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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190783
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】成膜装置および成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099222
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】難波 輝晃
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030KA00
(57)【要約】
【課題】互いに区切られた第1材料室および第2材料室に対して互いに異なる材料を供給することにより、各材料室において別の材料や材料同士の反応物による汚染が減少し、メンテナンスの手間を削減することができる成膜装置および成膜方法を提供すること。
【解決手段】第1材料と第2材料の分子反応により、対象物に対する成膜を行う成膜装置であって、前記第1材料が供給および排気される第1材料室と、前記第2材料が供給および排気される第2材料室と、前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、をそれぞれ区切る仕切弁と、前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、でそれぞれ前記対象物を搬送する搬送器と、を備えることを特徴とする成膜装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1材料と第2材料の分子反応により、対象物に対する成膜を行う成膜装置であって、
前記第1材料が供給および排気される第1材料室と、
前記第2材料が供給および排気される第2材料室と、
前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、をそれぞれ区切る仕切弁と、
前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、でそれぞれ前記対象物を搬送する搬送器と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第1材料室および前記第2材料室は、鉛直方向に並んでいる請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記搬送器は、前記対象物が載置されるステージを昇降させる機能を有し、
前記ステージは、前記対象物を前記第1材料室内に配置する第1位置と、前記対象物を前記第2材料室内に配置する第2位置と、の間で昇降し、
前記ステージが前記第1位置にあるとき、前記ステージは、前記第1材料室を囲む壁の一部を構成する請求項2に記載の成膜装置。
【請求項4】
可動のアーム部および前記アーム部を駆動する駆動部を有する対象物保持器を備え、
前記アーム部は、前記対象物を保持する保持姿勢と、前記対象物を保持しない非保持姿勢と、の間で姿勢が変化する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記仕切弁は、
前記第1材料室の内部と外部との間を区切る第1ゲートバルブと、
前記第2材料室の内部と外部との間を区切る第2ゲートバルブと、
を備える請求項1に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記搬送器は、
前記第1材料室の内部と外部との間で前記対象物を搬送する第1アクチュエーターと、
前記第2材料室の内部と外部との間で前記対象物を搬送する第2アクチュエーターと、
を備える請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第1ゲートバルブを介して前記第1材料室と隣り合い、かつ、前記第2ゲートバルブを介して前記第2材料室と隣り合う、ロードロック室を備える請求項5または6に記載の成膜装置。
【請求項8】
第1材料が供給および排気される第1材料室と、
第2材料が供給および排気される第2材料室と、
前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、をそれぞれ区切る仕切弁と、
を備える成膜装置を用い、
前記第1材料と前記第2材料の分子反応により、対象物に対する成膜を行う成膜方法であって、
前記第1材料室内で、前記対象物に前記第1材料を付着させる工程と、
前記第2材料室内で、前記対象物に付着している前記第1材料に前記第2材料を反応させ、前記成膜を行う工程と、
を有することを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
前記仕切弁は、
前記第1材料室の内部と外部との間を区切る第1ゲートバルブと、
前記第2材料室の内部と外部との間を区切る第2ゲートバルブと、
を備え、
前記成膜装置は、前記第1ゲートバルブを介して前記第1材料室と隣り合い、かつ、前記第2ゲートバルブを介して前記第2材料室と隣り合う、ロードロック室を備え、
前記第1ゲートバルブを開けるとき、前記ロードロック室内の圧力が前記第1材料室内の圧力よりも低くなるように調整し、
前記第2ゲートバルブを開けるとき、前記ロードロック室内の圧力が前記第2材料室内の圧力よりも低くなるように調整する請求項8に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学気相成膜法は、成膜対象物が置かれている反応容器に原料となるガスを導入し、エネルギーを加えて原料ガスを分解、反応させることにより、成膜対象物の表面上に膜を形成する方法である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウエハーを収容する処理容器を有する真空処理モジュールと、搬送口を介して処理容器に接続された搬送室を有する真空搬送モジュールと、搬送口を開閉するゲートバルブと、を備える真空処理装置が開示されている。
