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特開2022-190737メタン又は一酸化炭素製造用触媒及びメタン又は一酸化炭素製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190737
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】メタン又は一酸化炭素製造用触媒及びメタン又は一酸化炭素製造装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/068 20060101AFI20221220BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20221220BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20221220BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
B01J29/068 M
C07C9/04
C07C1/12
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099132
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 大剛
(72)【発明者】
【氏名】吉川 晃平
(72)【発明者】
【氏名】杉政 昌俊
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BC31A
4G169BC32A
4G169BC33A
4G169BC33B
4G169BC35A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC68A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC22
4G169CC40
4G169DA05
4G169EC09X
4G169ZA01A
4G169ZA01B
4G169ZC07
4H006AA04
4H006AC29
4H006BA05
4H006BA26
4H006BA55
4H006BC10
4H006BD80
4H006BE20
4H006BE41
4H039CB20
4H039CL35
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、低温の温度領域(300℃以下)でも、高いCO転化率を有し、メタン又は一酸化炭素の収率を向上できるメタン又は一酸化炭素製造用触媒を提供することである。
【解決手段】本発明のメタン又は一酸化炭素製造用触媒は、二酸化炭素と水素とを反応させメタン又は一酸化炭素を製造するために用いられる触媒であって、白金と、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属が担体に担持された触媒金属担持触媒及び水吸着材を含み、前記触媒金属担持触媒と、前記水吸着材との重量比が1:3~1:5であり、前記触媒金属担持触媒が、前記水吸着材表面に分散していることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素と水素とを反応させメタン又は一酸化炭素を製造するために用いられる触媒であって、
白金と、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属が担体に担持された触媒金属担持触媒及び
水吸着材を含み、
前記触媒金属担持触媒と、前記水吸着材との重量比が1:3~1:5であり、
前記触媒金属担持触媒が、前記水吸着材表面に分散していることを特徴とするメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
【請求項2】
前記担体が、酸化セリウムを含有することを特徴とする請求項1に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
【請求項3】
前記触媒金属が、前記白金と前記金とを含有することを特徴とする請求項1に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
【請求項4】
前記水吸着材がゼオライトを含有することを特徴とする請求項1に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトの平均細孔径が3.6Å以上であることを特徴とする請求項4に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
【請求項6】
二酸化炭素と水素とを供給する導入路と、二酸化炭素と水素とを反応させる反応容器と、前記反応容器の温度を調整する加温手段とを有するメタン又は一酸化炭素製造装置であって、
前記反応容器に請求項1に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒を備えることを特徴とするメタン又は一酸化炭素製造装置。
【請求項7】
前記反応容器の加温に他の機器の排熱を使用することを特徴とする請求項6に記載のメタン又は一酸化炭素製造装置。
【請求項8】
