(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190721
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】監視装置、監視システムおよび監視方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/00 20140101AFI20221220BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20221220BHJP
G01R 31/56 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
H02S50/00
G01R31/12 A
G01R31/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099103
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】森下 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】浅尾 芳久
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
5F151
【Fターム(参考)】
2G014AA15
2G014AA32
2G014AB08
2G014AB33
2G014AB61
2G014AC18
2G015AA13
2G015AA27
2G015BA04
2G015CA01
5F151KA08
(57)【要約】
【課題】太陽光発電システムの状態をより正確に判定する。
【解決手段】太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分と、前記第2取得部により取得された、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、
太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、
前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、
前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分と、前記第2取得部により取得された、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える、監視装置。
【請求項2】
前記監視装置は、さらに、
複数の前記一定期間を含む検出期間において取得された前記特定の周波数成分のうち、第1閾値以上のレベルを有する前記特定の周波数成分の数が第2閾値以上である場合、前記第1閾値以上のレベルを有する前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果とに基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行う検出部を備える、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記処理部により保存された前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果との相関に基づいて前記検出を行う、請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記処理部は、さらに、前記発電部の出力電流の前記一定期間における直流電流値を、前記特定の周波数成分に対応づけて保存する処理を行い、
前記検出部は、前記処理部により保存された前記出力電圧の計測結果および前記直流電流値、に基づく電力値と、対応する前記特定の周波数成分との相関に基づいて前記検出を行う、請求項2または請求項3に記載の監視装置。
【請求項5】
前記第1取得部は、前記発電部の出力電流を計測する複数の電流センサのうちのいずれか1つを選択し、選択した前記電流センサからの計測結果を取得する選択部を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記監視装置は、前記発電部の出力電圧を用いて動作する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、
太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、
前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、
前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、
前記第2取得部により取得された前記一定期間における前記出力電圧の計測結果、および前記発電部の出力電流の前記一定期間における直流電流値、に基づく電力値を算出し、算出した前記電力値と、前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える、監視装置。
【請求項8】
太陽光発電システムに用いられる監視装置と、判定装置とを備える監視システムであって、
前記監視装置は、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得し、取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出し、抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて、前記判定装置へ送信し、
前記判定装置は、前記監視装置から送信された前記特定の周波数成分および前記出力電圧の計測結果を受信し、前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果とに基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行う、監視システム。
【請求項9】
太陽光発電システムにおける監視方法であって、
太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得するステップと、
取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出するステップと、
抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存するステップと、
保存した前記特定の周波数成分および対応の前記出力電圧の計測結果に基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行うステップとを含む、監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視装置、監視システムおよび監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光発電システムを監視して異常を判別するための技術が開発されている。たとえば、特開2012-205078号公報(特許文献1)には、以下のような太陽光発電用監視システムが開示されている。すなわち、太陽光発電用監視システムは、複数の太陽電池パネルからの出力を集約して電力変換装置に送り込む太陽光発電システムについて、前記太陽電池パネルの発電状況を監視する太陽光発電用監視システムであって、前記複数の太陽電池パネルからの出力電路が集約された場所に設けられ、各太陽電池パネルの発電量を計測する計測装置と、前記計測装置に接続され、前記計測装置による発電量の計測データを送信する機能を有する下位側通信装置と、前記下位側通信装置から送信される前記計測データを受信する機能を有する上位側通信装置と、前記上位側通信装置を介して前記太陽電池パネルごとの前記計測データを収集する機能を有する判定装置とを備える。前記判定装置は、前記各太陽電池パネルについての、同一時点における発電量の差に基づいて異常の有無を判定するか、または前記各太陽電池パネルについての、所定期間の発電量の最大値又は積算値に基づいて異常の有無を判定する。
【0003】
