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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190744
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】路面情報提供装置及び車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20221220BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221220BHJP
   B60W 40/068 20120101ALI20221220BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20221220BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/16 D
B60W40/068
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099144
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 拓也
(72)【発明者】
【氏名】三国 司
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA60
3D241DC47Z
5H181AA01
5H181CC27
5H181EE12
5H181EE13
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL16
5H181MC15
5H181MC16
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】路面ごとに詳細な状態を予測して、路面の状態に応じた運転操作を支援し、適切な車両制御を支援する。
【解決手段】走行中の複数の車両のうち、少なくとも走行中に自車両の車輪の空転を検知した車両から、前記車両の車両情報を取得すると共に、前記車両の周辺の気象情報を取得する情報取得部と、前記車両情報及び前記気象情報に基づいて、前記車両の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測した路面情報を生成する路面状態予測部と、前記路面情報を地図情報に対応付けたリスクマップを生成するリスクマップ生成部と、前記所定領域を走行する車両に前記リスクマップを送信する送信部と、を備えた路面情報提供装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の複数の車両のうち、少なくとも走行中に自車両の車輪の空転を検知した車両から、前記車両の車両情報を取得すると共に、前記車両の周辺の気象情報を取得する情報取得部と、
前記車両情報及び前記気象情報に基づいて、前記車両の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測した路面情報を生成する路面状態予測部と、
前記路面情報を地図情報に対応付けたリスクマップを生成するリスクマップ生成部と、
前記所定領域を走行する車両に前記リスクマップを送信する送信部と、を備えた路面情報提供装置。
【請求項2】
前記路面情報は、前記路面上の滑りやすい領域を特定したスリップ情報を含む請求項1記載の路面情報提供装置。
【請求項3】
前記車両情報は、前記車両の走行位置を示す位置情報と、走行路の路面μ値、車速、車輪の空転情報、及び、ステアリング転舵量を少なくとも含み、前記車両の走行状態を示す走行情報とを含む請求項1又は請求項2記載の路面情報提供装置。
【請求項4】
前記リスクマップに基づいて、前記車両の進行方向に存在する滑りやすい領域の危険度レベルを前記車両毎に判定する危険度レベル判定部をさらに備え、
前記送信部は、前記危険度レベルを各前記車両に送信する請求項1から請求項3のいずれか1項記載の路面情報提供装置。
【請求項5】
車両に備えられる車両制御装置であって、
地図情報と自車両の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測した路面情報とが対応付けられたリスクマップを取得するリスクマップ取得部と、
前記リスクマップ及び前記自車両の走行状態に基づいて、前記自車両の走行路の進行方向に存在する滑りやすい領域の危険度レベルを取得する危険度レベル取得部と、
前記滑りやすい領域に対する危険回避のための運転操作に関する運転支援情報を、前記危険度レベルに応じて前記自車両の運転者に報知するように報知部を制御する報知制御部と、を備えた車両制御装置。
【請求項6】