前記反応容器の合成反応の温度が300℃以下に設定されていることを特徴とする請求項6に記載のメタン又は一酸化炭素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素と水素とを反応させることでメタン又は一酸化炭素を製造し、その一部として水が製造されるメタン又は一酸化炭素製造用触媒及びメタン又は一酸化炭素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な経済発展に伴い、産業、工業、農業等における二酸化炭素(CO)の排出量が急激に増加している。特に先進国では二酸化炭素の排出量抑制が急務となっている。発電に伴う二酸化炭素の排出量は非常に多く、大気中の二酸化炭素を増加させないためのエネルギーシステムへの転換が必要となっている。さらに、エネルギーシステムにおいては、航空、船舶、長距離貨物、負荷調整用発電、製鉄、セメント等、電化や二酸化炭素回収貯留(CCS)による対応が困難な分野も存在するため、これらの分野へ対応するためには発電や燃料の利用で排出される二酸化炭素を取り除く、いわゆる「脱炭素」だけでなく、二酸化炭素を循環的に利用する「炭素循環」も求められている。この炭素循環の一つの手段として、二酸化炭素の資源化がある。二酸化炭素の資源化とは、二酸化炭素を燃料や化成品に変換し利用することである。二酸化炭素の循環利用を目的とした炭化水素への変換技術は、二酸化炭素の排出量を削減するだけでなく、排出した二酸化炭素を大気中に拡散させないという点で非常に重要な技術である。
【0003】
一酸化炭素(CO)と水素(H)との混合ガスである合成ガスは、フィッシャー・トロプシュ法により炭化水素を製造することで様々な化成品に応用できることから工業的に非常に重要である。そこで、二酸化炭素の排出量を抑制するため、二酸化炭素から一酸化炭素を製造する方法が検討されている。二酸化炭素から一酸化炭素を製造する方法としては、例えば、下記反応式(1)で示される逆シフト反応による方法が挙げられる。
CO+H+40.9kJ/mol→CO+HO (1)
【0004】
また、二酸化炭素(CO)と水素(H)からメタン(CH)を製造するサバティエ反応は、すでに工業的に広く使われており、下記反応式(2)で示される。
CO+H-160kJ/mol→CH+HO (2)
【0005】
金属成分として、鉄と、ナトリウムと、亜鉛、マンガン及び銅よりなる群から選択される少なくとも1種とを有する化合物からなる炭化水素製造触媒が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、水素及び二酸化炭素の混合ガスを用いて炭化水素を製造すること、炭化水素としてオレフィンを含む炭化水素を製造することができることが開示されている。また、特許文献1には、炭化水素製造触媒を、反応時の熱暴走を抑える目的で、ケイ砂(シリカ)、アルミナ等の化合物と混合してもよいことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-3681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、式(1)で示される逆シフト反応は吸熱反応であるため、基本的に700℃以上の高温で高いCO選択性とCO転化率を示す。また、式(2)で示されるサバティエ反応は、発熱反応ではあるが、CHの製造効率から300℃を超えて400℃以下の高温で実施されることが一般的である。このような高温での反応では、高温に耐えるための反応容器や断熱性の確保等が必要となるため、製造コストが高くなる。一方で、サバティエ反応を300℃以下の低温で実施した場合、製造されるガスの選択性及びCO転化率の低下が起こり、所望の反応結果を得ることができない。
【0008】
本発明者らは、二酸化炭素からメタン又は一酸化炭素を得る反応を、例えば300℃以下の温度領域、すなわち従来よりも低温の温度領域で効率良く行うことができれば、300℃以下の排熱利用による省エネルギー化とともに、反応容器等にかかるコストの削減等によりガス(メタン又は一酸化炭素)の製造コストを大幅に低減することが可能になると考えた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、例えば300℃以下の温度領域、すなわち従来よりも低温の温度領域でも、メタン又は一酸化炭素の収率を向上できる高いCO転化率を有したメタン又は一酸化炭素製造用触媒、及びメタン又は一酸化炭素製造装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本実施形態の態様例は、以下の通りである。二酸化炭素と水素とを反応させメタン又は一酸化炭素を製造するために用いられる触媒であって、白金と、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属が担体に担持された触媒金属担持触媒及び水吸着材を含み、前記触媒金属担持触媒と、前記水吸着材との重量比が1:3~1:5であり、前記触媒金属担持触媒が、前記水吸着材表面に分散していることを特徴とするメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
【0011】
上記メタン又は一酸化炭素製造用触媒によれば、300℃以下の温度領域でも、メタンや一酸化炭素を収率よく、製造することができる。
