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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190760
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20221220BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221220BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20221220BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60L3/00 H
B60L50/60
B60L58/26
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099170
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 吉男
(72)【発明者】
【氏名】日吉 雅敏
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 遥香
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA09
5H125BC19
5H125EE70
5H125FF22
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】本明細書は、流路の接続関係を切り換える切換弁を備える熱管理システムにおいて温度差のある冷媒の混合を防ぐ技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する熱管理システムは、第1熱源を冷却する第1冷却器、第1冷却器と第1ポンプを接続している第1循環路、第2熱源を冷却する第2冷却器、第2冷却器と第2ポンプを接続している第2循環路、切換弁、制御器を備える。切換弁は、第1弁位置と第2弁位置の間で切り換えることができる。切換弁が第1弁位置のとき、第1循環路と第2循環路が分離される。切換弁が第2弁位置のとき、第1循環路と第2循環路は連通する。制御器は、切換弁が第1弁位置に設定されており、かつ、第1ポンプと第2ポンプの一方が動作し他方が停止しているとき、第1循環路内の冷媒と第2循環路内の冷媒との温度差が所定の温度差閾値を超えている場合、第1ポンプと第2ポンプの両方を動作させる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1熱源を冷却する第1冷却器と、
前記第1冷却器と第1ポンプを接続している第1循環路と、
第2熱源を冷却する第2冷却器と、
前記第2冷却器と第2ポンプを接続している第2循環路と、
前記第1循環路と前記第2循環路を分離する第1弁位置と、前記第1循環路と前記第2循環路を連通する第2弁位置を切り換える切換弁と、
前記切換弁が前記第1弁位置に設定されており、前記第1ポンプと前記第2ポンプの一方が動作し他方が停止しているときに、前記第1循環路内の冷媒と前記第2循環路内の冷媒との温度差が所定の温度差閾値を超えている場合、前記第1ポンプと前記第2ポンプの両方を動作させる制御器と、
を備えている熱管理システム。
【請求項2】
前記第1熱源は走行用のモータであり、前記第2熱源は前記モータに電力を供給する電源であり、
前記制御器は、前記第1循環路内の前記冷媒の温度が所定の上限温度を超えた場合に、前記温度差が前記温度差閾値を超えていると判断して前記第1ポンプと前記第2ポンプを動作させる、請求項1に記載の熱管理システム。
【請求項3】
前記第1熱源は走行用のモータであり、前記第2熱源は前記モータに電力を供給する電源であり、
前記制御器は、
前記切換弁が前記第1弁位置を選択している間、前記第2循環路内の前記冷媒の温度が所定の温度閾値を下回っている間は前記第2ポンプを停止し、
前記温度差が前記温度差閾値を超えている場合、前記第2循環路内の前記冷媒の温度に関わらずに前記第1ポンプと前記第2ポンプの両方を動作させる、請求項1に記載の熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、熱管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の熱源と夫々の熱源に対応した冷却器を備えている熱管理システムが知られている。特許文献1に、そのような熱管理システムの一例が開示されている。特許文献1の熱管理システムは、複数の冷却器と複数のポンプを接続する複数の流路を備えているとともに、冷媒の温度に応じて流路の接続関係を切り換える切換弁を備えている。例えば特許文献2、3に、切換弁の構造の例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-30289号公報
