(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190751
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電動車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/06 20060101AFI20221220BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20221220BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20221220BHJP
B60W 10/30 20060101ALI20221220BHJP
B60K 6/24 20071001ALI20221220BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/442
B60W10/30 900
B60K6/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099155
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】宮里 佳明
(72)【発明者】
【氏名】太田 篤治
(72)【発明者】
【氏名】大橋 繁
(72)【発明者】
【氏名】伏木 俊介
【テーマコード(参考)】
3D202
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA08
3D202AA10
3D202BB05
3D202BB43
3D202CC00
3D202CC01
3D202CC24
3D202CC42
3D202CC43
3D202DD00
3D202EE01
(57)【要約】
【課題】運転者や搭乗者に違和感を与えることなく、適切に、燃料(液体燃料)の劣化や変質を防止することが可能な電動車両の制御装置を提供する。
【解決手段】モータを駆動力源とし、前記モータに電力を供給するとともに、外部の電源から充電することが可能なバッテリと、少なくとも走行または発電のための動力を発生する内燃機関と、前記内燃機関用の燃料を燃焼させて燃焼熱を発生する燃焼式ヒータと、前記モータの動作、前記内燃機関の動作、および、前記燃焼式ヒータの動作をそれぞれ制御する電動車両の制御装置において、前記内燃機関および前記燃焼式ヒータのそれぞれの使用履歴に基づいて、前記燃焼式ヒータを使用した後に所定期間が経過した場合は、前記電動車両の走行中に、前記燃焼式ヒータを稼働させる(ステップS3)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動力源とし、前記モータに電力を供給するとともに、外部の電源から充電することが可能なバッテリと、少なくとも走行または発電のための動力を発生する内燃機関と、前記内燃機関用の燃料を燃焼させて燃焼熱を発生する燃焼式ヒータと、前記モータの動作、前記内燃機関の動作、および、前記燃焼式ヒータの動作をそれぞれ制御するコントローラと、を備えた電動車両の制御装置において、
前記コントローラは、
前記内燃機関および前記燃焼式ヒータのそれぞれの使用履歴に基づいて、前記燃焼式ヒータを使用した後に所定期間が経過した場合は、前記電動車両の走行中に、前記燃焼式ヒータを稼働させる
ことを特徴とする電動車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータを駆動力源とする電動車両に関し、特に、例えばプラグインハイブリッド車両やレンジエクステンダーEV(あるいは、シリーズ方式のハイブリッド車両)など、外部の電源からの充電(外部充電)が可能であるとともに、少なくとも走行または発電のための動力を発生するエンジン(内燃機関)を搭載した電動車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃焼式ヒータを有する内燃機関に関する発明が記載されている。燃焼式ヒータは、寒冷時に、内燃機関の暖機を促進して始動性を向上させる。また、燃焼式ヒータは、車室内用のヒータの暖房性能を向上させる。この特許文献1に記載された燃焼式ヒータは、例えば、気化式の燃焼ヒータであり、気化させた液体燃料に着火して燃焼熱を発生する。そして、この特許文献1に記載された発明では、燃焼式ヒータを長期間使用していない場合であっても、次回の作動時に失火を招いてしまったり、燃焼が不十分になってしまったりするなどの不具合を防止することを目的として、燃焼式ヒータに供給される燃料(液体燃料)の流動を制御する弁機構が設けられている。弁機構は、内燃機関と共通の燃料タンクから燃料が供給される燃料配管と、燃焼式ヒータに燃料を供給する燃料導入管との間に配置され、燃料配管内を流動する燃料の圧力に応じて、燃料配管と燃料導入管との間の燃料供給経路を開閉するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された燃焼式ヒータでは、上記のような弁機構を設けることにより、燃料配管内と大気との接触を遮断し、燃料配管内に長期間残留する燃料の劣化や変質、あるいは、蒸発を抑制している。ところで、モータと共に、エンジン(内燃機関)を搭載するハイブリッド車両においても、配管内や機関内に長期間残留してしまう燃料の劣化や変質を防止する必要性がある。