(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190717
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】検出装置および検出方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20221220BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20221220BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
H02S50/00
G01R31/12 A
G01R31/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099099
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】森下 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 芳久
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
5F151
【Fターム(参考)】
2G014AA15
2G014AB29
2G014AB33
2G014AC15
2G015AA26
2G015BA04
2G015BA06
2G015CA01
5F151KA08
(57)【要約】
【課題】太陽光発電システムの状態をより正確に判定する。
【解決手段】検出装置は、太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得する取得部と、前記取得部により取得された複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、
前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得する取得部と、
前記取得部により取得された複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備える、検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記対象箱の前記計測値と、前記他の接続箱の前記計測値との差が所定の第1閾値未満である場合、アーク放電が発生していないと判定し、前記差が前記第1閾値以上の第2閾値以上である場合、アーク放電が発生していると判定する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記計測値の比較結果が所定条件を満たす場合、さらに、前記対象箱に接続されている複数の前記発電部の同じ時刻における前記計測結果同士を比較し、比較結果に基づいて、前記発電部と前記接続箱との間でアーク放電が発生したか、または前記接続箱と前記電力変換装置との間でアーク放電が発生したかを判定する、請求項1または請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
太陽電池パネルを含む複数の発電部を備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、
各前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記計測結果であって、同じ時刻における複数の前記発電部の前記計測結果同士を比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備える、検出装置。
【請求項5】
太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検知装置における検知方法であって、
前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得するステップと、
取得した複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較するステップと、
比較結果に基づいてアーク放電の検出を行うステップとを含む、検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置および検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムを監視して異常を判別するための技術が開発されている。たとえば、特開2012-205078号公報(特許文献1)には、以下のような太陽光発電用監視システムが開示されている。すなわち、太陽光発電用監視システムは、複数の太陽電池パネルからの出力を集約して電力変換装置に送り込む太陽光発電システムについて、前記太陽電池パネルの発電状況を監視する太陽光発電用監視システムであって、前記複数の太陽電池パネルからの出力電路が集約された場所に設けられ、各太陽電池パネルの発電量を計測する計測装置と、前記計測装置に接続され、前記計測装置による発電量の計測データを送信する機能を有する下位側通信装置と、前記下位側通信装置から送信される前記計測データを受信する機能を有する上位側通信装置と、前記上位側通信装置を介して前記太陽電池パネルごとの前記計測データを収集する機能を有する判定装置とを備える。前記判定装置は、前記各太陽電池パネルについての、同一時点における発電量の差に基づいて異常の有無を判定するか、または前記各太陽電池パネルについての、所定期間の発電量の最大値又は積算値に基づいて異常の有無を判定する。
【0003】
また、発電部の出力ライン等においてアーク放電が発生する場合、太陽光発電システムにおいて様々な支障が生じる可能性があるため、アーク放電を検出するための技術が開発されている。たとえば、特開2019-45422号公報(特許文献2)には、以下のようなアーク検出装置が開示されている。すなわち、アーク検出装置は、太陽電池モジュールの各ストリングの出力ケーブル毎の電流波形からノイズレベルを計測する測定手段と、前記測定手段からのノイズレベルとアーク発生を示す第1閾値とを比較することによりアーク発生を判定する第1判定手段と、前記第1判定手段がアーク発生を検出したときに、前記各ストリングのノイズレベルの最大値と他のストリングのノイズレベルとの関係を識別するための第2閾値に基づいて、ノイズレベルが最大値となるストリングでアークが発生したものか、前記各ストリング以外の他の箇所でアークが発生したものかを判定する第2判定手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-205078号公報
