(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190779
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】介助装置
(51)【国際特許分類】
A61G 5/14 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61G5/14
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099210
(22)【出願日】2021-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【弁理士】
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】飛川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】細谷 秀靖
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被介助者の上半身を直立姿勢や前かがみ姿勢で支承可能としつつ、座部への接近、離間をその側方から行えるようにする。
【解決手段】例えば着座式便器1の近傍に配設されたベース部材10に対して、揺動部材20が、揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結される。一方の側方フレーム部30Rは、第1回動機構L1を介して回動可能に揺動部材20に保持されて、使用位置と待避位置とを選択的にとり得る。他方の側方フレーム部30Lは、揺動部材20の一部によって構成することができる。各側方フレーム部30R、30Lは前方アーム部40R、40Lを有する。側方フレーム部30Rを横開きまたは上開きに回動させた待避位置では、被介助者Pは側方から着座式便器1へ接近、離間可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者が着座される座部の後方に配設されたベース部材と、
前記ベース部材に対して揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結され、座部に着座された被介助者の上半身を左右から挟むように位置されて、該被介助者の左右の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部と、
前記側方フレーム部に設けられ、座部に着座された被介助者の上半身の前面部を水平方向に伸びた状態で受け止めて被介助者の前倒れを防止する前方アーム部と、
前記左右の側方フレーム部のうち少なくとも一方の側方フレーム部が、前記ベース部材に対して前記揺動角度変更機構に加えて第1回動機構を介して連結されて、該第1回動機構での回動に応じて、座部に着座している被介助者の側方に位置する使用位置と該被介助者の側方から待避された待避位置と、を選択的にとり得るようにされている、
ことを特徴とする介助装置。
【請求項2】
座部の後方を通って前記左右の側方フレーム部同士を連結する後方フレーム部を構成すると共に、座部の左右両側において前記ベース部材に対して上下方向に揺動可能に連結されて、前記揺動角度変更機構によって上下方向の揺動位置を変更可能とされた揺動部材を有し、
前記一方の側方フレーム部が、前記第1回動機構を介して前記揺動部材に保持されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
前記左右の側方フレーム部のうち他方の側方フレーム部が、前記揺動部材の一部によって構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の介助装置。
【請求項4】
前記揺動部材は、左右方向に伸びる前記後方フレーム部のうち前記一方の側方フレーム部側となる一端部から、下方へ伸びる第1下方延長部と、該第1下方延長部の下端部から前方へ伸びる第1前方延長部とを有して、該第1前方延長部が上下方向に揺動可能に前記ベース部材に対して連結され、
前記揺動部材は、前記後方フレーム部の他端部から、前方へ伸びる第2前方延長部と、該第2前方延長部の前端部から下方へ伸びる第2下方延長部と、該第2下方延長部の下端部から後方へ伸びる後方延長部と、を有して、該後方延長部が前記ベース部材に対して揺動可能に連結されている、
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の介助装置。
【請求項5】
前記揺動角度変更機構が、左右のうち前記他方の側方フレーム部側においてのみ設けられている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の介助装置。
【請求項6】
前記他方の側方フレーム部が、常に座部の側方に位置された使用位置とされ、
前記前方アーム部が、前記左右の側方フレーム部に対してそれぞれ設けられ、
前記一方の側方フレーム部に保持された前記前方アーム部は、該一方の側方フレーム部と一体とされ、
前記他方の側方フレーム部に保持された前記前方アーム部は、第2回動機構を介して、該第2回動機構での回動に応じて、水平方向に伸びる使用位置と座部に着座された被介助者の前面部から待避された待避位置とを選択的にとり得るようにされている、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の介助装置。
【請求項7】
前記使用位置と前記待避位置とを選択的にとり得るようにされた前記側方フレーム部の回動を、該使用位置と該待避位置の少なくとも一方でロックするロック機構を有している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の介助装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座部に着座している被介助者の上半身の倒れを防止するようにした介助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着座式便器等の座部に着座した被介助者が、自力で座位姿勢を保持できないときに、被介助者の上半身を左右側方および前方から支承ようにした介助装置が開示されている。
【0003】
具体的には、特許文献1の介助装置にあっては、座部の後方に配設されたベース部材に対して、座部に着座した被介助者の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部を上下方向に揺動可能に保持させると共に、この側方フレーム部に、被介助者の上半身の前面部を支障する前方アーム部を回動可能に保持させたものがある。そして、側方フレーム部の揺動は、所望位置でロック可能とされている。