特に、プラグインハイブリッド車両や、(外部充電が可能な)レンジエクステンダーEV(電動車両)は、外部の電源からバッテリを充電することにより、エンジンを稼働させずに、モータだけで長距離および長時間の走行が可能である。そのようなプラグインハイブリッド車両やレンジエクステンダーEVでは、長期間(例えば、数ヶ月以上)にわたってエンジンを使用しない状況が想定される。そのため、燃料が配管内や機関内に長期間残留してしまい、その残留した燃料が劣化や変質してしまう可能性がある。そこで、従来、エンジンが稼働されない状態で一定期間以上経過した場合に、自動的にエンジンを始動させるシステムも構築されている。しかしながら、そのようなシステムを備えたプラグインハイブリッド車両やレンジエクステンダーEVでは、上記のように一定期間が経過した後に、運転者や搭乗者が意図しないうちにエンジンの始動が行われることになり、それに起因して、運転者や搭乗者に違和感を与えてしまうおそれがある。
【0005】
この発明は上記の技術的課題に着目して考え出されたものであり、運転者や搭乗者に違和感を与えることなく、適切に、燃料(液体燃料)の劣化や変質を防止することが可能な電動車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、モータを駆動力源とし、前記モータに電力を供給するとともに、外部の電源から充電することが可能なバッテリと、少なくとも走行または発電のための動力を発生する内燃機関と、前記内燃機関用の燃料を燃焼させて燃焼熱を発生する燃焼式ヒータと、前記モータの動作、前記内燃機関の動作、および、前記燃焼式ヒータの動作をそれぞれ制御するコントローラと、を備えた電動車両の制御装置において、前記コントローラは、前記内燃機関および前記燃焼式ヒータのそれぞれの使用履歴に基づいて、前記燃焼式ヒータを最後に使用した後に所定期間が経過した場合は、前記電動車両の走行中に、前記燃焼式ヒータを稼働させて所定量の前記燃料を消費させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明で制御対象にする電動車両は、例えば、プラグインハイブリッド車両やレンジエクステンダーEVなど、走行のための駆動力源または発電のための動力源となる内燃機関を搭載している。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、液体燃料を用いるエンジンである。また、この発明で制御対象にする電動車両は、外部充電が可能なバッテリを備えている。そのため、この発明で制御対象にする電動車両は、外部充電したバッテリからモータに電力を供給することにより、エンジンを稼働させずに、モータの出力だけで長距離および長時間の走行が可能である。更に、この発明で制御対象にする電動車両は、上記の内燃機関と燃料を共用し、その燃料を燃焼させて熱を発生する燃焼式ヒータを備えている。燃焼式ヒータは、例えば、寒冷時に稼働させて、内燃機関の暖機を促進するともに、内燃機関の始動性を向上させる。また、燃焼熱で暖めた空気を車室内に供給し、車両の暖房性能を向上させる。
【0008】
そして、この発明の電動車両の制御装置は、エンジンおよび燃焼式ヒータの使用履歴あるいは運転履歴に基づいて、燃焼式ヒータを稼働させる。具体的には、燃焼式ヒータを最後に使用した後に所定期間が経過した場合は、電動車両の走行中に、燃焼式ヒータを稼働させて、所定量の燃料を消費させる。所定期間は、燃料の劣化や変質が進行する時間を考慮して適宜設定される。例えば、所定期間は、長期間経過した後に燃焼式ヒータおよびエンジンを稼働させる際に支障を来すことのない適当な期間に設定される。そのため、燃料が劣化または変質してしまう前に、燃焼式ヒータが、自動的に、ほぼ定期的に運転され、燃料が消費される。そして、上記のように燃焼式ヒータが自動的に運転される際には、燃焼式ヒータは、車両の走行中に始動される。そのため、運転者の意図に反して、あるいは、運転者や搭乗者が想定していない状態で、エンジンが始動されることはない。したがって、この発明の電動車両の制御装置によれば、内燃機関用の燃料を長期間使用しなかった場合であっても、運転者や搭乗者に違和感を与えることなく、適切に、燃料の劣化や変質を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】この発明の電動車両の制御装置で制御の対象とする電動車両のギヤトレーンおよび制御系統の一例を示す図である。
【
図2】この発明の電動車両の制御装置によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図3】この発明の電動車両の制御装置によって実行される制御の他の例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0011】
この発明の実施形態で制御の対象にする車両は、少なくとも一基のモータを駆動力源として備える電動車両である。また、この発明の実施形態で制御の対象にする車両は、駆動力源のモータに電力を供給するとともに、外部の電源から充電すること(外部充電)が可能なバッテリ、および、少なくとも走行または発電のための動力を発生する内燃機関を備えている。例えば、モータと共に、内燃機関(エンジン)を駆動力源とするプラグインハイブリッド車両、あるいは、外部充電が可能なレンジエクステンダーEV(電動車両)などを、この発明の実施形態における制御対象の車両とすることができる。更に、この発明の実施形態で制御の対象にする車両は、内燃機関用の燃料を燃焼させて燃焼熱を発生する燃焼式ヒータを備えている。