【0012】
また、別の本実施形態の態様例としては、二酸化炭素と水素とを供給する導入路と、二酸化炭素と水素とを反応させる反応容器と、前記反応容器の温度を調整する加温手段とを有するメタン又は一酸化炭素製造装置であって、前記反応容器に上記本実施形態のメタン又は一酸化炭素製造用触媒を備えることを特徴とするメタン又は一酸化炭素製造装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のメタン又は一酸化炭素製造用触媒、メタン又は一酸化炭素製造装置を用いることにより、例えば300℃以下の温度領域、すなわち従来よりも低温の温度領域でも、メタン又は一酸化炭素を収率よく、製造することができる。
【0014】
以上に説明した内容以外の本発明の課題、構成、及び効果は、以下の発明を実施するための形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例及び比較例2で得たメタン又は一酸化炭素製造用触媒の典型的な形態の模式図である。
図2】実施例及び比較例で得たメタン又は一酸化炭素製造用触媒におけるCO転化率とゼオライトとの混合方法の関係を示すグラフである。
図3】実施例及び比較例で得たメタン又は一酸化炭素製造用触媒におけるゼオライトの細孔径とCO転化率の関係を示すグラフである。
図4】実施例及び比較例で得たメタン又は一酸化炭素製造用触媒における触媒金属担持触媒に対するゼオライト重量比とCO転化率との関係を示すグラフである。
図5】実施例及び比較例で得たメタン又は一酸化炭素製造用触媒における触媒金属担持触媒に対するゼオライト重量比と触媒金属担持触媒及びゼオライトの合計重量当たりのCO転化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面等を用いて、本発明に係る実施形態について説明する。以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明は、これらの説明に限定されるものではなく、本明細書で開示されている技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0017】
本明細書に記載される「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的に記載されている上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の上限値又は下限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
以下で例示している材料群から材料を選択する場合、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、材料を単独で選択してもよく、複数組み合わせて選択してもよい、また、本明細書で開示されている内容と矛盾しない範囲で、以下で例示している材料群以外の材料を選択してもよい。
【0019】
<メタン又は一酸化炭素製造用触媒>
実施形態に係るメタン又は一酸化炭素製造用触媒は、二酸化炭素(CO)と水素(H)とを反応させメタン(CH)又は一酸化炭素(CO)を製造するために用いられる触媒であって、白金(Pt)と、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、及び金(Au)からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属が担体に担持された触媒金属担持触媒及び水吸着材を含み、前記触媒金属担持触媒と、前記水吸着材との重量比が1:3~1:5であり、前記触媒金属担持触媒が、前記水吸着材表面に分散していることを特徴とするものである。このメタン又は一酸化炭素製造用触媒では、触媒金属として、白金と共に、例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル、金等の金属元素を用いることでメタン又は一酸化炭素の選択率を向上できる。これにより、300℃以下の温度領域でも、メタン又は一酸化炭素の収率を向上できる。
【0020】
300℃以下の温度領域は、一般的に、化学平衡上、逆シフト反応での二酸化炭素及び水素からの一酸化炭素の生成よりもメタンの生成が有利な温度領域である。このため、300℃以下の二酸化炭素及び水素の存在下では、一酸化炭素よりもメタンが多く生成される傾向があり、一酸化炭素を目的物質とする場合には、一酸化炭素の収率が低下する問題が起こる。本発明者らは、白金触媒が、300℃以下の温度領域で一般的な銅触媒よりも高い二酸化炭素の転化率を示すことを見出すとともに、白金触媒では、一般的な銅触媒と比較するとメタンが多く生成され、一酸化炭素の選択率が低下することを明らかにした。その上で、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、白金触媒に対して、例えば、銀、銅、亜鉛、金等の金属元素を添加することにより、メタンの生成量を劇的に低減できることを新たに見出した。これらの金属元素の添加によるメタンの生成量の低減は、白金の5d電子軌道がこれらの金属元素により埋められることで白金表面に吸着する二酸化炭素又は一酸化炭素の解離吸着が抑制されたこと、白金とこれらの金属元素との2相間の反応、白金とこれらの金属元素と後述する担体との3相間の反応などが起因していると考えられる。すなわち、一酸化炭素を目的物質とする場合には、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種としては、銀、銅、亜鉛、及び金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0021】