前記報知制御部は、前記危険度レベルに応じた運転操作を含む運転支援情報を前記運転者に報知するよう前記報知部を制御する請求項5記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記報知制御部は、前記危険度レベルが高いほど運転支援情報を前記運転者により強く報知するよう前記報知部を制御する請求項5又は請求項6記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記リスクマップは、
所定領域の路面の状態を予測した路面情報が地図情報に対応付けられて生成され、
前記路面情報は、所定領域を走行中の複数の車両から取得した車両情報と、前記所定領域の気象情報とに基づいて生成され、
前記車両情報は、複数の前記車両のうち、走行中に車輪の空転を検知した車両から取得した前記車両の走行位置及び走行状態を示す情報を含む、請求項5から請求項7のいずれか1項記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面情報提供装置及び車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路面の状態に応じて車両を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、自車で求めた又は他車から取得した路面摩擦係数が小さいほど、車速制御時の車速上限値を低く設定するように制御する車速制御装置が開示されている。また、特許文献2には、自車両の位置情報、レーザレーダによる路面の推定μ、及び、他車から受信した路面情報に基づく路面の凹凸状態に基づいて自車両の各車輪への駆動力を配分する車両制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-19489号公報
【特許文献2】特開2020-44939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、路面の状態は、気象条件を含む環境条件によって変化し、例えば、降雨や降雪により路面が滑りやすい状態になる場合もある。このような場合には、路面ごとに、路面における滑りやすい箇所や車線、滑りやすさの程度などの詳細な状態を予め把握して、適切な車両制御を行うことが望まれる。
路面が滑りやすい状態であるか否かは天気予報などに基づいてある程度予測することができるものの、天気予報は比較的大きな地域ごとの情報であるため、上述のような路面ごとの詳細な状態を予測することができない。したがって、走行中の車両において、路面の詳細な状態を正確に把握することができず、路面に応じた適切な運転操作や車両制御を行うことが必ずしもできない。
【0005】
本発明は、このような状況に対処することを課題としている。すなわち、路面ごとに詳細な状態を予測して、路面の状態に応じた運転操作を支援し、適切な車両制御を支援すること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明に係る路面情報提供装置は、以下の構成を具備する。
すなわち、本発明の一態様は、走行中の複数の車両のうち、少なくとも走行中に自車両の車輪の空転を検知した車両から、前記車両の車両情報を取得すると共に、前記車両の周辺の気象情報を取得する情報取得部と、前記車両情報及び前記気象情報に基づいて、前記車両の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測した路面情報を生成する路面状態予測部と、前記路面情報を地図情報に対応付けたリスクマップを生成するリスクマップ生成部と、前記所定領域を走行する車両に前記リスクマップを送信する送信部と、を備えた路面情報提供装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
このような特徴を有する路面情報提供装置によれば、路面ごとに詳細な状態を予測して、路面の状態に応じた運転操作を支援し、適切な車両制御を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る路面情報提供装置及び車両制御装置を含む車両制御支援システムの概略構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る路面情報提供装置及び車両制御装置を含む車両制御支援システムの概略構成を示す説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る車両制御装置において定められた危険度レベル、報知手法、運転支援情報の関係を示す説明図であり、(A)は、危険度レベルに対応して定められた報知手法を示し、(B)は、危険度レベルに応じて定められた運転支援情報を示す。
