高温工程に求められるLTPSおよび/またはLTPO用ディスプレイ装置の基板素材に適用することができ、柔軟性にも優れ、フレキシブルディスプレイの基板素材などに有用に活用することができる。すなわち、一具現例によるポリイミドフィルムをフレキシブルディスプレイの基板素材として採用することにより、ディスプレイ装置の視感性をより向上させるだけでなく、ディスプレイ装置の信頼度および熱安定性を高めることができる。
【0059】
より具体的には、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、前記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の二無水物と前記化学式4で表されるジアミンから誘導された構造単位を含むポリアミン酸と、アミド系溶媒とを含むポリアミン酸溶液に、前記関係式1を満たすように炭化水素系溶媒および混合溶媒を混合したものであることができる。
【0060】
ここで、前記アミド系溶媒と炭化水素系溶媒を順次使用することで、ポリイミド前駆体であるポリアミン酸と溶媒の相互作用をより適切な範囲で調節することができる。ここで、前記調節は、阻害を意味し得る。
【0061】
ジアミンおよび二無水物
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、前記化学式4で表されるジアミンから誘導された構造単位を含むことで、光学的物性がより改善したフィルムを提供することができる。
【0062】
また、前記ジアミンは、必要に応じて、PDA(p-フェニレンジアミン)、m-PDA(m-フェニレンジアミン)、4,4’-ODA(4,4’-オキシジアニリン)、3,4’-ODA(3,4’-オキシジアニリン)、BAPP(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]-フェニル)プロパン)、TPE-Q(1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、TPE-R(1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン)、BAPB(4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル)、BAPS(2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、m-BAPS(2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン)、HAB(3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル)、TB(3,3’-ジメチルベンジジン)、m-TB(2,2’-ジメチルベンジジン)、TFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)、6FAPB(1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン)、6FODA(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル)、APB(1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、1,4-ND(1,4-ナフタレンジアミン)、1,5-ND(1,5-ナフタレンジアミン)、DABA(4,4’-ジアミノベンズアニリド)、6-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールおよび5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾールなどから選択される一つまたは二つ以上と混合して使用することができ、これに制限されるものではない。
【0063】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、前記化学式1~3から選択される一つまたは二つ以上の二無水物から誘導された構造単位を含むことで、機械的強度および耐熱性がより改善したフィルムを提供することができる。また、これより製造されたポリアミン酸と溶媒の相互作用を効果的に阻害して硬化時に分子間の充填密度を著しく下げて、目的とする光学的物性に卓越する利点を提供することができる。
【0064】
また、前記二無水物は、必要に応じて、PMDA(ピロメリティックジアンハイドライド)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、BTDA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、ODPA(4,4’-オキシジフタリックアンハイドライド)、BPADA(4,4’-(4,4’-イソプロピルビフェノキシ)ビフタリックアンハイドライド)、DSDA(3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、6FDA(2,2-ビス-(3,4-ジカルボキシルフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド)、TMHQ(p-フェニレンビストリメリティックモノエステルアンハイドライド)、ESDA(2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボキシリックジアンハイドライド)、NTDA(ナフタレンテトラカルボキシリックジアンハイドライド)、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0065】