また、発電部の出力ライン等においてアーク放電が発生する場合、太陽光発電システムにおいて様々な支障が生じる可能性があるため、アーク放電を検出するための技術が開発されている。たとえば、特開2019-45422号公報(特許文献2)には、以下のようなアーク検出装置が開示されている。すなわち、アーク検出装置は、太陽電池モジュールの各ストリングの出力ケーブル毎の電流波形からノイズレベルを計測する測定手段と、前記測定手段からのノイズレベルとアーク発生を示す第1閾値とを比較することによりアーク発生を判定する第1判定手段と、前記第1判定手段がアーク発生を検出したときに、前記各ストリングのノイズレベルの最大値と他のストリングのノイズレベルとの関係を識別するための第2閾値に基づいて、ノイズレベルが最大値となるストリングでアークが発生したものか、前記各ストリング以外の他の箇所でアークが発生したものかを判定する第2判定手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-205078号公報
【特許文献2】特開2019-45422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のアーク検出装置では、ストリングの出力電流の波形からノイズを検出することにより、アークの発生を検出している。
【0006】
しかしながら、ストリングの出力電流は、天候、時間および季節等に応じて刻々と変化する。また、発電電力の変化に伴い、電力変換装置において生じるインバータノイズも変化する。さらに、太陽光発電システムにおけるブレーカのオンおよびオフの切り替え等により突発的にノイズが生じることがある。このため、ストリングの出力電流の波形からノイズを検出するだけでは、当該ノイズがアーク放電によるものであるか否かを正確に判別することが難しい。太陽光発電システムの状態をより正確に判定することのできる技術が望まれる。
【0007】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる監視装置、監視システムおよび監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の監視装置は、太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分と、前記第2取得部により取得された、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える。
【0009】
本開示の監視装置は、太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分と、前記第2取得部により取得された前記一定期間における前記出力電圧の計測結果、および前記発電部の出力電流の前記一定期間における直流電流値、に基づく電力値とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える。
【0010】
本開示の監視システムは、太陽光発電システムに用いられる監視装置と、判定装置とを備える監視システムであって、前記監視装置は、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得し、取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出し、抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて、前記判定装置へ送信し、前記判定装置は、前記監視装置から送信された前記特定の周波数成分および前記出力電圧の計測結果を受信し、前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果とに基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行う。
【0011】
本開示の監視方法は、太陽光発電システムにおける監視方法であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得するステップと、取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出するステップと、抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存するステップと、保存した前記特定の周波数成分および対応の前記出力電圧の計測結果に基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行うステップとを含む。
【0012】
本開示は、このような特徴的な処理部を備える監視装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする監視方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示は、監視装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0013】
また、本開示は、このような特徴的な処理部を備える監視システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示は、監視システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る太陽光発電システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係るPCSユニットの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る集電ユニットの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る太陽電池ユニットの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る監視システムの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける監視装置の構成を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す監視装置における監視処理部および第1取得部の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る監視装置における記憶部に保存されている各計測結果の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける判定装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る判定装置における検出部により求められる、高周波電流のレベルと出力電圧との相関を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係る判定装置における検出部により求められる、高周波電流のレベルと出力電圧との相関を説明するための図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態に係る判定装置における検出部により求められると仮定した、高周波電流のレベルと出力電圧との相関を説明するための図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態の変形例に係る監視装置における監視処理部および第1取得部の構成を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおいてアーク放電の検出が行われる際の動作手順を定めたシーケンスである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0017】
(1)本開示の実施の形態に係る監視装置は、太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分と、前記第2取得部により取得された、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える。
【0018】
このような構成により、アーク放電に起因する特定の周波数成分と出力電圧との関係に着目し、保存された特定の周波数成分および対応の出力電圧を用いてアーク放電の検出を行うことができるため、出力電流に含まれるノイズの影響を受けてアーク放電の検出を行う場合と比較して、インバータノイズ等に起因する誤判定を防ぎ、より正確な判定結果を得ることができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0019】