【0004】
真空処理モジュールには、処理容器内にシャワー状にガスを供給する第1のガス供給部と、処理容器内を真空排気する第1の排気口が設けられている。真空搬送モジュールには、搬送室内に不活性ガスを供給するための第2のガス供給部と、搬送室内を真空排気する第2の排気口と、が設けられている。
【0005】
第1のガス供給部からは、成膜用のガスとして、TiClガス、Hガス等、複数種のガスが供給される。TiClガスとHガスとが反応することで、ウエハーの表面にTi膜が形成される一方、処理容器の内壁には反応生成物が堆積する。内壁に堆積した反応生成物が厚くなると、剥離し、ウエハーを汚染するパーティクルとなる。
【0006】
特許文献1に開示されている真空処理装置では、ゲートバルブを開くときの搬送室内と処理容器内の圧力差を最適化するように構成されている。これにより、搬送室から処理容器に流れ込むガスの流量が抑えられ、ガスの流れ込みに伴うパーティクルの巻き上げが抑制される。その結果、巻き上げられたパーティクルによるウエハーの汚染が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-128796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の真空処理装置では、パーティクルの発生を抑制しているわけではない。このため、例えばウエハーの搬送に伴って発生する気流により、パーティクルが巻き上げられることがある。したがって、パーティクルの発生自体を抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の適用例に係る成膜装置は、
第1材料と第2材料の分子反応により、対象物に対する成膜を行う成膜装置であって、
前記第1材料が供給および排気される第1材料室と、
前記第2材料が供給および排気される第2材料室と、
前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、をそれぞれ区切る仕切弁と、
前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、でそれぞれ前記対象物を搬送する搬送器と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の適用例に係る成膜方法は、
第1材料が供給および排気される第1材料室と、
第2材料が供給および排気される第2材料室と、
前記第1材料室の内部と外部との間、および、前記第2材料室の内部と外部との間、をそれぞれ区切る仕切弁と、
を備える成膜装置を用い、
前記第1材料と前記第2材料の分子反応により、対象物に対する成膜を行う成膜方法であって、
前記第1材料室内で、前記対象物に前記第1材料を付着させる工程と、
前記第2材料室内で、前記対象物に付着している前記第1材料に前記第2材料を反応させ、前記成膜を行う工程と、
を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る成膜方法を説明するためのフローチャートである。
図4】第2実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図6】第2実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図7】第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図8】第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図9】第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図10】第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図11】第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図12】第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図13】第3実施形態に係る成膜方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の成膜装置および成膜方法の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係る成膜装置および成膜方法について説明する。
【0014】
1.1.成膜装置
図1および図2は、第1実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定しており、各軸を矢印で示している。また、Z軸は鉛直軸であり、X-Y平面は水平面である。なお、各軸の矢印の基端側を各軸のマイナス側といい、先端側を各軸のプラス側という。特に、Z軸プラス側を「上」、Z軸マイナス側を「下」という。
【0015】
図1および図2に示す成膜装置1は、化学気相成膜法の一種である原子層堆積法(ALD : Atomic Layer Deposition)により、対象物9の表面に被膜を形成する装置である。原子層堆積法では、対象物9の表面に原料(第1材料)および酸化剤(第2材料)を順次付着させ、これらの分子同士を反応させることにより、被膜を形成する。対象物9は、特に限定されず、任意の製品、部品、材料等である。
【0016】
