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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190710
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】成形用樹脂組成物、および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20221220BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20221220BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L23/00
C08L33/04
C08F210/00
C08F220/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099078
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青谷 朋之
(72)【発明者】
【氏名】西 祐次
(72)【発明者】
【氏名】増子 啓介
(72)【発明者】
【氏名】西中 健
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB192
4J002BD041
4J002BG051
4J002BG072
4J002BK001
4J002CE001
4J002CF001
4J002FD052
4J002GB01
4J002GC00
4J002GG00
4J002GN00
4J002GQ00
4J100AA15Q
4J100AK32R
4J100AL08P
4J100AM48R
4J100BA12P
4J100BC43P
4J100BC73P
4J100BC75P
4J100BD14P
4J100CA03
4J100FA03
4J100FA06
4J100FA19
4J100JA28
4J100JA43
4J100JA50
4J100JA57
(57)【要約】      (修正有)
【課題】着色剤を使用した場合でも、ポリオレフィンとの相溶性が良好で、透明性が良好な成形体を形成できる成形用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂、及び紫外線吸収性ポリマーを含む、成形用樹脂組成物であって、紫外線吸収性ポリマーは、紫外線を吸収する骨格を有する炭化水素基を持つ単量体単位、及びα-オレフィン単量体単位を含むポリマーである、成形用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂、および紫外線吸収性ポリマーを含む、成形用樹脂組成物であって、
前記紫外線吸収性ポリマーは、下記一般式(1)で示す単量体単位、およびα-オレフィン単量体単位を含むポリマーである、成形用樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基を表し、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する炭化水素基であり、ヘテロ原子を含んでもよい。)
【請求項2】
前記紫外線吸収性ポリマーが、さらにマレイン酸単量体単位及び/又はマレイミド単量体単位を含むポリマーである、請求項1記載の成形用樹脂組成物。
【請求項3】
前記紫外線吸収性ポリマーの全単量体単位中、α-オレフィン単量体単位を5~50質量%含有する、請求項1または2に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収性ポリマーの重量平均分子量が、3,000~150,000である、請求項1~3いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである、請求項1~4いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、着色剤を含む、請求項1~5いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から樹脂成形体(以下、成形体という)は、医薬用薬剤や化粧品等の包装材料として使用されていた。医薬用薬剤や化粧品等の内容物は、紫外線やブルーライトで劣化しやすいため、必要に応じて、その包装材に紫外線吸収剤や遮光性を目的とした着色剤(有機着色顔料等)を添加することが検討されている。しかしながら、紫外線吸収剤を配合すると、紫外線吸収剤が包装材表面に移行して内容物を汚染する場合があったり、有機着色顔料等の着色剤は、成型体中に均一に分散させることは困難であり、着色剤が偏在し易いという課題があった。
そこで、特許文献1では、分散剤を使用して有機着色顔料を均一化させた医療用包装材が開示されている。特許文献2では、有機着色顔料の代わりに分散しやすい染料を用いたブルーライトカット用樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-119412号公報
【特許文献2】特開2015-017152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的に通常の顔料分散剤を添加すると、素材同士の相溶性が低く成形体のヘーズ(haze)が高くなってしまい、使用できる分散剤が限られていた。また、低分子量の分散剤は、経時で分散剤が成型体表面にブリードアウトしてしまう課題があった。また、同様に染料もブリードアウトの観点から医薬用薬剤用途や化粧品用途を考慮すると使用できる材料が限られていた。そのため、透明性が良好でブリードアウトすることなく、紫外線領域やブルーライト領域をカットする成形用樹脂組成物が所望されていた。
【0005】
本発明は、着色剤を使用した場合でも、ポリオレフィンとの相溶性が良好で、透明性が良好な成形体を形成できる成形用樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂、および紫外線吸収性ポリマーを含む、成形用樹脂組成物であって、
前記紫外線吸収性ポリマーは、下記一般式(1)で示す単量体単位、およびα-オレフィン単量体単位を含むポリマーである、成形用樹脂組成物に関する。
【0007】
一般式(1)
【化1】
【0008】
(一般式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基を表し、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する炭化水素基であり、ヘテロ原子を含んでもよい。)
【0009】
