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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190716
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20221220BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/34
A61K8/89
A61K8/37
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099097
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(72)【発明者】
【氏名】大竹 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 宏和
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB051
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC262
4C083AC342
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC442
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD172
4C083AD192
4C083BB46
4C083CC01
4C083CC02
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE05
(57)【要約】
【課題】コクのある使用感と優れた安定性を有する、水中油型乳化化粧料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)~(C)を含む、水中油型乳化化粧料組成物。
(A)架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体(a成分)を、0.1質量%~5.0質量%、(B)高級アルコール、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、トリグリセリド、紫外線吸収剤、および炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)を、0.1質量%~49.9質量%、(C)水(c成分)を50.0質量%~99.8質量%。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(C)を含む、水中油型乳化化粧料組成物。
(A)架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体(a成分)を、
0.1質量%~5.0質量%、
(B)高級アルコール、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、トリグリセリド、紫外線吸収剤、および炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)を、0.1質量%~49.9質量%、
(C)水(c成分)を50.0質量%~99.8質量%。
【請求項2】
前記a成分が、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を、全単量体由来の構造単位100モル%に対して50モル%~100モル%含む、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料組成物に関する。より詳しくは、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体を含む化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料用途として、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を持つ重合体を使用し、各種油剤を乳化した水中油型組成物とすることが従来から行なわれている。例えば特許文献1では、ポリビニルピロリドンを含む水中油型乳化化粧料について、塗布後の肌のハリ感、しっとり感に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-154603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、ビニルピロリドンを構成単位に含有する水中油型組成物を化粧料原料として使用することが提案されている。しかしながら使用感の向上のためには、さらに保湿剤を添加する必要がある。本発明は、保湿剤などを添加することなくコクのある使用感をもち、かつ優れた安定性を有する、水中油型乳化化粧料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち本発明は、下記(A)~(C)を含む、水中油型乳化化粧料組成物である。
(A)架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体(a成分)を、0.1質量%~5.0質量%、
(B)高級アルコール、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、トリグリセリド、紫外線吸収剤、および炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)を、0.1質量%~49.9質量%、
(C)水(c成分)を50.0質量%~99.8質量%。
【発明の効果】
【0006】
本開示の化粧料用組成物は、コクのある使用感と優れた安定性を有する化粧料組成物を提供することができる。よって、例えば、スキンケア用、ヘアケア用、メイクアップ用などの化粧料用組成物として好ましく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本開示の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本開示の好ましい形態である。
【0008】
[水中油型乳化化粧料組成物]
本開示において水中油型乳化化粧料組成物は、(A)架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体(a成分)を、0.1質量%~5.0質量%、
(B)高級アルコール、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、トリグリセリド、紫外線吸収剤、および炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)を、0.1質量%~49.9質量%、(C)水(c成分)を、50.0質量%~99.8質量%を含む組成物を表す。上記組成物は水中油型乳化物である。
本開示の組成物は、上記(A)~(C)を含むことにより、コクのある使用感と優れた安定性を有する組成物となる。
【0009】
<a成分>