【特許文献2】特開2021-42809号公報
【特許文献3】特開2020-200943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の流路の接続関係を切り換える切換弁(例えば特許文献2、3の切換弁)では、冷媒漏れが発生するおそれがある。例えば、第1流路を第3流路に接続するとともに第2流路を第4流路に接続する第1弁位置と、第1流路を第4流路に接続するとともに第2流路を第3流路に接続する第2弁位置を切り換える切換弁が知られている。第1弁位置が選択されている状況において、第1流路と第3流路に冷媒が流れ、第2流路と第4流路の中の冷媒が止まっている場合、切換弁内の圧力差によって弁位置が変化し、第1流路から第2流路または第4流路へ冷媒が漏れるおそれがある。あるいは、第2弁位置が選択されている状況において、第1流路と第4流路に冷媒が流れ、第2流路と第3流路の中の冷媒が止まっている場合、切換弁内の圧力差によって弁位置が動き、第1流路から第2流路または第3流路へ冷媒が漏れるおそれがある。第1流路内の冷媒と第2流路内の冷媒の温度差が大きい場合に流路間の冷媒の移動は冷却効率を下げることにつながる。本明細書は、流路の接続関係を切り換える切換弁を備える熱管理システムにおいて温度差のある冷媒の混合を防ぐ技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する熱管理システムは、第1熱源を冷却する第1冷却器、第1冷却器と第1ポンプを接続している第1循環路、第2熱源を冷却する第2冷却器、第2冷却器と第2ポンプを接続している第2循環路、切換弁、制御器を備える。切換弁は、第1弁位置と第2弁位置の間で切り換えることができる。切換弁が第1弁位置を選択しているとき、第1循環路と第2循環路が分離される。切換弁が第2弁位置を選択しているとき、第1循環路と第2循環路は連通する。制御器は、切換弁が第1弁位置に設定されており、かつ、第1ポンプと第2ポンプの一方が動作し他方が停止しているとき、第1循環路内の冷媒と第2循環路内の冷媒との温度差が所定の温度差閾値を超えている場合、第1ポンプと第2ポンプの両方を動作させる。
【0006】
制御器は、通常は切換弁を第1弁位置に設定し、第1循環路内の冷媒温度が高ければ第1ポンプを駆動し、第1循環路内の冷媒温度が低ければ第1ポンプを停止する。制御器は、第2循環路内の冷媒温度が高ければ第2ポンプを駆動し、第2循環路内の冷媒の温度が低ければ第2ポンプを停止する。一方のポンプが動作し他方のポンプが停止している場合、切換弁の中において圧力差が生じ、圧力の高い流路の冷媒が、圧力の低い流路へ漏れるおそれがある。
【0007】
2本の循環路内の冷媒の温度差が小さければ、一方の循環路から他方の循環路へ冷媒が漏れても問題はない。しかし、2本の循環路内の冷媒の温度差が大きい場合、一方の循環路から他方の循環路へ冷媒が漏れると冷却効率が下がるおそれがある。そこで、制御器は、2本の循環路の中の冷媒の温度差が所定の温度差閾値を超えている場合、第1ポンプと第2ポンプの両方を動作させる。両方のポンプを動作させることで、切換弁の中における圧力差が小さくなり、冷媒漏れが防止される。
【0008】
第1熱源の一例は走行用のモータであり、第2熱源の一例はモータに電力を供給する電源である。この場合、制御器は、第1循環路内の冷媒の温度が所定の上限温度を超えた場合に、温度差が温度差閾値を超えていると判断して第1ポンプと第2ポンプを動作させるようにしてもよい。モータの許容温度範囲の上限は電源の許容温度範囲の上限よりも顕著に高い場合がある。そのような場合には、モータを冷却する第1循環路内の冷媒の温度が上限温度を超えている場合、第1循環路と第2循環路の冷媒の温度差が温度差閾値を超えていると判断することができる。
【0009】
また、制御器は、切換弁が第1弁位置に設定されている間、第2循環路内の冷媒の温度が所定の温度閾値を下回っている間は第2ポンプを停止する。しかし、制御器は、第1循環路内の冷媒と第2循環路内の冷媒との温度差が温度差閾値を超えている場合、第2循環路内の冷媒の温度に関わらずに第1ポンプと第2ポンプの両方を動作させるようにしてもよい。
【0010】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施例の熱管理システムの熱回路図である(第1弁位置)。
図2】第1実施例の熱管理システムの熱回路図である(第2弁位置)。
図3】切換弁の構造の一例を示す断面図である(第1弁位置)。
図4】切換弁の構造の一例を示す断面図である(第2弁位置)。
図5】切換弁の構造の一例を示す断面図である(中途半端な弁位置のケース)。
図6】冷却制御のフローチャートである。
図7】第1実施例における制御器の処理のフローチャートである。
