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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190714
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】金型装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/28 20060101AFI20221220BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20221220BHJP
   B29C 44/34 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B29C39/28
B29C44/00 A
B29C44/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099095
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
【テーマコード(参考)】
4F202
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AA42
4F202AB02
4F202AC05
4F202AG20
4F202AJ08
4F202CA01
4F202CA30
4F202CB01
4F202CL02
4F202CL33
4F202CL46
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AG20
4F214AJ08
4F214UA01
4F214UB01
4F214UD21
4F214UK31
(57)【要約】
【課題】上型および下型を有する金型装置において上型と下型との高精度な型締めを容易に実現できるようにする。
【解決手段】上型および下型を有する金型本体と、前記金型本体を下方から支持する下フレームと、前記金型本体を前記下フレームとの間で上方から挟んで保持する上フレームと、前記下フレームおよび前記上フレームそれぞれにおける前後いずれかの端部側に設けられるヒンジ部と、前記上型および前記下型のいずれか一方の型を前後それぞれの端面または左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置され、前記上型および前記下型を押圧する押圧位置と前記上型および前記下型の少なくとも他方の型から離間して前記押圧を解除する解除位置との間で変位可能な一対の変位部と、前記変位部それぞれと連結された一対の個別リンクおよび前記個別リンク両方と連結された同期リンクを有するリンク機構と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に分割された上型および下型を有し、前後方向および左右方向それぞれに拡がる金型本体と、
前後方向に延びる構造体により前記金型本体を下方から支持する下フレームと、
前後方向に延びる構造体により前記金型本体を前記下フレームとの間で上方から挟んで保持する上フレームと、
前記下フレームおよび前記上フレームそれぞれにおける前後いずれかの端部側に設けられ、この端部側において左右方向に沿って延びる軸を回転中心として、前記上フレームを前記下フレームに対して回転可能に固定するヒンジ部と、
前記上型および前記下型のいずれか一方の型を前後それぞれの端面または左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置され、前記上型および前記下型を押圧する押圧位置と前記上型および前記下型の少なくとも他方の型から離間して前記押圧を解除する解除位置との間で変位可能な一対の変位部と、
前記変位部それぞれと連結された一対の個別リンクを有し、前記個別リンクと前記変位部とが連動することによって、前記変位部を前記押圧位置および前記解除位置のいずれかへと変位させるリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、一対の前記個別リンク両方と連結された同期リンクを有し、前記同期リンクと前記個別リンクそれぞれとが連動することによって、前記個別リンクそれぞれに連結された前記変位部を前記押圧位置および前記解除位置のいずれか同じ位置に変位させる、
金型装置。
【請求項2】
前記変位部は、前記上型および前記下型のいずれか一方の型を前後それぞれの端面または左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置され、それぞれ他方の型に至るまで延びる棒状の部材であり、その延びる方向と交差しかつ前記一方の型の端面に沿った方向に延びる軸を回転中心として前記一方の型に対して回転可能に固定されることによって、前記押圧位置と前記解除位置との間で変位可能に構成されている、
請求項1に記載の金型装置。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記上フレームを前記下フレームに対して回転させるための軸体と、前記軸体の通される孔とが「すきまばめ」のはめあいとなるように構成されている、
請求項1または請求項2に記載の金型装置。