本開示のa成分は、架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体である。本開示の組成物はa成分を、0.1質量%~5.0質量%含む。組成物中のa成分の含有割合は、上述の通り、0.1質量%~5.0質量%であり、好ましくは0.5質量%~5.0質量%であり、より好ましくは1.0質量%~5.0質量%であり、さらに好ましくは2.0質量%~5.0質量%である。
本開示において、N-ビニルラクタム系単量体とは、少なくとも1つの炭素炭素二重結合と、N-ビニルラクタム構造とを含む化合物をいう。上記少なくとも1つの炭素炭素二重結合は、通常はラジカル重合性を有する。
N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位としては、代表的には、下記一般式(1)で表される構造単位が挙げられる。
【0010】
【化1】
【0011】
一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。mは、1~3の整数を表す。
アスタリスクは、一般式(1)で表される構造単位が結合している同種もしくは異種の他の構造単位に含まれる原子を表す。
本開示において、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位とは、N-ビニルラクタム系単量体の少なくとも一つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造単位を表す。なお、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位は、N-ビニルラクタム系単量体の少なくとも1つの炭素炭素二重結合が炭素炭素単結合に置き換わった構造と同じ構造であればよく、N-ビニルラクタム系単量体が重合することにより形成された構造単位に限定されず、例えば重合後の後反応により形成された構造単位であってもよい。
N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を形成させ得る単量体としては、例えば、下記一般式(2)で表されるN-ビニルラクタム系単量体が挙げられる。
【0012】
【化2】
【0013】
一般式(2)中、Rは、水素原子またはメチル基を表す。mは、1~3の整数を表す。
一般式(2)で表される単量体としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。一般式(2)で表される単量体としては、好ましくは、N-ビニルピロリドンである。
a成分は、架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を全単量体由来の構造単位100モル%に対して、50モル%~100モル%含みことが好ましく、より好ましくは60モル%~100モル%含むことがより好ましく、さらに好ましくは70モル%~100モル%含むことがさらに好ましい。a成分に含まれるN-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0014】
a成分は、架橋構造を有する。架橋構造は、1分子あたりに少なくとも2個の重合性二重結合基を有する架橋剤に由来する構造、及び又は、重合体の主鎖または側鎖同士が反応してできる構造である。
上記架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を使用できる。例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、(ポリ)プロピレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロ-ルプロパントリ(メタ)アクリレ-ト、トリメチロ-ルプロパンジ(メタ)アクリレ-ト、グリセリントリ(メタ)アクリレ-ト、グリセリンアクリレ-トメタクリレ-ト、エチレンオキサイド変性トリメチロ-ルプロパントリ(メタ)アクリレ-ト、ペンタエリスリト-ルテトラ(メタ)アクリレ-ト、ペンタエリスリト-ルトリ(メタ)アクリレ-ト、ジペンタエリスリト-ルヘキサ(メタ)アクリレ-ト、トリアリルシアヌレ-ト(シアヌル酸トリアリル)、トリアリルイソシアヌレ-ト、トリアリルホスフェ-ト、トリアリルアミン、ペンタエリスリト-ルテトラアリルエ-テル、ペンタエリスリト-ルトリアリルエ-テル、ペンタエリスリト-ルジアリルエ-テル、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルエ-テル、ジビニルケトン、トリビニルベンゼン、トリレンジイソシアネ-ト、ヘキサメチレンジイソシアネ-ト、炭酸ジアリル、1,3-ビス(アリルオキシ)-2-プロパノール、ジビニルエチレン尿素、1,4-ブチレンビス(N-ビニルアミド)及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロース等が挙げられる。
【0015】
上記架橋剤の中でも、N-ビニルラクタム系単量体との重合性の観点から、アリル基を2個以上有する化合物を使用することが好ましい。具体的には、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アリルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、炭酸ジアリル、1,4-ブチレンビス(N-ビニルアミド)及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースが好ましく、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースがより好ましい。特に、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)アリルエーテル及び(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ、ヘプタ、オクタ)アリルスクロースは、安全性がより高いため、化粧品用途に好適に用いることができる。上記架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0016】
a成分中の架橋剤由来の構造単位の含有割合は、全単量体由来の構造単位100モル%に対して、好ましくは0.001モル%~10モル%であり、より好ましくは0.005モル%~5モル%であり、さらに好ましくは0.01モル%~1モル%であり、最も好ましくは0.05モル%~0.8モル%である。
【0017】