図1に、この発明の実施形態で制御の対象にする電動車両の構成(駆動系統および制御系統)の一例を示してある。
【0012】
図1に示す電動車両(以下、車両)Veは、いわゆるプラグインハイブリッド車両であり、駆動力源として、モータ(MG)1、および、エンジン(ENG)2を備えている。また、車両Veは、その他の主要な構成要素として、駆動輪3、バッテリ(BAT)4、燃焼式ヒータ5、検出部6、および、コントローラ(ECU)7を備えている。なお、この発明の実施形態における車両Veは、駆動力源として、上記のモータ1の他に、一基または複数のモータを備えていてもよい。また、モータ1およびエンジン2と共に動力分割機構や変速機構など(図示せず)を備えたいわゆるハイブリッド駆動ユニットであってもよい。更に、この発明の実施形態における車両Veは、上記のモータ1とは別に、発電機(図示せず)を搭載するとともに、その発電機を駆動する専用のエンジン(図示せず)を備えた、いわゆるレンジエクステンダーEV(または、シリーズ方式のハイブリッド車両)であってもよい。
【0013】
モータ1は、例えば、永久磁石式の同期モータ、あるいは、誘導モータなどによって構成されている。モータ1は、少なくとも、電力が供給されることにより駆動されてトルクを出力する原動機としての機能を有している。また、モータ1は、外部からトルクを受けて駆動されることによって電力を発生する発電機として機能させてもよい。すなわち、モータ1は、原動機としての機能と発電機としての機能とを兼ね備えた、いわゆるモータ・ジェネレータであってもよい。モータ1には、インバータ(図示せず)を介して、後述するバッテリ4が接続されている。したがって、バッテリ4に蓄えられている電力をモータ1に供給し、モータ1を原動機として機能させて、駆動トルクを出力することができる。また、駆動輪3から伝達されるトルクによってモータ1を発電機として機能させて、その際に発生する回生電力をバッテリ4に蓄えることもできる。モータ1は、後述するコントローラ7によって出力回転数や出力トルクが電気的に制御される。また、モータ・ジェネレータであれば、上記のような原動機としての機能と発電機としての機能との切り替えなどが電気的に制御される。
【0014】
エンジン2は、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなど、液体燃料を用いる内燃機関である。エンジン2は、出力の調整、ならびに、始動および停止などの作動状態が電気的に制御されるように構成されている。ガソリンエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料の供給量または噴射量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。ディーゼルエンジンであれば、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、あるいは、EGRシステムにおけるスロットルバルブの開度などが電気的に制御される。
図1に示す実施形態では、エンジン2は、車両Ve、すなわち、プラグインハイブリッド車両の駆動力源として、モータ1と共に、車両Veの走行のための動力を発生する。
【0015】
駆動輪3は、駆動力源が出力する駆動トルクが伝達されることにより、車両Veの駆動力を発生する。
図1に示す実施形態では、駆動輪3は、減速ギヤ8、デファレンシャルギヤ9、および、ドライブシャフト10を介して、駆動力源、すなわち、モータ1およびエンジン2に連結されている。なお、この発明の実施形態における車両Veは、
図1に示す実施形態のように、駆動トルクを前輪に伝達し、前輪で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪に伝達し、後輪で駆動力を発生させる後輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪および後輪の両方に伝達し、前輪および後輪の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車であってもよい。
【0016】
バッテリ4は、モータ1に電力を供給すると共に、モータ1で発電した電力を蓄える二次電池であり、インバータ(図示せず)を介し、モータ1に対して電力の授受が可能なように、電気的に接続されている。したがって、モータ1の発電電力でバッテリ4を充電することができる。更に、この発明の実施形態におけるバッテリ4は、充電器(図示せず)および充電回路(図示せず)等を介して、外部電源によって充電することが可能なように構成されている。
【0017】
燃焼式ヒータ5は、エンジン2と燃料を共用し、その燃料を燃焼させて燃焼熱を発生する。燃焼式ヒータ5は、具体的には、前述の特許文献1に記載された燃焼式ヒータと同様の構成であり、例えば、寒冷時に稼働させて、発生した燃焼熱でエンジン2の暖機を促進する。また、エンジン2の始動性を向上させる。また、燃焼式ヒータ5は、発生した燃焼熱で暖めた空気を車室内に供給し、車両Veの暖房性能を向上させる。
【0018】
