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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190799
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】歩行状態測定システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20221220BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20221220BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20221220BHJP
   A61H 1/02 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
A61B5/11 230
G06T7/20 300Z
G06T7/70
A61H1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099240
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 義宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎章
【テーマコード(参考)】
4C038
4C046
5L096
【Fターム(参考)】
4C038VA12
4C038VB14
4C038VC05
4C038VC20
4C046AA22
4C046BB07
5L096CA05
5L096FA66
5L096FA69
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】複数カメラ間の校正においてマーカの誤認識を防止する歩行状態測定システムを提供する。
【解決手段】歩行訓練システム1は、訓練者900が歩行する歩行面を形成し、歩行前後方向に沿って走行する無端状のベルト132と、ベルト132の周方向に沿ってベルト132の少なくとも歩行面上に形成されたマーカ400と、訓練者900を前方から撮像するための第1のカメラ140であって、歩行面のマーカ400を上方から撮像して第1画像を生成する第1のカメラ140と、訓練者900を前方から撮像するための第2のカメラ141であって、歩行面のマーカ400を上方から撮像して第2画像を生成する第2のカメラ141と、第1画像及び第2画像の各々に含まれるマーカ400の画像領域の位置に基づいて、第1のカメラ140及び第2のカメラ141の少なくとも一方が生成した画像を補正する補正処理部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が歩行する歩行面を形成し、歩行前後方向に沿って走行する無端状のベルトと、
前記ベルトの周方向に沿って前記ベルトの少なくとも歩行面上に形成されたマーカと、
前記被験者を前方から撮像するための第1のカメラであって、前記歩行面の前記マーカを上方から撮像して第1画像を生成する第1のカメラと、
前記被験者を前方から撮像するための第2のカメラであって、前記歩行面の前記マーカを上方から撮像して第2画像を生成する第2のカメラと、
前記第1画像及び前記第2画像の各々に含まれる前記マーカの画像領域の位置に基づいて、前記第1及び第2のカメラの少なくとも一方が生成した画像を補正する補正処理部と
を備える
歩行状態測定システム。
【請求項2】
前記第1画像では、歩行左右方向における前記第1画像の両端から前記マーカの両端までの画素数が、第1閾値以上であり、
前記第2画像では、歩行左右方向における前記第2画像の両端から前記マーカの両端までの画素数が、第2閾値以上である
請求項1に記載の歩行状態測定システム。
【請求項3】
前記第1画像では、歩行前後方向における前記第1画像の両端から少なくとも1つの前記マーカの両端までの画素数が、第3閾値以上であり、
前記第2画像では、歩行前後方向における前記第2画像の両端から少なくとも1つの前記マーカの両端までの画素数が、第4閾値以上である
請求項1又は2に記載の歩行状態測定システム。
【請求項4】
前記マーカは、前記ベルトの全周にわたって予め定められた距離以上の間隔で配列する
請求項1から3のいずれか一項に記載の歩行状態測定システム。
【請求項5】
前記歩行面の前記マーカは、互いに異なる形状又は色を有する
請求項4に記載の歩行状態測定システム。
【請求項6】
前記マーカは、前記ベルトの少なくとも半周を1周期としたパターンを形成する
請求項4又は5に記載の歩行状態測定システム。
【請求項7】
前記マーカは、前記ベルトの全周にわたって無端状に形成される
請求項1から3のいずれか一項に記載の歩行状態測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行状態測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リハビリテーション(リハビリ)の患者が歩行動作を訓練するためのリハビリ訓練システムが開発されている。例えば特許文献1には、脚部に歩行補助装置を装着したユーザの歩行状態に応じて、歩行補助装置を介して、患者の関節の動きを補助する歩行訓練装置が開示されている。そして近年、リハビリ訓練システムにおいて、RGBカメラと深度カメラとを用いて訓練者の脚の三次元位置を計測し、トレッドミル上を歩行する患者の歩行状態を判定する技術が開発されている。
【0003】
ここで、RGBカメラおよび深度カメラの少なくとも一方に、カメラ自体の角度ずれや位置ずれが生じた場合、三次元位置の計測精度が低下し、患者の歩行状態を正確に判定できず、ひいては関節の動きを適切に補助できなくなるという問題があった。これを回避するため、リハビリ訓練システムのブースフレームにマーカを設置し、RGBカメラおよび深度カメラの各画像に写るマーカの位置を照合することで、角度ずれや位置ずれを校正することが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-035220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、マーカがカメラの視野の端部に位置する場合、レンズ周辺部の歪みの影響を受けやすく、照合対象のマーカを誤認識しやすいという問題がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、複数カメラ間の校正においてマーカの誤認識を防止する歩行状態測定システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる歩行状態測定システムは、被験者が歩行する歩行面を形成し、歩行前後方向に沿って走行する無端状のベルトと、前記ベルトの周方向に沿って前記ベルトの少なくとも歩行面上に形成されたマーカと、前記被験者を前方から撮像するための第1のカメラであって、前記歩行面の前記マーカを上方から撮像して第1画像を生成する第1のカメラと、前記被験者を前方から撮像するための第2のカメラであって、前記歩行面の前記マーカを上方から撮像して第2画像を生成する第2のカメラと、前記第1画像及び前記第2画像の各々に含まれる前記マーカの画像領域の位置に基づいて、前記第1及び第2のカメラの少なくとも一方が生成した画像を補正する補正処理部とを備える。ベルトの周方向に沿って形成されるマーカにより、ベルトが回転してもカメラがマーカを認識できる。またマーカは、歩行面上、つまりカメラの視野の中央寄りに形成されているため、レンズ周辺部の歪みによる影響を軽減させることができる。