a成分は、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位以外のその他の構造単位を有していてもよい。その他の構造単位は、N-ビニルラクタム系単量体以外のその他の単量体由来の構造単位である。その他の構造単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。その他の単量体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。その他の単量体としては、N-ビニルラクタム系単量体と共重合できるものであれば、任意の適切な単量体を用いることが出来る。例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体、およびその塩、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト等の(メタ)アクリル酸エステル類、3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコ-ル、イソプレノ-ル、およびこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加した不飽和アルコ-ル類、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾ-ル等の塩基性不飽和単量体、およびその塩または第4級化物、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルオキサゾリドン等のビニルアミド類、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルエチレンカ-ボネ-ト、およびその誘導体、スチレン、およびその誘導体、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、およびその誘導体;3-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、およびこれらの塩等のビニルスルホン酸及びその誘導体、メチルビニルエ-テル、エチルビニルエ-テル、ブチルビニルエ-テル等のビニルエ-テル類、エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類等などが挙げられる。その他の単量体としては、N-ビニルラクタム系単量体との共重合性等の点から、好ましくは(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド誘導体類である。
【0018】
a成分中のその他の単量体由来の構造単位の含有割合は、本発明の効果をより発現させ得る点で、全単量体由来の構造単位100モル%に対して、好ましくは0モル%~50モル%であり、好ましくは0モル%~40モル%であり、より好ましくは0モル%~30モル%である。
【0019】
<a成分の製造方法>
a成分の製造方法は、例えば、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分を重合反応させる工程を含むことが好ましい。例えば、バルク重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、沈殿重合法などが挙げられる。これらの重合方法の中でも、溶液重合法、沈殿重合法が好ましく、沈殿重合法がより好ましい。
【0020】
<沈殿重合法を用いた製造方法>
本開示において、沈殿重合法とは、単量体成分は重合溶媒と相溶、溶解するが、生成した重合体が重合溶媒に溶解しない重合系における重合法である。この重合法においては、重合反応の進行と共に、生成した重合体が析出(沈殿)する。析出した重合体は、単量体成分で膨潤しており、重合反応は、溶媒中と、ポリマ-近傍において、それぞれ進行する。
沈殿重合法は、例えば、N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分と、重合開始剤と、を別個に反応媒体中に滴下する滴下工程を含む重合方法である。N-ビニルラクタム系単量体を含む単量体成分と、重合開始剤は、それぞれ、溶剤との混合溶液であってもよい。滴下工程においては、好ましくは、重合開始剤を単量体成分の滴下時間より長い時間で滴下する。沈殿重合法で使用する重合溶媒としては、例えば、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤が挙げられる。重合開始剤は、重合溶媒と単量体成分の両方に溶解可能であることが好ましい。重合開始剤として、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合開始剤を採用し得る。このような重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩類、過酸化水素、有機過酸化物、アゾ化合物、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤などが挙げられ、好ましくは、有機過酸化物とアゾ化合物である。
【0021】
特に好ましくは、有機過酸化物系開始剤では、t‐ヘキシルパーオキシピバレート、t‐ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5‐トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジサクシニックアシッドパーオキシドで、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(2‐エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ヘキシルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジ(3‐メチルベンゾイル)パーオキシド,ベンゾイル(3‐メチルベンゾイル)パーオキシド,ジベンゾイルパーオキシドの混合物、ジベンゾイルパーオキシド、1,1‐ジ(t‐ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2‐ジ(4,4‐ジ‐(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t‐ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキシルモノカーボネート、t‐ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、2,2‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ブタン、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、n‐ブチル 4,4,‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2‐t‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ‐t‐ヘキシルパーオキシド、2,5‐ジメチル2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキシドなどが挙げられ、
【0022】