【0004】
特許文献1の介助装置にあっては、側方フレーム部の揺動角度を変更することにより、座部に着座された被介助者の上半身がほぼ直立した直立姿勢のみならず、前かがみになった姿勢にも対応できるものとなっている。また、前方アーム部は、その回動によって、座部に着座された被介助者の上半身の前方において水平方向に伸びる使用位置と、上半身の前方から待避された待避位置をとり得るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載のものでは、側方フレーム部の揺動角度を変更することにより、座部に着座された被介助者の上半身を直立姿勢のみならず前かがみ姿勢でもって支承できるという点で、極めて好ましいものである。この一方、特許文献1のものでは、側方フレーム部を座部の左右側方に配設した際には、被介助者が座部に対して接近、離間する際は、座部の前方からのみ行うことになり、座部の側方から接近、離間することは事実上困難である。
【0007】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、座部に着座された被介助者の上半身を直立姿勢のみならず前かがみ姿勢でもって支承できるようにしつつ、座部への接近、離間を座部の側方から行えるようにした介助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
被介助者が着座される座部の後方に配設されたベース部材と、
前記ベース部材に対して揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結され、座部に着座された被介助者の上半身を左右から挟むように位置されて、該被介助者の左右の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部と、
前記側方フレーム部に設けられ、座部に着座された被介助者の上半身の前面部を水平方向に伸びた状態で受け止めて被介助者の前倒れを防止する前方アーム部と、
前記左右の側方フレーム部のうち少なくとも一方の側方フレーム部が、前記ベース部材に対して前記揺動角度変更機構に加えて第1回動機構を介して連結されて、該第1回動機構での回動に応じて、座部に着座している被介助者の側方に位置する使用位置と該被介助者の側方から待避された待避位置と、を選択的にとり得るようにされている、
ようにしてある。
【0009】
上記解決手法によれば、一方の側方フレーム部を待避位置とすることにより、被介助者は、座部の側方から座部へ接近、離間することが可能となる。特に、車椅子に乗っている被介助者が座部に着座するには、介助者の助けをかりながら、車椅子の前方に立ち上がった後、お尻を略90度程度後方へ向けつつ、座部の側方空間を通して座部に着座すればよく、また、座部から車椅子へ移動するのはこの逆の動きをするだけでよく、車椅子と座部との間での移動に際して要求される被介助者の姿勢変化を少なくする上でも好ましいものとなる。勿論、側方フレーム部は、上下方向の揺動角度が変更可能なことから、座部に着座されている被介助者の上半身を、直立姿勢のみならず前かがみ姿勢でも支承できるという利点をそのまま有するものとなる。
【0010】
本発明の好ましい第1の態様は、次のとおりである。
【0011】
座部の後方を通って前記左右の側方フレーム部同士を連結する後方フレーム部を構成すると共に、座部の左右両側において前記ベース部材に対して上下方向に揺動可能に連結されて、前記揺動角度変更機構によって上下方向の揺動位置を変更可能とされた揺動部材を有し、
前記一方の側方フレーム部が、前記第1回動機構を介して前記揺動部材に保持されている、
ようにすることができる。この場合、揺動部材を利用して、側方フレーム部の揺動角度を変更可能としつつ、一方の側方フレーム部を待避位置をとり得るように回動可能に揺動部材に保持させることができる。特に、揺動部材は、左右の側方フレーム部同士を連結していると共に、座部の左右で揺動可能にベース部材に連結されて剛性の高いものになることから、回動可能な一方の側方フレーム部をしっかりと保持させる上でも好ましいものとなる。
【0012】
本発明の好ましい第2の態様は、次のとおりである。
【0013】
前記左右の側方フレーム部のうち他方の側方フレーム部が、前記揺動部材の一部によって構成されている、ようにすることができる。この場合、他方の側方フレーム部を、揺動部材を有効に利用して簡単かつ剛性の高いものとして構成することができる。
【0014】
本発明の好ましい第3の態様は、次のとおりである。
【0015】
前記揺動部材は、左右方向に伸びる前記後方フレーム部のうち前記一方の側方フレーム部側となる一端部から、下方へ伸びる第1下方延長部と、該第1下方延長部の下端部から前方へ伸びる第1前方延長部とを有して、該第1前方延長部が上下方向に揺動可能に前記ベース部材に対して連結され、
前記揺動部材は、前記後方フレーム部の他端部から、前方へ伸びる第2前方延長部と、該第2前方延長部の前端部から下方へ伸びる第2下方延長部と、該第2下方延長部の下端部から後方へ伸びる後方延長部と、を有して、該後方延長部が前記ベース部材に対して揺動可能に連結されている、
ようにすることができる。この場合、揺動部材の好ましい具体的な形状が提供される。特に、揺動部材は、一方の側方フレーム部側においては被介助者が座部へ接近、離間するのに邪魔にならない構造、形状とされ、かつ、他方の側方フレーム部側においては剛性の高い構造、形状とすることができる。
【0016】
本発明の好ましい第4の態様は、次のとおりである。
【0017】
前記揺動角度変更機構が、左右のうち前記他方の側方フレーム部側においてのみ設けられている、ようにすることができる。この場合、第1回動機構とは左右反対側において揺動角度変更機構を設けて、第1回動機構と揺動角度変更機構とを左右に分散させて配置することができる。特に、他方の側方フレーム部が待避位置を取り得ないで常に使用位置とされている場合に、剛性を確保しやすい他方の側方フレーム部側に揺動角度変更機構を設けて、所望の揺動角度でもって側方フレーム部をしっかりと維持させる上でも好ましいものとなる。
【0018】
本発明の好ましい第5の態様は、次のとおりである。
【0019】
前記他方の側方フレーム部が、常に座部の側方に位置された使用位置とされ、
前記前方アーム部が、前記左右の側方フレーム部に対してそれぞれ設けられ、
前記一方の側方フレーム部に保持された前記前方アーム部は、該一方の側方フレーム部と一体とされ、
前記他方の側方フレーム部に保持された前記前方アーム部は、第2回動機構を介して、該第2回動機構での回動に応じて、水平方向に伸びる使用位置と座部に着座された被介助者の前面部から待避された待避位置とを選択的にとり得るようにされている、
