(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190707
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】磁石埋込型モータのロータ構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20221220BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20221220BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/27 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099075
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 修
(72)【発明者】
【氏名】大矢 紫保
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 俊己
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 進
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622DD02
5H622DD04
5H622PP20
5H622QA01
5H622QB01
(57)【要約】
【課題】構造が簡易で、軽量化を図ることができる磁石埋込型モータ(IPMモータ)のロータ構造を提供すること。
【解決手段】磁石埋込型モータのロータ構造は、シャフト10と、シャフト10に装着された、ロータコア21を有するロータ20とを含み、ロータコア21は、外周面が円筒状の電磁鋼板積層体であり、シャフト10の軸方向に貫通する貫通孔211を有し、貫通孔211には、シャフト10側から径方向外側に向けて、樹脂鉄心23と永久磁石22とが順に配設されており、樹脂鉄心23は、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと、前記シャフトに装着された、ロータコアを有するロータとを含み、
前記ロータコアは、外周面が円筒状の電磁鋼板積層体であり、前記シャフトの軸方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔には、前記シャフト側から径方向外側に向けて、樹脂鉄心と永久磁石とが順に配設されており、
前記樹脂鉄心は、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である、
磁石埋込型モータのロータ構造。
【請求項2】
前記永久磁石は、樹脂と磁石粉末とを含むボンド磁石である
請求項1に記載の磁石埋込型モータのロータ構造。
【請求項3】
前記軟磁性材が、鉄を主成分とする粉体である
請求項1又は2に記載の磁石埋込型モータのロータ構造。
【請求項4】
シャフトと、前記シャフトに装着された、ロータコアを有するロータとを含み、前記ロータコアは、外周面が円筒状の電磁鋼板積層体であり、前記シャフトの軸方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔には、前記シャフト側から径方向外側に向けて、樹脂鉄心と永久磁石とが順に配設されている、磁石埋込型モータのロータ構造の製造方法であって、
軟磁性材および樹脂を含む樹脂材から、前記軟磁性材を含んだ樹脂成形体である前記樹脂鉄心を作製する工程を含む、
磁石埋込型モータのロータ構造の製造方法。
【請求項5】
さらに、前記樹脂鉄心と前記永久磁石としてボンド磁石とを作製し、ロータを得た後、得られた前記ロータを脱磁し、次いで、前記ロータコアの外周側から所定方向に磁化されるように着磁する工程を含む、
請求項4に記載の磁石埋込型モータのロータ構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁石埋込型モータのロータ構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータコアに永久磁石を埋め込んだ磁石埋込型モータ(IPMモータ:Interior Permanent Magnet Motor)は、永久磁石の磁束により生じるマグネットトルクと、ロータコアの磁気抵抗(リラクタンス)の変化によって生じるリラクタンストルクとの両方を回転力に利用することができるため、各種の分野で用いられている。
【0003】
従来、磁石埋込型モータ(IPMモータ)のロータの軽量化を図った出願が知られている(たとえば、特許文献1~3参照)。
【0004】
特許文献1(
図2)では、ロータコア14は、磁性体の鋼板22を軸方向に積層して構成されており、ロータコア14には、周方向に所定の間隔をあけて磁石収納孔18が形成されていると共に、磁石収納孔18より径方向の内側には、周方向に所定の間隔をあけて、ロータ10を軽量化するための中空孔20が形成されている。
【0005】
特許文献2(