成膜装置1は、第1材料室2と、第2材料室3と、原料導入部22と、第1排気部24と、酸化剤導入部32と、第2排気部34と、仕切弁4と、搬送器5と、を備える。
【0017】
第1材料室2は、原料ガスG1が導入される容器である。第1材料室2は、上部チャンバー201と、蓋部202と、を備える。そして、第1材料室2の下部は、仕切弁4によって開閉可能になっている。第1材料室2の各部同士は、Oリング等のシール部材を介して接続されている。
【0018】
第2材料室3は、酸化剤ガスG2が導入される容器である。第2材料室3は、下部チャンバー301と、ベローズ303と、を備える。第2材料室3の上部は、仕切弁4によって開閉可能になっており、第2材料室3の下部は、搬送器5によって閉じられている。ベローズ303は、搬送器5の動作に応じて、上下方向に伸縮する。第2材料室3の各部同士は、Oリング等のシール部材を介して接続されている。
【0019】
原料導入部22は、第1材料室2内に原料ガスG1を供給する。図1および図2に示す原料導入部22は、原料ガス貯留部222と、バルブ224と、配管226と、を備える。
【0020】
原料ガス貯留部222は、原料ガスG1を貯留する。配管226は、原料ガス貯留部222と第1材料室2とを接続する。バルブ224は、配管226の途中に設けられ、配管226を流れる原料ガスG1の流量を調整する。
【0021】
原料ガスG1としては、例えば、被膜を構成する材料の前駆体(プリカーサー)を含むガスが挙げられる。具体的には、例えばケイ素系の被膜を形成する場合には、原料ガスG1として、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミンのような第二級アミン、トリスジメチルアミノシラン、ビスジエチルアミノシラン、ビスターシャリブチルアミノシランのような、第二級アミンとトリハロシランとの反応物等が挙げられる。なお、原料ガスG1は、これらの原料とともに、キャリアーガスを含んでいてもよい。
【0022】
酸化剤導入部32は、第2材料室3内に酸化剤ガスG2を供給する。図1および図2に示す酸化剤導入部32は、酸化剤ガス貯留部322と、バルブ324と、配管326と、を備える。
【0023】
酸化剤ガス貯留部322は、酸化剤ガスG2を貯留する。配管326は、酸化剤ガス貯留部322と第2材料室3とを接続する。バルブ324は、配管326の途中に設けられ、配管326を流れる酸化剤ガスG2の流量を調整する。
【0024】
酸化剤ガスG2としては、例えば、オゾン、プラズマ酸素、水蒸気等を含むガスが挙げられる。なお、酸化剤ガスG2は、酸化剤とともに、キャリアーガスを含んでいてもよい。
【0025】
第1排気部24は、ポンプ242と、バルブ244と、配管246と、を備える。第2排気部34は、ポンプ342と、バルブ344と、配管346と、を備える。
【0026】
ポンプ242、342としては、例えば、ドライ真空ポンプ、油回転真空ポンプ、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースターポンプ等が挙げられる。配管246は、ポンプ242と第1材料室2とを接続する。バルブ244は、配管246の途中に設けられ、ポンプ242による減圧速度、到達圧力等を調整する。配管346は、ポンプ342と第2材料室3とを接続する。バルブ344は、配管346の途中に設けられ、ポンプ342による減圧速度、到達圧力等を調整する。
【0027】
仕切弁4は、ゲートバルブ40を有する。ゲートバルブ40は、真空用ゲートバルブであり、外部から開閉操作が可能になっている。ゲートバルブ40を開けると、第1材料室2の内部と第2材料室3の内部とが接続される。ゲートバルブ40を閉めると、第1材料室2の内部と第2材料室3の内部とが分離される。
【0028】
搬送器5は、底部501と、支柱502と、ステージ503と、を備える。底部501は、ベローズ303と接続され、第2材料室3の下部を塞いでいる。支柱502は、底部501から上方に立設されており、その上端にステージ503が接続されている。ステージ503は、対象物9を載置する載置台である。
【0029】
搬送器5は、図示しない駆動部から供給される駆動力によって、下部チャンバー301に対して上下方向に移動する。これにより、ステージ503は、第2材料室3の内部において上下方向に移動する。
【0030】
搬送器5は、ステージ503を最下端に位置させることにより、図1に示すように、ステージ503に載置されている対象物9を第2材料室3の内部に配置することができる。また、ゲートバルブ40が開いているとき、搬送器5は、図2に示すように、ステージ503に載置されている対象物9を第1材料室2に進入させることができる。このとき、図1に示すステージ503を最上端に位置させると、ステージ503は、シール部材504を介して、下部チャンバー301の下面を封止する。これにより、ステージ503が第1材料室2の下部を構成し、対象物9は第1材料室2の内部に封入される。
【0031】
成膜装置1は、上記の構成の他、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガスのような不活性ガス(パージガス)を導入するパージガス導入部、第1材料室2や第2材料室3を加熱する加熱部、対象物9にプラズマを照射するプラズマ発生部、第1材料室2または第2材料室3を外部から開閉する開閉扉、各部の動作を協調して制御する制御部等を備えていてもよい。
【0032】