溶媒
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を使用することで、重合体と重合体との分子間相互作用(intermolecular interaction)および/または重合体と溶媒との相互作用を効果的に阻害させることができ、硬化時に分子間の充填密度が著しく低下して光学的物性と機械的物性が同時に向上することができる。さらに、前記混合溶媒を使用することで、ポリイミドフィルム形成用組成物の高い固形分含量を有するとともに、組成物の粘度を下げることができる。これにより、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、固形分を高い含量で含むとともに、低い粘度を有することで、溶液工程によって薄膜をより容易に形成することができる。また、機械的物性および耐熱性を低下させないとともに、黄色度に優れたポリイミドフィルムを提供することができる。
【0066】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物において、前記アミド系溶媒は、アミド部分を含む化合物を意味する。前記アミド系溶媒は、環状化合物であるか直鎖状化合物であることができ、具体的には、直鎖状化合物であることができる。前記直鎖状化合物は、具体的には、2~15の炭素数を有することができ、より具体的には、3~10の炭素数を有することができる。
【0067】
前記アミド系溶媒は、N,N-ジアルキルアミド部分を含むことができ、前記ジアルキル基は、それぞれ独立して存在するか、互いに融合して環を形成するか、前記ジアルキル基のうち少なくとも一つのアルキル基が分子内の他の置換基と融合して環を形成することができ、例えば、前記ジアルキル基のうち少なくとも一つのアルキル基がアミド部分のカルボニル炭素に連結されたアルキル基と融合して環を形成することができる。ここで、前記環は、4~7員環であることができ、例えば、5~7員環であることができ、例えば、5員または6員環であることができる。前記アルキル基は、例えば、C1~C10アルキル基、例えば、C1~C8アルキル基、例えば、メチルまたはエチルなどであることができる。
【0068】
さらに具体的には、前記アミド系溶媒は、ポリアミン酸重合に一般的に使用されるものであれば、制限されないが、例えば、ジメチルプロピオンアミド、ジエチルプロピオンアミド、ジメチルアセチルアミド、ジエチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、エチルピロリドン、オクチルピロリドンまたはこれらの組み合わせを含むことができ、具体的には、ジメチルプロピオンアミドを含むことができる。
【0069】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物において、前記炭化水素系溶媒は、上述のように無極性分子であることができる。
【0070】
前記炭化水素溶媒は、炭素と水素からなる化合物であることができる。例えば、前記炭化水素系溶媒は、芳香族であるか脂肪族であることができ、例えば、環状化合物であるか直鎖状化合物であることができるが、具体的には、環状化合物であることができる。ここで、前記炭化水素溶媒が環状化合物である場合、単環または多環を含むことができ、前記多環は、縮合環であるか非縮合環であることができるが、具体的には単環であることができる。
【0071】
前記炭化水素系溶媒は、3~15の炭素数を有することができ、例えば、6~15の炭素数を有することができ、例えば、6~12の炭素数を有することができる。
【0072】
前記炭化水素系溶媒は、置換または非置換のC3~C15のシクロアルカン、置換または非置換のC6~C15芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであることができる。ここで、前記シクロアルカンは、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、またはこれらの組み合わせであることができ、前記芳香族化合物は、ベンゼン、ナフタレン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0073】
前記炭化水素系溶媒は、少なくとも一つのC1~C5のアルキル基で置換されるか非置換のシクロアルカン、少なくとも一つのC1~C5アルキル基で置換されるか非置換の芳香族化合物、またはこれらの組み合わせであることができ、ここで、前記シクロアルカンおよび芳香族化合物は、それぞれ、上述のとおりである。
【0074】
前記C1~C5アルキル基は、例えば、C1~C3アルキル基、例えば、C1またはC2アルキル基であることができ、さらに具体的には、メチル基であることができるが、これに限定されるものではない。
【0075】
また、前記炭化水素系溶媒は、必要に応じて、酸素をさらに含むことができる。例えば、前記炭化水素に溶媒が酸素を含む場合、ケトン基やヒドロキシ基を含むことができ、例えば、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0076】