(2)複数の前記一定期間を含む検出期間において取得された前記特定の周波数成分のうち、第1閾値以上のレベルを有する前記特定の周波数成分の数が第2閾値以上である場合、前記第1閾値以上のレベルを有する前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果とに基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行う検出部を備えてもよい。
【0020】
電力変換装置において生じる高周波のインバータノイズ等は、監視装置に到達するまでに大きく減衰する可能性が高い。すなわち、上記のような構成により、処理部により保存される第1閾値以上のレベルの特定の周波数成分には、インバータノイズ等が含まれない可能性が高い。このため、上記のような構成により、インバータノイズ等に起因する誤判定、および一時的に生じた高周波ノイズに起因する誤判定等をより確実に防ぎ、一定期間において高周波電流が複数回生じる可能性の高いアーク放電を、より一層正確に検出することができる。
【0021】
(3)前記検出部は、前記処理部により保存された前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果との相関に基づいて前記検出を行ってもよい。
【0022】
このように、アーク放電による特定の周波数成分のレベルが出力電圧に依存することに着目し、このような特性を利用してアーク放電の検出を行う構成により、アーク放電の検出をより一層正確に行うことができる。
【0023】
(4)前記処理部は、さらに、前記発電部の出力電流の前記一定期間における直流電流値を、前記特定の周波数成分に対応づけて保存する処理を行い、前記検出部は、前記処理部により保存された前記出力電圧の計測結果および前記直流電流値、に基づく電力値と、対応する前記特定の周波数成分との相関に基づいて前記検出を行ってもよい。
【0024】
このような構成により、第1閾値以上のレベルの特定の周波数成分に対応する出力電力に加えて、さらに、当該特定の周波数成分に対応する直流電流値を用いてアーク放電の検出を行うことにより、より一層正確な判定結果を得ることができる。
【0025】
(5)前記第1取得部は、前記発電部の出力電流を計測する複数の電流センサのうちのいずれか1つを選択し、選択した前記電流センサからの計測結果を取得する選択部を含んでもよい。
【0026】
このような構成により、複数の電流センサの各々の計測結果を取得するための構成を電流センサごとに設ける必要がなく、複数の電流センサの計測結果を取得することのできる構成を簡単に実現することができる。
【0027】
(6)前記監視装置は、前記発電部の出力電圧を用いて動作してもよい。
【0028】
このような構成により、高電圧である発電部の出力電圧を用いて動作するとともに、当該出力電圧をアーク放電の検出にも用いることができる。
【0029】
(7)本開示の実施の形態に係る監視装置は、太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、前記第2取得部により取得された前記一定期間における前記出力電圧の計測結果、および前記発電部の出力電流の前記一定期間における直流電流値、に基づく電力値を算出し、算出した前記電力値と、前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備える。
【0030】
このような構成により、アーク放電に起因する特定の周波数成分と電力値との関係に着目し、保存された特定の周波数成分および対応の電力値を用いてアーク放電の検出を行うことができるため、出力電流に含まれるノイズの影響を受けてアーク放電の検出を行う場合と比較して、インバータノイズ等に起因する誤判定を防ぎ、より正確な判定結果を得ることができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0031】
(8)本開示の実施の形態に係る監視システムは、太陽光発電システムに用いられる監視装置と、判定装置とを備える監視システムであって、前記監視装置は、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得し、取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出し、抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて、前記判定装置へ送信し、前記判定装置は、前記監視装置から送信された前記特定の周波数成分および前記出力電圧の計測結果を受信し、前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果とに基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行う。
【0032】
このような構成により、アーク放電に起因する特定の周波数成分と出力電圧との関係に着目し、保存された特定の周波数成分および対応の出力電圧を用いてアーク放電の検出を行うことにより、出力電流に含まれるノイズの影響を受けてアーク放電の検出を行う場合と比較して、インバータノイズ等に起因する誤判定を防ぎ、より正確な判定結果を得ることができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0033】
(9)本開示の実施の形態に係る監視方法は、太陽光発電システムにおける監視方法であって、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得するステップと、取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出するステップと、抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存するステップと、保存した前記特定の周波数成分および対応の前記出力電圧の計測結果に基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行うステップとを含む。
【0034】
このような方法により、アーク放電に起因する特定の周波数成分と出力電圧との関係に着目し、保存された特定の周波数成分および対応の出力電圧を用いてアーク放電の検出を行うことにより、出力電流に含まれるノイズの影響を受けてアーク放電の検出を行う場合と比較して、インバータノイズ等に起因する誤判定を防ぎ、より正確な判定結果を得ることができる。したがって、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0035】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0036】
<構成および基本動作>
[太陽光発電システムの構成]
図1は、本開示の実施の形態に係る太陽光発電システムの構成を示す図である。
【0037】
図1を参照して、太陽光発電システム401は、4つのPCS(Power Conditioning Subsystem)ユニット80と、キュービクル6とを備える。キュービクル6は、銅バー73と、変圧器10とを含む。
【0038】
図1では、4つのPCSユニット80を代表的に示しているが、さらに多数または少数のPCSユニット80が設けられてもよい。
【0039】
図2は、本開示の実施の形態に係るPCSユニットの構成を示す図である。
【0040】
図2を参照して、PCSユニット80は、4つの集電ユニット60と、PCS(電力変換装置)8とを備える。PCS8は、銅バー7と、電力変換部9と、収集部21とを含む。
【0041】
図2では、4つの集電ユニット60を代表的に示しているが、さらに多数または少数の集電ユニット60が設けられてもよい。
【0042】
また、収集部21は、PCS8の内部に設けられる代わりに、PCS8の外部の装置に設けられてもよい。収集部21が設けられる外部の装置を収集装置とすると、収集装置は、たとえば、PCS8の近傍に設けられ、PCS8内の銅バー7を介して互いに接続された後述する各集約ライン5のいずれか1つに接続される。
【0043】
図3は、本開示の実施の形態に係る集電ユニットの構成を示す図である。
【0044】
図3を参照して、集電ユニット60は、4つの太陽電池ユニット74を有する。
【0045】
図3では、4つの太陽電池ユニット74を代表的に示しているが、さらに多数または少数の太陽電池ユニット74が設けられてもよい。
【0046】
図4は、本開示の実施の形態に係る太陽電池ユニットの構成を示す図である。
【0047】
