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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190801
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/08 20060101AFI20221220BHJP
   B65H 3/48 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B65H3/08 360B
B65H3/48 310A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099245
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】前田 はるる
(72)【発明者】
【氏名】前田 純至
(72)【発明者】
【氏名】田中 志郎
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 政紘
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB05
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343JB02
3F343JB27
3F343JD28
3F343KB04
3F343LA04
3F343LC04
3F343LC08
3F343LD07
3F343MA03
3F343MA13
3F343MA40
3F343MB03
3F343MB13
3F343MB14
3F343MC13
3F343MC28
(57)【要約】
【課題】複数枚積層された枚葉紙である用紙を一枚一枚吸着し、分離させて印刷部に給紙するセパレート部を備えた印刷システムに関し、システム運転中も圧力測定値を用いて、給紙状態を監視し、正常時の圧力測定値に対し、圧力目標値の値に差異があるときに、エアー圧を的確に調整できる。
【解決手段】制御部200は、記憶部210と、印刷部20から受信した稼働停止信号に基づき、印刷部20の停止回数を計測する停止回数計測部230と、停止回数計測部230により計測された停止回数が予め設定された規定回数以下の場合に、正常時の圧力測定値に分類し、記憶部210に記憶する正常時分類部240と、正常時の圧力測定値に対し、記憶部210に記憶された圧力目標値の値に差異があるときに、正常時の圧力測定値を新たな圧力目標値の候補として、表示部120に表示する目標値予測部260とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚積層された枚葉紙である用紙を一枚一枚吸着し、分離させて印刷部に給紙するセパレート部を備えた印刷システムであって、
前記セパレート部は、
前記用紙を複数枚載置可能な用紙載置部と、
前記用紙載置部に積層された複数枚の前記用紙に、エアーを供給して一枚一枚の前記用紙に分離させる複数個の分離ノズルと、
前記分離ノズルから供給されたエアーにより分離された一枚の前記用紙を、エアーの吸着圧により吸着して前記印刷部に搬送する複数個の吸着パッドと、
前記分離ノズル及び前記吸着パッドのエアー圧を個々に測定する複数個のエアー圧測定部と、
前記分離ノズル及び前記吸着パッドの前記エアー圧を個々に調整するエアー圧調整部と、
前記印刷部、前記エアー圧測定部及び前記エアー圧調整部にそれぞれ電気的に接続された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記分離ノズル及び前記吸着パッドの圧力目標値と、前記エアー圧測定部により測定された圧力測定値とを、前記用紙の種類毎に記憶する記憶部と、
前記印刷部から受信した稼働停止信号に基づき、前記印刷部の停止回数を計測する停止回数計測部と、
前記停止回数計測部により計測された前記停止回数が予め設定された規定回数以下の場合に、正常時の圧力測定値に分類して、前記記憶部に記憶する正常時分類部と、
前記正常時の圧力測定値に対し、前記記憶部に記憶された前記圧力目標値の値に差異があるときに、前記正常時の圧力測定値を新たな前記圧力目標値の候補として、表示部に表示する目標値予測部と、を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
給紙が安定した時の圧力値を前記圧力目標値に登録できるようにしていることを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記セパレート部には、
前記制御部に電気的に接続され、前記セパレート部による給紙動作を動画で撮影するカメラを備え、
前記制御部には、前記正常時の圧力測定値が測定されたときに、前記カメラにより撮影された動画情報を、前記正常時の圧力測定値と関連付ける動画関連付け部を備え、
前記目標値予測部により前記新たな圧力目標値の候補として前記正常時の圧力測定値が表示されるときに、前記動画関連付け部により前記正常時の圧力測定値に関連付けられた前記動画情報を参照できるようにしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記制御部には、前記吸着パッドと前記分離ノズルとの前記圧力測定値の数値情報を前記記憶部から読み出し、一定時間の吸着パッドの負圧のピーク値の平均値をとり、分離ノズルから供給するエアーの正圧のピーク値の平均値をとり、前記平均値の推移を、波形を用いて前記表示部に表示する圧力波形処理部を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記制御部には、前記用紙の縦サイズと、横サイズと、単位面積当たりの重量情報とを少なく含む用紙情報及び前記圧力目標値を、前記用紙の種類毎に登録する用紙情報登録部と、