具体的には、前記炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、クレゾール、またはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0077】
さらに具体的には、一具現例によるポリイミドフィルム形成組成物は、ジメチルプロピオンアミドを含むアミド系溶媒と、トルエン、ベンゼンおよびシクロヘキサンなどから選択される炭化水素系溶媒を含む混合溶媒を含むことができる。
【0078】
一具現例による前記炭化水素系溶媒は、ポリアミン酸またはポリイミド重合後に追加されることができる。
【0079】
これにより、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、単純にポリアミン酸の重合ステップで混合溶液を添加することとは相違する分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミン酸を重合するステップにおいて、前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を妨害する要因として作用し、高分子量のポリアミン酸を取得できないことがある。一方、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物では、十分な高分子量のポリアミン酸および/またはポリイミドを取得した後、炭化水素系溶媒が混合されることで、重合体間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割を果たすことができ、以降、硬化時に目的とする光学的物性を取得することができる。
【0080】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、前記アミド系溶媒および前記炭化水素系溶媒を8:2~5:5の重量比で含むことができ、具体的には、7.5:2.5~5:5の重量比、より具体的には、7.5:2.5~5.5:4.5の重量比で含むことができる。これにより、より優れた光学的物性を実現するとともに、ジアミンと二無水物の反応性を優秀に維持することができる。
【0081】
ポリアミン酸および/またはポリイミド
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、前記で例示されているジアミンと二無水物から誘導された構造単位を含むポリアミン酸および/またはポリイミドを含む。
【0082】
前記ポリアミン酸および/またはポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、10,000g/mol以上、具体的には、20,000g/mol以上であることができ、より具体的には25,000~80,000g/molであることができる。上述の範囲の重量平均分子量を有することで、光学的物性、および機械的強度により優れ、カールがより少なく発生するフィルムを提供することができる。
【0083】
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物の固形分含量は、ポリイミドフィルム形成用組成物の全重量に対して40重量%以下、または35重量%以下、または30重量%以下、または15~25重量%範囲を満たすことができる。ここで、固形分は、前記ポリアミン酸および/またはポリイミドであることができる。
【0084】
通常、ポリイミドの場合、固形分の濃度が高くなるほど粘度も高くなる傾向があり、例えば、前記ポリアミン酸および/またはポリイミドが通常のアミド系溶媒の単独に溶解される場合、溶液の粘度は、15,000cp以上、または10,000cp以上に高い。ここで、前記溶液の粘度は、溶液の全重量に対して、固形分含量が19重量%である時の粘度を意味する。薄膜を溶液工程、例えば、コーティング工程により製造時に、粘度が高くて高分子の流れが良好でないと、気泡の除去が難しく、コーティング時にムラが発生する。
【0085】
一方、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒および炭化水素系溶媒の混合溶媒を使用することで、19重量%以上の高含量の固形分を含んでも組成物の粘度を著しく下げることができる。これにより、溶液工程、例えば、コーティング工程時に発生する不良を効果的に防止することができ、より向上した光学的物性を実現することができる。それだけでなく、コーティング工程時に発生する不良なしに高い固形分含量を有することから商業的にも有利であることができる。
【0086】
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法
一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法は、i)アミド系溶媒下で、前記化学式1~化学式3で表される化合物から選択される一つまたは二つ以上の二無水物および前記化学式4で表されるジアミンを反応させてポリアミン酸溶液を製造するステップと、ii)前記関係式1を満たすように炭化水素系溶媒を追加投入して粘度を調節するステップとを含む、ポリイミドフィルム形成用組成物の製造方法を提供する。
【0087】
具体的には、前記ステップi)は、ジアミンと二無水物を1:0.9~1:1.1モル比で混合してポリアミン酸を重合するものであり、20~30℃の温度で、アミド系溶媒下で、ジアミンを溶解するステップと、前記溶液の温度を維持して二無水物を添加して溶解するステップと、前記反応溶液を5時間~7時間撹拌して反応させるステップとを含むことができる。