【特許文献2】特開2019-45422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のアーク検出装置では、ストリングの出力電流の波形からノイズを検出することにより、アークの発生を検出している。
【0006】
しかしながら、ストリングの出力電流は、天候、時間および季節等に応じて刻々と変化する。また、発電電力の変化に伴い、電力変換装置において生じるインバータノイズも変化する。このため、ストリングの出力電流の波形からノイズを検出するだけでは、当該ノイズがアーク放電によるものであるか否かを正確に判別することが難しい。太陽光発電システムの状態をより正確に判定することのできる技術が望まれる。
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる検出装置および検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の検出装置は、太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得する取得部と、前記取得部により取得された複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備える。
【0009】
本開示の検出方法は、太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検知装置における検知方法であって、前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得するステップと、取得した複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較するステップと、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行うステップとを含む。
【0010】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える検出装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、検出装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、検出装置を含む検出システムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る太陽光発電システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係るPCSユニットの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る集電ユニットの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る太陽電池ユニットの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る監視システムの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける監視装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す監視装置における監視処理部および第1取得部の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る監視装置における記憶部に保存されている各計測結果の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける判定装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける判定装置によるアーク放電の検出が行われる際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施の形態に係る検出装置は、太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得する取得部と、前記取得部により取得された複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備える。
【0015】
太陽光発電システムにおける接続箱同士は離れて設置されているため、ある時刻において発電部の周辺でアーク放電が発生した場合、他の接続箱において計測される当該時刻の出力電流からは、当該アーク放電に起因する高周波電流は検出されない可能性が高い。このため、上記のように、同じ時刻における対象箱の計測値と他の接続箱の計測値とを比較する構成により、アーク放電の検出をより正確に行うことができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0016】
(2)好ましくは、前記検出部は、前記対象箱の前記計測値と、前記他の接続箱の前記計測値との差が所定の第1閾値未満である場合、アーク放電が発生していないと判定し、前記差が前記第1閾値以上の第2閾値以上である場合、アーク放電が発生していると判定する。
【0017】
たとえば、各接続箱において同じ時刻に検出される、当該インバータノイズに起因する特定の周波数成分の計測結果には大きな差がない。一方、ある時刻において接続箱の周辺でアーク放電が発生した場合、当該接続箱において当該時刻に検出される特定の周波数成分の計測結果と、他の接続箱において当該時刻に検出される特定の周波数成分の計測結果との間には、接続箱間の距離に応じて差が生じる。このため、上記のように、対象箱の計測値と、他の接続箱の計測値との差を閾値と比較する構成により、対象箱において検出された特定の周波数成分の計測結果が、インバータノイズに起因するものであるのか、またはアーク放電に起因するものであるのかを判別することができる。
【0018】
また、上記のように、アーク放電が発生していないことの判定に用いる第1閾値と、アーク放電が発生していることの判定に用いる第2閾値とを異なる値とする構成により、アーク放電の検出の誤判定を防ぐことができる。
【0019】
(3)好ましくは、前記検出部は、前記計測値の比較結果が所定条件を満たす場合、さらに、前記対象箱に接続されている複数の前記発電部の同じ時刻における前記計測結果同士を比較し、比較結果に基づいて、前記発電部と前記接続箱との間でアーク放電が発生したか、または前記接続箱と前記電力変換装置との間でアーク放電が発生したかを判定する。
【0020】
このような構成により、管理者等においてアーク放電の発生箇所を把握することができるため、アーク放電に対するより適切な対処をとることができる。
【0021】