なお、図1および図2に示す成膜装置1は、前述したように、化学気相成膜法の一種である原子層堆積法により被膜を形成する装置である。本発明の成膜装置は、原子層堆積法以外の化学気相成膜法による被膜の形成にも対応可能である。具体的には、プラズマCVD法、熱CVD法、ミストCVD法のような各種CVD(chemical vapor deposition)法等が挙げられる。原子層堆積法は、例えば原料ガスG1と酸化剤ガスG2の2種類またはそれ以上の種類のガスの導入および排気を交互に繰り返すことによって、対象物9の表面に吸着した原料分子を反応させ、膜化する方法である。この方法では、形成する被膜の膜厚を高精度に制御することができる。このため、特に薄い被膜をムラなく形成することができる。また、原子層堆積法では、細かな隙間にも原料ガスG1や酸化剤ガスG2が回り込んで成膜するため、成膜されない部分が発生しにくく、均一な膜厚の被膜を形成することができる。
【0033】
1.2.成膜方法
図3は、第1実施形態に係る成膜方法を説明するためのフローチャートである。なお、図3に示す実施形態は、一例であり、各工程の順序は入れ替わっていてもよいし、任意の工程が追加されていてもよい。
【0034】
図3に示す工程S102では、ゲートバルブ40を開ける。なお、この操作の前に、ステージ503上には被膜を形成する対象物9を載置しておく。工程S104では、搬送器5のステージ503を下部チャンバー301に対して相対的に上昇させ、対象物9を第1材料室2内に配置する。工程S106では、第1材料室2内を排気する。これにより、第1材料室2内を減圧状態とする。減圧状態とは、例えば、100Pa以下の圧力のことをいう。工程S108では、第1材料室2内に原料ガスG1を供給する。供給された原料ガスG1は、対象物9の表面に付着する。工程S110では、第1材料室2内を排気する。これにより、付着に寄与しなかった余分な原料ガスG1が排出される。その後、必要に応じて、第1材料室2内にパージガスを供給、排気する操作を行うようにしてもよい。
【0035】
工程S116では、搬送器5のステージ503を下部チャンバー301に対して相対的に降下させ、対象物9を第2材料室3内に配置する。工程S118では、ゲートバルブ40を閉める。工程S120では、第2材料室3内を排気する。これにより、第2材料室3内を減圧状態とする。工程S122では、第2材料室3内に酸化剤ガスG2を供給する。供給された酸化剤ガスG2は、対象物9の表面に付着している原料ガスG1の分子と反応し、被膜を形成する。工程S124では、第2材料室3内を排気する。これにより、反応に寄与しなかった余分な酸化剤ガスG2が排出される。その後、必要に応じて、第2材料室3内にパージガスを供給、排気する操作を行うようにしてもよい。
【0036】
工程S126では、成膜を終了するか否かを判断する。被膜の膜厚が十分である場合には、工程S126でYESを選択して工程S128に移行し、対象物9を取り出して成膜を終了する。被膜の膜厚が不足している場合には、工程S126でNOを選択し、成膜を継続するために再び工程S102に戻る。
【0037】
形成される被膜の構成材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化チタンのような酸化物、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化タンタルのような窒化物等が挙げられる。
【0038】
被膜の膜厚は、特に限定されないが、一例として、1nm以上500nm以下であるのが好ましく、2nm以上300nm以下であるのがより好ましく、4nm以上200nm以下であるのがさらに好ましい。このような膜厚であれば、比較的短時間で均一かつ緻密に形成することができる。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る成膜方法は、原料ガスG1(第1材料)が供給および排気される第1材料室2と、酸化剤ガスG2(第2材料)が供給および排気される第2材料室3と、第1材料室2の内部と外部との間、および、第2材料室3の内部と外部との間を、それぞれ区切る仕切弁4と、を備える成膜装置を用い、原料ガスG1と酸化剤ガスG2の分子反応により、対象物9に対する成膜を行う方法である。この成膜方法は、少なくとも、工程S108と、工程S122と、を有する。工程S108では、第1材料室2内で、対象物9に原料ガスG1を付着させる。工程S122では、第2材料室3内で、対象物9に付着している原料ガスG1に酸化剤ガスG2を反応させ、成膜を行う。
【0040】
このような構成によれば、互いに区切られた第1材料室2および第2材料室3に対して互いに異なる材料を供給するため、材料室の内壁において原料ガスG1と酸化剤ガスG2が反応する機会を減少させることができる。このため、第1材料室2や第2材料室3の内壁に、反応物による被膜が形成されてしまうのを抑制することができ、汚染の原因となるパーティクルの発生を抑制することができる。また、内壁に成膜された被膜を除去するメンテナンスの手間が減少するので、成膜効率を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る成膜装置1は、原料ガスG1(第1材料)と酸化剤ガスG2(第2材料)の分子反応により、対象物9に対する成膜を行う装置である。成膜装置1は、第1材料室2と、第2材料室3と、仕切弁4と、搬送器5と、を備える。第1材料室2は、原料ガスG1が供給および排気される。第2材料室3は、酸化剤ガスG2が供給および排気される。仕切弁4は、第1材料室2の内部と外部との間、および、第2材料室3の内部と外部との間、をそれぞれ区切る。搬送器5は、第1材料室2の内部と外部との間、および、第2材料室3の内部と外部との間、でそれぞれ対象物9を搬送する。
【0042】
