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特開2022-190711筋肉動作回復装置およびその使用方法並びに筋肉動作回復装置作製用キット
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  • 特開-筋肉動作回復装置およびその使用方法並びに筋肉動作回復装置作製用キット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190711
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】筋肉動作回復装置およびその使用方法並びに筋肉動作回復装置作製用キット
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61H1/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099080
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】500141799
【氏名又は名称】堀尾 憲市
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】堀尾 憲市
【テーマコード(参考)】
4C046
【Fターム(参考)】
4C046BB04
4C046BB08
4C046CC04
4C046DD08
4C046DD13
4C046DD41
(57)【要約】
【課題】癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる筋肉動作回復装置およびその使用方法並びに筋肉動作回復装置作製用キットを提供する。
【解決手段】本発明の筋肉動作回復装置1は、上方に配された滑車2,3と、滑車2,3に掛け渡されたロープ4とを有し、ロープ5の一端側には錘保持部6が設けられ、ロープ5の他端側には手足保持部7が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に配された滑車と、該滑車に掛け渡されたロープとを有し、該ロープの一端側には錘保持部が設けられ、該ロープの他端側には手足保持部が設けられていることを特徴とする筋肉動作回復装置。
【請求項2】
前記筋肉動作回復装置には、前記錘保持部と前記手足保持部が離隔する方向に複数の滑車が離隔して配されている請求項1に記載の筋肉動作回復装置。
【請求項3】
前記錘保持部は、スライドバーと、該スライドバーに沿って移動可能に設けられ前記ロープの一端側に取り付けられたスライダーとを有し、前記スライドバーの一端側は固定され、前記スライドバーの他端側には錘部が設けられている請求項1または2に記載の筋肉動作回復装置。
【請求項4】
前記錘保持部は錘を収納するための錘収納容器を有している請求項1または2に記載の筋肉動作回復装置。
【請求項5】
上方に配された滑車と、該滑車に掛け渡されたロープとを有し、該ロープの一端側には錘保持部が設けられ、該ロープの他端側には手足保持部が設けられている筋肉動作回復装置の使用方法であって、前記手足保持部に手または足を保持させるステップと、前記錘保持部の重量と手または足を保持させた前記手足保持部の重量を均衡した状態に調整するステップと、手または足を昇降させるステップを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置の使用方法。
【請求項6】
上方に配された滑車と、該滑車に掛け渡されたロープとを有し、該ロープの一端側には錘保持部が設けられ、該ロープの他端側には手足保持部が設けられた筋肉動作回復装置を作製するための筋肉動作回復装置作製用キットであって、前記滑車と、該滑車を上方に配するための滑車保持具と、前記ロープと、該ロープの一端側と前記錘保持部とを連結するための錘保持部用フックと、該ロープの他端側と前記手足保持部とに連結するための手足保持部用フックとを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置作製用キット。
【請求項7】
天秤竿と、該天秤竿の一端側に設けられた手足保持部と、前記天秤竿の他端側に設けられた錘保持部と、前記手足保持部と前記錘保持部との間に設けられ前記天秤竿を吊り下げるための吊り下げ部とを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置。
【請求項8】
前記錘保持部は、前記天秤竿に沿って移動可能に設けられている請求項7に記載の筋肉動作回復装置。
【請求項9】