上記触媒金属としては、白金と金とを含有するものが好ましい態様の一つである。すなわち、一酸化炭素を目的物質とする場合には、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種としては、少なくとも金が選択されることが好ましく、金であることがより好ましい。金を用いると、300℃以下の温度領域において、メタンの生成を効果的に抑制し、一酸化炭素の収率を顕著に向上できるため好ましい。白金と金とを含有する触媒金属としては、触媒金属における白金と金との合計含有量に対する金の含有量が、1原子%以上30原子%以下の範囲内であるものが好ましい。白金と金との合計含有量に対する金の含有量が1原子%以上であることにより、メタンの生成を特に効果的に抑制できるからであり、白金と金との合計含有量に対する金の含有量が30原子%以下であることにより、二酸化炭素の転化率の低下を抑制できるからである。
【0022】
また、前述のように、300℃以下の温度領域では白金触媒が高い二酸化炭素の転化率を示し、化学平衡上、メタンが生成し易いが、白金触媒のみでは一酸化炭素も生成し、メタンを目的物質とする場合には、メタンの選択率が低くなる。本発明者らは、白金触媒にニッケルを添加することで、白金触媒のメタン選択率を高められることを新たに見出した。
【0023】
上記触媒金属としては、白金とニッケルとを含有するものが好ましい態様の一つである。すなわち、メタンを目的物質とする場合には、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種としては、少なくともニッケルが選択されることが好ましく、ニッケルであることがより好ましい。ニッケルを用いると、300℃以下の温度領域において、一酸化炭素の生成を効果的に抑制し、メタンの収率を顕著に向上できるため好ましい。白金とニッケルとを含有する触媒金属としては、触媒金属における白金とニッケルとの合計含有量に対するニッケルの含有量が、1原子%以上30原子%以下の範囲内であるものが好ましい。白金とニッケルとの合計含有量に対するニッケルの含有量が1原子%以上であることにより、一酸化炭素の生成を特に効果的に抑制でき、かつ白金とニッケルとの合計含有量に対するニッケルの含有量が30原子%以下であることにより、二酸化炭素の転化率の低下を抑制できるからである。
【0024】
なお、二酸化炭素と水素とを反応させることでメタン又は一酸化炭素を製造するために用いられるメタン又は一酸化炭素製造用触媒としては、白金と、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属の代わりに、白金、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅、亜鉛、イリジウム(Ir)、金、及び銀からなる群から選択される少なくとも2種を含有する触媒金属を含むものであっても、300℃以下の温度領域でも、メタン又は一酸化炭素の収率を向上できるものがある。これは、一方の金属元素の電子軌道が他方の金属元素と混成することで、一方の金属元素の表面に吸着する二酸化炭素の解離吸着状態がメタン生成、又は一酸化炭素生成に有効な状態になること、又は一方の金属元素と他方の金属元素との2相間の反応、一方の金属元素と他方の金属元素と後述する担体との3相間の反応などが起因するものと考えられる。
【0025】
メタン又は一酸化炭素製造用触媒は、白金と、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属が担体に担持された触媒金属担持触媒を含む。
【0026】
触媒金属を担持する担体としては、担体の材料は、特に限定されるものではなく、一般的な担体の材料の中から適宜選択できる。担体としては、例えば、金属酸化物等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、SiO、Al、ZrO、酸化セリウム(CeO)、TiO、MgO、La、ZnO、GeO、SnO、V、Y、Nb、MoO、WO、ゼオライト等が挙げられる。担体は、これらの金属酸化物うちの1種を単独で含有するものでもよいし、2種以上を含有するものでもよい。担体としては、SiO、Al、ZrO、及びCeOから選択される少なくとも1種の担体がより好ましい。上記担体としては、CeOを含有するものが特に好ましい。担体がCeOを含有すると、担体との相互作用により二酸化炭素の転化率が向上する観点と、反応表面積が大きくなる観点から好ましい。
【0027】
担体の形状は、特に限定されるものではなく、一般的な担体の形状でよいが、例えば、球状、柱状等の粒状のものなどが挙げられる。担体の形状としては、通常、粒状のものが好適に用いられる。
【0028】
担体の比表面積は、特に限定されるものではなく、一般的な担体の比表面積でよいが、例えば、30m/g以上が好ましく、中でも100m/g以上が好ましい。前記範囲では、担体に担持されている触媒金属の分散性及び表面積を増大させることで、触媒活性をメタン又は一酸化炭素の生成に十分なものにできるため好ましい。