(4)本開示の実施の形態に係る検出装置は、太陽電池パネルを含む複数の発電部を備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、各前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を取得する取得部と、前記取得部により取得された前記計測結果であって、同じ時刻における複数の前記発電部の前記計測結果同士を比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備える。
【0022】
ある時刻に発電部においてアーク放電が発生している場合、当該発電部からの当該時刻に検出される特定の周波数成分の計測結果は、他の発電部からの当該時刻に検出される特定の周波数成分の計測結果よりも大きい。このため、上記のような構成により、発電部におけるアーク放電の検出をより正確に行うことができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0023】
(5)本開示の実施の形態に係る検出方法は、太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検知装置における検知方法であって、前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得するステップと、取得した複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較するステップと、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行うステップとを含む。
【0024】
太陽光発電システムにおける接続箱同士は離れて設置されているため、ある時刻において発電部の周辺でアーク放電が発生した場合、他の接続箱において計測される当該時刻の出力電流からは、当該アーク放電に起因する高周波電流は検出されない可能性が高い。このため、上記のように、同じ時刻における対象箱の計測値と他の接続箱の計測値とを比較する方法により、アーク放電の検出をより正確に行うことができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0025】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0026】
<構成および基本動作>
[太陽光発電システムの構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る太陽光発電システムの構成を示す図である。
【0027】
図1を参照して、太陽光発電システム401は、4つのPCS(Power Conditioning Subsystem)ユニット80と、キュービクル6とを備える。キュービクル6は、銅バー73と、変圧器10とを含む。
【0028】
図1では、4つのPCSユニット80を代表的に示しているが、さらに多数または少数のPCSユニット80が設けられてもよい。
【0029】
図2は、本開示の実施の形態に係るPCSユニットの構成を示す図である。
【0030】
図2を参照して、PCSユニット80は、4つの集電ユニット60と、PCS(電力変換装置)8とを備える。PCS8は、銅バー7と、電力変換部9と、収集部21とを含む。
【0031】
図2では、4つの集電ユニット60を代表的に示しているが、さらに多数または少数の集電ユニット60が設けられてもよい。
【0032】
また、収集部21は、PCS8の内部に設けられる代わりに、PCS8の外部の装置に設けられてもよい。収集部21が設けられる外部の装置を収集装置とすると、収集装置は、たとえば、PCS8の近傍に設けられ、PCS8内の銅バー7を介して互いに接続された後述する各集約ライン5のいずれか1つに接続される。
【0033】
図3は、本開示の実施の形態に係る集電ユニットの構成を示す図である。
【0034】
図3を参照して、集電ユニット60は、4つの太陽電池ユニット74を有する。
【0035】
図3では、4つの太陽電池ユニット74を代表的に示しているが、さらに多数または少数の太陽電池ユニット74が設けられてもよい。
【0036】
図4は、本開示の実施の形態に係る太陽電池ユニットの構成を示す図である。
【0037】
図4を参照して、太陽電池ユニット74は、4つの発電部78A,78B,78C,78Dと、接続箱76とを含む。以下、発電部78A,78B,78C,78Dの各々を発電部78とも称する。発電部78は、太陽電池パネル79を有する。接続箱76は、銅バー77を有する。
【0038】
図4では、4つの発電部78を代表的に示しているが、さらに多数または少数の発電部78が設けられてもよい。
【0039】
発電部78は、この例では4つの太陽電池パネル79が直列接続されたストリングである。
【0040】
図4では、4つの太陽電池パネル79を代表的に示しているが、さらに多数または少数の太陽電池パネルが設けられてもよい。
【0041】
太陽光発電システム401の各PCSユニット80では、
図3に示す集電ユニット60における太陽電池ユニット74、に含まれる複数の発電部78からの出力ラインおよび集約ラインすなわち電力線がそれぞれ、
図2に示す電力変換部9に電気的に接続される。
【0042】
より詳細には、発電部78の出力ライン1は、発電部78に接続された第1端と、銅バー77に接続された第2端とを有する。各出力ライン1は、銅バー77を介して集約ライン5に集約される。銅バー77は、たとえば接続箱76の内部に設けられている。
【0043】
発電部78は、太陽光を受けると、受けた太陽光のエネルギーを直流電力に変換し、変換した直流電力を出力ライン1へ出力する。
【0044】
図3および
図4を参照して、集約ライン5は、対応の太陽電池ユニット74における銅バー77に接続された第1端と、銅バー7に接続された第2端とを有する。
【0045】
図2を参照して、PCS8において、内部ライン3は、銅バー7に接続された第1端と、電力変換部9に接続された第2端とを有する。
【0046】
図1~
図4を参照して、太陽光発電システム401では、上述のように複数の発電部78からの各出力ライン1が集約ライン5に集約され、各集約ライン5が内部ライン3に集約され、電力変換部9に電気的に接続される。
【0047】
PCS8において、電力変換部9は、たとえば、各発電部78において発電された直流電力を出力ライン1、銅バー77、集約ライン5、銅バー7および内部ライン3経由で受けると、受けた直流電力を交流電力に変換して集約ライン4へ出力する。
【0048】
集約ライン4は、電力変換部9に接続された第1端と、銅バー73に接続された第2端とを有する。
【0049】
キュービクル6において、各PCS8における電力変換部9から各集約ライン4へ出力された交流電力は、銅バー73を介して変圧器10へ出力される。そして、変圧器10において電圧レベル等が変換された交流電力は、系統へ出力される。
【0050】
[監視システムの構成]