また、本発明は、前記紫外線吸収性ポリマーが、さらにマレイン酸単量体単位及び/又はマレイミド単量体単位を含むポリマーである、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記紫外線吸収性ポリマーの全単量体単位中、α-オレフィン単量体単位を5~50質量%含有する、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記紫外線吸収性ポリマーの重量平均分子量が、3,000~150,000である、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィンである、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、さらに、着色剤を含む、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、上記成形用樹脂組成物を成形してなる、成形体に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、オレフィンとの相溶性が良好で、着色剤分散性を有する紫外線吸収性ポリマーを含み、透明性が良好な成形体を形成できる成形用樹脂組成物、および成形体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書等の用語を定義する。本明細書等において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」等は、「アクリル及び/又はメタクリル」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。また、単量体は、それぞれ、エチレン性不飽和基含有化合物を意味する。重合後の単量体を単量体単位、重合前は単量体という。
【0017】
本発明の成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、紫外線吸収性ポリマーを含む、成形用樹脂組成物であって、以下、本発明の組成物が含有する各成分について詳述する
【0018】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)などのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドが挙げられる。これらの中でも、良好な成形性及び成形品の機械強度を得られることから、ポリオレフィン、シクロオレフィン樹脂を選択することが特に好ましい。また、ポリエステル、ポリアクリル、ポリカーボネートも好ましい。熱可塑性樹脂の数平均分子量は3万を超えることが好ましい。
【0019】
<ポリオレフィン>
ポリオレフィンは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、及びポリ-4-メチルペンテン、並びにこれらの共重合体が挙げられる。
【0020】
ポリオレフィンの重量平均分子量は、30,000~500,000程度であり、30,000~200,000であると好ましい。
【0021】
ポリエチレンは、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンが挙げられる。ポリプロピレンは、例えば、結晶性又は非晶性ポリプロピンが挙げられる。
これらの共重合体は、例えば、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、及びエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。
これらの中でも結晶性又は非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また安価で、比重が小さいために成形体を軽量化できる観点からはポリプロピレンが好ましい。
【0022】
ポリオレフィンのメルトフローレイト(MFR)は、1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めた数値である。
【0023】
<シクロオレフィン樹脂>
ポリオレフィンの一形態として、シクロオレフィン樹脂がある。シクロオレフィン樹脂は、エチレン又はα-オレフィンと環状オレフィンとの重合体である。α-オレフィンはC4~C12(炭素数4~12)のαオレフィンから誘導されるモノマーであり、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-へキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等が挙げられる。環状オレフィンはノルボルネンから誘導されるモノマーであり、水素基、ハロゲン原子、1価又は2価の炭化水素基の置換物が挙げられる。これらの中でも無置換のノルボルネンが好ましい。
【0024】
<ポリカーボネート>
ポリカーボネートは、2価のフェノールとカーボネート前駆体とを公知の方法で合成した化合物である。2価のフェノールは、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ビドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4-ビドロキシフェニル)サルファイド等が挙げられる。これらの中でビス(4-ビドロキシフェニル)アルカン系が好ましく、ビスフェノールAと称される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンがより好ましい。カーボネート前駆体は、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、2価のフェノールのジハロホルメート等が挙げられる。この中でもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0025】
<ポリアクリル>
ポリアクリルは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸メチル及び/又はメタクリル酸エチル等のモノマーを公知の方法で重合した化合物である。例えば、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体及びエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。前記モノマーの他に、例えば、ブタジエン、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のモノマーを加えて重合することもでき、モノマー量と分子量によって耐熱性、流動性、衝撃性を調整することができる。
【0026】
<ポリエステル>
ポリエステルは、分子の主鎖にエステル結合を有する樹脂であり、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、ジオール(2価アルコール又は2価フェノール)とから合成した重縮合物;、ジカルボン酸(その誘導体を含む)と、環状エーテル化合物とから合成した重縮合物;、環状エーテル化合物の開環重合物等が挙げられる。ポリエステルは、ジカルボン酸とジオールの重合体によるホモポリマー、複数の原料を使用するコポリマー、これらを混合するポリマーブレンド体が挙げられる。なお、ジカルボン酸の誘導体とは、酸無水物、エステル化物である。ジカルボン酸は、脂肪族及び芳香族の2種類のジカルボン酸があるところ、耐熱性が向上する芳香族がより好ましい。