【0007】
前記第1画像では、歩行左右方向における前記第1画像の両端から前記マーカの両端までの画素数が、第1閾値以上であってよい。また、前記第2画像では、歩行左右方向における前記第2画像の両端から前記マーカの両端までの画素数が、第2閾値以上であってよい。これにより、カメラの視野の中央寄りにマーカが位置することになる。
【0008】
また、前記第1画像では、歩行前後方向における前記第1画像の両端から少なくとも1つの前記マーカの両端までの画素数が、第3閾値以上であってよい。また、前記第2画像では、歩行前後方向における前記第2画像の両端から少なくとも1つの前記マーカの両端までの画素数が、第4閾値以上であってよい。これにより、カメラの視野の中央寄りにマーカが位置することになる。
【0009】
また、前記マーカは、前記ベルトの全周にわたって予め定められた距離以上の間隔で配列してよい。これにより、複数のカメラ間での形状の誤認識を回避できる。またマーカの特徴点がベルト最端部よりも内側に写るため、レンズ周辺部の歪みの影響を軽減できる。いずれかのカメラがベルト最端部を写しきれなかった場合にもマーカの特徴点を検出できる。
【0010】
また、前記歩行面の前記マーカは、互いに異なる形状又は色を有してよい。これにより、複数のカメラ間のマーカの特徴点の対応付けの誤認識によりカメラ間の校正が正しくなされないという問題を回避できる。なお、前記マーカは、前記ベルトの少なくとも半周を1周期としたパターンを形成してもよい。
【0011】
また、前記マーカは、前記ベルトの全周にわたって無端状に形成されてよい。これにより、ベルトが回転してもカメラがマーカを捉えやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、複数カメラ間の校正においてマーカの誤認識を防止する歩行状態測定システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1にかかる歩行訓練システムの概略斜視図である。
図2】歩行補助装置の一構成例を示す概略斜視図である。
図3】実施形態1にかかるシステム制御部の動作を説明するための図である。
図4】実施形態1にかかるベルトおよびカメラの視野を示す斜視図である。
図5】実施形態1にかかる第1画像および第2画像の一例を示す図である。
図6】実施形態1にかかる情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図7】実施形態1にかかる情報処理装置の情報処理手順を示すフローチャートである。
図8】実施形態2にかかるマーカの第1の例を説明するための図である。
図9】実施形態2にかかるマーカの第2の例を説明するための図である。
図10】実施形態2にかかるマーカの第3の例を説明するための図である。
図11】実施形態2にかかるマーカの第4の例を説明するための図である。
図12】実施形態2にかかるマーカの第5の例を説明するための図である。
図13】実施形態2にかかるマーカの第6の例を説明するための図である。
図14】実施形態1~2にかかるコンピュータの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載および図面は、適宜、省略、および簡略化がなされている。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されている。
【0015】
<実施形態1>
まず、本発明の実施形態1について説明する。図1は、実施形態1にかかる歩行訓練システム1の概略斜視図である。歩行訓練システム1は、実施形態1にかかる歩行状態測定装置(歩行状態測定システムとも呼ばれる)の一例である。歩行訓練システム1は、一方の脚に麻痺を患う片麻痺患者である訓練者900が、歩行訓練を行うためのシステムである。訓練者900は、被験者とも呼ばれる。なお、以下の説明における上下方向、左右方向、前後方向は、訓練者900の向きを基準とする方向である。
【0016】
歩行訓練システム1は、主に、全体の骨格を成すフレーム130に取り付けられた制御盤133と、訓練者900が歩行するトレッドミル131と、訓練者900の麻痺側の脚部である患脚に装着する歩行補助装置120とを備える。
【0017】
フレーム130は、床面に設置されるトレッドミル131上に立設されている。トレッドミル131は、不図示のモータにより無端状のベルト132を回転させる。これにより、ベルト132は、周回軌道に沿って走行する。トレッドミル131は、訓練者900の歩行を促す装置である。歩行訓練を行う訓練者900は、ベルト132に乗り、歩行前後方向に沿って走行するベルト132上に形成された歩行面に対して、歩行動作を試みる。尚、ベルト132には、後述するマーカ400が形成されている。
【0018】
フレーム130は、制御盤133、及び訓練用モニタ138を支持している。
制御盤133は、情報処理装置100とシステム制御部200とを収容する。
情報処理装置100は、後述する第1のカメラ140および第2のカメラ141の角度ずれや位置ずれを校正するコンピュータ装置である。
システム制御部200は、情報処理装置100及び荷重分布センサ150に接続され、情報処理装置100及び荷重分布センサ150から出力される情報に基づいて、各種モータやセンサの制御を行うコンピュータ装置である。
【0019】
訓練用モニタ138は、訓練や測定に関する情報を訓練者900へ呈示する表示装置である。訓練用モニタ138は、例えば液晶パネルである。訓練用モニタ138は、訓練者900がトレッドミル131のベルト132上を歩行しながら視認できるように設置されている。
【0020】
また、フレーム130は、訓練者900の頭上部前方付近で前側引張部135を、頭上部付近でハーネス引張部112を、頭上部後方付近で後側引張部137を支持している。また、フレーム130は、訓練者900が掴むための手摺り130aを含んでよい。
【0021】
第1のカメラ140は、前方から訓練者900の歩容が認識できる画角で訓練者900を撮像するためのカメラユニットである。第1のカメラ140は、レンズと撮像素子とを含む。撮像素子は、例えばCMOSイメージセンサであり、結像面に結像した光学像を画像信号に変換する。本実施形態1では、第1のカメラ140は、RGBカメラとも呼ばれ、ベルト132上に立つ訓練者900の頭部を含む全身を捉えられる画角となるように上方に設置される。
【0022】