図4】本発明の実施形態に係る路面情報提供装置におけるリスクマップ生成処理の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る路面情報提供装置における危険度レベル判定処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る車両制御装置21において、(A)は車両情報送信処理の流れを示すフローチャートであり、(B)はリスクマップ及び危険度レベルを取得した後の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態に係る車両制御装置において、危険度レベルに応じた運転支援情報の報知処理の流れを示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係る車両制御装置において、危険度レベルに応じた運転支援情報の報知処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0010】
本発明の実施形態に係る車両2に搭載される車両制御装置21及び路面情報提供装置3は、車両制御支援システム1の一部として機能する。つまり、車両制御支援システム1は、車両2に搭載された車両制御装置21と、車両制御装置21との間で各種情報を送受信する路面情報提供装置3とを含んでいる。
【0011】
図1及び図2に示すように、路面情報提供装置3は、走行中の複数の車両2A,2B,2C・・・(以下、各車両の区別を要しない場合には、単に「車両2」とする)に搭載された車両制御装置21と通信を行い、複数の車両2に搭載された各車両制御装置21からそれぞれ車両情報を取得する。また、路面情報提供装置3は、車両制御装置21から取得した車両情報に基づいて路面の状態を示す情報を生成し、生成した情報を車両制御装置21に対して提供する。
【0012】
図1に示すように、路面情報提供装置3は、通信部31、情報取得部32、路面状態予測部33、リスクマップ生成部34、及び危険度レベル判定部35を備えている。
通信部31は、走行中の複数の車両2や、民間又は公的な機関によって管理される気象情報提供サーバ(不図示)、その他の予め定めた情報提供サーバ等との間で通信を行い、各種情報の送受信を行う。
【0013】
情報取得部32は、複数の車両2のうち、少なくとも、自車両の車輪の空転を検知した車両2から車両情報を、通信部31を介して取得する。
車両情報には、車両2において空転を検知した際の走行位置を示す位置情報、及び、走行状態を示す走行情報が含まれる。走行情報は、例えば、車速、空転に関する情報、空転を検知した路面の摩擦係数である路面μ値、ステアリング転舵量、ワイパーの作動状態、走行モード、及び、走行経路(設定された目的地等)に関する情報などがある。また、車両情報として、車両2によって取得した外気温などの周辺環境に関する情報を含めることもできる。
【0014】
また、情報取得部32は、通信部31を介して、車両2又は気象情報提供サーバから、車両2の走行位置を含む地域の現況の気象情報や、外気温、降雨量及び降雪量等を含む観測情報を取得する。
【0015】
路面状態予測部33は、情報取得部32によって取得した車両情報及び気象情報に基づいて、走行中の車両2の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測した路面情報を生成する。
【0016】
例えば、路面状態予測部33は、車両2の位置情報に基づいて、滑りやすい領域を含む走行路の地図上の位置を予測する。また、路面状態予測部33は、車両2の空転に関する情報に基づいて空転した車輪の位置(前輪、後輪、進行方向右側又は左側)を把握し、走行路における滑りやすい位置を予測する。また、路面状態予測部33は、走行路上の車両2が車輪の空転を検知した位置の路面μ値に基づいて、滑りやすい位置における滑りやすさの程度を予測する。
【0017】
さらに、路面状態予測部33は、複数の車両2からそれぞれ車両情報を取得することで、各車両から把握した滑りやすい位置から、走行路における滑りやすい領域(例えば、走行路の全幅、特定の車線のみ、特定の車線の進行方向右側又は左側のみ等)、滑りやすい領域の範囲、滑りやすい領域においてスリップした車両の台数等を特定することができ、路面の状態を正確に予測することができる。
【0018】
路面状態予測部33は、上述の予測結果、すなわち、滑りやすい領域(スリップ箇所)を含む走行路、走行路中の滑りやすい領域の範囲、及び、滑りやすさの程度に関する予測結果をスリップ情報として路面情報に含める。併せて、路面状態予測部33は、例えば、気象情報や観測情報から車両2周辺の環境を推定することができる。したがって、路面状態予測部33は、推定した周辺の環境から、数十分又は数時間後の路面の状態を予測し、予測した将来の路面状態に関する情報も路面情報の一部とすることができる。
【0019】