天秤竿と、該天秤竿の一端側に設けられた手足保持部と、前記天秤竿の他端側に設けられた錘保持部と、前記手足保持部と前記錘保持部との間に設けられ前記天秤竿を吊り下げるための吊り下げ部とを有している筋肉動作回復装置の使用方法であって、前記手足保持部に手または足を保持させるステップと、前記錘保持部の重量と手または足を保持させた前記手足保持部の重量とを均衡した状態に調整するステップと、手または足を昇降させるステップを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳卒中などにより麻痺が生じた人が訓練用に使用して好適な筋肉動作回復装置およびその使用方法並びに筋肉動作回復装置作製用キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脳卒中などにより麻痺が残ると手足等を動かすことが困難となる。例えば足の場合、股関節を動かす際に使用する筋肉は腸腰筋(歩行に際して足を浮かせ運ぶ筋肉)であるが、麻痺により腸腰筋がうまく動作しなくなるため、歩くことが極めて困難となる。そのため、腸腰筋を使用せず、腰を持ち上げて患側の足を運ぶ動作(代償筋を使用した代償動作)で歩行するため二次障害が発生する。すなわち、代償筋を使用して足を上げることを脳が憶えてしまうため、通常の歩行ができなくなり無理な歩き方が定着してしまう。
【0003】
このような麻痺に起因する動作を回復させるものとして、例えば特開2003-265557号公報の歩行回復補助具などがある。
【0004】
しかし、この歩行回復補助具は、麻痺した足を歩行回復補助具に締結させて健常な足の動作に同調させて歩行動作を強要するため、代償筋を使用した代償動作となり易く二次障害を発生させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-265557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者は麻痺した手足等の筋肉による自然な動作を回復させるべく本発明を成したものであり、すなわち、本発明の課題は、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる筋肉動作回復装置およびその使用方法並びに筋肉動作回復装置作製用キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するものは、上方に配された滑車と、該滑車に掛け渡されたロープとを有し、該ロープの一端側には錘保持部が設けられ、該ロープの他端側には手足保持部が設けられていることを特徴とする筋肉動作回復装置である(請求項1)。
【0008】
前記筋肉動作回復装置には、前記錘保持部と前記手足保持部が離隔する方向に複数の滑車が離隔して配されていることが好ましい(請求項2)。前記錘保持部は、スライドバーと、該スライドバーに沿って移動可能に設けられ前記ロープの一端側に取り付けられたスライダーとを有し、前記スライドバーの一端側では該スライドバーが軸支され、前記スライドバーの他端側には錘部が設けられていることが好ましい(請求項3)。前記錘保持部は錘を収納するための錘収納容器を有していてもよい(請求項4)。
【0009】
また、上記課題を解決するものは、上方に配された滑車と、該滑車に掛け渡されたロープとを有し、該ロープの一端側には錘保持部が設けられ、該ロープの他端側には手足保持部が設けられている筋肉動作回復装置の使用方法であって、前記手足保持部に手または足を保持させるステップと、前記錘保持部の重量と手または足を保持させた前記手足保持部の重量とを均衡した状態に調整するステップと、手または足を昇降させるステップを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置の使用方法である(請求項5)。
【0010】
さらに、上記課題を解決するものは、上方に配された滑車と、該滑車に掛け渡されたロープとを有し、該ロープの一端側には錘保持部が設けられ、該ロープの他端側には手足保持部が設けられた筋肉動作回復装置を作製するための筋肉動作回復装置作製用キットであって、前記滑車と、該滑車を上方に配するための滑車保持具と、前記ロープと、該ロープの一端側と前記錘保持部とを連結するための錘保持部用フックと、該ロープの他端側と前記手足保持部とに連結するための手足保持部用フックとを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置作製用キットである(請求項6)。
【0011】
さらに、上記課題を解決するものは、天秤竿と、該天秤竿の一端側に設けられた手足保持部と、前記天秤竿の他端側に設けられた錘保持部と、前記手足保持部と前記錘保持部との間に設けられ前記天秤竿を吊り下げるための吊り下げ部とを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置である(請求項7)。
【0012】
前記錘保持部は、前記天秤竿に沿って移動可能に設けられていることが好ましい(請求項8)。
【0013】