【請求項4】
前記変位部は、前記上型および前記下型のいずれか一方の型を前後それぞれの端面から挟んだ位置関係で配置された対である前後変位部と、左右それぞれの端面から挟んだ位置関係で配置された対である左右変位部とが備えられており、
前記リンク機構は、前記同期リンクが、前記前後変位部における一対の前記個別リンクおよび前記左右変位部における一対の前記個別リンクと連結されており、前記同期リンクに連結された前記個別リンクそれぞれが連動する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項5】
前記変位部は、前記上型および前記下型のいずれか一方の型を、前後それぞれの端面に沿って左右に間隔を空けた位置それぞれから挟むように配置された第1の変位部および第2の変位部が備えられている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項6】
前記変位部は、前記第1の変位部および前記第2の変位部を左右に連結する連結部材を備え、
前記リンク機構は、
前記個別リンクが前記連結部材に連結され、
前記同期リンクと前記個別リンクとが連動することによって、前記個別リンクに連結された前記連結部材を介して前記第1の変位部および前記第2の変位部を前記押圧位置および前記解除位置のいずれか同じ位置に変位させる、
請求項5に記載の金型装置。
【請求項7】
前記上型および前記下型のいずれか他方の型における端面に設けられ、前記変位部と嵌合して前記変位部を前記押圧位置に保持する保持部、を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項8】
前記上型と前記下型との型合わせ面が、前記金型本体の内部空間であるキャビティに向けて下方へ傾斜するように形成されている、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の金型装置。
【請求項9】
一端側がいずれかの前記変位部と連結されるとともに、この変位部から離れる方向に向けて他端側が延びる棒状の部材であり、この他端を介して当該金型装置外部から伝達される駆動力を前記変位部および前記個別リンクへと伝達する伝達アーム、を備える、
請求項1から8のいずれか一項に記載の金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、上下方向に分割された上型および下型を有する金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡成形型としては、上下方向に分割された上型および下型を有し、下型へと上方から上型を型閉じさせた後、両者で形成される内部空間で発泡材料を発泡させて成形品とする金型装置が用いられている。
【0003】
この種の金型装置では、下型へと上方から上型を型閉じさせるという工程上、成形品における上型と下型との境界部分にバリが発生しやすいため、このようなバリの発生を抑制するための技術が種々提案されている。例えば、上型と下型とを型閉じした構造体としての端部をクランプ機構でクランプして両者間に必要以上の隙間が発生しないようにすることで、成形品における上型と下型との境界部分にバリが発生することを防止する、といった技術である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3-15286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、上述した技術は、上型と下型とを型閉じした構造体としての端部を個別にクランプ機構でクランプして型締めするというものであり、上型と下型とを複数個所同時にクランプすることはできない。そのため、クランプ作業に時間がかかる。そして、クランプ作業が間に合わず、クランプが行われなかった箇所があると、その部分にバリが発生するという懸念もある。
【0006】
複数個所に設けたクランプ機構で上型と下型との境界部分を全周にわたってクランプできるようにしたとしても、作業者から遠いクランプ機構は、クランプ作業が困難である。
【0007】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、上下方向に分割された上型および下型を有する金型装置において、上型と下型との高精度な型締めを容易に実現できるようにするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る金型装置は、上下方向に分割された上型および下型を有し、前後方向および左右方向それぞれに拡がる金型本体と、前後方向に延びる構造体により前記金型本体を下方から支持する下フレームと、前後方向に延びる構造体により前記金型本体を前記下フレームとの間で上方から挟んで保持する上フレームと、前記下フレームおよび前記上フレームそれぞれにおける前後いずれかの端部側に設けられ、この端部側において左右方向に沿って延びる軸を回転中心として、前記上フレームを前記下フレームに対して回転可能に固定するヒンジ部と、前記上型および前記下型のいずれか一方の型を前後それぞれの端面または左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置され、前記上型および前記下型