リスクマップ生成部34は、地図情報に路面情報を対応付けたリスクマップを生成する。つまり、リスクマップ生成部34は、例えば、地図情報の位置情報と同一の位置情報を含む路面情報を、地図情報に重ね合わせることでリスクマップを生成する。重ね合わせに際しては、文字、数字、及び画像等適宜選択することができる。
【0020】
このようなリスクマップを生成することで、路面の状態を直感的に把握可能な地図を提供することができる。リスクマップを受信した車両2では、車両2に備えられたディスプレイ上にリスクマップを表示させることで、走行中又は近隣の路面に滑りやすい領域がある場合には、地図上に滑りやすい領域を表示させ、運転者等に報知することができる。
【0021】
地図情報は、路面情報提供装置3に設けられる記憶装置(不図示)に予め記憶させておくことができるほか、通信部31を介して外部の地図情報管理サーバから逐次取得してもよい。また、地図情報としてダイナミックマップなどの高精度3次元地図情報を用いることで、より詳細なリスクマップを生成することができる。生成されたリスクマップは、通信部31によって車両2に送信される。
【0022】
危険度レベル判定部35は、リスクマップ上の車両2を特定し、リスクマップ上を走行する車両2の進行方向における危険度合いを示す危険度レベルを車両毎に判定する。危険度レベルは、リスクマップ上を走行する車両2の進行方向に滑りやすい領域(スリップ箇所)があるか否か、スリップ箇所がある場合には、スリップ箇所の範囲、当該車両2とスリップ箇所までの距離、スリップ箇所におけるスリップ車両の台数、などに基づいて、例えば、複数段階(例えば大、中、小などの3段階)で定めることができる。判定結果である車両毎の危険度レベルは、通信部31を介して各車両に送信される。
【0023】
なお、危険度レベルは、必ずしも路面情報提供装置3において判定する必要はなく、リスクマップを受信した車両2において、自車両の危険度レベルを判定することもできる。
【0024】
続いて、車両制御装置21の一例について説明する。
車両2に備えられた車両制御装置21は、車両2の走行に必要な種々の電子機器類(後述する)と接続され、これらの電子機器類を制御する複数の車載ECU(Electronic Control Unit)を含んでいる。これらの各電子機器及び各車載ECU等は、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載ネットワークにより相互に通信可能に接続されている。
【0025】
各車載ECUは、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサや電気回路、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子を備えて構成することができる。また、車載ECUが実行する動作の一部又は全部を、ASIC(application specific integrated circuit)、FPGA(field-programmable gate array)やGPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェアにより実現することもできる。以下の説明において、本実施形態における車両制御装置21による車両2の制御動作に直接関与しない電子機器や車載ECUについての説明及び図示は省略する。
【0026】
図2に示すように、車両制御装置21は、車両2の走行に必要な車両駆動システム及び電子機器類として、通信部41、ワイパー作動部42、車両駆動部43(パワートレインシステム431、ブレーキステム432、ステアリングシステム433等)、報知部44(表示部441、警報吹鳴部442、バイブレータ443)、記憶部45、外気温センサ51、車速センサ52、車輪速センサ53、舵角センサ54、加速度センサ55、ジャイロセンサ56、及び、GPSセンサ57が、車載ネットワークにより接続されている。
【0027】
通信部41は、路面情報提供装置3などの外部サーバ、他車両、各種情報を送受信するためのインタフェースである。
ワイパー作動部42は、例えば、降雨量を検知し、検知した降雨量に応じて予め定められた時間間隔でワイパーを作動させる。
【0028】
車両駆動部43は、パワートレインシステム431、ブレーキステム432、ステアリングシステム433等の駆動部を含み、駆動制御部260による制御信号に従って駆動(操舵、加速・減速、停止等)し、制御される。
【0029】
報知部44は、表示部441、警報吹鳴部442、及び、バイブレータ443を含み、報知制御部250による制御に従って、車両2の運転者に危険を回避するための運転支援情報を、危険度合いに応じた手法で報知する。
【0030】
表示部441は、例えば、ダッシュボードに備えられる表示パネルや、フロントウィンドウに投影するHUD(Head-Up Display)などから構成され、乗員が視認可能な画像を表示する。表示部441がHUDである場合、車両2のフロントウィンドウに速度表示やナビゲーション画像などを表示して、車両2の乗員、特に運転者に対して各種情報を提示することができる。