さらに、上記課題を解決するものは、天秤竿と、該天秤竿の一端側に設けられた手足保持部と、前記天秤竿の他端側に設けられた錘保持部と、前記手足保持部と前記錘保持部との間に設けられ前記天秤竿を吊り下げるための吊り下げ部とを有している筋肉動作回復装置の使用方法であって、前記手足保持部に手または足を保持させるステップと、前記錘保持部の重量と手または足を保持させた前記手足保持部の重量とを均衡した状態に調整するステップと、手または足を昇降させるステップを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置の使用方法である(請求項9)。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載した筋肉動作回復装置によれば、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる。
請求項2に記載した筋肉動作回復装置によれば、使用に際して錘保持部が邪魔にならない筋肉動作回復装置を構成することができる。
請求項3に記載した筋肉動作回復装置によれば、錘保持部の重量調整が容易な筋肉動作回復装置を構成できる。
請求項4に記載した筋肉動作回復装置によれば、簡素で低廉な構造の錘保持部を備えた筋肉動作回復装置を構成できる。
請求項5に記載した筋肉動作回復装置の使用方法によれば、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる。
請求項6に記載した筋肉動作回復装置作製用キットによれば、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる筋肉動作回復装置を容易かつ低廉に作製できる。
請求項7に記載した筋肉動作回復装置によれば、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる。
請求項8に記載した筋肉動作回復装置によれば、錘保持部の錘を変えることなく、錘保持部の重量を容易に変更できる。
請求項9に記載した筋肉動作回復装置の使用方法によれば、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の筋肉動作回復装置の一実施例の正面概略図である。
図2図1に示した筋肉動作回復装置の使用方法を説明するための説明図である。
図3】本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例の正面概略図である。
図4】本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例の正面概略図である。
図5】本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例の正面概略図である。
図6】本発明の筋肉動作回復装置作製用キットの一実施例の説明図である。
図7】本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例の斜視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、上方に配された滑車2,3と、滑車2,3に掛け渡されたロープ4とを有し、ロープ5の一端側には錘保持部6が設けられ、ロープ5の他端側には手足保持部7が設けられていることで、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる筋肉動作回復装置1を実現した。
【実施例0017】
本発明の筋肉動作回復装置を図1または図2に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置1は、上方に配された滑車2,3と、滑車2,3に掛け渡されたロープ4とを有し、ロープ5の一端側には錘保持部6が設けられ、ロープ5の他端側には手足保持部7が設けられていることを特徴とする筋肉動作回復装置である。以下、各構成について順次詳述する。
【0018】
滑車2,3は、ロープ4を掛け渡した状態で保持するために上方に配されるものであり、梁、柱または上方に存在する固定物や構造物等に取り付けられる。この実施例では、滑車2,3は、梁Rに滑車保持具8を介して取り付けられている。
【0019】
具体的には、この実施例の滑車2,3は、錘保持部6と手足保持部7が離隔する方向(例えばこの実施例では水平方向)に2つの滑車2,3が離隔するように配されている。これにより、使用に際して錘保持部6が邪魔にならない筋肉動作回復装置1を構成できる。
【0020】
ロープ4は、滑車2,3に掛け渡されて錘保持部6と手足保持部7の重量バランスの均衡性を保持するためのものであり、ロープ5の一端側には錘保持部6が設けられ、他端側には手足保持部7が設けられている。
【0021】
錘保持部6は、手または足を保持させた手足保持部7との重量バランスの均衡性を担保するために錘を保持させる部位である。この実施例の錘保持部6は、スライドバー9と、スライドバー9に沿って移動可能に設けられロープ4の一端側に取り付けられたスライダー10とを有し、スライドバー9の一端側ではスライドバー9が軸支され、スライドバー9の他端側には錘部11が設けられている。
【0022】