アゾ系重合開始剤としては、2,2‐アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2‘‐アゾビス(2,4‐ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2‘‐アゾビス(2‐メチルプロピオネート)、2,2‘‐アゾビス(2‐メチルブチロニトリル)、1、1‘‐アゾビス(シクロヘキサン‐1‐カーボニトリル)、2,2‘‐アゾビス(N‐ブチル‐2‐メチルプロピオンアミド、ジメチル1,1‐アゾビス(1‐シクロヘキサンカルボキシレート)などが挙げられる。重合開始剤は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0023】
重合開始剤の使用量は、全単量体と架橋剤との合計量1モルに対して、好ましくは0.01g~10gであり、より好ましくは0.05g~5gであり、さらに好ましくは0.1g~2gである。この範囲であれば、得られる重合体に含まれる未反応の単量体や架橋剤の割合を十分に少なくすることができる。
沈殿重合法を行なう際の重合温度は、重合開始剤の10時間半減期温度に対し、+15℃以上+30℃以下であることが好ましい。重合温度は単量体成分を滴下している間の反応液の温度であり、反応中に変動する場合は、最大温度と最低温度の中間の値とする。10時間半減期温度とは、重合開始剤の濃度が反応開始から10時間後に初期値の1/2となる温度である。
【0024】
沈殿重合法で重合を行うことで、非常に小さい1次粒子が緩やかに凝集した球形物を含む重合体が好ましく得られる。この球形物は容易に粉砕することが出来、速やかに1次粒子となって分散出来る。したがって、凝集した球形物を溶液に投入すれば、短時間で均一な分散液またはゲル状物を得ることができる。
【0025】
沈殿重合法において、重合工程に加えて適切な他の工程を含んでいてもよい。このような他の工程としては、例えば、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、造粒工程、後架橋工程などが挙げられる。沈殿重合法においては、乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥温度は、80℃~250℃の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは110℃~220℃、さらに好ましくは120℃~200℃である。乾燥方法としては、乾燥温度が上記範囲内であれば、任意の適切な乾燥方法を採用し得る。例えば、熱風乾燥、無風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などが挙げられる。これらの乾燥方法の中でも、熱風乾燥、減圧乾燥を用いることが好ましい。乾燥は、一定温度で乾燥してもよく、温度を変化させて乾燥してもよいが、実質的に全ての乾燥工程において上記の温度範囲内でなされることが好ましい。なお、乾燥温度は熱媒温度もしくは材料温度で規定する。
【0026】
本発明の効果をより発現させ得る点で、沈殿重合法においては、粉砕工程を設けることが好ましい。粉砕工程は、粉砕機を使用して行うことが好ましい。沈殿重合法が乾燥工程を含む場合、粉砕工程は、乾燥工程の前、中、後のいずれに行ってもよく、好ましくは乾燥工程の後である。上述の通り、沈殿重合法によれば、非常に小さい1次粒子が緩やかに凝集した球形物を含む重合体が好ましく得られ、非常に容易に粉砕され得るため、粉砕のために特殊な粉砕機が不要であるという優れた効果がある。したがって、粉砕機は、簡易な粉砕機を採用することができ、例えば、ロールミルのようなロール式粉砕機、ハンマーミルのようなハンマー式粉砕機、衝撃式粉砕機、カッターミル、ターボグラインダー、ボールミル、フラッシュミル、ジェットミルなどが挙げられる。これらの中でも、粒度分布をより制御する場合にはロールミルを用いることが好ましい。粒度分布制御のために、連続して2回以上粉砕してもよい。また2回以上粉砕する場合には、それぞれの粉砕機は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
沈殿重合法で得られる重合体を特定の粒度分布に制御するために、分級工程や造粒工程を設けてもよい。分級工程においては、任意の適切な分級機を採用し得る。このような分級機としては、例えば、振動篩(アンバランスウェイト駆動式、共振式、振動モ-タ式、電磁式、円型振動式等)、面内運動篩(水平運動式、水平円-直線運動式、3次元円運動式等)、可動網式篩、強制攪拌式篩、網面振動式篩、風力篩、音波篩等などが挙げられる。
【0028】
<溶液重合法を用いた製造方法>
本開示において、溶液重合法とは、単量体成分が重合溶媒と相溶、溶解し、生成した重合体は重合溶媒で膨潤し増粘状態となる重合方法である。溶媒としては、例えば、水およびアルコ-ルからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。アルコ-ルとしては、例えば、メチルアルコ-ル、エチルアルコ-ル、イソプロピルアルコ-ル、n-ブチルアルコ-ル、ジエチレングリコ-ルなどが挙げられる。溶液重合法において、重合反応における反応温度や圧力等の反応条件としては、特に制限はないが、反応温度は20~150℃とすることが好ましく、反応系内の圧力は、常圧または減圧とすることが好ましい。
【0029】
溶液重合法において、単量体成分の重合を開始する手段としては、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法などが挙げられる。重合開始剤としては、例えば、過酸化水素、t-ブチルヒドロパ-オキシド等の過酸化物、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-フェニルプロリオンアミジン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕、2,2’-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕2硫酸塩水和物、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタ酸)、2,2’-アゾビス〔N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン〕n水和物、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、アスコルビン酸と過酸化水素、スルホキシル酸ナトリウムとt-ブチルヒドロパ-オキシド、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤などが挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。重合開始剤の使用量としては、例えば、全単量体(N-ビニルラクタム系単量体およびその他の単量体の合計)および架橋剤の合計100質量%に対して、0.002質量%~15質量%が好ましく、0.01質量%~5質量%がさらに好ましい。
【0030】
