(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190733
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221220BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 375
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099128
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 良太
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA24
4C093CA23
4C093CA35
4C093DA04
4C093FD03
4C093FD08
4C093FD09
4C093FD11
4C093FF17
4C093FF19
4C093FF23
4C093FF24
4C093FF28
4C093FF35
4C093FF37
4C093FG01
4C093FG04
4C093FG13
4C093FG14
4C093FH02
4C093FH06
4C093FH07
4C093FH09
5L096BA06
5L096BA13
5L096DA02
5L096HA02
5L096HA08
5L096JA03
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】対象組織に含まれる異常領域の時間経過に伴う変化の様子を、より適切に推定することである。
【解決手段】実施形態の医用情報処理装置は、画像取得部と、灌流情報取得部と、特定部と、推定部とを持つ。画像取得部は、被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得する。灌流情報取得部は、前記画像取得部により取得された前記複数時相の医用画像に基づいて前記対象組織の灌流情報を取得する。特定部は、前記複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて前記対象組織の初期異常領域を特定する。推定部は、前記灌流情報取得部により取得された前記灌流情報と、前記特定部により特定された前記初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記複数時相の医用画像に基づいて前記対象組織の灌流情報を取得する灌流情報取得部と、
前記複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて前記対象組織の初期異常領域を特定する特定部と、
前記灌流情報取得部により取得された前記灌流情報と、前記特定部により特定された前記初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定する推定部と、
を備える医用情報処理装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記対象組織の時間経過後における異常領域の体積変化情報と、前記対象組織の灌流情報とに基づいて、前記特定部により特定された前記初期異常領域の前記時間経過後の異常領域の拡大を示す分布を推定する、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
時間経過による異常領域の拡大によって、前記時間経過後の異常領域が前記対象組織に含まれる所定の領域と重なるまでの時間を導出する導出部を更に備える、
請求項1または2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記所定の領域を抽出する領域抽出部を更に備え、
前記領域抽出部は、人体の解剖学的モデルに基づいて前記所定の領域を抽出する、
請求項3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記領域抽出部は、前記被検体に関する情報、または利用者からの指定情報に基づいて前記所定の領域を抽出する、
請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記対象組織は、脳であり、
前記所定の領域は、eloquent areaを含む、
請求項3から5のうち何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記導出部は、前記時間経過後の異常領域が前記所定の領域と重なった場合に前記被検体に発症する症状を予測する、
請求項3から6のうち何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記対象組織の領域と、前記初期異常領域と、前記時間経過後の異常領域とを含む画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された画像をディスプレイに表示させる表示制御部と、を更に備える、
請求項1から7のうち何れか1項に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記画像生成部は、複数の異なる時間が経過した後の異常領域を示すが画像を生成する場合に、それぞれの異常領域が識別可能となるように表示態様を異ならせる、
請求項8に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
医用情報処理装置のコンピュータが、
被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得し、
取得した前記複数時相の医用画像に基づいて前記対象組織の灌流情報を取得し、
前記複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて前記対象組織の初期異常領域を特定し、
取得した前記灌流情報と、特定した前記初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定する、
医用情報処理方法。
【請求項11】
医用情報処理装置のコンピュータに、
被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得させ、
取得された前記複数時相の医用画像に基づいて前記対象組織の灌流情報を取得させ、
前記複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて前記対象組織の初期異常領域を特定させ、
取得された前記灌流情報と、特定された前記初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置や、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等から取得した血管画像から異常部位を検出する技術が知られている。例えば、脳梗塞では、時間経過と共に梗塞巣が拡大し、予後が悪くなることが知られている。また、脳には、損傷されると急激に患者の症状が悪化するeloquent areaと呼ばれる領域が存在する。そこで、脳血管の異常箇所を検出し、その位置から損傷を受ける機能野を予測したり、診断時の梗塞巣を入力として時間と体積の関係をシミュレーションする技術が提案されている。しかしながら、提案されている技術では、脳血管の異常箇所から損傷される領域を特定することしかできず、損傷されるまでの時間を導出することはできない。また、提案されている技術は、梗塞巣の時間と体積のシミュレーションを行うことで体積の拡大を予測できたとしても、梗塞巣の拡大する方向やeloquent areaとの関係性を導出することができない。