具体的には、この実施例の錘保持部6は、床F上に立設可能なスライドバー支持体12の上部に設けられた軸部13によりスライドバー9の一端側が軸支され、スライドバー9の一端側は軸部13を軸として回動可能に構成されている。そして、ロープ4の一端側に取り付けられたスライダー10をスライドバー9に沿って図1中左右に移動させると、錘保持部6の重量を変動させることができるように構成されている。すなわち、スライダー10をスライドバー9に沿って図1中右側に移動させる程、錘保持部6の重量は大きくなることから、スライダー10の移動のみで錘保持部6の重量(荷重)調整を容易に行うことができる。
【0023】
手足保持部7は、麻痺して動作が困難となった患側の手または足を保持させる部位であり、この実施例の手足保持部7は、環状に縛った長尺状帯状体(例えばタオルや手ぬぐい等)により形成され、その環状体内に手または足を挿入した状態で保持可能に構成されている。また、ロープ4の他端側とこの長尺状帯状体(手足保持部)7との連結は、手足保持部用フック(この実施例ではS字フック)14により行われている。
【0024】
つぎに、本発明の筋肉動作回復装置の使用方法を上述した筋肉動作回復装置1を用いて説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置1の使用方法は、上方に配された滑車2,3と、滑車2,3に掛け渡されたロープ4とを有し、ロープ4の一端側には錘保持部6が設けられ、ロープ4の他端側には手足保持部7が設けられている筋肉動作回復装置1の使用方法であって、手足保持部7に手または足を保持させるステップと、錘保持部6の重量と手または足を保持させた手足保持部の重量とを均衡した状態に調整するステップと、手または足を昇降させるステップを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置の使用方法である。以下、詳述するが、筋肉動作回復装置1については前述した通りであり、同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0025】
この筋肉動作回復装置1の使用する場合は、まず、手足保持部7に手または足を保持させるステップを行う。図2には、手足保持部7に麻痺が残った患側の左足を手足保持部7に保持させた状態が示されているが、足の場合はこのように椅子cに座った状態で保持させる。なお、図2では、手足保持部7に足を保持させた状態を示したが。麻痺した手を保持させ使用する場合も本発明の範疇に包含される。
【0026】
具体的には、この実施例の手足保持部7は、長尺状帯状体(手ぬぐい)により形成されており、椅子cに座った状態で左足の膝上付近を長尺状帯状体(手ぬぐい)で環状に縛り、その状態の手足保持部7を、ロープ4の他端側に設けられた手足保持部用フック(S字フック)14に係合させてロープ4に吊り下げて保持させる。
【0027】
つぎに、錘保持部6の重量と、手または足を保持させた手足保持部7の重量とを均衡した状態に調整する。すなわち、手足の力を抜いた状態で手足が上がらない程度の略均衡した状態(指一本で錘保持部6側を下げることができる程度の状態)とする。このステップは、手足の荷重を錘によりキャンセルさせ、手足に負荷を与えない状態として手足の動かし方を訓練させるために行うものである。したがって、筋力を付ける訓練ではないため、錘を重くして手足に負荷をかけることはしない。ただし、麻痺の程度が重い場合は、若干、錘保持部6側が下がる状態(手足の上昇を錘が若干助ける状態)としてもよい。
【0028】
この実施例の錘保持部6にて重さの均衡を調整するには、スライダー10をスライドバー9に沿って左右に移動させる。スライダー10をスライドバー9に沿って図2中右側に移動させると錘保持部6の重量は重くなり、左側に移動させると錘保持部6の重量は軽くなるため、手足保持部7の重量と均衡する付近でスライダー10を停止させて調整する。
【0029】
そして、手または足を昇降させるステップでは、他の体の部位に力が入らないように、また、他の体の部位を動かさないように、手足のみを10cm程度上昇させた後、下ろす。足の場合は膝を昇降させる。これを5回程度繰り返して、その間、3倍の時間の休憩を入れる。このように訓練を行いことにより、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かすことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる。
【0030】
さらに、図3に示した本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例について説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置20と前述した筋肉動作回復装置1との相違は錘保持部の構造であり他は同様である。筋肉動作回復装置1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0031】