【0027】
<塩化ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体のほか、塩化ビニルと共重合可能な単量体との共重合体(以下、「塩化ビニル共重合体」ともいう)、該塩化ビニル共重合体以外の重合体に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体等が挙げられる。
塩化ビニルと共重合可能な単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸類;アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸フェニル等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。
【0028】
塩化ビニル共重合体以外の重合体としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであればよく、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル・一酸化炭素共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート・一酸化炭素共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・プロピレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、ポリウレタン等が挙げられる。
【0029】
塩化ビニル樹脂には可塑剤を使用できる。可塑剤は、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル系可塑剤;ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル系可塑剤;エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化サフラワー油、エポシキ化アマニ油脂肪酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ化エステル系可塑剤;トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル系可塑剤;トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等のリン酸エステル系可塑剤等が挙げられる。これらの中でも、樹脂シートの成形性、加工性等の点から、エポキシ化エステル系可塑剤が好ましい。
【0030】
熱可塑性樹脂の融点は、120~330℃が好ましく、150~300℃がより好ましい。
【0031】
<紫外線吸収性ポリマー>
紫外線吸収性ポリマーは、下記一般式(1)で示す単量体単位、およびα-オレフィン単量体単位を含むポリマーである。
【0032】
一般式(1)
【化2】
【0033】
一般式(1)中、R11は、水素原子またはメチル基を表し、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する炭化水素基であり、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0034】
<一般式(1)>
11は、水素原子またはメチル基を表し、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する、炭化水素基または複素環基を1種以上含む部位である。一般式(1)で示す単量体単位が紫外線を吸収する骨格を有することで、紫外線吸収性ポリマーは、紫外線吸収性を有する。紫外線吸収性は、紫外線を吸収する骨格に由来する。
一般式(1)で示す単量体単位は、下記一般式(11)で示す単量体を重合して形成する単位である。
【0035】
(一般式11)
【化3】
【0036】
一般式(11)中、R11およびUは一般式(1)と同様である。
【0037】
<一般式(1)で示す単量体単位>
一般式(1)で示す単量体単位中、Uは、紫外線を吸収する骨格を有する炭化水素基でありヘテロ原子を含んでもよい。紫外線を吸収する骨格は、例えば、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、及びベンゾフェノン骨格からなる群より選択される1種が好ましい。これらの中でも、コスト及び工業的な入手しやすさの観点からベンゾトリアゾール骨格が好ましい。以下、紫外線を吸収する骨格ごとに単量体単位を説明する。
【0038】
(ベンゾトリアゾール骨格を含む単量体単位)
一般式(11)中、Uがベンゾトリアゾール骨格である場合、例えば、下記化学式(a1-1)~(a1-1-5)、(a1-2-1)~(a1-2-20)、(a1-3-1)~(a1-3-32)で示す単量体単位が挙げられる。
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
【化9】
【0045】
【化10】
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
(トリアジン骨格を含む単量体単位)
一般式(11)中、Uがトリアジン骨格である場合、例えば、下記化学式(a1-4-1)~(a1-4-21)で示す単量体単位が挙げられる。なお、トリアジン骨格は、トリフェニルトリアジン骨格が好ましい。
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
【化20】
【0057】
(ベンゾフェノン骨格を含む単量体単位)
一般式(11)中、Uがベンゾフェノン骨格である場合、以下の単量体が挙げられる。
ベンゾフェノン骨格を有する単量体は、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メタクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(2-メチル-2- アクリロイルオキシ)エトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0058】
一般式(11)で表される化合物のうち、2‐[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールは、重合制御性、コスト、紫外線吸収性のバランスに好ましい。
【0059】
一般式(11)で表される化合物は、単独または2種類以上を併用できる。
【0060】
一般式(1)で示す単量体単位の含有量は、全単量体単位100質量%中、3~60質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%がさらに好ましい。適量含有することで紫外線吸収性、及びポリオレフィンとの相溶性を高度に両立できる。
【0061】
<α-オレフィン単量体単位>
α-オレフィン単量体単位は、疎水性が強く、適量含有することでポリオレフィンとの相溶性と着色剤表面への強固な吸着性を両立できる。