したがって、対象組織に含まれる異常領域の時間経過に伴う変化の様子を適切に推定することができない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Camilo R. Gomez, “Time Is Brain: The Stroke Theory of Relativity”, Journal of Stroke and Cerebrovascular Disease, Vol. 27, No.8, (August), 2018: pp. 2214-2227.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、対象組織に含まれる異常領域の時間経過に伴う変化の様子を、より適切に推定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の医用情報処理装置は、画像取得部と、灌流情報取得部と、特定部と、推定部とを持つ。画像取得部は、被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得する。灌流情報取得部は、前記画像取得部により取得された前記複数時相の医用画像に基づいて前記対象組織の灌流情報を取得する。特定部は、前記複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて前記対象組織の初期異常領域を特定する。推定部は、前記灌流情報取得部により取得された前記灌流情報と、前記特定部により特定された前記初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る医用情報処理装置を含む医用情報処理システム1の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係る医用情報処理装置100が実行する処理の一例を示すフローチャート。
【
図3】第1の実施形態に係る医用情報処理装置100が実行する処理の内容を説明するための図。
【
図4】複数の異なる将来梗塞領域を示す画像IM50の一例を示す図。
【
図5】第2の実施形態に係る医用情報処理装置を含む医用情報処理システム2の一例を示す図。
【
図6】第2の実施形態に係る医用情報処理装置100Aが実行する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】第2の実施形態に係る医用情報処理装置100Aが実行する処理の内容を説明するための図。
【
図8】第1時間および第2時間における将来梗塞領域を含む画像IM70の一例を示す図。
【
図9】第2の実施形態に係る画像生成機能145Aにより生成された画像IM80の一例を示す図。
【
図10】第2の実施形態に係る画像生成機能145Aにより生成される他の画像IM80A、IM80Bの一例示す図。
【
図11】症状予測情報を含む画像IM80Cの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の医用情報処理装置、医用情報処理方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置を含む医用情報処理システム1の一例を示す図である。医用情報処理システム1は、例えば、医用画像生成装置10と、医用画像サーバ20と、医用情報処理装置100とを備える。医用画像生成装置10と、医用画像サーバ20と、医用情報処理装置100とは、例えば、通信ネットワークNWを介して接続される。通信ネットワークNWは、電気通信技術を利用した情報通信網全般を意味する。通信ネットワークNWは、例えば、病院基幹LAN(Local Area Network)等の無線/有線LANの他、WAN(Wide Area Network)、インターネット網、電話通信回線網、光ファイバ通信ネットワーク、ケーブル通信ネットワーク、衛星通信ネットワーク等を含む。
【0010】
医用画像生成装置10は、患者などの被検体の医用画像を撮影する装置(モダリティ)である。医用画像生成装置10は、例えば、X線CT装置、MRI装置等の医用診断装置である。また、医用画像生成装置10は、PET(Positron Emission Tomography:陽電子放出断層撮影)装置、PET-CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)装置、SPECT(Single Photon Emission computed Tomography:単一光子放出コンピュータ断層撮影)装置、血管造影検査装置(アンギオグラフィー装置)等でもよい。以下の説明においては、医用画像生成装置10は、X線CT装置であるものとして説明する。
【0011】
医用画像生成装置10によって生成される医用画像には、例えば、脳や心臓、肺等の臓器、または四肢等の対象組織(対象部位)の画像が含まれる。例えば、脳組織を含む医用画像を生成する場合、被検体に造影剤が注入された後、医用画像生成装置10は、脳を含む照射領域にX線を照射して造影剤が被検体の頭部の血管を流れる様子を捉えながら脳全体または脳の所定の関心領域のスキャン撮影を行い、撮影により得られた投影データに対して再構成処理等を行って、医用画像(CT画像)を生成する。また、医用画像生成装置10は、造影剤の広がり(各組織に対する造影剤の到達時間)が分かるように連続する複数の時相で撮影された医用画像を生成する。なお、医用画像は、上述した造影撮像に代えて(または加えて)、ASL(Arterial Spin Labeling)等の造影撮像によって得られる画像であってもよい。
【0012】
また、医用画像生成装置10は、生成された医用画像に、関連情報を対応付けた医用画像データを生成し、生成した医用画像データを通信ネットワークNWを介して医用画像サーバ20や医用情報処理装置100に送信する。関連情報には、例えば、医用画像の撮影日時、被検体情報(被検体を識別する情報)、撮影部位(対象組織)、撮影方式、および撮影装置のうち、少なくとも一つの情報が含まれる。
【0013】
医用画像サーバ20は、医用画像生成装置10または通信ネットワークNWに接続された他の装置から取得された医用画像データを取得し、取得した医用画像データを管理する管理装置である。また、医用画像サーバ20は、医用情報処理装置100が実行した処理結果を取得して管理してもよい。医用画像サーバ20は、データベース等の記憶装置を備え、記憶装置に医用画像データ等の各種情報を格納して管理する。例えば、医用画像サーバ20は、医用情報処理装置100から医用画像データの取得要求があった場合には、記憶装置に記憶された医用画像データの中から、要求にあった医用画像データを抽出し、抽出した医用画像データを医用情報処理装置100に送信する。なお、医用情報処理システム1は、医用画像サーバ20を備えていない構成であってもよい。
【0014】
医用情報処理装置100は、一つまたは複数のプロセッサにより実現される。例えば、医用情報処理装置100は、クラウドコンピューティングシステムに含まれるコンピュータであってもよいし、他の機器に依存せずに単独で動作するコンピュータ(スタンドアローンのコンピュータ)であってもよい。医用情報処理システム1は、
図1の例では医用画像生成装置10と、医用画像サーバ20と、医用情報処理装置100とがそれぞれ1台ずつ設けられているが、これに限定されるものではなく、一方または双方が複数台設けられていてもよい。例えば、医用画像生成装置10と医用情報処理装置100とは、医用画像診断装置として一体に構成されていてもよい。
【0015】
[医用情報処理装置の構成]
第1の実施形態に係る医用情報処理装置100は、例えば、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、処理回路140と、メモリ150とを備える。
【0016】