溶液重合法においては、重合反応の促進やN-ビニルラクタム系単量体の加水分解を防止するなどの目的で、塩基性pH調節剤を使用してもよい。例えば、重合初期より系内に仕込んでおいてもよく、重合中に逐次添加してもよい。塩基性pH調節剤としては、例えば、アンモニア、モノエタノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、トリエタノ-ルアミン等の脂肪族アミン、アニリン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。これらの中でも、アンモニア、モノエタノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。塩基性pH調節剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。塩基性pH調節剤の使用量としては、例えば、重合時の溶液が、好ましくは5~10のpH領域、より好ましくは7~9のpH領域となるように使用するのがよい。
【0031】
溶液重合法においては、重合反応の促進などの目的で、遷移金属塩を使用してもよい。遷移金属塩としては、例えば、銅、鉄、コバルト、ニッケル等のカルボン酸塩や塩化物などが挙げられる。遷移金属塩は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。遷移金属塩を用いる場合、その使用量としては、例えば、単量体成分に対して、質量比で0.1ppb~20000ppbが好ましく、1ppb~5000ppbがさらに好ましい。溶液重合法においては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の添加剤を用いてもよい。このような他の添加剤としては、例えば、連鎖移動剤、緩衝剤などが挙げられる。
【0032】
溶液重合法において、重合反応後、得られた重合体に有機酸を添加する工程を含むことが好ましい。得られた重合体に有機酸を添加することにより、重合体中の残存N-ビニルラクタム系単量体の量を低減することができる。例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基、硫酸基、リン酸基等の酸基を有する有機化合物が挙げられる。このような有機酸としては、例えば、マロン酸、しゅう酸、コハク酸、アスパラギン酸、クエン酸、グルタミン酸、フマル酸、リンゴ酸、マレイン酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、プロピオン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、グリコ-ル酸、サリチル酸、乳酸、L-アスコルビン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ラウリルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンホスホン酸、ラウリル硫酸などが挙げられる。有機酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。有機酸の使用量としては、例えば、反応工程で仕込んだN-ビニルラクタム系単量体100質量%に対して、好ましくは0.01質量%~5質量%であり、より好ましくは0.05質量%~3質量%であり、さらに好ましくは0.1質量%~1質量%である。有機酸の使用量が上記範囲内にあれば、得られる重合体中の残存N-ビニルラクタム系単量体の量を低減しつつ、有機酸(塩)の量も低減することができる。なお、有機酸(塩)は、有機酸および/または有機酸の塩を表し、有機酸の塩は、有機酸を中和する際に添加する塩基と有機酸との中和物である。このような塩基としては、例えば、アンモニア;モノエタノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、トリエタノ-ルアミン等の脂肪族アミン;アニリン等の芳香族アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物などが挙げられる。これらの塩基の中でも、好ましくは、アンモニア、脂肪族アミン、アルカリ金属の水酸化物であり、より好ましくは、アンモニア、モノエタノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。このような塩基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0033】
溶液重合法においては、重合反応後に、重合体を熟成する工程(熟成工程)を含むことが好ましい。熟成工程における温度としては、好ましくは70℃~150℃であり、より好ましくは80℃~100℃である。熟成工程における熟成時間は、好ましくは10分~5時間であり、より好ましくは30分~3時間である。熟成工程は、重合体を解砕しながら行うことが好ましい。重合体の解砕は、通常用いられる方法により行うことができ、例えば、ニ-ダ-を用いて解砕する方法などが挙げられる。
【0034】
溶液重合法においては、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、造粒工程等である。乾燥と重合は同時に行ってもよく、重合時の乾燥と重合後の乾燥とを併用してもよい。好ましくは、重合後に乾燥装置を用いて乾燥する乾燥工程を行うことである。乾燥工程の温度は、好ましくは、乾燥工程の全体時間の50%以上の時間において80℃~250℃とすることであり、好ましくは80℃~250℃であり、より好ましくは110℃~220℃であり、さらに好ましくは120℃~200℃である。また、乾燥は、一定温度で乾燥してもよく、温度を変化させて乾燥してもよい。なお、乾燥温度は、熱媒温度で規定すればよく、熱媒温度で規定できない場合は材料温度で規定すればよい。
【0035】
乾燥工程における乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥、無風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などが挙げられる。これらの中でも、熱風乾燥を用いることがより好ましい。熱風乾燥を用いる場合の乾燥風量は、好ましくは0.01m/sec~10m/secであり、より好ましくは0.1m/sec~5m/secである。粉砕工程においては、粉砕機を使用することが好ましい。溶液重合法において、乾燥工程を含む場合、粉砕工程は、乾燥工程の前、中、後のいずれに行ってもよい。粉砕工程は、好ましくは、乾燥工程の後に行う。
粉砕機としては<沈殿重合法>の項での説明をそのまま援用し得る。
分級工程や造粒工程については、<沈殿重合法>の項での説明をそのまま援用し得る。
【0036】
<b成分>
本開示のb成分は、高級アルコール、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、トリグリセリド、紫外線吸収剤、および炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種である。本開示の組成物はb成分を、0.1質量%~49.9質量%含む。組成物中のb成分の含有割合は、上述の通り、0.1質量%~49.9質量%であり、好ましくは1.0質量%~40.0質量%であり、より好ましくは3.0質量%~30.0質量%であり、さらに好ましくは5.0質量%~25.0質量%である。
b成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0037】
