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  • 特開-コイル体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190735
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】コイル体
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20221220BHJP
   D07B 1/06 20060101ALI20221220BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20221220BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61M25/00 630
D07B1/06 Z
A61M25/00 624
A61M25/09
A61B1/018 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099130
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 東吾
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 優人
(72)【発明者】
【氏名】長野 拓朗
【テーマコード(参考)】
3B153
4C161
4C267
【Fターム(参考)】
3B153AA08
3B153AA10
3B153AA43
3B153BB05
3B153CC52
4C161DD03
4C161GG15
4C267AA01
4C267AA29
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB16
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC08
4C267GG22
4C267GG24
4C267HH14
(57)【要約】
【課題】優れたトルク伝達性および柔軟性を確保することが可能なコイル体の提供を目的とする。
【解決手段】コイル体100は、撚線1が中空螺旋状に巻回されたコイル体であって、撚線1は、一端11b1の外径が他端11b2の外径よりも小さいテーパ部11bを有する芯線11と、テーパ部11bの外周面11sに沿って巻回された側線21とを備え、テーパ部11bの一端が第1の端部11b1であり、テーパ部11bの他端が第2の端部11b2であり、テーパ部11bにおいて、撚線1の外径は略一定であり、撚線1の充填率は、芯線11の中心軸を軸芯としかつ撚線1の最外周を通る仮想の円筒体Eの内側の空間に占める、芯線11の体積と側線21の体積とを合計した体積、の割合であり、芯線11の中心軸に沿う1mm毎に算出した撚線1の充填率は、第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって小さくなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚線が中空螺旋状に巻回されたコイル体であって、
前記撚線は、
一端の外径が他端の外径よりも小さいテーパ部を有する芯線と、
前記テーパ部の外周面に沿って巻回された側線と、を備え、
前記テーパ部の前記一端が第1の端部であり、
前記テーパ部の前記他端が第2の端部であり、
前記テーパ部において、前記撚線の外径は略一定であり、
撚線の充填率は、前記芯線の中心軸を軸芯としかつ前記撚線の最外周を通る仮想の円筒体の内側の空間に占める、前記芯線の体積と前記側線の体積とを合計した体積、の割合であり、
前記芯線の中心軸に沿う1mm毎に算出した前記撚線の充填率は、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって小さくなっていることを特徴とするコイル体。
【請求項2】
前記テーパ部の外周上に位置する前記側線は扁平形状であり、この扁平形状である側線における扁平面が前記芯線の外周面に接するように配置されている請求項1に記載のコイル体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル体に関する。
【背景技術】
【0002】
血管などの体腔内に挿入して病変部位などを処置する器具として、例えば、カテーテルやガイドワイヤなどの長尺形状の医療器具が知られている。このような医療器具においては、湾曲した体腔内に沿って円滑に挿入できるように、その先端部に柔軟性が求められると共に、手元側に加えられた回転力が先端側まで確実に伝わるように優れたトルク伝達性が求められる。
【0003】
このような医療器具としては、例えば、コイル体の先端部と基端側の部位とでコイル体の形状や材料を異ならせる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/119386号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の技術においては、素線の巻線ピッチが大きいコイル体の部位等でのトルク伝達性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、優れたトルク伝達性および柔軟性を確保することが可能なコイル体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの態様は、
(1)撚線が中空螺旋状に巻回されたコイル体であって、
前記撚線は、
一端の外径が他端の外径よりも小さいテーパ部を有する芯線と、
前記テーパ部の外周面に沿って巻回された側線と、を備え、
前記テーパ部の前記一端が第1の端部であり、
前記テーパ部の前記他端が第2の端部であり、
前記テーパ部において、前記撚線の外径は略一定であり、
撚線の充填率は、前記芯線の中心軸を軸芯としかつ前記撚線の最外周を通る仮想の円筒体の内側の空間に占める、前記芯線の体積と前記側線の体積とを合計した体積、の割合であり、
前記芯線の中心軸に沿う1mm毎に算出した前記撚線の充填率は、前記第2の端部から前記第1の端部に向かって小さくなっていることを特徴とするコイル体、および