このような構成によれば、仕切弁4によって互いに区切られた第1材料室2および第2材料室3に対して原料ガスG1および酸化剤ガスG2を供給し、そのタイミングに合わせて、搬送器5により、対象物9を第1材料室2および第2材料室3に搬送することができる。これにより、第1材料室2の内壁には酸化剤ガスG2が付着しにくくなり、第2材料室3の内壁には原料ガスG1が付着しにくくなる。その結果、内壁において原料ガスG1と酸化剤ガスG2が反応する機会を減少させることができる。このため、第1材料室2や第2材料室3の内壁に、反応物による被膜が形成されてしまうのを抑制することができ、汚染の原因となるパーティクルの発生を抑制することができる。また、内壁に成膜された被膜を除去するメンテナンスの手間が減少するので、成膜装置1は、ランニングコストの低減が図られたものとなる。
【0043】
さらに、図1および図2に示す成膜装置1では、第1材料室2および第2材料室3が鉛直方向に並んでいる。このような構成によれば、成膜装置1の占有面積を小さくすることができるので、成膜装置1の省スペース化を図ることができる。
【0044】
また、図1および図2に示す成膜装置1では、搬送器5が、対象物9が載置されるステージ503を昇降させる機能を有する。ステージ503は、対象物9を第1材料室2内に配置する最上端(第1位置)と、対象物9を第2材料室3内に配置する最下端(第2位置)と、の間で昇降する。ステージ503が最上端にあるとき、ステージ503は、第1材料室2を囲む壁の一部(第1材料室2の下部)を構成する。
【0045】
このような構成によれば、ステージ503が対象物9を載置する機能と、第1材料室2を構成する機能と、を併せ持つ。このため、装置構成を簡単にすることができ、対象物9の搬送手順も簡単である。これにより、成膜装置1の製造コストおよびランニングコストの低減を図ることができる。
【0046】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る成膜装置について説明する。
図4ないし図6は、第2実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
【0047】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、各図において、前記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0048】
図4ないし図6に示す成膜装置1Aは、対象物保持器6を備える以外、図1および図2に示す成膜装置1と同様である。
【0049】
対象物保持器6は、可動のアーム部62、および、アーム部62を駆動する駆動部64を有する。アーム部62は、後述するように、対象物9を保持する保持姿勢と、対象物9を保持しない非保持姿勢と、の間で姿勢が変化する。図6に示すアーム部62は、X軸に沿って第1材料室2の中心に向かって突出する。そして、前述した保持姿勢とは、対象物9を保持し得るアーム部62の突出長さを指し、非保持姿勢とは、対象物9に届かないアーム部62の突出長さを指す。
【0050】
このような構成によれば、アーム部62を保持姿勢にしたとき、対象物9をステージ503に載置するのではなく、アーム部62に保持させることができる。このため、第1実施形態とは異なり、ゲートバルブ40を閉めた状態で第1材料室2に原料ガスG1を供給することができる。これにより、ステージ503に原料ガスG1が付着しにくくなり、ステージ503に被膜が形成されるのを抑制することができる。その結果、汚染の原因となるパーティクルの発生をより少なく抑えることができる。
【0051】
図4は、搬送器5のステージ503を下部チャンバー301に対して相対的に降下させ、対象物9を第2材料室3内に配置した状態を示す。図5は、ゲートバルブ40を開けて、搬送器5のステージ503を下部チャンバー301に対して相対的に上昇させ、対象物9を第1材料室2内に配置した状態を示す。図5では、アーム部62が非保持姿勢にある。このため、非保持姿勢にあるアーム部62は、ステージ503に干渉しないので、対象物9の搬送を妨げない。図5では、対象物9の鉛直方向の位置を、アーム部62の鉛直方向の位置に合わせてある。この状態で、図6に示すように、アーム部62を保持姿勢に変化させる。これにより、アーム部62は、対象物9とステージ503との間に挿入される。その結果、対象物9は、ステージ503によらず、アーム部62によって保持される。このようにして対象物9を対象物保持器6に保持させた後、ステージ503を降下させ、ゲートバルブ40を閉める。これにより、図6に示す状態に移行する。
【0052】
図6に示す状態であれば、ゲートバルブ40を閉めた状態で原料ガスG1の供給が可能になる。これにより、前述したように、ステージ503に原料ガスG1が付着するのを抑制することができる。その結果、パーティクルの発生が特に抑制され、成膜装置1Aのランニングコストのさらなる低減を図ることができる。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る成膜装置および成膜方法について説明する。
【0054】
図7ないし図12は、第3実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。なお、図7と、図9ないし図12は、X-Y面による断面図であり、図8は、X-Z面による断面図である。
【0055】
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、各図において、前記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0056】
3.1.成膜装置
図7に示す成膜装置1Bは、第1材料室2、第2材料室3等の並び方が異なる以外、図1および図2に示す成膜装置1と同様である。
【0057】
成膜装置1Bは、第1材料室2と、第2材料室3と、第3材料室7と、ロードロック室8と、仕切弁4と、搬送器5と、を備える。なお、成膜装置1Bは、この他に、成膜装置1と同様の原料導入部、酸化剤導入部、排気部等を備えるが、各図ではこれらの図示を省略している。
【0058】