第2のカメラ141も、前方から訓練者900の歩容が認識できる画角で訓練者900を撮像するためのカメラユニットである。第2のカメラ141も、レンズと撮像素子とを含む。本実施形態1では、第2のカメラ141は、深度カメラとも呼ばれる。第2のカメラ141は、例えば、被写体に光を照射してから反射光がCMOSイメージセンサ等の撮像素子に受光されるまでの時間を計測することで、距離を計測するToF(Time of Flight)方式の深度カメラであってよい。本実施形態1では、第2のカメラ141は、第1のカメラ140の近傍に、例えば第1のカメラ140から所定距離以内の位置に設置される。本図では、第2のカメラ141は、第1のカメラ140の下方に設置される。本実施形態1では、第2のカメラ141も、ベルト132上に立つ訓練者900の頭部を含む全身を捉えられる画角となるように上方に設置される。
【0023】
以下、第1のカメラ140および第2のカメラ141をまとめて言及する場合、単にカメラと呼ぶことがある。
【0024】
なお、歩行訓練システム1は、側面から訓練者900の歩容が認識できる画角で訓練者900を撮像する側面カメラユニットを備えてもよい。この場合は、側面カメラユニットは、手摺り130aに、訓練者900を側方から捉えるように設置されてよい。
【0025】
前側ワイヤ134は、一端が前側引張部135の巻取機構に連結されており、他端が歩行補助装置120に連結されている。前側引張部135の巻取機構は、システム制御部200の指示に従って不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて前側ワイヤ134を巻き取ったり繰り出したりする。同様に、後側ワイヤ136は、一端が後側引張部137の巻取機構に連結されており、他端が歩行補助装置120に連結されている。後側引張部137の巻取機構は、システム制御部200の指示に従って不図示のモータをオン/オフさせることにより、患脚の動きに応じて後側ワイヤ136を巻き取ったり繰り出したりする。このような前側引張部135と後側引張部137の連携した動作により、歩行補助装置120の荷重が患脚の負担とならないように当該荷重を相殺し、更には、設定の程度に応じて患脚の振り出し動作をアシストする。
【0026】
訓練補助者であるオペレータ(不図示)は、重度の麻痺を抱える訓練者に対しては、アシストするレベルを大きく設定する。オペレータは、歩行訓練システム1の設定項目を選択したり、修正したり、追加したりする権限を有する理学療法士や医師である。アシストするレベルが大きく設定されると、前側引張部135は、患脚の振り出しタイミングに合わせて、比較的大きな力で前側ワイヤ134を巻き取る。訓練が進み、アシストが必要でなくなったら、オペレータは、アシストするレベルを最小に設定する。アシストするレベルが最小に設定されると、前側引張部135は、患脚の振り出しタイミングに合わせて、歩行補助装置120の自重をキャンセルするだけの力で前側ワイヤ134を巻き取る。
【0027】
歩行訓練システム1は、安全装具110、ハーネスワイヤ111、ハーネス引張部112を主な構成要素とする安全装置を備える。安全装具110は、訓練者900の腹部に巻き付けられるベルトであり、例えば面ファスナによって腰部に固定される。ハーネスワイヤ111は、一端が安全装具110に連結されており、他端がハーネス引張部112の巻取機構に連結されているワイヤである。ハーネス引張部112の巻取機構は、不図示のモータをオン/オフさせることにより、ハーネスワイヤ111を巻き取ったり繰り出したりする。このような構成により、安全装置は、訓練者900が体勢を大きく崩した場合に、その動きを検知したシステム制御部200の指示に従ってハーネスワイヤ111を巻き取り、安全装具110により訓練者900の上体を支える。
【0028】
歩行補助装置120は、訓練者900の患脚に装着され、患脚の膝関節における伸展および屈曲の負荷を軽減することにより訓練者900の歩行を補助する。歩行補助装置120は、歩行訓練によって得られる運脚に関するデータをシステム制御部200に送信したり、システム制御部200からの指示に従って関節部分を駆動させたりする。歩行補助装置120は、転送防止ハーネス装置の一部である安全装具110に取り付けられたヒップジョイント(回転部を有する接続部材)と、ワイヤなどを介して接続しておくこともできる。
【0029】
図2は、歩行補助装置120の一構成例を示す概略斜視図である。歩行補助装置120は、主に、制御ユニット121と、患脚の各部を支える複数のフレームと、を備える。なお、歩行補助装置120は、脚ロボットとも称す。
【0030】
制御ユニット121は、歩行補助装置120の制御を行う補助制御部220を含み、また、膝関節の伸展運動及び屈曲運動を補助するための駆動力を発生させる不図示のモータを含む。患脚の各部を支えるフレームは、上腿フレーム122と、上腿フレーム122に回動自在に連結された下腿フレーム123と、を含む。また、このフレームは、下腿フレーム123に回動自在に連結された足平フレーム124と、前側ワイヤ134を連結するための前側連結フレーム127と、後側ワイヤ136を連結するための後側連結フレーム128と、を含む。
【0031】
上腿フレーム122と下腿フレーム123は、図示するヒンジ軸Ha周りに相対的に回動する。制御ユニット121のモータは、補助制御部220の指示に従って回転して、上腿フレーム122と下腿フレーム123がヒンジ軸Ha周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。制御ユニット121に収められた角度センサ223は、例えばロータリエンコーダであり、ヒンジ軸Ha周りの上腿フレーム122と下腿フレーム123の成す角を検出する。下腿フレーム123と足平フレーム124は、図示するヒンジ軸Hb周りに相対的に回動する。相対的に回動する角度範囲は、調整機構126によって事前に調整される。
【0032】
前側連結フレーム127は、上腿の前側を左右方向に伸延し、両端で上腿フレーム122に接続するように設けられている。また、前側連結フレーム127には、前側ワイヤ134を連結するための連結フック127aが、左右方向の中央付近に設けられている。後側連結フレーム128は、下腿の後側を左右方向に伸延し、両端でそれぞれ上下に伸延する下腿フレーム123に接続するように設けられている。また、後側連結フレーム128には、後側ワイヤ136を連結するための連結フック128aが、左右方向の中央付近に設けられている。
【0033】
上腿フレーム122は、上腿ベルト129を備える。上腿ベルト129は、上腿フレームに一体的に設けられたベルトであり、患脚の上腿部に巻き付けて上腿フレーム122を上腿部に固定する。これにより、歩行補助装置120の全体が訓練者900の脚部に対してずれることを防止している。
【0034】
図3は、実施形態1にかかるシステム制御部の動作を説明するための図である。本図に示すトレッドミル131は、リング状のベルト132と、プーリ151と、図示しないモータを少なくとも備える。モータによりプーリ151が回転することで、ベルト132が走行する。
【0035】
また、ベルト132の内側、すなわちベルト132の、訓練者900が搭乗する面と反対側には、荷重分布センサ150が配置されている。荷重分布センサ150は、トレッドミル131本体に、ベルト132の移動に伴わないで固定されている。
【0036】
