(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190778
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】真空断熱パネルの製造方法、及び真空断熱パネル
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20221220BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20221220BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16L59/065
E04B1/76 500F
E04B1/80 Z
E04B1/80 100P
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099209
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓樹
【テーマコード(参考)】
2E001
3H036
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001FA04
2E001GA12
2E001GA42
2E001HA11
2E001HA21
2E001HB01
2E001JA12
2E001JA13
3H036AA09
3H036AB25
3H036AB28
3H036AC03
(57)【要約】
【課題】耐風圧性能を向上させることができる真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネルを提供する。
【解決手段】真空断熱パネル1の製造方法は、内部に中空部Hが形成された中空体10に、連続気泡を有する発泡体がコア材20として収納された方法であって、中空体10のうちパネル一面側及び他面側の内側面とコア材20のうちパネル一面側及び他面側とを接着する接着工程を備える。また、真空断熱パネル1は、内部に中空部Hが形成された中空体10に、連続気泡を有する発泡体がコア材20として収納されたものであって、中空体10のうちパネル一面側及び他面側の内側面と、コア材20のうちパネル一面側及び他面側とが接着されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に中空部が形成された中空体に、連続気泡を有する発泡体がコア材として収納された真空断熱パネルの製造方法であって、
前記中空体のうちパネル一面側及び他面側の内側面と前記コア材のうちパネル一面側及び他面側とを接着する接着工程、
を備えることを特徴とする真空断熱パネルの製造方法。
【請求項2】
前記接着工程に先立って、前記コア材のうちパネル一面側及び他面側の表面部における密度を中央部における密度よりも高くして接着面を形成する接着面形成工程を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項3】
前記接着工程に先立って、前記中空体のうちパネル一面側及び他面側の内側面、又は、前記コア材のうちパネル一面側及び他面側に接着層を形成する接着層形成工程をさらに備え、
前記接着工程では、前記接着層形成工程において形成された前記接着層を利用して、前記中空体のうちパネル一面側及び他面側の内側面と前記コア材のうちパネル一面側及び他面側とを接着する
ことを特徴とする請求項1に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項4】
中空部と外部とを連通する連通口を有した前記中空体を用意する中空体用意工程をさらに備え、
前記接着層形成工程は、前記中空体用意工程において用意された前記中空体の前記中空部内に前記連通口を通じて前記接着層を形成するための液体を投入し、前記中空体を回転させる工程である
ことを特徴とする請求項3に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項5】
前記接着層形成工程において前記接着層が形成された前記中空体の前記中空部内に前記連通口を通じて前記コア材の粉末を投入するコア材投入工程と、
前記連通口を通じて前記中空部に希釈された水ガラスである希釈水ガラスを投入して、前記コア材投入工程において投入された前記コア材の粉末に希釈水ガラスを含浸させる含浸工程と、をさらに備え、
前記接着層形成工程は、前記液体として水ガラスを投入し、
前記接着工程は、加熱によって水ガラスから水分を放出させて接着を行うと共に、当該加熱によって前記コア材の粉末に含浸された希釈水ガラスからも水分を放出させて、前記コア材の粉末を固化させる接着固化工程である
ことを特徴とする請求項4に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項6】
中空部と外部とを連通する連通口を有した前記中空体を用意する中空体用意工程と、
前記接着工程に先立って前記中空体の前記中空部内に前記連通口を通じて前記コア材の粉末を投入するコア材投入工程と、
前記連通口を通じて前記中空部に希釈された水ガラスである希釈水ガラスを投入して、前記コア材投入工程において投入された前記コア材の粉末に希釈水ガラスを含浸させる含浸工程と、をさらに備え、
前記接着工程は、加熱によって希釈水ガラスから水分を放出させて接着を行うと共に前記コア材の粉末を固化させる接着固化工程である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項7】