図4を参照して、太陽電池ユニット74は、4つの発電部78A,78B,78C,78Dと、接続箱76とを含む。以下、発電部78A,78B,78C,78Dの各々を発電部78とも称する。発電部78は、太陽電池パネル79を有する。接続箱76は、銅バー77を有する。
【0048】
図4では、4つの発電部78を代表的に示しているが、さらに多数または少数の発電部78が設けられてもよい。
【0049】
発電部78は、この例では4つの太陽電池パネル79が直列接続されたストリングである。
【0050】
図4では、4つの太陽電池パネル79を代表的に示しているが、さらに多数または少数の太陽電池パネルが設けられてもよい。
【0051】
太陽光発電システム401の各PCSユニット80では、
図3に示す集電ユニット60における太陽電池ユニット74、に含まれる複数の発電部78からの出力ラインおよび集約ラインすなわち電力線がそれぞれ、
図2に示す電力変換部9に電気的に接続される。
【0052】
より詳細には、発電部78の出力ライン1は、発電部78に接続された第1端と、銅バー77に接続された第2端とを有する。各出力ライン1は、銅バー77を介して集約ライン5に集約される。銅バー77は、たとえば接続箱76の内部に設けられている。
【0053】
発電部78は、太陽光を受けると、受けた太陽光のエネルギーを直流電力に変換し、変換した直流電力を出力ライン1へ出力する。
【0054】
図3および
図4を参照して、集約ライン5は、対応の太陽電池ユニット74における銅バー77に接続された第1端と、銅バー7に接続された第2端とを有する。
【0055】
図2を参照して、PCS8において、内部ライン3は、銅バー7に接続された第1端と、電力変換部9に接続された第2端とを有する。
【0056】
図1~
図4を参照して、太陽光発電システム401では、上述のように複数の発電部78からの各出力ライン1が集約ライン5に集約され、各集約ライン5が内部ライン3に集約され、電力変換部9に電気的に接続される。
【0057】
PCS8において、電力変換部9は、たとえば、各発電部78において発電された直流電力を出力ライン1、銅バー77、集約ライン5、銅バー7および内部ライン3経由で受けると、受けた直流電力を交流電力に変換して集約ライン4へ出力する。
【0058】
集約ライン4は、電力変換部9に接続された第1端と、銅バー73に接続された第2端とを有する。
【0059】
キュービクル6において、各PCS8における電力変換部9から各集約ライン4へ出力された交流電力は、銅バー73を介して変圧器10へ出力される。そして、変圧器10において電圧レベル等が変換された交流電力は、系統へ出力される。
【0060】
[監視システムの構成]
図5は、本開示の実施の形態に係る監視システムの構成を示す図である。
図6は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける監視装置の構成を示す図である。
図6では、
図4に示す接続箱76の内部がより詳細に示されている。
【0061】
図5および
図6を参照して、監視システム301は、太陽光発電システム401に用いられる。監視システム301は、判定装置101と、複数の監視装置111とを含む。
【0062】
図5では、1つの集電ユニット60に対応して設けられた4つの監視装置111を代表的に示しているが、さらに多数または少数の監視装置111が設けられてもよい。
【0063】
監視システム301では、監視装置111におけるセンサによる計測結果に基づく情報(以下、「計測情報」とも称する。)が、PCS8における収集部21へ定期的または不定期に伝送される。
【0064】
監視装置111は、たとえば集電ユニット60において、
図6に示す接続箱76ごとに設けられている。より詳細には、各監視装置111は、たとえば、対応の出力ライン1および集約ライン5に電気的に接続されている。
【0065】
監視装置111は、対応の太陽電池ユニット74における各出力ライン1の電流をセンサにより計測する。また、監視装置111は、対応の太陽電池ユニット74における各出力ライン1の電圧をセンサにより計測する。
【0066】
PCS8における収集部21は、各監視装置111の計測結果を収集する。より詳細には、子局である監視装置111は、たとえば、集約ライン5を介して電力線通信(PLC:Power Line Communication)を行うことにより、親局であるPCS8の収集部21へ計測情報を送信する。そして、収集部21は、各監視装置111から送信された複数の計測情報を判定装置101へ転送する。
【0067】
判定装置101は、複数のPCS8の各々の収集部21に接続されている。PCS8の収集部21、および判定装置101は、たとえば、WAN(Wide Area Network)を用いた通信を行うことにより、計測情報の送受信を行う。
【0068】
[監視装置の構成]
図6に示すように、接続箱76は、集約部91と、出力ライン1と、集約ライン5とを含む。
【0069】
出力ライン1の各々は、プラス側出力ライン1pと、マイナス側出力ライン1nとを含む。
【0070】
集約ライン5は、プラス側集約ライン5pと、マイナス側集約ライン5nとを含む。集約部91は、銅バー77を含み、複数の発電部78からの出力ライン1を集約する。銅バー77は、プラス側銅バー77pと、マイナス側銅バー77nとを有する。
【0071】
図示しないが、
図5に示すPCS8における銅バー7は、プラス側集約ライン5pおよびマイナス側集約ライン5nにそれぞれ対応して、プラス側銅バー7pおよびマイナス側銅バー7nを含む。
【0072】
より詳細には、プラス側出力ライン1pは、対応の発電部78に接続された第1端と、プラス側銅バー77pに接続された第2端とを有する。
【0073】
マイナス側出力ライン1nは、対応の発電部78に接続された第1端と、マイナス側銅バー77nに接続された第2端とを有する。
【0074】
プラス側集約ライン5pは、プラス側銅バー77pに接続された第1端と、PCS8におけるプラス側銅バー7pに接続された第2端とを有する。マイナス側集約ライン5nは、マイナス側銅バー77nに接続された第1端と、PCS8におけるマイナス側銅バー7nに接続された第2端とを有する。
【0075】
監視装置111は、監視処理部11と、電源部12と、第1取得部13と、通信部14と、電圧センサ17と、記憶部18と、計測部19とを備える。計測部19は、4つの電流センサ16を含む。なお、監視装置111は、出力ライン1の数に応じて、さらに多数または少数の電流センサ16を備えてもよい。通信部14は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路により実現される。記憶部18は、たとえば不揮発性メモリである。
【0076】
監視装置111は、たとえば、発電部78の近傍に設けられている。具体的には、監視装置111は、たとえば、計測対象の出力ライン1が接続された銅バー77が設けられた接続箱76の内部に設けられている。なお、監視装置111は、接続箱76の外部に設けられてもよい。
【0077】
監視装置111は、たとえば、プラス側集約ライン5pおよびマイナス側集約ライン5nとそれぞれプラス側電源線26pおよびマイナス側電源線26nを介して電気的に接続されている。以下、プラス側電源線26pおよびマイナス側電源線26nの各々を、電源線26とも称する。
【0078】
電源部12は、たとえば、プラス側集約ライン5pおよびマイナス側集約ライン5nから供給される出力電圧を取得する。監視装置111は、電源部12により取得される出力電圧を電源電圧として用いて動作する。
【0079】
第1取得部13は、発電部78の電流の計測結果を取得する。より詳細には、第1取得部13は、電流センサ16により計測された出力ライン1の電流を示す計測結果を取得する。
【0080】
具体的には、電流センサ16は、たとえば、巻線タイプまたはホール素子タイプの電流プローブである。電流センサ16は、発電部78とPCS8との間に接続され、たとえば電源部12から受けた電力を用いて、対応のプラス側出力ライン1pを通して流れる電流を所定の計測周期で計測する。計測周期は、たとえば1秒である。
【0081】
そして、電流センサ16は、たとえば、計測結果を示すアナログ信号を第1取得部13へ出力する。なお、電流センサ16は、マイナス側出力ライン1nを通して流れる電流を計測してもよい。
【0082】
電圧センサ17は、たとえば所定の計測周期で出力ライン1の電圧を計測する。より詳細には、電圧センサ17は、プラス側銅バー77pおよびマイナス側銅バー77n間の電圧を計測する。そして、電圧センサ17は、たとえば、計測結果を示すアナログ信号を監視処理部11へ出力する。