荷重分布センサ150は、複数の圧力検出点を有する荷重分布センサシートである。複数の圧力検出点は、立位状態の訓練者900の足裏を支持する歩行面(載置面)に平行に、マトリックス状に配置されている。また荷重分布センサ150は、歩行前後方向に直交する左右方向において、歩行面の中央側に配置される。尚、歩行前後方向とは、ベルト132の走行方向に平行な方向である。荷重分布センサ150は、複数の圧力検出点における計測結果を用いることにより、訓練者900の足裏から受ける垂直荷重の大きさと分布とを検出することができる。それにより、荷重分布センサ150は、ベルト132を介して、立位状態の訓練者900の足裏の位置や、訓練者900の足裏から受ける荷重を検出することができる。
【0037】
ここで、荷重分布センサ150は、システム制御部200に接続され、システム制御部200に対して、計測情報として荷重分布情報を出力する。
【0038】
情報処理装置100は、第1のカメラ140及び第2のカメラ141に接続される。情報処理装置100は、第1のカメラ140及び第2のカメラ141の各々から画像を取得し、少なくとも一方の画像を、カメラパラメータを用いて補正する。情報処理装置100はまた、システム制御部200に接続され、少なくとも一方が補正された画像をシステム制御部200に供給する。カメラパラメータは、各画像に写るマーカ400の位置に基づいて、情報処理装置100により予め算出される。
【0039】
システム制御部200は、荷重分布センサ150から出力された荷重分布情報及び情報処理装置100から供給される補正後の画像に基づいて、訓練者900の歩行状態を測定する。具体的には、システム制御部200は、情報処理装置100から取得した、少なくとも一方が補正された、つまり校正された上記2種類の画像を用いて、訓練者900の身体の三次元の位置情報を生成する。そしてシステム制御部200は、荷重分布情報及び三次元の位置情報に基づいて訓練者900の歩行状態を検出する。
【0040】
システム制御部200は、検出した歩行状態に基づいて、各種駆動部を制御する。例えば、システム制御部200は、トレッドミル駆動部211と、引張駆動部214と、ハーネス駆動部215と、歩行補助装置120の補助制御部220に、有線又は無線で接続される。そしてシステム制御部200は、トレッドミル駆動部211、引張駆動部214、及びハーネス駆動部215を駆動させ、補助制御部220に制御信号を送信する。
【0041】
トレッドミル駆動部211は、トレッドミル131のベルト132を回転させる、上述したモータ及びその駆動回路を含む。システム制御部200は、トレッドミル駆動部211へ駆動信号を送ることにより、ベルト132の回転制御を実行する。システム制御部200は、例えば、オペレータによって設定された歩行速度に応じて、ベルト132の回転速度を調整する。或いは、システム制御部200は、情報処理装置100から取得した歩行状態に応じて、ベルト132の回転速度を調整する。
【0042】
引張駆動部214は、前側引張部135に設けられた、前側ワイヤ134を引張するためのモータ及びその駆動回路と、後側引張部137に設けられた、後側ワイヤ136を引張するためのモータ及びその駆動回路と、を含む。システム制御部200は、引張駆動部214へ駆動信号を送ることにより、前側ワイヤ134の巻き取り及び後側ワイヤ136の巻き取りをそれぞれ制御する。また、システム制御部200は、巻き取り動作に限らず、モータの駆動トルクを制御することにより、各ワイヤの引張力を制御する。さらに、システム制御部200は、例えば、情報処理装置100から出力される訓練者900の歩行状態に基づいて、患脚が立脚状態から遊脚状態に切り替わるタイミングを同定し、そのタイミングに同期して各ワイヤの引張力を増減させることにより、患脚の動作をアシストする。
【0043】
ハーネス駆動部215は、ハーネス引張部112に設けられた、ハーネスワイヤ111を引張するためのモータ及びその駆動回路を含む。システム制御部200は、ハーネス駆動部215へ駆動信号を送ることにより、ハーネスワイヤ111の巻き取り、及び、ハーネスワイヤ111の引張力を制御する。システム制御部200は、例えば、訓練者900の転倒を予測した場合に、ハーネスワイヤ111を一定量巻き取って、訓練者の転倒を防止する。
【0044】
補助制御部220は、例えばMPU(micro processor unit)であり、システム制御部200から与えられた制御プログラムを実行することにより、歩行補助装置120の制御を実行する。また、補助制御部220は、歩行補助装置120の状態を、システム制御部200へ通知する。また、補助制御部220は、システム制御部200からの指令を受けて、歩行補助装置120の起動や停止等の制御を実行する。
【0045】
補助制御部220は、制御ユニット121のモータ及びその駆動回路を含む関節駆動部へ駆動信号を送ることにより、上腿フレーム122と下腿フレーム123がヒンジ軸Ha周りに相対的に開くように加勢したり、閉じるように加勢したりする。このような動作により、膝の伸展動作及び屈曲動作をアシストしたり、膝折れを防止したりする。補助制御部220は、ヒンジ軸Ha周りの上腿フレーム122と下腿フレーム123の成す角を検出する角度センサ(不図示)から、検出信号を受け取って膝関節の開き角を演算する。
【0046】
ここで、図1に戻り、本実施形態の課題について改めて説明する。例えば、カメラパラメータを算出するために用いられるマーカを、フレーム130の立体物(ブースフレームと呼ばれることがある)に設置すると、視差の影響により、情報処理装置100がマーカを誤認識しやすいという問題がある。したがって、マーカは、平面部分に設置されることが望ましい。そこで、マーカを、フレーム130の、トレッドミル131の両脇平面部分に設置する場合、今度はマーカがカメラの視野の端部に位置するため、レンズ周辺部の歪みの影響を受けやすくなってしまう。したがって、やはり情報処理装置100がマーカを誤認識しやすいという問題がある。
【0047】
そこで歩行訓練システム1では、トレッドミル131のベルト132上に、ベルト132の周方向に沿ってマーカ400が形成されている。マーカ400は、ベルト132が回転してもベルト132の少なくとも歩行面(すなわち、訓練者900側の面)上に現れるように形成されている。これにより、ベルト132が回転しても歩行面に必ずマーカが現れるため、カメラがマーカ400を捉えやすくなる。またマーカ400が、トレッドミル131のベルト132上に形成される場合、トレッドミル131の両脇平面部分に設置する場合と比べて、前方に設置されたカメラの視野の中央寄りにマーカ400が位置することとなる。したがって、レンズ周辺部の歪みによる影響を軽減させることができる。
【0048】
本実施形態1では、マーカ400は、ベルト132の全周にわたって無端状に形成される。これにより、ベルト132が回転しても常にマーカ400が歩行面に現れることとなる。マーカ400の幅は、一定であってよい。これにより、ベルト132が回転しても、マーカ400の位置および形状が変化せず、マーカ400の誤認識を回避できる。
【0049】
次に、マーカ400が第1のカメラ140および第2のカメラ141によってどのように撮像されるかについて、説明する。
図4は、実施形態1にかかるベルト132およびカメラの視野を示す斜視図である。図4(a)は、第1のカメラ140の視野F1を示し、図4(b)は、第2のカメラ141の視野F2を示す。