図5は、本開示の実施の形態に係る監視システムの構成を示す図である。
図6は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける監視装置の構成を示す図である。
図6では、
図4に示す接続箱76の内部がより詳細に示されている。
【0051】
図5および
図6を参照して、監視システム301は、太陽光発電システム401に用いられる。監視システム301は、判定装置(検出装置)101と、複数の監視装置111とを含む。
【0052】
図5では、1つの集電ユニット60に対応して設けられた4つの監視装置111を代表的に示しているが、さらに多数または少数の監視装置111が設けられてもよい。
【0053】
監視システム301では、監視装置111におけるセンサによる計測結果に基づく情報(以下、「計測情報」とも称する。)が、PCS8における収集部21へ定期的または不定期に伝送される。
【0054】
監視装置111は、たとえば集電ユニット60において、
図6に示す接続箱76ごとに設けられている。より詳細には、各監視装置111は、たとえば、対応の出力ライン1および集約ライン5に電気的に接続されている。
【0055】
監視装置111は、対応の太陽電池ユニット74における各出力ライン1の電流をセンサにより計測する。また、監視装置111は、対応の太陽電池ユニット74における各出力ライン1の電圧をセンサにより計測する。
【0056】
PCS8における収集部21は、各監視装置111の計測結果を収集する。より詳細には、子局である監視装置111は、たとえば、集約ライン5を介して電力線通信(PLC:Power Line Communication)を行うことにより、親局であるPCS8の収集部21へ計測情報を送信する。そして、収集部21は、各監視装置111から送信された複数の計測情報を判定装置101へ転送する。
【0057】
判定装置101は、複数のPCS8の各々の収集部21に接続されている。PCS8の収集部21、および判定装置101は、たとえば、WAN(Wide Area Network)を用いた通信を行うことにより、計測情報の送受信を行う。
【0058】
[監視装置の構成]
図6に示すように、接続箱76は、集約部91と、出力ライン1と、集約ライン5とを含む。
【0059】
出力ライン1の各々は、プラス側出力ライン1pと、マイナス側出力ライン1nとを含む。
【0060】
集約ライン5は、プラス側集約ライン5pと、マイナス側集約ライン5nとを含む。集約部91は、銅バー77を含み、複数の発電部78からの出力ライン1を集約する。銅バー77は、プラス側銅バー77pと、マイナス側銅バー77nとを有する。
【0061】
図示しないが、
図5に示すPCS8における銅バー7は、プラス側集約ライン5pおよびマイナス側集約ライン5nにそれぞれ対応して、プラス側銅バー7pおよびマイナス側銅バー7nを含む。
【0062】
より詳細には、プラス側出力ライン1pは、対応の発電部78に接続された第1端と、プラス側銅バー77pに接続された第2端とを有する。
【0063】
マイナス側出力ライン1nは、対応の発電部78に接続された第1端と、マイナス側銅バー77nに接続された第2端とを有する。
【0064】
プラス側集約ライン5pは、プラス側銅バー77pに接続された第1端と、PCS8におけるプラス側銅バー7pに接続された第2端とを有する。マイナス側集約ライン5nは、マイナス側銅バー77nに接続された第1端と、PCS8におけるマイナス側銅バー7nに接続された第2端とを有する。
【0065】
監視装置111は、監視処理部11と、電源部12と、第1取得部13と、通信部14と、電圧センサ17と、記憶部18と、計測部19とを備える。計測部19は、4つの電流センサ16を含む。なお、監視装置111は、出力ライン1の数に応じて、さらに多数または少数の電流センサ16を備えてもよい。通信部14は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路により実現される。記憶部18は、たとえば不揮発性メモリである。
【0066】
監視装置111は、たとえば、発電部78の近傍に設けられている。具体的には、監視装置111は、たとえば、計測対象の出力ライン1が接続された銅バー77が設けられた接続箱76の内部に設けられている。なお、監視装置111は、接続箱76の外部に設けられてもよい。
【0067】
監視装置111は、たとえば、プラス側集約ライン5pおよびマイナス側集約ライン5nとそれぞれプラス側電源線26pおよびマイナス側電源線26nを介して電気的に接続されている。以下、プラス側電源線26pおよびマイナス側電源線26nの各々を、電源線26とも称する。
【0068】
電源部12は、たとえば、プラス側集約ライン5pおよびマイナス側集約ライン5nから供給される出力電圧を取得する。監視装置111は、電源部12により取得される出力電圧を電源電圧として用いて動作する。
【0069】
第1取得部13は、発電部78の電流の計測結果を取得する。より詳細には、第1取得部13は、電流センサ16により計測された出力ライン1の電流を示す計測結果を取得する。
【0070】
具体的には、電流センサ16は、たとえば、巻線タイプまたはホール素子タイプの電流プローブである。電流センサ16は、発電部78とPCS8との間に接続され、たとえば電源部12から受けた電力を用いて、対応のプラス側出力ライン1pを通して流れる電流を所定の計測周期で計測する。計測周期は、たとえば1秒である。
【0071】
そして、電流センサ16は、たとえば、計測結果を示すアナログ信号を第1取得部13へ出力する。なお、電流センサ16は、マイナス側出力ライン1nを通して流れる電流を計測してもよい。
【0072】
電圧センサ17は、たとえば所定の計測周期で出力ライン1の電圧を計測する。より詳細には、電圧センサ17は、プラス側銅バー77pとマイナス側銅バー77nとの間の電圧を計測する。そして、電圧センサ17は、たとえば、計測結果を示すアナログ信号を監視処理部11へ出力する。
【0073】
通信部14は、集約ラインを介した電力線通信を、
図5に示すPCS8の収集部21と行うことが可能である。より詳細には、通信部14は、電源線26および集約ライン5を介してPCS8の収集部21と電力線通信を行うことにより、情報の送受信を行うことができる。具体的には、通信部14は、たとえば、後述するように、記憶部18に保存されている計測結果を示す計測情報を定期的または不定期に取得し、取得した計測情報をPCS8の収集部21へ送信する。
【0074】
[監視装置における監視処理部の構成]
図7は、
図6に示す監視装置における監視処理部および第1取得部の構成を示す図である。
【0075】