希釈された水ガラスである希釈水ガラスを前記コア材の粉末に含浸して加熱することで前記コア材の粉末を固化して前記コア材とする固化工程と、
前記中空部と外部とを連通する連通口を有した前記中空体を形成すると共に、前記中空体の形成時に前記固化工程において形成された前記コア材を前記中空部に収納する中空体形成工程と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項8】
中空部と外部とを連通する連通口を有した前記中空体を用意する中空体用意工程と、
前記接着層形成工程において前記接着層が形成された前記中空体の前記中空部内に前記連通口を通じて前記コア材の粉末の一部を投入する一部投入工程と、をさらに備え、
前記接着工程は、前記中空体を回転させ、且つ、前記中空部内に二酸化炭素を投入する工程である
ことを特徴とする請求項3に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項9】
前記接着工程の後に、前記中空体の前記中空部内に前記連通口を通じて前記コア材の粉末の残りを投入する残投入工程と、
前記残投入工程において前記コア材の粉末の残りが投入された前記中空部内に前記連通口を通じて希釈された水ガラスである希釈水ガラスを投入して、前記コア材の粉末の残りに希釈水ガラスを含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程後に、前記連通口を通じて前記中空部内に二酸化炭素を投入して、希釈水ガラスが含浸された前記コア材の粉末の残りを固化させる固化工程と、
を備えることを特徴とする請求項8に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項10】
前記連通口を200℃以上600℃以下の融点を有する物質で封止する封止工程をさらに備える
ことを特徴とする請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の真空断熱パネルの製造方法。
【請求項11】
内部に中空部が形成された中空体に、連続気泡を有する発泡体がコア材として収納された真空断熱パネルであって、
前記中空体のうちパネル一面側及び他面側の内側面と、前記コア材のうちパネル一面側及び他面側とが接着されている
ことを特徴とする真空断熱パネル。
【請求項12】
前記コア材は、パネル一面側及び他面側の表面部における密度が中央部における密度よりも高くされている
ことを特徴とする請求項11に記載の真空断熱パネル。
【請求項13】
前記中空体は、前記中空部と外部とを連通させる連通口と、前記連通口を封止した200℃以上600℃以下の融点を有する物質と、を備える
ことを特徴とする請求項11又は請求項12のいずれかに記載の真空断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱パネルの製造方法、及び真空断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラスファイバーをコア材としアルミ層を含む樹脂フィルムでコア材をパックした建築用の真空断熱パネルが知られている(例えば特許文献1参照)。また、グラスファイバーをコア材としステンレス薄板でパックした真空断熱パネルも知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-127085号公報
【特許文献2】特開2010-281387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2に記載の真空断熱パネルは、建築材として要求される耐風圧性能を満たすものではない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐風圧性能を向上させることができる真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る真空断熱パネルの製造方法は、内部に中空部が形成された中空体に、連続気泡を有する発泡体がコア材として収納された真空断熱パネルの製造方法であって、前記中空体のうちパネル一面側及び他面側の内側面と前記コア材のうちパネル一面側及び他面側とを接着する接着工程を備える。
【0007】
本発明に係る真空断熱パネルは、内部に中空部が形成された中空体に、連続気泡を有する発泡体がコア材として収納された真空断熱パネルであって、前記中空体のうちパネル一面側及び他面側の内側面と、前記コア材のうちパネル一面側及び他面側とが接着されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐風圧性能を向上させることができる真空断熱パネルの製造方法及び真空断熱パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る真空断熱パネルの一例を示す構成図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は断面図を示し、(c)は(b)の一部拡大図を示している。
【
図2】第1実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は中空体製造工程(中空体用意工程)を示し、(c)は接着層形成工程を示し、(d)はコア材投入工程を示し、(e)は含浸工程を示している。