具体的には、前述した筋肉動作回復装置1は、床F上に立設可能なスライドバー支持体12の上部に設けられた軸部13によりスライドバー9の一端側が軸支され、スライドバー9の一端側は軸部13を軸として回動可能に構成されているが、筋肉動作回復装置20の錘保持部21は、スライドバー支持体を有することなく、スライドバー9の一端側を軸支する軸部13は、第2ロープ22の下端部に吊り下げ状に支持され、第2ロープ22の上端部は、ロープ保持具23を介して梁Rに保持されている。このような錘保持部21を有した筋肉動作回復装置20も本発明の筋肉動作回復装置の範疇に包含され、錘保持部をより簡素な構造で構成できる。
【0032】
さらに、図4に示した本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例について説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置30と前述した筋肉動作回復装置1との相違も錘保持部の構造であり他は同様である。筋肉動作回復装置1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0033】
具体的には、この実施例の筋肉動作回復装置30の錘保持部31は、錘を収納するための錘収納容器にて構成されており、ロープ4の一端部に設けられた錘保持部用フック15により吊り下げ状に支持されている。このような錘保持部31を有した筋肉動作回復装置30も本発明の筋肉動作回復装置の範疇に包含され、錘保持部をより簡素な構造で構成できる。錘保持部31を構成する錘収納容器としては、手提げ袋やバケツなどが好適に使用でき、錘としては、様々なサイズのペットボトルに水を入れたものなど、身近で安価に入手できるものなどを好適に使用できる。
【0034】
さらに、図5に示した本発明の筋肉動作回復装置の他の実施例について説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置40と前述した筋肉動作回復装置30との基本的な相違は、筋肉動作回復装置40は滑車41が1つのみである点であり他は同様である。本発明の筋肉動作回復装置の範疇には、このような滑車が一つで構成されたものも包含される。筋肉動作回復装置1と同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0035】
さらに、図6に示した本発明の筋肉動作回復装置作製キットの一実施例について説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置作製キット50は、上方に配された滑車2,3と、滑車2.3に掛け渡されたロープ4とを有し、ロープ4の一端側には錘保持部6が設けられ、ロープ4の他端側には手足保持部7が設けられた筋肉動作回復装置を作製するための筋肉動作回復装置作製用キット50であって、滑車2,3と、滑車2,3を上方に配するための滑車保持具8と、ロープ4と、ロープ4の一端側と錘保持部6とを連結するための錘保持部用フック15と、ロープ4の他端側と手足保持部7とに連結するための手足保持部用フック14とを有している。筋肉動作回復装置については前述した筋肉動作回復装置30と同様であり、同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0036】
なお、この実施例の筋肉動作回復装置作製キット50は、図4に示した筋肉動作回復装置30を作製するためのキットであり、具体的には、2個の滑車2,3と、滑車2,3を上方に配するための2個の滑車保持具8と、ロープ4と、ロープ4の一端側と錘保持部6とを連結するための錘保持部用フック(この実施例ではS字フック)15と、ロープの他端側と前記手足保持部とに連結するための手足保持部用フック(この実施例ではS字フック)14と有している。これにより、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かす訓練を行うことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる筋肉動作回復装置を容易かつ低廉に作製することができる。
【0037】
さらに、図7に示した本発明の筋肉動作回復装置60について説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置60は、天秤竿61と、天秤竿61の一端側に設けられた手足保持部62と、天秤竿の他端側に設けられた錘保持部63と、手足保持部62と錘保持部63との間に設けられ天秤竿61を吊り下げるための吊り下げ部64とを有している。以下、各構成について順次詳述する。
【0038】
天秤竿(天秤棒)61は、天秤竿61の一端側に設けられた手足保持部62と、天秤竿の他端側に設けられた錘保持部63との重量バランスを取るための天秤棒として機能するものである。
【0039】
手足保持部62は、麻痺して動作が困難となった患側の手または足を保持させる部位であり、この実施例の手足保持部62は、環状に縛った長尺状帯状体(例えばタオルや手ぬぐい等)により形成され、その環状体内に手または足を挿入した状態で保持可能に構成されている。また、この実施例の手足保持部62は、手足保持部用フック(この実施例ではS字フック)14により、天秤竿61の一端側に取り付けられている。
【0040】