【0083】
通信部14は、集約ラインを介した電力線通信を、
図5に示すPCS8の収集部21と行うことが可能である。より詳細には、通信部14は、電源線26および集約ライン5を介してPCS8の収集部21と電力線通信を行うことにより、情報の送受信を行うことができる。具体的には、通信部14は、たとえば、後述するように記憶部18に保存されている計測結果を示す計測情報を定期的または不定期に取得し、取得した計測情報をPCS8の収集部21へ送信する。
【0084】
[監視装置における監視処理部の構成]
図7は、
図6に示す監視装置における監視処理部および第1取得部の構成を示す図である。
【0085】
図7を参照して、監視処理部11は、第1ADC(アナログデジタルコンバータ)42と、第2ADC43と、第3ADC44と、処理部45と、第1増幅器47と、フィルタ(抽出部)48と、第2増幅器49と、第2取得部50とを含む。第1取得部13は、選択部40を含む。処理部45および第2取得部50は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)およびDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサにより実現される。
【0086】
選択部40は、たとえば、マルチプレクサであり、20msなどの所定時間ごとに、複数の電流センサ16のうちのいずれか1つの電流センサ16を選択し、選択した電流センサ16からのアナログ信号を取得して第1増幅器47およびフィルタ48へ出力する。
【0087】
第1増幅器47は、選択部40から受けたアナログ信号を増幅して第1ADC42へ出力する。
【0088】
第1ADC42は、第1増幅器47から受けた、発電部78の出力電流の計測結果を示すアナログ信号をデジタル信号に変換して処理部45へ出力する。
【0089】
フィルタ48は、たとえば、特定の周波数成分を抽出するBPF(バンドパスフィルタ)である。特定の周波数成分は、高周波成分、たとえば、20kHz~100kHzの周波数帯域に含まれる成分である。
【0090】
フィルタ48は、選択部40によって取得された出力電流の計測結果に基づいて、発電部78の出力電流の特定の周波数成分を抽出する。具体的には、フィルタ48は、選択部40から受けたアナログ信号のうち、特定の周波数成分を通過させて第2増幅器49へ出力する。なお、フィルタ48は、BPFに限らず、たとえば、所定の周波数以上の周波数成分を抽出するHPF(ハイパスフィルタ)であってもよい。
【0091】
第2増幅器49は、フィルタ48から受けたアナログ信号を増幅して第2ADC43へ出力する。
【0092】
第2ADC43は、第2増幅器49から受けた、上記特定の周波数成分のレベルを示すアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を処理部45へ出力する。
【0093】
第3ADC44は、電圧センサ17から受けた、発電部78の出力電圧の計測結果を示すアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号を第2取得部50へ出力する。第2取得部50は、たとえば、第3ADC44からのデジタル信号を取得し、当該デジタル信号および電圧センサ17のIDを処理部45へ出力する。
【0094】
(電流センサの計測結果および電圧センサの計測結果の保存)
処理部45は、電流センサ16の計測結果である電流値、および電圧センサ17の計測結果である電圧値を、記憶部18に保存する。
【0095】
図8は、本開示の実施の形態に係る監視装置における記憶部に保存されている各計測結果の一例を示す図である。
【0096】
図8を参照して、記憶部18には、接続箱76に設けられた電流センサ16および電圧センサ17の計測結果を登録するための計測結果ログT1が保存されている。
【0097】
計測結果ログT1は、たとえば、接続箱76に、IDがそれぞれ「I1」,「I2」,「I3」,「I4」の4つの電流センサ16、ならびにIDが「V1」の電圧センサ17が設けられていることを示す。
【0098】
処理部45は、第1ADC42から受けたデジタル信号、および第2取得部50から受けたデジタル信号に基づいて、各電流センサ16の計測結果である直流電流値、および電圧センサ17の計測結果である電圧値を時系列に並べて計測結果ログT1に登録する。
【0099】
たとえば、処理部45は、第1ADC42からのデジタル信号の示す値の、時刻t1を中央とする一定期間Pdにおける平均値を、時刻t1の直流電流値として算出する。そして、処理部45は、たとえば、算出した直流電流値を、計測結果ログT1における時刻t1に対応する欄であり、かつ出力電流の計測元である電流センサ16のIDに対応する欄に登録する。処理部45は、時刻t1以降、期間Pdが経過するタイミングごとの時刻t2,t3,・・・についても同様に、直流電流値を計測結果ログT1に登録する。
【0100】
期間Pdは、たとえば、選択部40が電流センサ16の選択を切り替える間隔である20msに、電流センサ16の数を乗じた長さである。
【0101】
また、処理部45は、第2取得部50からのデジタル信号の示す値の、時刻t1を中央とする期間Pdにおける平均値を、時刻t1の電圧値として算出する。そして、処理部45は、たとえば、算出した電圧値を、計測結果ログT1における時刻t1に対応する欄であり、かつ出力電圧の計測元である電圧センサ17のIDに対応する欄に登録する。処理部45は、時刻t1以降、期間Pdが経過するタイミングごとの時刻t2,t3,・・・についても同様に、電圧値を計測結果ログT1に登録する。
【0102】
具体的には、計測時刻t1に対応する、4つの電流センサ16による計測結果である直流電流値がそれぞれ「5.0A」,「5.3A」,「5.1A」,「5.2A」であり、電圧センサ17による計測結果である電圧値が「500V」であるとする。この場合、処理部45は、計測結果ログT1における対応箇所に、各電流センサ16の計測結果「5.0A」,「5.3A」,「5.1A」,「5.2A」、および電圧センサ17の計測結果「500V」を書き込む。
【0103】
処理部45は、次の計測時刻t2以降についても同様に、計測結果ログT1における対応箇所に、各電流センサ16による計測結果、および電圧センサ17による計測結果を書き込む。
【0104】
通信部14は、たとえば、定期的または不定期に、記憶部18に保存されている計測結果ログT1を参照して、電流値および電圧値を示す計測情報が新たに追加されている場合、新たに追加された計測情報をPCS8の収集部21へ送信する。そして、収集部21は、通信部14から受信した計測情報を判定装置101へ送信する。判定装置101は、収集部21から受信した計測情報に基づいて、後述するように、各発電部78の発電状況が正常であるか否かを判定する。
【0105】
(特定の周波数成分および対応する出力電圧の保存)
処理部45は、フィルタ48により抽出された特定の周波数成分のレベルが所定の閾値Th1以上である場合、当該特定の周波数成分と、対応する出力電圧とを記憶部18に保存する処理を行う。
【0106】
より詳細には、処理部45は、たとえば、第2ADC43から受けたデジタル信号の示す高周波の出力電流値の、時刻tを中央とする期間Pdにおける平均値が閾値Th1以上である場合、計測結果ログT1を参照して、当該平均値と、当該時刻tに対応する電圧値とを記憶部18に保存する処理を行う。
【0107】
ここで、PCS8が監視装置111から離れた箇所に設置されている場合、当該PCS8において生じる高周波のインバータノイズは、監視装置111に到達するまでに大きく減衰する可能性が高い。このため、閾値Th1以上のレベルを有する周波数成分、すなわち高周波のインバータノイズ以外の高周波電流を抽出して保存する構成により、後述するアーク放電の検出において、より正確な判定結果を得ることができる。
【0108】
具体的には、処理部45は、期間Pdにおける電流センサ16による計測結果を用いて、閾値Th1以上のレベルを有する周波数成分を検出したとする。この場合、処理部45は、たとえば、計測結果ログT1を参照して、当該期間Pdの中央の時刻tに対応する電圧値を、高周波電流に対応する出力電圧として特定する。そして、処理部45は、特定した対応の出力電圧と、検出した上記周波数成分のレベル(以下、「高周波電流のレベル」と称する。)と、当該期間Pdの中央の時刻tとを記憶部18に保存する処理を行う。
【0109】