α-オレフィン単量体単位は、下記α-オレフィンを重合して形成する単位である。α-オレフィンは、末端のα位に二重結合を有する炭化水素であり、ポリオレフィンとの相溶性の観点から、炭素数6~52のα-オレフィンが好ましく、炭素数8~38がより好ましく、炭素数12~38がさらに好ましい。例えば、1-オクテン(炭素数8)、1-ノネン(炭素数9)、1-デセン(炭素数10)、1-ドデセン(炭素数12)、1-テトラデセン(炭素数14)、1-ヘキサデセン(炭素数16)、1-オクタデセン(炭素数18)、1-エイコセン(炭素数20)、1-ドコセン(炭素数22)、1-テトラコセン(炭素数24)、1-オクタコセン(炭素数28)、1-トリアコンテン(炭素数30)、1-ドトリアコンテン(炭素数32)、1-テトラトリアコンテン(炭素数34)、1-ヘキサトリアコンテン(炭素数36)、1-オクタトリアコンテン(炭素数38)等が挙げられる。
【0062】
ポリオレフィンとの相溶性と分散性の観点から、紫外線吸収性ポリマーの全単量体単位100質量%中、α-オレフィン単量体単位を5~50質量%含有することが好ましく、10~40質量%がより好ましく、10~35質量%がさらに好ましい。適量含有することで、ポリオレフィンとの相溶性が向上する。
【0063】
紫外線吸収性ポリマーは、さらにマレイン酸単量体単位、及び/又はマレイミド単量体単位を含むポリマーであることが好ましい。マレイン酸単量体単位、及び/又はマレイミド単量体単位を有することでα-オレフィンの共重合性に優れ、紫外線吸収性ポリマーの反応制御が容易となる。マレイン酸単量体単位、及びマレイミド単量体単位は単独または2種類以上を併用して使用できる。オレフィンとの相溶性や共重合性の制御の観点から、無水マレイン酸単量体単位を使用することが最も好ましい。
【0064】
<マレイン酸単量体単位>
マレイン酸単量体単位の形成は、マレイン酸、または無水マレイン酸のうち少なくとも一方を使用する。これらの中でも共重合性に優れる面で無水マレイン酸を使用することが好ましい。
【0065】
<マレイミド単量体単位>
マレイミド単量体単位の形成は、マレイミドまたはN置換マレイミドのうち少なくとも一方を使用する。N置換マレイミドの置換基を変えることにより、相溶性や、顔料への吸着率を調整できる。
置換基の中で炭化水素基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、アミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基等;
環状炭化水素基は、例えばシクロヘキシル基等;
芳香族基は、例えばフェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2-エチルフェニル基、2-フルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、m-ヒドロキシフェニル基、p-ヒドロキシフェニル基、p-カルボキシルフェニル基、ベンジル基等;
が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。オレフィンとの相溶性の観点から、環状炭化水素基、芳香族基が好ましく、シクロヘキシル基もしくはフェニル基がより好ましく、特にフェニル基がより好ましい。
【0066】
N置換マレイミドの形成には、市販のモノマーを使用しても良いし、アミンを使用し、無水マレイン酸から変性して得ても良い。アミンは、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、o-トルイジン、2-エチルアニリン、2-フルオロアニリン、o-アニシジン、m-トルイジン、m-アニシジン、m-フェネチジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、5-アミノインダン、アスパラギン酸、グルタミン酸、γ-アミノ酪酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0067】
マレイン酸単量体単位、及びマレイミド単量体単位の含有量は、全単量体単位100質量%中、3~45質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、5~35質量%がさらに好ましい。適量含有すると、オレフィンとの相溶性や共重合性の制御が容易となる。
【0068】
<その他単量体単位>
紫外線吸収性ポリマーは、一般式(1)で示す単量体単位、α-オレフィン単量体単位、マレイン酸単量体単位、およびマレイミド単量体単位以外のその他単量体単位を含有できる。その他単量体単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、芳香族ビニル単量体単位、その他ビニル単量体単位を含有できる。
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の形成は、(メタ)アクリル酸エステルを使用する。(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸べへニル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸2-エチルー2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチルー2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル等が挙げられる。
【0070】
芳香族ビニル単量体単位の形成は、芳香族ビニル単量体を使用する。芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、安息香酸ビニル、ビニル安息香酸メチル、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばtert-ブトキシカルボニル基(t-Boc)など)で保護されたヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0071】
上記以外のその他単量体単位を形成する単量体としては、例えば、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、酸性基含有単量体、窒素含有複素環単量体等が挙げられる。
【0072】
クロトン酸エステルは、例えば、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0073】
ビニルエステルは、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート等が挙げられる。
【0074】
マレイン酸ジエステルは、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0075】
フマル酸ジエステルは、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0076】