通信インターフェース110は、例えば、NIC(Network Interface Card)等の通信インターフェースを含む。通信インターフェース110は、通信ネットワークNWを介して医用画像生成装置10と通信し、医用画像生成装置10から医用画像データ等の情報を受信する。通信インターフェース110は、受信した情報を処理回路140に出力する。また、通信インターフェース110は、処理回路140による制御を受けて、通信ネットワークNWを介して接続された他の装置に情報を送信してもよい。他の装置とは、例えば、医用画像サーバ20や、医師や看護師等の画像の読影者が利用可能な端末装置である。
【0017】
入力インターフェース120は、利用者(医用情報処理装置100を使用する使用者)からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路140に出力する。例えば、入力インターフェース120は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパネル等により実現される。また、入力インターフェース120は、例えば、マイク等の音声入力を受け付けるユーザインターフェースによって実現されてもよい。入力インターフェース120がタッチパネルである場合、ディスプレイ130は入力インターフェース120と一体として形成されてよい。
【0018】
ディスプレイ130は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ130は、医用画像生成装置10や医用画像サーバ20から取得した医用画像データや処理回路140によって処理された内容を示す画像等を表示したり、利用者からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示したりする。例えば、ディスプレイ130は、LCD(Liquid Crystal Display)や、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等である。
【0019】
処理回路140は、例えば、画像取得機能141と、灌流情報取得機能142と、特定機能143と、推定機能144と、画像生成機能145と、表示制御機能146とを備える。画像取得機能141は、「画像取得部」の一例である。灌流情報取得機能142は、「灌流情報取得部」の一例である。特定機能143は、「特定部」の一例である。推定機能144は、「推定部」の一例である。画像生成機能145は、「画像生成部」の一例である。表示制御機能146は、「表示制御部」の一例である。処理回路140は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ(記憶装置、記憶回路)150に記憶されたプログラムを実行することにより、これらの機能を実現するものである。
【0020】
ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit;ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device;SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device;CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array;FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ150にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは、回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。上記のプログラムは、予めメモリ150に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の非一時的記憶媒体に格納されており、非一時的記憶媒体が医用情報処理装置100のドライブ装置(不図示)に装着されることで非一時的記憶媒体からメモリ150にインストールされてもよい。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0021】
処理回路140が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路140は、医用情報処理装置100が有する構成ではなく、医用情報処理装置100と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つの医用情報処理装置100と接続されたワークステーション、あるいは複数の医用情報処理装置100に接続され、以下に説明する処理回路140と同等の処理を一括して実行する装置(例えば、クラウドサーバ)である。
【0022】
画像取得機能141は、通信インターフェース110を介して医用画像生成装置10または医用画像サーバ20から医用画像データを取得する。例えば、画像取得機能141は、例えば、被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像データを取得する。時相数は、例えば、対象組織ごとに設定されてもよく、対象組織の状態に応じて設定されてもよく、被検体ごとに設定されてもよい。また、時相数は固定数であってもよい。画像取得機能141は、取得した医用画像データを画像データ151としてメモリ150に記憶させてよい。
【0023】
灌流情報取得機能142は、画像取得機能141により取得された複数時相の医用画像データに基づいて、対象組織の灌流情報を取得する。灌流情報には、例えば、対象組織の血管内を流れる造影剤の位置や領域、流れる方向、移動速度、流量に関する情報等が含まれる。灌流情報取得機能142は、取得した結果を灌流情報152としてメモリ150に記憶させてよい。
【0024】
特定機能143は、複数時相の医用画像の少なくとも1時相の医用画像に基づいて、医用画像の撮影時における対象組織の異常領域を特定する。異常領域とは、例えば、梗塞領域(梗塞巣)または虚血領域(虚血巣)等のように、対象組織が正常でない状態であると推定される領域である。異常領域には、異常箇所(位置)の概念が含まれてよい。特定機能143により特定される撮影時の異常領域は、「初期異常領域」の一例である。以下では、対象組織が脳であり、異常領域が梗塞領域であるものとして説明する。つまり、特定機能143により特定される撮影時の梗塞領域(初期梗塞領域)は、脳細胞が壊死した領域である。特定機能143は、特定した初期梗塞領域を、梗塞領域情報154としてメモリ150に記憶させてよい。特定機能143の詳細については後述する。
【0025】
推定機能144は、灌流情報取得機能142により取得された灌流情報と、特定機能143により特定された初期梗塞領域とに基づいて、時間経過後の梗塞領域(将来梗塞領域)を推定する。将来梗塞領域は、「将来異常領域」の一例である。将来梗塞領域は、例えば、初期梗塞領域の所定時間経過後の梗塞領域(異常領域)の広がりを示す分布(異常梗塞分布)である。また、推定機能144は、例えば、メモリ150に記憶された体積変化情報153を参照し、体積変化情報153に含まれる梗塞領域の時間と体積の関係を示す情報に基づいて、将来異常領域を推定してもよい。推定機能144は、推定した将来梗塞領域を梗塞領域情報154としてメモリ150に記憶させてよい。この場合、推定機能144は、将来梗塞領域を初期梗塞領域と対応付けて梗塞領域情報154に記憶させてよい。推定機能144の詳細については後述する。
【0026】
画像生成機能145は、特定機能143により特定された初期梗塞領域に関する情報や、推定機能144により推定された将来梗塞領域に関する情報を示す画像を生成する。画像生成機能145の詳細については後述する。
【0027】
表示制御機能146は、医用画像生成装置10や医用画像サーバ20から受信した医用画像データ、画像生成機能145により生成された画像等をディスプレイ130や外部装置に表示させたり、表示情報155としてメモリ150に記憶させる。また、表示制御機能146は、画像生成機能145により生成された画像等を、通信ネットワークNWを介して医用画像生成装置10や医用画像サーバ20、その他の外部装置に送信させてもよい。
