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特開2022-190798予測システム、予測方法及びプログラム
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  • 特開-予測システム、予測方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190798
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】予測システム、予測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099239
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】廣川 公
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA62
3C100AA70
3C100BB06
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100BB33
3C100EE10
(57)【要約】
【課題】製品の形状に起因する不良を予測することが可能な予測システム、予測方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る対象製品の不良を予測する予測システム10は、既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状の特徴量、及び既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習された第1の学習済モデル103を含む。第1の学習済モデル103は、対象製品の3次元形状の特徴量が入力されると、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象製品の不良を予測する予測システムであって、
既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、前記既存製品の3次元形状の特徴量、前記既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習された第1の学習済モデルを含み、
前記第1の学習済モデルは、前記対象製品の3次元形状の特徴量が入力されると、前記対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する、予測システム。
【請求項2】
前記製品は鋳造品であり、
前記不良特性値が示す製品の不良には、前記製品の焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形、型割れ、及び巻き込みのうち少なくとも1つが含まれ得る、請求項1に記載の予測システム。
【請求項3】
前記不良特性値には、前記製品の不良の程度を表す値が含まれる、請求項1又は2に記載の予測システム。
【請求項4】
前記製品が鋳造品である場合、前記第1の学習済モデルはさらに、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、及び鋳造品の板厚の少なくとも1つによって学習され得る、請求項1~3のいずれか1項に記載の予測システム。
【請求項5】
前記既存製品の3次元形状を示す形状情報が入力されると、前記既存製品の3次元形状の特徴量を出力する第2の学習済モデルをさらに含み、
前記第1の学習済モデルは、前記第2の学習済モデルが出力した特徴量を用いて学習される、請求項1~4のいずれか1項に記載の予測システム。
【請求項6】
前記製品が鋳造品である場合、
前記製造条件は、溶湯種類、溶湯温度、内冷温度、通水時間、金型温度、金型表面処理、サイクルタイム、ダイタイム、型開き順序、スプレー塗布量、スプレー時間、及びエアブロー順序のうち少なくとも1つを含み得る、請求項1~5のいずれか1項に記載の予測システム。
【請求項7】
前記予測システムは、表示装置を含み、
前記対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を前記表示装置に表示する、請求項1~6のいずれか1項に記載の予測システム。
【請求項8】
対象製品の不良を予測する予測方法であって、コンピュータが、
既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、前記既存製品の3次元形状を示す形状情報、及び前記既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習された第1の学習済モデルに対し、前記対象製品の3次元形状の特徴量を入力し、前記対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力させる、予測方法。
【請求項9】
前記製品が鋳造品である場合、
前記不良特性値が示す製品の不良には、前記製品の焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形、型割れ、及び巻き込みのうち少なくとも1つが含まれる、請求項8に記載の予測方法。
【請求項10】
前記不良特性値には、前記製品の不良の程度を表す値が含まれる、請求項8又は9に記載の予測方法。
【請求項11】
前記製品が鋳造品である場合、前記第1の学習済モデルはさらに、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、及び鋳造品の板厚の少なくとも1つによって学習され得る、請求項8~10のいずれか1項に記載の予測方法。
【請求項12】
前記コンピュータは、
第2の学習済モデルに対し、前記既存製品の3次元形状を示す形状情報を入力して、前記既存製品の3次元形状の特徴量を出力させ、
前記第2の学習済モデルが出力した特徴量を用いて、前記第1の学習済モデルを学習させる、請求項8~11のいずれか1項に記載の予測方法。
【請求項13】
前記製品が鋳造品である場合、
前記製造条件は、溶湯種類、溶湯温度、内冷温度、通水時間、金型温度、金型表面処理、サイクルタイム、ダイタイム、型開き順序、スプレー塗布量、スプレー時間、エアブロー順序のうち少なくとも1つを含む、請求項8~12のいずれか1項に記載の予測方法。
【請求項14】
前記対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を表示装置に表示する、請求項8~13のいずれか1項に記載の予測方法。
【請求項15】
対象製品の不良を予測する学習済モデルであるプログラムであって、