イタコン酸ジエステルは、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0077】
(メタ)アクリルアミドは、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0078】
ビニルエーテルは、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0079】
酸性基含有単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物;等が挙げられる。
【0080】
窒素含有複素環単量体は、例えば、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、ペンタメチルピペリジニルアクリレート、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0081】
この中でも、環状炭化水素基含有単量体単位またはスチレン単量体単位を含む紫外線吸収性ポリマーは、ポリオレフィンとの相溶性が向上するため好ましい。環状炭化水素基含有単量体単位またはスチレン単量体単位は単量体混合物100質量%中、3~40質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましく、10~35質量%がさらに好ましい。適量含有することで、紫外線吸収性ポリマーのガラス転移温度を向上させることができ、成型性とポリオレフィンやシクロオレフィン樹脂との相溶性を両立しやすい。
【0082】
<合成方法>
紫外線吸収性ポリマーの合成法は、例えば、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等が挙げられる。この中でも、コスト及び生産性の観点よりフリーラジカル重合により合成されたものが好ましい。
【0083】
紫外線吸収性ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、ポリオレフィンやシクロオレフィン樹脂との相溶性の観点から5,000~150,000が好ましく、6,000~100,000がより好ましく、7,000~80,000がさらに好ましく、8,000~60,000が特に好ましい。紫外線吸収性ポリマーの重量平均分子量(Mw)が上記範囲になると成形時の流動性がより向上する。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数値である。
【0084】
紫外線吸収性ポリマーの分子量分布(Mw/Mn)は、1~10が好ましく、1.2~5.0がより好ましく、1.3~4.0がさらに好ましい。上記範囲内にあることで、ポリオレフィンやシクロオレフィン樹脂との相溶性が向上し、紫外線吸収性ポリマーがブリードアウトしにくい。
【0085】
紫外線吸収性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、50℃~180℃が好ましく、60℃~170℃がより好ましく、70℃~160℃がさらに好ましい。上記範囲にあると、加工性とポリオレフィンやシクロオレフィン樹脂との相溶性とのバランスが良い。
【0086】
紫外線吸収性ポリマーの熱分解温度(Td)は、特に限定されないが、例えば、200℃以上、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上が好ましい。上記範囲であれば、高温での成形加工時でも黄変などが起こりにくい。
【0087】
なお、TgやTdは、例えば、後述の方法により測定できる。
【0088】
紫外線吸収性ポリマーは、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等公知の重合手法で合成できるところ、本発明では反応制御が容易な溶液重合が好ましい。
【0089】
<重合開始剤>
紫外線吸収性ポリマーの合成には、重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物が好ましい。
アゾ系化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、又はジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0090】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0091】
重合温度は、40~150℃程度が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間程度が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0092】
<連鎖移動剤>
紫外線吸収性ポリマーの合成には、連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤を使用することで、紫外線吸収性ポリマーの分子量調整が容易となる。
【0093】
連鎖移動剤は、例えば、α-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプトプロピオン酸、2,3-ジメルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオ乳酸、o-メルカプト安息香酸、m-メルカプト安息香酸、チオリンゴ酸、o-チオクマル酸、α-メルカプトブタン酸、β-メルカプトブタン酸、γ-メルカプトブタン酸、11-メルカプトウンデカン酸、メルカプトメタノール、1-メルカプトエタノール、2-メルカプトエタノール、1-メルカプトプロパノール、3-メルカプトプロパノール、1-メルカプト-2,3-プロパンジオール、1-メルカプト-2-ブタノール、1-メルカプト-2,3-ブタンジオール、1-メルカプト-3,4-ブタンジオール,1-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、2-メルカプト-3-ブタノール、2-メルカプト-3,4-ブタンジオールおよび2-メルカプト-3,4,4’-ブタントリオール、チオグリセロール、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチルなどのチオグリコール酸アルキルエステル、メルカプトプロピオン酸メチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸トリデシルなどのメルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0094】
これらの中でも、1級チオール基を持つ化合物が特に連鎖移動剤効果が高く、分子量調整が容易のため好ましい。特に臭気と分子量調整の容易さのバランスから、β-メルカプトプロピオン酸、チオグリセロール、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチルが好ましい。
【0095】
連鎖移動剤は、単独または2種以上を併用して使用できる。
【0096】