検出部6は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含む。特に、この発明の実施形態における検出部6は、主に、モータ1(およびバッテリ4)、エンジン2、ならびに、燃焼式ヒータ5をそれぞれ制御するためのデータを検出する。具体的には、検出部6は、車速を検出する車速センサ(または、車輪速センサ)6a、モータ1の回転数を検出するモータ回転数センサ(または、レゾルバ)6b、エンジン2の回転数を検出するエンジン回転数センサ6c、燃焼式ヒータ5の作動状態(ヒータのON・OFF、および、温度等)を検出するヒータセンサ6d、エンジン2および燃焼式ヒータ5の使用後の経過時間をそれぞれ検出するタイマー6e、車両Veの位置情報を取得するGPS[Global Positioning System]受信器6f、ならびに、車両Veの外部状況に関する撮像情報を取得する車載カメラ6gなどの各種センサ・機器を有している。そして、検出部6は、後述するコントローラ7と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてコントローラ7に出力する。
【0019】
コントローラ7は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、特に、この発明の実施形態におけるコントローラ7は、主に、モータ1(およびバッテリ4)、エンジン2、ならびに、燃焼式ヒータ5の動作をそれぞれ制御する。コントローラ7には、上記の検出部6で検出または算出された各種データが入力される。コントローラ7は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ7は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のような、モータ1、エンジン2、および、燃焼式ヒータ5の動作等をそれぞれ制御するように構成されている。なお、
図1では一つのコントローラ7が設けられた例を示しているが、コントローラ7は、制御する装置や機器毎に、あるいは制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0020】
前述したように、この発明の実施形態における車両Veは、運転者や搭乗者に違和感を与えることなく、燃料の劣化や変質を防止することを目的として、エンジン2および燃焼式ヒータ5の使用履歴あるいは運転履歴に基づいて、燃焼式ヒータ5を自動的に稼働させるように構成されている。そのためにコントローラ7で実行される制御の一例を、
図2のフローチャートに示してある。
【0021】
図2のフローチャートにおいて、先ず、ステップS1では、前回のエンジン2の使用後に、すなわち、最後にエンジン2を使用した後に、一定の期間(所定期間T1)が経過したか否かが判断される。所定期間T1は、エンジン2および燃焼式ヒータ5に用いる燃料の劣化や変質が進行する時間を考慮して適宜設定される。例えば、所定期間T1は、長期間経過した後に、エンジン2および燃焼式ヒータ5を稼働させる際に支障を来すことのない適当な期間に設定される。すなわち、エンジン2および燃焼式ヒータ5の運転に支障を来すような燃料の劣化や変質が進行しない範囲の適当な期間に設定される。
【0022】
最後にエンジン2を使用した後に、未だ、一定の期間(所定期間T1)が経過していないことにより、このステップS1で否定的に判断された場合は、ステップS2へ進む。
【0023】
ステップS2では、前回の燃焼式ヒータ5の使用後に、すなわち、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T2)が経過したか否かが判断される。所定期間T2は、上記の所定期間T1と同様に、エンジン2および燃焼式ヒータ5に用いる燃料の劣化や変質が進行する時間を考慮して適宜設定される。例えば、所定期間T2は、長期間経過した後に、エンジン2および燃焼式ヒータ5を稼働させる際に支障を来すことのない適当な期間に設定される。すなわち、エンジン2および燃焼式ヒータ5の運転に支障を来すような燃料の劣化や変質が進行しない範囲の適当な期間に設定される。上記の所定期間T1と所定期間T2とは、互いに同一の期間でもよい。あるいは、エンジン2に供給される燃料の状態、および、燃焼式ヒータ5に供給される燃料の状態をそれぞれ考慮して、所定期間T1と所定期間T2とを、それぞれ、個別に設定してもよい。
【0024】
最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、未だ、一定の期間(所定期間T2)が経過していないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0025】
それに対して、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T2)が経過したことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進む。
【0026】
ステップS3では、車両Veの走行中に、燃焼式ヒータ5を作動させる。現時点で車両Veが走行中であれば、引き続いて、燃焼式ヒータ5が稼働させられる。現時点で車両Veが停止している状態であれば、次回の車両Veの走行時に、燃焼式ヒータ5が稼働させられる。すなわち、車両Veの走行中に、燃焼式ヒータ5を稼働させて、所定量の燃料を消費させる。燃焼式ヒータ5を稼働することにより、例えば、燃料タンク(図示せず)内の所定量の燃料が消費される。あるいは、燃料配管や弁体等の途中に滞留している燃料など、劣化しやすい状態にある所定量の燃料が消費される。そして、その後、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0027】