前記学習済モデルは、既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、前記既存製品の3次元形状の特徴量、及び前記既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習され、
前記学習済モデルは、前記対象製品の3次元形状の特徴量が入力されると、前記対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の不良を予測する予測システム、予測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車産業等の種々の産業において、製品の不良を予測する技術が利用されている。このような技術の一例として、特許文献1が開示する特性予測装置は、アルミ製品の製造条件を示すパラメータが入力されると、当該製造条件で製造されたアルミ製品の特性値を出力するニューラルネットワークを用いて、アルミ製品の特性を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/062398号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1が開示する特性予測装置は、製品の製造条件のみに基づいて製品の不良を予測するため、製品の形状に起因する不良を予測することできないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためのものであり、製品の形状に起因する不良を予測することが可能な予測システム、予測方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る対象製品の不良を予測する予測システムは、
既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状の特徴量、及び既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習された第1の学習済モデルを含み、
第1の学習済モデルは、対象製品の3次元形状の特徴量が入力されると、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する。
【0007】
製品が鋳造品である場合、不良特性値が示す製品の不良には、製品の焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形、型割れ、及び巻き込みのうち少なくとも1つが含まれ得る。
【0008】
不良特性値には、製品の不良の程度を表す値が含まれ得る。
【0009】
製品が鋳造品である場合、第1の学習済モデルはさらに、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、及び鋳造品の板厚の少なくとも1つによって学習され得る。
【0010】
予測システムは、既存製品の3次元形状を示す形状情報が入力されると、既存製品の3次元形状の特徴量を出力する第2の学習済モデルをさらに含み、
第1の学習済モデルは、第2の学習済モデルが出力した特徴量を用いて学習され得る。
【0011】
製品が鋳造品である場合、製造条件は、溶湯種類、溶湯温度、内冷温度、通水時間、金型温度、金型表面処理、サイクルタイム、ダイタイム、型開き順序、スプレー塗布量、スプレー時間、及びエアブロー順序のうち少なくとも1つを含むことができる。
【0012】
予測システムは、表示装置を含み、
対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を表示装置に表示する。
【0013】
本発明の一態様に係る対象製品の不良を予測する予測方法は、コンピュータが、
既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状を示す形状情報、及び既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習された第1の学習済モデルに対し、対象製品の3次元形状の特徴量を入力し、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力させる。
【0014】
また、コンピュータは、第2の学習済モデルに対し、既存製品の3次元形状を示す形状情報を入力して、既存製品の3次元形状の特徴量を出力させ、
第2の学習済モデルが出力した特徴量を用いて、第1の学習済モデルを学習させ得る。
【0015】
本発明の一態様に係る対象製品の不良を予測する学習済モデルであるプログラムであって、
学習済モデルは、既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状の特徴量、及び既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習され、
学習済モデルは、対象製品の3次元形状の特徴量が入力されると、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、製品の形状に起因する不良を予測することが可能な予測システム、予測方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一態様に係る予測装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一態様に係る予測装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の一態様に係る予測装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一態様に係る予測結果を示す画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一態様について説明する。図1は、本発明の一態様に係る予測装置10の構成を示すブロック図である。予測装置10は、対象製品の不良を予測する装置である。予測装置10の具体例としては、サーバやPC(Personal Computer)等の情報処理装置等が挙げられるが、これらに限定されない。予測装置10は、予測システムに相当する。対象製品には、例えば、自動車等の車両に使用される鋳造品が含まれる。
【0019】
予測装置10は、演算装置100と、記憶装置110と、表示装置120とを備える。演算装置100は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置である。演算装置100は、記憶装置110に保存されているプログラムを読み出して実行することにより、対象製品の不良を予測する予測方法を実行する。
【0020】