図8】第2実施例における制御器の処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の熱管理システム2を説明する。図1に、熱管理システム2の熱回路図を示す。本明細書における「熱回路」とは、冷媒体が流れる流路の回路を意味する。
【0013】
熱管理システム2は、電気自動車に搭載されており、電源21と走行用のモータ11を冷却する。電源21の電力は、不図示の電力変換器によってモータ11の駆動に適した交流電力に変換され、モータ11に供給される。電源21は、典型的には、リチウムイオンなどのバッテリ、あるいは燃料電池であるが、他のタイプの電源であってもよい。図1では、電力線の図示は省略してある。
【0014】
熱管理システム2は、冷媒が流れる第1循環路10と第2循環路20、モータ11を冷却する第1冷却器12、電源21を冷却する第2冷却器22、第1循環路10を通る冷媒を冷却する第1熱交換器14、第2循環路20を通る冷媒を冷却する第2熱交換器24、冷媒の流路を切り換える切換弁30、制御器40を備える。
【0015】
第1循環路10は、第1冷却器12と第1熱交換器14を接続する管であり、第1冷却器12と第1熱交換器14の間で冷媒を循環させる。第1循環路10には、第1ポンプ13が備えられている。第1ポンプ13は、第1循環路10の中の冷媒を圧送する。
【0016】
第1冷却器12は、オイルクーラ91、オイルポンプ92、オイル流路93を含む。第1循環路10はオイルクーラ91を通過している。オイル流路93は、オイルクーラ91とモータ11を通過している。オイル流路93をオイルが流れる。オイルポンプ92はオイル流路93に配置されており、オイルクーラ91とモータ11の間でオイルを循環させる。モータ11は第1循環路10を流れる冷媒で冷却される。より詳しくは、オイルクーラ91にて冷媒がオイルを冷却し、冷却されたオイルがモータ11を冷却する。モータ11の熱は、オイルを介して冷媒に吸収される。
【0017】
第2循環路20は、第2冷却器22と第2熱交換器24を接続する管であり、第2冷却器22と第2熱交換器24の間で冷媒を循環させる。第2循環路20には、第2ポンプ23が備えられている。第2ポンプ23は、第2循環路20の中の冷媒を圧送する。第2冷却器22を通過する冷媒が電源21を冷却する。電源21の熱によって高温となった冷媒は、第2熱交換器24で冷却される。
【0018】
熱管理システム2は、温度センサ15、25を備える。温度センサ15は、第1循環路10の中の冷媒の温度を計測する。温度センサ25は、第2循環路20の中の冷媒の温度を計測する。熱管理システム2は、さらに多くの温度センサを備えているが、それらの説明は割愛する。
【0019】
温度センサ15、25の計測値は制御器40へ送られる。制御器40は、温度センサ15の計測値に基づいて、第1ポンプ13を制御し、温度センサ25の計測値に基づいて第2ポンプ23を制御する。
【0020】
第1循環路10と第2循環路20は、共に切換弁30を通過している。説明の都合上、第1循環路10を流路10aと流路10bに分け、第2循環路20を流路20aと流路20bに分ける。また、第1循環路10にはバイパス流路19が付随する。流路10a、10b、20a、20b、バイパス流路19のそれぞれの一端が切換弁30に接続されている。切換弁30は、それら流路の接続関係を切り換える。
【0021】
流路10a、10b、20a、20b、バイパス流路19のそれぞれの他端は、幾つかの三方弁95で連結されている。第1循環路10に配置されている第1ポンプ13、第2循環路20に配置されている第2ポンプ23は、切換弁30に向けて冷媒を圧送する。切換弁30の状態に応じて、冷媒の経路が決まる。冷媒の経路に応じて、複数の三方弁95のそれぞれにおける冷媒の流れる方向が従属的に決まる。
【0022】
切換弁30は、第1弁位置と第2弁位置を選択可能である。図1の矢印線は、切換弁30が第1弁位置を選択しているときの冷媒の流れを示している。切換弁30は、第1弁位置を選択しているとき、流路10aと流路10bを接続し、流路20aと流路20bを接続する。先に述べたように、流路10a、10bが第1循環路10を構成し、流路20a、20bが第2循環路20を構成する。第1弁位置を選択している切換弁30は、第1循環路10と第2循環路20を分離する。先に述べたように、流路10a、10b、20a、20b、バイパス流路19のそれぞれの他端は、幾つかの三方弁95で連結されているが、切換弁30が第1弁位置を選択しているとき、第1循環路10を流れる冷媒と第2循環路20を流れる冷媒は混合することはない。
【0023】