【0031】
表示部441は、この他、車両制御装置21の報知制御部250による報知指示に従って、車両2の進行方向におけるスリップ情報や危険回避操作に関する運転支援情報を運転者等に視認可能となるように表示して危険回避を促すことができる。
【0032】
警報吹鳴部442は、例えば、一般的なスピーカを用いることができ、報知制御部250による報知指示に従って、進行方向のスリップ情報や危険情報がある旨を音声や所定の鳴動音などを出力したりすることができる。警報吹鳴部442は、必ずしも報知専用に設ける必要はなく、例えば、車載オーディオ装置やナビゲーションシステムのスピーカと兼用することができる。
【0033】
バイブレータ443は、運転者が着座する運転座席のシートを振動させるシートバイブレータ、及び、ステアリングを振動させるステアリングバイブレータを含む。シートバイブレータ又はステアリングバイブレータを振動させることで、運転者に運転支援情報を報知し、危険回避操作を促すことができる。
【0034】
記憶部45は、車両制御装置21が動作するために必要な情報や、通信部41において送受信した情報、後述する危険度レベルに応じた運転支援情報や、危険度レベルに報じた報知手法等を記憶する(図3参照)。
【0035】
センサ群(外気温センサ51、車速センサ52、車輪速センサ53、舵角センサ54、加速度センサ55、ジャイロセンサ56、及び、GPSセンサ57)は、車両2の走行状態を各センサの特性に応じて検出する。
【0036】
車両制御装置21は、車両制御装置21に含まれる各車載ECUにより、車両情報収集部210、空転検知部220、リスクマップ取得部230、危険度レベル取得部240、報知制御部250、及び駆動制御部260の各部を実現し、上述した車両制御装置21に接続される駆動システムや電子機器類を制御する。
【0037】
車両情報収集部210は、車両2の車両情報として、例えば、車速、位置情報、車輪の空転情報、路面μ値、ステアリング転舵量、外気温、ワイパー作動状態、走行経路(目的地設定)、及び走行モード等を取得する。
【0038】
車速は、車速センサ52による出力を所定の周期で監視することにより得られる車両2の走行速度に関する情報である。位置情報は、GPS(Global Positioning System)を構成する人工衛星等からGPSセンサ57が受信した電波や、ジャイロセンサ56の出力に基づいて得られる緯度及び経度を含む車両の位置に関する情報である。
【0039】
車輪の空転情報は、後述する空転検知部220において空転を検知した際の、各車輪に設けられた車輪速センサ53の出力に基づく各車輪の回転速度又は回転数に関する情報である。
【0040】
路面μ値は、車両2が走行する路面の摩擦係数であり、例えば、車両2の車速センサ52から得られる車速と、車輪速センサ53による車輪の回転速度、舵角センサ54から取得した舵角とに基づいて走行中の路面μ値を予め定めた周期で算出することにより得られる。
【0041】
ステアリング転舵量は、例えば、舵角センサ54やステアリングシステム433に備えられた操舵トルクセンサ(不図示)等による出力に基づいて得られる情報である。外気温は、車両2が走行している地域の現況の外気温であり、外気温センサ51の出力を一定の周期で監視することにより得られる。
【0042】
ワイパー作動状態は、例えば、ワイパーの作動間隔に関する情報である。走行経路は、車両2の乗員が所定の入力部(不図示)から入力した、または乗員が目的地を入力することで外部のサーバが提案した出発地点から目的地点までの走行経路に関する情報である。
【0043】
車両情報としての走行モードは、予め車両制御装置21に設定された複数の走行モードから乗員によって選択され現在の走行に用いられている走行モードを特定するための情報である。走行モードとしては、例えば、乗員の好みや、走行路の環境や状態、天候などに応じて予め入力操作に対する応答性が定められ、例えば、快適性を重視したモード、スポーツ走行に最適なモード、省エネを重視したモードなどがあり、通常、車両毎に複数種類設定されている。
【0044】
このような車両情報は、記憶部45に一時的に記憶され、後述する空転検知部220により車輪の空転が検知された場合に、通信部41により路面情報提供装置3に送信される。上述の通り、路面情報提供装置3では、車両2から送信された車両情報に基づいて、車両2が空転した路面上の位置とその路面μ値などから、路面上の滑りやすい領域等に関する情報を収集し、リスクマップを生成する。
【0045】
空転検知部220は、車両2の各車輪に取り付けられ車輪の回転を検出する車輪速センサ53からの出力に基づいて、回転している全ての車輪の回転速度又は回転数を監視し、何れかの車輪が他の車輪に比べて極端に回転速度又は回転数が高まった場合に当該車輪の空転を検出する。