記憶装置110は、演算装置100が実行するプログラム、既存製品の情報及び対象製品の情報等の種々のデータが保存される記憶装置である。具体的には、既存製品の情報には、既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状を示す形状情報、既存製品の製造条件を示す条件情報が含まれる。既存製品の不良特性値及び形状情報は、例えば、既存製品をCAE(Computer-Aided Engineering)解析することによって得られる。対象製品の情報には、対象製品の3次元形状を示す形状情報、対象製品の製造条件を示す条件情報が含まれる。
【0021】
製品が鋳造品である場合、不良特性値が示す製品の不良は、一般的な鋳造不良とすることができる。例えば、鋳造不良の具体例として、焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形、型割れ、及び巻き込み等が挙げられる。粗材変形とは、鋳造工程において鋳物を成形した後、常温まで冷却することによって生じる不所望の変形を意味する。なお、不良特性値が示す製品の不良は、これらに限定されない。
【0022】
不良特性値は、量的な変数であり、製品の不良の程度を表す値である。不良特性値は、その大小によって製品の不良の程度を表すことができる。
【0023】
製品が鋳造品である場合、条件情報が示す製造条件は、一般的な鋳造工程で設定される条件とすることができる。例えば、条件情報が示す製造条件の具体例として、鋳造品の製造に関する溶湯種類、溶湯温度、内冷温度、通水時間、金型温度、金型表面処理、サイクルタイム、ダイタイム、型開き順序、スプレー塗布量、スプレー時間、及びエアブロー順序等が挙げられる。なお、製造条件は、これらに限定されない。
【0024】
溶湯種類は、溶融した金属の種類である。溶湯温度は、溶融した金属の温度である。内冷温度は、鋳物を冷却するために金型内部を通過する水の温度である。金型温度は、鋳物を成形する際の金型の温度である。通水時間は、水が金型内部を通過する時間である。金型表面処理は、金型表面の摩耗を防ぐために行う熱処理等である。
【0025】
サイクルタイムは、鋳物を連続して生産する際に鋳造工程で要する時間である。鋳造工程のサイクルは、金型閉じ、注湯、凝固、金型開き、鋳物の取出し、離型剤塗布、エアブロー、及び金型閉じで構成される。
【0026】
ダイタイムは、サイクルタイムを構成する時間の一つであり、凝固、すなわち、注湯の完了から金型開きまでの時間である。型開き順序は、複数個の金型で構成された金型を開く順序である。スプレー塗布量は、金型から鋳物を離型し易くするために使用される離型剤の塗布量である。スプレー時間は、離型剤を塗布する時間である。エアブロー順序は、金型に残存した離型剤をエアブローで除去する順序である。
【0027】
演算装置100が実行するプログラムには、分割部101、モデル制御部102、第1のモデル103、第2のモデル104、予測精度判定部105及び予測部106が含まれる。他の実施形態では、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路が、これらのプログラムを実行してもよい。サーバ、PC、演算装置及び集積回路は、コンピュータに相当する。
【0028】
分割部101は、記憶装置110から既存製品の情報を取得し、既存製品の情報を、既存製品の不良特性値と既存製品の形状情報に分けるプログラムである。
【0029】
第1のモデル103は、既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状の特徴量、既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習されるプログラムである。第1のモデル103は、ディープラーニング等の機械学習を用いて学習させることができる。例えば、ディープラーニングの場合、第1のモデル103は、ニューラルネットワークで実現することができる。なお、機械学習は、ディープラーニングに限られず、他の手法を採用することができる。
【0030】
第2のモデル104は、既存製品の3次元形状を示す形状情報が入力されると、既存製品の3次元形状の特徴量を出力するプログラムである。第2のモデル104は、畳み込みニューラルネットワークによって実現することができる。3次元形状の特徴量は、特徴ベクトルの形式で表現することができる。
【0031】
モデル制御部102は、第1のモデル103及び第2のモデル104を制御するプログラムである。モデル制御部102は、既存製品の3次元形状を示す形状情報を第2のモデル104に入力することにより、第2のモデル104を学習させることができる。モデル制御部102は、第2の学習済モデルが出力した特徴量と、分割部101によって得られた既存製品の不良特性値と、記憶装置110に保存されている既存製品の1以上の条件情報を用いて、第1のモデル103を学習させることができる。
【0032】
他の実施形態では、モデル制御部102は、第2の学習済モデルが出力した特徴量に加えて、既存製品の他の特徴量を第1のモデル103に入力することができる。例えば、既存製品が鋳造品の場合、他の特徴量には、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、鋳造品の板厚等が含まれる。換言すると、第1のモデル103はさらに、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、及び鋳造品の板厚の少なくとも1つによって学習され得る。
【0033】
予測精度判定部105は、第1のモデル103が出力した不良特性値と、既存製品の不良特性値とを比較し、第1のモデル103による不良の予測精度が一定の精度以上であるか否か判定するプログラムである。この判定では、CAE解析等のシミュレーションによって得られた既存製品の部位毎の不良特性値を、既存製品の不良特性値として利用することができる。
【0034】
不良特性値は、製品の不良の程度を表すことができる。予測精度判定部105は、第1のモデル103が出力した不良特性値と、シミュレーションによって得られた既存製品の不良特性値との差が既定値以下である場合、第1のモデル103による不良の予測精度が一定の精度以上であると判定することができる。
【0035】
予測部106は、第1の学習済モデル103を用いて、対象製品の不良を予測するプログラムである。具体的には、予測部106は、第1の学習済モデル103に対し、対象製品の3次元形状の特量を示す特徴量を入力して、対象製品の不良を予測することができる。予測部106は、第1の学習済モデル103が出力した対象製品の不良特性値に基づいて、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を表示装置120に表示する。
【0036】