<有機溶剤>
紫外線吸収性ポリマーの合成は、有機溶剤を使用できる。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0097】
有機溶剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0098】
また本発明では、紫外線吸収性ポリマーの溶液重合後、重合溶剤及び、残留モノマーなどの不純物除去の観点から精製工程を経ることが好ましい。
【0099】
精製工程は特に制限されず、再沈殿、再結晶、抽出、分液、蒸留などが挙げられる。この中でも、効率的に重合溶剤及び、残留モノマーなどの不純物を除去できる観点から再沈殿が最も好ましい。
【0100】
再沈殿精製工程では、重合により生成した紫外線吸収性ポリマー溶液を用いればよく、適宜この重合溶液に希釈、濃縮、濾過、洗浄、抽出等の適当な処理を施してもよい。
【0101】
再沈殿精製に用いる溶媒(沈殿溶媒)としては、紫外線吸収性ポリマーの貧溶媒であればよく、例えば、脂肪族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)などの炭化水素;ハロゲン化脂肪族炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素など)、ハロゲン化芳香族炭化水素(クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)などのハロゲン化炭化水素;ニトロメタン、ニトロエタンなどのニトロ化合物;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどにニトリル;鎖状エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタンなど)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサンなど)などのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール;酢酸などのカルボン酸;水;これらの溶媒を含む混合溶媒などから適宜選択して使用できる。この中でも、メタノールが最も好ましい。
【0102】
この再沈殿精製工程の好ましい態様では、重合により生成したポリマーを不揮発分含有量で40質量%以下まで重合溶剤等で希釈し、メタノール溶媒中に添加して紫外線吸収性ポリマーを再沈殿させる。
その後、必要に応じて、リスラリー処理、濾過処理、乾燥処理を施して、高純度の紫外線吸収性ポリマーを得ることができる。
【0103】
<成形用樹脂組成物>
成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、紫外線吸収性ポリマーを含む。必要に応じて、着色剤、添加剤を含有できる。紫外線吸収性ポリマーの配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~30質量部が好ましく、0.05~25質量部が好ましく、0.1~20質量部がより好ましい。
<ワックス>
成形用樹脂組成物は、ワックスを含有できる。ただし、ワックスが上記熱可塑性樹脂としての機能を有する場合は、ワックスの機能を有する熱可塑性樹脂となる。
【0104】
ワックスは、低分子量ポリオレフィン類からなる。これらは、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、ブロック、ランダムコポリマーまたはターポリマーであっても構わない。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のようなα-オレフィン類の重合体である。これらは単独または2種以上で併用できる。
【0105】
ワックスの数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、2,000~25,000がより好ましい。この範囲内にあることでワックスが適度に成形品表面へ移行するため、摺動性とブリードアウト抑制のバランスに優れる。
【0106】
ワックスの融点は60~150℃が好ましく、70~140℃がより好ましい。この範囲内にあることで熱可塑性樹脂とワックスとを溶融混練する際の加工性が良好となる。
【0107】
なお、ワックスのJIS K-7210に準拠して求めたメルトフローレイト(MFR)は、100g/10分より大きいことが好ましい。
【0108】
ワックスの配合量は、成形体が含有する熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。
【0109】
<着色剤>
成形用樹脂組成物は、着色剤を含有できる。本発明において、着色剤は紫外線を遮蔽、散乱または吸収する作用を有する有機着色顔料が好ましく、波長200~480nm領域に吸収を持つ有機着色顔料が好ましい。具体的には、C.I.ピグメントイエロー93、ピグメントイエロー95、ピグメントイエロー110、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー147、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントオレンジ64、ピグメントオレンジ71、ピグメントレッド144、ピグメントレッド149、ピグメントレッド177、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド242、ピグメントレッド254、ピグメントレッド264などが挙げられる。
【0110】
上記着色剤は必要に応じて、複数の着色剤を組み合わせ使用することもできる。複数の着色剤を併用することによって、紫外線・可視光線透過を効果的に抑えることができる。
【0111】
本発明の着色剤は、発明を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の顔料や染料を含むことができる。他の顔料としては上記例示以外の有機顔料、無機顔料、カーボンブラック系顔料等が挙げられる。
【0112】
着色剤は、予めポリオレフィンワックスと混合し、予備分散して分散体としてから熱可塑性樹脂と溶融混錬することが好ましい。予めポリオレフィンワックスと混合しておくことで着色剤の分散不良に起因する顔料凝集をさらに防ぐことができ、医薬品包装材を形成した際に良好な外観の成形体を得ることができる。
【0113】
着色剤とポリオレフィンワックスの混合方法は、公知の方法を使用することができる。例えば、流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機や、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、着色剤とポリオレフィンワックスを攪拌、混合する方法、または、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等を用いて着色剤とポリオレフィンワックスを溶融混練する方法等が挙げられる。
【0114】