そして、通信部14は、たとえば、記憶部18に保存されている、期間Pdにおいて検出された高周波電流のレベル、および対応の出力電圧を示す高周波電流情報、ならびに時刻tを示す時刻情報を、定期的または不定期にPCS8の収集部21へ送信する。
【0110】
なお、処理部45は、第2ADC43から受けたデジタル信号に対してFFT(Fast Fourier Transform)演算を行うことにより、期間Pdに計測された高周波電流から、ノイズが生じる可能性の高い特定帯域の高周波成分を除去してもよい。
【0111】
たとえば、処理部45は、時刻tを中央とする期間Pdに計測された高周波の出力電流値の平均値が閾値Th1以上である場合、FFT演算処理を行い、特定帯域の高周波成分を除去したスペクトルの総和を算出する。そして、処理部45は、算出した総和が閾値Th3以上である場合、算出した総和と、時刻tに対応する出力電圧とを記憶部18に保存する処理を行う。これにより、後述するアーク放電の検出において、フィルタ48により除去されない帯域外のノイズに起因する誤判定を防ぐことができる。
【0112】
また、処理部45は、時刻tを中央とする期間Pdに計測された高周波の出力電流値の平均値が閾値Th1以上であるか否かの確認を行うことなく、特定帯域の高周波成分を除去したスペクトルの総和を算出し、算出した総和が閾値Th3以上である場合、当該総和と、時刻tに対応する出力電圧とを記憶部18に保存する処理を行う構成であってもよい。
【0113】
また、上述した監視装置111では、選択部40が、複数の電流センサ16のうちのいずれか1つの電流センサ16を選択し、選択した電流センサ16からのアナログ信号を取得して第1増幅器47およびフィルタ48へ出力する構成であるとしたが、監視装置111は選択部40を含まない構成であってもよい。
【0114】
この場合、たとえば、監視装置111は、電流センサ16ごとに第1増幅器47および第1ADC42を含み、電流センサ16からの計測結果は、対応する第1増幅器47および第1ADC42を介して処理部45へ出力される。また、たとえば、監視装置111は、電流センサ16ごとにフィルタ48、第2増幅器49および第2ADC43を含み、電流センサ16からの計測結果は、対応するフィルタ48、第2増幅器49および第2ADC43を介して処理部45へ出力される。
【0115】
また、監視装置111は、電源部12により取得される、発電部78からの出力電圧を電源電圧として用いて動作する構成に限らず、たとえば、他の電源供給装置からの電源電圧を用いて動作する構成であってもよい。
【0116】
[判定装置の構成]
【0117】
図9は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおける判定装置の構成を示す図である。
【0118】
図9を参照して、判定装置101は、取得部31と、記憶部32と、判定部33と、通信部34と、検出部35とを備える。判定部33および検出部35は、たとえば、CPUおよびDSP等のプロセッサにより実現される。通信部34は、たとえば通信用IC(Integrated Circuit)等の通信回路により実現される。記憶部32は、たとえば不揮発性メモリである。
【0119】
(発電状況の判定)
取得部31は、各発電部78の出力電流の計測結果である電流値、および出力電圧の計測結果である電圧値を示す計測情報を取得する。より詳細には、取得部31は、各接続箱76における監視装置111から送信された計測情報をPCS8の収集部21経由で受信する。そして、取得部31は、受信した計測情報の示す電流値および電圧値を記憶部32に保存する。
【0120】
判定部33は、記憶部32に保存されている各計測結果を参照して、たとえば、各発電部78の発電状況が正常であるか否かを判定し、発電状況の判定結果を通信部34に通知する。
【0121】
(アーク放電の検出)
取得部31は、監視装置111から送信された高周波電流情報および時刻情報をPCS8の収集部21経由で受信する。そして、取得部31は、受信した高周波電流情報の示す高周波電流のレベルおよび対応の出力電圧、ならびに時刻情報の示す時刻tを、記憶部32に保存する。
【0122】
検出部35は、記憶部32に保存されている高周波電流情報の示す、高周波電流のレベルおよび対応の出力電圧に基づいて、発電部78からの出力ライン1および集約ライン5等におけるアーク放電を検出する。
【0123】
たとえば、検出部35は、複数の期間Pdを含む検出期間において保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が所定の閾値Th2以上である場合、高周波電流のレベルと対応の出力電圧とに基づいて、アーク放電の検出を行う。閾値Th2は、2以上の自然数であり、たとえば5である。
【0124】
より詳細には、本願発明者らは、鋭意検討することにより、アーク放電が発生している場合、発電部78の出力電圧が高くなるほど、アーク放電による高周波電流のレベルが高くなるという知見を得た。すなわち、本願発明者らは、アーク放電による高周波電流のレベルと、対応の出力電圧との間には、正の相関があるという知見を得た。このため、検出部35は、監視装置111により検出された高周波電流のレベルと、対応の出力電圧との相関を求め、当該相関に基づいて、アーク放電の検出を行う。
【0125】
図10および
図11は、本開示の実施の形態に係る判定装置における検出部により求められる、高周波電流のレベルと出力電圧との相関を説明するための図である。
図10および
図11において、縦軸は高周波電流のレベルを示し、横軸は出力電圧を示す。
【0126】
図10および
図11を参照して、検出部35は、たとえば、出力電圧をX軸とし、高周波電流のレベルをY軸とする座標系において、複数の高周波電流をそれぞれ示す複数の点Pをプロットし、これら複数の点Pの位置に基づいて、高周波電流のレベルと出力電圧との相関の有無を判定する。
【0127】
具体的には、検出部35は、
図10に示すように、プロットした複数の点Pの位置に基づいて、傾きが所定の閾値A以上である近似直線Lを算出することができた場合、高周波電流のレベルと出力電圧との間に正の相関があると判定する。この場合、検出部35は、対応する接続箱76に接続されている発電部78からの出力ライン1および集約ライン5等においてアーク放電が生じていると判定し、アーク放電の判定結果を通信部34へ出力する。
【0128】
一方、
図11に示すように、複数の点Pの位置を用いて、傾きが所定の閾値A以上である近似直線Lを算出することができないとする。この場合、検出部35は、高周波電流のレベルと出力電圧との間に正の相関はなく、閾値Th1以上の高周波電流はブレーカのオンおよびオフの切り替え等により突発的に生じたノイズであり、アーク放電は生じていないと判定する。そして、検出部35は、たとえば、通信部34へのアーク放電の判定結果の出力を行わない。
【0129】
なお、検出部35は、検出期間において保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が所定の閾値Th2以上であるか否かに関わらず、高周波電流のレベルと対応の出力電圧との相関を求めて、当該相関に基づいてアーク放電の検出を行う構成であってもよい。
【0130】
また、検出部35は、接続箱76単位でアーク放電の検出を行ってもよいし、発電部78単位でアーク放電の検出を行ってもよい。
【0131】
検出部35によるアーク放電の検出が接続箱76単位で行われる場合、監視装置111における処理部45は、たとえば、各電流センサ16から得られた複数の計測結果をまとめて用いることにより、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流を検出する。また、検出部35によるアーク放電の検出が発電部78単位で行われる場合、監視装置111における処理部45は、たとえば、電流センサ16ごとに、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流を検出する。
【0132】
(アーク放電の検出の変形例1)
監視装置111における処理部45は、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流および対応の出力電圧を記憶部18に保存するだけでなく、閾値Th1未満のレベルを有する高周波電流および対応の出力電圧を記憶部18に保存してもよい。
【0133】