【0050】
第1のカメラ140は、前方かつ上方から、ベルト132およびベルト132上の訓練者900(不図示)の全身を撮像する。このため、第1のカメラ140の視野F1には、ベルト132の歩行面上のマーカ400が全て含まれる。第2のカメラ141の視野F2についても同様である。ただし、第2のカメラ141は、第1のカメラ140の下方に設置されており、視野F2は視野F1と異なる位置にある。また第2のカメラ141の画角は、第1のカメラ140の画角と異なってよい。
【0051】
ここで第1のカメラ140は、歩行面のマーカ400を上方から撮像した第1画像300を生成する。また第2のカメラ141は、歩行面のマーカ400を上方から撮像した第2画像を生成する。
【0052】
図5は、実施形態1にかかる第1画像300及び第2画像320の一例を示す図である。図5(a)は、第1画像300を示し、図5(b)は、第2画像320を示している。本図の左右方向は、歩行左右方向に対応し、本図の下上方向は、歩行前後方向に対応する。第1画像300及び第2画像320には、それぞれ、マーカ400の画像領域が含まれている。なお本図の斜線部分は、画像中のベルト132の画像領域である。
【0053】
図5(a)に示すように、第1画像300は、Xa×Yaの画素数を有する。そして例えば、第1画像300におけるマーカ400の画像領域は、特徴点Pa1~4を含んでいる。例えば特徴点は、エッジ処理やテンプレートマッチング等で抽出される点である。第1画像300において、特徴点Pa1~4は、ベルト132の最端部(ベルト132の折り返し部分であって、ベルト132の画像領域を画定する境界)とマーカ400との交点である。
【0054】
第1画像300におけるマーカ400の画像領域の最左端の特徴点は、特徴点Pa4であり、第1画像300の左端から画素数Xa1(<Xa)だけ中央寄りに位置する。同様に、第1画像300におけるマーカ400の画像領域の最右端の特徴点は、特徴点Pa2であり、第1画像300の右端から画素数Xa2(<Xa)だけ中央寄りに位置する。つまり第1画像300では、歩行左右方向における第1画像300の右端(又は左端)からマーカ400の右端(又は左端)までの画素数が、所定閾値以上であるといえる。ただし該閾値は、Xa未満であり、レンズ性能に基づいて定められる。
【0055】
第1画像300におけるマーカ400の画像領域の最上端の特徴点は、特徴点Pa1であり、第1画像300の上端から画素数Ya1(<Ya)だけ中央寄りに位置する。同様に、第1画像300におけるマーカ400の画像領域の最下端の特徴点は、特徴点Pa3であり、第1画像300の下端から画素数Ya2(<Ya)だけ中央寄りに位置する。つまり第1画像300では、歩行前後方向における第1画像300の上端(又は下端)からマーカ400の上端(又は下端)までの画素数が、所定閾値以上であるといえる。ただし該閾値は、Ya未満であり、レンズ性能に基づいて定められる。
【0056】
一方、図5(b)に示すように、第2画像320は、Xb×Ybの画素数を有する。そして例えば、第2画像320におけるマーカ400の画像領域は、特徴点Pb1~4を含んでいる。第2画像320においても、特徴点Pa1~4は、ベルト132の最端部とマーカ400との交点である。
【0057】
本図でも同様に、第2画像320では、歩行左右方向における第2画像320の右端(又は左端)からマーカ400の右端(又は左端)までの画素数は、本図では、Xb1、Xb2であり、所定閾値以上である。ただし該閾値は、Xb未満であり、レンズ性能に基づいて定められる。また、第2画像320では、歩行前後方向における第2画像320の上端(又は下端)からマーカ400の上端(又は下端)までの画素数は、本図では、Yb1、Yb2であり、所定閾値以上である。ただし該閾値は、Yb未満であり、レンズ性能に基づいて定められる。
【0058】
このようにカメラの視野範囲の中央寄りに、レンズ性能に基づいてマーカ400を配設することで、レンズ周辺部の歪みによる影響を軽減させることができる。
【0059】
図6は、実施形態1にかかる情報処理装置100の機能構成を示すブロック図である。情報処理装置100は、第1取得部11と、第2取得部12と、補正処理部13と、出力部14と、記憶部15とを備える。
【0060】
第1取得部11は、第1のカメラ140に接続され、カメラ校正時及び歩行訓練中に第1のカメラ140から第1画像300を取得する。第1取得部11は、第1画像300を補正処理部13に供給する。
【0061】
第2取得部12は、第2のカメラ141に接続され、カメラ校正時及び歩行訓練中に第2のカメラ141から第2画像320を取得する。第2取得部12は、第2画像320を補正処理部13に供給する。
【0062】
補正処理部13は、カメラ校正時に取得した第1画像300及び第2画像320の各々に含まれるマーカ400の画像領域の位置に基づいて、歩行訓練中に取得した第1画像300及び第2画像320の少なくとも一方を補正する。具体的には、補正処理部13は、カメラ校正時に取得した第1画像300に写るマーカ400の画像領域の特徴点の位置と、カメラ校正時に取得した第2画像320に写るマーカ400の画像領域の、対応する特徴点の位置とに基づいて、カメラパラメータとして、補正パラメータを算出する。例えば、補正パラメータは、第1画像300に写るマーカ400の画像領域の複数の特徴点が、第2画像320に写るマーカ400の画像領域における、各々に対応する特徴点に一致させるための変換に用いられるパラメータである。そして補正処理部13は、歩行訓練中に取得した第1画像300及び第2画像320の少なくとも一方を、補正パラメータを用いて変換する。変換には、線形変換、例えばアフィン変換が用いられてよい。
【0063】
補正処理部13は、少なくとも一方に補正処理が施された第1画像300及び第2画像320を、出力部14に供給する。尚、「少なくとも一方に補正処理が施された第1画像300及び第2画像320」を、単に「補正処理後の第1画像300及び第2画像320」と呼ぶことがある。
【0064】
出力部14は、システム制御部200に接続され、補正処理後の第1画像300及び第2画像320をシステム制御部200に出力(送信)する。
【0065】
記憶部15は、情報処理装置100の補正処理に必要な情報、例えば補正パラメータ等を、記憶する記憶媒体である。
【0066】
図7は、実施形態1にかかる情報処理装置100の情報処理手順を示すフローチャートである。
【0067】
まず情報処理装置100の第1取得部11は、第1のカメラ140から第1画像300のデータを取得し、第2取得部12は、第2のカメラ141から第2画像320を取得する(ステップS10)。
【0068】
次に、補正処理部13は、各画像(第1画像300、第2画像320)に含まれるマーカ400の位置を検出する(ステップS11)。例えば、補正処理部13は、各画像に含まれるマーカ400の特徴点を3点以上検出する。そして補正処理部13は、第1画像300に含まれる各特徴点と、第2画像320に含まれる各特徴点との対応付けを行う。
【0069】