新規の前記用紙について、新たに入力された前記用紙の種類と前記用紙情報とを登録する新規用紙登録部と、
前記用紙情報登録部に既に登録されている既登録用紙のうちから、前記新規用紙登録部に登録された新規用紙の種類と一致する前記既登録用紙を抽出し、抽出した前記既登録用紙の前記用紙情報と、前記新規用紙の前記用紙情報とを比較して、前記既登録用紙の縦サイズ差分、横サイズ差分、単位面積当たりの重量情報差分を算出する用紙差分算出部と、
前記縦サイズ差分に第1係数を予め設定し、前記横サイズ差分に第2係数を予め設定し、前記単位面積当たりの重量情報差分に第3係数を予め設定し、前記第1係数、前記第2係数及び前記第3係数は「0<=係数<=1」の範囲内にあり、下記の式(1)を用いて、前記既登録用紙に対する前記新規用紙の類似度を演算する類似度演算部と、
前記印刷部から受信した稼働信号に基づき単位時間当たりの実際回転数を求め、仕様上の単位時間当たりの最高回転数を仕様最高回転数として、前記実際回転数を前記仕様最高回転数で除算した値に対する重みづけである第4係数を予め設定し、前記印刷部から受信した前記稼働停止信号に基づき単位時間当たりの停止発生回数を求め、前記停止発生回数の修正値である第5係数を予め設定し、下記の式(2)を用いて、前記新規用紙を用いた場合の安定稼働度を演算する安定稼動度演算部と、
同じ前記既登録用紙の前記類似度と前記安定稼働度とを各々乗算し、前記既登録用紙の乗算値を取得し、前記乗算値のうち、値の最も大きい前記乗算値を最大乗算値とし、前記最大乗算値を有する前記既登録用紙について、前記用紙情報登録部に照合し、前記圧力目標値を抽出し、抽出した前記圧力目標値を推奨値とし、前記表示部に表示する推奨値演算部と、を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷システム。
類似度=1/|縦サイズ差分|×第1係数+|横サイズ差分|×第2係数+|単位面積当たりの重量情報差分|×第3係数 ・・・ 式(1)
安定稼働度=(実際回転数/仕様最高回転数)×第4係数-(停止発生回数×第5係数) ・・・ 式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚積層された枚葉紙である用紙を一枚一枚吸着し、分離させて印刷部に給紙するセパレート部を備えた印刷システムに関し、システム運転中も圧力測定値を用いて、給紙状態を監視し、正常時の圧力測定値に対し、圧力目標値の値に差異があるときに、エアー圧を的確に調整できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給紙パイルに収納された印刷用紙を、1枚ずつ分離させ、フィーダーボードに乗せて印刷部に送り込むように構成された給紙手段を有する枚葉印刷機の給紙装置が知られている(特許文献1の段落「0009」及び図1参照)。
従来の給紙装置は、印刷用紙の紙種、坪量、寸法を入力する手段と、入力された紙種、坪量、寸法より、分離エアー供給ノズルへの分離エアー供給量、さばきエアー供給ノズルへのさばきエアー供給量、印刷用紙を吸着するサッカーへの吸着圧を計算する計算装置と、分離エアー供給ノズルへの分離エアー供給量、さばきエアー供給ノズルへのさばきエアー供給量、印刷用紙を吸着するサッカーへの吸着圧を自動で調整する手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-100169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の給紙装置では、印刷初期段階のエアー圧を自動的に設定できる。しかし、従来の給紙装置は、装置がエアー圧を自動設定するが、それでも給紙が安定しない場合、人が圧力値を再設定する。また、従来の給紙装置は、エアー圧に異常が発生した場合でも異常がわからず、又、エアー圧の正常時と異常発生時でフィーダー上での紙の動きがわからなかったり、数々の問題点があった。
そこで、本発明は、上記した問題点に鑑み、システム運転中も圧力測定値を用いて、給紙状態を監視し、正常時の圧力測定値に対し、圧力目標値の値に差異があるときに、エアー圧を的確に調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る印刷システムは、複数枚積層された枚葉紙である用紙を一枚一枚吸着し、分離させて印刷部に給紙するセパレート部を備えた印刷システムであって、前記セパレート部は、前記用紙を複数枚載置可能な用紙載置部と、前記用紙載置部に積層された複数枚の前記用紙に、エアーを供給して一枚一枚の前記用紙に分離させる複数個の分離ノズルと、前記分離ノズルから供給されたエアーにより分離された一枚の前記用紙を、エアーの吸着圧により吸着して前記印刷部に搬送する複数個の吸着パッドと、前記分離ノズル及び前記吸着パッドのエアー圧を個々に測定する複数個のエアー圧測定部と、前記分離ノズル及び前記吸着パッドの前記エアー圧を個々に調整するエアー圧調整部と、前記印刷部、前記エアー圧測定部及び前記エアー圧調整部にそれぞれ電気的に接続された制御部と、を備え、前記制御部は、前記分離ノズル及び前記吸着パッドの圧力目標値と、前記エアー圧測定部により測定された圧力測定値とを、前記用紙の種類毎に記憶する記憶部と、前記印刷部から受信した稼働停止信号に基づき、前記印刷部の停止回数を計測する停止回数計測部と、前記停止回数計測部により計測された前記停止回数が予め設定された規定回数以下の場合に、正常時の圧力測定値に分類して、前記記憶部に記憶する正常時分類部と、前記正常時の圧力測定値に対し、前記記憶部に記憶された前記圧力目標値の値に差異があるときに、前記正常時の圧力測定値を新たな前記圧力目標値の候補として、表示部に表示する目標値予測部と、を備える。