【0046】
リスクマップ取得部230は、通信部41を介して路面情報提供装置3からリスクマップを取得する。上述のようにリスクマップは、自車両の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測した路面情報と地図情報とが対応付けられている。車両制御装置21では、表示部441にリスクマップを表示させることで、運転者は、表示された地図上で進行方向の路面に滑りやすい領域があるか等の路面の状態を直感的に把握することができる。
【0047】
危険度レベル取得部240は、路面情報提供装置3からリスクマップと共に車両2についての危険度レベルを受信し、取得する。危険度レベル取得部240は、路面情報提供装置3から危険度レベルを受信しない場合には、リスクマップに基づいて、自車両の進行方向における路面の危険度合いを示す危険度レベルを評価する。
【0048】
具体的には、危険度レベル取得部240は、リスクマップを参照して車両2の進行方向に存在する滑りやすい領域(スリップ箇所)を特定し、特定したスリップ箇所の範囲や滑りやすさの程度等を予測して、危険度レベルを複数段階(例えば、3段階)で評価する。危険度レベル取得部240による危険度レベルの評価は、上述した路面情報提供装置3における危険度レベルの判定と同様に行うことができる。
【0049】
危険度レベル取得部240による危険度レベルの評価の一例について説明する。すなわち、危険度レベル取得部240は、リスクマップを参照して車両2の進行方向にスリップ箇所があるか否かを判定し、スリップ箇所がなければ危険度レベルが「小」であると評価する。
【0050】
危険度レベル取得部240は、スリップ箇所があり、自車両の当該スリップ箇所までの距離が所定距離未満であるか、または、車両2が現在の車速で走行した場合のスリップ箇所までの到達時間が所定時間未満であるか、を判定し、所定距離以上又は所定時間以上である場合は、危険度レベルが「中」であると評価する。
【0051】
また、危険度レベル取得部240は、スリップ箇所までの距離が所定距離以下又はスリップ箇所までの到達時間が所定時間以下である場合であって、スリップ箇所におけるスリップ台数が所定台数未満である場合には、危険度レベルが「中」であると評価する。さらに、危険度レベル取得部240は、スリップ箇所までの距離が所定距離以下又はスリップ箇所までの到達時間が所定時間以下である場合であって、スリップ箇所におけるスリップ台数が所定台数以上である場合には、危険度レベルが「大」であると評価する。
【0052】
報知制御部250は、スリップ箇所に対する危険回避のための運転操作、つまり、危険回避操作を含む運転支援情報を、危険度レベルに応じた手法で自車両の運転者に報知するよう報知部44を制御する。つまり、報知制御部250は、報知部44による運転支援情報の報知の手法を危険度レベルに応じて異ならせ、危険度レベルが高いほど運転支援情報を運転者により強く報知するよう制御する。これにより、危険度レベルに応じて強弱をつけながら、運転者に対して危険回避のための運転操作を促すことができる。
【0053】
例えば、危険度レベル「小」の場合には、表示部441に運転支援情報を表示させるよう制御し、危険度レベル「中」の場合には、運転支援情報を表示部441に表示させると共に、警報吹鳴部442から音声又は警報によって報知させ、危険度レベル「大」の場合には、表示部441の表示を拡大し、かつ、警報吹鳴部442からの音声又は警報の音量を上げる、バイブレータ443によりシートバイブレータ又はステアリングバイブレータを振動させる等することができる。
【0054】
このような危険度レベルに応じて異なる報知手法を、図3(A)に示すように、予め危険度レベルと対応付けて記憶部45に記憶させておくことができる。
【0055】
運転支援情報は、少なくとも、滑りやすい領域に対する危険回避操作を含み、例えば、スリップ箇所の位置、車両からスリップ箇所までの距離、到達時間、範囲等のスリップ情報を更に含んでいてもよい。
【0056】
危険回避操作には、例えば、進路変更に関する情報がある。この場合、報知制御部250は、例えば、運転者に進路変更を推奨する旨や、推奨する変更先の走行路等を報知するように報知部44を制御することができる。また、運転支援情報は、進路変更に限られず、危険度レベルに応じて運転者に提示する運転支援情報を異ならせることもできる。
【0057】
つまり、報知制御部250は、車両2の危険度レベルに対応する危険回避操作を含む運転支援情報を選択して運転者に報知するように報知部44を制御することができる。
【0058】
報知制御部250は、例えば、次のように危険度レベルに応じた運転支援情報を運転者に報知するよう報知部44を制御する。