【0029】
触媒金属を担体に担持する際には例えば、触媒金属の前駆体を、水、エタノール等の溶媒に溶解、混合することで得られる触媒金属前駆体溶液を用い、触媒金属を担体に担持する。触媒金属の前駆体としては、特に限定されないが、例えば、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の金属塩が挙げられる。触媒金属を担体に担持する方法としては、特に限定されず、一般的な方法を用いることができるが、例えば、含侵法、共沈法、ポリオール法、無電解めっき法等が挙げられる。
【0030】
担体への触媒金属の担持量、言い換えると触媒金属担持触媒の触媒金属含有量は、特に限定されないが、通常、担体及び触媒金属の合計重量(100重量%)に占める触媒金属の割合は、0.05重量%~30重量%の範囲内が好ましく、特に1.0重量%~10重量%の範囲内が好ましい。担体及び触媒金属の合計重量に対する触媒金属の割合がこれらの範囲の下限以上であることにより、例えば、触媒活性がメタン又は一酸化炭素の生成に十分なものとなるため好ましい。担体及び触媒金属の合計重量に対する触媒金属の割合がこれらの範囲の上限以下であることにより、例えば、担体へ担持した触媒金属の粒子同士が凝集し比表面積が低下することで触媒活性が低下する可能性を低減することができるため好ましい。
【0031】
触媒金属担持触媒としては、その平均粒子径が、1~1000μmであることが好ましく、10~500μmであることがより好ましく、30~100μmであることが特に好ましい。
【0032】
本発明におけるメタン又は一酸化炭素製造用触媒は、触媒金属担持触媒に加えて、水吸着材を含む。水吸着材を含むことにより、メタン又は一酸化炭素を生成する際に同時に生成する水(HO)を吸着し、300℃以下での二酸化炭素の転化率を更に高めることができる。水吸着材を併用することで、生成した水を反応系内から強制的に除去し、正反応を促進することができる。これにより高い二酸化炭素の転化率を得ることが可能となる。水吸着材としては、水を吸着すればよく、特に制限はないが、例えば、ゼオライト、活性炭、金属塩、金属酸化物、シリカゲル、活性アルミナ等が挙げられる。
【0033】
上記水吸着材としては、ゼオライトが好ましい。ゼオライトは、その細孔径やゼオライトを構成するSiOとAlの比を変えることでガス組成に適した構造を選択することができるため好ましい。ゼオライトを適宜選択することにより触媒金属担持触媒の二酸化炭素の転化率を向上させることができる。
【0034】
ゼオライトの形状は、特に限定されるものではなく、一般的な担体の形状でよいが、例えば、球状、柱状等の粒状、ハニカム等の異形状のものなどが挙げられる。ゼオライトの形状としては、粒状のものが好ましい。
【0035】
ゼオライトの平均細孔径は、3.6Å以上が好ましい。水の分子サイズは3.6Åであり、これよりも細孔径が小さいと水を吸着し難く、所望の二酸化炭素の転化率向上効果を得られない場合がある。ゼオライトの平均細孔径は、3.6Å以上であればよいが、20Å以下が好ましく、10Å以下がより好ましい。なお、平均細孔径が3.6Åを大きく下回るゼオライト、例えば、平均細孔径3Åのゼオライトは、本発明における試験条件においては、水吸着材として使用できない。
【0036】
水吸着材の平均粒子径、好ましくはゼオライトの平均粒子径は、10~1000μmであることが好ましく、30~500μmであることがより好ましく、50~100μmであることが特に好ましい。
【0037】
ゼオライトの結晶構造は特に限定されるものではなく、一般的なA型、X型、LSX型、ベータ、ZSM、フェリエライト、モルデナイト、L型、Y型のいずれを用いてもよい。
【0038】
触媒金属担持触媒と、水吸着材との重量比が1:3~1:5であることが好ましい。すなわち重量比で、触媒金属担持触媒1に対して水吸着材が3~5であることが好ましい。水吸着材の量が、前記下限を下回ると、十分な水吸着性能が得られず、高い二酸化炭素転化率を得ることができない可能性があり、水吸着材の量が前記上限を上回ると水吸着材の水吸着性能は十分得られるものの、過剰な水吸着材によって、触媒金属担持触媒及び水吸着材の合計重量、言い換えるとメタン又は一酸化炭素製造用触媒重量当たりの二酸化炭素転化率が低下する可能性がある。
【0039】
メタン又は一酸化炭素製造用触媒は、触媒金属担持触媒が、水吸着材表面に分散している。すなわち、本実施形態に係るメタン又は一酸化炭素製造用触媒は、ゼオライト等の水吸着材の塊と、触媒金属担持触媒の塊とが個々に点在しているのではなく、ゼオライト等の水吸着材の表面に触媒金属担持触媒が分散、好ましくは均一に分散している。なお、本発明における「均一に分散している」とは、粒子径が水吸着材と同等以下の触媒金属担持触媒が、水吸着材表面またはその近傍に多数存在している状態を意味する。メタン又は一酸化炭素製造用触媒は触媒金属担持触媒と、水吸着材(好ましくはゼオライト)とが均一に混ざっていればよい。但し、水吸着材粒子の塊と、触媒金属担持触媒の塊が個々に点在しているのではなく、水吸着材粒子の表面に触媒金属担持触媒の粒子が均一に存在している状態が好ましい。
【0040】