【0088】
一具現例による前記ステップi)の反応溶液で、固形分含量は、反応溶液の全重量に対して15~40重量%含まれることができ、20~35重量%含まれることがより好ましい。前記数値範囲で、ジアミンと二無水物の重合反応を優秀に維持し、目的とする重量平均分子量を有するポリアミン酸を取得することができる。
【0089】
一具現例による前記ステップii)は、上述の炭化水素溶媒を追加投入して撹拌させた後、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を追加投入して、ポリイミドフィルム形成用組成物の粘度範囲が前記関係式1を満たすことができる。
【0090】
具体的には、常温(25℃)で、前記ステップi)のアミド系溶媒100重量部に対して5~50重量部、具体的には5~25重量部の炭化水素系溶媒を追加投入して15時間~20時間撹拌するステップと、撹拌が完了した後、前記関係式1を満たすようにアミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を添加するステップとを含む。特定の理論に拘束されるものではないが、このような条件を満たすポリイミドフィルム形成用組成物は、硬化時にポリイミドフィルムの充填密度を阻害し、無定形(amorphous)化することがきる。これにより、機械的物性および耐熱性を低下させないとともに、黄色度がより改善したカバーウィンドー用ポリイミドフィルムを提供することができる。
【0091】
また、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、単純にポリアミン酸の重合ステップで混合溶液を添加することとは相違する分子間挙動および相互作用を示すことができる。例えば、ポリアミン酸を重合するステップで前記炭化水素系溶媒を含む場合、重合を妨害する要因として作用し、高分子量のポリアミン酸を取得できないことがある。
【0092】
一方、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物では、十分な高分子量のポリアミン酸および/またはポリイミドを取得した後に炭化水素系溶媒が混合されることで、高分子量のポリアミン酸を取得することができる。また、前記炭化水素系溶媒が重合体間の分子間相互作用および/または重合体と溶媒との強い相互作用を弱くする触媒の役割を果たすことができ、以降、硬化時に目的とする光学的物性を取得することができる。
【0093】
成形体
一具現例による成形体は、上述のポリイミドフィルム形成用組成物を使用して製造された成形体であることができる。
【0094】
一具現例による成形体の第1様態は、ポリイミドフィルムであることができる。
【0095】
また、一具現例による成形体の第2様態は、前記ポリイミドフィルムを含む多層構造体であることができる。
【0096】
また、一具現例による成形体の第3様態は、前記ポリイミドフィルムを含むフレキシブルディスプレイ装置であることができる。
【0097】
一具現例による前記ポリイミドフィルムは、厚さが4~12μm、例えば、5~11μm、例えば、6~10μmを満たすことができる。
【0098】
一具現例による前記ポリイミドフィルムは、ASTM E131による黄色度(YI)が15以下、または12以下、または10以下、または8以下を満たすことができる。
【0099】
一具現例によるポリイミドフィルムは、透過度などの優れた光学的物性を満たすとともに、光による歪み現象をより低減することができる。
【0100】
一具現例による前記ポリイミドフィルムは、熱変形解析法(TMAMethod)により100~450℃の温度範囲で測定した熱膨張係数(CTE)が15ppm/℃以下、または13ppm/℃以下、または10ppm/℃以下、または9ppm/℃以下であることができる。上述の範囲の熱膨張係数を有することで、一具現例によるポリイミドフィルムは、耐熱性により優れ、ディスプレイ装置の基板として使用する時に、基板の曲げ発生などをより効果的に抑制することができる、
【0101】
また、一具現例による前記多層構造体は、基板上に形成された一具現例によるポリイミドフィルムおよび半導体層を含むことができる。前記半導体層の非限定的な一例としては、低温ポリシリコン(LTPS)、低温ポリオキシド(LTPO)、インジウムスズ酸化物(ITO)およびインジウムガリウム亜鉛酸化物(IGZO)などが挙げられ、例えば、LTPSおよび/またはLTPOを含むことができる。
【0102】
LTPS(low temperature polysilicon)および/またはLTPO(low temperature polycrystalline oxide)を使用するディスプレイ装置の場合、工程温度が350℃以上500℃に近いことがある。このような高温工程では、耐熱性に優れたポリイミドであるとしても、加水分解による熱分解が生じやすい。したがって、LTPSおよび/またはLTPO用フレキシブルデバイスの製造のためには、高温工程でも加水分解による熱分解が生じない優れた耐熱性を有する素材が求められる。一具現例によるポリイミドフィルムは、優れた光学的特性および耐熱性を同時に有することで、LTPSおよび/またはLTPO用ディスプレイ装置に活用することができる。
【0103】