【
図3】第1実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は接着面形成工程を示し、(b)は第1加熱工程(接着固化工程)を示し、(c)は第2加熱工程(接着固化工程)を示し、(d)は加熱真空引き工程(接着固化工程、封止工程)を示している。
【
図4】第2実施形態に係る真空断熱パネルの一例を示す構成図であって、(a)は斜視図であり、(b)分解斜視図を示している。
【
図5】第2実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は含浸工程を示し、(c)は接着面形成工程を示し、(d)は加熱工程(固化工程)を示している。
【
図6】第2実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は接着層形成工程を示し、(b)は中空体形成工程を示し、(c)は加熱真空引き工程(接着工程、封止工程)を示している。
【
図7】第3実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は準備工程を示し、(b)は中空体製造工程(中空体用意工程)を示し、(c)はコア材投入工程を示し、(d)は含浸工程を示している。
【
図8】第3実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は接着面形成工程を示し、(b)は第1加熱工程(接着固化工程)を示し、(c)は第2加熱工程(接着固化工程)を示し、(d)は加熱真空引き工程(接着固化工程、封止工程)を示している。
【
図9】第4実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は一部投入工程及び接着工程を示し、(b)は残投入工程及び含浸工程を示し、(c)は固化工程を示し、(d)は吸湿材投入工程を示し、(e)は真空引き工程(封止工程)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0011】
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空断熱パネルの一例を示す構成図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は断面図を示し、(c)は(b)の一部拡大図を示している。
図1(a)~
図1(c)に示す例に係る真空断熱パネル1は、中空体10と、コア材20とを備えて構成されている。
【0012】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、中空体10は、複数枚(2枚)の金属板11,12を加工して内部に中空部Hを形成したものである。各金属板11,12は、少なくとも781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性、好ましくは843℃の炎に対して30分以上耐える耐熱性、さらに好ましくは902℃の炎に対して45分以上耐える耐熱性(溶解しない耐熱性)を有するものであり、例えばステンレスにより構成されている。各金属板11,12は、それぞれが凹部を形成するように加工されている。
【0013】
中空体10は、各金属板11,12の凹部同士が合致するように組み合わされ、且つ、凹部以外の箇所(後述の連通口40を除く)が接合部13を介して一体化(外周封着)されることで、中空部Hが形成されている。接合部13は、シーム溶接や拡散接合により形成されている。
【0014】
コア材20は、連続気泡を有した発泡体が固化されたものである。このコア材20は、例えば無機物から構成されており、本実施形態では厚みが例えば数cm程度以上となっている。このようなコア材20は、中空体10と同様に少なくとも781℃の炎に対して20分以上耐える耐熱性(燃焼収縮せずアウトガスを発生させない耐熱性)を有するものであり、例えば発泡ガラス、パーライト粉末、バーミキュライト、ヒュームドシリカ、珪藻土、及びケイ酸カルシウム等によって構成されている。コア材20は、中空部H内の隅々まで行き渡っていることが好ましい。
【0015】
なお、真空断熱パネル1を建築用(例えば要求寿命50年程度)に使用する場合、コア材20は、50年間分解劣化せずさらにアウトガスを発生しないものを採用することが好ましい。また、コア材20は、建築用としての重量制限から、比重が0.7以下、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.2以下のものが採用される。
【0016】
また、第1実施形態に係る真空断熱パネル1は中空部Hが真空引きされている。ここで、中空部H内のコア材20は連続気泡を形成しているため、真空引きによって連続気泡内が真空化され断熱性を発揮する。
【0017】