一方、最後にエンジン2を使用した後に、一定の期間(所定期間T1)が経過したことにより、上記のステップS1で肯定的に判断された場合には、ステップS4へ進む。
【0028】
ステップS4では、前回の燃焼式ヒータ5の使用後に、すなわち、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T3)が経過したか否かが判断される。所定期間T3は、上記の所定期間T1,T2と同様に、エンジン2および燃焼式ヒータ5に用いる燃料の劣化や変質が進行する時間を考慮して適宜設定される。例えば、所定期間T3は、長期間経過した後に、エンジン2および燃焼式ヒータ5を稼働させる際に支障を来すことのない適当な期間に設定される。すなわち、エンジン2および燃焼式ヒータ5の運転に支障を来すような燃料の劣化や変質が進行しない範囲の適当な期間に設定される。上記の所定期間T1,T2と所定期間T3とは、互いに同一の期間でもよい。あるいは、エンジン2に供給される燃料の状態、および、燃焼式ヒータ5に供給される燃料の状態をそれぞれ考慮して、所定期間T1と所定期間T2と所定期間T3を、それぞれ、個別に設定してもよい。
【0029】
最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、未だ、一定の期間(所定期間T3)が経過していないことにより、このステップS4で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0030】
それに対して、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T3)が経過したことにより、ステップS4で肯定的に判断された場合には、上述のステップS3へ進み、従前と同様の制御が実行される。すなわち、車両Veの走行中に、燃焼式ヒータ5が自動的に稼働させられ、所定量の燃料が消費される。そして、その後、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0031】
このように、この発明の実施形態における電動車両の制御装置では、エンジン2および燃焼式ヒータ5の使用履歴あるいは運転履歴に基づいて、燃焼式ヒータ5を稼働させる。具体的には、燃焼式ヒータ5を最後に使用した後に所定期間(所定期間T2、または、所定期間T3)が経過した場合は、車両Veの走行中に、燃焼式ヒータ5を稼働させて、所定量の燃料を消費させる。そのため、燃料が劣化または変質してしまう前に、燃焼式ヒータ5が、自動的に、ほぼ定期的に運転され、燃料が消費される。そして、燃焼式ヒータ5が自動的に(あるいは、強制的に)運転される際には、燃焼式ヒータ5は、車両Veの走行中に始動される。すなわち、燃料の劣化や変質を防止するために、運転者の意図に反して、あるいは、運転者や搭乗者が想定していない状態で、エンジン2が始動されることはない。したがって、この発明の実施形態における電動車両の制御装置によれば、エンジン2の燃料を長期間使用しなかった場合であっても、運転者や搭乗者に違和感を与えることなく、適切に、燃料の劣化や変質を防止することができる。
【0032】
なお、この発明の実施形態における電動車両の制御装置では、上記のように燃焼式ヒータ5を自動的に(強制的に)稼働させる場合、車両Veの室内温度を考慮して、燃焼式ヒータ5による暖房効率を変更してもよい。例えば、車室内の暖房(エアコンディショナ)の設定温度と実際の室内温度との差が所定値未満の場合、あるいは、実際の室内温度が、既に設定温度よりも高い場合、あるいは、夏期に車室内の暖房が不要な場合などでは、燃焼式ヒータ5による暖房効率を低下させる。具体的には、例えば、暖房用の送風ファンの回転速度を低下させる。あるいは、燃焼式ヒータ5に供給する混合気の空燃比を増大させる。すなわち、混合気における燃料の割合を低下させる。あるいは、水冷式の冷却器等で燃焼式ヒータ5の燃焼熱を吸収させる。それにより、車室内の暖房が必要でない状態で、燃焼式ヒータ5を自動的に稼働させる場合に、車室内の温度が必要以上に上昇してしまうことを抑制できる。
【0033】
また、この発明の実施形態における電動車両の制御装置では、例えば、屋外などの密閉空間ではない場所で車両Veが駐車されている場合、すなわち、車両Veの排ガスを換気する必要がない場所で車両Veが駐車されている場合に、燃料の劣化や変質を防止するために、燃焼式ヒータ5を稼働させてもよい。そのような場合にコントローラ7で実行される制御の具体例を、
図3のフローチャートに示してある。この
図3のフローチャートに示す制御は、車両Veが駐車されている状態、すなわち、車両Veが停止して、READY-OFF(パワースイッチがOFF)の状態で実行される。なお、
図3のフローチャートにおけるステップS11、ステップS12、ステップS15、および、ステップS14の制御内容は、それぞれ、上記の
図2のフローチャートにおけるステップS1、ステップS2、ステップS3、および、ステップS4の制御内容と同一である。
【0034】
図3のフローチャートにおいて、先ず、ステップS11では、前回のエンジン2の使用後に、すなわち、最後にエンジン2を使用した後に、一定の期間(所定期間T1)が経過したか否かが判断される。
【0035】