図7を参照して、監視処理部11は、第1ADC(アナログデジタルコンバータ)42と、第2ADC43と、第3ADC44と、処理部45と、第1増幅器47と、フィルタ48と、第2増幅器49と、第2取得部50とを含む。第1取得部13は、選択部40を含む。処理部45および第2取得部50は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。
【0076】
選択部40は、たとえば、マルチプレクサであり、20ミリ秒などの所定時間ごとに、複数の電流センサ16のうちのいずれか1つの電流センサ16を選択し、選択した電流センサ16からのアナログ信号を取得して第1増幅器47およびフィルタ48へ出力する。
【0077】
第1増幅器47は、選択部40から受けたアナログ信号を増幅して第1ADC42へ出力する。
【0078】
第1ADC42は、第1増幅器47から受けた、発電部78の出力電流の計測結果を示すアナログ信号をデジタル信号に変換して処理部45へ出力する。
【0079】
フィルタ48は、たとえば、特定の周波数成分を抽出するBPF(バンドパスフィルタ)である。特定の周波数成分は、高周波成分、たとえば、20kHz~100kHzの周波数帯域に含まれる成分である。
【0080】
フィルタ48は、選択部40によって取得された出力電流の計測結果に基づいて、発電部78の出力電流の特定の周波数成分を抽出する。具体的には、フィルタ48は、選択部40から受けたアナログ信号のうち、特定の周波数成分を通過させて第2増幅器49へ出力する。なお、フィルタ48は、BPFに限らず、たとえば、所定の周波数以上の周波数成分を抽出するHPF(ハイパスフィルタ)であってもよい。
【0081】
第2増幅器49は、フィルタ48から受けたアナログ信号を増幅して第2ADC43へ出力する。
【0082】
第2ADC43は、第2増幅器49から受けた、上記特定の周波数成分のレベルを示すアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を処理部45へ出力する。
【0083】
第3ADC44は、電圧センサ17から受けた、発電部78の出力電圧の計測結果を示すアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を第2取得部50へ出力する。第2取得部50は、たとえば、第3ADC44からのデジタル信号を取得し、当該デジタル信号および電圧センサ17のIDを処理部45へ出力する。
【0084】
(電流センサの計測結果および電圧センサの計測結果の保存)
処理部45は、電流センサ16の計測結果である電流値、および電圧センサ17の計測結果である電圧値を、記憶部18に保存する。
【0085】
図8は、本開示の実施の形態に係る監視装置における記憶部に保存されている各計測結果の一例を示す図である。
【0086】
図8を参照して、記憶部18には、接続箱76に設けられた電流センサ16および電圧センサ17の計測結果を登録するための計測結果ログT1が保存されている。
【0087】
計測結果ログT1は、たとえば、接続箱76に、IDがそれぞれ「I1」,「I2」,「I3」,「I4」の4つの電流センサ16、ならびにIDが「V1」の電圧センサ17が設けられていることを示す。
【0088】
処理部45は、第1ADC42から受けたデジタル信号、および第2取得部50から受けたデジタル信号に基づいて、各電流センサ16の計測結果である直流電流値、および電圧センサ17の計測結果である電圧値を時系列に並べて計測結果ログT1に登録する。
【0089】
たとえば、処理部45は、第1ADC42からのデジタル信号の示す値の、時刻t1を中央とする一定期間Pdにおける平均値を、時刻t1の直流電流値として算出する。そして、処理部45は、たとえば、算出した直流電流値を、計測結果ログT1における時刻t1に対応する欄であり、かつ出力電流の計測元である電流センサ16のIDに対応する欄に登録する。処理部45は、時刻t1以降、期間Pdが経過するタイミングごとの時刻t2,t3,・・・についても同様に、直流電流値を計測結果ログT1に登録する。
【0090】
期間Pdは、たとえば、選択部40が電流センサ16の選択を切り替える間隔である20ミリ秒に、電流センサ16の数を乗じた長さである。
【0091】
また、処理部45は、第2取得部50からのデジタル信号の示す値の、時刻t1を中央とする期間Pdにおける平均値を、時刻t1の電圧値として算出する。そして、処理部45は、たとえば、算出した電圧値を、計測結果ログT1における時刻t1に対応する欄であり、かつ出力電圧の計測元である電圧センサ17のIDに対応する欄に登録する。処理部45は、時刻t1以降、期間Pdが経過するタイミングごとの時刻t2,t3,・・・についても同様に、電圧値を計測結果ログT1に登録する。
【0092】
具体的には、計測時刻t1に対応する、4つの電流センサ16による計測結果である直流電流値がそれぞれ「5.0A」,「5.3A」,「5.1A」,「5.2A」であり、電圧センサ17による計測結果である電圧値が「500V」であるとする。この場合、処理部45は、計測結果ログT1における対応箇所に、各電流センサ16の計測結果「5.0A」,「5.3A」,「5.1A」,「5.2A」、および電圧センサ17の計測結果「500V」を書き込む。
【0093】
処理部45は、次の計測時刻t2以降についても同様に、計測結果ログT1における対応箇所に、各電流センサ16による計測結果、および電圧センサ17による計測結果を書き込む。
【0094】
通信部14は、たとえば、定期的または不定期に、記憶部18に保存されている計測結果ログT1を参照して、電流値および電圧値を示す計測情報が新たに追加されている場合、新たに追加された計測情報をPCS8の収集部21へ送信する。そして、収集部21は、通信部14から受信した計測情報を判定装置101へ送信する。判定装置101は、収集部21から受信した計測情報に基づいて、後述するように、各発電部78の発電状況が正常であるか否かを判定する。
【0095】
(特定の周波数成分の保存)
処理部45は、フィルタ48により抽出された特定の周波数成分を記憶部18に保存する処理を行う。より詳細には、処理部45は、第2ADC43から受けたデジタル信号に基づいて、たとえば、1または複数のサンプル分の高周波電流のレベルと、対応する電流センサ16のIDと、自己の監視装置111が設けられた接続箱76のIDと、期間Pdの中央の時刻とを記憶部18に保存する処理を行う。
【0096】
そして、通信部14は、たとえば、記憶部18に保存されている、高周波電流のレベル、電流センサ16のID、接続箱76のIDおよび期間Pdの中央の時刻の組を示す高周波電流情報を、定期的または不定期にPCS8の収集部21へ送信する。そして、収集部21は、監視装置111から受信した高周波電流情報を判定装置101へ送信する。
【0097】