図5)では、積層鉄心31に形成された貫通孔42により軽量化が図られている。また、積層鉄心31の外周縁近傍に設けられた外縁貫通孔39には樹脂磁石40が充填されている。
【0006】
特許文献3(
図2)では、ロータ5は、多角形状に配置された永久磁石3から成る平板部材10、それらの間の樹脂材19、多角形状の平板部材10の外側に配置された透磁性の優れたケイ素鋼板から成る透磁性積層部材9、透磁性積層部材9の外周に配置された非磁性材から成る補強部材4、多角形状に配置された平板部材10の内側に配置され且つ回転軸2に固定された透磁性部材8から構成されている。透磁性部材8は、樹脂材を含浸した多孔質部材から構成できるので、ロータ5を大径に構成してもロータ自体の重量を軽量に構成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-100634号公報
【特許文献2】特開2001-016810号公報
【特許文献3】特開平11-196555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ロータコアに形成した孔によってロータの軽量化を図っており、形成する孔を大きくすることで軽量化を促進できるが、孔が大きすぎるとロータコアの強度低下を招く虞がある。特許文献2は、特許文献1と同様、ロータコアである積層鉄心に形成した孔によってロータの軽量化を図っており、形成する孔を大きくすることで軽量化を促進できるが、孔が大きすぎるとロータコアの強度低下を招く虞がある。
【0009】
特許文献3では、透磁性部材8は、セラミックス又は金属から構成することができ、多孔質部材から構成できるので樹脂材を含浸できる構成となっているが、多孔質であってもセラミックス又は金属から構成されているため、ロータの軽量化を十分図れるとは言い難い。また、特許文献3では、ケイ素鋼板22は、積層された全体形状において平板部材10に接する面が平面に形成され且つ外周面が円弧面に形成された複数の円弧部材23から成り、円弧部材23は平板部材10に対応して配置され、円弧部材23の長手方向に延びる縁部が溶接24等で互いに接合されている。このため、溶接作業が必要となる。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、構造が簡易で、軽量化を図ることができる磁石埋込型モータ(IPMモータ)のロータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るロータ構造は、シャフトと、上記シャフトに装着された、ロータコアを有するロータとを含み、上記ロータコアは、外周面が円筒状の電磁鋼板積層体であり、上記シャフトの軸方向に貫通する貫通孔を有し、上記貫通孔には、上記シャフト側から径方向外側に向けて、樹脂鉄心と永久磁石とが順に配設されており、上記樹脂鉄心は、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、構造が簡易で、軽量化を図れる磁石埋込型モータ(IPMモータ)のロータ構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るロータ構造の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1におけるロータコアを示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係るロータ構造の概略構成を示す斜視図である。
【
図5-1】
図5-1は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図5-2】
図5-2は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図6-1】
図6-1は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図6-2】
図6-2は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図7-1】
図7-1は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図7-2】
図7-2は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、磁界解析に用いたロータ構造の1/8モデルを示す図である。
【
図9】
図9は、実施例での磁石の表面磁束密度の解析結果を示す図である。
【
図10】
図10は、実施例での逆起電力の解析結果を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態3に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、実施形態3に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
[実施形態]