他の実施形態では、予測部106は、対象製品の3次元形状の特量を示す特徴量に加えて、対象製品の1以上の製造条件を示す条件情報を第1の学習済モデル103に入力して、対象製品の不良を予測してもよい。
【0037】
図4は、対象製品の不良の予測結果を示す画像の一例を示す図である。図4に示す例では、対象製品の不良が部位毎に表示される。図4に示す例では、便宜的に丸印を用いて不良を表しているが、カラー表示や種々の形状を用いて、対象製品の不良を部位毎に表すことができる。この場合、色の種類によって対象製品の不良の程度を表現することができる。また、不良を示す形状の大小によって対象製品の不良の程度を表現することもできる。
【0038】
図2は、第1のモデル103及び第2のモデル104を学習させる処理の一例を示すフローチャートである。ステップS101では、予測装置10の分割部101が、既存製品の情報を不良特性値と形状情報に分ける。ステップS102では、モデル制御部102が、既存製品の形状情報を第2のモデル104に入力する。
【0039】
ステップS103では、第2のモデル104が、既存製品の形状情報を用いて、既存製品の3次元形状の畳み込み処理を実行し、既存製品の3次元形状の特徴量を生成する。ステップS104では、第2のモデル104は、生成した既存製品の3次元形状の特徴量を出力する。
【0040】
ステップS105では、モデル制御部102は、ステップS101で得られた既存製品の不良特性値、ステップS104で出力された既存製品の特徴量、及び既存製品の条件情報を、第1のモデル103に入力する。
【0041】
ステップS106では、第1のモデル103が、既存製品の不良特性値、特徴量及び条件情報を関連付ける。ステップS107では、第1のモデル103は、既存製品の不良特性値、特徴量及び条件情報の関連付けに基づく回帰式を構築する。ステップS108では、第1のモデル103は、既存製品の部位に関連付けられた不良特性値を出力する。
【0042】
ステップS109では、予測精度判定部105が、第1のモデル103が出力した不良特性値と、シミュレーションによって得られた既存製品の不良特性値とを比較し、第1のモデル103による不良の予測精度が一定の精度以上であるか否か判定する。第1のモデル103による不良の予測精度が一定の精度未満である場合(NO)、ステップS102に処理が戻り、第1のモデル103及び第2のモデル104の学習が繰り返し行われる。一方、第1のモデル103による不良の予測精度が一定の精度以上である場合(YES)、図2の処理は終了する。
【0043】
図3は、対象製品の不良を予測する処理の一例を示すフローチャートである。ステップS201では、予測装置10の予測部106が、図2に示す処理によって学習された第1の学習済モデル103に対し、対象製品の3次元形状の特量を示す特徴量を入力する。ステップS202では、第1の学習済モデル103が、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する。ステップS203では、予測部106は、第1の学習済モデル103が出力した対象製品の不良特性値を表示装置120に表示し、図3の処理が終了する。
【0044】
上述した実施形態では、第1のモデル103は、既存製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値、既存製品の3次元形状の特徴量、既存製品の製造条件を示す条件情報に基づいて学習される。第1の学習済モデル103は、対象製品の3次元形状の特徴量と、対象製品の製造条件を示す条件情報が入力されると、対象製品の部位に関連付けられた不良を示す不良特性値を出力する。
【0045】
既存製品の不良特性値は、対象製品の不良特性値に相関する。また、製品の3次元形状は、製品の不良に相関する。さらに、製品の製造条件は、製品の不良に相関する。そのため、既存製品の不良特性値、3次元形状の特徴量、製造条件を示す条件情報に基づいて学習された第1の学習済モデル103を用いることにより、対象製品の3次元形状に関連する不良を予測することができる。したがって、新規製品等の対象製品の形状に起因する不良を部位毎に予測することができる。
【0046】
製品が鋳造品である場合、不良特性値が示す製品の不良には、製品の焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形、型割れ、及び巻き込みのうち少なくとも1つが含まれる。これにより、対象製品の焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形、型割れ、及び巻き込みを予測することができる。特に、対象製品の部位毎に焼付き、引け巣、湯じわ、かじり、粗材変形及び巻き込みを予測することができる。
【0047】
また、不良特性値には、対象製品の不良の程度を表す値が含まれる。そのため、対象製品の部位毎の不良の程度を予測することができる。
【0048】
製品が鋳造品である場合、第1の学習済モデル103はさらに、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、及び鋳造品の板厚の少なくとも1つによって学習され得る。これにより、第1の学習済モデル103は、鋳造品の型体積、鋳物体積、鋳物表面積、及び鋳造品の板厚が考慮された不良を予測することができる。
【0049】
製品が鋳造品である場合、製造条件は、溶湯種類、溶湯温度、内冷温度、通水時間、金型温度、金型表面処理、サイクルタイム、ダイタイム、型開き順序、スプレー塗布量、スプレー時間、及びエアブロー順序のうち少なくとも1つを含む。これにより、これらの種々の製造条件に基づく対象製品の部位毎の不良を予測することができる。
【0050】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、又はその他の形式の伝搬信号を含む。
【0051】
本発明は、上述した実施形態に限られたものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述した実施携帯では、単一の装置である予測装置10が予測システムに相当するが、他の実施形態では、複数の装置によって予測システムを実現してもよい。例えば、演算装置100に実装される分割部101、モデル制御部102、第1のモデル103、第2のモデル104、予測精度判定部105及び予測部106を、複数の装置に分散して実装してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 予測装置、予測システム
100 演算装置
101 分割部
102 モデル制御部
103 第1のモデル
104 第2のモデル
105 予測精度判定部
106 予測部
110 記憶装置
120 表示装置
図1
図2
図3
図4