すなわち、危険度レベル「小」の場合には、危険回避のために採るべき運転操作は定められていないが、スリップ情報として、スリップ箇所が存在すること及びスリップ箇所の地図上の位置を報知するように報知部44を制御する。
【0059】
危険度レベル「中」の場合には、危険回避操作として減速を促し、併せて、スリップ情報として、スリップ箇所が存在すること、及び、スリップ箇所までの距離や到達時間を報知するように報知部44を制御する。
【0060】
危険度レベル「大」の場合には、危険回避操作として進路変更(車線変更を含む)を促し、スリップ情報としてスリップ箇所と共にスリップ箇所までの距離や到達時間を報知するように報知部44を制御する。
【0061】
このように、車両制御装置21は、危険度レベルに応じた危険回避操作と、報知すべきスリップ情報を定めることができる。危険度レベルに応じた危険回避操作や報知すべきスリップ情報は、例えば、図3(B)に示すように、予め危険度レベルと対応付けて記憶部45に記憶させておいてもよいし、危険度レベル取得部240で都度判断してもよい。また、路面情報提供装置3から危険回避操作等を受信してもよい。
【0062】
駆動制御部260は、車両駆動部43の操舵、加速・減速、停止等を制御することにより車両2の駆動を制御する。
【0063】
(路面情報提供装置及び車両制御装置における処理について)
以下、路面情報提供装置3及び車両制御装置21における処理についてそれぞれ説明する。
【0064】
まず、路面情報提供装置3におけるリスクマップ生成処理フローについて、図4のフローチャートを用いて説明する。
路面情報提供装置3において、情報取得部32は、通信部31を介して、走行中の複数の車両2のうち、自車両の車輪の空転を検知した車両2に備えられた車両制御装置21から、車両2の車両情報を取得する(ステップS101)。また、情報取得部32は、車両2又は気象情報提供サーバから、車両2周辺を含む所定地域のリアルタイムの気象情報を取得する(ステップS102)。
【0065】
次に、リスクマップ生成部34によりリスクマップを生成する(ステップS103)。リスクマップの生成に先立って、複数の車両2からそれぞれ取得した車両情報及び気象情報に基づいて、路面状態予測部33により、走行中の車両2の周辺を含む所定領域の路面の状態を予測したスリップ情報等を含む路面情報を生成する。リスクマップ生成部34は、路面情報と地図情報とを対応付け、路面情報を地図情報に重ね合わせたリスクマップを生成する(ステップS103)。
【0066】
危険度レベル判定部35は、生成したリスクマップ上を走行する車両2を特定し(ステップS104)、車両2毎に、車両2の進行方向における危険度レベルを判定する(ステップS105)。危険度レベルの判定については後述する。
通信部31は、リスクマップ生成部34により生成されたリスクマップと、危険度レベル判定部35による判定結果に係る危険度レベルとを、各車両2に送信する(ステップS106)。
【0067】
次に、の危険度レベル判定部35による危険度レベル判定処理について、図5のフローチャートに従って説明する。
危険度レベル判定部35は、リスクマップに基づいて、走行中の車両2の進行方向にスリップ箇所があるか否かを判定し(ステップS201)、スリップ箇所がない場合には、危険度レベル「小」と判定する(ステップS202)。
【0068】
車両2の進行方向にスリップ箇所がある場合には(ステップS201)、車両2からスリップ箇所までの距離が所定距離未満であるか、又は、車両2がスリップ箇所に到達するまでの時間が所定時間未満であるかを判定する(ステップS203)。車両2と車両2の進行方向に存在するスリップ箇所との距離が所定距離以上、又は、車両2がスリップ箇所に到達するまでの時間が所定時間以上である場合には、危険度「中」と判定する(ステップS204)。
【0069】
車両2と車両2の進行方向に存在するスリップ箇所との距離が所定距離未満、又は、車両2がスリップ箇所に到達するまでの時間が所定時間未満である場合には、そのスリップ箇所におけるスリップした車両の台数が所定数以上であるかを判定する(ステップS205)。スリップした車両の台数が所定数未満の場合は危険度レベル「中」と判定し(ステップS206)、スリップした車両の台数が所定数以上である場合には危険度レベル「大」と判定する(ステップS207)。
【0070】
なお、車両制御装置21の危険度レベル取得部240による危険度レベルの評価は、図5に示す路面情報提供装置における危険度レベル判定処理と同様に行うことができる。
【0071】
続いて、車両制御装置21における処理フローについて、図5及び図6のフローチャートを用いて説明する。
図6(A)は、車両制御装置21において、車両情報を路面情報提供装置3に送信する処理を示すフローチャートであり、図6(B)は、路面情報提供装置3からリスクマップ及び危険度レベルを受信した後の処理を示すフローチャートである。