この場合、判定装置101における検出部35は、たとえば、取得部31により記憶部32に保存された高周波電流のうち、閾値Th1未満のレベルを有する高周波電流および対応する出力電圧を記憶部32から削除する。
【0134】
図12は、本開示の実施の形態に係る判定装置における検出部により求められると仮定した、高周波電流のレベルと出力電圧との相関を説明するための図である。
図12において、縦軸は高周波電流のレベルを示し、横軸は出力電圧を示す。
【0135】
図12を参照して、検出部35が、閾値Th1未満のレベルを有する高周波電流および対応する出力電圧を記憶部32から削除せずに、記憶部32に保存されているすべての高周波電流および対応の出力電圧に基づいて、高周波電流のレベルと出力電圧との相関を求めると仮定する。
【0136】
一例として、PCS8において生じる高周波のインバータノイズが計測された場合について説明する。
図12に示すように、PCS8において生じる高周波のインバータノイズは監視装置111に到達するまでに大きく減衰する可能性が高く、ここでは、検出期間に保存された高周波電流のうち、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数がゼロであったとする。また、閾値Th1未満のレベルを有する複数の高周波電流をそれぞれ示す複数の点Pの位置に基づいて、傾きが閾値A以上である近似直線Lを算出することができたとする。このような場合、高周波電流のレベルと出力電圧との間に正の相関があるため、検出部35は、計測された高周波電流はPCS8において生じるインバータノイズに起因するものであるにもかかわらず、アーク放電が生じていると誤判定してしまう。
【0137】
これに対して、上述のように、検出部35は、記憶部32に保存された高周波電流のうち、閾値Th1未満のレベルを有する高周波電流および対応する出力電圧を記憶部32から削除する。これにより、検出部35が、記憶部32に保存されている高周波電流を示す点Pをプロットしても、
図12に示すようなグラフが作成されることはなく、アーク放電の有無の誤判定を防ぐことができる。
【0138】
(アーク放電の検出の変形例2)
検出部35は、高周波電流のレベルと電力値との相関の有無の判定を行わない構成であってもよい。
【0139】
上述のとおり、PCS8において生じる高周波のインバータノイズは、監視装置111に到達するまでに大きく減衰する可能性が高い。このため、検出部35は、たとえば、検出期間に保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が閾値Th2以上であり、かつ各高周波電流に対応する電圧値がいずれも所定値以上である等の所定条件を満たす場合、発電部78からの出力ライン1および集約ライン5等においてアーク放電が生じていると判定する。
【0140】
(アーク放電の検出の変形例3)
判定装置101における検出部35は、高周波電流に対応する出力電圧の代わりに、当該高周波電流に対応する出力電力を用いて、アーク放電の検出を行う構成であってもよい。
【0141】
より詳細には、監視装置111における処理部45は、たとえば、時刻tを中央とする期間Pdにおいて取得された出力電流の計測結果から閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流を検出した場合、当該高周波電流のレベルと、時刻tの直流電流値と、時刻tの電圧値とを対応づけて記憶部18に保存する。
【0142】
通信部14は、記憶部18に保存されている高周波電流のレベル、対応の直流電流値、および対応の電圧値を示す高周波電流情報、ならびに時刻tを示す時刻情報をPCS8の収集部21へ送信する。
【0143】
判定装置101における取得部31は、監視装置111から送信された高周波電流情報および時刻情報をPCS8の収集部21経由で受信し、受信した高周波電流情報および時刻情報を記憶部32に保存する。
【0144】
検出部35は、記憶部32に保存されている高周波電流情報に基づいて、アーク放電の検出を行う。たとえば、検出部35は、検出期間に保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が閾値Th2以上である場合、高周波電流情報の示す直流電流値および電圧値に基づいて、高周波電流に対応する電力値を算出する。そして、検出部35は、高周波電流のレベルと、算出した対応の電力値との相関の有無を判定し、たとえば、高周波電流のレベルと電力値との間に正の相関があると判定した場合、アーク放電が生じていると判定する。
【0145】
なお、監視装置111における処理部45は、直流電流値および電圧値を記憶部18に保存する代わりに、直流電流値および電圧値に基づく電力値を算出し、算出した電力値を記憶部18に保存する構成であってもよい。この場合、監視装置111における通信部14は、記憶部18に保存されている高周波電流のレベル、および対応の電力値を示す高周波電流情報、ならびに時刻tを示す時刻情報をPCS8の収集部21へ送信する。そして、判定装置101における検出部35は、監視装置111からの高周波電流情報の示す高周波電流のレベルおよび対応の電力値に基づいて、アーク放電の検出を行う。
【0146】
(アーク放電の検出の変形例4)
判定装置101の代わりに、監視装置111がアーク放電の検出を行ってもよい。
【0147】
図13は、本開示の実施の形態の変形例に係る監視装置における監視処理部および第1取得部の構成を示す図である。
【0148】
図13を参照して、変形例に係る監視装置111における監視処理部11は、
図7に示す監視処理部11と比較して、さらに、検出部51を有する。検出部51は、上述した判定装置101における検出部35と同様に、記憶部18に保存されている高周波電流のレベルと、対応の出力電圧とに基づいて、アーク放電の判定を行い、判定結果を記憶部18に保存する。通信部14は、たとえば、定期的または不定期に記憶部18を確認し、アーク放電が生じている旨の新たな判定結果が記憶部18に保存されている場合、当該判定結果をPCS8の収集部21経由で判定装置101へ送信する。この場合、通信部14は、高周波電流情報および時刻情報の判定装置101への送信を行わなくてもよい。また、判定装置101は、検出部35を備えなくてもよい。
【0149】
[通知方法]
(発電状況の判定結果の通知)
通信部34は、判定部33から通知された発電状況の判定結果に基づいて、たとえば、発電状況が通常時とは異なる1または複数の発電部78を管理者等に通知する。
【0150】
具体的には、通信部34は、発電状況が通常時とは異なる発電部78のID等を、モニタに表示したり、メールで送信したりする。また、通信部34は、たとえば、複数の発電部78の配置を示す画面において、発電状況が通常時とは異なる発電部78のID等を明るく表示するなど、他の発電部78とは異なる表示態様で表示してもよい。
【0151】
(アーク放電の判定結果の通知)
また、通信部34は、アーク放電が生じている旨の判定結果を検出部35から受けた場合、または
図13に示す監視装置111の検出部51によるアーク放電の判定結果を、監視装置111の通信部14およびPCS8の収集部21経由で受信した場合、たとえば、判定対象である接続箱76または発電部78を管理者等に通知する出力処理を行う。
【0152】
具体的には、通信部34は、当該接続箱76または当該発電部78のID等を、モニタに表示したり、メールで送信したりする。また、通信部34は、たとえば、複数の接続箱76または発電部78の配置を示す画面において、当該接続箱76または当該発電部78のID等を明るく表示するなど、他の接続箱76または他の発電部78とは異なる表示態様で表示してもよい。
【0153】
これにより、管理者は、各発電部78の発電状況だけでなく、さらに、アーク放電の発生の有無の両方を把握することができる。
【0154】
<動作の流れ>
次に、監視システム301においてアーク放電の検出が行われる際の動作手順について図面を用いて説明する。
【0155】
監視システム301における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンスの各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリから読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態でまたは通信回線を介して流通する。
【0156】
図14は、本開示の実施の形態に係る監視システムにおいてアーク放電の検出が行われる際の動作手順を定めたシーケンスである。
【0157】