図7に示すように、第2材料室3、ロードロック室8および第1材料室2は、X軸マイナス側からX軸プラス側に向かってこの順で並んでいる。また、ロードロック室8および第3材料室7は、Y軸プラス側からY軸マイナス側に向かってこの順で並んでいる。
【0059】
図7または図8に示す第1材料室2は、箱状をなす第1チャンバー205と、載置台206と、を備える。
【0060】
図7または図8に示す第2材料室3は、箱状をなす第2チャンバー305と、載置台306と、を備える。
【0061】
図7に示す第3材料室7は、箱状をなす図示しない第3チャンバーと、図示しない載置台と、を備える。第3材料室7内には、第2材料室3内と同様、酸化剤ガスが供給される。このため、第3材料室7には、図示しない酸化剤導入部および排気部が接続されている。
【0062】
図7または図8に示すロードロック室8は、箱状をなすロードロックチャンバー805と、載置台806と、を備える。また、ロードロック室8は、図示しない開閉扉を備える。この開閉扉を介して外部からロードロック室8内に対象物9を持ち込んだり、ロードロック室8内の対象物9を持ち出したりすることができる。さらに、ロードロック室8には、図示しない排気部が接続されている。
【0063】
図7に示す仕切弁4は、第1ゲートバルブ41と、第2ゲートバルブ42と、第3ゲートバルブ43と、を備える。これらは、いずれも真空用ゲートバルブであり、外部から開閉操作が可能になっている。
【0064】
第1ゲートバルブ41は、ロードロック室8と第1材料室2との間に設けられる。第1ゲートバルブ41を開けると、ロードロック室8の内部と第1材料室2の内部とが接続される。
【0065】
第2ゲートバルブ42は、ロードロック室8と第2材料室3との間に設けられる。第2ゲートバルブ42を開けると、ロードロック室8の内部と第2材料室3の内部とが接続される。
【0066】
第3ゲートバルブ43は、ロードロック室8と第3材料室7との間に設けられる。第3ゲートバルブ43を開けると、ロードロック室8の内部と第3材料室7の内部とが接続される。
【0067】
図7に示す搬送器5は、第1アクチュエーター51と、第2アクチュエーター52と、第3アクチュエーター53と、を備える。これらは、いずれも減圧状態を損なうことなく、対象物9を搬送する。
【0068】
第1アクチュエーター51は、図7に示すように、チャンバー511と、駆動部512と、ベローズ513と、ロッド514と、仮受部515と、駆動部516と、ベローズ517と、ロッド518と、を備える。
【0069】
第1アクチュエーター51は、駆動部512により、ロッド514をX軸マイナス側に繰り出したり、X軸プラス側に引き戻したりする。そして、第1アクチュエーター51は、ロッド514の先端に設けられた仮受部515に対象物9を載せ、その状態で、対象物9を搬送する。また、第1アクチュエーター51は、駆動部516により、ロッド518をZ軸プラス側に繰り出したり、Z軸マイナス側に引き戻したりする。ロッド518を繰り出したときには、ロッド518でロッド514をZ軸プラス側に押し上げる。これにより、仮受部515もZ軸プラス側に押し上げることができる。
【0070】
第2アクチュエーター52は、図7に示すように、チャンバー521と、駆動部522と、ベローズ523と、ロッド524と、仮受部525と、駆動部526と、ベローズ527と、ロッド528と、を備える。
【0071】
第2アクチュエーター52は、駆動部522により、ロッド524をX軸プラス側に繰り出したり、X軸マイナス側に引き戻したりする。そして、第2アクチュエーター52は、ロッド524の先端に設けられた仮受部525に対象物9を載せ、その状態で、対象物9を搬送する。また、第2アクチュエーター52は、駆動部526により、ロッド528をZ軸プラス側に繰り出したり、Z軸マイナス側に引き戻したりする。ロッド528を繰り出したときには、ロッド528でロッド524をZ軸プラス側に押し上げる。これにより、仮受部525もZ軸プラス側に押し上げることができる。
【0072】
第3アクチュエーター53は、図7に示すように、チャンバー531と、駆動部532と、ベローズ533と、ロッド534と、仮受部535と、を備える。また、第3アクチュエーター53は、図示しないが、駆動部526、ベローズ527およびロッド528と同様の部材を備える。第3アクチュエーター53の動作は、向きが異なる以外、第2アクチュエーター52と同様である。
【0073】
また、成膜装置1Bは、第4ゲートバルブ44、第5ゲートバルブ45および第6ゲートバルブ46を備える。
【0074】
第4ゲートバルブ44は、第1材料室2とチャンバー511との間に設けられる。第5ゲートバルブ45は、第2材料室3とチャンバー521との間に設けられる。第6ゲートバルブ46は、第3材料室7とチャンバー531との間に設けられる。
【0075】
成膜装置1Bは、第3材料室7を備えている。第3材料室7は、第2材料室3と同様の機能を有する。つまり、第3材料室7では、対象物9を酸化剤ガスに接触させる。したがって、第2材料室3と第3材料室7とで、同じ工程を並行して行うことができる。これにより、被膜の形成のスループットを上げることができる。なお、後述する成膜方法では、第3材料室7を用いた成膜については、第2材料室3を用いた成膜と同様であるため、その説明を省略する。
【0076】
3.2.成膜方法
図13は、第3実施形態に係る成膜方法を説明するためのフローチャートである。なお、図13に示す実施形態は、一例であり、各工程の順序は入れ替わっていてもよいし、任意の工程が追加されていてもよい。
【0077】
図13に示す工程S202では、第1ゲートバルブ41、第2ゲートバルブ42および第3ゲートバルブ43を閉める。工程S204では、図7および図8に示すように、ロードロック室8内の載置台806上に対象物9を配置する。工程S206では、ロードロック室8、第1材料室2および第2材料室3を排気する。これにより、ロードロック室8内、第1材料室2内および第2材料室3内を減圧状態とする。