錘保持部63は、手または足を保持させた手足保持部62との重量バランスの均衡性を担保するために錘を保持させる部位である。この実施例の錘保持部63は、錘を収納するための錘収納容器にて構成されている。錘保持部63を構成する錘収納容器としては、手提げ袋やバケツなどが好適に使用でき、錘としては、様々なサイズのペットボトルに水を入れたものなど、身近で安価に入手できるものなどを好適に使用することができる。
【0041】
また、この実施例の錘保持部63は、天秤竿61に沿って移動可能に設けられている。具体的には、錘保持部63は手提げ袋にて構成されており、手提げ袋の手持ち部内に天秤竿61を挿通して天秤竿61に吊るして配置すると共に、天秤竿61に沿って移動させて錘保持部63と手足保持部62との重量バランスの均衡性を調整することができるように構成されている。このように、錘保持部63と手足保持部62との重量バランスの均衡性は、錘保持部63を天秤竿61に沿って移動させて重量を変動させる方法と、天秤竿61の他端側の定位置に錘保持部63を配して錘を変動させる方法があり、前者の場合は、錘保持部の錘を変えることなく、錘保持部の重量を容易に変更することができ好ましい。
【0042】
吊り下げ部64は、天秤竿61を手足保持部62と錘保持部63との間で支持して天秤竿61を吊り下げるための部位であり、この実施例の吊り下げ部64はロープにて形成されている。吊り下げ部64の上端部は梁や柱などの固定構造物に取り付けてもよいし、この実施例のようにハンガーラック(ハンガースタンド)65などに取り付けてもよい。
【0043】
さらに、筋肉動作回復装置60の使用方法について説明する。
この実施例の筋肉動作回復装置60の使用方法は、天秤竿61と、天秤竿61の一端側に設けられた手足保持部62と、天秤竿61の他端側に設けられた錘保持部63と、手足保持部62と錘保持部63との間に設けられ天秤竿61を吊り下げるための吊り下げ部64とを有している筋肉動作回復装置の使用方法であって、手足保持部62に手または足を保持させるステップと、錘保持部63の重量と手または足を保持させた手足保持部62の重量とを均衡した状態に調整するステップと、手または足を昇降させるステップを有していることを特徴とする筋肉動作回復装置の使用方法である。以下、詳述するが、筋肉動作回復装置60については前述した通りであり、同一構成部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0044】
この筋肉動作回復装置60の使用する場合は、まず、手足保持部62に手または足を保持させるステップを行う。具体的には、麻痺が残った患側の例えば左足を手足保持部62に保持させる。足の場合は椅子に座った状態で保持させる。なお、麻痺した手を手足保持部62に保持させ使用する場合も本発明の範疇に包含される。
【0045】
より具体的には、この実施例の手足保持部62は、長尺状帯状体(手ぬぐい)により形成されており、椅子に座った状態で左足の膝上付近を長尺状帯状体(手ぬぐい)で環状に縛り、その状態の手足保持部62を、天秤竿61の一端側に設けられた手足保持部用フック(S字フック)14に係合させて天秤竿61の一端側に吊り下げて保持させる。
【0046】
つぎに、錘保持部63の重量と、手または足を保持させた手足保持部62の重量とを均衡した状態に調整する。すなわち、手足の力を抜いた状態で手足が上がらない程度の略均衡した状態(指一本で錘保持部63側を下げることができる程度の状態)とする。このステップは、手足の荷重を錘によりキャンセルさせ、手足に負荷を与えない状態として手足の動かし方を訓練させるために行うものである。したがって、筋力を付ける訓練ではないため、錘を重くして手足に負荷をかけることはしない。ただし、麻痺の程度が重い場合は、若干、錘保持部63側が下がる状態(手足の上昇を錘が若干助ける状態)としてもよい。
【0047】
この実施例の錘保持部63にて重さの均衡を調整するには、錘保持部63を天秤竿61に沿って移動させて重量を変動させて調整する。
【0048】
そして、手または足を昇降させるステップでは、他の体の部位に力が入らないように、また、他の体の部位を動かさないように、手足のみを10cm程度上昇させた後、下ろす。足の場合は膝を昇降させる。これを5回程度繰り返して、その間、3倍の時間の休憩を入れる。このように訓練を行いことにより、癖になった無理な代償筋の動作を解消させることができると共に、本来使用する筋肉だけを効率的に動かすことができ、麻痺を解消して筋肉動作を回復させることで次第に自然な動作を取り戻すことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 筋肉動作回復装置
2,3 滑車
4 ロープ
6 錘保持部
7 手足保持部
8 滑車保持具
9 スライドバー
10 スライダー
11 錘部
12 スライドバー支持体
13 軸部
14 手足保持部用フック
15 錘保持部用フック
61 天秤竿
62 手足保持部
63 錘保持部
64 吊り下げ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7