ここで、従来の真空断熱パネルは、建築材として要求される耐風圧性能を満たすものではなかった。台風等による風速60m/sの風による風圧はおよそ2000Pa(=2000N/m2)で、建材は一般にこの規模の風圧に耐える必要がある。2mの間隔で立つ柱の間に渡された幅2m、高さ1mの外壁パネルを考えたとき、この外壁パネルに風圧によってかかる曲げモーメントはパネルの中央部で1/8×(2000(N/m2)×2(m)2=1000Nmである。パネルが強度を負担しないコア材と強度を負担する室内側及び室外側のステンレス製の面板で構成されるサンドイッチパネルである場合、風圧によってステンレス板にかかる応力を疲労限度内に抑えるため、その0.2%耐力の半分程度、すなわち100N/mm2程度に抑えようとすると、パネルの断面係数は1000(Nm)/100(N/mm2)=10000mm3程度必要となる。このような断面係数は、ステンレスの一枚板で実現しようとすると7.7mm厚が必要となり、互いに接着されていないステンレス板二枚で実現しようとするとそれぞれ5.5mm厚が必要となり、建材として実用的ではない。樹脂フィルムを表面材とする真空断熱パネルでは疲労限度の違いからさらにその数倍の厚みが必要で、現実的に達成し得ない。
【0018】
そこで、本実施形態において真空断熱パネル1は、
図1(b)及び
図1(c)に示すように、接着層30を有しており、中空体10のパネル一面側及びパネル他面側の内側面(
図1(b)に示す例では中空体10の内側面全域)と、コア材20のうちパネル一面側及び他面側(
図1(b)に示す例では表面部22の全域)とが接着層30を介して接着されている(接着層30のみを介して接着されている)。接着層30は、接着剤が塗布等されて形成されている。このように接着層30を備えることで、各金属板11,12とコア材20とが一体となり、耐風圧性能については、一枚の厚い板材と同程度の性能を得られることとなり、高い断面係数、すなわち耐風圧性能の向上を図ることができる。
【0019】
具体的に真空断熱パネル1の幅が2m、高さが1m、厚みが50mmであって、金属板11,12を構成するステンレス面板の厚みがt(mm)で、上記の如く2つの金属板11,12とコア材20とが強固に接着され一体化したものであれば、その断面係数は1/6×1000(mm)×{50(mm)2-(50(mm)-2t)2}で計算され、t=0.3mm以上で必要な断面係数(10000mm3)を得ることができる。同様にして計算すると、真空断熱パネル1の厚みが30mmであればt=0.5mm以上で必要な断面係数を得ることができ、パネル厚みが100mmあればt=0.15mm以上で必要な断面係数を得ることができる。すなわち真空断熱パネル1を風圧に耐える外壁材として使うためには、パネル表面材はステンレスの薄板程度の強度があって、かつコア材20と強固に接着され一体化して大きな断面係数を持つことが肝要である。なお、このようなサンドイッチパネルの表面材として、疲労限度が50N/mm2以上あることが好ましく、上記のステンレスのように100N/mm2程度あることがさらに好ましい。
【0020】
ここで、上記のような大きな断面係数を持つためには、コア材20のうちパネル一面側の面全体の50%以上が中空体10のパネル一面側の内側面に接着していることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上が接着しているとよい。他面側についても同様である。
【0021】
また、接着剤は水ガラスが採用されることが好ましい。水ガラスを採用することで、コア材20の熱伝導率が低くなるようできるだけ軽量としながらも、中空体10の内側面とコア材20との接触部のみに十分な量の接着剤を配して強固に接着できるからである。
【0022】
加えて、本実施形態に係るコア材20は、その表面部22(少なくともパネル一面側及び他面側の表面部の一例)における密度が中央部21における密度よりも高くされていることが好ましい。表面部22の密度が高くされることにより、接着層30を介した中空体10とコア材20との接着力を高めることができるからである。
【0023】
また、
図1(a)に示すように、本実施形態に係る中空体10は、中空部Hと外部とを連通させる連通口40と、連通口40を封止した200℃以上600℃以下の融点を有する物質50とを備えることが好ましい。物質50には、半田等の低融点金属や低融点ガラス等が挙げられる。このような物質50は火災時に溶けることとなり、中空部Hに空気が引き込まれる。ここで、火災時にはコア材20が耐熱性を有していても、高温環境下では若干軟化していることがあり、内部が真空引きされている状態で火事のような加熱条件に遭遇すると、金属板11,12を介して大気圧を受け続けてしまうため、想定以上に真空断熱パネル1の収縮が進むことがあった。しかし、火災時において中空部Hに空気を引き込むことで、真空断熱パネル1が想定以上に収縮してしまうことを防止することができる。
【0024】
図2及び
図3は、第1実施形態に係る真空断熱パネル1の製造方法を示す工程図である。
図2(a)は準備工程を示し、
図2(b)は中空体製造工程(中空体用意工程)を示し、
図2(c)は接着層形成工程を示し、
図2(d)はコア材投入工程を示し、
図2(e)は含浸工程を示している。また、
図3(a)は接着面形成工程を示し、
図3(b)は第1加熱工程(接着固化工程)を示し、
図3(c)は第2加熱工程(接着固化工程)を示し、
図3(d)は加熱真空引き工程(接着固化工程、封止工程)を示している。
【0025】
まず、
図2(a)に示す準備工程において、例えば板厚0.1mm以上2.0mm以下のステンレス等の金属板11,12が用意され、シーム溶接や拡散接合により接合部13が形成される。これにより、接合部13を介して金属板11,12が一体化した平板状の積層体Sが得られる。なお、この工程においては、一部がシーム溶接等されず、連通口40を有した積層体Sが得られることとなる。
【0026】
次に、