【0078】
工程S208では、第1ゲートバルブ41を開ける。このとき、ロードロック室8内の圧力が第1材料室2内の圧力よりも低くなるように、各部の圧力を調整するのが好ましい。これにより、第1ゲートバルブ41を開けたとき、ロードロック室8内の汚染物質が第1材料室2内に流れ込みにくくなる。工程S210では、第1アクチュエーター51のロッド514を繰り出して、仮受部515をロードロック室8まで移動させる。そして、ロードロック室8に配置されている対象物9を仮受部515で受け取り、図9に示すように、第1材料室2内まで搬送する。そして、対象物9を図8に示す載置台206上に配置する。このとき、第1アクチュエーター51のロッド514は、チャンバー511から第4ゲートバルブ44を介して第1材料室2まで延在している。仮受部515による対象物9の受け取りや残置は、図8に示すロッド518によってロッド514を押し上げたり解除したりする操作で行うことができる。なお、チャンバー511内は、図示しない排気部によって排気されているので、操作に伴う脱ガスの影響を最小限に留めることができる。対象物9を第1材料室2に移動させた後、工程S212では、図10に示すように、第1ゲートバルブ41を閉める。工程S214では、第1材料室2内を排気する。工程S216では、第1材料室2内に原料ガスを供給する。工程S218では、第1材料室2内を排気する。
【0079】
工程S220では、第1ゲートバルブ41を開ける。このときも、工程S208と同様、ロードロック室8内の圧力が第1材料室2内の圧力よりも低くなるように、各部の圧力を調整するのが好ましい。工程S222では、第1アクチュエーター51により、対象物9をロードロック室8内に配置する。工程S224では、第1ゲートバルブ41を閉める。
【0080】
工程S226では、第2ゲートバルブ42を開ける。このとき、ロードロック室8内の圧力が第2材料室3内の圧力よりも低くなるように、各部の圧力を調整するのが好ましい。これにより、第2ゲートバルブ42を開けたとき、ロードロック室8内の汚染物質が第2材料室3内に流れ込みにくくなる。工程S228では、第2アクチュエーター52の仮受部525で対象物9を受け取り、図11に示すように、第2材料室3内まで搬送する。そして、対象物9を図8に示す載置台306上に配置する。このとき、第2アクチュエーター52のロッド524は、チャンバー521から第5ゲートバルブ45を介して第2材料室3まで延在している。仮受部525を対象物9の下に差し込んだ後、図8に示すロッド528でロッド524を押し上げることにより、仮受部525に対象物9を載せることができる。チャンバー521内は、図示しない排気部によって排気されている。工程S230では、図12に示すように、第2ゲートバルブ42を閉める。工程S232では、第2材料室3内を排気する。工程S234では、第2材料室3内に酸化剤ガスを供給する。供給された酸化剤ガスは、対象物9の表面に付着している原料ガスの分子と反応し、被膜を形成する。工程S236では、第2材料室3内を排気する。
【0081】
工程S238では、第2ゲートバルブ42を開ける。このときも、工程S226と同様、ロードロック室8内の圧力が第2材料室3内の圧力よりも低くなるように、各部の圧力を調整するのが好ましい。工程S240では、第2アクチュエーター52により、対象物9をロードロック室8内に配置する。工程S242では、第2ゲートバルブ42を閉める。
【0082】
工程S244では、成膜を終了するか否かを判断する。被膜の膜厚が十分である場合には、工程S244でYESを選択して工程S246に移行し、対象物9を取り出して成膜を終了する。被膜の膜厚が不足している場合には、工程S244でNOを選択し、成膜を継続するために再び工程S208に戻る。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る成膜装置1Bは、第1ゲートバルブ41を介して第1材料室2と隣り合い、かつ、第2ゲートバルブ42を介して第2材料室3と隣り合う、ロードロック室8を備える。
【0084】
このような構成によれば、第1材料室2や第2材料室3から独立したロードロック室8において、内部へのアクセスが可能になる。これにより、第1材料室2や第2材料室3を外気に曝すことなく、対象物9の搬入や搬出を行うことができる。その結果、第1材料室2や第2材料室3が外気に汚染されるのを抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態に係る成膜装置1Bでは、仕切弁4が、第1ゲートバルブ41と、第2ゲートバルブ42と、を有する。第1ゲートバルブ41は、第1材料室2の内部と外部との間、具体的には、第1材料室2内とロードロック室8内との間を区切る。第2ゲートバルブ42は、第2材料室3の内部と外部との間、具体的には、第2材料室3内とロードロック室8内との間を区切る。
【0086】
このような仕切弁4を設けることにより、第1材料室2に供給される原料ガスがロードロック室8内に流れ込んだり、第2材料室3に供給される酸化剤ガスがロードロック室8内に流れ込んだりするのを防止することができる。これにより、ロードロック室8の内壁に反応物による被膜が形成されてしまうのを抑制することができる。また、成膜装置1Bは、第1材料室2と第2材料室3との間にロードロック室8を介在させているため、各材料室の内壁において原料ガスと酸化剤ガスが反応する機会をより減少させることができる。これにより、汚染の原因となるパーティクルの発生をさらに抑制することができ、メンテナンスの手間をさらに減少させることができる。
【0087】