ようにすることができる。この場合、一方の側方フレーム部と一方の前方アーム部とを一体として構造の簡単化を図る上で好ましいものとなる。また、常に使用位置となる他方の側方フレーム部側においては、他方の前方アーム部が待避位置をとり得るようにして、被介助者が座部の前方側から座部へ接近、離間する際に他方の前方アーム部が邪魔になってしまう事態を確実に防止することができる。
【0020】
本発明の好ましい第6の態様は、次のとおりである。
【0021】
前記使用位置と前記待避位置とを選択的にとり得るようにされた前記側方フレーム部の回動を、該使用位置と該待避位置の少なくとも一方でロックするロック機構を有している、ようにすることができる。この場合、回動可能な側方フレーム部が、不用意に使用位置あるいは待避位置となってしまう事態を確実に防止することができる。
【0022】
本発明の好ましい第7の態様は、次のとおりである。
【0023】
座部の後方を通って前記左右の側方フレーム部同士を連結する後方フレーム部を構成すると共に、座部の左右両側において前記ベース部材に対して上下方向に揺動可能に保持されて、前記揺動角度変更機構によって上下方向の揺動位置を変更可能とされた揺動部材を有し、
前記左右の側方フレーム部がそれぞれ、前記揺動部材に回動可能に保持され、 前記左右の側方フレーム部はそれぞれ、その回動に応じて、座部の側方に位置された使用位置と座部の側方を開放した待避位置とを選択的にとり得るようにされている、
ようにすることができる。この場合、被介助者は、座部の左側方と右側方のいずれの方向からも座部に接近、離間することができる。
【0024】
上記第7の態様を前提として、本発明の好ましい第8の態様は、次のとおりである。
【0025】
前記左右の側方フレーム部にそれぞれ、前記前方アーム部が一体的に設けられている、ようにすることができる。この場合、左右共に、側方フレーム部と前方アーム部とを一体として形成して、簡単かつ剛性の高い構造として構成することができる。
【0026】
本発明によれば、座部に着座された被介助者の上半身を直立姿勢のみならず前かがみ姿勢でもって支承できるようにしつつ、座部への接近、離間を座部の側方から行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態を示すもので、側方フレーム部および前方アーム部がそれぞれ使用位置にある状態を示す斜視図。
【
図2】
図1の状態から、一方の側方フレーム部および前方アーム部が待避位置とされると共に、他方の前方アーム部が待避位置とされた状態を示す斜視図。
【
図3】他方の側方フレーム部と他方の前方アーム部との回動可能な連結部位を示す要部斜視図。
【
図4】
図1に示す使用位置状態にある介助装置によって、着座式便器に着座している被介助者の上半身を支承している使用状態を示す平面図。
【
図5】介助装置を
図2に示す待避位置状態として、車椅子に乗っている被介助者が着座式便器の側方から着座式便器へ移動する状況を示す平面図。
【
図7】揺動角度変更機構部分を示す要部側面断面図。
【
図10】第1回動機構および第1ロック機構を示すもので、一方の側方フレーム部が使用位置にある状態での要部平面断面図。
【
図11】
図10の状態から一方の側方フレーム部を待避位置へ揺動させた状態を示す要部平面断面図。
【
図12】第1回動機構と第1ロック機構の一例を示すもので、一方の側方フレーム部の回動が使用位置でロックされた状態を示す要部断面図。
【
図13】一方の側方フレーム部の回動が待避位置でロックされた状態を示すもので、
図12に対応した要部断面図。
【
図14】一方の側方フレーム部のうち第1回動機構に保持される部位を示す要部斜視図。
【
図15】本発明の第2の実施形態を示すもので、側方フレーム部および前方アーム部がそれぞれ使用位置にある状態を示し、
図1に対応した斜視図。
【
図16】第2の実施形態において、一方の側方フレーム部が使用位置とされた状態を示す要部側面図。
【
図17】
図15の状態から、一方の側方フレーム部および前方アーム部が待避位置とされると共に、他方の前方アーム部が待避位置とされた状態を示すもので、
図2に対応した斜視図。
【
図18】第2の実施形態において、一方の側方フレーム部が待避位置とされた状態を示す要部側面図。
【
図19】第1回動機構と第1ロック機構の変形例を示すもので、一方の側方フレーム部の回動が待避位置ではロックされないようにした要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、
図1~
図5を参照しつつ、全体の概要について説明する。
【0029】
図1~
図3は本発明による介助装置Kの一例を示すものである。この介助装置Kを着座式便器1の座部1aに対して配設した状態が、
図4、
図5に示される。なお、以下の説明において、方向は着座式便器1の座部1aに着座した被介助者Pから見た方向として説明する。具体的には、座部1aに着座した被介助者Pの正面側を前、背面側を後、右腕側を右、左腕側を左として説明することとする。
【0030】
介助装置Kは、大別して、ベース部材10と、揺動部材20と、左右一対の側方フレーム部30L、30Rと、左右一対の前方アーム部40L、40Rと、揺動角度変更機構60と、を有する。
【0031】
ベース部材10は、上下方向に延びる左右一対の縦棒状部材11と、左右方向に延びて左右一対の縦棒状部材の上端部同士を連結する横棒状部材12と、縦棒状部材11の下端に連結された載置板部13と、を有して、全体的に門型形状とされている。左右一対の縦棒状部材11の間で横棒状部材12の下方となる空間に、着座式便器1の後部が配設される。ベース部材10は、着座式便器1の構造(フラッシュバルブやロータンク)に影響されない床置き型とされている。なお、ベース部材10(の載置板部13)は、着座式便器1の近傍に配設すればよく、着座式便器1に対して固定したり、着座式便器1の後方の壁面に固定したり、床面に対して固定しておくことができる。
【0032】
ベース部材10における縦棒状部材11には、介助装置Kを着座式便器1に配設したときに着座式便器1との間に形成される側方の隙間を埋める隙間調整部材14が固定されている(
図1~
図3参照)。なお、
図4、
図5では、隙間調整部材14の図示を略してある。
【0033】
揺動部材20は、パイプ材を曲げ加工することにより構成されており、例えば金属パイプを合成樹脂で被覆した長尺のパイプ材によって構成されている。この揺動部材20は、左右方向に長く伸びる後方フレーム部21を有する。この後方フレーム部21は、ベース部材10における横棒状部材12の高さ付近で左右方向に長く伸びて、その左右端部が左右一対の縦棒状部材11付近に位置されている。
【0034】