【0028】
メモリ150は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。これらの非一過性の記憶媒体は、NAS(Network Attached Storage)や外部ストレージサーバ装置といった通信ネットワークNWを介して接続される他の記憶装置によって実現されてもよい。また、メモリ150には、ROM(Read Only Memory)やレジスタ等の一過性の記憶媒体が含まれてもよい。メモリ150には、例えば、画像データ151、灌流情報152、体積変化情報153、梗塞領域情報154、表示情報155、プログラム、その他各種情報等が格納される。
【0029】
以下、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100が実行する処理の詳細について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、
図2では、医用情報処理装置100が実行する処理のうち、主に初期梗塞領域を特定し、将来梗塞領域(時間経過後の梗塞領域)を推定して利用者に提供する処理について説明する。
図3は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100が実行する処理の内容を説明するための図である。
図3の例において、時刻t1が最も早い時刻を示し、その後、時刻t2、t3、t4の順に遅い時刻を示すものとする。
【0030】
図2の例において、画像取得機能141は、医用画像生成装置10、医用画像サーバ20、またはメモリ150に記憶された画像データ151から、複数時相の医用画像を取得する(ステップS100)。
図3の例では、被検体の脳領域200を含む複数時相の医用画像IM10が示されている。
図3に示す脳領域200は、例えば、被検体の体軸断面(アキシャル断面、axial断面)の脳領域を簡易概略的に示しているが、他の角度の断面や三次元で示された脳領域であってもよい。
図3に示す医用画像IM10(t1)、IM10(t2)、IM10(t3)、IM10(t4)、…は、時相が異なる医用画像を示している。
【0031】
図2に戻り、灌流情報取得機能142は、複数時相の医用画像を用いて、脳領域200の灌流情報を取得する(ステップS110)。具体的には、灌流情報取得機能142は、所定時間経過ごとの脳領域200の血管を流れる造影剤の到達領域を取得する。また、灌流情報取得機能142は、時間情報と到達領域との関係を示す情報を取得する。時間情報と到達領域との関係を示す情報とは、例えば、到達時間に基づく造影剤の脳領域200内での三次元的な広がり度合(例えば、広がる大きさ、向き)を示す情報である。
【0032】
具体的には、灌流情報取得機能142は、予め脳全体を脳画像の最小単位であるボクセル単位で区切り、時間経過に伴って造影剤が脳の血管を移動した位置に対応するボクセルに、造影剤の到達時間情報を割り当てて、灌流情報として取得する。また、灌流情報取得機能142は、上述の処理を複数時相の医用画像に対して行う。また、灌流情報取得機能142は、取得した灌流情報に基づいて、灌流情報に関する画像(例えば、造影剤の到達時間情報をボクセルに持つ画像)を画像生成機能145に生成させる。
【0033】
図3の例では、灌流情報取得機能142が取得した灌流情報に関する画像IM20が示されている。画像IM20には、一例として、被検体の脳の血管を流れる造影剤の所定時間後の到達領域210(210a~210d)が示されている。
図3の例では、二次元画像が示されているが、生成される画像は三次元画像であってもよい。到達領域210a~210dは、それぞれ撮影時から異なる時間が経過した後のボクセルに基づく造影剤の到達領域が示されている。
図3の例では、撮影時からの時間が経過するにつれて、到達領域210a、210b、210c、210dの順に推移しているものとする。到達領域210b、210c、210dは、造影剤の広がり度合が等時線で示されている。
【0034】
図2に戻り、特定機能143は、取得した複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて対象組織(脳)の撮影時の梗塞領域(初期梗塞領域)を特定する(ステップS120)。例えば、特定機能143は、医用画像に基づいて造影剤が到達しないような位置や、時間が経過しても造影剤が広がっていかない領域、詰まっている領域を、初期梗塞領域として特定する。また、特定機能143は、特定した初期梗塞領域をボクセルに対応付けて、初期梗塞領域の位置(範囲、体積)を特定する。また、特定機能143は、特定した結果に基づいて脳領域200の初期梗塞領域に関する画像を、画像生成機能145に生成させる。なお、特定機能143は、脳領域200内に複数の初期梗塞領域が特定できる場合には、それぞれの初期梗塞領域に対して上述の処理を行う。
【0035】
図3の例では、特定機能143が特定した初期梗塞領域に関する画像IM30が示されている。
図3の例では、二次元画像であるが、生成される画像は三次元画像であってもよい。また、
図3の例では、脳領域200内で特定された初期梗塞領域220が、特定された位置および大きさで表示されている。なお、特定機能143により複数の初期梗塞領域を特定した場合には、それぞれの領域ごとに特定された位置および大きさで表示される。
【0036】
図2に戻り、次に、推定機能144は、所定時間経過後の梗塞領域(将来梗塞領域)を推定する(ステップS130)。具体的には、推定機能144は、特定機能143で特定された初期梗塞領域の体積情報(例えば、ボクセル数)と、メモリ150に記憶された体積変化情報153とに基づいて、梗塞領域の体積の拡大と時間との関係をシミュレートする。
【0037】
図3の例では、体積変化情報153として、時間[min]の経過に伴う梗塞体積[ml]の変化(拡大)の様子が示されている。梗塞体積は、例えば、ボクセル数であってもよい。
図3の例では、時間の経過と共に梗塞体積が拡大し、ある程度の時間を超えると体積の増加量が徐々に減っていくようなシミュレーションモデル(梗塞体積拡大シミュレーション)が示されている。なお、梗塞体積の拡大と時間との関係を示すシミュレーションモデルについては、例えば、非特許文献1に示される関係を用いてもよく、その他の既知のモデルを用いてもよい。
【0038】
例えば、推定機能144は、初期梗塞領域に関する画像(造影剤の到達時間をボクセルに持つ画像)から得られる初期梗塞領域の体積に基づいて、体積変化情報153のシミュレーションモデルを参照し、初期梗塞領域を含む医用画像を撮影した時点(撮影時)からt分後の体積を取得する。ここでは、初期梗塞領域に対応するボクセル数からnボクセル分だけ体積が拡大したとする。その後、推定機能144は、初期梗塞領域に隣接する周囲の領域に、nボクセルに対応するボクセル数(例えば、mボクセル)の領域を割り当てる。mボクセルは、上記nボクセルと同じ数でもよく、所定の重みを付加したボクセル数でもよい。初期梗塞領域に隣接する周囲の領域にボクセルを割り当てる場合、推定機能144は、灌流情報に基づいて造影剤の到達時間を取得し、到達時間が遅い領域の方が早い領域よりもボクセル数を多く割り当てる。これは、造影剤の到達時間が他の領域よりも遅い領域は、梗塞になる可能性高い領域だからである。例えば、
図3に示す画像IM20において、到達領域210b、210c、210dの等時線の間隔は、初期梗塞領域220の右上方向の領域で狭く、右下方向の領域で広くなっている。したがって、初期梗塞領域220の右上方向における造影剤の到達時間(移動速度)は、右下方向の到達時間よりも遅いと推定される。したがって、所定時間経過後には、初期梗塞領域220の右上方向の領域が梗塞状態となる可能性が高いと推定される。そのため、推定機能144は、右上方向の領域に多くのボクセルを割り当てる。
【0039】