図2(b)に示す中空体製造工程において、平板状の積層体Sが金型(不図示)内に投入され、連通口40を通じて、金属板11,12の間(隙間)にアルゴン等のガスが送り込まれる。このようなガス圧の印加により、金属板11,12の内部空間が拡張していき、
図2(b)に示す中空部Hを有した中空体10が得られる。金型は、
図2(b)に示す形状の中空体10が得られるような型構造とされている。なお、金型内は加熱されており、金属板11,12が軟化変形し易いようにされていることが好ましい。また、ガス圧は、アルゴン等のガスが送り込まれ続けることで印加されてもよいし、アルゴン等のガスを所定量送り込んだ後に連通口40を一時的に閉じて印加されてもよい。
【0027】
次いで、
図2(c)に示す接着層形成工程において、水ガラス(接着層30を形成するための液体の一例)が連通口40を介して中空部H内に投入される。この工程において、中空体10は回転させられることとなり、水ガラスは中空体10の内側面の全域に塗られた状態となる。これにより、接着層30が形成されることとなる。
【0028】
その後、
図2(d)に示すコア材投入工程において、発泡済みのコア材20の粉末が連通口40を介して、接着層30が形成された中空体10の中空部H内に投入される。次いで、
図2(e)に示す含浸工程において、接着層形成工程で用いられた水ガラスよりも希釈された(例えば30倍に希釈された)希釈水ガラスが連通口40を介して中空部H内に投入され、コア材20の粉末が希釈水ガラスによって含浸させられる。
【0029】
次に、
図3(a)に示す接着面形成工程において、金属板11,12が中空部H側に向けて加圧された状態で、中空体10が振動させられる。これにより、中空部H内のコア材20のうち中空体10の内側面に接触するものの一部が粉砕されることとなる。結果として、コア材20のうち表面部22の密度が中央部21よりも高くなり、表面部22が接着面として機能し易くなる。
【0030】
その後、
図3(b)~
図3(d)に示す一連の工程により、コア材20が固化されると共に、接着層30での接着(すなわち水ガラスによる接着)が行われ、且つ、真空引き及び連通口40の封止が行われる。
【0031】
まず、
図3(b)に示す第1加熱工程において、コア材20を収納した中空体10が第1温度(例えば120℃)にて第1所定時間(例えば3日間)加熱される。これにより、30倍に希釈された希釈水ガラスの水分、及び、接着層30となって中空体10の内側面に塗布状態とされる水ガラスの水分が蒸気となり連通口40を通じて外部放出される。この第1加熱工程において多くの水分が放出される。
【0032】
次いで、
図3(c)に示す第2加熱工程において、コア材20を収納した中空体10が第2温度(第1温度よりも高い温度であって、例えば300℃)にて第2所定時間(第1所定時間よりも短い時間であって、例えば1日間)加熱される。この工程によっても、希釈水ガラス及び水ガラスの水分が蒸気となり連通口40を通じて外部放出される。また、この工程においては、水ガラスが溶けだす温度でもある。
【0033】
ここで、第1加熱工程における加熱温度(第1温度)及び加熱時間(第1所定温度)、並びに、第2加熱工程における加熱温度(第2温度)及び加熱時間(第2所定温度)は、コア材20が割れない程度に(すなわち、ゆっくりと水分を飛ばすように)設定されることが好ましい。これらの工程より前では、コア材20には希釈水ガラスが含浸されている。このため、より高い温度及びより短い時間で水を飛ばそうとすると、コア材20を固化させる一方、蒸気が一気に発生してコア材20が砕けてしまうこととなる。この場合、折角コア材20と金属板11,12とを接着したとしても、内部のコア材20が砕けており一枚の厚い板のように作用し難くなってしまう。そこで、第1及び第2加熱工程では、加熱温度及び加熱時間を適切化してコア材20が割れないようにしている。
【0034】
さらに、第1加熱工程及び第2加熱工程においては、中空体10に重りが乗せられる等して外部からの加圧状態とされたうえで、加熱が行われる。これにより、加熱時に発生する蒸気により中空部Hが加圧されて金属板11,12を押し広げて形状維持できなくなる事態を抑制できるからである。
【0035】
その後、
図3(d)に示す加熱真空引き工程において、第3温度(第2温度よりも高い温度であって、例えば600℃)にて第3所定時間(第2所定時間よりも短い時間であって、例えば6時間)加熱されると共に、これと同時に真空引きが行われる。これにより、コア材20にナノレベルの厚さで密着している水分を飛ばすことができると共に、コア材20に化学的に結合している二酸化炭素についても飛ばすことができる。ここで、真空断熱パネル1を建築材に用いる場合、断熱性能を例えば50年近く維持する必要がある。一方で通常のコア材は長期間の使用によってアウトガスを発生させてしまい、断熱性が低下する傾向にある。しかし、本工程のようにナノレベルの厚さで密着している水分や化学的に結合している二酸化炭素を飛ばすことで、アウトガスの発生を抑えてより長期に亘って高い断熱性を維持することが可能な真空断熱パネル1とすることができる。
【0036】
そして、加熱及び真空引き後、連通口40が200℃以上600℃以下の融点を有する物質50によって封止される。この封止については、例えば600℃の加熱により高温となった中空体10等が物質50の融点未満となるまで待ってから行うようにすればよい。
【0037】