実施形態に係るロータ構造は、シャフトと、上記シャフトに装着された、ロータコアを有するロータとを含み、上記ロータコアは、外周面が円筒状の電磁鋼板積層体であり、上記シャフトの軸方向に貫通する貫通孔を有し、上記貫通孔には、上記シャフト側から径方向外側に向けて、樹脂鉄心と永久磁石とが順に配設されており、上記樹脂鉄心は、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である。より具体的な実施形態1~3について、下記に説明する。
【0016】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係るロータ構造の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、ロータ構造は、シャフト10と、シャフト10に装着されたロータ20とを含む。ロータ20は、ロータコア21と、永久磁石22と、樹脂鉄心23とから構成されている。具体的には、
図1に示すロータ構造は、永久磁石22の外側に電磁鋼板の積層体からなるロータコア21が配置され、永久磁石22の内側に軟磁性材を混合させた樹脂鉄心23が配置されている。
【0017】
シャフト10は、通常金属製(たとえば、ステンレス鋼、等)である。シャフト10の外周面であって、成形される樹脂鉄心23との結合面となる外周面には、結合力向上と回り止め防止のため、ローレット加工(アヤメ)が施されていることが好ましい。
【0018】
図2は、実施形態1におけるロータコアを示す断面図である。
図2に示すように、ロータコア21は、外周面が円筒状であり、薄板の鋼板(たとえば電磁鋼板)の積層体、すなわち電磁鋼板積層体である。ロータコア21は、外周側に複数箇所(
図2では、4箇所であるが、これに限らない。)の外側コア部212を有し、隣接する外側コア部212同士は、連結部213で連結している。そして、外側コア部212および連結部213で囲まれた1つの貫通孔211を有する。なお、貫通孔211は、ロータコア21において、シャフト10の軸方向に貫通する。すなわち、貫通孔211は、ロータコア21の軸方向全長に渡って連通する。ロータコア21は、貫通孔211の一部に樹脂鉄心23が形成される。ロータコア21は、所定の板厚を有する電磁鋼板を所定形状にプレス加工したコアを用いて得られる。具体的には、ロータコア21は、コアを所定枚数、軸方向に積層し、カシメ固着して電磁鋼板積層体として構成される。また、実施形態1に係るロータ構造において、ロータコア21の連結部213には、フラックスバリア(空隙)214が形成されている。フラックスバリア214は、貫通孔211の内、シャフト10、永久磁石22および樹脂鉄心23により埋まっていない部分に相当する。
【0019】
永久磁石22は、平面視で矩形状であり、具体的には直方体のバルク材である。永久磁石22としては、フェライト磁石、希土類磁石等を用いることができる。希土類磁石であれば、SmCo
5磁石、Sm
2Co
17磁石、希土類鉄系磁石(NdFeB系磁石やSmFeN系磁石)等を用いることができる。永久磁石22は、熱硬化樹脂と磁石粉末を混合して結合したボンド磁石であっても、焼結磁石であってもよい。また、永久磁石22は、異方性磁石であっても、等方性磁石であってもよい。永久磁石22は、予め着磁した永久磁石を用いてもよく、成形後に着磁してもよい。また、永久磁石22の抜け防止のため、直方体の永久磁石22において、樹脂鉄心23が接する面に、ロータ20の軸方向(シャフト10の軸方向)と垂直方向に少なくとも1本以上溝を入れることが好ましい。これらのうちで、異方性SmFeN系ボンド磁石が好適に用いられる。なお、永久磁石22の個数は、
図1では4個であるが、これに限らない。
【0020】
樹脂鉄心23は、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である。軟磁性材としては、鉄を主成分とする紛体(鉄粉、純鉄粉)の他、ケイ素鋼(Fe-Si合金)、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーマロイ(Fe-Ni合金)等の粉末を用いてもよい。軟磁性材は、所定の粒径を有する。樹脂成形体に軟磁性材と共に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂(たとえば、PA12、PA6、PA66等のポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂など)が好適に用いられる。樹脂鉄心23がさらに耐熱性を必要とする場合は、PA12に代えて、耐熱ナイロン(PA6、PA66)やPPS樹脂を利用することができる。樹脂成形体100体積%において、軟磁性材は40体積%以上60体積%以下の量で、樹脂は40体積%以上60体積%以下の量で含まれることが好ましい。軟磁性材の体積が60%を超えると、樹脂鉄心23を成形する際に、樹脂材の流動性が低下し、樹脂鉄心を良好に成形できない虞がある。一方、40%未満では、軟磁性材の比率が低下するため、樹脂鉄心の飽和磁束密度が十分得られず、バックヨークとして十分な機能を有しない虞がある。より具体的には、純鉄粉の体積と、ポリアミド12(PA12)樹脂の体積とを、各々50%で用いることができる。