そして、推定機能144は、割り当てたボクセルの体積と、初期梗塞領域とを足し合わせることで、t分後の梗塞領域(将来梗塞領域)を推定する。このように、第1の実施形態では、単に初期梗塞領域を中心として球状(二次元の場合には円状)に将来の梗塞領域を広げるのではなく、造影剤の灌流情報に基づいて所定方向ごとに梗塞体積を広げることで、より適切に将来梗塞領域を推定することができる。
【0040】
図2に戻り、画像生成機能145は、梗塞領域(例えば、将来梗塞領域)を示す画像を生成する(ステップS140)。次に、表示制御機能146は、生成された画像をディスプレイ130に表示させる(ステップS150)。これにより、本フローチャートの処理を終了する。
【0041】
図3の例では、画像生成機能145により生成され、表示制御機能146により表示された画像IM40が示されている。画像IM40には、脳領域200内に撮影時における初期梗塞領域220と、所定時間経過後の将来梗塞領域230とが示されている。なお、画像生成機能145は、画像IM20やIM30をディスプレイ130に表示させてもよい。
【0042】
なお、第1の実施形態において、推定機能144は、複数の異なる時間が経過した後の将来梗塞領域を推定してもよい。この場合、画像生成機能145は、推定された複数の時間経過後の将来梗塞領域を示す画像を生成する。
図4は、複数の異なる将来梗塞領域を示す画像IM50の一例を示す図である。
図4において、時間t11が最も短く、その後、時間t12、t13の順に時間が長くなっているものとする。IM50には、脳領域200内に、初期梗塞領域220と、撮影時から所定時間t11、t12、t13が経過した後の将来梗塞領域230(t11)、230(t12)、230(t13)が示されている。なお、画像生成機能145および表示制御機能146は、各経過時間t11、t12、t13に示す将来梗塞領域が、他の領域と識別可能となるようにそれぞれを異なる表示態様で表示させてもよい。異なる表示態様とは、例えば、模様や線種、色彩を異ならせることや、点滅表示の有無を異ならせることが含まれる。例えば、模様や線種、色彩等は、画像生成機能145により制御され、点滅表示等は、表示制御機能146により制御される。これにより、それぞれの経過時間における将来梗塞領域をより明確に利用者等に視認させることができる。
【0043】
また、表示制御機能146は、各経過時間t11、t12、t13における将来梗塞領域230(t11)、230(t12)、230(t13)のそれぞれを、所定時間ごとに切り替えて表示させてもよい。また、画像生成機能145は、時間経過に伴う領域の変化をアニメーション(動画像)で表示するように連続画像を生成して表示させてもよい。例えば、画像生成機能145は、
図4に示す時間t11、t12、t13が経過した後の将来梗塞領域を、順番にアニメーションで表示させる。また、画像生成機能145は、利用者が指定した時間帯における将来梗塞領域の変化を表す連続画像を生成してもよく、体積変化情報153を用いて推定した時間の最小値から最大値までを連続画像で表示させてもよい。これにより、利用者に梗塞領域の変化の様子をより詳細に把握させることができる。
【0044】
以上説明した第1の実施形態によれば、被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得する画像取得機能141と、画像取得機能141により取得された複数時相の医用画像に基づいて、対象組織の灌流情報を取得する灌流情報取得機能142と、複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて対象組織の初期異常領域を特定する特定機能143と、灌流情報と初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定する推定機能とを備えることにより、対象組織に含まれる異常領域の時間経過に伴う変化の様子を、より適切に推定することができる。例えば、第1の実施形態によれば、撮影時の梗塞領域を基準とした所定時間経過後の拡大領域と、造影剤の到達時間情報に基づく梗塞領域の広がり度合に基づいて、より適切な方向に拡大させた将来異常領域を推定することができる。したがって、利用者(例えば、医師)における被検体の治療判断を、より適切に支援することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る医用情報処理装置について説明する。なお、以下では、主に第1の実施形態と相違する部分を中心として説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成については、同一の名称および符号を付し、その具体的な説明は省略する。
図5は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置を含む医用情報処理システム2の一例を示す図である。医用情報処理システム2は、第1の実施形態の医用情報処理システム1と比較して、医用情報処理装置100に代えて、医用情報処理装置100Aを備える点で相違する。
【0046】
[医用情報処理装置の構成]
第2の実施形態に係る医用情報処理装置100Aは、例えば、通信インターフェース110と、入力インターフェース120と、ディスプレイ130と、処理回路140Aと、メモリ150とを備える。医用情報処理装置100Aは、第1の実施形態に係る医用情報処理装置100と比較して、処理回路140およびメモリ150に代えて、処理回路140Aおよびメモリ150Aに備える点で相違する。
【0047】
処理回路140Aは、例えば、画像取得機能141と、灌流情報取得機能142と、特定機能143と、推定機能144と、画像生成機能145Aと、表示制御機能146と、領域抽出機能147と、導出機能148とを備える。第2の実施形態の処理回路140Aでは、第1の実施形態の処理回路140と比較して、画像生成機能145に代えて画像生成機能145Aを備えると共に、領域抽出機能147および導出機能148を備える点で相違する。画像生成機能145Aは、「画像生成部」の一例である。領域抽出機能147は、「領域抽出部」の一例である。導出機能148は、「導出部」の一例である。
【0048】
メモリ150Aには、例えば、画像データ151、灌流情報152、体積変化情報153、梗塞領域情報154、表示情報155、解剖学アトラス156、プログラム、その他各種情報等が格納される。メモリ150Aは、メモリ150と比較して解剖学アトラス156が記憶されている点で相違する。解剖学アトラス156は、例えば、人体の解剖学的な構造情報等に基づいて、人体の対象組織(例えば、脳や心臓、四肢)を所定の領域ごとに区画化または分割して表現された解剖学的モデルである。解剖学アトラス156には、複数の解剖学的要素を表す情報が含まれ、上記情報には、例えば画像情報(以下、アトラス画像と称する)が含まれる。例えば、対象部位が脳である場合、アトラス画像は、脳領域が解剖学的結合や機能学的結合、因果的結合等によって複数の領域に区画化された区画化画像を意味する。これらの区画化画像は、例えば、ボクセルで表現される。例えば、解剖学的結合により区画化する場合には、脳領域を、前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、および脳梁等に区画化することができる。また、解剖学アトラス156には、対象組織に含まれる重要度の高い領域に関する情報が含まれてよい。重要度の高い領域とは、損傷されると急激に被検体の症状が悪化する領域であり、対象組織の機能に影響を及ぼす領域である。対象組織が脳である場合、重要度の高い領域にはeloquent areaが含まれる。eloquent areaは、その部位が損傷することで重篤な神経脱落症状を生ずる領域である。eloquent areaには、例えば、運動野、感覚野、言語中枢、内包、基底核、視覚野、脳幹等の各機能野(脳機能)に対応する複数の領域が含まれる。eloquent areaは、アトラス画像のボクセルに対応付けられていてもよい。