さらに、この工程の完了時には、水ガラスで構成される接着層30によって、中空体10の内側面とコア材20の表面部22とが接着されており、且つ、希釈水ガラスから水分が飛ばされておりコア材20が固化されている。
【0038】
以上により、金属板11,12とコア材20とが一体化された真空断熱パネル1が得られることとなる。
【0039】
このようにして、第1実施形態に係る真空断熱パネル1及びその製造方法によれば、中空体10のうちパネル一面側及び他面側の内側面と、コア材20のうちパネル一面側及び他面側とが接着層30を介して接着するため、中空体10のパネル一面側、コア材20、及び、中空体10のパネル他面側がそれぞれ独立しておらず一体化することとなる。この結果、耐風圧性能については、一枚の厚い板材と同程度の性能を得られることとなる。従って、耐風圧性能を向上させることができる。
【0040】
また、コア材20の表面部22における密度を中央部21における密度よりも高くされているため、コア材20の表面部22の密度が低いことに起因して中空体10の内側面とコア材との接着が不充分となってしまう事態を抑制することができる。
【0041】
また、接着に先立って接着層30を形成しておくため、接着が不安定となり難く、より安定的な接着を行うことができる。
【0042】
また、連通口40を200℃以上600℃以下の融点を有する物質50で封止するため、火災時に連通口40を封止する物質50が溶けて連通口40が開放される。これにより、火災時には中空部Hに空気が引き込まれ、火災時に真空断熱パネル1が大きく収縮してしまう事態を抑制することができる。
【0043】
また、第1実施形態に係る真空断熱パネル1の製造方法によれば、連通口40を有した中空体10の中空部H内に連通口40を通じて水ガラスを投入し、中空体10を回転させるため、中空体10の形成後に内側面に接着層30を形成することができる。これにより、中空体10の内側面に接着層30を形成するために中空体10をバラバラの部品状態で保管をしておく必要がなく、中空部Hを有した中空体10の作り置きをすることができる。
【0044】
さらに、加熱によってコア材20に含浸された希釈水ガラスから水分を放出させて固化させると共に、接着についても水ガラスから水分を放出させることで行うため、加熱により双方の水ガラスから水分を放出させて固化と接着との工程を同時的に行うことができる。
【0045】
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る中空ガラス及びその製造方法は第1実施形態のものと同様であるが、一部構成及び方法が異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0046】
図4は、第2実施形態に係る真空断熱パネルの一例を示す構成図であって、(a)は斜視図であり、(b)分解斜視図を示している。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、第2実施形態に係る真空断熱パネル2は、ステンレス等の2枚の金属板14,15と、ステンレス等の略四角筒状の筒部16と、コア材20とを備え、筒部16の筒内にコア材20を収納した状態で、筒部16の筒軸方向一端側と他端側とを2枚の金属板14,15で閉じることにより構成されている。
【0047】
また、第2実施形態において筒部16は、筒軸方向の一端と他端とにフランジ16aを有しており、連通口40(
図6参照)となる箇所を除き、フランジ16aと金属板14,15とが接合部13(
図6参照)を介して一体化(外周封着)されている。連通口40は、第1実施形態と同様に、融点が200℃以上600℃未満の物質50(
図6参照)によって封止されている。
【0048】
図5及び
図6は、第2実施形態に係る真空断熱パネル2の製造方法を示す工程図である。
図5(a)は準備工程を示し、
図5(b)は含浸工程を示し、
図5(c)は接着面形成工程を示し、
図5(d)は加熱工程(固化工程)を示している。また、
図6(a)は接着層形成工程を示し、
図6(b)は中空体形成工程を示し、
図6(c)は加熱真空引き工程(接着工程、封止工程)を示している。
【0049】
まず、
図5(a)に示す準備工程において、金型内にコア材20の粉末が投入される。次に、
図5(b)に示す含浸工程において、後述の接着層形成工程で用いられる水ガラスよりも希釈された(例えば30倍に希釈された)希釈水ガラスが金型内に投入され、コア材20の粉末が希釈水ガラスによって含浸させられる。
【0050】
次いで、
図5(c)に示す接着面形成工程において、希釈水ガラスが含浸させられたコア材20を型内に収めたまま加圧された状態で振動させる。これにより、コア材20のうち金型の内側面に接触するものが一部粉砕されることとなり、コア材20のうち表面部22の密度が中央部21よりも高くなり、表面部22が接着し易くされる。
【0051】
その後、
図5(d)に示す加熱工程において、コア材20が加熱される。この工程においてコア材20は、まず第1温度で第1規定時間(例えば1日間)加熱された後に、第2温度で第2規定時間(第1規定時間よりも短い時間であって、例えば8時間)加熱される。ここで、第2実施形態においては、コア材20がむき出し状態となって周囲全体から蒸気を放出できることから、連通口40(
図1(a)等参照)から蒸気を放出する第1実施形態と比較すると、加熱時間が短縮される。特に、第1実施形態に係るコア材20は、蒸気が連通口40に向かって移動することから、連通口40に向かう蒸気の通り道ができ易く、比較的割れ易い傾向にあるが、第2実施形態に係るコア材20は周囲全体から蒸気を放出でき、より割れ難くなる。