揺動部材20は、後方フレーム部21の右端側から下方へ伸びる第1下方延長部22と、第1下方延長部22の下端部から前方へ伸びる第1前方延長部23と、を有する。また、揺動部材20は、後方フレーム部21の左端側から前方へ伸びる第2前方延長部24と、第2前方延長部24の前端部から下方へ伸びる第2下方延長部25と、第2下方延長部25の下端部から後方へ伸びる後方延長部26と、を有する。
【0035】
揺動部材20は、ベース部材11に対して、上下方向に揺動可能に保持されている。具体的には、ベース部材10における右側の縦棒状部材11に連結ブラケット51Rが固定されて、この連結ブラケット51Rに対して、揺動部材20のうち第1前方延長部23がボルト等からなる連結部52Rによって揺動可能に連結されている。また、ベース部材10における左側の縦棒状部材11に連結ブラケット51Lが固定されて、この連結ブラケット51Lに対して、揺動部材20のうち後方延長部26がボルト等からなる連結部52Lによって揺動可能に連結されている。
【0036】
上記連結部52Lと52Rとは、水平方向に伸びる同一軸線上に位置されている。すなわち、揺動部材20は、着座式便器1を左右から挟む左右2箇所において、ベース部材11に対して上下方向に揺動可能に保持されることになる。そして、後述する揺動角度変更機構60によって、揺動部材20は所望の揺動角度を保持できるようにされている。
【0037】
揺動部材20のうち第1下方延長部22に対して、右側の側方フレーム部30Rが、第1回動機構L1を介して回動可能に保持されている。すなわち、側方フレーム部30Rは、
図1に示す使用位置において前後方向に伸びるアーム状とされて、その後端部から下方へ伸びる延長部31が、第1回動機構L1を介して第1下方延長部22に対して回動可能に保持されている。側方フレーム部30Rは、上下方向に伸びる回動軸線を中心とする回動に応じて、前方へ伸びる使用位置(
図1に示す状態)と、使用位置から右側方へ略90度開いた待避位置(
図2に示す状態)とを選択的にとり得るようになっている。そして、側方フレーム部30Rは、少なくとも使用位置において、第1回動機構L1に付設された第1ロック機構R1によってロックされる(回動規制される)ようになっている。なお。上記第1回動機構L1および第1ロック機構R1については後述する。
【0038】
使用位置にある側方フレーム部30Rの前端部を横方向内側に延長させることによって、右側の前方アーム部40Rが形成されている。前方アーム部40Rは、側方フレーム部30Rに対して略90度の角度を有している。側方フレーム部30Rが
図1に示す使用位置とされた際、前方アーム部40Rは、着座式便器1に着座されている被介助者Pの上半身の前面部を支承する位置とされる(前方アーム部40Rの使用位置)。このように、実施形態では、側方フレーム部30Rと前方アーム部40Rとが、1本のアーム材(例えば金属パイプを合成樹脂で被覆したパイプ材)を加工することによって一体成形されている。
【0039】
左側の側方フレーム部30Lは、主として揺動部材20における第2前方延長部24によって構成されているが、第2下方延長部25、後方延長部26も側方フレーム部30Lの構成要素となっている。すなわち、揺動部材20の左側の揺動中心となる連結部52Lが、側方フレーム部30Lの揺動中心をも構成した形態とされている。換言すれば、側方フレーム部30Lが連結部52Lによってベース部材10に対して揺動可能に連結されて、後方フレーム部21を介して左右の側方フレーム部30Rと30Lとが連結された形態となっている。後方フレーム部21を介して左右の側方フレーム部30Rと30Lとを連結しておくことにより、互いに一体的に揺動されると共に、剛性を高める上でも好ましいものとなる。
【0040】
側方フレーム部30Lの構成部材となる第2前方延長部24には、第2回動機構L2を介して、左側の前方アーム部40Lが回動可能に保持されている。すなわち、前方アーム部40Lの左側端部から後方へ伸びる延長部42が、第2回動機構L2を介して第2前方延長部24に連結されている。第2回動機構L2の回動軸線は前後方向に伸びており、これにより、前方アーム部40Lは、水平方向に伸びる使用位置(
図1に示す状態)と、使用位置から上方へ略90度回動されて上方へ向けて伸びる待避位置(
図2に示す状態)と、を選択的にとり得るようになっている。そして、第2回動機構L2には、前方アーム部40Lが少なくとも待避位置にあるときにその回動を規制するロック機構R2が設けられている。なお、第2回動機構L2と第2ロック機構R2については後述する。
【0041】
介助装置Kは、着座式便器1に着座された被介助者Pの上半身に対向する複数箇所において、発砲ウレタン等の弾性部材からなるクッション部材80が取り付けられている。具体的には、後方フレーム部21、左右の側方フレーム部30L、30R、左右の前方アーム部40L、40Rのそれぞれに対して、クッション部材80が取り付けられている。
【0042】
次に、
図6~
図9を参照しつつ、揺動角度変更機構60の一例について説明する。なお、実施形態では、揺動角度変更機構60は、左側の側方フレーム部30L側においてのみ設けられている。
【0043】
まず、左側の連結ブラケット51Lには、板状の上ストッパ部53とピン状の下ストッパ部54とが形成されている。各ストッパ部53と54とは、連結部52Lを中心として略45度の角度をなすように設定されている。揺動部材20(つまり左右の側方フレーム部30L、30R)は、同一軸線上にある連結部52L、52Rを中心にして揺動されることにより、その前下がりの角度(前傾角度)が変更可能とされている。ただし、後方延長部26の後端部が上下のストッパ部53あるいは54に当接することにより、このストッパ部53、54を超える以上の揺動は規制される。なお、後方延長部26が下側のストッパ部54に当接した状態では、第2前方延長部24が水平状態で前後方向に延びる基本姿勢状態とされる。
【0044】
揺動角度変更機構60は、
図6、
図7に示すように、連結ブラケット51Lに一体化された係止部材61を有する。係止部材61は、例えばSUS等の金属や合成樹脂によって形成されて、固定具62によって連結ブラケット51Lに固定されている。
【0045】
係止部材61は、連結部52Lを中心とする円弧状の面を有して、この円弧状の面にはその周方向に沿って、等角度刻みで複数の係止凹部63が形成されている。隣り合う係止凹部63の間には、係止凸部64が位置されている。
【0046】
図7~
図9に示すように、揺動部材20における後方延長部26の後端部内には、係合部材65が摺動可能に保持されている。この係合部材65は、板状とされて、後方延長部26の内面に対して摺動される本体部65aと、本体部65aから後方(後方延長部26の奥側)に向けて延設された延設部65bと、を有する。延設部65bには、係合部材65の摺動方向に延びる長孔状のガイド孔65cが形成されている。そして、本体部65aからは、係止部材61に向けて延びる係合突起部65dが形成されている。係合部材65の摺動に応じて、係合突起部65dが係止凹部63に対して嵌合(係止)、離脱(係止解除)可能とされている。