【0006】
また、本発明の一態様に係る印刷システムは、給紙が安定した時の圧力値を前記圧力目標値に登録できるようにしている。
本発明の一態様に係る印刷システムは、前記セパレート部に、前記制御部に電気的に接続され、前記セパレート部による給紙動作を動画で撮影するカメラを備え、前記制御部には、前記正常時の圧力測定値が測定されたときに、前記カメラにより撮影された動画情報を、前記正常時の圧力測定値と関連付ける動画関連付け部を備え、前記目標値予測部により前記新たな圧力目標値の候補として前記正常時の圧力測定値が表示されるときに、前記動画関連付け部により前記正常時の圧力測定値に関連付けられた前記動画情報を参照できるようにしている。
【0007】
本発明の一態様に係る印刷システムは、前記制御部が、前記吸着パッドと前記分離ノズルとの前記圧力測定値の数値情報を前記記憶部から読み出し、一定時間の吸着パッドの負圧のピーク値の平均値をとり、分離ノズルから供給するエアーの正圧のピーク値の平均値をとり、前記平均値の推移を、波形を用いて前記表示部に表示する圧力波形処理部を備えている。
【0008】
本発明の一態様に係る印刷システムは、前記制御部に、前記用紙の縦サイズと、横サイズと、単位面積当たりの重量情報とを少なく含む用紙情報及び前記圧力目標値を、前記用紙の種類毎に登録する用紙情報登録部と、新規の前記用紙について、新たに入力された前記用紙の種類と前記用紙情報とを登録する新規用紙登録部と、前記用紙情報登録部に既に登録されている既登録用紙のうちから、前記新規用紙登録部に登録された新規用紙の種類と一致する前記既登録用紙を抽出し、抽出した前記既登録用紙の前記用紙情報と、前記新規用紙の前記用紙情報とを比較して、前記既登録用紙の縦サイズ差分、横サイズ差分、単位面積当たりの重量情報差分を算出する用紙差分算出部と、前記縦サイズ差分に第1係数を予め設定し、前記横サイズ差分に第2係数を予め設定し、前記単位面積当たりの重量情報差分に第3係数を予め設定し、前記第1係数、前記第2係数及び前記第3係数は「0<=係数<=1」の範囲内にあり、下記の式(1)を用いて、前記既登録用紙に対する前記新規用紙の類似度を演算する類似度演算部と、前記印刷部から受信した稼働信号に基づき単位時間当たりの実際回転数を求め、仕様上の単位時間当たりの最高回転数を仕様最高回転数として、前記実際回転数を前記仕様最高回転数で除算した値に対する重みづけである第4係数を予め設定し、前記印刷部から受信した前記稼働停止信号に基づき単位時間当たりの停止発生回数を求め、前記停止発生回数の修正値である第5係数を予め設定し、下記の式(2)を用いて、前記新規用紙を用いた場合の安定稼働度を演算する安定稼動度演算部と、同じ前記既登録用紙の前記類似度と前記安定稼働度とを各々乗算し、前記既登録用紙の乗算値を取得し、前記乗算値のうち、値の最も大きい前記乗算値を最大乗算値とし、前記最大乗算値を有する前記既登録用紙について、前記用紙情報登録部に照合し、前記圧力目標値を抽出し、抽出した前記圧力目標値を推奨値とし、前記表示部に表示する推奨値演算部と、を備えている。
類似度=1/|縦サイズ差分|×第1係数+|横サイズ差分|×第2係数+|単位面積当たりの重量情報差分|×第3係数 ・・・ 式(1)
安定稼働度=(実際回転数/仕様最高回転数)×第4係数-(停止発生回数×第5係数) ・・・ 式(2)
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、システム運転中も圧力測定値を用いて、給紙状態を監視し、正常時の圧力測定値に対し、圧力目標値の値に差異があるときに、エアー圧を的確に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に基づく実施形態に係り、セパレート部の制御部を説明するためのブロック図である。
図2】本発明に基づく実施形態に係り、印刷システムの概略を説明するための側面図である。
図3】本発明に基づく実施形態に係り、印刷システムの概略を説明するための平面図である。
図4図3に対応し、セパレート部を拡大した平面図である。
図5】本発明に基づく実施形態に係り、エアーの供給経路を説明するため回路図である。
図6】本発明に基づく実施形態に係り、1吸い部の負圧の波形を説明するための波形図である。
図7】本発明に基づく実施形態に係り、正面捌きの正圧の波形を説明するための波形図である。
図8】本発明に基づく実施形態に係り、横捌きの正圧の波形を説明するための波形図である。
図9】本発明に基づく実施形態に係り、図1の予知保全部の詳細を説明するためのブロック図である。
図10】本発明に基づく実施形態に係り、図1の適正圧力指示部の詳細を説明するためのブロック図である。
図11】本発明に基づく実施形態に係り、図1の制御部による動作を説明するためのフローチャートである。
図12】本発明に基づく実施形態に係り、エアー圧の波形図と、吸着パッドとの関係を説明するための説明図であって、(a)は正常時、(b)は異常時をそれぞれ示すものである。
図13】本発明に基づく実施形態に係り、1吸い部のエアー圧の波形図と、保全状態の良否との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(印刷システム10)
図2及び図3中、10は、印刷システムを示すものである。印刷システム10は、複数枚積層された枚葉紙である用紙50を一枚一枚吸着して印刷部20に給紙するセパレート部30を備える。
印刷部20と、セパレート部30との間には、フィーダーボード40を配置している。セパレート部30は、用紙50を一枚一枚吸着し、フィーダーボード40に搬送し、フィーダーボード40から用紙50を一枚一枚、印刷部20に給紙する。