【0049】
領域抽出機能147は、対象組織に対する所定の領域を抽出する。所定領域とは、例えば、対象組織に含まれる重要度の高い領域である。例えば、対象組織が脳である場合、領域抽出機能147は、メモリ150に記憶された対象組織の解剖学アトラス156に含まれるアトラス画像を用いてeloquent areaを抽出する。メモリ150に解剖学アトラス156が記憶されていない場合、領域抽出機能147は、通信ネットワークNWを介して接続される外部装置に記憶された解剖学アトラスを取得し、eloquent areaを抽出してもよい。
【0050】
また、領域抽出機能147は、脳内に存在する複数のeloquent areaのうち、所定の脳機能(例えば、運動、言語)に影響を及ぼすeloquent areaを抽出してもよい。所定の脳機能に関する情報は、例えば、入力インターフェース120により入力されてもよく、被検体ごとに設定されてもよい。例えば、領域抽出機能147は、表示制御機能146により脳領域に含まれる複数のeloquent areaをディスプレイ130に表示させ、表示されたeloquent areaのうち少なくとも一つを利用者に選択させるようにしてもよい。この場合、ディスプレイ130には、表示される複数のeloquent areaのそれぞれが、どのような機能に対応するものであるかを示す情報を表示させてもよい。また、利用者から機能の入力を受け付けた場合に、解剖学アトラス156を参照して、入力された機能に対応するeloquent areaを抽出してもよい。これにより、利用者は、ディスプレイ130に表示された複数のeloquent areaの位置や機能を確認しながら、被検体の職業や生活スタイルに合わせて被検体が所望するeloquent areaをより適切に選択することができる。したがって、例えば、アスリート等のように運動機能を重視する被検体であれば、運動機能に対応したeloquent areaを抽出したり、人前で話すことを重視する被検体であれば、言語機能に対応したeloquent areaを抽出することができる。なお、利用者によるeloquent areaは、入力インターフェース120により受け付けられる。
【0051】
また、領域抽出機能147は、複数のeloquent areaのうち初期梗塞領域220から最も近い、または最も近い方から所定数のeloquent areaを抽出してもよく、初期梗塞領域220から所定距離以内に存在するeloquent areaを抽出してもよい。
【0052】
また、領域抽出機能147は、所定領域としてeloquent areaの抽出に代えて(または加えて)、利用者が指定する領域(ユーザ指定領域)を抽出してもよい。この場合、領域抽出機能147は、医用画像に含まれる脳領域を示す画像をディスプレイ130に表示させ、入力インターフェース120により利用者からの位置や大きさの指定情報を受け付けて、受け付けた指定情報に基づいてユーザ指定領域を設定する。これにより、解剖学アトラス156に含まれていない領域(例えば、他の解剖学的に意義のある領域)を指定することができる。なお、以下の説明では、主にeloquent areaを抽出したものとして説明する。
【0053】
領域抽出機能147は、抽出したeloquent areaを含むアトラス画像と、医用画像データの脳領域とをボクセルを基準に位置や方向の位置合わせを行い、医用画像データに含まれる脳領域に対するeloquent areaを抽出する。
【0054】
導出機能148は、造影剤の到達時間をボクセルに持つ画像と、初期梗塞領域の位置(三次元位置)と、推定された時間経過に伴う梗塞領域(体積)の拡大度合に加えて、領域抽出機能147で抽出されたeloquent areaを用いて、撮影時から時間経過に伴って拡大する将来梗塞領域がeloquent areaと重なるまでの時間を導出する。重なるまでの時間とは、撮影時を基準として、将来梗塞領域がeloquent areaと重なり始めるまでの時間(第1時間)であってもよく、将来梗塞領域がeloquent areaと重なり終わるまで時間(第2時間)であってもよく、その両方でもよい。重なり始めるまでの時間とは、例えば、将来梗塞領域がeloquent areaの一部と接するまでの時間である。また、重なり始めるまでの時間には、重なり終わるまでの時間とは、例えば、将来梗塞領域がeloquent areaの全てと重なる(将来梗塞領域がeloquent areaを完全包含する)までの時間である。また、重なるまでの時間には、将来梗塞領域とeloquent areaの部分集合が所定の大きさになる時間や、重なった将来梗塞領域またはeloquent areaの体積が一定割合となる時間でもよい。
【0055】
画像生成機能145Aは、第1の実施形態で生成される画像の他、脳領域にeloquent areaの位置および大きさを示す画像を生成する。これらの画像は、位置合わせをした状態で、視認可能となるように重ねて表示させてもよい。例えば、画像生成機能145Aは、eloquent areaの位置や将来梗塞領域がeloquent areaと重なる様子を示す画像や、第1時間および第2時間における将来梗塞領域を示す画像を生成してもよい。処理回路140Aの表示制御機能146は、画像生成機能145Aにより生成された画像をディスプレイ130や外部装置に表示させたり、表示情報155としてメモリ150Aに記憶させる。
【0056】
以下、第2の実施形態に係る医用情報処理装置100Aにおける処理の詳細について説明する。
図6は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置100Aが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図7は、第2の実施形態に係る医用情報処理装置100Aが実行する処理の内容を説明するための図である。
図6の処理は、
図2に示すステップS100~S150の処理と比較して、ステップS140の処理に代えて、ステップS200~S230の処理を有する点で相違する。したがって、以下では、ステップS200~S230の処理を中心として説明する。
【0057】
図6の例において、ステップS130の処理後、領域抽出機能147は、メモリ150Aまたは通信ネットワークNWから解剖学アトラス156を取得し(ステップS200)、取得した解剖学アトラス156から対象組織(例えば、脳)のアトラス画像に含まれるeloquent areaを抽出する(ステップS210)。なお、ステップS200~S210の処理は、ステップS100の処理の前に行ってもよく、ステップS100からS130までの処理の間で行われてもよい。
図7の例では、解剖学アトラス156に含まれる脳領域200のアトラス画像に、一つのeloquent area240が抽出されている。
【0058】
図6に戻り、次に、導出機能148は、脳のアトラス画像と、医用画像に含まれる脳領域とを位置合わせし、ステップS230の処理で推定された将来梗塞領域230が撮影時からeloquent area240と重なるまでの時間を導出する(ステップS220)。次に、画像生成機能145Aは、梗塞領域(初期梗塞領域、将来梗塞領域)およびeloquent areaを示す画像を生成する(ステップS230)。その後、表示制御機能146は、生成した画像をディスプレイ130に表示させる(ステップS150)。これにより、本フローチャートの処理は、終了する。
【0059】