また、ポリイミドフィルム形成用組成物を用いて製造された成形体の具体的な一例としては、上述の多層構造体を含むフレキシブルディスプレイパネルまたはフレキシブルディスプレイ装置などが挙げられ、これに制限されない。この際、前記ポリイミドフィルムは、フレキシブルディスプレイ装置の下部基板として使用されることができ、フレキシブルディスプレイ装置は、通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、電界放出表示装置など、各種の画像表示装置であることができる。
【0104】
ポリイミドフィルムの製造方法
また、一具現例によるポリイミドフィルムの製造方法は、i)前記ポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布する塗布ステップと、ii)前記ポリイミドフィルム形成用組成物を乾燥および加熱して硬化させる硬化ステップとを含むことができる。
【0105】
具体的には、前記ステップi)は、ガラスなどの基板に前記ポリイミドフィルム形成用組成物を塗布するものであり、前記塗布方法は、通常、該当分野において使用されるものであれば、制限なく使用可能である。その非限定的な一例としては、ナイフコーティング(Knife coating)、ディップコーティング(dip coating)、ロールコーティング(roll coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、リップダイコーティング(lip die coating)、スライドコーティング(slide coating)およびカーテンコーティング(curtain coating)などが挙げられ、これに対して同種または異種を1回以上順に適用できることは言うまでもない。
【0106】
また、前記基板は、通常、該当分野において使用されるものであれば、制限なく使用可能であり、その非限定的な一例としては、ガラス;ステンレス;またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、三酢酸セルロース、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、セロファン、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリトリフルオロエチレンなどのプラスチックフィルム;などを使用することができるが、これに制限されない。
【0107】
一具現例による前記ステップii)において、前記乾燥は、ポリイミドフィルム形成用組成物内に存在する溶媒を除去するためのものであり、30~80℃、または40~80℃、または50~80℃で行われることができる。
【0108】
一具現例による前記熱硬化は、100~450℃、または120~450℃、または150~450℃で行われることができる。
【0109】
さらに具体的には、前記熱硬化は、80~100℃で1分~2時間、または100超~200℃で1分~2時間、または200超~450℃で1分~2時間行われることができ、これらから選択される二つ以上の温度条件下で、ステップ的な熱硬化が行われることもできる。また、熱硬化は、別の真空オーブンまたは不活性気体で充填されたオーブンなどで行われることができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0110】
前記硬化ステップは、化学的硬化によっても行われることができる。
【0111】
前記化学的硬化は、イミド化触媒を使用して行われることができ、前記イミド化触媒の非限定的な一例としては、前記イミド化触媒としては、ピリジン(pyridine)、イソキノリン(isoquinoline)およびβ-キノリン(β-quinoline)などから選択されるいずれか一つまたは二つ以上を使用することができ、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0112】
ポリイミドフィルムの製造方法において、必要に応じて、前記ポリイミドフィルム形成用組成物を基板上に塗布した後、常温で放置する放置ステップをさらに含むことができる。
【0113】
前記放置ステップによりフィルムの表面の光学的物性をより安定的に維持させることができる。特定の理論に拘束されるものではないが、従来のポリイミドフィルム形成用組成物は、硬化前に、このような放置ステップが行われると、溶媒が空気中の水分を吸収し、内部に水分が拡散し、ポリアミン酸および/またはポリイミドと衝突して、フィルムの表面から白濁が発生し、凝集現象が発生して、コーティング不均一性が発生し得る。一方、一具現例によるポリイミドフィルム形成用組成物は、空気中に長期間放置されても、白濁現象および凝集現象なしに、向上した光学的物性を有するフィルムを確保できるという利点を実現することができる。
【0114】
前記放置ステップは、常温および/または高湿条件で行われることができる。ここで、前記常温は、40℃以下であることができ、例えば、30℃以下であることができ、例えば、25℃以下であることができ、さらに具体的には15~25℃であることができ、20~25℃であることが特に好ましい。また、前記高湿とは、例えば、50%以上、例えば、60%以上、例えば、70%以上、例えば、80%以上の相対湿度であることができる。
【0115】
前記放置するステップは、1分~3時間、例えば、10分~2時間、例えば、20分~1時間行われることができる。
【0116】