なお、上述した監視装置111では、選択部40が、複数の電流センサ16のうちのいずれか1つの電流センサ16を選択し、選択した電流センサ16からのアナログ信号を取得して第1増幅器47およびフィルタ48へ出力する構成であるとしたが、監視装置111は選択部40を含まない構成であってもよい。
【0098】
この場合、たとえば、監視装置111は、電流センサ16ごとに第1増幅器47および第1ADC42を含み、電流センサ16からの計測結果は、対応する第1増幅器47および第1ADC42を介して処理部45へ出力される。また、たとえば、監視装置111は、電流センサ16ごとにフィルタ48、第2増幅器49および第2ADC43を含み、電流センサ16からの計測結果は、対応するフィルタ48、第2増幅器49および第2ADC43を介して処理部45へ出力される。
【0099】
また、監視装置111は、電源部12により取得される、発電部78からの出力電圧を電源電圧として用いて動作する構成に限らず、たとえば、他の電源供給装置からの電源電圧を用いて動作する構成であってもよい。
【0100】
[判定装置の構成]
図9は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける判定装置の構成を示す図である。
【0101】
図9を参照して、判定装置101は、取得部31と、記憶部32と、判定部33と、通信部34と、検出部35とを備える。判定部33および検出部35は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。通信部34は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路により実現される。記憶部32は、たとえば不揮発性メモリである。
【0102】
(発電状況の判定)
取得部31は、各発電部78の出力電流の計測結果である電流値、および出力電圧の計測結果である電圧値を示す計測情報を取得する。より詳細には、取得部31は、各接続箱76における監視装置111から送信された計測情報をPCS8の収集部21経由で受信する。そして、取得部31は、受信した計測情報の示す電流値および電圧値を記憶部32に保存する。
【0103】
判定部33は、記憶部32に保存されている各計測結果を参照して、たとえば、各発電部78の発電状況が正常であるか否かを判定し、発電状況の判定結果を通信部34に通知する。
【0104】
(アーク放電の検出)
取得部31は、さらに、発電部78の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の接続箱76について取得する。
【0105】
より詳細には、取得部31は、各接続箱76における監視装置111から送信された高周波電流情報をPCS8の収集部21経由で受信する。そして、取得部31は、受信した各高周波電流情報の示す、高周波成分のレベル、電流センサ16のID、接続箱76のIDおよび期間Pdの中央の時刻の組を、記憶部32に保存する。これにより、記憶部32には、各接続箱76において検出された特定の周波数成分の計測結果が集約される。
【0106】
検出部35は、記憶部32に保存されている、高周波電流のレベル、電流センサ16のID、接続箱76のIDおよび時刻の組に基づいて、発電部78からの出力ライン1および集約ライン5等におけるアーク放電を検出する。
【0107】
より詳細には、検出部35は、複数の接続箱76のうちのいずれか1つを、対象箱として特定する。たとえば、検出部35は、1または複数分の期間Pdの長さを有するアーク放電の検出期間ごとに、各接続箱76において検出された高周波電流のレベルに基づく計測値Xを算出する。そして、検出部35は、同じ時刻における各接続箱76の計測値Xの最大値に対応する接続箱76を、対象箱として特定する。
【0108】
計測値Xは、接続箱76において検出された高周波電流のレベルの合計値または最大値などである。ここでは、計測値Xは、接続箱76において検出された高周波電流のレベルの合計値であるとする。
【0109】
また、検出部35は、たとえば、特定した対象箱の計測値Xが所定の閾値Th1以上であるか否かを確認し、当該計測値Xが所定の閾値Th1以上である場合、当該対象箱についてアーク放電の検出を行う。
【0110】
ここで、PCS8が監視装置111から離れた箇所に設置されている場合、当該PCS8において生じる高周波のインバータノイズは、監視装置111に到達するまでに大きく減衰する可能性が高い。このため、対象箱の計測値Xが閾値Th1以上である場合においてアーク放電の検出を行う構成により、後述するアーク放電の検出において、インバータノイズに起因する誤判定を防ぎ、より正確な判定結果を得ることができる。
【0111】
検出部35は、アーク放電の検出を行う場合、対象箱の計測値Xと、他の接続箱76の同じ時刻における計測値Xとを比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う。たとえば、検出部35は、同じ時刻における各接続箱76の計測値Xのうちの1番目に大きい値である対象箱の計測値Xと、2番目に大きい計測値Xとの差D1を算出する。
【0112】
そして、検出部35は、算出した差D1が所定の閾値(第1閾値)Lt1未満である場合、当該時刻において対象箱の周辺でアーク放電は生じていない、と判定する。一方、検出部35は、たとえば、算出した差D1が閾値Lt1以上の所定の閾値(第2閾値)Lt2以上である場合、当該時刻において対象箱の周辺でアーク放電が生じている、と判定する。
【0113】
また、検出部35は、算出した差D1が閾値Lt1以上、かつ閾値Lt2未満である場合、たとえば、当該時刻において対象箱の周辺でアーク放電が生じているか否かが不明である、と判定する。
【0114】
なお、検出部35は、同じ時刻における各接続箱76の計測値Xの最大値に対応する接続箱76を対象箱として特定する構成に限らず、予め指定された他の基準等に従って、最大値に対応する接続箱76以外の接続箱76を対象箱として特定してもよい。
【0115】
また、検出部35は、計測値X同士の差D1が閾値Lt2以上である場合にアーク放電が生じていると判定する構成に限らず、当該差D1が閾値Lt1以上である場合にアーク放電が生じていると判定してもよい。
【0116】
(アーク放電の発生箇所の判定)
検出部35は、上述した差D1が閾値Lt2以上である場合など、計測値Xの比較結果が所定条件を満たす場合、さらに、対象箱に接続されている複数の発電部78の同じ時刻における計測結果同士、すなわち検出された高周波成分のレベル同士を比較する。
【0117】
ここで、ある時刻におけるアーク放電の発生箇所が、発電部78に接続された出力ライン1である場合、当該発電部78からの当該時刻における高周波電流のレベルは、他の発電部78からの当該時刻における高周波電流のレベルよりも大きい。このため、検出部35は、複数の発電部78にそれぞれ対応する複数の電流センサ16により検出された高周波成分のレベルを比較することにより、アーク放電の発生箇所を判定することができる。