メタン又は一酸化炭素製造用触媒の調製方法としては、特に制限はないが、触媒金属担持触媒と、水吸着材とを、混合することにより、調製することができる。
【0041】
メタン又は一酸化炭素製造用触媒の構造及び組成は、例えば、X線光電子分光法、蛍光X線分析、X線回折分析、電子顕微鏡観察等の方法により特定することができる。
【0042】
<メタン又は一酸化炭素製造用触媒の製造方法>
実施形態に係るメタン又は一酸化炭素製造用触媒の製造方法は、実施形態に係るメタン又は一酸化炭素製造用触媒を製造できる方法であれば特に限定されるものではない。メタン又は一酸化炭素製造用触媒が、白金(Pt)と金(Au)とを含有する触媒金属と、酸化セリウム(CeO)を含有する担体とから形成される触媒金属担持触媒、及びゼオライトを含むものである場合、メタン又は一酸化炭素製造用触媒の製造方法としては、例えば、以下の製造方法が用いられる。
【0043】
まず、塩化白金酸水溶液及び塩化金酸水溶液を、白金及び金の原子%での比率が所望の比率になるよう秤量し、ナスフラスコに入れた後、純水を加える。次に、所望の量のCeO粉末を担体として加え、エバポレータにて20分間撹拌する。次に、100mbarまで減圧し、撹拌しながら80℃の湯浴中で溶媒を除去することで触媒金属担持触媒の前駆体粉末を得る。次に、触媒金属担持触媒の前駆体粉末を乳鉢で均一に粉砕し、石英ボートへ入れた後、ボックス炉にて大気雰囲気下500℃で2時間保持する。これにより、触媒金属担持触媒を得る。この際、昇温速度は10℃/min、冷却は自然冷却とする。その後、この触媒金属担持触媒と所望の量のゼオライトを粉末の状態で乳鉢を用いて均一に混合し、ハンドプレスでプレスした後、0.5~1.0mmのサイズに整粒することでメタン又は一酸化炭素製造用触媒を製造することができる。
【0044】
<メタン又は一酸化炭素製造用触媒の触媒特性評価方法>
実施形態に係るメタン又は一酸化炭素製造用触媒の触媒特性は、触媒活性点評価装置(マイクロトラック・ベル株式会社製触媒分析装置)及び質量分析計(PFEIFFER VACUUM社製Thermo Star(登録商標))を用いることにより評価することができる。
【0045】
以下、具体的に説明する。まず、約0.015gのグラスウールを丸めてガラス反応管に入れた後、メタン又は一酸化炭素製造用触媒を約1.6g秤量してガラス反応管に入れ、ガラス反応管を触媒活性点評価装置に設置する。
【0046】
次に、ガラス反応管にHeガスを流量100ccmで流通させながら、10℃/minで400℃まで昇温し400℃で約3h保持する。次に、HeガスをAr+3%Hガスに変更し、流量60ccmで流通させながら、60min保持することにより、メタン又は一酸化炭素製造用触媒を還元する。
【0047】
次に、Ar+3%HガスをHeガスに変更し、流量100ccmで流通させながら、10℃/minで300℃まで降温する。次に、Heガスを流量60ccmのAr+3%Hガス及び流量20ccmのAr+3%COガスの混合ガスに変更し、ガス流通経路をガラス反応管からガラス反応管を通さないバイパスに変更することで、バイパスに混合ガスを流通させる。そして、このように混合ガスをバイパス経由で流通させた上で、バイパスの出口における混合ガス中の各m/zのイオン電流値を質量分析計により測定することで、触媒反応の影響を受けない混合ガス中の各m/zのイオン電流値を得る。なお、質量分析計は、予め150℃に保持しておく。
【0048】
次に、上述のように触媒反応の影響を受けない混合ガス中の各m/zのイオン電流値を得た後、ガス流通経路をバイパスから触媒が配置されたガラス反応管に戻し、ガラス反応管の出口における混合ガス中の各m/zのイオン電流値を質量分析計により測定する。これにより、300℃でのメタン又は一酸化炭素製造用触媒の触媒特性を評価する。以上の方法により二酸化炭素の転化率などを求めることができる。なお、二酸化炭素の転化率は、ガラス反応管に投入したCO量に対する質量分析計にて測定された電流値から換算した未反応のCO量の差からCO転化量を求め算出した。
【0049】
<メタン又は一酸化炭素製造装置>
本発明のメタン又は一酸化炭素製造装置は、二酸化炭素と水素とを供給する導入路と、二酸化炭素と水素とを反応させる反応容器と、反応容器の温度を調整する加温手段とを有し、反応容器に上述の本発明のメタン又は一酸化炭素製造用触媒を備える。加温手段は電熱、燃焼熱等、適宜選択可能である。導入路は、二酸化炭素供給設備や水素供給設備と接続されていてもよく、ガス組成を所望の比率に調整する制御装置を設けてもよい。
【0050】
本発明のメタン又は一酸化炭素製造用触媒を適用することで、メタンを高い選択率で生成すること、又は一酸化炭素を高い選択率で生成することが可能となる。メタン又は一酸化炭素製造装置は、反応容器の合成反応の温度が300℃以下に設定されていることが好ましい。本発明のメタン又は一酸化炭素製造用触媒は300℃以下の低温であっても、COの収率を向上させることが可能である。従って、COを製造する際であっても、メタン又は一酸化炭素製造装置の反応容器の温度を300℃以下に設定可能である。反応容器内の合成反応を行う際の温度を300℃以下に設定することにより、該温度が従来よりも低温なため必要なエネルギー量を少なくすることが可能である。また加温手段として、反応容器の加温に他の機器の排熱を使用することが好ましい態様の一つである。他の機器の排熱を、反応容器の加熱に使用すると、他の機器より供給される例えば300℃以下の排熱を利用して反応容器の加温が可能であり、その結果、さらにメタン又は一酸化炭素製造装置を用いて、メタン又は一酸化炭素を製造する際に必要なエネルギーコストが低減できる。