【0047】
後方延長部26には、上記ガイド孔65cを貫通するガイドピン66が固定されている。係合部材65は、ガイド孔65c内をガイドピン66が摺動する範囲において変位可能とされている。
図7~
図9では、係合部材65が後方延長部26からもっとも突出された係止位置での状態が示される。ガイドピン66はガイド孔65cに対してほぼがたつきなく貫通しており、板状の係合部材65が後方延長部26の周方向に回動してしまう事態が規制される。
【0048】
後方延長部26内には、付勢手段としてのコイルばねからなるリターンスプリング67が配設されている。このリターンスプリング67は、ガイドピン66と本体部65aとの間に位置されて、延設部65bを取り巻くように配設されている。このリターンスプリング67によって、係合部材65は、後方延長部26から突出する方向(係止凹部64に嵌合される方向)へ常時付勢されている。
【0049】
揺動部材20における第2下方延長部25には、操作部材68が上下方向にスライド可能に保持されている。操作部材68は、第2下方延長部25に対してスライド可能に嵌合された筒部68aと、筒部68aに一体化された操作部68bと、を有する。筒部68aに一体化されたガイドピン69が、第2下方延長部25に形成された上下方向に短く延びるガイド孔70内にスライド可能に嵌合されている。
【0050】
上記ガイドピン69と係合部材65における延設部65bとが、第2下方延長部25、後方延長部26内に配設された連結ワイヤ71によって連結されている。これにより、操作部材68の操作部68bを把持して上方へスライドさせることにより、係合部材65がリターンスプリング67に抗して後方延長部26内に引き込まれる係止解除方向へと変位される。
【0051】
前記複数の係止凸部64のうち、上側の側面は、先端に向かうにつれて徐々に下方に向かう傾斜面64aとされている。これに対して、係止凸部64のうち下側の側面は、ほぼ直角に切り立った形状とされている(傾斜面の形成なし)。
【0052】
ここで、揺動部材20つまり左右の側方フレーム部30L、30Rが
図6、
図7の状態よりも若干前下がりの状態で、かつ係合部材65の係合突起部65dが係止凹部63に嵌合、係止されている状態を想定する。この状態において、側方フレーム部30L、30Rを前下がりの方向(
図6、
図7反時計回り方向)へ揺動させようとする大きな外力を作用させたとしても、係止凸部64によってその揺動が強固に規制される。
【0053】
一方、側方フレーム部30L、30Rを前上がりの方向(
図6、
図7時計回り方向)へ揺動させようとする適度な外力を作用させたときは、係合部材65の係合突起部65dが係止凸部64の傾斜面64aに沿いつつ係止凸部64を乗り越えることが可能となっている。このように、本実施形態では、側方フレーム部30L、30Rの前下がり方向の揺動は強固に規制される一方、前上がり方向の揺動は許容するように設定されている。なお、前上がり方向の揺動も規制するように、係止凸部64を形成してもよい。
【0054】
次に、
図10~
図14を参照しつつ、側方フレーム部30Rを使用位置と待避位置との間で回動可能とする第1回動機構L1と、その回動をロックする第1ロック機構R1とについて説明する。なお、実施形態では、第1ロック機構R1は、側方フレーム部30Rが使用位置のときにロックが行われるロック位置とされ、側方フレーム部30Rが待避位置のときにロックされないアンロック位置とされる。
【0055】
まず、側方フレーム部30Rにおける延長部31の下端部は、軸状の連結部材33によって構成されている(
図14参照)。この連結部材33は、例えばアルミニウム合金を押し出し成形することによって形成されて、ボルト等の固定具34によって、パイプ材からなる延長部31に固定されている。
【0056】
上記連結部材33の断面形状が、
図12、
図13に示される。この連結部材33は、その断面形状が示すように、係止部としての係止溝33aと、係止突部からなるストッパ部33bを有する形状とされている。
【0057】
揺動部材20の第1下方延長部22と側方フレーム部30Rの延長部31に構成された連結部材33とは、連結ブラケット100を利用して連結されている。すなわち、連結ブラケット100は、連結部材33が回動可能に嵌合される回動保持部としての第1筒部101と、揺動部材20の第1下方延長部22が嵌合状態で固定される固定部としての第2筒部102と、を有する。なお、連結部材33は、既知の適宜の手法により、第1筒部101に対して軸線方向には変位しないようにされている。
【0058】
連結ブラケット100は、第2筒部102の部分で、第1部材100Aと第2部材100Bとの2つ割り構造とされている。そして、第2下方延長部22を貫通するボルト103とナット104とによって、2つの部材100Aと100Bとが締結されている。また、ボルト103とナット104とによって、第2下方延長部22と連結ブラケット100とが一体化される。
【0059】
連結ブラケット100には、揺動レバー110がピン部材111によって揺動可能に取付けられている。揺動レバー110の一端部が、突起状の係止部110aとされている。この係止部110aは、第1筒部101に形成された貫通孔101cを貫通した状態で、前記連結部材33の係止溝33aに対して嵌合(ロック)可能とされている。そして、揺動レバー110は、付勢手段としてのスプリング112によって、係止部110aが係止溝33aに対して嵌合する方向に付勢されている。実施形態では、スプリング112は、板ばねによって構成されて、揺動レバー110と連結ブラケット100との間に介在されている。
【0060】
揺動レバー110は、手動操作される操作部110bを有する。この操作部110bを
図12中時計回り方向に操作することにより、係止部110aの係止溝33aに対する嵌合が解除される(ロック解除)。
【0061】
なお、第1筒部101に形成された貫通孔101cは、実施形態では第1筒部101の軸方向全長に渡って延びるスリットの形態とされているが、これに限定されるものではない。具体的には、貫通孔101cは、その長手方向(連結部材33の軸方向)の少なくとも一端部が閉じた形状とすることもできる(両端部がそれぞれ閉じられた形状としてもよく、いずれか一方の端部のみが閉じられた形状でもよい)。
【0062】
連結ブラケット100における第1筒部101の内面には、係止段部からなる周方向に間隔をあけて第1段差部101aと第2段差部101bとが形成されている。第1段差部101aと第2段差部101bとのなす周方向角度は略90度とされている。
【0063】