(2)前記テーパ部の外周上に位置する前記側線は扁平形状であり、この扁平形状である側線における扁平面が前記芯線の外周面に接するように配置されている前記(1)に記載のコイル体、である。
【0008】
なお、本明細書において、「巻線」とは、コイル体を構成するために螺旋状に巻回される線状の部材を意味する。「扁平面」とは、扁平形状の側線における短径方向の外表面を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、優れたトルク伝達性および柔軟性を確保することが可能なコイル体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態の全体を示す概略的断面図である。
図2図1のコイル体に用いられる巻線の一部を拡大して示す概略的断面図である。
図3図1のコイル体に用いられる巻線の概略的横断面図であって、(a)は図2のIIIa-IIIa線で切断した図、(b)は図2のIIIb-IIIb線で切断した図、(c)は図2のIIIc-IIIc線で切断した図をそれぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のコイル体は、撚線が中空螺旋状に巻回されたコイル体であって、上記撚線は、芯線と、この芯線の外周面に沿って巻回された側線とを備え、上記芯線は、一端の外径が他端の外径よりも小さいテーパ部を有し、上記テーパ部の上記一端が第1の端部であり、
上記テーパ部の上記他端が第2の端部であり、上記テーパ部において、上記撚線の外径は略一定であり、撚線の充填率は、上記芯線の中心軸を軸芯としかつ上記撚線の最外周を通る仮想の円筒体の内側の空間に占める、上記芯線の体積と上記側線の体積とを合計した体積、の割合であり、上記芯線の中心軸に沿う1mm毎に算出した上記撚線の充填率は、上記第2の端部から上記第1の端部に向かって小さくなっている。
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。また、各図面に示したコイル体の寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
【0013】
図1は、一実施形態の全体を示す概略的断面図である。コイル体100は、図1に示すように、撚線1(以下、「巻線1」ともいう)が中空螺旋状に巻回されたコイル体である。コイル体100は、長軸方向に沿って貫通する内腔100hを有している。この内腔100hには、例えば、細径長尺形状の医療用デバイス等が挿通される。撚線1は、図2に示すように、概略的に、芯線11と、側線21とにより構成されている。
【0014】
芯線11は、単線で構成された部材であり、巻線の中心軸を構成する。芯線11は、例えば、小径部11aと、テーパ部11bと、大径部11cとを有するように構成することができる。
【0015】
テーパ部11bは、一端11b1(以下、「第1の端部11b1」ともいう)の外径が他端11b2(以下、「第2の端部11b2」ともいう)の外径よりも小さい部位である。このテーパ部11bは、第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって漸次縮径していてもよく(図2参照)、第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって段階的(階段状)に縮径していてもよい(不図示)。
【0016】
小径部11aは、一方の端部(図示右端)が第1の端部11b1に連続し、上記一方の端部の反対側(図示左側)に向かって延設されている部位である。小径部11aは、例えば、長軸方向全体に亘って、同一外形(例えば、外径一定の円形など)を有するように構成することができる。
【0017】
大径部11cは、一方の端部(図示左端)が第2の端部11b2に連続し、上記一方の端部の反対側(図示右側)に向かって延設されている部位である。大径部11cは、例えば、長軸方向全体に亘って、同一外形(例えば、外径一定の円形など)を有するように構成することができる。
【0018】
本実施形態の芯線11は、横断面の形状が円形かつ外径一定の小径部11aと、第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって漸次縮径するテーパ部11bと、横断面の形状が円形かつ外径一定の大径部11cとにより構成されている。
【0019】
芯線11を構成する材料としては、抗血栓性および生体適合性を有している限り特に限定されず、例えば、SUS304などのステンレス鋼、Ni-Ti合金などの超弾性合金等を採用することができる。
【0020】
側線21は、テーパ部11bの外周面11sに沿って巻回された線状の部材である。側線21は、単線(単一の線)または撚線(複数の単線を予め互いに撚り合った一束の線群)を用い、芯線11の外周面11s上に単条または多条で巻回することで形成することができる。側線21は、テーパ部11bの外周の少なくとも一部の上に配置されていればよく、テーパ部11bの外周に加え、小径部11aおよび/または大径部11cの外周に配置されていてもよい(図2参照)。
【0021】
本実施形態の側線21は、3本の単線を用い、これらを小径部11a、テーパ部11bおよび大径部11cの外周面11s上に3条で巻回したものが例示されている。また、側線21は、小径部11a、テーパ部11b、および大径部11cそれぞれの外周面11sに接するように配置されている。
【0022】
ここで、「撚線の充填率」を、芯線11の中心軸を軸芯としかつ撚線1の最外周を通る仮想の円筒体E(図2に2点鎖線で図示した円筒体)の内側の空間に占める、芯線11の体積と側線21の体積とを合計した体積の割合としたとき、芯線11の中心軸に沿う1mm毎に算出した撚線21の充填率は、第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって小さくなるように構成されている。
【0023】