を押圧する押圧位置と前記上型および前記下型の少なくとも他方の型から離間して前記押圧を解除する解除位置との間で変位可能な一対の変位部と、前記変位部それぞれと連結された一対の個別リンクを有し、前記個別リンクと前記変位部とが連動することによって、前記変位部を前記押圧位置および前記解除位置のいずれかへと変位するリンク機構と、を備え、前記リンク機構は、一対の前記個別リンク両方と連結された同期リンクを有し、前記同期リンクと前記個別リンクそれぞれとが連動することによって、前記個別リンクそれぞれに連結された前記変位部を前記押圧位置および前記解除位置のいずれか同じ位置に変位する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、いずれかの個別リンクでこれに対応する変位部を押圧位置に変位させると、同期リンク経由で他の個別リンクが連動してこれに対応する変位部を押圧位置へと変位させることによって、一対の変位部で金型本体の対向する端部を挟み、それぞれの端部において上型および下型を押圧して型締めすることができる。その結果、上型と下型との高精度な型締めを容易に実現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の一実施形態における金型装置の側面図
図2】本開示の一実施形態における金型装置の正面図
図3】本開示の一実施形態における金型本体およびリンク機構の四面図
図4】本開示の一実施形態における金型本体の断面図
図5】本開示の一実施形態において変位部が変位する様子を示す側面図
図6A】本開示の一実施形態における金型装置の平面図
図6B】本開示の一実施形態における金型装置の側面図
図7】本開示の一実施形態における金型装置の平面図および側面図
図8】本開示の一実施形態における金型装置の平面図および正面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)全体構成
本実施形態において、金型装置1は、図1図2に示すように、金型本体10と、下フレーム20と、上フレーム30と、ヒンジ部40と、一対の変位部50と、リンク機構60と、保持部70と、伝達アーム80と、開閉アーム90と、を備える。なお、本実施形態においては、金型本体10の内部空間にて発泡材料を発泡させて成形品とする発泡成形型として用いられるものを例示する。
【0012】
金型本体10は、図3に示すように、上下方向に分割された上型11および下型13を有し、前後方向および左右方向それぞれに拡がる構造体である。これら上型11と下型13との型合わせ面15は、図4に示すように、金型本体10の内部空間であるキャビティ17に向けて下方へ傾斜するように形成されている。
【0013】
下フレーム20は、前後方向に延びる構造体であって、それぞれ前後方向に延びる一組の前後構造体21と、これら前後構造体21を前後の端部側それぞれで左右方向につなぐ一組の左右構造体23と、を有し、金型本体10を下方から支持する。
【0014】
上フレーム30は、前後方向に延びる構造体であって、それぞれ前後方向に延びる一組の前後構造体31と、これら前後構造体31を前後の端部側それぞれで左右方向につなぐ一組の左右構造体33と、を有し、これら構造体で上型11を保持する。
【0015】
ヒンジ部40は、下フレーム20および上フレーム30それぞれにおける後端部側に設けられ、この後端部側において左右方向に沿って延びる軸を回転中心として、上フレーム30を下フレーム20に対して回転可能に固定している。
【0016】
このヒンジ部40は、上フレーム30を下フレーム20に対して回転させるための軸体41と、軸体41の通される孔43とが「すきまばめ」のはめあいとなるように構成されている。ここでは、軸体41の外径に対し、孔43の内径を所定の値だけ大径とすることにより「すきまばめ」を実現している。この「所定の値」は、下型13に対して上型11を嵌合させていく過程で上型11が前後左右方向にズレることを想定し、このズレを解消できる範囲で上型11を前後左右方向へと変位できるように設定されたものである。本実施形態では0.2mm以上となる値が設定されている。
【0017】
変位部50は、下型13を前後それぞれの対向する端面から挟んだ位置関係で配置された対である前後変位部(以降、単に「変位部」ともいう)50と、左右それぞれの対向する端面から挟んだ位置関係で配置された対である左右変位部(以降、単に「変位部」ともいう)50と、が備えられている。
【0018】
また、変位部50は、下型13側からそれぞれ上型11に至るまで延びる棒状の部材であり、その延びる方向と交差しかつ下型13の端面に沿った方向(前後変位部50は左右方向、左右変位部50は前後方向)に延びる軸を回転中心として下型13に対して回転可能に固定されている。これにより、変位部50それぞれは、図5に示すように、上型11に至る端部側を上型11に接近または離間させることで、上型11および下型13を押圧する押圧位置Paと、上型11から離間して押圧位置Paでの押圧を解除する解除位置Pbと、の間で変位可能である。
【0019】