一具現例によるポリイミドフィルムの製造方法において、前記ポリアミン酸溶液に、難燃剤、接着力向上剤、無機粒子、酸化防止剤、紫外線防止剤および可塑剤などから選択される一つまたは二つ以上の添加剤を混合してポリイミドフィルムを製造することができる。
【0117】
以下、一具現例の具体的な説明のために一実施例をあげて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0118】
下記の実験において、物性は、以下のように測定した。
【0119】
<粘度(VPI)>
粘度は、cone plate rheometer(Brookfield社製、LVDV-1II Ultra)で、ポリイミドフィルム形成用組成物(固形分の濃度19重量%)0.5μlを容器に入れて、スピンドルを下げ、rpmを調節して、トルクが80%になる時点で2分間待機した後、トルクの変化がない時の粘度値を測定した。この際、前記粘度は、52Zスピンドルを用いて、25℃の温度条件で測定した。単位はcpである。
【0120】
<黄色度(YI)>
ASTM E313の規格に準じてSpectrophotometer(Nippon Denshoku社製、COH-5500)を用いて測定した。
【0121】
<重量平均分子量>
0.05M LiClを含有するDMAc溶離液にフィルムを溶解して測定した。GPCは、Waters GPC system、Waters 1515 isocratic HPLC Pump、Waters 2414 Refractive Index detectorを用いており、カラム(Column)は、Olexis、Polyporeおよびmixed Dカラムを連結して、標準物質としてポリメチルメタクリレート(PMMA STD)を使用しており、35℃、1mL/minの流速(flow rate)で分析した。
【0122】
<熱膨張係数(CTE)>
TMA(TA社製、Q400)で測定した。フィルムを5×20mmサイズで準備した後、アクセサリを用いて試料をロードする。実際測定されるフィルムの長さは16mmと一様にした。フィルムを引っ張る力を0.02Nと設定し、100~450℃の温度範囲で5℃/minの昇温速度で一次昇温工程を行った後、450~100℃の温度範囲で4℃/minの冷却速度で冷却(cooling)工程を行って熱膨張係数を測定した。
【0123】
[実施例1]
ポリイミドフィルム形成用組成物(TFMB(0.985)/PMDA(1))の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にジメチルプロピオンアミド(N,N-dimethylpropionamide、DMPA)146gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態でTFMB(2,2-ビストリフルオロメチルベンジジン)28.98gを溶解させた。これに、PMDA(ピロメリティックジアンハイドライド)20gを常温(25℃)で添加し溶解させながら撹拌した。6時間撹拌後、25℃でトルエン(Toluene)62.6gを投入し、18時間撹拌した。以降、固形分含量が組成物の全重量に対して19重量%になるように、DMPA:トルエン=70重量%:30重量%の混合溶媒を添加して、ポリイミドフィルム形成用組成物1を製造した。
【0124】
ポリイミドフィルムの製造
ガラス基板(1.0T)の一面に、前記で取得したポリイミドフィルム形成用組成物を#20メイヤーバー(meyer bar)で塗布し、窒素気流下で80℃で30分間、以降、450℃で40分間加熱して硬化した後、ガラス基板から剥離して厚さ7μmの実施例1のポリイミドフィルムを取得した。
【0125】
[実施例2および3]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
下記表1に記載の単量体(ジアミンおよび二無水物)の種類およびモル比を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法を使用して、固形分19重量%およびDMPA:トルエン=70重量%:30重量%の混合溶媒を含むポリイミドフィルム形成用組成物2および3を製造した。
【0126】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmの実施例2および3のポリイミドフィルムを取得した。
【0127】
[実施例4]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
下記表1に記載の単量体(ジアミンおよび二無水物)の種類およびモル比を使用して、DMPAの代わりにジエチルアセトアミド(diethylacetamide、DEAc)を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法を使用して、固形分19重量%およびDEAc:トルエン=70重量%:30重量%の混合溶媒を含むポリイミドフィルム形成用組成物4を製造した。
【0128】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmの実施例4のポリイミドフィルムを取得した。
【0129】
[実施例5および6]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