このため、巻線1(撚線1)を用いたコイル体100の剛性を、コイル体100の長軸方向に沿って徐変(急激な剛性変化を抑制)することができる(コイル体100の部位100B)。すなわち、撚線1の充填率が大きい部位(特に、テーパ部11bの第2の端部11b2側、コイル体100における部位100Bの部位100C側)ではより高い剛性によりトルク伝達性が高く、撚線1の充填率が小さい部位(特に、テーパ部11bの第1の端部11b1側、コイル体100における部位100Bの部位100A側)ではより低い剛性により柔軟性が高くなるように、コイル体100を形成することができる。
【0024】
本実施形態では、コイル体100は、巻線1が芯線11となる1本の単線と、側線21となる3本の単線とにより構成されている。このため、撚線1の充填率は、芯線11の中心軸を軸芯としかつ撚線1の最外周を通る仮想の円筒体Eの内側の空間に占める、芯線11の体積と側線21の体積とを合計した体積(1本の芯線11の体積と3本の側線21の体積とを合計した体積(合計4本分の体積))の割合となる。
【0025】
芯線11の長軸方向において、芯線11の外周に巻回された側線21の最外周の径(外周径OD)は、一定であってもよく(図2参照)、異なっていてもよい。外周径ODが一定である場合、例えば、テーパ部11bの外周面11s上に位置する側線21においては、第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって芯線11の径方向における側線21の厚みが大きくなるように形成することができる。
【0026】
芯線11の長軸方向に沿って側線21の厚みを異ならせる方法としては、例えば、芯線11に巻回された線材をスウェージングする方法、芯線11の外径に反比例するように、芯線11の外周面11s上の部位によって、異なる外径の側線を芯線に巻回する方法等が挙げられる。
【0027】
側線21の横断面の形状は、円形であってもよく、非円形(楕円形状,略矩形等の扁平形状など)であってもよい。上記横断面の形状は、小径部11a、テーパ部11bおよび大径部11cで異なっていてもよい。
【0028】
側線21を構成する材料としては、抗血栓性および生体適合性を有している限り特に限定されず、例えば、芯線11の材料として用いたものと同様の材料等を採用することができる。
【0029】
ここで、側線21が扁平形状である場合、その扁平度合に応じて撚線1の撚り角が変わる。このため、扁平度合に応じて撚線1の中心軸方向における単位長さあたりの素線の巻き数が変化し、これに伴って上記中心軸方向における撚線1の剛性に変化が生じる。
【0030】
なお、テーパ部11bの外周上に位置する側線は、扁平形状である場合、扁平形状である側線における扁平面は、芯線11の外周面11sに接するように配置されていてもよい。図3(a),図3(b),図3(c)に示すように、本実施形態においては、テーパ部11bおよび大径部11c上における側線21の横断面の形状が扁平形状(略矩形状)であり、小径部11a上における側線21の横断面の形状が円形である巻線が例示されている。また、本実施形態の巻線1(撚線1)においては、テーパ部11bおよび大径部11cの外周に位置する側線21の扁平面がそれぞれテーパ部11bおよび大径部11cに接し、小径部11aの外周に位置する側線21が小径部11aに接するように配置されている。
【0031】
これにより、外圧により撚線1が圧壊するのを抑制することができると共に、同じ外周径ODの撚線であっても巻線1をよりコンパクトに形成することができ、ひいてはコイル体100をよりコンパクトに形成することができる。
【0032】
以上のように、コイル体100は、上記構成であるので、撚線1の充填率がより大きい部位100Bにおける部位100C側により高いトルク伝達性を付与し、撚線1の充填率がより小さい部位100Bにおける部位100A側により高い柔軟性を付与することができる。また、撚線1の充填率が第2の端部11b2から第1の端部11b1に向かって小さくなる分、撚線1の中心軸方向における急激な剛性変化を抑制することができ、コイル体100の破断を防止することができる。
【0033】
なお、本開示のコイル体100は、優れたトルク伝達性および柔軟性を有している。このため、例えば、コイル体100をガイドワイヤ(不図示)に適用し、コイル体100をガイドワイヤのコアシャフトの先端部外周に配置されるコイル体として用いてもよい。また、コイル体100をカテーテル(不図示)に適用し、コイル体100をカテーテルの中空シャフトとして用いてもよい。また、コイル体100を内視鏡用処置具(不図示、例えば、特開2019-15796号公報に開示の内視鏡など)に適用し、コイル体100を内視鏡用処置具の処置部に連結された芯線の外周を保護するシースとして用いてもよい。かかる場合、湾曲した体腔に容易に追従できるように、ガイドワイヤ、カテーテル、内視鏡用処置具などの先端側(遠位側)にコイル体100の部位100A側(撚線1の小径部11a側)が位置するようにコイル体を配置することが好ましい。
【0034】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、小径部11aとテーパ部11bと大径部11cとからなる芯線11を備えたコイル体100について説明した。しかしながら、芯線は、テーパ部を有する限り、特に限定されない。芯線は、小径部および大径部のいずれかを有するもの、小径部および大径部のいずれも有しないものであってもよい。
【0036】
また、上述した実施形態では、芯線11の小径部11a、テーパ部11bおよび大径部11cそれぞれの外周面11s上に側線21が巻回された撚線1(巻線1)を有するコイル体100について説明した。しかしながら、側線は、少なくとも芯線のテーパ部上に巻回されていればよい。側線は、テーパ部に加え、小径部および大径部のいずれか一つに巻回されていてもよく、小径部および大径部のいずれにも巻回されていなくてもよい。側線は、長軸方向において、テーパ部の一部にのみ巻回されていてもよく、テーパ部の全体に亘って巻回されていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 撚線
100 コイル体
11 芯線
11b テーパ部
11b1 第1の端部
11b2 第2の端部
11s 外周面
21 側線
図1
図2
図3