<高級アルコール>
本開示において、高級アルコールは、当業者一般に「高級アルコール」として認識されているものを意味する。例えば、炭素数が6個以上の1価アルコールである。高級アルコールは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
高級アルコールは例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、カプリリアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ヘキシルデカノール、シトステロール、コレステロール、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、バチルアルコール、カプリリルアルコール、ラノリンアルコールなどが挙げられる。
【0038】
<シリコーン油>
本開示において、シリコーン油は、当業者一般に「シリコーン油」として認識されているものを意味する。シリコーン油は、一般的にはシロキサン結合による主骨格を有する合成高分子化合物であり、重合度が比較的低い油状物質である。シリコーン油は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
シリコーン油としては、例えば、シクロペンタシロキサン、ジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG10-ジメチコン、カプリリルメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/15ジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/23ジメチコン、PEG/PPG-23/6ジメチコン、PEG/PPG-30/10ジメチコン、PEG-7アモジメチコン、PEG-7ジメチコン、PEG-8ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-17ジメチコン、PEG-7メチルエーテルジメチコン、PEG-10メチルエーテルジメチコン、PEG-12メチルエーテルラウロキシPEG-5アミドプロピルジメチコン、アミノプロピルジメチコン、アミノプロピルフェニルトリメチコン、アモジメチコン、アルキル(C20-24)ジメチコン、アルキル(C24-28)ジメチコン、アルキル(C30-45)ジメチコン、アルキル(C30-45)メチコン、カプリリルトリメチコン、シクロヘキサシロキサン、シクロメチコン、ジメチコノール、ステアリルジメチコン、ステアロキシジメチコン、ステアロキシトリメチルシラン、セチルジメチコン、セテアリルメチコン、トリシロキサン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン、ビスフェニルプロピルジメチコン、メチコンなどが挙げられる。
【0039】
<エステル油>
本開示において、エステル油は、当業者一般に「エステル油」として認識されているものを意味する。エステル油は、例えば高級脂肪酸と高級アルコールのモノエステル(合成ロウともいう。)、高級脂肪酸とグリセリンのトリエステル(合成油脂ともいう。)、ジカルボン酸と高級アルコールのジエステルである。エステル油は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
エステル油としては、例えば、リンゴ酸ジイソステアリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、乳酸オクチルドデシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸イソセチル、セバシン酸ジオクチル、リシノレイン酸セチル、リシノレイン酸オクチルドデシル、チオジプロピオン酸ジラウリル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリエチルヘキノイン、クエン酸トリエチルなどが挙げられる。
【0040】
<脂肪酸>
本開示において、脂肪酸は、当業者一般に「脂肪酸」として認識されているものを意味する。脂肪酸は、RCOOH(Rは飽和または不飽和の炭化水素鎖)の一般式で表される化合物である。脂肪酸は動植物油脂を精製分留した後、分解される動植物由来と、石油を原料とする合成脂肪酸がある。脂肪酸は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などが挙げられる。
【0041】
<トリグリセリド>
本開示において、トリグリセリドは、当業者一般に「トリグリセリド」として認識されているものを意味する。トリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3分子の脂肪酸がエステル結合したアシルグリセロールで、単純脂質に属する中性脂肪の1つである。トリグリセリドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。トリグリセリドとしては、例えば、トリエチルヘキサノイン、トリカプリリン、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルなどが挙げられる。
トリグリセリドは、植物油に含んでいるものであってもよい。アーモンド油、アストロカリウムムルムル種子脂、アフリカマンゴノキ核脂、アボガド油、アマナズナ種子油、アマ二油、アルガニアスピノサ核油、アルモンド油、アンズ核油、エゴマ油、オリーブ果実油、オリーブ油、カカオ脂、カニナバラ果実油、カノラ油、キョウニン油、ククイナッツ油、クロフサスグリ種子油、コーン油、ゴマ油、コムギ胚芽油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ザクロ種子油、サザンカ油、サフラワー油、シア脂、スクレロカリアビレア種子油、ダイズ油、チャ実油、月見草油、ツバキ種子油、ツバキ油、テオブロマグランジフロルム種子脂、トウモロコシ胚芽油、ナタネ油、パーシック油、パーム核油、パーム油、ピーナッツ油、ピスタシオ種子油、ヒマシ油、ヒマワリ種子油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミア種子油、マカデミアナッツ油、マンゴー種子油、メドウフォーム油、モモ核油、ヤシ油、ラッカセイ油、ルリジサ種子油、ローズヒップ油、ワサビノキ種子油などが挙げられる。
【0042】
<紫外線吸収剤>
本開示において、紫外線吸収剤は、当業者一般に「紫外線吸収剤」として認識されているものを意味する。紫外線吸収剤は、紫外線吸収剤そのものが紫外線を吸収し、肌への紫外線の影響を防ぐ。例えば、メトキシケイヒ酸オクチル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オクチルトリアゾン、オクトクリレン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンなどが挙げられる。
【0043】
<炭化水素油>