図7の例では、画像生成機能145Aにより生成され、表示制御機能146によりディスプレイ130に表示される画像IM60が示されている。画像IM60には、被検体の脳領域200に初期梗塞領域220、所定時間(例えば、時間T)が経過した後の将来梗塞領域230、およびeloquent area240が表示されている。時間Tとは、例えば、将来梗塞領域230とeloquent area240とが重なっていると推定される時間である。なお、画像生成機能145Aまたは表示制御機能146のうち一方または双方は、上述した各領域(脳領域200、初期梗塞領域220、将来梗塞領域230、eloquent area240)のそれぞれが識別可能となるように表示態様を異ならせてもよい。これにより、利用者は、梗塞領域(初期梗塞領域、将来梗塞領域)とeloquent areaとの関係を、より明確に把握することができる。
【0060】
なお、画像生成機能145Aは、
図7に示す画像IM60に代えて、上述した第1時間および第2時間における将来梗塞領域を示す画像を生成してもよい。
図8は、第1時間および第2時間における将来梗塞領域を含む画像IM70の一例を示す図である。
図8に示す画像IM70には、被検体の脳領域200に、初期梗塞領域220と、eloquent area240と、第1時間における将来梗塞領域230(ts)と、第2時間における将来梗塞領域230(te)とが重畳して示されている。この場合、画像生成機能145Aまたは表示制御機能146のうち一方または双方は、それぞれの領域が識別可能となるように表示態様を異ならせてよい。また、画像生成機能145Aは、推定される将来梗塞領域230(ts)および将来梗塞領域230(te)となる時間に関する情報をそれぞれの領域に関連付けて表示させてもよい。
図8の例では、「ts分後」、「te分後」といった文字情報が、対応する将来梗塞領域に関連付けて表示されている。上記ts、teには、時間に関する数値が表示される。これにより、梗塞によって脳機能に影響を及ぼす時間帯をより詳細に把握することができる。また、時間経過による脳機能の影響度合(障害度合)をより詳細に把握することができる。
【0061】
また、画像生成機能145Aは、複数の時間をアニメーション(動画像)で表示するように連続画像を生成してもよい。これにより、時間経過によって、将来梗塞領域230が拡大する様子や、将来梗塞領域230とeloquent area240とが重なる様子を、利用者に把握し易くすることができる。
【0062】
また、画像生成機能145Aは、領域抽出機能147により抽出された領域が複数存在する場合、それぞれの抽出領域に対して、将来梗塞領域230が重なる時間や重なる様子を示す画像を表示させてもよい。以下では、領域抽出機能147によりeloquent areaと、ユーザ指定領域とが抽出されたものとして説明するが、eloquent areaまたはユーザ指定領域うち、一方または双方が複数抽出されていてもよい。
【0063】
図9は、第2の実施形態に係る画像生成機能145Aにより生成された画像IM80の一例を示す図である。
図9の例において、画像IM80には、被検体の脳領域200に、初期梗塞領域220と、eloquent area240と、ユーザ指定領域250と、将来梗塞領域230(ta)、230(tb)とが重畳して示されている。時間taは、撮影時点から将来梗塞領域230がユーザ指定領域250と重なり始める(ユーザ指定領域250に接する)までの時間を示す。時間tbは、撮影時点から将来梗塞領域230がeloquent area240と重なり始める(eloquent area240に接する)までの時間を示す。画像生成機能145Aは、将来梗塞領域230と、抽出領域(eloquent area240、ユーザ指定領域250)との重なり始めに関する情報に代えて(または加えて)、重なり終わりに関する情報を表示させてもよい。
【0064】
また、画像生成機能145Aは、推定される将来梗塞領域230(ta)および将来梗塞領域230(tb)となる時間に関する情報をそれぞれの領域に関連付けて表示させてもよい。
図9の例では、「ta分後」、「tb分後」といった文字情報が、対応する将来梗塞領域に関連付けて表示されている。上記ta、tbには、第1時間、第2時間に関する数値が表示される。これにより、脳内に複数の抽出領域が存在する場合であっても、それぞれの領域が梗塞によって影響を及ぼす時間帯をより詳細に把握することができる。
【0065】
また、画像生成機能145Aまたは表示制御機能146のうち一方または双方は、時間ta、tbに対応する将来梗塞領域230(ta)、230(tb)が識別可能となるように表示態様を異ならせてよい。また、画像生成機能145Aは、時間taおよび時間tbのそれぞれの時間経過後における将来梗塞領域の様子を示す画像を、異なる画像で生成してもよい。
【0066】
図10は、第2の実施形態に係る画像生成機能145Aにより生成される他の画像IM80A、IM80Bの一例示す図である。画像IM80Aには、ta分後の脳領域200に、初期梗塞領域220と、ユーザ指定領域250と、将来梗塞領域230(ta)とが重畳して示されている。また、画像IM80Aには、撮影時から「ta分後」の将来梗塞領域230を示す画像であることを示す文字情報が画像IM80A内(図中右下)に示されている。画像IM80Bには、tb分後の脳領域200に、初期梗塞領域220と、eloquent area240と、将来梗塞領域230(tb)とが重畳して示されている。また、画像IM80Bには、撮影時から「tb分後」の将来梗塞領域230を示す画像であることを示す文字情報が画像IM80B内(図中右下)に示されている。
【0067】
表示制御機能146は、入力インターフェース120により受け付けられた利用者の操作入力に基づいて、画像IM80Aまたは画像IM80Bを選択して(または切り替えて)、ディスプレイ130が外部装置に表示させる。また、表示制御機能146は、画像IM80Aと、画像IM80Bとを所定時間ごとに切り替えてディスプレイ130または外部装置に表示させてもよい。
【0068】
なお、表示制御機能146は、入力インターフェース120により受け付けられた利用者の操作入力に基づいて、
図9に示す画像IM80の表示形態と、
図10に示す画像IM80A、80Bの表示形態とを選択して(または切り替えて)表示させてもよい。また、表示制御機能146は、例えば、抽出領域(eloquent area240、ユーザ指定領域250)の数が所定数以上の場合には
図9に示すように1つの画像で表示させ、所定数以上の場合には
図10に示すように抽出領域ごとに分けた画像で表示させてもよい。これにより、抽出領域の数が多い場合であっても将来梗塞領域を、より分かりやすく表示させることができる。
【0069】
また、表示制御機能146は、複数の抽出領域において、それぞれの抽出領域間の距離が所定距離以上である場合に、
図9に示すように1つの画像で表示させ、所定距離以上の場合に、
図10に示すように抽出領域ごとに分けた画像で表示させてもよい。これにより、抽出領域や将来梗塞領域の重なりによって、利用者が視認しにくくなることを抑制することができる。
【0070】
また、画像生成機能145Aは、
図9および
図10に示す画像に加えて(または代えて)、所定時間経過後に、被検体にどのような症状が発症する可能性があるかを示す情報(症状予測情報)を示す画像を生成してもよい。なお、抽出領域ごとに、その領域が梗塞状態(異常状態)となった場合に、どのような症状(障害)を発症するかに関する情報(症状情報)については、予めメモリ150Aに記憶されていてもよく、解剖学アトラス156に含まれていてもよく、通信ネットワークNWを介して外部装置から取得してもよい。例えば、導出機能148は、領域抽出機能147により抽出された領域と将来梗塞領域との重なり度合に基づいて症状情報を参照し、所定時間経過後の梗塞状態となった場合の症状予測情報を導出する。
【0071】
図11は、症状予測情報を含む画像IM80Cの一例を示す図である。画像IM80Cには、