印刷部20は、例えばオフセット印刷機であり、フィーダーボード40を介して、一枚一枚供給される用紙50に印刷する。
なお、印刷部20として、オフセット印刷機を例示したが、これに限定されず、インクジェットプリンタ、レーザープリンタなどでも良い。
ここで、「枚葉紙」は、巻き取られた紙をA判、B判、菊判や四六判など所要の寸法に断裁したシート状の紙をいう。
【0012】
(セパレート部30)
セパレート部30は、図2に示すように、次の各部を備える。
なお、次の(1)~(3)に示す各部については後述する。
(1)用紙載置部60
(2)用紙分離部70
(3)用紙吸着部80
なお、セパレート部30の各部は、上記した(1)~(3)に限らず、図1に示すように、表示部120、カメラ130、制御部200などを備えても良い。
【0013】
(用紙載置部60)
用紙載置部60は、図2に示すように、用紙50を複数枚載置可能なものである。
用紙載置部60に複数枚載置された用紙50を、積層部51ともいう。
【0014】
(用紙分離部70)
用紙分離部70は、図2に示すように、分離ノズル74から供給されたエアーにより、用紙載置部60に複数枚載置された用紙50を一枚一枚分離するものである。
用紙分離部70は、図2及び図3に示すように、用紙50の進行方向に対し、正面と、左右両側との三方にそれぞれ位置する。
三方の用紙分離部70は、(a)正面に位置する正面捌き71、(b)左側に位置する横捌き72、(c)右側に位置する横捌き73に分かれ、それぞれに分離ノズル74が配置されている。
【0015】
正面捌き71には、図4に示すように、正面捌き用分離ノズルA10~A50(5個)が配置される。左側の横捌き72には、左側の横捌き用分離ノズルB10~B30(3個)が配置される。右側の横捌き73には、左側の横捌き用分離ノズルC10~C30(3個)が配置される。
正面捌き用分離ノズルA10~A50、左側の横捌き用分離ノズルB10~B30、左側の横捌き用分離ノズルC10~C30(3個)は、正圧ポンプ75にそれぞれ接続されている。
【0016】
正圧ポンプ75は、図5に示すように、複数個、例えば2個有り、正面捌き用正圧ポンプ76と、横捌き用正圧ポンプ77から構成されている。
なお、正圧ポンプ75として、2個を例示したが、これに限定されず、図示しないが、単数、或いは3個以上設けても良い。
三方の用紙分離部70には、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については後述する。
(1)エアー圧測定部90
(2)手動操作部110
【0017】
(用紙吸着部80)
用紙吸着部80は、図2に示すように、用紙分離部70により一枚一枚分離された用紙50を、吸着パッド83により上方から吸着し、上昇させ、フィーダーボード40に向かって搬送するものである。
用紙吸着部80は、図2及び図3に示すように、用紙50の進行方向に対し、前後に位置する。
【0018】
前後の用紙吸着部80は、図2及び図3に示すように、(a)進行方向後方に位置する1吸い部81、(b)進行方向前方に位置する2吸い部82に分かれ、それぞれに吸着パッド83が配置されている。
1吸い部81には、図4に示すように、1吸い用吸着パッドD10~D40(4個)が配置される。2吸い部82には、2吸い用吸着パッドE10~E50(5個)が配置される。
1吸い用吸着パッドD10~D40、2吸い用吸着パッドE10~E50は、負圧ポンプ84にそれぞれ接続されている。
【0019】
(エアー圧測定部90)
エアー圧測定部90は、図5に示すように、分離ノズル74、吸着パッド83のエアー圧を個々に測定するものであり、分離ノズル74、吸着パッド83の個々に配置されている。
また、横捌き用分離ノズルB10~B30、C10~C30には、大元(正圧ポンプ75側)にも、第2エアー圧測定部91、92が配置されている。横捌き用分離ノズルB10~B30、C10~C30の吹き口に配置したエアー圧測定部90と、大元に配置した第2エアー圧測定部91、92とのエアー圧の測定値とを比較することで、吹き口でのエアー圧の圧力損失を判定し、低下時にエラーを発出する。これは、図1を用いて後述する制御部200の圧力損失判定部283により判定している。
【0020】
(エアー圧調整部100)
エアー圧調整部100は、図5に示すように、分離ノズル74、吸着パッド83へのエアーの供給量、すなわちエアー圧を個々に調整するものである。
エアー圧調整部100には、次のバルブがある。
(1)エアーバルブ101
エアーバルブ101は、エアーの逆流を防止するものであり、例えば逆止弁を使用している。
【0021】
(2)ロータリーバルブ102
ロータリーバルブ102は、エアーの開閉及び、エアー圧の自動調節又は手動調節に使用する。
なお、自動調節又は手動調節機構として、ロータリーバルブ102を例示したが、これに限定されない。
ロータリーバルブ102の各設定値は、圧力目標値に予め設定され、圧力目標値にプリセットされることで、ロータリーバルブ102の各設定値が自動調節又は手動調節される。
ここで、「圧力目標値」は、用紙50の種類毎のエアー圧測定部90、91の各箇所の圧力の目標値をいう。
【0022】
(3)手動操作部110
手動操作部110には、手動コック111、手動ツマミ112から構成され、ここでエアー圧の手動調節に使用している。
なお、手動操作部110として、手動コック111や手動ツマミ112を例示したが、これに限定されない。また、手動操作部110には、コックやツマミの位置をデジタル数値でとらえることができる機構を備えたものでも良い。
【0023】
(制御部200)
セパレート部30には、図1に示すように、制御部200が接続されている。