切換弁30が第1弁位置を選択しているとき、第1循環路10と第2循環路は分離される。このとき、制御器40は、第1ポンプ13を制御して第1循環路10の冷媒の温度(すなわち、モータ11の温度)を所定の第1温度閾値以下に保持する。制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度が第1温度閾値を上回ったら第1ポンプ13を駆動し、第1冷却器12と第1熱交換器14の間で冷媒を循環させる。第1循環路10の中の冷媒の温度は温度センサ15により計測される。第1熱交換器14はラジエータであり、第1循環路10の中の冷媒の熱を外気へ放出する。制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度が第1温度閾値を下回ったら第1ポンプ13を停止する。なお、詳しくは、第1ポンプ13のハンチングを防ぐため、制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度が、第1温度閾値からマージン温度を減じた温度を下回ったら第1ポンプ13を停止する。
【0024】
また、制御器40は、第2ポンプ23を制御して第2循環路20の冷媒の温度(すなわち、電源21の温度)を所定の第2温度閾値以下に保持する。制御器40は、第2循環路20の中の冷媒の温度が第2温度閾値を上回ったら第2ポンプ23を駆動し、第2冷却器22と第2熱交換器24の間で冷媒を循環させる。第2循環路20の中の冷媒の温度は温度センサ25により計測される。第2熱交換器24はラジエータを含む車室空調機であり、第2循環路20の中の冷媒の熱を外気へ放出する。制御器40は、第2循環路20の中の冷媒の温度が第2温度閾値を下回ったら第2ポンプ23を停止する。より詳しくは、第2ポンプ23のハンチングを防ぐため、制御器40は、第2循環路20の中の冷媒の温度が、第2温度閾値からマージン温度を減じた温度を下回ったら第2ポンプ23を停止する。
【0025】
先に述べたように、第2熱交換器24は車室空調機であり、電源21の熱を用いて車室を温める場合がある。また、電源21の温度が外気の温度よりも低い場合には、外気の熱が車室暖房に用いられる場合がある。外気の熱を車室暖房に用いる場合、制御器40は、切換弁30を第2弁位置に設定する。
【0026】
図2は、切換弁30が第2弁位置を選択しているときの熱回路を表している。図2の矢印線は、切換弁30が第2弁位置を選択しているときの冷媒の流れを表している。第2弁位置を選択しているときの切換弁30は、流路10bと流路20aを接続し、流路10aとバイパス流路19を接続する。切換弁30が第2弁位置を選択しているとき、第1循環路10の一部(流路10b)と第2循環路20の一部(流路20a)が接続される。別言すれば、第2弁位置を選択しているときの切換弁30は、第1循環路10と第2循環路20を連通する。
【0027】
切換弁30の構造を説明する。図3図4は、切換弁30の断面図である。切換弁30は、ケース31、ピストン弁32、バネ33、ストッパ34、および、不図示のソレノイドアクチュエータを備える。図3は、ピストン弁32が第1弁位置に位置するときの断面を表しており、図4は、ピストン弁32が第2弁位置に位置するときの断面を表している。ピストン弁32の中には幾つかの経路が設けられている。図3図4における矢印線は冷媒の流れを表している。
【0028】
バネ33は引っ張りバネであり、ピストン弁32を上方に付勢する。制御器40は、切換弁30を第1弁位置に保持するとき、不図示のソレノイドへの通電を止める。このとき、図3に示すように、バネ33の引っ張り力によりピストン弁32は最上端に保持される。切換弁30の内部では、流路10aと流路10bが接続されて第1循環路10が形成され、流路20aと流路20bが接続されて第2循環路20が形成される。バイパス流路19は他の流路から遮断される。
【0029】
制御器40は、切換弁30を第2弁位置に保持するとき、不図示のソレノイドへ通電する。ソレノイドの力はバネ33の力に抗してピストン弁32を下げる。図4に示すように、ピストン弁32は最下端に保持される。切換弁30の内部では、流路10aとバイパス流路19が接続され、流路20aと流路10bが接続される。別言すれば、第1循環路10と第2循環路20が連通する。切換弁30が第1弁位置のときには第1循環路10の冷媒と第2循環路20の冷媒は混ざることはないが、切換弁30が第2弁位置のとき、第1循環路10の冷媒と第2循環路20の冷媒は混ざり合う。
【0030】
先に述べたように、第1弁位置を選択しているときの切換弁30は、第1循環路10と第2循環路20を分離する。このとき、制御器40は、第1循環路10の冷媒の温度に応じて第1ポンプ13を制御し、第1ポンプ13の制御とは独立に、第2循環路20の冷媒の温度に応じて第2ポンプ23を制御する。第1ポンプ13が動作し第2ポンプ23が停止しているとき、および、第1ポンプ13が停止し第2ポンプ23が動作しているとき、切換弁30の内部では、一方の経路で冷媒が流れ、他方の経路で冷媒が流れていない状態が生じる。切換弁30の内部で冷媒の圧力に差が生じる。冷媒の圧力差がバネ33の力に抗してピストン弁32を動かす場合がある。