図9に示す情報の他、症状予測情報に基づいて、所定時間経過後(時間ta経過後、時間tb経過後)に被検体がどのような症状になる可能性があるかを示す文字画像が表示されている。画像生成機能145Aは、上記文字情報の表示態様を、それぞれの時間ta、tbに対応する将来梗塞領域230(ta)、230(tb)の表示態様(例えば、色)と同じにしてもよい。また、より危険性が高い症状の場合には、文字情報を赤色等の強調色で表示させたり、点滅させる等の強調表示を行ってもよい。これにより、被検体の危険性を利用者に、より把握させ易くすることができる。また、画像生成機能145Aは、抽出した領域に紐付いた症状が発症する時間が短い順に症状予測情報を並び替えて表示させることで、発症する症状の順番とその時間を分かり易く表示させることができる。
【0072】
図11の例では、撮影時からta分後に運動障害(例えば、麻痺)になる可能性があり、更にtb分後に言語障害(例えば、失語症)になる可能性があるという症状予測情報が表示されている。これにより、病気に詳しくない利用者(例えば、被検体自身やその家族)が画像IM80Cを見た場合であっても、将来において発症が予測される症状を、発症する順番で把握することができる。また、利用者が医師等の専門家である場合には、症状予測情報を表示することで、利用者がより確信をもって被検体を診断することができる。
【0073】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する他、対象組織に含まれる所定領域を抽出し、将来梗塞領域が抽出領域と重なる様子か時間に関する情報を提供することができる。より具体的には、第2の実施形態では、例えば、複数時相の医用画像を用いて脳領域内部の各ボクセルについて、造影剤の到達時間を取得すると共に、初期梗塞領域の位置を特定し、更にeloquent areaの位置を標準脳アトラスとの位置合わせによって求める。そして、梗塞体積と時間の関係性を示すシミュレーションモデルに基づいて、初期梗塞領域を造影剤の到達時間が遅いボクセルの方向に向かって拡大させ、eloquent areaと重なる時間を導出する。これにより、対象組織に含まれる異常領域の時間経過に伴う拡大によって、被検体が発症する症状や発症するまでの時間を、より正確に予測することができる。
【0074】
また、第2の実施形態によれば、どの程度の時間が経過するとどのような症状が発症するかが予測できるため、利用者は、発症する内容及び発症するまでの時間に基づいて、被検体を他の病院に転送させるか否かや、どの病院に転送させるかといった判断を行うことができる。この場合、医用情報処理装置100Aの導出機能148は、通信ネットワークNWを介して外部の地図サーバ等にアクセスし、被検体がいる位置(病院)から症状が生じる時間までの間に、転送可能な病院を検索したり、その病院までの経路を調べてもよい。また、第2の実施形態によれば、利用者は、被検体の症状が発症するまでの残り時間に応じた適切な処置を施すことができる。
【0075】
(変形例)
上述した第1および第2の実施形態のそれぞれは、他の実施形態の一部または全部を組み合わせてもよい。
【0076】
また、上述した第1および第2の実施形態において、特定機能143は、造影剤の到達時間情報をボクセルに持たせた画像を生成することに代えて(または加えて)、造影剤の到達時間情報を用いて導出した血流を表す情報をボクセルに持たせた画像を生成してもよい。この場合、灌流情報には、血流量や血液量が含まれる。
【0077】
例えば、梗塞領域およびその周辺領域の場合には、正常な領域と比較して血流量が低下したり、血液量が低下する。したがって、特定機能143は、血流量や血流量が低下している方向や低下度合に基づいて、初期梗塞領域を特定することができる。また、推定機能144は、血流量や血流量が低下している方向や低下度合に基づいて、将来梗塞領域を推定することができる。また、医用情報処理装置100、100Aは、造影剤に基づく灌流情報と、血流に基づく灌流情報の両方を用いて、初期梗塞領域を特定したり、将来梗塞領域を推定してもよい。例えば、医用情報処理装置100、100Aは、造影剤の広がりが小さいほど、且つ血流の流れが低下しているほど、多くのボクセルを割り当てて、将来梗塞領域の拡大度合を調整する。これにより、将来梗塞領域の推定精度を、より向上させることができる。
【0078】
また、上述の実施形態では、対象組織の一例として脳を用いて説明したが、血液が流れる部位、および、壊死または虚血等が起こり得る部位の全般に適用することができる。例えば、対象組織は、心臓や肺等のように虚血による組織障害が起こる臓器でもよく、四肢のように虚血による組織障害が起こる部位でもよい。なお、四肢の場合には、虚血の進行具合は、脳や心臓等の組織に比して遅い。そのため、例えば、医用情報処理装置100、100Aは、複数時相として数日置きに撮像した医用画像を取得して同様の処理を行ってもよい。この場合、推定機能144は、造影剤の到達時間を持つ画像ではなく、撮像日時をボクセルに持つような画像を用いて、将来(数週間から数か月後等の長い期間を含む将来)において、壊死または虚血が起こり得る領域を推定する。
【0079】
また、第1および第2の実施形態において、推定機能144は、体積変化情報153として、シミュレーションモデル(梗塞体積拡大シミュレーション)を用いて将来推定領域を推定したが、上記モデルに加えて、他のパラメータ情報を用いて推定してもよい。例えば、脳領域200における初期梗塞領域220の位置によって、所定時間経過後の梗塞領域の拡大度合が異なる場合がある。具体的には、初期梗塞領域220が脳領域200の中央付近にある場合と端部にある場合とで梗塞領域の拡大度合が異なったり、脳領域200の上部(前部)にある場合と下部(後部)にある場合とで拡大度合が異なる場合があり得る。したがって、推定機能144は、初期梗塞領域の位置に基づいて、シミュレーションモデルから導出される梗塞体積を調整し、調整した梗塞体積に基づいて将来推定領域を推定する。これにより、将来推定領域の精度を更に向上させることができる。また、推定機能144は、シミュレーションモデルで得られた所定時間後の梗塞体積に基づいて初期梗塞領域を拡大させる場合に、側副血行が存在する領域を避けるように領域を拡大させてもよい。
【0080】
また、推定機能144は、上記のシミュレーションモデルに代えて(または加えて)、初期梗塞領域(梗塞体積)および経過時間を入力とし、所定時間経過後の梗塞領域(体積)を出力とする所定関数を用いて、将来梗塞領域を推定してもよい。また、推定機能144は、体積変化情報153として、予め機械学習、ディープラーニング、AI(Artificial Intelligence;人工知能)等によって学習された時間経過後の梗塞領域を表す推定モデルを用いて、将来梗塞領域を推定してもよい。推定モデルは、初期梗塞領域(梗塞体積)および経過時間を入力とし、所定時間経過後の梗塞領域(体積)または将来梗塞領域を出力とするように学習されたモデルである。
【0081】
上記説明したいずれかの実施形態は、以下のように表現することができる。
プログラムを格納するストレージと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行することにより、
被検体の対象組織を含む複数時相の医用画像を取得し、
取得した前記複数時相の医用画像に基づいて前記対象組織の灌流情報を取得し、
前記複数時相の医用画像のうち少なくとも1時相の医用画像に基づいて前記対象組織の初期異常領域を特定し、
取得した前記灌流情報と、特定した前記初期異常領域とに基づいて、時間経過後の異常領域を推定する、
ように構成されている、医用情報処理装置。
【0082】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0083】
1、2…医用情報処理システム、10…医用画像生成装置、20…医用画像サーバ、100、100A…医用情報処理装置、110…通信インターフェース、120…入力インターフェース、130…ディスプレイ、140、140A…処理回路、141…画像取得機能、142…灌流情報取得機能、143…特定機能、144…推定機能、145、145A…画像生成機能、146…表示制御機能、147…領域抽出機能、148…導出機能、150、150A…メモリ