本開示において、炭化水素油は、当業者一般に「炭化水素油」として認識されているものを意味する。炭化水素油は、例えば石油から分離精製されるミネラルオイル、ワセリンなど、石油由来原料から合成される鉱物油など、動植物由来であるオイルなどがある。炭化水素油は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。炭化水素油は液状であることが好ましい。炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソドデカン、水添ポリイソブテン、イソエイコサン、ヘキサデカン、イソヘキサデカンなどが挙げられる。液状の炭化水素油とは、常温(代表的には、23℃)で液体状態にある炭化水素油をいい、具体的には、好ましくは、炭素数が15個~200個の炭化水素油である。
【0044】
<c成分>
本開示のc成分は水である。本開示において水は化粧品用途において通常使用されるものであり、例えば、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、軟水、硬水、天然水、海洋深層水、アルカリイオン水、その他各種方法によって得られる精製水等が挙げられる。本開示の組成物はc成分を、50.0質量%~99.8質量%含む。組成物中のc成分の含有割合は、上述の通り、50.0質量%~99.8質量%であり、好ましくは55.0質量%~99.0質量%であり、より好ましくは58.0質量%~95.0質量%であり、さらに好ましくは60.0質量%~90.0質量%である。
【0045】
<他の成分>
本開示の組成物は、a成分、b成分、およびc成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。他の成分としては、例えば、a成分に該当しない重合体、炭素数が5個以下の1価アルコールである低級アルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングルコール、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール、プロピオン酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、チオグリコール酸などなどの有機酸、その他化粧品に通常使用されるアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ゲル化剤、増粘剤、粉体、酸化防止剤、抗炎症剤、殺菌剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、香料、着色料、美容成分などが挙げられる。
組成物中の他の成分の含有割合は、好ましくは0質量%~49.8質量%であり、より好ましくは0質量%~44.8質量%であり、さらに好ましくは0質量%~41.8質量%であり、特に好ましくは0質量%~39.8質量%である。
【0046】
[本開示の水中油型乳化組成物の物性等]
本開示の水中油型乳化組成物は、化粧料用途において、適切に使用できる粘度であることが好ましく、100mPa・s以上、300000mPa・s以下が好ましい。上記範囲であると、保存安定性、使用感に優れる、水中油型乳化組成物として適切に使用することが出来る。
【0047】
[本開示の水中油型乳化組成物の製造方法]
本開示の水中油型乳化組成物等の製造方法は、特に制限されず、(A)架橋構造を有する、N-ビニルラクタム系単量体由来の構造単位を含む重合体(a成分)を、0.1質量%~5.0質量%、(B)高級アルコール、シリコーン油、エステル油、脂肪酸、トリグリセリド、紫外線吸収剤、および炭化水素油からなる群から選ばれる少なくとも1種(b成分)を、0.1質量%~49.9質量%、(C)水を50.0質量%~99.8質量%、を混合することで製造することが出来る。混合する装置は特に限定されず、通常工業用途で使用される装置、各種攪拌、各種混合装置などが使用出来る。
【0048】
[本開示の水中油型乳化組成物の用途]
本開示の水中油型乳化組成物は、化粧料用途に使用可能であり、コクのある使用感に優れ、保存安定性にすぐれるため、皮膚化粧料、皮膚外用剤、頭髪化粧料などに用いる化粧料用組成物として好ましく適用できる。本開示における化粧料は人体の皮膚に直接塗布する化粧品、医薬部外品を意味し、具体的には、皮膚化粧料、皮膚外用剤、皮膚洗浄剤、頭髪化粧料、頭髪外用剤、頭髪洗浄剤、メイクアップ化粧料等が含まれる。
特に、本開示の水中油型乳化組成物は、使用感に優れることから、スキンケア化粧料用途や、ヘアケア化粧料用途、ボディ化粧料用途、メイクアップ化粧料用途等に好ましく適用できる。
【実施例0049】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0050】
〔製造例1〕:N-ビニルラクタム系重合体の製造
攪拌装置(パドル翼タイプ)、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた容量2000mlのフラスコに、ヘプタン:900gを初期仕込みし、窒素雰囲気下で100℃のオイルバスで加熱した。フラスコ内の温度が一定になった後、滴下成分1(N-ビニルピロリドン:250g、アクリル酸:0.025g、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル:0.5g)および滴下成分2(t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(アルケマ吉富株式会社製、ルペロックス575):2.0g、ヘプタン:50g)の投入を開始した。滴下成分1は4時間、滴下成分2は5時間かけて一定速度で計量投入した。滴下開始から30分程度で、重合体の析出が始まり次第に析出量が増えていった。滴下成分2の投入終了後、さらに1.0時間加熱を継続した後、フラスコを冷却し反応を終了した。フラスコ内の温度は、94℃から100℃の間であり、概ね時間の経過と共に上昇する傾向であった(中間値は97℃)。続いて、反応液をろ過して重合体である沈殿物を回収し、100℃で4時間減圧乾燥を行い、架橋体を得た。架橋体は、適度な大きさの球形物として得られたため、短時間でデカンテーションとろ過が終了し、粉体を取り扱う際に気流や静電気の影響が小さく、取り扱いが容易であった。マイクロスコープで観察すると、大部分が直径約200μm~600μmの球形であり、球形物の平均粒子径は420μmであった。
【0051】
得られた球形物の全量を、大阪ケミカル株式会社製のラボ用粉砕機OML-1によって粉砕すると、20秒程度で容易に粉砕され、きめの細かい均一な架橋体として、N-ビニルラクタム系重合体が粉体として得られた。得られたN-ビニルラクタム系重合体の固形分は99%であった。得られたN-ビニルラクタム系重合体の、0.01MPaの減圧下において100℃で1時間乾燥したときの平均粒子径は17μmであり、脱イオン水を用いて膨潤させたときの膨潤体の平均粒子径は2μmであった。なお、膨潤体の平均粒子径が粉体の平均粒子径より小さい理由は、粉体が水を吸収して膨潤すると同時に、凝集がほぐれて1次粒子に近付いたためと考えられる。
【0052】
<0.02MPa以下の減圧下において100℃で1時間乾燥したときの平均粒子径の測定>