【実施例0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
まず、塩化白金酸水溶液及び塩化金酸水溶液を、白金(Pt)及び金(Au)の原子%での比率がPt:Au=70:30になるよう秤量し、ナスフラスコに入れた後、30mlの純水を加えた。次に、3.6gのCeO粉末を担体として加え、エバポレータにて20分間撹拌した。次に、100mbarまで減圧し、撹拌しながら80℃の湯浴中で溶媒を除去することで触媒金属担持触媒の前駆体粉末を得た。次に、触媒金属担持触媒の前駆体粉末を乳鉢で均一に粉砕し、石英ボートへ入れた後、ボックス炉にて大気雰囲気下500℃で2時間保持した。これにより、担体及び触媒金属の合計重量に対する触媒金属の重量比が10重量%である、約4.0gの触媒金属担持触媒を得た。次にこの触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比が1:3になるように、触媒金属担持触媒0.4gと、1.2gの平均細孔径9Åを有するゼオライト粉末を乳鉢中で均一に混合した後、ハンドプレスを用いてプレス成形した後、0.5~1.0mmのサイズに整粒しメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。
【0053】
[実施例2]
平均細孔径4Åのゼオライト粉末を使用した点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。
【0054】
[実施例3]
触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比を1:4にした点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比は、触媒金属担持触媒の量は変えず、ゼオライト粉末の量を変更することにより調整した。
【0055】
[実施例4]
触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比を1:5にした点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比は、触媒金属担持触媒の量は変えず、ゼオライト粉末の量を変更することにより調整した。
【0056】
[比較例1]
ゼオライトを混合せずに整粒した点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。
【0057】
[比較例2]
触媒金属担持触媒とゼオライトとをそれぞれ0.5~1.0mmのサイズに整粒した後、混合した点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。
【0058】
[比較例3]
平均細孔径3Åのゼオライト粉末を使用した点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。
【0059】
[比較例4]
触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比を1:1にした点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比は、触媒金属担持触媒の量は変えず、ゼオライト粉末の量を変更することにより調整した。
【0060】
[比較例5]
触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比を1:2にした点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比は、触媒金属担持触媒の量は変えず、ゼオライト粉末の量を変更することにより調整した。
【0061】
[比較例6]
触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比を1:6にした点を除いて、実施例1と同様の方法でメタン又は一酸化炭素製造用触媒を得た。触媒金属担持触媒とゼオライトの重量比は、触媒金属担持触媒の量は変えず、ゼオライト粉末の量を変更することにより調整した。
【0062】
実施例及び比較例で得た、メタン又は一酸化炭素製造用触媒について、前述の<メタン又は一酸化炭素製造用触媒の触媒特性評価方法>の項に記載の方法によって、触媒特性を評価した。結果を図2~5に示す。なお、触媒特性評価方法では、二酸化炭素から一酸化炭素を得る反応について評価を行った。
【0063】
図1は、実施例1及び比較例2で得たメタン又は一酸化炭素製造用触媒の形態の模式図である。実施例1(図1(b))では、ゼオライト粒子3の周りに、粒子径がゼオライト粒子3と同等以下の触媒金属担持触媒1がゼオライト粒子の周りに多数存在して比較的均一に覆っているのに対して、比較例2(図1(a))では、ゼオライト粒子3同士が実施例1に比べ隣り合って存在し、その表面および近傍に触媒金属担持触媒1が点在した状態であり、実施例1に比べ均一に存在していない、すなわち触媒金属担持触媒1がゼオライト粒子3に分散していないことが確認された。
【0064】