リンク機構60は、一対の変位部50において下型13側へと延びる端部それぞれと連結された一対の個別リンク61を有し、この個別リンク61に変位部50を連動させることによって、変位部50を押圧位置Paおよび解除位置Pbのいずれかへと変位させる。本実施形態では、変位部50において下型13側へと延びる端部が下型13の下方に至るまで延びており、この端部から下型13の底面に沿うように下型13の中心に向けて個別リンク61が延びている。
【0020】
また、リンク機構60は、前後変位部50における一対の個別リンク61両方、および、左右変位部50における一対の個別リンク61両方と連結された同期リンク63を有し、この同期リンク63に個別リンク61それぞれを連動させることによって、個別リンク61それぞれに連結された変位部50を押圧位置Paおよび解除位置Pbのいずれか同じ位置に変位させる(図3(c)における矢印参照)。
【0021】
本実施形態では、下型13の底面において一対の前後変位部50同士をつなぐ直線、および、一対の左右変位部50同士をつなぐ直線の交点を基準に、この交点を上下に貫く軸を回転中心として回転可能となるように固定された円板状のリンクが、同期リンク63として採用されている(図3(a)(b)における矢印参照)。
【0022】
そして、この同期リンク63には、回転中心から所定距離の半径をなす円周に沿って、個別リンク61それぞれの先端が回転可能に固定されている。ここで、前後変位部50に対応する一対の個別リンク61、および、左右変位部50に対応する一対の個別リンク61は、それぞれが円板状のリンクにおける回転中心を挟んで延びる直線に沿って並ぶ位置関係でそれぞれの先端が固定されている。
【0023】
保持部70は、上型11における端面に設けられ、変位部50と嵌合して変位部50を押圧位置Paに保持する。本実施形態では、図5に示すように、上型11における前端部のうち、変位部50の端部に押圧される領域に保持部70が設けられており、この領域で、変位部50において上型11に対応する端部に設けられた被嵌合部51と嵌合する。
【0024】
伝達アーム80は、一端側がいずれか(本実施形態では前端)の変位部50と連結され、この変位部50と離れる方向に向けて他端側が延びる棒状の部材であり、この他端を介して金型装置1外部から伝達される駆動力を変位部50および個別リンク61へと伝達する。本実施形態では、変位部50において、下型13と固定された部位よりも下方へ延びている端部側に、伝達アーム80の一端側が固定されている。
【0025】
開閉アーム90は、上フレーム30における前後構造体31に沿って延びる棒状の部材であり、前後構造体31の上方に取り付けられるとともに、前後構造体31よりも前方(前後いずれかのうち、ヒンジ部40の設けられていない側)にまで延びている。
(2)金型装置1による成形品の成形
上記のように構成された金型装置1では、まず、全ての変位部50が解除位置Pbに変位している解除状態において、開閉アーム90を上フレーム30とともに上方へと変位させることにより、この変位に従動して上フレーム30に保持された上型11が上方へ変位し、金型本体10の内部空間であるキャビティ17が開放された状態となる。
【0026】
この開閉アーム90の変位は、手動で実施してもよいが、金型装置1を製造ライン上に設置して移動させる場合であれば、人の手を介さずに実施されるように構成してもよい。例えば、金型装置1の移動方向に沿って延びるガイドレールを開閉アーム90の下方に配置し、このガイドレールにおける一部の区間を所定の高さだけ上方に変位したものとしておくことで、この区間において開閉アーム90がガイドレールにガイドされて上方へ押し上げられる、といった構成とすることが考えられる。
【0027】
続いて、この状態でキャビティ17内に発泡材料を充填した後、開閉アーム90を下方へと変位させることにより、この変位に従動して上フレーム30に保持された上型11が下方へと変位し、下型13と型閉じした状態となる。なお、発泡材料の充填は、金型本体10の構造如何によっては上型11と下型13とが型閉じした後であってもよい。
【0028】
ここでの開閉アーム90の変位についても、金型装置1を製造ライン上に設置して移動させる場合において、人の手を介さずに実施されるように構成してもよい。例えば、上述したのと同様、ガイドレールにおける一部の区間を型開き区間におけるガイドレールの高さから所定の高さだけ下方に変位したものとしておくことで、この区間を通過した開閉アーム90がガイドレールにガイドされて下方に変位する、といった構成とすることが考えられる。
【0029】
続いて、金型装置1外部からの上方へ向かう駆動力を伝達アーム80に伝達させることにより、この駆動力を受けたリンク機構60が、個別リンク61および同期リンク63を介して全ての変位部50を解除位置Pbから押圧位置Paへと同時に変位させる。
【0030】
この伝達アーム80の変位は、手動で実施してもよいが、金型装置1を製造ライン上に設置して移動させる場合であれば、人の手を介さずに実施されるように構成してもよい。例えば、金型装置1の移動方向に沿って延びるガイドレールを伝達アーム80の下方に配置し、このガイドレールにおける一部の区間を所定の高さだけ上方に変位したものとしておくことで、この区間において伝達アーム80がガイドレールにガイドされて上方へ押し上げられる、といった構成とすることが考えられる。
【0031】