連結部材33に形成されたストッパ部33bが、周方向において第1段差部101aと第2段差部101bとの間に位置されて、各段差部101a、101bに周方向から当接可能とされている。これにより、連結部材33つまり側方フレーム部30Rは、略90度の角度範囲でのみ回動可能とされている。また、連結部材33の外周面には、係止溝部33aに対して周方向略90度ずれた位置において、係止段部33cが形成されている。
【0064】
図12は、連結部材33の係止溝33aに対して、操作レバー110の係止部110aが嵌合されて、連結部材33の回動が規制されたロック状態を示す。このロック状態では、側方フレーム部30Rが
図10に示す使用位置とされる(
図1、
図4をも参照)。
【0065】
使用位置にあるロック状態の側方フレーム部30Rを、待避位置へと変更するには、揺動レバー110の操作部110bを操作して、その係止部110aを連結部材33の係止溝部33aから離脱させた後、アンロック状態の側方フレーム部30Rを待避位置に向けて回動させればよい。側方フレーム部30Rが待避位置にあるときの状態が
図11、
図13に示される(
図2、
図5をも参照)。
【0066】
特に
図13に示すように、側方フレーム部30Rが待避位置とされた状態では、係止段部33cが揺動レバー110の係止部110aをちょうど通り過ぎた状態とされる。すなわち、側方フレーム部30Rが待避位置にある状態では、係止段部33cが揺動レバー110の係止部110aに当接されて、側方フレーム部30Rが使用位置へ向けて回動されるのが規制される(待避位置でのロック)。側方フレーム部30Rを待避位置から使用位置へと回動させるには、揺動レバー110の操作部110bを操作して、その係止部110aを係止段部33cから離脱させた後、アンロック状態の側方フレーム部30Rを使用位置に向けて回動させればよい。
【0067】
左側の側方フレーム部30Lに対して左側の前方アーム部40Lを回動可能に保持する第2回動機構L2および第2ロック機構R2の構造は、前述した第1回動機構L1、第1ロック機構R1と同様に構成されている。すなわち、
図12、
図13に示す連結ブラケット100と同様に構成された連結ブラケット120が、側方フレーム部30Lを構成する第2前方延長部24に固定されている。また、連結ブラケット120に対して、前方アーム部40Lにおける延長部42(具体的には前方アーム部40Lに構成される連結部材33)が回動可能に保持される。延長部42つまり前方アーム部40Lは、前後方向に伸びる軸線を中心として、水平方向に伸びる使用位置(
図1に示す状態)と、使用位置から略90度上方に回動された待避位置(
図2に示す状態)との間でのみ回動可能とされる。連結ブラケット120には、
図12、
図13に示す揺動レバー110と同様に構成された揺動レバー130が揺動可能に保持されている。そして、実施形態では、揺動レバー130によって、前方アーム部40Lが使用位置および待避位置においてロックされるようになっている。
【0068】
以上のように構成された介助装置Kの使用例について説明する。まず、
図2、
図5に示すように、右側の側方フレーム部30Rが横開きされた待避位置とされ、また左側の前方アーム部40Lが上方へ回動された待避位置とされる。この状態では、着座式便器1の前方および右側方が大きく開放された開放空間となって、この開放空間を通して、被介助者Pが着座式便器1に接近、離間することが可能である。
【0069】
図5では、被介助者Pが、やや右斜め後方から着座式便器1に向けて移動してきた車椅子Vに乗っている状態が実線で示され、着座式便器1に着座した状態が二点鎖線で示される。車椅子Vに乗っている被介助者Pが着座式便器1に着座するには、介助者の助けをかりながら、車椅子Vの前方に立ち上がった後、お尻を略90度程度後方へ向けつつ、着座式便器1の右側方の開放空間を通して着座式便器1に着座されることになる。
【0070】
座式便器1の側方から着座式便器1へ接近、離間できるということは、車椅子Vと着座式便器1との間での被介助者Pに要求される姿勢変化(平面視で見たときに、被介助者Pの向きを変更するのに必要な角度変化)を小さくするという点で好ましいものとなる。
【0071】
被介助者Pが着座式便器1に着座した後に、側方フレーム部30Rが使用位置とされ、かつ前記前方アーム部40Lも使用位置とされた
図1、
図4の状態とされる。なお、側方フレーム部30Rを使用位置とするのに伴って、前方アーム部40Rも使用位置とされる。着座式便器1に着座された被介助者Pが上半身の姿勢保持をできない場合でも、左右の側方フレーム部30R、30Lによって上半身が支承されて、横倒れしてしまう事態が確実に防止される。また、左右の前方アーム部40R、40Lによって、上半身の前面部が支承されて、前倒れしてしまう事態も確実に防止される。
【0072】
揺動部材20の揺動角度、つまり左右の側方フレーム部30R、30Lの揺動角度を調整することにより、被介助者Pの好みの前かがみ状態が維持される。特に、前かがみ姿勢で被介助者Pの上半身を支承しておくことにより、大便を促す上で好ましいものとなり、また被介助者Pの上半身の背後に大きな空間が形成されるので、排便後の尻ふき等の後始末を行う作業が容易となる。
【0073】
被介助者Pが、着座式便器1に着座している状態から車椅子Vへ乗り移るには、側方フレーム部30R、前方アーム部40Lを待避位置として、前述したのとは逆の手順で行えばよい(被介助者Pは
図5の二点鎖線で示す状態から実線で示す状態へと移行される)。なお、前方アーム部40Rは、側方フレーム部30Rを待避位置とするのに伴って、被介助者Pの上半身の前面部から待避された待避位置とされる。
【0074】
介助装置Kは、前方からも着座式便器1へ接近、離間可能である。着座式便器1への接近、離間を側方から行うのか前方から行うのかを、被介助者Pの障害の内容や状態に応じて選択することができる。また、側方から接近、離間させる場合は、待避位置をとり得る側方フレーム部30Rが存在する着座式便器1の右方側に、トイレの出入り口がある場合に好ましいものとなる。
【0075】
図15~
図18は、本発明の第2の実施形態による介助装置K2を示すもので、前記実施形態と同一構成要素には同一符号を付してその重複した説明は省略する。なお、
図16、
図18では、後方フレーム部21に設けたクッション部材80の図示を略してある。
【0076】
本実施形態では、介助装置K2を、側方フレーム部30Rを上方へ回動させることにより待避位置とする上開き式としたものである。すなわち、側方フレーム部30Rから左側に向けて水平に伸ばした延長部35を、第1回動機構L1を介して後方フレーム部21に回動可能に保持させてある。
図15、
図16は、側方フレーム部30Rを使用位置とした状態が示される。なお、側方フレーム部30Rを使用位置とすることに伴って、前方アーム部40Rも使用位置とされる。また、