図2は、触媒金属担持触媒とゼオライトとの混合方法と二酸化炭素転化率の関係である。ゼオライトを含まない比較例1の二酸化炭素転化率が15%、触媒金属を担持した担体とゼオライトをそれぞれ0.5~1.0mmのサイズに整粒した後、混合した比較例2の二酸化炭素転化率が56%であるのに対して、触媒金属を担持した担体とゼオライトを均一に混合した後、整粒した実施例1の二酸化炭素転化率は66%と、高い二酸化炭素転化率を示した。これらの結果から、ゼオライトを含むこと、及び均一に混合し、ゼオライト表面に触媒が均一に存在すること、すなわち触媒金属担持触媒がゼオライト表面に分散していることで高い二酸化炭素転化率を実現できることが明らかとなった。
【0065】
図3は、メタン又は一酸化炭素製造用触媒に混合したゼオライトの細孔径と二酸化炭素転化率との関係である。ゼオライトの平均細孔径が3Åの二酸化炭素転化率が24%であるのに対して、平均細孔径4Å、及び9Åの二酸化炭素転化率は66%と高い二酸化炭素転化率を示した。これは、水の分子サイズが3.6Åであることから、それよりも平均細孔径が大きいことで高い水吸着性能を示したと考えられ、これらの結果からゼオライトの平均細孔径が3.6Åよりも大きいことで高い二酸化炭素転化率を実現できることが明らかとなった。
【0066】
図4は、触媒金属担持触媒とゼオライトとの重量比と二酸化炭素転化率との関係である。触媒金属担持触媒に対するゼオライトの重量比が1及び2の二酸化炭素転化率が36%及び49%であるのに対し、触媒金属担持触媒に対するゼオライトの重量比が3、4、5、6では、必要とされる二酸化炭素転化率60%を超える66%と高い二酸化炭素転化率を示した。一方で、図5に示した触媒金属担持触媒及びゼオライトの合計重量当たりの二酸化炭素転化率では触媒金属担持触媒に対するゼオライト重量比が3をピークに低下し、重量比が5よりも高くなると重量あたりの二酸化炭素転化率で所望の特性が得られなかった。これらの結果から、触媒金属担持触媒とゼオライトとの重量比は1:3~1:5の範囲において高い二酸化炭素転化率を得られることが明らかとなった。なお、図5で示した二酸化炭素転化率は、二酸化炭素転化率を本発明の実施例及び比較例で使用した触媒金属担持触媒とゼオライトの実重量で徐した値である。
【0067】
本発明は、上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含され、様々な変形例が含む。例えば、上記実施形態及び上記実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態及び実施例の構成の一部を他の実施形態及び実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態及び実施例の構成に他の実施形態及び実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態及び各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0068】
以下、本発明に関し、更に、付記を開示する。
(付記)
(付記1)
二酸化炭素と水素とを反応させメタン又は一酸化炭素を製造するために用いられる触媒であって、
白金と、銀、銅、亜鉛、ニッケル、及び金からなる群から選択される少なくとも1種とを含有する触媒金属が担体に担持された触媒金属担持触媒及び
水吸着材を含み、
前記触媒金属担持触媒と、前記水吸着材との重量比が1:3~1:5であり、
前記触媒金属担持触媒が、前記水吸着材表面に分散していることを特徴とするメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
(付記2)
前記担体が、酸化セリウムを含有することを特徴とする付記1に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
(付記3)
前記触媒金属が、前記白金と前記金とを含有することを特徴とする付記1又は付記2に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
(付記4)
前記水吸着材がゼオライトを含有することを特徴とする付記1~付記3のいずれかに記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
(付記5)
前記ゼオライトの平均細孔径が3.6Å以上であることを特徴とする付記4に記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒。
(付記6)
二酸化炭素と水素とを供給する導入路と、二酸化炭素と水素とを反応させる反応容器と、前記反応容器の温度を調整する加温手段とを有するメタン又は一酸化炭素製造装置であって、
前記反応容器に付記1~付記5のいずれかに記載のメタン又は一酸化炭素製造用触媒を備えることを特徴とするメタン又は一酸化炭素製造装置。
(付記7)
前記反応容器の加温に他の機器の排熱を使用することを特徴とする付記6に記載のメタン又は一酸化炭素製造装置。
(付記8)
前記反応容器の合成反応の温度が300℃以下に設定されていることを特徴とする付記6又は付記7に記載のメタン又は一酸化炭素製造装置。
【符号の説明】
【0069】
1:触媒金属担持触媒
3:ゼオライト粒子
図1
図2
図3
図4
図5