最後にエンジン2を使用した後に、未だ、一定の期間(所定期間T1)が経過していないことにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、ステップS12へ進む。
【0036】
ステップS12では、前回の燃焼式ヒータ5の使用後に、すなわち、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T2)が経過したか否かが判断される。
【0037】
最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、未だ、一定の期間(所定期間T2)が経過していないことにより、このステップS12で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この
図3のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0038】
それに対して、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T2)が経過したことにより、ステップS12で肯定的に判断された場合には、ステップS13へ進む。
【0039】
また、最後にエンジン2を使用した後に、一定の期間(所定期間T1)が経過したことにより、上記のステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS14へ進む。
【0040】
ステップS14では、前回の燃焼式ヒータ5の使用後に、すなわち、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T3)が経過したか否かが判断される。
【0041】
最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、未だ、一定の期間(所定期間T3)が経過していないことにより、このステップS14で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この
図3のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0042】
それに対して、最後に燃焼式ヒータ5を使用した後に、一定の期間(所定期間T3)が経過したことにより、ステップS14で肯定的に判断された場合には、上述のステップS12で肯定的に判断された場合と同様に、ステップS13へ進む。
【0043】
ステップS13では、駐車場が密閉空間ではないか否かが判断される。すなわち、車両Veが駐車されている場所が、車両Veの排ガスを換気する必要がない場所あるか否かが判断される。例えば、GPS受信器6fによって取得した車両Veの位置情報に基づいて、現在の車両Veの駐車場所を判断する。あるいは、車載カメラ6gによって取得した車両Veの周囲の外部状況に関する情報に基づいて、現在の車両Veの駐車場所を判断する。
【0044】
車両Veが密閉空間に駐車されていることにより、このステップS13で否定的に判断された場合は、ステップS15へ進む。
【0045】
ステップS15では、車両Veの走行中に、燃焼式ヒータ5が自動的に稼働させられ、所定量の燃料が消費される。すなわち、今後、車両Veが走行を開始した後に、燃焼式ヒータ5が稼働させられる。そして、その後、この
図2のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0046】
それに対して、例えば、屋外など、車両Veが駐車されている場所が密閉空間ではないことにより、ステップS13で肯定的に判断された場合には、ステップS16へ進む。
【0047】
ステップS16では、READY-OFFの状態から自動的にREADY-ONの状態にされ、燃焼式ヒータ5が自動的に稼働させられて、所定量の燃料が消費される。そして、その後、この
図3のフローチャートで示すルーチンを一旦終了する。
【0048】
このように、この発明の実施形態における電動車両の制御装置では、上記の
図3のフローチャートで示すように、車両Veが、密閉空間でない場所で駐車されていることを確認できた場合に、自動的に(無人の状態であっても)、燃焼式ヒータ5が始動されて、所定量の燃料が消費される。そのため、車室内に運転者や搭乗者が居ない状態で、燃料の劣化や変質を防止するための燃料の消費を済ませておくことができる。例えば、夏期に車室内の暖房が不要な場合に、燃料の劣化や変質を防止するために燃焼式ヒータ5が稼働されることを抑制できる。したがって、この発明の実施形態における電動車両の制御装置によれば、エンジン2の燃料を長期間使用しなかった場合であっても、運転者や搭乗者に違和感を与えることなく、適切に、燃料の劣化や変質を防止することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ(MG;駆動力源)
2 エンジン(ENG;内燃機関)
3 駆動輪
4 バッテリ(BAT)
5 燃焼式ヒータ
6 検出部
6a(検出部の)車速センサ(または、車輪速センサ)
6b(検出部の)モータ回転数センサ(または、レゾルバ)
6c(検出部の)エンジン回転数センサ
6d(検出部の)ヒータセンサ
6e(検出部の)タイマー
6f(検出部の)GPS受信器
6g(検出部の)車載カメラ
7 コントローラ(ECU)
8 減速ギヤ
9 デファレンシャルギヤ
10 ドライブシャフト
Ve 車両(電動車両)