さらに、本実施形態に係る成膜装置1Bでは、搬送器5が、第1アクチュエーター51と、第2アクチュエーター52と、を有する。第1アクチュエーター51は、第1材料室2の内部と外部との間、具体的には、第1材料室2内とロードロック室8内との間で、対象物9を搬送する。第2アクチュエーター52は、第2材料室3の内部と外部との間、具体的には、第2材料室3内とロードロック室8内との間で、対象物9を搬送する。
【0088】
このような搬送器5を設けることにより、対象物9の搬送の過程で、第1材料室2内と第2材料室3内とが連通することが防止される。つまり、第1材料室2の内外で搬送を担う第1アクチュエーター51と、第2材料室3の内外で搬送を担う第2アクチュエーター52と、を併用することにより、ロードロック室8を挟んだ両側で個別に搬送することができる。これにより、搬送時に、原料ガスと酸化剤ガスが反応してしまう機会を、さらに減少させることができる。
【0089】
また、本実施形態に係る成膜方法は、第1材料室2と、第2材料室3と、仕切弁4と、搬送器5と、ロードロック室8と、を備える成膜装置を用いて対象物9に対する成膜を行う方法である。この仕切弁4は、前述したように、第1ゲートバルブ41と、第2ゲートバルブ42と、を備える。また、ロードロック室8は、前述したように、第1ゲートバルブ41を介して第1材料室2と隣り合い、かつ、第2ゲートバルブ42を介して第2材料室3と隣り合う。そして、本実施形態に係る成膜方法は、工程S208、S220と、工程S226、S238と、を有する。工程S208、S220では、前述したように、第1ゲートバルブ41を開けるとき、ロードロック室8内の圧力が第1材料室2内の圧力よりも低くなるように調整されるのが好ましい。工程S226、S238では、前述したように、第2ゲートバルブ42を開けるとき、ロードロック室8内の圧力が第2材料室3内の圧力よりも低くなるように調整されるのが好ましい。
【0090】
各部の圧力を上記のように調整することで、ロードロック室8内の汚染物質が第1材料室2内や第2材料室3内に流れ込むのを抑制することができる。これにより、対象物9に形成する被膜の品質が低下するのを抑制することができる。
【0091】
なお、これと同様、第4ゲートバルブ44を開けるとき、第1アクチュエーター51が備えるチャンバー511内の圧力は、第1材料室2内の圧力より低くなるように調整されるのが好ましい。また、第5ゲートバルブ45を開けるとき、第2アクチュエーター52が備えるチャンバー521内の圧力は、第2材料室3内の圧力より低くなるように調整されるのが好ましい。さらに、第6ゲートバルブ46を開けるとき、第3アクチュエーター53が備えるチャンバー531内の圧力は、第3材料室7内の圧力より低くなるように調整されるのが好ましい。これにより、チャンバー511、521、531内の汚染物質が第1材料室2内、第2材料室3内および第3材料室7内に流れ込むのを抑制することができる。
【0092】
以上、本発明の成膜装置および成膜方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明の成膜装置は、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。また、本発明の成膜方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が追加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…成膜装置、1A…成膜装置、1B…成膜装置、2…第1材料室、3…第2材料室、4…仕切弁、5…搬送器、6…対象物保持器、7…第3材料室、8…ロードロック室、9…対象物、22…原料導入部、24…第1排気部、32…酸化剤導入部、34…第2排気部、40…ゲートバルブ、41…第1ゲートバルブ、42…第2ゲートバルブ、43…第3ゲートバルブ、44…第4ゲートバルブ、45…第5ゲートバルブ、46…第6ゲートバルブ、51…第1アクチュエーター、52…第2アクチュエーター、53…第3アクチュエーター、62…アーム部、64…駆動部、201…上部チャンバー、202…蓋部、205…第1チャンバー、206…載置台、222…原料ガス貯留部、224…バルブ、226…配管、242…ポンプ、244…バルブ、246…配管、301…下部チャンバー、303…ベローズ、305…第2チャンバー、306…載置台、322…酸化剤ガス貯留部、324…バルブ、326…配管、342…ポンプ、344…バルブ、346…配管、501…底部、502…支柱、503…ステージ、504…シール部材、511…チャンバー、512…駆動部、513…ベローズ、514…ロッド、515…仮受部、516…駆動部、517…ベローズ、518…ロッド、521…チャンバー、522…駆動部、523…ベローズ、524…ロッド、525…仮受部、526…駆動部、527…ベローズ、528…ロッド、531…チャンバー、532…駆動部、533…ベローズ、534…ロッド、535…仮受部、805…ロードロックチャンバー、806…載置台、G1…原料ガス、G2…酸化剤ガス、S102…工程、S104…工程、S106…工程、S108…工程、S110…工程、S116…工程、S118…工程、S120…工程、S122…工程、S124…工程、S126…工程、S128…工程、S202…工程、S204…工程、S206…工程、S208…工程、S210…工程、S212…工程、S214…工程、S216…工程、S218…工程、S220…工程、S222…工程、S224…工程、S226…工程、S228…工程、S230…工程、S232…工程、S234…工程、S236…工程、S238…工程、S240…工程、S242…工程、S244…工程、S246…工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13