次に、補正処理部13は、互いに対応付けられた特徴点の位置座標に基づいて、第1画像300の各特徴点を、各々が対応する第2画像320の特徴点に一致させるための補正パラメータを算出する(ステップS12)。例えば、補正処理部13は、対応付けられた特徴点の位置座標に基づいて、アフィン変換のパラメータを補正パラメータとして算出し、記憶部15に格納する。尚、補正処理部13は、後述のステップS16において、第1画像300及び第2画像320のいずれかを補正する場合は、1種類の画像に対して補正パラメータを算出するが、両方を補正する場合は、各画像に対して補正パラメータを算出する。
【0070】
続いて情報処理装置100は、計測を開始するか否かを判定する(ステップS13)。例えば、計測を開始する場合とは、オペレータが計測開始を入力した場合などである。情報処理装置100は、計測を開始しない場合(ステップS13でNo)、本処理を繰り返し、計測を開始する場合(ステップS13でYes)、処理をステップS14に進める。
【0071】
第1取得部11及び第2取得部12は、計測が開始されたことに応じて、第1画像300及び第2画像320をそれぞれ取得する(ステップS14)。
【0072】
そして補正処理部13は、算出した補正パラメータを用いて、第1画像300又は第2画像320を補正し(ステップS15)、補正処理後の画像を出力する(ステップS16)。例えば、補正処理部13は、補正パラメータを用いて、アフィン変換により第1画像300を補正する。そして補正処理部13は、補正処理を施した第1画像300と、ステップS14で取得した第2画像320とを、関連付けてシステム制御部200に送信する。尚、補正処理部13は、補正パラメータを用いて、第1画像300及び第2画像320の両方を補正してもよい。この場合、補正処理部13は、補正処理を施した第1画像300と、補正処理を施した第2画像320とを、関連付けてシステム制御部200に送信する。
【0073】
そして情報処理装置100は、計測を終了するか否かを判定する(ステップS17)。例えば、計測を終了する場合とは、オペレータが計測終了を入力した場合などである。情報処理装置100は、計測を終了しない場合(ステップS17でNo)、処理をステップS14に戻し、計測を終了する場合(ステップS17でYes)、処理を終了する。
【0074】
なお、上述の例では、補正処理部13は、計測開始前にカメラ校正をする、すなわち補正パラメータを算出するとした。しかし補正処理部13は、計測開始前に代えて計測中に補正パラメータを算出してもよいし、計測開始前に加えて計測中に補正パラメータを更新してもよい。そして補正処理部13は、最新の補正パラメータを用いて、画像を補正する。なお、ベルト132が回転してもマーカ400が常に歩行面に現れるように設置されているため、本処理が実現可能となる。
【0075】
このように実施形態1の歩行訓練システム1によれば、少なくとも歩行面に現れるようにベルト132の周方向に沿ってマーカ400が形成されている。このため、情報処理装置100は、ベルト132が回転しても撮像画像からマーカ400を検出できる。またマーカ400は、カメラの視野の中央寄りに形成されている。したがって、レンズ周辺部の歪みによる影響を軽減できる。このように歩行訓練システム1により、複数カメラ間の校正においてマーカ400の誤認識を防止できる。これにより歩行訓練システム1は、歩行状態の判定精度を向上させ、ひいては関節の補助を適切に行うことができる。
【0076】
<実施形態2>
次に、実施形態2について説明する。実施形態1では、画像上でベルト132の最端部とマーカ400との間の交点が特徴点として抽出されていた。しかし画像上でのベルト132の最端部は、折り返し部分であるためマーカ400の形状に歪みが生じやすく、かつカメラ視野の端部に位置しやすい。またカメラの位置ずれにより、ベルト132の最端部をカメラが捉えきれなかった場合も、カメラの校正を正しく行うことが困難となる。したがって、このような事態を回避するためには、ベルト132の最端部を避けてマーカ400の特徴点を抽出することが求められる。実施形態2では、マーカは、ベルト132の全周にわたって予め定められた距離以上の間隔で配列する複数の個別マーカから構成される。これにより、マーカの特徴点がベルト最端部よりも内側、つまり歩行面内側で複数の特徴点を形成可能になる。そして情報処理装置100の補正処理部13は、ベルト132の最端部を避けてマーカの特徴点を抽出することが容易となる。したがって、いずれかのカメラがベルト最端部を写しきれなかった場合にもマーカの特徴点を検出できる。また、レンズ周辺部の歪みの影響を軽減できる。
【0077】
図8は、実施形態2にかかるマーカの第1の例を説明するための図である。本図には、マーカ400aの画像領域を含む第1画像300aが示されている。
【0078】
マーカ400aは、歩行最後方から順に、複数の個別マーカ401-1,2,…7を含んでいる。なお個別マーカ401の個数は、7に限らない。各個別マーカ401は、同一形状を有し、本図では互いに同じ長さ及び幅の矩形形状を有する。そして各個別マーカ401は、隣接する個別マーカ401からベルト132の周方向に沿って予め定められた距離以上離隔して配置される。本図では、隣接する個別マーカ401の間隔は一定であるが、これに限らない。なお第1画像300aで個別マーカ401-1の画像領域の形状が他の個別マーカ401の画像領域の形状と異なるのは、個別マーカ401-1がベルト132の折り返し部分に位置するためである。
【0079】
例えば情報処理装置100の補正処理部13は、第1画像300aにおける最も上に位置する個別マーカ401-1の左下端と、上から3つ目の個別マーカ401-3の右下端と、上から7つ目の個別マーカ401-7の右上端とを特徴点として抽出する。
【0080】
なお、ここでも、第1画像300aでは、歩行左右方向における第1画像300aの両端からマーカ400aの両端までの画素数が、所定閾値以上であるといえる。ただし該閾値は、Xa未満であり、レンズ性能に基づいて定められる。
【0081】
また、第1画像300aでは、歩行左右方向における第1画像300aの右端(又は左端)から少なくとも1つの個別マーカ401の右端(又は左端)までの画素数は、本図では、Xa1、Xa2であり、所定閾値以上である。また第1画像300aでは、歩行前後方向における第1画像300aの上端(又は下端)から少なくとも1つの個別マーカ401の上端(又は下端)までの画素数は、本図では、Ya1、Ya2であり、所定閾値以上である。
【0082】
なお補正処理部13は、第2画像320a(不図示)についても同様に、第2画像320aにおける最も上に位置する個別マーカの左下端と、上から3つ目の個別マーカの右下端と、上から7つ目の個別マーカの右上端とを特徴点として抽出する。第2画像320aについても、同様に、歩行左右方向における第2画像320aの右端(又は左端)から少なくとも1つの個別マーカ401の上端(又は下端)までの画素数は、所定閾値以上である。そして歩行前後方向における第2画像320aの上端(又は下端)から少なくとも1つの個別マーカ401の右端(又は左端)までの画素数は、所定閾値以上である。
【0083】
図9は、実施形態2にかかるマーカの第2の例を説明するための図である。本図には、マーカ400bの画像領域を含む第1画像300bが示されている。