【0021】
実施形態1に係るロータ構造の製造方法は、軟磁性材および樹脂を含む樹脂材から、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である樹脂鉄心23を作製する工程を含む。
図3は、実施形態1に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。具体的には、まず、
図3に示すように、図示しない金型のキャビティー内にロータコア21をセットし、ロータコア21の貫通孔211内の所定の位置にシャフト10と極数分の直方体の永久磁石22とをセットする。次いで、ロータコア21の貫通孔211に樹脂鉄心23を形成する。ここで、まず、熱可塑性樹脂に所定の粒径を有する軟磁性材を混合した樹脂材を調製する。樹脂材100体積%において、軟磁性材は40体積%以上60体積%以下の量で、樹脂は40体積%以上60体積%以下の量で含まれることが好ましい。軟磁性材の体積が60%を超えると、樹脂鉄心23を成形する際に、樹脂材の流動性が低下し、樹脂鉄心を良好に成形できない虞がある。一方、40%未満では、軟磁性材の比率が低下するため、樹脂鉄心の飽和磁束密度が十分得られず、バックヨークとして十分な機能を有しない虞がある。より具体的には、純鉄粉の体積と、ポリアミド12(PA12)樹脂の体積とを、各々50%で用いることができる。なお、上記混合比率は、通常、樹脂鉄心23においてもそのまま保持される。次に、ロータコア21の一方の端面側から、貫通孔211に樹脂材を注入して、樹脂鉄心23を射出成形する。このようにして、
図1に示す成形体が得られる。
【0022】
〔実施形態2〕
図4は、実施形態2に係るロータ構造の概略構成を示す斜視図である。
図4に示すように、ロータ構造は、シャフト10と、シャフト10に装着されたロータ20とを含む。ロータ20は、ロータコア21と、永久磁石22と、樹脂鉄心23とから構成されている。具体的には、
図4に示すロータ構造は、永久磁石22の外側に電磁鋼板を積層体からなるロータコア21が配置され、永久磁石22の内側に軟磁性材を混合させた樹脂鉄心23が配置されている。
図1に示す実施形態1とは、永久磁石22の形態が異なっており、永久磁石22は、平面視でU字状のボンド磁石である。
【0023】
実施形態2に係るロータ構造の製造方法は、軟磁性材および樹脂を含む樹脂材から、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である樹脂鉄心23を作製する工程を含む。次いで、樹脂鉄心23を作製した後、磁石粉末および熱可塑性樹脂を混合した磁石成形樹脂材から、ボンド磁石である永久磁石22を作製し、ロータを得る工程を含む。
図5-1、
図5-2、
図6-1、
図6-2、
図7-1および
図7-2は、実施形態2に係るロータ構造の製造方法を説明するための図で、
図5-2は
図5-1に示す図の一部拡大断面図、
図6-2は
図6-1に示す図の一部拡大断面図、
図7-2は
図7-1に示す図の一部拡大断面図である。
【0024】
具体的には、まず、
図5-1、
図5-2に示すように、図示しない金型のキャビティー内にロータコア21をセットし、ロータコア21の貫通孔211内の所定の位置にシャフト10をセットする。さらに、樹脂鉄心23を形成する空間を確保するため、永久磁石22の形状に相当する形状を有する入れ駒30もセットする。
【0025】
ロータコア21は、外周面が円筒状であり、薄板の鋼板(たとえば電磁鋼板)の積層体、すなわち電磁鋼板積層体である。ロータコア21は、外周側に複数箇所(
図5-1では、8箇所であるが、これに限らない。)の略扇状の外側コア部212を有し、隣接する外側コア部212同士は、連結部213で連結している。そして、外側コア部212および連結部213で囲まれた1つの貫通孔211を有する。なお、貫通孔211は、ロータコア21において、シャフト10の軸方向に貫通する。すなわち、貫通孔211は、ロータコア21の軸方向全長に渡って連通する。ロータコア21は、貫通孔211の一部に樹脂鉄心23が形成される。ロータコア21は、所定の板厚を有する電磁鋼板を所定形状にプレス加工したコアを用いて得られる。具体的には、ロータコア21は、コアを所定枚数、軸方向に積層し、カシメ固着して電磁鋼板積層体として構成される。
【0026】
シャフト10は、通常金属製(たとえば、ステンレス鋼、等)である。シャフト10の外周面であって、成形される樹脂鉄心23との結合面となる外周面には、結合力向上と回り止め防止のため、ローレット加工(アヤメ)が施されていることが好ましい。
【0027】