【0072】
図6(A)に示すように、車両制御装置21において、空転検知部220が車輪の空転を検知すると(ステップS301)、車両情報収集部210が、センサ群の出力から路面情報提供装置3に送信するための車両情報を取得し、記憶部45に記憶させる(ステップS302)。車両情報収集部210は、センサ群から収集し記憶部45に記憶させた車両情報を、通信部41を介して路面情報提供装置3に送信する(ステップS303)。
【0073】
図6(B)に示すように、車両制御装置21では、路面情報提供装置3からリスクマップ及び危険度レベルを受信し(ステップS401)、リスクマップを参照して自車両の進行方向にスリップ箇所がある場合には(ステップS402)危険度レベルに応じて運転支援情報を報知して危険回避を促す(ステップS403)。
【0074】
車両制御装置21では、図7に示すように、危険度レベルに応じて運転支援情報の報知の仕方に強弱をつけることができる。
すなわち、報知制御部250は、危険度レベルが「小」の場合には(ステップS501)、表示部441にスリップ箇所を表示させたり、リスクマップ上のスリップ箇所を強調表示させたりするように制御する(ステップS502)。
【0075】
危険度レベルが「中」の場合には(ステップS503)、スリップ箇所の表示とともに警報吹鳴部442によって警報ないしは音声にスリップ箇所が存在すること、スリップ箇所までの距離等を運転者に報知する(ステップS504)。
【0076】
危険度レベルが「大」の場合には(ステップS505)、スリップ箇所の表示、警報吹鳴にさらに、運転者の座席シートを振動させる(ステップS506)。
なお、スリップ箇所の報知と合わせて、危険度レベルに応じた危険回避操作を運転者に促すこともできる。
【0077】
また、車両制御装置21では、図8に示すように、危険度レベルに応じた運転支援情報を報知することができる。
すなわち、報知制御部250は、危険度レベルが「小」の場合には(ステップS601)、運転者に対し、進行方向にスリップ箇所が存在することを報知する(ステップS602)。つまり、報知制御部250は、表示部441にスリップ箇所を表示させたり、リスクマップ上のスリップ箇所を強調表示させたりするように制御する。
【0078】
危険度レベルが「中」の場合には(ステップS603)、危険回避操作として減速を促し、併せて、スリップ箇所までの距離等を運転者に報知するよう制御する(ステップS604)。
【0079】
危険度レベルが「大」の場合には(ステップS605)、危険回避操作として進路変更を促し、併せて、スリップ箇所までの距離、到達時間、範囲等を報知するように報知部44を制御する。(ステップS606)。
【0080】
以上述べたように、本実施形態に係る路面情報提供装置よれば、走行中の車両において空転を検出した際に当該車両から車両情報を取得することで路面の滑りやすい箇所に関する情報を把握することができる。複数の車両からの車両情報を取得することで滑りやすい箇所に関する情報を集約し、かつ、周辺の気象情報を取得することで、路面の状態を正確に予測することができる。
【0081】
また、路面の状態を予測した路面情報を地図情報に対応付けたリスクマップを生成することで、滑りやすい箇所を直感的に把握可能な地図を提供することができ、運転者に対して路面の状態に応じた制御支援の一助となる。
【0082】
リスクマップを受信した車両では、車両に備えられたディスプレイ上にリスクマップを表示させることで、走行中又は近隣の路面に滑りやすい領域がある場合には、地図上に滑りやすい領域を表示させ、運転者等に報知することができる。
【0083】
リスクマップから車両毎に危険度レベルを判定することで、車両に応じた危険回避操作を提供することができ、路面の状態に応じた適切な運転制御を支援することができる。
【0084】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0085】
1:車両制御支援システム、2,2A,2B,2C:車両、3:路面情報提供装置、21:車両制御装置、31:通信部、32:情報取得部、33:路面状態予測部、34:リスクマップ生成部、35:危険度レベル判定部、41:通信部、42:ワイパー作動部、43:車両駆動部、44:報知部、45:記憶部、51:外気温センサ、52:車速センサ、53:車輪速センサ、54:舵角センサ、55:加速度センサ、56:ジャイロセンサ、57:GPSセンサ、210:車両情報収集部、220:空転検知部、230:リスクマップ取得部、240:危険度レベル取得部、250:報知制御部、260:駆動制御部、431:パワートレインシステム、432:ブレーキステム、433:ステアリングシステム、441:表示部、442:警報吹鳴部、443:バイブレータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8