DMPAとトルエンの全重量に対して、トルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすように、DMPAおよび/またはトルエンを添加した以外は、前記実施例3と同じ方法で、ポリイミドフィルム形成用組成物5および6を製造した。
【0130】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmの実施例5および6のポリイミドフィルムを取得した。
【0131】
[比較例1]
ポリイミドフィルム形成用組成物(TFMB(0.985)/PMDA(1))の製造
窒素気流が流れる撹拌機内にDMPA220.8gを満たした後、反応器の温度を25℃に維持した状態で、TFMB28.9gを溶解させた。これに、PMDA20gを常温(25℃)で添加して溶解させながら撹拌した。24時間撹拌後、固形分含量が組成物の全重量に対して19重量%になるようにDMPAを添加して、ポリイミドフィルム形成用組成物Aを製造した。
【0132】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmの比較例1のポリイミドフィルムを取得した。
【0133】
[比較例2および3]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
下記表1に記載の単量体(ジアミンおよび二無水物)の種類およびモル比を使用した以外は、前記比較例1と同じ方法を使用して、固形分19重量%を含むポリイミドフィルム形成用組成物BおよびCを製造した。
【0134】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmの比較例2および3のポリイミドフィルムを取得した。
【0135】
[比較例4]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
下記表1に記載の単量体(ジアミンおよび二無水物)の種類およびモル比を使用して、DMPAの代わりにDEAcを使用した以外は、前記比較例1と同じ方法を使用して、固形分19重量%を含むポリイミドフィルム形成用組成物Dを製造した。
【0136】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmの比較例4のポリイミドフィルムを取得した。
【0137】
[比較例5および6]
ポリイミドフィルム形成用組成物の製造
DMPAとトルエンの全重量に対して、トルエンの含有量が下記表1のT含有量を満たすように、DMPAおよび/またはトルエンを添加した以外は、前記実施例3と同じ方法で、ポリイミドフィルム形成用組成物FおよびGを製造した。
【0138】
ポリイミドフィルムの製造
取得したポリイミド形成組成物を用いて、前記実施例1と同じ方法で厚さ7μmである比較例5および6のポリイミドフィルムを取得した。
【0139】
【0140】
<ポリイミドフィルムの光学的特性の評価>
前記実施例1~6および比較例1~6で製造されたポリイミドフィルムの物性を測定し、下記表2に示した。下記表2において、粘度は、前記実施例1~6および比較例1~6で製造されたポリイミド形成用組成物の粘度である。
【0141】
【0142】
前記表2を参照すると、実施例1~6によるポリイミドフィルム形成用組成物は、アミド系溶媒と炭化水素系溶媒の混合溶媒を含むことで、高含量の固形分を含むにもかかわらず、3,000~10,000cpの粘度を有することを確認することができる。これにより、実施例1~6によるポリイミドフィルム形成用組成物は、フレキシブルディスプレイの基板として使用するのに十分な厚さを有するとともに、優れた耐熱性および光学的物性を有するフィルムを形成することができることを確認することができる。また、実施例1~6によるポリイミドフィルム形成用組成物で製造されたフィルムは、柔軟であり、曲げ特性に優れ、フレキシブルディスプレイ基板として有用に適用することができる。
【0143】
一方、比較例1~4から製造されたポリイミドフィルム形成用組成物は、熱硬化時に分子間の充填密度が増加し、これより製造されたポリイミドフィルムの光学的特性および耐熱性特性がいずれも良好でないことを確認することができる。
【0144】
また、比較例5によるポリイミドフィルム形成用組成物は、固形分含量に比べて粘度が高く、気泡が除去されず、ポリイミドフィルムの製造に不都合があり、コーティングの表面が不均一に製造された。これにより、硬化後、コーティング層の表面が多少粗くて不良と評価し、ポリイミドフィルムの形成に適用するのに不適であることを確認することができる。さらに、比較例5のポリイミドフィルム形成用組成物は、コーティングの後、表面が粗くて光学的物性が著しく低下したことも確認した。
【0145】
また、比較例6によるポリイミドフィルム形成用組成物は、初期重合固形分が高くて溶液粘度の制御が不可能なほどに高くなり、重合体の重合およびポリイミドフィルムの製造が不可能であった。
【0146】
以上、一具現例が限定された実施例によって説明されているが、これは、本発明のより全般的な理解を容易にするために提供されたものであって、本発明は、前記の実施例に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0147】
したがって、本発明の思想は、上述の実施例に限定して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、本特許請求の範囲と均等であるか等価的変形があるすべてのものなどは、本発明の思想の範疇に属するといえる。