【0118】
検出部35は、たとえば、対象箱に含まれる各電流センサ16により検出された上記時刻に対応する高周波成分のレベルのうち、1番目に大きいレベルと、2番目に大きいレベルとを特定し、特定したこれらのレベルの差D2を算出する。
【0119】
そして、検出部35は、算出した差D2が所定の閾値Lt3以上である場合、当該時刻において、1番目に大きいレベルの高周波電流を出力した発電部78に接続されている出力ライン1においてアーク放電が生じている、と判定する。そして、検出部35は、たとえば、当該発電部78のIDおよび当該時刻を、判定結果として通信部34に通知する。
【0120】
一方、検出部35は、1番目に大きいレベルと2番目に大きいレベルとの差D2が閾値Lt3未満である場合、当該時刻において、対象箱に接続されたPSC8側のライン、すなわち集約ライン5においてアーク放電が生じている、と判定する。そして、検出部35は、たとえば、対象箱である接続箱76のIDおよび当該時刻を、判定結果として通信部34に通知する。
【0121】
なお、検出部35は、アーク放電の発生箇所の判定を行わない構成であってもよい。この場合において、検出部35は、上述の計測値Xの比較結果に基づいて、ある時刻において対象箱の周辺でアーク放電が生じている、と判定した場合、たとえば、当該対象箱である接続箱76のIDおよび当該時刻を、判定結果として通信部34に通知する。
【0122】
また、検出部35は、算出した対象箱の計測値Xが所定の閾値Th1以上であるか否かに関わらず、対象箱についてアーク放電の検出を行う構成であってもよい。
【0123】
また、判定装置101の検出部35が、対象箱の計測値Xが閾値Th1以上であるか否かの確認を行う代わりに、各監視装置111が、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流のレベルを示す高周波電流情報を判定装置101へ送信する構成であってもよい。
【0124】
たとえば、監視装置111において、処理部45が、FFT(Fast Fourier Transform)演算等を行うことにより、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流を検出して、通信部14が、処理部45により検出された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流のレベルを示す高周波電流情報を判定装置101へ送信する構成であるとする。
【0125】
この場合、判定装置101における取得部31の受信する高周波電流情報の示す高周波電流のレベルは、いずれも閾値Th1以上である。このため、検出部35は、対象箱の計測値Xが閾値Th1以上であるか否かの確認を行うことなく、当該対象箱についてアーク放電の検出を行うことができる。
【0126】
また、計測値Xは、前述のように、接続箱76において検出された高周波電流のレベルの最大値であってもよい。この場合、検出部35は、各接続箱76において検出された高周波電流のレベルの最大値Lを計測値Xとして算出し、算出した同じ時刻における最大値L同士を比較し、比較結果に基づいてアーク放電を検出する。
【0127】
より詳細には、検出部35は、たとえば、同じ時刻における各接続箱76の最大値Lのうちの1番目に大きい値に対応する接続箱76を対象箱として特定し、特定した対象箱の最大値Lと、2番目に大きい最大値Lとの差D3を算出する。
【0128】
そして、検出部35は、算出した差D3が所定の閾値Lt4未満である場合、当該時刻において対象箱の周辺でアーク放電は生じていない、と判定する。
【0129】
一方、差D3が、閾値Lt4より大きい所定の閾値Lt5以上であるとする。この場合、検出部35は、当該時刻において、対象箱に接続されている複数の発電部78のうち、比較に用いた最大値Lのレベルの高周波電流を出力した発電部78、に接続されている出力ライン1においてアーク放電が生じている、と判定する。そして、検出部35は、たとえば、当該発電部78のIDおよび当該時刻を、判定結果として通信部34に通知する。
【0130】
また、検出部35は、複数の接続箱76の計測値X同士の比較を行わない構成であってもよい。たとえば、検出部35は、複数の接続箱76の計測値X同士の比較を行わず、同一の接続箱76に接続されている、ある発電部78と他の発電部78の各々から検出された高周波成分のレベル同士を比較し、比較結果に基づいて、当該ある発電部78においてアーク放電が生じているか否かを判定する構成であってもよい。
【0131】
[通知方法]
(発電状況の判定結果の通知)
通信部34は、判定部33から通知された発電状況の判定結果に基づいて、たとえば、発電状況が通常時とは異なる1または複数の発電部78を管理者等に通知する。
【0132】
具体的には、通信部34は、発電状況が通常時とは異なる発電部78のID等を、モニタに表示したり、メールで送信したりする。また、通信部34は、たとえば、複数の発電部78の配置を示す画面において、発電状況が通常時とは異なる発電部78のID等を明るく表示するなど、他の発電部78とは異なる表示態様で表示してもよい。
【0133】
(アーク放電の判定結果の通知)
また、通信部34は、アーク放電が生じている旨の判定結果の通知を検出部35から受けた回数をカウントし、カウント値が所定値K以上となった場合、たとえば、判定対象である接続箱76または発電部78を管理者等に通知する出力処理を行う。
【0134】
具体的には、通信部34は、判定結果として、接続箱76のIDおよび時刻の通知を受けた場合、たとえば、当該接続箱76のIDおよび時刻等を、モニタに表示したり、メールで送信したりする。また、通信部34は、たとえば、複数の接続箱76の配置を示す画面において、当該接続箱76のID等を明るく表示するなど、他の接続箱76とは異なる表示態様で表示してもよい。
【0135】
また、たとえば、通信部34は、判定結果として、発電部78のIDおよび時刻の通知を受けた場合、たとえば、当該発電部78のIDおよび時刻等を、モニタに表示したり、メールで送信したりする。また、通信部34は、たとえば、複数の発電部78の配置を示す画面において、当該発電部78のID等を明るく表示するなど、他の接続箱76とは異なる表示態様で表示してもよい。
【0136】
これにより、管理者は、各発電部78の発電状況だけでなく、さらに、アーク放電の発生の有無の両方を把握することができる。また、管理者は、アーク放電が発生している場合、当該アーク放電の発生箇所を把握することができる。
【0137】
<動作の流れ>
次に、監視システム301においてアーク放電の検出が行われる際の動作手順について図面を用いて説明する。
【0138】