この後、キャビティ17内の発泡材料が発泡するのに必要な時間が経過したら、金型装置1外部からの下方へ向かう駆動力を伝達アーム80に伝達させることにより、この駆動力を受けたリンク機構60が、個別リンク61および同期リンク63を介して全ての変位部50を押圧位置Paからへ解除位置Pbと同時に変位させる。
【0032】
ここでの伝達アーム80の変位についても、金型装置1を製造ライン上に設置して移動させる場合であれば、人の手を介さずに実施されるように構成してもよい。例えば、金型装置1の移動方向に沿って延びるガイドレールを伝達アーム80の上方に配置し、このガイドレールにおける一部の区間を所定の高さだけ下方に変位したものとしておくことで、この区間において伝達アーム80がガイドレールにガイドされて下方へ押し下げられる、といった構成とすることが考えられる。
【0033】
そして、上記と同様、開閉アーム90を上フレーム30とともに上方へと変位させることにより、この変位に従動して上フレーム30に保持された上型11が上方へ変位し、キャビティ17が開放された開放状態となった後、成形品が取り出される。
【0034】
(3)変形例
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、変位部50が金型本体10の端面ごとに1つずつ設けられている構成を例示した。しかし、変位部50としては、金型本体10の端面ごとに複数のものが設けられた構成としてもよい。
【0036】
具体的には、図6に示すように、変位部50として、上型11および下型13のいずれか一方の型を、前後それぞれの端面に沿って左右に間隔を空けた位置それぞれから挟むように配置された第1の変位部50aおよび第2の変位部50bが備えられ、さらに、第1の変位部50aおよび第2の変位部50bの両方を左右に連結する連結部材53が備えられた構成である。ここで、リンク機構60は、個別リンク61が連結部材53に連結されたものとする。
【0037】
これにより、リンク機構60は、同期リンク63と個別リンク61とが連動することによって、個別リンク61に連結された連結部材53を介して第1の変位部50aおよび第2の変位部50bを押圧位置Paおよび解除位置Pbのいずれか同じ位置に変位させることができる。
【0038】
なお、ここでは、金型本体10における前後の端面のみに変位部50を配置しているが、左右の端面のみに変位部50を配置した構成としてもよいし、前後の端面および左右の端面それぞれに変位部50を配置した構成としてもよい。いずれの端面に変位部50を配置するかは、金型本体10の開閉に際しての作業性や作業スペースなどの観点から選択することができる。
【0039】
また、上記実施形態では、変位部50が、その延びる方向と交差しかつ金型本体10の端面に沿った方向に延びる軸を回転中心として回転可能に固定された構成を例示した。しかし、変位部50は、押圧位置Paと解除位置Pbとの間で変位可能であればよく、具体的な構成はこれに限られない。
【0040】
また、上記実施形態では、特定方向に延びる個別リンク61と円板状の同期リンク63とでリンク機構60を構成したものを例示した。しかし、リンク機構60としては、各個別リンク61に連結された変位部50それぞれを押圧位置Paおよび解除位置Pbのいずれか同じ位置に変位させることができればよく、その具体的な構成はこれに限られない。
【0041】
また、上記実施形態では、リンク機構60が下型13側(下型13の下方)に設けられている構成を例示した。しかし、リンク機構60は、下型13および上型11のいずれかの側に設けられていればよく、より具体的には、上型11の上方に設けられた構成としてもよい。
【0042】
この場合、変位部50は、上型11を対向する端面から挟んだ位置関係で、それぞれ下型13に至るまで延びるように配置し、上型11に対して回転可能に固定することにより、上型11および下型13を押圧する押圧位置Paと、下型13から離間して押圧位置Paでの押圧を解除する解除位置Pbと、の間で変位可能とする。また、リンク機構60の個別リンク61は、変位部50において上型11の上方に位置する端部と連結し、上型11の上面に沿うように上型11の中心に向けて延びるように配置するとともに、同期リンク63は、上型11の上面において一対の前後変位部50同士をつなぐ直線、および、一対の左右変位部50同士をつなぐ直線の交点を上下に貫く軸を回転中心として回転可能に固定する。
【0043】
また、上記実施形態では、変位部50が、上型11および下型13のいずれか一方の型を前後それぞれの端面および左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置された構成、つまり一対の前後変位部50および一対の左右変位部50が備えられた構成を例示した。しかし、変位部50としては、これらいずれかの対のみを備えたものとしてもよい。
【0044】
このように、一対の前後変位部50および一対の左右変位部50のいずれかの対のみを備えたものとする場合、リンク機構60における同期リンク63として、円板状以外のリンクを採用してもよい。
【0045】