【0052】
ここで、
図5(d)に示すコア材20は金属板14,15に覆われることなくむき出し状態となっていることから、例えば大型の工業用マグネトロン等によりマイクロ波を照射することで加熱されてもよい。マイクロ波を照射することで充分に水分を飛ばすことができる。なお、パーライトのように一部のコア材20の粉末については或る程度の温度となるとマイクロ波を吸収することから、例えば300℃まで加熱可能である。
【0053】
次に、
図6(a)に示す接着層形成工程において、接着層30が形成される。この工程においては、水ガラスが金属板14,15の内側面(中空部H側)に塗布される。次いで
図6(b)に示す中空体形成工程において、コア材20を収納した中空体10が組み立てられる。
【0054】
その後、
図6(c)に示す加熱真空引き工程において、第3温度(第2温度よりも高い温度であって、例えば600℃)にて第3規定時間(第2規定時間よりも短い時間であって、例えば6時間)加熱されると共に、これと同時に真空引きが行われる。そして、加熱及び真空引き後、連通口40が200℃以上600℃以下の融点を有する物質50によって封止される。
【0055】
さらに、この工程の完了時には、水ガラスで構成される接着層30によって、中空体10のパネル一面側と他面側との内側面とコア材20の表面部22とが接着されており、且つ、希釈水ガラスから水分が飛ばされておりコア材20が固化されている。
【0056】
以上により、金属板14,15とコア材20とが一体化された真空断熱パネル2が得られることとなる。
【0057】
このようにして、第2実施形態に係る真空断熱パネル2及びその製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
さらに、第2実施形態係る真空断熱パネル2の製造方法によれば、コア材20を中空部Hに収納する前に加熱によって水分を放出させて固化しておくため、中空体10の連通口40という比較的小さな隙間から水分を外部放出させる必要がなく、コア材20の周囲全体から水分を放出でき、比較的短い時間で固化させることができる。また、予めコア材20を固化しておくことで、接着層30を利用した接着時における水分放出の時間を短くすることにもなり、製造時間の短縮を図ることができる。
【0059】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。第3実施形態に係る真空断熱パネルは第1実施形態のものと同様であるが、製造工程が異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0060】
図7及び
図8は、第3実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図である。
図7(a)は準備工程を示し、
図7(b)は中空体製造工程(中空体用意工程)を示し、
図7(c)はコア材投入工程を示し、
図7(d)は含浸工程を示している。また、
図8(a)は接着面形成工程を示し、
図8(b)は第1加熱工程(接着固化工程)を示し、
図8(c)は第2加熱工程(接着固化工程)を示し、
図8(d)は加熱真空引き工程(接着固化工程、封止工程)を示している。
【0061】
第3実施形態に係る真空断熱パネル3(
図8(d)参照)の製造方法においては、まず、
図7(a)及び
図7(b)に示すように、第1実施形態と同様に準備工程と中空体製造工程が行われる。次いで、第3実施形態では、第1実施形態で実施された接着層形成工程が省略され、
図7(c)に示すように、第1実施形態と同様にコア材投入工程が行われる。その後、
図7(d)に示すように、第1実施形態と同様に含浸工程が行われる。
【0062】
次いで、
図8(a)~
図8(d)に示すように、第1実施形態と同様にして、接着面形成工程が行われた後に、
図8(b)~
図8(d)に示す一連の工程により、コア材20が固化されると共に、接着が行われ、且つ、真空引き及び連通口40の封止が行われる。
【0063】
このようにして、第3実施形態に係る真空断熱パネル3及びその製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
さらに、第3実施形態によれば、中空部H内にコア材20の粉末を投入し加熱により希釈水ガラスから水分を放出させる際に接着とコア材20の粉末の固化を行うため、接着層30の形成工程を省略することができ、より簡素な工程で耐風圧性能を向上させることができる真空断熱パネル3を得ることができる。
【0065】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。第4実施形態に係る真空断熱パネルは第1実施形態のものと同様であるが、製造工程が異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0066】
図9は、第4実施形態に係る真空断熱パネルの製造方法を示す工程図であり、(a)は一部投入工程及び接着工程を示し、(b)は残投入工程及び含浸工程を示し、(c)は固化工程を示し、(d)は吸湿材投入工程を示し、(e)は真空引き工程(封止工程)を示している。
【0067】
まず、第4実施形態においては、
図2(a)~
図2(c)に示すように、準備工程、中空体製造工程、及び接着層形成工程が行われる。次いで、