【0084】
マーカ400bは、歩行最後方から順に、複数の個別マーカ402-1,2,…9を含んでいる。なお個別マーカ402の個数は、9に限らない。各個別マーカ402は、同一形状を有し、本図では互いに同じ長さ及び幅のひし形形状を有する。そして各個別マーカ402は、隣接する個別マーカ402との間で上部又は下部の端点を共有する態様で、配列される。
【0085】
例えば情報処理装置100の補正処理部13は、第1画像300bにおける最も上に位置する個別マーカ402-1の下端点(個別マーカ402-2との連結点)と、上から2つ目の個別マーカ402-2の左端点と、上から8つ目の個別マーカ402-8の下端点(個別マーカ402-9との連結点)及び右端点とを特徴点として抽出する。第2画像320b(不図示)についても同様である。
【0086】
第1画像300bの上端(又は下端)とマーカ400bの上端(又は下端)までの画素数と、第1画像300bの右端(又は左端)とマーカ400bの右端(又は左端)までの画素数と、については、第1画像300aと同様である。
【0087】
第1~2の例では、個別マーカが互いに同一形状である場合について説明した。しかし個別マーカが全て同一形状である場合、例えば第1画像300bでは個別マーカ402-8の下端点が特徴点と認識され、第2画像320bにおいては個別マーカ402-8とは異なる個別マーカ402-7が、上記特徴点と対応する特徴点であるとして認識される可能性がある。これにより、特徴点の対応付けの誤認識により、補正パラメータの算出精度が低下し、カメラ間の校正が正しくなされないという問題が生じる。これを回避するために、マーカは、少なくとも歩行面において互いに異なる形状又は色を有する個別マーカで構成されてよい。
【0088】
図10は、実施形態2にかかるマーカの第3の例を説明するための図である。本図には、マーカ400cの画像領域を含む第1画像300cが示されている。
【0089】
マーカ400cは、歩行最後方から順に、複数の個別マーカ403-1,2,…6を含んでいる。なお個別マーカ403の個数は、6に限らない。各個別マーカ403は、互いに異なる形状を有する。本図では、個別マーカ403-1,2,…6の形状は、それぞれ、円形、三角形、矩形、ひし形、五角形及び星型である。そして各個別マーカ403は、隣接する個別マーカ403から所定距離以上の間隔で離隔している。
【0090】
例えば情報処理装置100の補正処理部13は、第1画像300cにおける三角形状の個別マーカ403-2の上端点と、ひし形状の個別マーカ403-4の左右端点と、星型の個別マーカ403-6の上端点とを特徴点として抽出する。第2画像320c(不図示)についても同様である。情報処理装置100の補正処理部13は、同じ形状として認識された個別マーカ403の特徴点同士を対応付けて、補正パラメータを算出する。
【0091】
なお、ベルト132の歩行面として表れていない面(すなわち、歩行面と反対方向に走行する面)上の個別マーカ403も、互いに異なる形状であって、その形状は、個別マーカ403-1,2,…6とも異なる形状であってよい。すなわち、マーカは、ベルト132の全周にわたって互いに異なる形状(又は色)を有する個別マーカから構成されてよい。
【0092】
図11は、実施形態2にかかるマーカの第4の例を説明するための図である。本図には、マーカ400dの画像領域を含む第1画像300dが示されている。
【0093】
マーカ400dは、歩行最後方から順に、複数の個別マーカ404-1,2,…5を含んでいる。なお個別マーカ404の個数は、5に限らない。各個別マーカ404は、幅方向の長さは互いに同じではあるが、互いに異なるアスペクト比(縦横比)を有する矩形状を有する。そして各個別マーカ404は、隣接する個別マーカ404から予め定められた間隔で離隔している。
【0094】
例えば情報処理装置100の補正処理部13は、第1画像300dにおけるアスペクト比が第1の値である個別マーカ404-2の右上端点と、アスペクト比が第2の値である個別マーカ403-3の左下端点と、アスペクト比が第3の値である個別マーカ404-4の右下端点とを特徴点として抽出する。第2画像についても同様である。情報処理装置100の補正処理部13は、アスペクト比が同じであると認識された個別マーカ404の特徴点同士を対応付けて、補正パラメータを算出する。
【0095】
なお、ベルト132の歩行面として表れていない面(すなわち、歩行面と反対方向に走行する面)上の個別マーカ404も、互いに異なるアスペクト比を有しており、そのアスペクト比は、個別マーカ404-1,2,…5とも異なってよい。すなわち、マーカは、ベルト132の全周にわたって互いに異なるアスペクト比を有する個別マーカから構成されてよい。
【0096】
第3~4の例では、マーカが、歩行面において互いに異なる形状、色又はアスペクト比を有する個別マーカから構成されるとした。しかし、マーカは、歩行面において同一の形状、色又はアスペクト比を有する個別マーカを含んでもいてもよい。
【0097】
図12は、実施形態2にかかるマーカの第5の例を説明するための図である。本図には、ベルト132の展開図が示される。本図の右肩上がりの斜線部分は、ある時点での歩行面Sを示している。
【0098】
ベルト132には、ベルト132の半周(P1,P2)を半周期、全周(P)を1周期とする個別マーカ405のパターンが形成されている。各半周P1,P2上の各個別マーカ405は、隣接する個別マーカ405から予め定められた間隔で離隔している。そして各半周P1,P2上の各個別マーカ405は、歩行前後方向の長さは互いに同じではあるが、幅方向の長さは段階的に異なる。したがって、各半周P1,P2上の各個別マーカ405は、段階的に異なるアスペクト比を有する。半周P1及びP2上の個別マーカ405は、互いに境界線D-D’に対して線対称である。したがって歩行面Sが境界線D-D’を跨ぐ場合には、歩行面S上において同一の形状を有する個別マーカ405が2つ存在することになる。
【0099】
しかしこのような場合であっても、情報処理装置100の補正処理部13は、特徴点として抽出対象の個別マーカ405のアスペクト比と、これに隣接する個別マーカ405との間のアスペクト比の変化率や差分値とに基づいて、両画像(第1及び第2画像)における対応する個別マーカ405を識別できる。例えば、歩行面S上の上から2番目に位置する個別マーカ405-2は、上から5番目に位置する個別マーカ405-5と同様のアスペクト比を有する。しかし、個別マーカ405-2は、上から1番目に位置する個別マーカ405-1と比べてアスペクト比が増加傾向にある。一方で、個別マーカ405-5は、上から4番目に位置する個別マーカ405-4と比べてアスペクト比が減少傾向にある。したがって、情報処理装置100の補正処理部13は、個別マーカ405-2と個別マーカ405-5とを区別できる。
【0100】
なおマーカは、ベルト132の半周を1周期としたパターンを形成し、1パターン中に互いに同じ形状を有する個別マーカが含まれてもよい。
【0101】
図13は、実施形態2にかかるマーカの第6の例を説明するための図である。本図には、ベルト132の展開図が示される。本図の右肩上がりの斜線部分は、ある時点での歩行面Sを示している。