【0031】
図5に、弁位置が中途半端なときの切換弁30の断面図を示す。図5の例は、第1循環路10の流路10aと流路10bをつなぐ経路P1では冷媒が流れており、第2循環路20の流路20aと流路20bをつなぐ経路P2では冷媒が流れていない状態を示している。第1ポンプ13が動作し第2ポンプ23が停止しているため、経路P1内の圧力は経路P2内の圧力よりも高くなる。切換弁30の内部で圧力差は、ピストン弁32を最上端に保持するバネ33の力に抗してピストン弁32を押し下げる力Fとなる。圧力差に起因して生じる力Fにより、ピストン弁32が中途半端な位置へ移動し、第1循環路10から第2循環路20へと冷媒が漏れる場合がある。図5の破線矢印線が、漏れた冷媒を模式的に表している。
【0032】
2本の循環路(第1循環路10と第2循環路20)の中の冷媒の温度差が小さければ、一方の循環路から他方の循環路へ冷媒が漏れても問題はない。しかし、2本の循環路内の冷媒の温度差が大きい場合、一方の循環路から他方の循環路へ冷媒が漏れると冷却効率が下がるおそれがある。そこで、制御器40は、2本の循環路の中の冷媒の温度差が所定の温度差閾値を超えている場合、第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方を動作させる。両方のポンプを動作させることで、切換弁30の中における圧力差が小さくなり、冷媒漏れが防止される。
【0033】
図6に冷却制御のフローチャートを示す。図6は、冷媒の温度を適切な温度範囲に保持するための制御のフローチャートである。制御器40は、切換弁30が第1弁位置を選択している間、所定の時間間隔で図6の処理を繰り返す。
【0034】
制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度と第1温度閾値を比較する(ステップS2)。冷媒の温度が第1温度閾値を超えている場合、制御器40は第1ポンプ13を駆動する(ステップS2:YES、S3)。冷媒の温度が第1温度閾値を下回っている場合、制御器40は第1ポンプ13を停止する(ステップS2:NO、S4:YES、S5)。なお、先に述べたように、厳密には、冷媒の温度が第1温度閾値からマージン温度を減じた値を下回ったら制御器40は第1ポンプ13を停止する。
【0035】
続いて、制御器40は、第2循環路20の中の冷媒の温度と第2温度閾値を比較する(ステップS6)。第2循環路20の中の冷媒の温度が第2温度閾値を超えている場合、制御器40は第2ポンプ23を駆動する(ステップS6:YES、S7)。冷媒の温度が第2温度閾値を下回っている場合、制御器40は第2ポンプ23を停止する(ステップS6:NO、S8:YES、S9)。なお、先に述べたように、厳密には、冷媒の温度が第2温度閾値からマージン温度を減じた値を下回ったら制御器40は第2ポンプ23を停止する。
【0036】
図6に示すように、制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度に基づいて第1ポンプ13を制御し、第1ポンプ13の制御とは独立に、第2循環路20の中の冷媒の温度に基づいて第2ポンプ23を制御する。
【0037】
図7に、冷媒漏れを防止するための処理のフローチャートを示す。制御器40は、切換弁30が第1弁位置に設定されているとき、図6の処理を一定の周期で繰り返し実行する。制御器40は、図6の処理とは独立に図7の処理を繰り返し実行する。制御器40は、第1ポンプ13と第2ポンプ23のいずれか一方が動作中であるか否かを確認する(ステップS12)。第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方が動作している場合、あるいは、両方が停止している場合は、制御器40は何もせずに処理を終了する(ステップS12:NO、リターン)。
【0038】
第1ポンプ13と第2ポンプ23の一方のみが動作しているとき、制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度と第2循環路20の中の冷媒の温度差を所定の温度差閾値と比較する(ステップS12:YES、S13)。温度差が温度差閾値を下回っている場合(ステップS13:NO)、制御器40はそのまま処理を終了する。一方、温度差が温度差閾値を上回っている場合(ステップS13:YES)、制御器40は、第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方を動作させる(ステップS14)。このとき、制御器40は、第1ポンプ13と第2ポンプ23を同じ出力で駆動する。冷媒の温度差が大きく、かつ、一方のポンプが動作しており他方のポンプが停止しているとき、制御器40は、両方のポンプを同じ出力で駆動する。この処理により、切換弁30の中の圧力差が小さくなるため、切換弁30における冷媒漏れが防止される。