図14を参照して、まず、監視装置111は、各電流センサ16および電圧センサ17からの計測結果を取得し、取得した計測結果を計測結果ログT1に登録する(ステップS11)。
【0158】
次に、監視装置111は、各電流センサ16からの計測結果に基づいて、発電部78の出力電流の特定の周波数成分を抽出する(ステップS12)。
【0159】
次に、監視装置111は、抽出した特定の周波数成分のうち、閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流を検出し、検出した高周波電流のレベルと、対応する出力電圧と、検出対象の期間Pdの中央の時刻tとを保存する(ステップS13)。
【0160】
次に、監視装置111は、保存した高周波電流のレベルおよび対応の出力電圧を示す高周波電流情報、ならびに時刻tを示す時刻情報を、判定装置101へ送信する(ステップS14)。
【0161】
次に、判定装置101は、監視装置111から送信された高周波電流情報および時刻情報を受信し、当該高周波電流情報および当該時刻情報に基づいて、検出期間に保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が閾値Th2以上であるか否かを確認する(ステップS15)。
【0162】
次に、判定装置101は、検出期間に保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が閾値Th2以上である場合(ステップS15において「YES」)、高周波電流のレベルと出力電圧との相関の有無を判定する(ステップS16)。
【0163】
次に、判定装置101は、たとえば、高周波電流のレベルと出力電圧との間に正の相関があると判定した場合(ステップS16において「YES」)、対応する接続箱76に接続されている発電部78からの出力ライン1または集約ライン5等においてアーク放電が生じていると判定する(ステップS17)。そして、判定装置101は、アーク放電の判定結果を管理者等に通知する(ステップS18)。
【0164】
一方、検出期間に保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が閾値Th2未満である場合(ステップS15において「NO」)、または、検出期間に保存された閾値Th1以上のレベルを有する高周波電流の数が閾値Th2以上であり(ステップS15において「YES」)、かつ高周波電流のレベルと出力電圧との間に正の相関がない場合(ステップS16において「NO」)、判定装置101は、アーク放電が生じていないと判定し、管理者等への通知を行わない。
【0165】
ところで、特許文献2に記載のアーク検出装置では、ストリングの出力電流の波形からノイズを検出することにより、アークの発生を検出している。
【0166】
しかしながら、ストリングの出力電流は、天候、時間および季節等に応じて刻々と変化する。また、発電電力の変化に伴い、電力変換装置において生じるインバータノイズも変化する。さらに、太陽光発電システムにおけるブレーカのオンおよびオフの切り替え等により突発的にノイズが生じることがある。このため、ストリングの出力電流の波形からノイズを検出するだけでは、当該ノイズがアーク放電によるものであるか否かを正確に判別することが難しい。太陽光発電システムの状態をより正確に判定することのできる技術が望まれる。
【0167】
これに対して、本開示の実施の形態に係る監視装置111では、第1取得部13が、太陽電池パネル79を含む発電部78の出力電流の計測結果を取得する。第2取得部50が、発電部78の出力電圧の計測結果を取得する。フィルタ48が、第1取得部13によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、発電部78の出力電流の特定の周波数成分を抽出する。そして、処理部45が、フィルタ48により抽出された特定の周波数成分のレベルが閾値Th1以上である場合、当該特定の周波数成分と、第2取得部50により取得された、上記一定期間における出力電圧の計測結果とを対応づけて保存する処理を行う。
【0168】
このような構成により、アーク放電に起因する特定の周波数成分と出力電圧との関係に着目し、保存された特定の周波数成分および対応の出力電圧を用いてアーク放電の検出を行うことができるため、出力電流に含まれるノイズの影響を受けてアーク放電の検出を行う場合と比較して、インバータノイズ等に起因する誤判定を防ぎ、より正確な判定結果を得ることができる。
【0169】
したがって、本開示の実施の形態に係る監視装置111、監視システム301および監視方法では、太陽光発電システムの状態をより正確に判定することができる。
【0170】
なお、本開示の実施の形態に係る判定装置101の機能の一部または全部が、クラウドコンピューティングによって提供されてもよい。すなわち、本開示の実施の形態に係る判定装置101が、複数のクラウドサーバ等によって構成されてもよい。
【0171】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0172】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
太陽光発電システムに用いられる監視装置であって、
太陽電池パネルを含む発電部の出力電流の計測結果を取得する第1取得部と、
前記発電部の出力電圧の計測結果を取得する第2取得部と、
前記第1取得部によって一定期間において取得された出力電流の計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された前記特定の周波数成分と、前記第2取得部により取得された、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて保存する処理を行う処理部とを備え、
さらに、
複数の前記一定期間を含む検出期間において前記処理部により保存された前記特定の周波数成分のうち、第1閾値以上のレベルを有する前記特定の周波数成分の数が第2閾値以上である場合、前記第1閾値以上のレベルを有する前記特定の周波数成分のレベルと前記出力電圧との間に正の相関があるか否かを判定し、前記正の相関があると判定した場合、前記発電部の出力ラインにおいてアーク放電が生じていると判定する検出部とを備える、監視装置。
【0173】
[付記2]
太陽光発電システムに用いられる監視装置と、判定装置とを備える監視システムであって、
前記監視装置は、太陽電池パネルを含む発電部の出力電流および出力電圧の計測結果を取得し、取得した出力電流の一定期間における計測結果に基づいて、前記発電部の出力電流の特定の周波数成分を抽出し、抽出した前記特定の周波数成分と、前記一定期間における前記出力電圧の計測結果とを対応づけて、前記判定装置へ送信し、
前記判定装置は、前記監視装置から送信された前記特定の周波数成分および前記出力電圧の計測結果を受信し、前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧の計測結果とに基づいて、前記発電部の出力ラインにおけるアーク放電の検出を行い、
前記判定装置は、前記特定の周波数成分と、対応の前記出力電圧との間に正の相関があるか否かを判定し、前記正の相関があると判定した場合、前記発電部の出力ラインにおいてアーク放電が生じていると判定し、
前記監視装置は、さらに、前記発電部の出力電流の計測結果、および前記出力電圧の計測結果を示す計測情報を前記判定装置へ送信し、
前記判定装置は、さらに、前記監視装置から受信した前記計測情報に基づいて、前記発電部の発電状況を判定する判定部を備える、監視システム。
【符号の説明】
【0174】
1 出力ライン
4,5 集約ライン
3 内部ライン
6 キュービクル
7 銅バー
8 PCS(電力変換装置)
9 電力変換部
10 変圧器
11 監視処理部
12 電源部
13 第1取得部
14 通信部
16 電流センサ
17 電圧センサ
18 記憶部
19 計測部
21 収集部
26 電源線
31 取得部
32 記憶部
33 判定部
34 通信部
35,51 検出部
40 選択部
42 第1ADC
43 第2ADC
44 第3ADC
45 処理部
47 第1増幅器
48 フィルタ(抽出部)
49 第2増幅器
50 第2取得部
60 集電ユニット
73,77 銅バー
74 太陽電池ユニット
76 接続箱
78,78A,78B,78C,78D 発電部
79 太陽電池パネル
80 PCSユニット
91 集約部
101 判定装置
111 監視装置
301 監視システム
401 太陽光発電システム