【0102】
ベルト132には、ベルト132の半周(P3,P4)を1周期とする個別マーカ406のパターンが形成されている。各半周P3,P4上の各個別マーカ406は、隣接する個別マーカ406から予め定められた間隔で離隔している。そして半周P3と半周P4とは、境界線D1-D1’で画定される。したがって歩行面Sが境界線D1-D1’を跨ぐ場合には、歩行面S上において同一の形状を有する個別マーカ406が2つ以上存在することになる。
【0103】
そして半周P3に含まれる1/4周P5,P6上の個別マーカ406は、互いに境界線D2-D2’に対して線対称になるように配置されている。各1/4周P5,P6上の個別マーカ406は、歩行前後方向の長さは互いに同じではあるが、幅方向の長さは段階的に異なる。したがって、各1/4周P5,P6上の各個別マーカ406は、段階的に異なるアスペクト比を有する。したがって歩行面Sが境界線D2-D2’を跨ぐ場合には、歩行面S上において同一の形状を有する個別マーカ406が2つ存在することになる。
【0104】
しかしこのような場合であっても、第5の例と同様に、情報処理装置100の補正処理部13は、特徴点として抽出対象の個別マーカ406のアスペクト比と、これに隣接する個別マーカ406との間のアスペクト比の変化率や差分値とに基づいて、両画像(第1及び第2画像)における対応する個別マーカ406を識別できる。例えば、歩行面S上の上から4番目に位置する個別マーカ406-1は、上から7番目に位置する個別マーカ406-2と同様のアスペクト比を有する。そして二つの個別マーカの間には、境界線D2-D2’が存在する。しかし、情報処理装置100の補正処理部13は、アスペクト比の増減に基づいて、アスペクト比が減少傾向の個別マーカ406-1と、アスペクト比が増加傾向の個別マーカ406-2とを区別できる。これは、境界線D1-D1’が間にある個別マーカ406-3及び個別マーカ406-4についても同様である。
【0105】
上述の実施形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、各種処理を、コンピュータのプロセッサにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0106】
図14は、実施形態1~2にかかるコンピュータ1900の概略構成図である。
コンピュータ1900は、主要なハードウェア構成として、プロセッサ1000と、ROM1010(Read Only Memory)と、RAM1020(Random Access Memory)と、インターフェース部1030(IF;Interface)とを有する。プロセッサ1000、ROM1010、RAM1020及びインターフェース部1030は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0107】
プロセッサ1000は、制御処理及び演算処理等を行う演算装置としての機能を有する。プロセッサ1000は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、DSP(digital signal processor)又はASIC(application specific integrated circuit)並びにこれらの組み合わせであってよい。ROM1010は、プロセッサ1000によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するための機能を有する。RAM1020は、処理データ等を一時的に記憶するための機能を有する。インターフェース部1030は、有線又は無線を介して外部と信号の入出力を行う。また、インターフェース部1030は、ユーザによるデータの入力の操作を受け付け、ユーザに対して情報を表示する。例えば、インターフェース部1030は、第1のカメラ140及び第2のカメラ141と通信を行う。
【0108】
上述の例において、プログラムは、ROM1010の一例として様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ1900に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータ1900に供給できる。
【0109】
上述の実施形態ではコンピュータ1900は、パーソナルコンピュータやワードプロセッサ等を含むコンピュータシステムで構成される。しかしこれに限らず、コンピュータ1900は、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)のサーバ、コンピュータ(パソコン)通信のホスト、インターネット上に接続されたコンピュータシステム等によって構成されることも可能である。また、ネットワーク上の各機器に機能分散させ、ネットワーク全体でコンピュータ1900を構成することも可能である。したがって、情報処理装置の構成要素がそれぞれ異なる機器に分散されていてもよい。
【0110】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の各実施形態では、訓練者900が、一方の脚に麻痺を患う片麻痺患者である場合を例に説明したが、それに限られない。訓練者900は、例えば、両脚に麻痺を患う患者であってもよい。その場合、訓練者900は、両脚に歩行補助装置120を装着して訓練を実施する。或いは、訓練者900は、何れの脚にも歩行補助装置120を装着していなくてもよい。
【0111】
また、上述の実施形態では、システム制御部200は、荷重分布センサ150から出力された荷重分布情報及び情報処理装置100から供給される補正後の画像に基づいて、訓練者900の歩行状態を測定するとした。しかし、システム制御部200は、荷重分布センサ150の荷重分布情報を歩行状態の測定の基礎としなくてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 歩行訓練システム(歩行状態測定システム)
11 第1取得部
12 第2取得部
13 補正処理部
14 出力部
15 記憶部
100 情報処理装置
110 安全装具
111 ハーネスワイヤ
112 ハーネス引張部
113 振動出力部
120 歩行補助装置
130 フレーム
130a 手摺り
131 トレッドミル
132 ベルト
133 制御盤
134 前側ワイヤ
135 前側引張部
136 後側ワイヤ
137 後側引張部
138 訓練用モニタ
140 第1のカメラ
141 第2のカメラ
150 荷重分布センサ
151 プーリ
200 システム制御部
211 トレッドミル駆動部
214 引張駆動部
215 ハーネス駆動部
220 補助制御部
300,300a,300b,300c,300d 第1画像
320 第2画像
400,400a,400b,400c,400d,400e,400f マーカ
401,402,403,404,405,406 個別マーカ
900 訓練者(被験者)
1000 プロセッサ
1010 ROM
1020 RAM
1030 インターフェース部(IF)
図1
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