本発明の成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂、および紫外線吸収性ポリマー、必要に応じてその他の配合剤を混ぜ込み、そのままの状態で成形加工することが出来るようにしたコンパウンドでも良いし、一度、熱可塑性樹脂に、紫外線吸収性ポリマーを高濃度に練り込んだマスターバッチでもよい。本発明では、紫外線吸収性ポリマーを成形体中に均一に分散し易い面でマスターバッチが好ましい。
マスターバッチは、例えば、熱可塑性樹脂と紫外線吸収性ポリマーを溶融混練し、次いで任意の形状に成形することが好ましい。次いで、前記マスターバッチと希釈樹脂(例えば、マスターバッチに使用した熱可塑性樹脂)とを溶融混練し、所望の形状の成形体を成形できる。マスターバッチの形状は、例えば、ペレット状、粉末状、板状等が挙げられる。なお、紫外線吸収性ポリマーの凝集を防ぐため、予め、紫外線吸収性ポリマーとワックスを溶融混練した分散体を製造した後、熱可塑性樹脂と共に、溶融混錬してマスターバッチを製造することが好ましい。分散体に使用する装置は、例えば、ブレンドミキサーや3本ロールミル等が好ましい。
マスターバッチの作成に使用する熱可塑性樹脂は、希釈樹脂(Y)と同じ熱可塑性樹脂が好ましいが、相溶性に問題なければ、他の熱可塑性樹脂を使用しても構わない。
【0115】
成形用樹脂組成物をマスターバッチとして製造する場合、熱可塑性樹脂100質量部に対して、紫外線吸収性ポリマーを1~200質量部配合することが好ましく、5~70質量部がより好ましい。マスターバッチ(X)と、成形体の母材樹脂となる希釈樹脂(Y)との質量比は、X/Y=1/1~1/100が好ましく、1/3~2/100がより好ましい。この範囲にすると成形体に紫外線吸収性ポリマーが均一に分散し、良好な紫外線吸収性及び光透過性が得やすい。
【0116】
溶融混練は、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、タンデム式二軸混練押出機等が挙げられる。溶融混錬温度は、ポリオレフィンの種類により異なるが、通常150~250℃程度である。
【0117】
成形用樹脂組成物は、必要に応じて、さらに酸化防止剤、光安定剤、分散剤等を含むことができる。
【0118】
<成形体>
成形用樹脂組成物は、例えば、成形体として食品包装材、医薬品包装材、ディスプレイ用途に使用することが好ましい。食品包装材や医薬品包装材は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリオレフィンやポリエステル等を使用することが好ましい。これら成形体は、柔軟性及び視認性が向上し、内容物の劣化を抑制できる。これにより、医薬品や化粧品等のセルフライフが延長できる。また、ディスプレイ用途(例えば、テレビ、パソコン、スマホ等)は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリアクリルやポリカーボネート等を使用することが好ましい。これら成形体は、バックライトに含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目への悪影響を抑制することができ、また、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、ディスプレイの表示素子の劣化を抑制することができ、さらにマイグレーションによる透明性低下を抑制することができる。さらに、ディスプレイ用材料、センサー用材料、光学制御材料などの用途でも幅広く使用できる。
【0119】
成形用樹脂組成物がマスターバッチである場合、成形体は希釈樹脂(Y)を含有する。成形体は、成形用樹脂組成物を成形して作製する。
【0120】
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられる。押出成形は、例えばコンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0121】
成形温度は、希釈樹脂の軟化点によるところ、通常160~280℃である。
【0122】
成形体は、例えば、医療用薬剤、化粧品、食品用容器、包装材、雑貨、繊維製品、医薬品用容器、各種産業用被覆材、自動車用部品、家電製品、住宅等の建材、トイレタリー用品などの用途で幅広く使用できる。なお、成形体は型に樹脂を投入し物品を得るものである。なお、成形体は型に樹脂を投入し物品を得たもの、および、プラスチックフィルムなど型を使用せずに得た物品を含む。
【実施例0123】
以下、実験例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実験例に限定されない。なお、特に断らない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
【0124】
(分子量)
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC-8320GPC(東ソー社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK-GEL SUPER HZM-N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは1%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0125】
(不揮発分)
不揮発分は、試料0.5gをアルミ容器に秤量し、電気オーブンで200℃雰囲気下10分後の乾燥前後の質量比から算出した。
不揮発分%=(乾燥後の質量)/(乾燥前の質量)×100
【0126】
[紫外線吸収性ポリマーの製造例(B-1)~(B-12)]
温度計、撹拌機、滴下ロート、冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに、トルエン250部、一般式(1)で示す単量体単位として2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾールを30部、α-オレフィン単量体単位として1-ヘキサデセンを44部、その他単量体単位として無水マレイン酸を26部、連鎖移動剤としてチオグリコール酸オクチルを1部仕込み、窒素気流下で30分撹拌した。その後、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン20部との混合物を、1時間かけて滴下した。その後、温度を90℃に保ったまま撹拌して反応を継続させ、昇温後2時間経過したところで、1時間おきにt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート1.0部とトルエン5部との混合物を0.1部加え、合計8時間反応させた。その後、サンプリングを行い転化率が98%以上であることを確認し、冷却後、トルエンで希釈し、不揮発分30%の樹脂溶液b-1を製造した。