次いで、ロータコア21の貫通孔211に樹脂鉄心23を形成する。ここで、まず、熱可塑性樹脂に所定の粒径を有する軟磁性材を混合した樹脂材を調製する。樹脂材100体積%において、軟磁性材は40体積%以上60体積%以下の量で、樹脂は40体積%以上60体積%以下の量で含まれることが好ましい。軟磁性材の体積が60%を超えると、樹脂鉄心23を成形する際に、樹脂材の流動性が低下し、樹脂鉄心を良好に成形できない虞がある。一方、40%未満では、軟磁性材の比率が低下するため、樹脂鉄心の飽和磁束密度が十分得られず、バックヨークとして十分な機能を有しない虞がある。より具体的には、純鉄粉の体積と、ポリアミド12(PA12)樹脂の体積とを、各々50%で用いることができる。なお、上記混合比率は、通常、樹脂鉄心23においてもそのまま保持される。次に、ロータコア21の一方の端面側から、貫通孔211に樹脂材を注入して、樹脂鉄心23を射出成形する。なお、入れ駒30により、後述する永久磁石22を形成するための空間への樹脂材の流入が防止できる。
【0028】
軟磁性材としては、鉄を主成分とする紛体(鉄粉、純鉄粉)の他、ケイ素鋼(Fe-Si合金)、センダスト(Fe-Si-Al合金)、パーマロイ(Fe-Ni合金)等の粉末を用いてもよい。軟磁性材は、所定の粒径を有する。樹脂成形体に軟磁性材と共に含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂(たとえば、PA12、PA6、PA66等のポリアミド(PA)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂など)が好適に用いられる。樹脂鉄心23がさらに耐熱性を必要とする場合は、PA12に代えて、耐熱ナイロン(PA6、PA66)やPPS樹脂を利用することができる。
【0029】
次いで、入れ駒30を抜いた箇所には、平面視でU字状の空間が形成されている(
図6-1、
図6-2参照)。このU字状の空間に、平面視でU字状の永久磁石22(ボンド磁石)を形成する。ここで、まず、熱可塑性樹脂に所定の粒度分布を有する磁石粉末を混合した磁石成形樹脂材を調製する。磁石成形樹脂材100質量%において、磁石粉末は約90質量%の量で、樹脂は約10質量%の量で含まれることが好ましい。なお、上記混合比率は、通常、永久磁石22においてもそのまま保持される。次に、ロータコア21の一方の端面側から、貫通孔211におけるU字状の空間内に磁石成形樹脂材を注入し充填して、永久磁石22を射出成形する(
図7-1、
図7-2参照)。このようにして、
図4に示す成形体が得られる。この樹脂鉄心23の形成と、永久磁石22の形成は、所謂、2色成形技術を利用することで作製できる。このため、樹脂鉄心23および永久磁石22の形成時の作業性を向上できる。
【0030】
また、実施形態2に係るロータ構造の製造方法は、さらに、樹脂鉄心23と永久磁石22としてボンド磁石とを作製し、ロータ20を得た後、得られたロータ20を脱磁し、次いで、ロータコア21の外周側から所定方向に磁化されるように着磁する工程を含むことが好ましい。すなわち、永久磁石22(ボンド磁石)を形成した後、成形体を金型から取り出し、不規則な磁化を除くために、予め、成形体を脱磁することが好ましい。次いで、着磁コイルを巻回した着磁ヨーク(不図示)に脱磁した成形体をセットし、着磁コイルにパルス電流を印加して、ロータコア21の外周側から所定方向に磁化されるように着磁することが好ましい。
【0031】
ここで、
図4に示す実施形態2に係るロータ構造の実施例について説明する。実施例では、ロータ20の外径をφ36mm、ロータ20の軸方向の長さを40mm、シャフト10の外径をφ8mmとした、8極で、24スロットのIPMモータをモデルとし、磁界解析を行った。
図8は、磁界解析に用いたロータ構造の1/8モデルを示す図である。
磁石肉厚T=3mmで、磁石からシャフトまでの距離D=2、4、8mmと可変させ、磁石の表面磁束密度を解析した。
図9に、実施例での磁石の表面磁束密度の解析結果を示す。
図9に示すように、D=2、4mmでは、大差は見られない。D値の減少に伴って磁石体積が増加するため、磁石に要するコストとの観点から、このモデルではD=4mmが好ましい。また、D=4mmで、T=1mm~4.5mmと可変させ、逆起電力を解析した。
図10に、実施例での逆起電力の解析結果を示す。
図10に示すように、T=2mmで最大になる。モータとしての特性を評価する場合、周りに磁性体であるステータを含めた磁路状態で評価すべき観点から、逆起電力で評価した場合、T=2mmが好ましい。本モデルによれば、希土類磁石粉末を用いる場合、材料費が高い希土類磁石粉末を混合させたボンド磁石の体積を小さくしても、磁気特性を低下させることなく、所定の磁気特性を有することが分かる。
【0032】
〔実施形態3〕
実施形態3に係るロータ構造は、実施形態2に係るロータ構造と同じである。また、実施形態3に係るロータ構造の製造方法は、軟磁性材および樹脂を含む樹脂材から、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である樹脂鉄心23を作製する工程を含む点も、実施形態2に係るロータ構造の製造方法と同じである。一方、実施形態2に係るロータ構造の製造方法では、樹脂鉄心23を形成した後、永久磁石22(ボンド磁石)を形成しているが、実施形態3に係るロータ構造の製造方法では、永久磁石22(ボンド磁石)を形成した後、樹脂鉄心23を形成する点が異なる。以下、実施形態3について、実施形態2と異なる点について説明し、同じ点については説明を省略又は簡略化する。