図15では前方アーム部40Lも使用位置とした状態が示される。
【0077】
図17、
図18は、側方フレーム部30Rを待避位置とした状態が示され、
図17では、前方アーム部40Lも待避位置とした状態が示される。なお、側方フレーム部30Rを待避位置とすることに伴って、前方アーム部40Rも待避位置とされる。第1回動機構L1には第1ロック機構R1が設けられている。実施形態では、第1ロック機構R1は、側方フレーム部30Rが待避位置にある場合にのみロックを行う。
【0078】
図19は、第1回動機構L1と第1ロック機構R1の変形例を示すものである。本例では、側方フレーム部30Rが待避位置にあるときには、側方フレーム部30Rの使用位置へ向けての回動がロックされないようにしたものである。具体的には、
図13の場合に比して、係止段部33cの位置を係止溝部33aに対して連結部材33の周方向により大きく離間させてある。これにより、係止段部33cは、側方フレーム部30Rが使用位置と待避位置との間で回動される際に、揺動レバー110の係止部110aに対してなんら作用しない設定とされている。
【0079】
図19の例では、側方フレーム部30Rは待避位置ではロックされないが、揺動レバー110の係止部110aの先端面が連結部材33の外周面に当接された状態とされて、スプリング112の付勢力と相俟って側方フレーム部30Rが安定して待避位置に保持される。そして、待避位置にある側方フレーム部30Rに対して、使用位置へ向けての適度な外力を付与することにより、揺動レバー110を操作することなく側方フレーム部30Rを使用位置とすることが容易である。
【0080】
第2回動機構L2、第2ロック機構R2も、第1回動機構L1、第2ロック機構R1と同様に構成することができる。この場合、前方アーム部40Lが使用位置のときにのみロックされて、待避位置ではロックされないような設定とすることができ、これとは逆に、前方アーム部40Lが待避位置のときにのみロックされて、使用位置ではロックされないような設定とすることもできる。
【0081】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば以下に記載のような場合をも含むものである。
【0082】
揺動部材20は、適宜の構造、形状を採択できる。特に、使用位置と待避位置とをとり得るようにされた側方フレーム部側の側方空間を避ける適宜の構造、形状であればよいい。
【0083】
前方アーム部40R、40Lを、左右一対の側方フレーム部30R、30Lのうちいずれか一方の側方フレーム部に対してのみ設けるようにしてもよい(この場合、実施形態で示すよりも前方アーム部を長くしておくのが好ましい)。
【0084】
左右の側方フレーム部30R、30L共に、使用位置と待避位置とをとり得るようにしてもよい。例えば、
図15、
図17に示す右側の側方フレーム部30Rと前方アーム部40R部分の構造を、左側の側方フレーム部30Lと前方アーム部40Lについても同様に適用すればよい。
【0085】
第1回動機構により使用位置と待避位置とをとり得るようにされた側方フレーム部に対して、前方アーム部を第2回動機構により使用位置と待避位置との間で回動可能に保持させるようにしてもよい。
【0086】
揺動角度変更機構60は、左右両方の側方フレーム部30R、30L側に設けてもよく、さらには左右中央部にのみ設けるようにしてもよい。揺動角度変更機構60を左右中央部に設ける場合は、揺動角度変更機構60は、揺動部材20(例えば後方フレーム部21)とベース部材10(例えば横棒状部材12)との間でロックが行われるようにすればよい。揺動角度変更機構60、回動機構L1、L2、ロック機構R1、R2は、実施形態のものに限らず適宜の構造のものを採択することができる。特に、揺動角度変更機構60による揺動角度の変更を、実施形態では段階式に複数としたが、連続可変式に変更できるようにしてもよい。
【0087】
第1回動機構により使用位置と待避位置とをとり得るようにされた側方フレーム部は、第1ロック機構により使用位置と待避位置との両方でもロックされるようにしてもよい。また、第2回動機構により使用位置と待避位置とをとり得るようにされた前方アーム部は、第2ロック機構により使用位置と待避位置との両方でもロックされるようにしてもよい。さらに、第2回動機構により使用位置と待避位置とをとり得るようにされた前方アーム部は、第2ロック機構を設けずに使用位置と待避位置とのいずれにあってもロックされないようにしてもよい(例えば、摩擦力によって前方アーム部が待避位置に保持される形態)。
【0088】
側方フレーム部30R、30Lは、適宜の構造を採択することができ、例えば面を形成(面状に形成)するように構成することができる。面を形成するように構成する場合、板材のみによって構成することができ、また板材とパイプ材との組み合わせによって構成することもできる。そして、用いる板材としては、金属板やプラスチック板(特に繊維強化プラスチック板)を用いることができ、多孔板を用いることもできる。同様に、前方アーム部40R、40Lも、アーム状に限らず、側方フレーム部と同様に面状に形成することもできる。
【0089】
本発明が適用される座部を有する機器としては、着座式便器に限らず、例えば、休憩用の固定椅子や観賞位置にある固定椅子等、適宜のものを含むものである。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、側方フレーム部が上下方向に揺動される形式の介助装置として好適である。
【符号の説明】
【0091】
P:被介助者
K:介助装置(
図1~
図14)
K2:介助装置(
図15~
図18)
L1:第1回動機構(側方フレーム部用)
L2:第2回動機構(前方アーム部用)
R1:第1ロック機構(側方フレーム部用)
R2:第2ロック機構(前方アーム部用)
1:着座式便器
1a:座部
10:ベース部材
11:縦棒状部材
12:横棒状部材
13:載置板部
20:揺動部材
21:後方フレーム部
22:第1下方延長部
23:第1前方延長部
24:第2前方延長部
25:第2下方延長部
26:後方延長部
30R:側方フレーム部(一方の側方フレーム部)
30L:側方フレーム部(他方の側方フレーム部)
40R:前方アーム部(一方の側方フレーム部用)
40L:前方アーム部(他方の側方フレーム部用)
33:連結部材(一方の側方フレーム部)
33a:係止溝
33b:ストッパ部
51R:51L:連結ブラケット
52R、52L:連結部(揺動中心)
53:上ストッパ部
54:下ストッパ部
60:揺動角度変更機構
61:係止部材
63:係止凹部
64:係止凸部
65:係合部材
67:リターンスプリング
68:操作部材
71:連結ワイヤ
100:連結ブラケット(第1回動機構用)
101:第1筒部(回動保持部)
101a:第1段差部(係止段部)