【0039】
なお、ステップS14が実行された場合、図6のステップS5またはS9はスキップされる。すなわち、制御器40は、第1循環路10の中の冷媒と第2循環路20の中の冷媒との温度差が温度差閾値を超えている場合、第1循環路10と第2循環路20の中の冷媒の温度に関わらずに第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方を動作させる。
【0040】
(第2実施例)第2実施例の熱管理システムを説明する。第2実施例の熱管理システムのハードウエア構成は第1実施例の熱管理システム2(図1図2参照)と同じである。図8に、第2実施例の熱管理システムの制御器40が実行する処理のフローチャートを示す。制御器40は、切換弁30が第1弁位置を選択しているとき、図8の処理を一定の周期で繰り返し実行する。制御器40は、図6の処理と平行して図8の処理を実行する。
【0041】
制御器40は、第1ポンプ13と第2ポンプ23のいずれか一方が動作中であるか否かを確認する(ステップS22)。第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方が動作している場合、あるいは、両方が停止している場合は、制御器40は何もせずに処理を終了する(ステップS22:NO、リターン)。
【0042】
第1ポンプ13と第2ポンプ23の一方のみが動作しているとき、制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度と所定の上限温度を比較する(ステップS22:YES、S23)。第1循環路10の中の冷媒の温度が所定の上限温度を下回っている場合(ステップS23:NO)、制御器40はそのまま処理を終了する。一方、第1循環路10の中の冷媒の温度が上限温度を上回っている場合(ステップS23:YES)、制御器40は、第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方を動作させる(ステップS24)。第1循環路10(第1冷却器12)はモータ11を冷却するので冷媒の温度は高温になる。一方、第2循環路20(第2冷却器22)は、電源21を冷却する。モータ11の上限温度は電源21の上限温度よりも顕著に高い。すなわち、第1循環路10の中の冷媒の温度が上限温度を超えている場合、第1循環路10の中の冷媒と第2循環路20の中の冷媒との温度差が温度差閾値を超えている蓋然性が高い。そのような場合、制御器40は、第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方を駆動する(ステップS23:YES、S24)。この場合も、切換弁30の内部の圧力差が小さくなるので切換弁30の内部における冷媒漏れが防止できる。
【0043】
なお、第2実施例においても、ステップS24が実行された場合、図6のステップS5またはS9はスキップされる。すなわち、制御器40は、第1循環路10の中の冷媒の温度が上限温度を超えている場合、第1循環路10と第2循環路20の中の冷媒の温度に関わらずに第1ポンプ13と第2ポンプ23の両方を動作させる。
【0044】
以上説明したように、熱管理システム2は、複数の流路を切り換える切換弁30において冷媒の温度差が大きいときに冷媒漏れを防止することができる。
【0045】
なお、冷媒の温度差が小さい場合は一方のポンプが動作し他方のポンプが動作していない状態を継続してもよい。
【0046】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。走行用のモータ11が第1熱源の一例に相当する。電源21が第2熱源の一例に相当する。
【0047】
冷媒漏れが生じ得る切換弁の構造は、図3図5の構造に限られない。切換弁から液体(冷媒)が漏れる可能性があることは広く知られている。特開2021-42809号公報、特開2020-200943号公報に例示されているような構造の切換弁も本明細書が開示する技術に適用可能である。
【0048】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0049】
2:熱管理システム 10:第1循環路 10a、10b、20a、20b:流路 11:モータ 12:第1冷却器 13:第1ポンプ 14:第1熱交換器 15、25:温度センサ 19:バイパス流路 20:第2循環路 21:電源 22:第2冷却器 23:第2ポンプ 24:第2熱交換器 30:切換弁 31:ケース 32:ピストン弁 33:バネ 34:ストッパ 40:制御器 91:オイルクーラ 92:オイルポンプ 93:オイル流路 95:三方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8