【0033】
実施形態3に係るロータ構造の製造方法は、磁石粉末および熱可塑性樹脂を混合した磁石成形樹脂材から、ボンド磁石である永久磁石22を作製する工程を含む。次いで、永久磁石22を作製した後、軟磁性材および樹脂を含む樹脂材から、軟磁性材を含んだ樹脂成形体である樹脂鉄心23を作製し、ロータを得る工程を含む。
図11および
図12は、実施形態3に係るロータ構造の製造方法を説明するための図である。具体的には、まず、
図11に示すように、図示しない金型のキャビティー内にロータコア21をセットする。さらに、貫通孔211において、永久磁石22(ボンド磁石)の形成後に樹脂鉄心23を形成する空間を確保するため、この空間に磁石成形樹脂材が流入しないよう、入れ駒をセットする。ロータコア21と入れ駒とによってU字状の空間が形成され、このU字状の空間に、平面視でU字状の永久磁石22(ボンド磁石)を形成する。ここで、まず、熱可塑性樹脂に所定の粒度分布を有する磁石粉末を混合した磁石成形樹脂材を調製する。次に、ロータコア21の一方の端面側から、貫通孔211におけるU字状の空間内に磁石成形樹脂材を注入し充填して、永久磁石22を射出成形する(
図11参照)。
【0034】
次いで、入れ駒を抜いた空間の所定の位置に、シャフト10をセットする。シャフト10と永久磁石22との間の空間に、樹脂鉄心23を形成する。ここで、まず、熱可塑性樹脂に所定の粒径を有する軟磁性材を混合した樹脂材を調製する。次に、ロータコア21の一方の端面側から、貫通孔211に樹脂材を注入して、樹脂鉄心23を射出成形する(
図12参照)。このようにして、
図4に示す成形体が得られる。この永久磁石22の形成と、樹脂鉄心23の形成は、所謂、2色成形技術を利用することで作製できる。このため、樹脂鉄心23および永久磁石22の形成時の作業性を向上できる。
【0035】
また、実施形態3に係るロータ構造の製造方法も、さらに、永久磁石22としてボンド磁石と樹脂鉄心23とを作製し、ロータ20を得た後、得られたロータ20を脱磁し、次いで、ロータコア21の外周側から所定方向に磁化されるように着磁する工程を含むことが好ましい。すなわち、樹脂鉄心23を形成した後、成形体を金型から取り出し、不規則な磁化を除くために、予め、成形体を脱磁することが好ましい。次いで、着磁コイルを巻回した着磁ヨーク(不図示)に脱磁した成形体をセットし、着磁コイルにパルス電流を印加して、ロータコア21の外周側から所定方向に磁化されるように着磁することが好ましい。
【0036】
上述のように、実施形態2、3において、樹脂鉄心23および永久磁石22の形成の際に、熱可塑性樹脂を用いる。先の工程で用いる熱可塑性樹脂は、後の工程で用いる熱可塑性樹脂に対して、射出温度が同じか、又は高くなるように選ぶことが好ましい。すなわち、実施形態2では、樹脂鉄心23を形成するための熱可塑性樹脂は、永久磁石22(ボンド磁石)を形成するための熱可塑性樹脂に対して、射出温度が同じか、又は高くなるように選ぶことが好ましい。また、実施形態3では、永久磁石22(ボンド磁石)を形成するための熱可塑性樹脂は、樹脂鉄心23を形成するための熱可塑性樹脂に対して、射出温度が同じか、又は高くなるように選ぶことが好ましい。
【0037】
実施形態に係るロータ構造では、永久磁石(たとえばボンド磁石)よりも径方向外側の領域は、電磁鋼板を積層した積層体で構成している。この外側の領域は、トルクに寄与する磁束が通過する領域となり、磁束の変化が激しい箇所となるため、高透磁率で高周波領域での損失が低い材料で形成する必要がある。トルクに寄与する磁束としては、具体的には、ロータの外周面と所定のキャップを介して対向配置されるステータのティースに巻回されたコイルに印加された電流によって生じる磁束が、ステータのティースから積層体を通って隣接するティースに向かうことによって生じるリラクタンストルクに寄与する磁束や、永久磁石からステータのティースに向かって流れる磁束などがある。
【0038】
これに対して、永久磁石(たとえばボンド磁石)よりも径方向内側の領域は、軟磁性材を含んだ樹脂成形体からなる樹脂鉄心で構成している。この内側の領域では、電磁鋼板を積層した積層鉄心に比べて磁束の変動がなく、主に永久磁石のバックヨークとして機能する領域である。このため、樹脂鉄心には、高い透磁率を有する軟磁性材の粉末を混合し、磁路として機能させる。また、樹脂に軟磁性材の粉末を混合して樹脂鉄心を形成しているため、電磁鋼板の積層体で形成した構成に比べて大幅に軽量化できる。また、樹脂鉄心は樹脂および軟磁性材を含むため、この部分を電磁鋼板で形成するよりも、電気抵抗を大きくできる。これにより、渦電流の発生を抑えられ、鉄損を小さくできる。
【0039】
上述の通り、実施形態に係るロータ構造は、永久磁石よりも径方向外側の領域のみ、電磁鋼板を積層した積層体で構成しているため、ロータ全体の軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 シャフト、20 ロータ、21 ロータコア、211 貫通孔、212 外側コア部、213 連結部、22 永久磁石、23 樹脂鉄心、30 入れ駒