乾式の粒子径分布測定装置(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製、型式:マスターサイザー3000、乾式)により測定した体積分布の累積50%値を、0.02MPa以下の減圧下において100℃で1時間乾燥したときの平均粒子径とした。測定条件を以下に示す。
【0053】
(測定条件)
乾式レーザー回折散乱法
分散圧力:2.0bar
ベンチュリ:HEベンチュリ
粒子屈折率:1.52
粒子吸収率:0.01
粒子密度:1.05g/cm
粒子形状:非球形
溶媒名:空気(AIR)
測定範囲:0.1μm~3500μm
【0054】
<脱イオン水を用いて膨潤させたときの膨潤体の平均粒子径の測定>
湿式の粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製、型式:Partica LA-950V2、湿式)により測定した体積分布の累積50%値を、膨潤体の平均粒子径とした。測定条件を以下に示す。
【0055】
(測定条件)
膨潤体屈折率:1.5
分散媒:脱イオン水
測定範囲:0.01μm~3000μm
【0056】
<重合体の固形分測定>
底面の直径が約5cmの秤量缶(質量W1g)に約1gの重合体をはかりとり(質量W2g)、150℃の定温乾燥機中において、1時間静置し、乾燥させた。乾燥後の秤量缶と重合体の合計(質量W3g)を測定し、下記式より固形分を求めた。
固形分(質量%)=[(W3-W1)/W2]×100
【0057】
<乳化粒子の細かさ、増粘性、および使用感の評価用の試料の作製方法(実施例、比較例)>
【0058】
表1、表2に示す配合にて、下記実施例、比較例について実施した。
(実施例1~12、比較例1~11)
(1)ビーカー中で、a成分とc成分を均一に分散させた。
(2)a成分が膨潤するまで攪拌した。
(3)ホモミキサーを用いて上記(2)で得られたものにb成分を均一に分散させた。
【0059】
表3に示す配合にて、下記実施例、比較例について実施した。
(実施例17~26、比較例12~13)
(1)ビーカー中で、P成分とQ成分を均一に分散させた。
(2)Q成分が膨潤するまで攪拌した。
(3)ホモミキサーを用いて上記(2)で得られたものにR成分を均一に分散させた。
(4)上記(3)で得られた乳化液に、S成分を加え中和した。
(5)ビーカー中で、T成分を混合した。
(6)上記(4)で得られた乳化液に、上記(5)を均一に分散させた。
(7)上記(5)にU成分を混合した。
【0060】
表4に示す配合にて、下記実施例、比較例について実施した。
(実施例27~32、比較例14~17)
(1)ビーカー中で、V成分(複数ある場合は全て)を80℃に加熱混合した。
(2)ビーカー中で、W成分(複数ある場合は全て)を80℃に加熱混合した。
(3)ホモミキサーを用いて上記(1)で得られたものに上記(2)を均一に分散させた。
(4)上記(3)で得られた乳化液に、X成分を加え中和した。
(5)50℃まで空冷で冷却した。
(6)ビーカー中で、Y成分(複数ある場合は全て)を混合した。
(7)上記(5)で得られた乳化液に、上記(6)を均一に分散させた。
(8)室温まで空冷で冷却した。
【0061】
実施例、比較例について下記評価を行ない、結果を表1から表3に示した。
<乳化粒子の細かさの評価>
顕微鏡により観察して下記の基準で評価した。
◎:細かい乳化粒子しかない。
〇:細かい乳化粒子が多い。
<増粘性の評価>
目視により観察して下記の基準で評価した。
〇:液面が動かない。
△:液面がゆっくりと動く。
×:液面が動く。
<使用感の評価>
肌に試料を0.5g塗布し、使用感を下記の基準にて評価した。
◎:コクがあり乾燥後にサラサラした。
〇:コクがあるが、弱いべたつきがある。
△:コクがあるが、べたつく。
×:コクがない。
<pH測定>
水中油型乳化化粧料組成物をUMサンプル瓶に分取し、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.54 pH測定法に記載の方法によりpHを測定した。
―:目視により分離を確認しており、測定不可と判断した。
<粘度測定>
水中油型乳化化粧料組成物をUMサンプル瓶に分取し、第十七改正日本薬局方 一般試験法 2.53 粘度測定法に記載の第2法により粘度を測定した。
×:目視により分離しており、測定不可と判断した。
<保存安定性の測定>
水中油型乳化化粧料組成物をUMサンプル瓶に分取し、25℃、50℃で4週間保存後のpH、粘度を測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
PVP K-90(表示名称 PVP:日本触媒株式会社製)
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
Carbopol、Pemulenは、Lubrizol Advanced Materials, Inc.の登録商標。
Carbopol ETD2050(表示名称 カルボマー:Lubrizol Advanced Materials, Inc.製)
Pemulen EZ‐4U(表示名称(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10‐30))クロスポリマー:Lubrizol Advanced Materials, Inc.製)
【0067】
【表4】
【0068】
レオドール、カルコールは花王の登録商標。ZemeaはDupont Tate & Lyle Bio Productsの登録商標。グルカムはLubrizol Advanced Materials, Inc.の登録商標。
レオドールTW‐S120V(表示名称 ポリソルベート60:花王株式会社製)
レオドールMS‐165V(表示名称 ステアリン酸グリセリル(SE):花王株式会社製)
レオドールAS‐10V(表示名称 ステアリン酸ソルビタン:花王株式会社製)
カルコール8098(表示名称 ステアリルアルコール:花王株式会社製)
Schercemol CATC CN Ester(表示名称 (ステアリン酸/カプリン酸/カプリル酸/アジピン酸)ペンタエリスリチル:Lubrizol Advanced Materials, Inc.製)
フィトスクワラン(表示名称 スクワラン:SOPHIM SAS製)
O.D.O.(表示名称 トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル:日清オイリオグループ株式会社製)
KF-96A-20cs(表示名称 ジメチコン:信越化学工業株式会社製)
Zemea Select プロパンジオール(表示名称 プロパンジオール:Dupont Tate & Lyle Bio Products製)
Carbopol Ultrez 30(表示名称 カルボマー:Lubrizol Advanced Materials, Inc.製)
グルカムE-10J(表示名称 メチルグルセス‐10:Lubrizol Advanced Materials, Inc.製)
【0069】
表1から表4の結果に示すとおり、a成分、b成分、c成分からなる水中油型組成物は、コクのある使用感に優れ、かつ保存安定性に優れることがわかった。