制御部200は、図示しないが、CPUを中心に構成され、ROM、RAM、I/Oポート等を備えたコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ(PC))により構成される。CPUは、ROMやHDD等に記憶される各種のプログラム及びデータを読み込むことで、後述する各部210~290としてそれぞれ機能する。
(制御部200の入力段)
制御部200の入力段には、図1に示すように、(1)エアー圧調整部100、(2)エアー圧測定部90、91、(3)カメラ130がそれぞれ接続されている。
なお、制御部200の入力段に接続されたパーツは、(1)~(3)に限定されず、入力手段としてキーボードやマウスなどを含んでも良い。
(カメラ130)
カメラ130は、セパレート部30による給紙動作を動画で撮影するものである。
【0024】
(制御部200の出力段)
制御部200の出力段には、図1に示すように、(1)印刷部20、(2)セパレート部30、(3)表示部120、(4)データベース300がそれぞれ接続されている。
なお、制御部200の出力段に接続されたパーツは、(1)~(4)に限定されず、スピーカ等を含んでいても良い。また、データベース300については、後述する。
【0025】
(表示部120)
表示部120は、例えばディスプレイから構成されている。
なお、表示部120としては、ディスプレイを例示したが、これに限らず、ランプ、LEDなどを含んでいても良い。
【0026】
(制御部200の構成)
制御部200には、図1に示すように、(1)記憶部210、(2)圧力設定部220、(3)停止回数計測部230、(4)正常時分類部240、(5)圧力比較部250、(6)目標値予測部260、(7)動画関連付け部270、(8)予知保全部280、(9)適正圧力指示部290を備える。
なお、制御部200の各部は、(1)~(9)に限定されない。また、(1)~(9)については、後述する。
【0027】
(データベース300)
データベース300は、セパレート部30の制御に必要な各種の情報が用紙50の種類毎に分類されて管理されている。
ここで、データベース300は、コンピュータ上で作成、保管され、専用のソフトウェア(データベース管理システム)によって管理されるものをいい、「DB」ともいう。
データベース300は、図1に示すように、大別すると、(1)生産管理DB301、(2)レシピ管理DB302、(3)チョコ停DB303から構成されている。
なお、データベース300は、(1)~(3)に限定されない。また、(1)~(3)については後述する。
【0028】
(データベース300による管理情報)
データベース300による管理情報は、用紙50の種類を中心として、(1)固有情報、(2)用紙情報、(3)圧力目標値、(4)圧力測定値、(5)印刷部20の情報、(6)動画情報、(7)その他の情報が含まれている。
用紙50の種類としては、(a)コート、(b)マット、(c)上質などがあり、以下「用紙分類」ともいう。
なお、用紙分類は、(a)~(c)に限定されない。
また、管理情報は、上記した(1)~(7)に例示した情報に限定されない。なお、上記した(1)~(7)については、後述する。
【0029】
(固有情報)
固有情報は、データを識別するものである。
(用紙情報)
(0030)
用紙情報は、銘柄、縦サイズ、横サイズ、単位面積当たりの重量情報がある。
ここで、「縦サイズ」は、用紙50の進行方向と平行に位置し、単位は「mm」を用いる。
ここで、「横サイズ」は、「縦サイズ」と直交する向きに位置し、「縦サイズ」と同様に、単位は「mm」を用いる。
ここで、「単位面積当たりの重量情報」は、用紙50の単位面積当たりの重量であるが、用紙50の重さ(坪量)で代用している。坪量とは、洋紙及び板紙1m当たりの重量のことで、「g/m」を用いる。
【0030】
(圧力目標値)
圧力目標値は、用紙50の種類毎のエアー圧測定部90、91の各箇所におけるエアー圧の目標値であり、単位は「kPa」を用いる。
(圧力測定値)
圧力測定値は、エアー圧測定部90、91の各箇所における実測値であり、単位は「kPa」を用いる。圧力測定値には、その他、測定日時、正常・異常の別が含まれる。
【0031】
(印刷部20の情報)
印刷部20の情報は、印刷部20の停止回数、停止時間、稼動時間、回転数などがある。
また、印刷部20の情報には、安定稼動度演算部295で用いられ、予め設定され、仕様上の単位時間当たり最高回転数、すなわち「仕様最高回転数」も含む。
【0032】
(動画情報)
動画情報は、カメラ130により撮影された動画データである。
動画情報は、後述する動画関連付け部270により、正常時の圧力測定値と異常時の圧力測定値とに関連付けられる。
【0033】
(その他の情報)
その他の情報には、生産品目名、品目コード、得意先名、得意先コード、生産数量、生産した時間などがある。
また、その他の情報には、第1~第5の「係数」も含まれ、予め設定されている。
【0034】
(生産管理DB301)
生産管理DB301には、先に説明した管理情報のうち、(2)用紙情報、(7)その他の情報(生産品目名、品目コード、得意先名、得意先コード、生産数量、生産した時間)が管理されている。
【0035】
(レシピ管理DB302)
レシピ管理DB302には、先に説明した管理情報のうち、(2)用紙情報、(3)圧力目標値(用紙分類毎の各箇所の圧力目標値)が管理されている。
ここで、「レシピ」は、圧力目標値をいい、「レシピ」ともいう。
【0036】
(チョコ停DB303)
チョコ停DB303には、先に説明した管理情報のうち、(2)用紙情報、(3)圧力目標値(各箇所の圧力目標値)、(4)圧力測定値(各箇所の圧力測定値(生産時の実測値)、(5)印刷部20の情報(印刷部20の停止回数、停止時間、稼動時間、回転数)、(6)動画情報、(7)その他の情報(生産品目名、生産数量)が管理されている。