例えば、一対の変位部50が、上型11および下型13のいずれか一方の型を前後それぞれの端面から挟んだ位置に配置された構成としては、図7に示すように、個別リンク61を前後方向にのみ変位可能とするとともに、同期リンク63を以下に示す軸体631および一対のリンク片633により変位するものとすることが考えられる(同図(a)の矢印参照)。ここでいう軸体631は、変位部50同士をつなぐ直線の中間位置において左右方向にのみ変位可能となるように固定されるものである。そして、リンク片633は、軸体631と個別リンク61とをつなぐ部材であり、軸体631に一端側が回転可能に連結されるとともに他端側が個別リンク61の端部と回転可能に連結される。
【0046】
また、一対の変位部50が、上型11および下型13のいずれか一方の型を左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置された構成としては、図8に示すように、個別リンク61を左右方向にのみ変位可能とするとともに、同期リンク63を以下に示す第1リンク片635および一対の第2リンク片637により変位するものとすることが考えられる(同図(a)の矢印参照)。ここでいう第1リンク片635は、前後方向にのみ変位可能に固定されるものである。また、第2リンク片637は、第1リンク片635と個別リンク61とをつなぐ部材であり、その一端側が第1リンク片635に回転可能に連結されるとともに他端側が個別リンク61の端部と回転可能に連結される。この第2リンク片637と個別リンク61との連結箇所は左右方向にのみ変位可能に固定される。そして、第1リンク片635は、前後いずれかの端面に設けられた変位部50と連結され、この変位部50に同期して前後方向に変位する。
【0047】
(4)作用効果
上記実施形態では、いずれかの個別リンク61でこれに対応する変位部50を押圧位置Paに変位させると、同期リンク63経由で他の個別リンク61が連動してこれに対応する変位部50を押圧位置Paへと変位させることによって、一対の変位部50で金型本体10の対向する端部を挟み、それぞれの端部において上型11および下型13を押圧して型締めすることができる。その結果、上型11と下型13との高精度な型締めを容易に実現することができるようになる。
【0048】
また、上記実施形態では、変位部50が、上型11および下型13のいずれか一方の型(具体的には下型13)を前後それぞれの端面および左右それぞれの端面から挟んだ位置に配置され、それぞれ他方の型(具体的には上型11)に至るまで延びる棒状の部材であり、その延びる方向と交差しかつ端面に沿った方向に延びる軸を回転中心として一方の型に対して回転可能に固定されている。これにより、変位部50は、他方の型に至る端部側を他方の型に接近または離間させることで、押圧位置Paと解除位置Pbとの間で変位することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、ヒンジ部40における軸体41と孔43とが「すきまばめ」のはめあいとなるように構成されているため、下型13に対して上型11を嵌合させていく過程で、下型13に対して上型11の位置がズレたとしても、上型11側を前後左右方向へと変位させることで、このズレを解消させることができる。
【0050】
特に、上記実施形態では、上型11と下型13との型合わせ面15がキャビティ17に向けて下方へ傾斜するように形成されているため、上型11を下型13に対して嵌合させていく過程において、型合わせ面15をなす下型13の斜面に上型11がガイドされる結果、前後左右方向への特段の変位を行うことなく、ズレが修正された状態で上型11と下型13とを嵌合させることができる。
【0051】
また、上記実施形態では、一対の前後変位部50と一対の左右変位部50とが備えられ、同期リンク63が、前後変位部50における一対の個別リンク61および左右変位部50における一対の個別リンク61と連結されている。これにより、それぞれの対で金型本体10における前後の端部および左右の端部を挟み、前後左右の各端部において上型11および下型13を押圧して型締めすることができる。
【0052】
また、上記実施形態では、上型11および下型13のいずれか他方の型(具体的には下型13)における端面に設けられ、変位部50と嵌合して変位部50を押圧位置Paに保持する保持部70を備えている。これにより、押圧位置Paにまで変位させた変位部50をこの位置に保持することができる。
【0053】
また、上記実施形態では、金型装置1外部からの上方へ向かう駆動力を伝達アーム80に伝達させることにより、この駆動力を受けた個別リンク61および同期リンク63を介して全ての変位部50を解除位置Pbから押圧位置Paへと同時に変位させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1:金型装置、10:金型本体、11:上型、13:下型、15:型合わせ面、17:キャビティ、20:下フレーム、21:構造体、23:左右構造体、30:上フレーム、31:構造体、33:左右構造体、40:ヒンジ部、41:軸体、43:孔、50:変位部、50:左右変位部、50a:第1の変位部、50b:第2の変位部、51:被嵌合部、53:連結部材、60:リンク機構、61:個別リンク、63:同期リンク、70:保持部、80:伝達アーム、90:開閉アーム、631:軸体、633:リンク片、635:第1リンク片、637:第2リンク片、Pa:押圧位置、Pb:解除位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8