監視システム301における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0139】
図10は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける判定装置によるアーク放電の検出が行われる際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0140】
図10を参照して、まず、各監視装置111は、たとえば、期間Pdごとに高周波電流情報を判定装置101へ送信する。判定装置101は、すべての監視装置111からの高周波電流情報を受信すると、受信した各高周波電流情報に基づいて、たとえば、接続箱76ごとに、検出された高周波電流のレベルの合計値を計測値Xとして算出する(ステップS11)。
【0141】
次に、判定装置101は、たとえば、算出した各接続箱76の計測値Xの最大値に対応する接続箱76を対象箱として特定し、特定した対象箱の計測値Xが所定の閾値Th1以上であるか否かを確認する(ステップS12)。
【0142】
次に、判定装置101は、対象箱の計測値Xが所定の閾値Th1未満である場合(ステップS12において「NO」)、アーク放電の検出は行わない。
【0143】
一方、判定装置101は、対象箱の計測値Xが所定の閾値Th1以上である場合(ステップS12において「YES」)、たとえば、同じ時刻における各接続箱76の計測値Xのうちの1番目に大きい値である対象箱の計測値Xと、2番目に大きい計測値Xとの差D1を算出する。そして、判定装置101は、算出した差D1が閾値Lt1以上であるか否かを確認する(ステップS13)。
【0144】
次に、判定装置101は、差D1が閾値Lt1未満である場合(ステップS13において「NO」)、当該時刻において対象箱の周辺においてアーク放電は生じていない、と判定する。
【0145】
一方、判定装置101は、差D1が閾値Lt1以上である場合(ステップS13において「YES」)、差D1が閾値Lt2以上であるか否かを確認する(ステップS14)。
【0146】
次に、判定装置101は、差D1が閾値Lt2未満である場合(ステップS14において「NO」)、たとえば、当該時刻において対象箱の周辺においてアーク放電が生じているか否かが不明である、と判定する。
【0147】
一方、判定装置101は、差D1が閾値Lt2以上である場合(ステップS14において「YES」)、たとえば、対象箱に含まれる各電流センサ16の上記時刻に対応する高周波成分のレベルのうち、1番目に大きいレベルと、2番目に大きいレベルとの差D2を算出する。そして、判定装置101は、算出した差D2が閾値Lt3以上であるか否かを確認する(ステップS15)。
【0148】
次に、判定装置101は、差D2が閾値Lt3未満である場合(ステップS15において「NO」)、当該時刻において、対象箱である接続箱76とPSC8の集電部21との間における集約ライン5でアーク放電が生じている、と判定する。(ステップS16)。
【0149】
一方、判定装置101は、差D2が閾値Lt2以上である場合(ステップS16において「YES」)、当該時刻において、1番目に大きいレベルの高周波電流を出力した発電部78と、対象箱である接続箱76との間における出力ライン1でアーク放電が生じている、と判定する(ステップS17)。
【0150】
次に、判定装置101は、たとえば、アーク放電の検出回数を示す図示しないカウンタのカウント値をインクリメントする(ステップS18)。
【0151】
次に、判定装置101は、カウント値が所定値K以上であるか否かを確認する(ステップS19)。
【0152】
次に、判定装置101は、カウント値が所定値K未満である場合(ステップS19において「NO」)、管理者等への通知を行わない。
【0153】
一方、判定装置101は、カウント値が所定値K以上である場合(ステップS19において「YES」)、アーク放電の判定結果を管理者等に通知し、カウント値をリセットする(ステップS20)。判定装置101は、すべての監視装置111から新たに高周波電流情報を受信すると、上述したステップS11~ステップS20までの動作を再び行う。また、判定装置101は、たとえば、朝方または夜間の所定時刻において、アーク放電の検出回数を示すカウンタのカウント値をリセットする。
【0154】
なお、本開示の実施の形態に係る判定装置101の機能の一部または全部が、クラウドコンピューティングによって提供されてもよい。すなわち、本開示の実施の形態に係る判定装置101が、複数のクラウドサーバ等によって構成されてもよい。
【0155】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0156】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
太陽電池パネルを含む複数の発電部からの出力ラインを集約する複数の接続箱と、各前記接続箱からの集約ラインが電気的に接続される電力変換装置とを備える太陽光発電システムに用いられる検出装置であって、
前記発電部の出力電流に含まれる特定の周波数成分の計測結果を、複数の前記接続箱について取得する取得部と、
前記取得部により取得された複数の前記接続箱の前記計測結果にそれぞれ基づく前記接続箱ごとの計測値であって、同じ時刻における、複数の前記接続箱のうちのいずれか1つである対象箱の前記計測値と前記対象箱以外の他の前記接続箱の前記計測値とを比較し、比較結果に基づいてアーク放電の検出を行う検出部とを備え、
前記計測値は、前記接続箱の前記計測結果の合計値または最大値であり、
前記取得部は、さらに、各前記発電部の出力電流の計測結果および出力電圧の計測結果を取得し、
前記検出装置は、さらに、
前記取得部により取得された前記出力電流の計測結果および前記出力電圧の計測結果に基づいて、前記発電部の発電状況を判定する判定部を備える、検出装置。
【符号の説明】
【0157】
1 出力ライン
4,5 集約ライン
3 内部ライン
6 キュービクル
7 銅バー
8 PCS(電力変換装置)
9 電力変換部
10 変圧器
11 監視処理部
12 電源部
13 第1取得部
14 通信部
16 電流センサ
17 電圧センサ
18 記憶部
19 計測部
21 収集部
26 電源線
31 取得部
32 記憶部
33 判定部
34 通信部
35 検出部
40 選択部
42 第1ADC
43 第2ADC
44 第3ADC
45 処理部
47 第1増幅器
48 フィルタ
49 第2増幅器
50 第2取得部
60 集電ユニット
73,77 銅バー
74 太陽電池ユニット
76 接続箱
78,78A,78B,78C,78D 発電部
79 太陽電池パネル
80 PCSユニット
91 集約部
101 判定装置(検出装置)
111 監視装置
301 監視システム
401 太陽光発電システム