【0037】
(記憶部210)
記憶部210は、分離ノズル74及び吸着パッド83の圧力目標値と、エアー圧測定部90による測定された圧力測定値とを、用紙50の種類毎に記憶するものである。
記憶部210は、圧力目標値、圧力測定値等のデータのほか、各種のプログラムが記憶されている。
なお、記憶部210には、データを保管するものという意味で、広義にはデータベース300を含む意味で使用する。
【0038】
(圧力設定部220)
圧力設定部220は、用紙載置部60に載置された用紙50の種類に対応する圧力目標値を記憶部210から読み出し、エアー圧調整部100にプリセットするものである。
このとき、圧力目標値がエアー圧調整部100にプリセットされることで、ロータリーバルブ102の各設定値が自動設定される。
【0039】
(停止回数計測部230)
停止回数計測部230は、印刷部20から受信した稼働停止信号に基づき、印刷部20の停止回数を計測するものである。
【0040】
(正常時分類部240)
正常時分類部240は、停止回数計測部230により計測された停止回数が予め設定された規定回数以下の場合に、正常時の圧力測定値に分類して、記憶部210に記憶するものである。
また、正常時分類部240は、停止回数が予め設定された規定回数を超える場合に、異常時の圧力測定値に分類して、記憶部210に記憶するものである。
すなわち、「圧力測定値」は、正常時分類部240により、(1)正常時と、(2)異常時とに分類される。
【0041】
(圧力比較部250)
圧力比較部250は、「圧力目標値」と「正常時の圧力測定値」とを比較するものである。
【0042】
(目標値予測部260)
目標値予測部260は、「正常時の圧力測定値」に対し、記憶部210に記憶された「圧力目標値の値」に差異があるときに、「正常時の圧力測定値」を「新たな圧力目標値」の候補として、表示部120に表示するものである。
【0043】
オペレーターは、候補を選択するか否かを選べる。
第1に、候補が選択された場合には、正常時の圧力測定値が新たな圧力目標値として、記憶部210に記憶される。
その後、圧力設定部220は、新たな圧力目標値を記憶部210から読み出し、エアー圧調整部100にプリセットする。
第2に、候補が選択されない場合には、オペレーターが圧力目標値を新規に作成しても良い。
【0044】
新規に作成された圧力目標値は、記憶部210に記憶後、圧力設定部220により、エアー圧調整部100にプリセットされる。
なお、ほかに、現在使用中の圧力目標値を継続使用することも可能である。
また、選択として、オペレーターの手動選択を例示したが、これに限定されず、自動選択としても良い。
【0045】
(動画関連付け部270)
動画関連付け部270は、正常時の圧力測定値が測定されたときに、カメラ130により撮影された動画情報を、正常時の圧力測定値と関連付けるものである。
また、動画関連付け部270は、異常時の圧力測定値が測定されたときに、カメラ130により撮影された動画情報を、異常時の圧力測定値と関連付ける。
【0046】
(予知保全部280)
予知保全部280は、圧力測定値を用い、図12及び図13に示すように、セパレート部30の保全状態の良否を判定できるようにするものである。
予知保全部280は、(1)圧力波形処理部281、(2)保全状態監視部282、(3)圧力損失判定部283、(4)圧力異常判定部284を備える。なお、(1)~(4)については後述する。
【0047】
(適正圧力指示部290)
適正圧力指示部290は、新規用紙を使用する場合に、既登録用紙に一致するものが無い場合に、推奨値を表示部120に表示するものである。
適正圧力指示部290には、(1)用紙情報登録部291、(2)新規用紙登録部292、(3)用紙差分算出部293、(4)類似度演算部294、(5)安定稼動度演算部295、(6)推奨値演算部296を備える。なお、(1)~(6)については後述する。
【0048】
(圧力波形処理部281)
圧力波形処理部281は、記憶部210から、吸着パッド83の圧力測定値を読み出し、圧力測定値から一定時間の吸着パッドの負圧ピーク値の平均をとり、図12及び図13に示すように、エアー圧波形を形成し、表示部120に表示するとともに、記憶部210に記憶するものである。
【0049】
(保全状態監視部282)
保全状態監視部282は、圧力波形処理部281により形成されたエアー圧波形を監視し、エアー圧波形が以前と異なる場合に、アラートを発出するものである。
アラートの発出は、表示部120にアラートを表示しても良いし、又はアラート音を発生させても良い。
保全状態監視部282は、不良個所を判定する。
例えば、図12(a)は、吸着パッド83の正常時のエアー圧波形を示すものである。
同図(b)は、吸着パッド83の劣化に伴うエアー圧波形の異常時のエアー圧波形を示すものである。
吸着パッド83の劣化の伴い、波形ピーク時の圧力変動が見られ、一定時間のピーク時の負圧の許容値を超えた場合にアラートを発出する。
【0050】
また、例えば、図13は、2枚止め(図示せず)の折れ(破損)と、紙詰まりによるエアー圧波形の異常時のエアー圧波形を示すものである。
1吸い部81のエアー圧の変動が大きいため、30区間の移動平均近似線を表示する。2枚止めの折れ(破損)のため、圧力が微増する。2枚止めの交換により、2枚止めの押さえが強く、1吸い部81のエアー圧が弱いことが観察できる。その結果、安定稼働から不安稼働に移行する。
【0051】
(圧力損失判定部283)
圧力損失判定部283は、図5に示すように、横捌き72、73の吹口のエアー圧測定部90と、大元の第2エアー圧測定部91との圧力測定値を比較して、エアー圧の損失を判定し、吹口側の圧力測定値の低下時にエラーを発出するものである。