図9(a)に示す一部投入工程において、中空部H内にコア材20の粉末の一部(例えば全量の10%程度)が連通口40を通じて投入される。その後、
図9(a)に示す接着工程において、中空体10が
図2(c)に示す接着層形成工程と同様に回転させられ、且つ、連通口40を通じて中空体10内に二酸化炭素が投入される。これにより、接着層形成工程により形成された接着層30である水ガラスが二酸化炭素と反応して固化する。この際、コア材20の粉末の一部が投入されているため、密度が高い表面部22についても形成されることとなる。これにより、コア材20の表面部22と中空体10の内側面とが接着層30を介して接着されることとなる。
【0068】
次いで、
図9(b)に示す残投入工程において、コア材20の粉末の残りが連通口40を通じて中空部H内に投入される。次に、
図9(b)に示す含浸工程において、希釈水ガラスが連通口40を通じて中空部H内に投入される。これにより、コア材20の粉末の残りが希釈水ガラスによって含浸させられる。
【0069】
その後、
図9(c)に示す固化工程において、二酸化炭素が連通口40を通じて中空部H内に投入される。これにより、コア材20の粉末の残りに含浸された希釈水ガラスの水ガラス成分が二酸化炭素と反応して固化する。
【0070】
次に、
図9(d)に示す吸湿材投入工程において、酸化カルシウム等の吸湿材が連通口40を通じて中空部H内に投入される。ここで、第4実施形態に係る工法では、加熱を行っていないことから、水ガラスや希釈水ガラス中の水分が放出されておらず、真空断熱パネル4の長期使用時にアウトガスが発生して断熱性を低下させる可能性がある。そこで、第4実施形態においては吸湿材を投入してアウトガスによる断熱性の低下を抑えるようにしている。
【0071】
次いで、
図9(e)に示す真空引き工程において、真空引きを行って中空体10の内部を真空化する。その後、連通口40が200℃以上600℃以下の融点を有する物質50によって封止される。
【0072】
このようにして、第4実施形態に係る真空断熱パネル4及びその製造方法によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、コア材20の粉末の一部を投入して中空体10を回転させながら二酸化炭素を投入するため、投入するコア材20の粉末の量を適切化することで最終製品状態でコア材20の表面部22において密度を中央部21よりも高い状態とでき、接着面形成工程を省略しつつも強固な接着を図ることができる。
【0074】
また、コア材20の粉末の残りを投入後、希釈水ガラスを含侵させて二酸化炭素を投入して、コア材20の粉末を固化させるため、二酸化炭素の投入を複数回に分けて行うことで接着と固化とを行うことができる。これにより、加熱を行ったときのように長時間に亘る加熱工程を必要とせず、より短時間で真空断熱パネル4を製造することに寄与することができる。
【0075】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で実施形態同士の技術や、適宜公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0076】
例えば、上記実施形態において中空体10はステンレス等の金属板11,12,14,15及び筒部16により構成されているが、これに限らず、耐熱性を有していれば、ガラス材等の他の素材によって形成されていてもよい。さらに、金属板11,12,14,15は2枚に限らず、3枚以上であってもよい。
【0077】
さらに、第1実施形態において中空体10は、複数の金属板11,12に対してガス圧を印加することで製造されているが、これに限らず、例えば深絞り加工された金属板を組み合わせる等して中空体10が形成されてもよい。
【0078】
加えて、上記実施形態においてはコア材20の粉末に希釈水ガラスが含浸され、水分を飛ばすことによりコア材20が固化されているが、これに限らず、例えばコア材20の粉末を押圧して固化するようにしてもよい。
【0079】
また、発泡剤は全量が未発泡状態で中空部Hに導入される場合に限らず、一部が発泡状態とされて中空部Hに導入されてもよいし、又は全量が発泡済みのコア材20の状態で中空部Hに導入されてもよい。
【0080】
また、第3実施形態においては希釈水ガラスを利用してコア材20の固化のみならず接着も行うため、希釈については30倍に限らず、10倍等のより高い濃度のものとしてもよいし、適宜調整可能である。
【0081】
さらに、第4実施形態においては水ガラス及び希釈水ガラス中の水ガラス成分を二酸化炭素の反応によって接着及び固化させており、加熱による接着及び固化を行っていないが、これに限らず、アウトガスの発生を抑える観点から追加的に加熱処理を行ってもよい。
【0082】
加えて、第4実施形態においては
図9(a)に示す一部投入工程及び接着工程において密度が高い表面部22を得ているが、さらに表面部22の密度を高くする目的から、可能であれば、
図3(a)に示す接着面形成工程が追加されていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1~4 :真空断熱パネル
10 :中空体
11,12,14,15 :金属板
13 :接合部
16 :筒部
16a :フランジ
20 :コア材
21 :中央部
22 :表面部
30 :接着層
40 :連通口
50 :物質
H :中空部
S :積層体