次に、1Lのビーカーにメタノール400部を仕込み、デイスパーを用いて1,000回転で撹拌したところに樹脂溶液b-1、100部を1時間かけて滴下した。その後直径150mmのブフナー漏斗で、定性濾紙(ADVANTEC社製、品名No.2)を用いて減圧吸引し、生成した白色沈殿物をろ過した。さらに30分間減圧吸引を続け、濾液が出なくなったことを確認し、ついで、得られた白色沈殿物を真空乾燥機で50℃12時間乾燥し、ポリマー(B-1)を製造した。得られたポリマー(B-1)の不揮発分は99%以上だった。
【0127】
下記表1のように、使用する単量体、連鎖移動剤を変更した以外は、紫外線吸収性ポリマー(B-1)と同様な方法で、紫外線吸収性ポリマー(B-2)~(B-12)を得た。
【0128】
【表1】
【0129】
なお、表1中の用語は以下の通りである。
一般式(1)で示す単量体単位
ベンゾトリアゾール骨格:2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール
トリアジン骨格:化合物(a1-4-1)
ベンゾフェノン骨格:4-アクリロイルオキシベンゾフェノン
【0130】
(実施例1)
〔成形用樹脂組成物(マスターバッチ)の製造〕
熱可塑性樹脂として、ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)100部、及び紫外線吸収性ポリマー(B-1)27部を別々の供給口から供給して二軸押出機(日本製鋼所製)を用いて180℃で溶融混練した後、冷却し、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングしてマスターバッチを製造した。
【0131】
[フィルム成形]
希釈樹脂として前記ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)100部に対して、製造した前記マスターバッチ10部を混合した。次いで、T-ダイ成形機(東洋精機社製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルムを成形した。
【0132】
(実施例2~26、30~33、比較例1~3)
実施例1で使用した材料を表2に示す材料及び配合量に変更した以外は、実施例1と同様にして、マスターバッチ、フィルムを製造した。
【0133】
(実施例27~29)
実施例1で使用した材料を表2に示す材料及び配合量に変更し、さらに成型温度を270℃に変更し、実施例1と同様にして、マスターバッチ、フィルムを製造した。
【0134】
本実施例で使用した熱可塑性樹脂、可塑剤を以下に示す。
(A-1):ポリエチレン(サンテックLD M2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)
(A-2):ポリエチレン(ノバテックUJ790、MFR=50g/10min、日本ポリエチレン社製)
(A-3):ポリプロピレン(ノバテックPP FA3EB、MFR=10.5g/10min、日本ポリプロ社製)
(A-4):ポリプロピレン(プライムポリプロJ226T、MFR=20g/10min、プライムポリマー社製)
(A-5):ポリカーボネート(ユーピロンS3000、MFR=15g/10min、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
(A-6):ポリメタクリル樹脂(アクリペットMF、MFR=14g/10min、三菱レイヨン社製)
(A-7):ポリエステル(三井ペットSA135、三井化学社製)
(A-8):シクロオレフィン樹脂(TOPAS5013L-10、三井化学社製)
(A-9):ポリ塩化ビニル(SCB200JA、サン・アロー化成工業社製)
(A-10):ポリ塩化ビニリデン(サランテックスL574A、旭化成ケミカルズ社製)
可塑剤O-130P:エポキシ化大豆油(アデカサイザーO-130P、ADEKA社製)
着色剤PY95:クロモフタルイエローK1500FP (C.I.ピグメントイエロー95、BASFジャパン社製)
【0135】
上記実施例並びに比較例で得られたフィルムに関して、下記項目を評価した。
【0136】
[紫外線吸収性]
成形したフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。透過率は白色標準板に対する分光透過率を測定した。以下の条件を満たすか否かを評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:波長290~360nmの光透過率が全領域にわたって2%未満。良好。
○:波長290~360nmの範囲で一部光透過率が2%以上の領域がある。実用域。
×:波長290~360nmの光透過率が全領域にわたって2%以上。実用不可。
【0137】
[耐光性試験]
成形したフィルムをキセノンウェザーメーターで、波長300~400nmの光が60W/mの照度になる条件で1500時間暴露した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:黄変が全く認められない。良好。
○:黄変がわずかに認められる。実用域。
×:明らかに黄変が認められる。実用不可。
【0138】
[透明性]
成形したフィルムの透過性を目視評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
◎:濁りが全く認められない。優れている。
○:濁りがほとんど認められない。良好。
△:濁りが若干認められる。実用域。
×:明らかに濁りが認められる。実用不可。
【0139】
[異物]
成形したフィルムの異物を目視評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
〇:有色の凝集物が確認されない。
×:有色の凝集物が確認される。
【0140】
[経時ブリード]
成形したフィルムの異物を目視評価した。なお、評価基準は以下の通りである。
成形したフィルムを40℃のオーブン中に400時間暴露した後、ブリード物の有無をフィルム片表面を垂直方向から目視にて観察し、下記の基準で評価した。
◎:ブリードが全く発生しなかった
〇:わずかに粉状のブリード物が析出しているものの、フィルム片表面の全体に光沢の低下がみられなかった
×:ブリード物の粉、結晶がフィルム面全面に析出し、実用不可
【0141】
[耐溶出性試験1]
「日本薬局方-一般試験法7.02 プラスチック製医薬品容器試験法」の「1.2溶出物試験」に記載された方法に従って、(i)泡立ち、(ii)pH、(iii)過マンガン酸カリウム還元性物質、(iv)紫外吸収スペクトル、(v)蒸発残留物の5項目を確認し、以下の基準に沿って評価を行った。
この溶出性試験規格を満たす場合、輸液バッグ、点眼容器、注射剤容器などの医薬品包装材として好適であるといえる。
〇:5項目すべてで規格範囲内
×:5項目のうちいずれかで規格範囲を外れる
【0142】
【表2】
【0143】
表2に示されるように、α-オレフィン単量体単位を含む紫外線吸収ポリマーを含む成形用樹脂組成物は、遮光性に優れ、熱可塑性樹脂、特にポリオレフィンとの相溶性が良好で、透明性が良好な成形体を形成可能であることが示された。また、さらに遮光性目的で着色剤を含む場合でも、着色剤の凝集を防ぎ、透明性が良好であることが示唆された。