エラーの発出は、表示部120にエラーを表示しても良いし、又はエラー音を発生させても良い。
【0052】
(圧力異常判定部284)
圧力異常判定部284は、コックやツマミの位置をデジタル数値でとらえることができる機構を備えた手動操作部110と、エアー圧測定部90とを組み合わせて使用し、コックやツマミの位置が正常であるにも関われず、以前の圧力測定値が再現されない場合に、エラーを発出するものである。
また、コックやツマミの位置が正常であるほか、手動操作部110を操作していないのに、以前の圧力測定値が再現されない場合に、エラーを発出しても良い。
【0053】
(用紙情報登録部291)
用紙情報登録部291は、用紙50の縦サイズと、横サイズと、単位面積当たりの重量情報とを少なくとも含む単位面積当たりの重量用紙情報及び圧力目標値を、用紙50の種類毎に登録するものである。
ここで、「登録」は、データベース300で管理することを意味する。そのほか、記憶部210に記憶することも含まれる。
【0054】
(新規用紙登録部292)
新規用紙登録部292は、新規の用紙50について、新たに入力された用紙50の種類と用紙情報とを登録するものである。
【0055】
(用紙差分算出部293)
用紙差分算出部293は、用紙情報登録部291に既に登録されている既登録用紙のうちから、新規用紙登録部292に登録された新規用紙の種類と一致する既登録用紙を抽出し、抽出した既登録用紙の用紙情報と、新規用紙の用紙情報とを比較して、既登録用紙の縦サイズ差分、横サイズ差分、単位面積当たりの重量情報差分を算出するものである。
ここで、既登録用紙の抽出は、新規用紙の種類と一致する、「すべて」を対象とする。
【0056】
(類似度演算部294)
類似度演算部294は、下記の式(1)を用いて、既登録用紙に対する新規用紙の類似度を演算するものである。
類似度=1/|縦サイズ差分|×第1係数+|横サイズ差分|×第2係数+|単位面積当たりの重量情報差分|×第3係数 ・・・ 式(1)
ここで、「差分」は、正負の場合があるため、絶対値を用いている。
「第1係数」は、「縦サイズ差分」に対するものであり、予め設定している。
「第2係数」は、「横サイズ差分」に対するものであり、予め設定している。
「第3係数」は、「単位面積当たりの重量情報差分」に対するものであり、予め設定している。
「第1係数」、「第2係数」及び「第3係数」は、「0<=係数<=1」の範囲内にある。
【0057】
(安定稼動度演算部295)
安定稼動度演算部295は、下記の式(2)を用いて、新規用紙を用いた場合の安定稼働度を演算するものである。
安定稼働度=(実際回転数/仕様最高回転数)×第4係数-(停止発生回数×第5係数) ・・・ 式(2)
「実際回転数」は、印刷部20から受信した稼働信号に基づき単位時間当たりの回転数を求めたものである。
「仕様最高回転数」は、仕様上の単位時間当たりの最高回転数を求めたものである。
「第4係数」は、「実際回転数」を「仕様最高回転数」で除算した値に対する重みづけであり、予め設定している。
「停止発生回」は、印刷部20から受信した稼働停止信号に基づき単位時間当たりのものである。
「第5係数」は、停止発生回数の修正値であり、予め設定している。
【0058】
(推奨値演算部296)
推奨値演算部296は、同じ既登録用紙の類似度と安定稼働度とを各々乗算し、既登録用紙の乗算値を取得し、乗算値のうち、値の最も大きい乗算値を最大乗算値とし、最大乗算値を有する既登録用紙について、用紙情報登録部291に照合し、圧力目標値を抽出し、抽出した圧力目標値を推奨値とし、表示部120に表示するものである。
オペレーターは、推奨値を選択するか否かを選べる。
第1に、推奨値を選択した場合には、推奨値である圧力測定値が記憶部210に記憶される。
【0059】
その後、圧力設定部220は、推奨値である圧力目標値を記憶部210から読み出し、エアー圧調整部100にプリセットする。
第2に、推奨値を選択せず、圧力目標値を新規に作成しても良い。
新規に作成された圧力目標値は、記憶部210に記憶後、圧力設定部220により、エアー圧調整部100にプリセットされる。
なお、選択として、オペレーターの手動選択を例示したが、これに限定されず、自動選択としても良い。
【0060】
図6図8に示す波形)
表示部120には、図6図8に示すように、波形を表示している。
図6は、「負圧 圧力センサー推移(1吸)」の波形を示す。分離ノズル74のエアー圧測定部90の測定値は、負圧ポンプ84がオン・オフを繰り返すことにより、経過時間軸上で、略「正弦波」形に表示される。
図7は、「正面 正面捌き」の波形を示す。分離ノズル74のエアー圧測定部90の測定値は、正面捌き用正圧ポンプ76がオン・オフを繰り返すことにより、経過時間軸上で、略「正弦波」形に表示される。
図8は、「正面 横捌き」の波形を示す。分離ノズル74のエアー圧測定部90の測定値は、横捌き用正圧ポンプ77がオン状態を維持することにより、経過時間軸上で、直線状に表示される。
【0061】
図11に示すフローチャートの説明)
図11に示すフローチャートを用い、図1の制御部200による動作を説明する。
まず、ステップS10に進み、「生産する用紙情報を取得(生産管理DB(301)から)。」の処理を実行する。処理は、制御部200の圧力設定部220により実行される。
処理後、ステップS10から次のステップS11に進み、「当該用紙の圧力目標値有り?」を判定する。判定は、制御部200により実行される。
判定の結果、当該用紙の圧力目標値が有る場合には、ステップS11から次のステップS12に進み、「当該用紙の圧力目標値を自動的に取得(レシピ管理DB(302)から)。」の処理を実行する。処理は、圧力設定部220により実行される。
【0062】