101b:第2段差部(係止段部)
101c:貫通孔
102:第2筒部(固定部)
110:揺動レバー(第1ロック機構用)
110a:係止部
110b:操作部
111:ピン部材(操作レバーの揺動中心)
112:リターンスプリング
120:連結ブラケット(第2回動機構用)
130:揺動レバー(第2ロック機構用)
【手続補正書】
【提出日】2022-08-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介助者が着座される座部の後方に配設されたベース部材と、
前記ベース部材に対して揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結され、座部に着座された被介助者の上半身を左右から挟むように位置されて、該被介助者の左右の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部と、
前記側方フレーム部に設けられ、座部に着座された被介助者の上半身の前面部を水平方向に伸びた状態で受け止めて被介助者の前倒れを防止する前方アーム部と、
を備えており、
前記左右の側方フレーム部のうち少なくとも一方の側方フレーム部が、前記ベース部材に対して前記揺動角度変更機構に加えて第1回動機構を介して連結されて、該第1回動機構での回動に応じて、座部に着座している被介助者の側方に位置する使用位置と該被介助者の側方から待避された待避位置と、を選択的にとり得るようにされ、
座部の後方を通って前記左右の側方フレーム部同士を連結する後方フレーム部を構成すると共に、座部の左右両側において前記ベース部材に対して上下方向に揺動可能に連結されて、前記揺動角度変更機構によって上下方向の揺動位置を変更可能とされた揺動部材を有し、
前記一方の側方フレーム部が、前記第1回動機構を介して前記揺動部材に保持され、
前記揺動部材は、左右方向に伸びる前記後方フレーム部のうち前記一方の側方フレーム部側となる一端部から、下方へ伸びる第1下方延長部と、該第1下方延長部の下端部から前方へ伸びる第1前方延長部とを有して、該第1前方延長部が上下方向に揺動可能に前記ベース部材に対して連結され、
前記揺動部材は、前記後方フレーム部の他端部から、前方へ伸びる第2前方延長部と、該第2前方延長部の前端部から下方へ伸びる第2下方延長部と、該第2下方延長部の下端部から後方へ伸びる後方延長部と、を有して、該後方延長部が前記ベース部材に対して揺動可能に連結されている、
ことを特徴とする介助装置。
【請求項2】
前記左右の側方フレーム部のうち他方の側方フレーム部が、前記揺動部材の一部によって構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の介助装置。
【請求項3】
被介助者が着座される座部の後方に配設されたベース部材と、
前記ベース部材に対して揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結され、座部に着座された被介助者の上半身を左右から挟むように位置されて、該被介助者の左右の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部と、
前記側方フレーム部に設けられ、座部に着座された被介助者の上半身の前面部を水平方向に伸びた状態で受け止めて被介助者の前倒れを防止する前方アーム部と、
を備えており、
前記左右の側方フレーム部のうち一方の側方フレーム部が、前記ベース部材に対して前記揺動角度変更機構に加えて第1回動機構を介して連結されて、該第1回動機構での回動に応じて、座部に着座している被介助者の側方に位置する使用位置と該被介助者の側方から待避された待避位置と、を選択的にとり得るようにされ、
前記揺動角度変更機構が、前記左右の側方フレーム部のうち他方の側方フレーム部側においてのみ設けられている、
ことを特徴とする介助装置。
【請求項4】
被介助者が着座される座部の後方に配設されたベース部材と、
前記ベース部材に対して揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結され、座部に着座された被介助者の上半身を左右から挟むように位置されて、該被介助者の左右の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部と、
前記側方フレーム部に設けられ、座部に着座された被介助者の上半身の前面部を水平方向に伸びた状態で受け止めて被介助者の前倒れを防止する前方アーム部と、
を備えており、
前記左右の側方フレーム部のうち一方の側方フレーム部が、前記ベース部材に対して前記揺動角度変更機構に加えて第1回動機構を介して連結されて、該第1回動機構での回動に応じて、座部に着座している被介助者の側方に位置する使用位置と該被介助者の側方から待避された待避位置と、を選択的にとり得るようにされ、
前記左右の側方フレーム部のうち他方の側方フレーム部が、常に座部の側方に位置された使用位置とされ、
前記前方アーム部が、前記左右の側方フレーム部に対してそれぞれ設けられ、
前記一方の側方フレーム部に保持された前記前方アーム部は、該一方の側方フレーム部と一体とされ、
前記他方の側方フレーム部に保持された前記前方アーム部は、第2回動機構を介して、該第2回動機構での回動に応じて、水平方向に伸びる使用位置と座部に着座された被介助者の前面部から待避された待避位置とを選択的にとり得るようにされている、
ことを特徴とする介助装置。
【請求項5】
前記使用位置と前記待避位置とを選択的にとり得るようにされた前記側方フレーム部の回動を、該使用位置と該待避位置の少なくとも一方でロックするロック機構を有している、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の介助装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、介助装置は、
被介助者が着座される座部の後方に配設されたベース部材と、
前記ベース部材に対して揺動角度変更機構を介して上下方向の揺動位置を変更可能に連結され、座部に着座された被介助者の上半身を左右から挟むように位置されて、該被介助者の左右の横倒れを防止する左右一対の側方フレーム部と、
前記側方フレーム部に設けられ、座部に着座された被介助者の上半身の前面部を水平方向に伸びた状態で受け止めて被介助者の前倒れを防止する前方アーム部と、
を備えており、
前記左右の側方フレーム部のうち少なくとも一方の側方フレーム部が、前記ベース部材に対して前記揺動角度変更機構に加えて第1回動機構を介して連結されて、該第1回動機構での回動に応じて、座部に着座している被介助者の側方に位置する使用位置と該被介助者の側方から待避された待避位置と、を選択的にとり得るようにされている、
ようにしてある。