処理後、ステップS12から次のステップS13に進み、「圧力目標値(レシピ管理DB302)と正常時の圧力測定値(チョコ停DB303)の比較。」の処理を実行する。処理は、制御部200の圧力比較部250により実行される。
処理後、ステップS13から次のステップS14に進み、「圧力目標値と正常時の圧力に差異が有り?」を判定する。判定は、制御部200の目標値予測部260により実行される。
【0063】
判定の結果、差異が有る場合には、ステップS14から次のステップS15に進み、「・正常時の圧力測定値と圧力目標値とを表示し、どちらを新たな圧力目標値とするか選択。・選択された新たな圧力測定値をプリセット。・このとき、正常時の圧力測定値に関連付けられた動画情報を参照できる。」の処理を実行する。
「圧力測定値と圧力目標値とが表示され、どちらを新たな圧力目標値とするか選択。」の処理は、制御部200の目標値予測部260により実行される。
「選択された新たな圧力測定値をプリセット。」の処理は、圧力設定部220により実行される。
「このとき、正常時の圧力測定値に関連付けられた動画情報を参照できる。」の処理は、制御部200の動画関連付け部270により実行される。
【0064】
一方、先のステップS11において、判定の結果、当該用紙の圧力目標値が無い場合には、ステップS30に進む。ステップS30においては、「・用紙情報から類似度×安定稼動度の高い既レシピを複数表示。・人はその中からレシピを選択、もしくは選択せずに新規にレシピ作成。」の処理を実行する。
「用紙情報から類似度×安定稼動度の高い既レシピを複数表示。」の処理は、図10に示すように、制御部200の類似度演算部294、安定稼動度演算部295、推奨値演算部296により実行される。
【0065】
「人はその中からレシピを選択、」は、オペレーターが、推奨値を選択した場合を意味する。その結果、圧力目標値は、記憶部210に記憶後、圧力設定部220により、エアー圧調整部100にプリセットされる。
「もしくは選択せずに新規にレシピ作成。」は、オペレーターが、圧力目標値を新規に作成した場合を意味する。その結果、圧力目標値は、記憶部210に記憶後、圧力設定部220により、エアー圧調整部100にプリセットされる。
【0066】
先のステップS14において、判定の結果、差異が無い場合には、ステップS20に進む。ステップS20においては、「圧力目標値のプリセット。」の処理を実行する。処理は、制御部200により実行される。
その結果、現在使用中の圧力目標値が継続使用される。
【0067】
(本発明に基づく実施形態に係る特徴点と効果)
本発明に基づく実施形態の特徴点は、次の通りである。
(第1の特徴点)
第1の特徴点は、印刷システム10であって、複数枚積層された枚葉紙である用紙50を一枚一枚吸着して印刷部20に給紙するセパレート部30を備えた印刷システム10であって、セパレート部30は、用紙50を複数枚載置可能な用紙載置部60と、用紙載置部60に積層された複数枚の用紙50に、エアーを供給して一枚一枚の用紙50に分離させる複数個の分離ノズル74と、分離ノズル74から供給されたエアーにより分離された一枚の用紙50を、エアーの吸着圧により吸着して印刷部20に搬送する複数個の吸着パッド83と、分離ノズル74及び吸着パッド83のエアー圧を個々に測定する複数個のエアー圧測定部90と、分離ノズル74及び吸着パッド83のエアー圧を個々に調整するエアー圧調整部100と、印刷部20、エアー圧測定部90及びエアー圧調整部100にそれぞれ電気的に接続された制御部200と、を備え、制御部200は、分離ノズル74及び吸着パッド83の圧力目標値と、エアー圧測定部90により測定された圧力測定値とを、用紙50の種類毎に記憶する記憶部210と、印刷部20から受信した稼働停止信号に基づき、印刷部20の停止回数を計測する停止回数計測部230と、停止回数計測部230により計測された停止回数が予め設定された規定回数以下の場合に、正常時の圧力測定値に分類して、記憶部210に記憶する正常時分類部240と、正常時の圧力測定値に対し、記憶部210に記憶された圧力目標値の値に差異があるときに、正常時の圧力測定値を新たな圧力目標値の候補として、表示部120に表示する目標値予測部260と、を備える。
【0068】
(第1の特徴点の効果)
第1の特徴点によれば、システム運転中も圧力測定値を用いて、給紙状態を監視し、正常時の圧力測定値に対し、圧力目標値の値に差異があるときに、エアー圧を的確に調整できる。
すなわち、正常時の圧力測定値に対し、圧力目標値の値に差異があるときに、正常時の圧力測定値を新たな圧力目標値の候補として表示することで、オペレーターに候補を選択する機会を与えることができる。
これにより、オペレーターは、候補を選択するほか、圧力目標値を新規に作成することができ、正常時の圧力測定値に基づいて圧力目標値を見直す機会をオペレーターに与えることができる。
【0069】
(第2の特徴点)
第2の特徴点は、給紙が安定した時の圧力値を前記圧力目標値に登録できるようにしている。
(第2の特徴点の効果)
第2の特徴点によれば、用紙データで計算した圧力設定値で用紙の搬送が安定しない場合には、人が用紙の搬送状態を見ながら圧力値を調整する必要がある問題に対し、給紙が安定した時の圧力値を目標値に登録することができる。
【0070】
(第3の特徴点)
第3の特徴点は、印刷システム10であって、セパレート部30に、制御部200に電気的に接続され、セパレート部30による給紙動作を動画で撮影するカメラ130を備え、制御部200には、正常時の圧力測定値が測定されたときに、カメラ130により撮影された動画情報を、正常時の圧力測定値と関連付ける動画関連付け部270を備え、目標値予測部260により新たな圧力目標値の候補として正常時の圧力測定値が表示されるときに、動画関連付け部270により正常時の圧力測定値に関連付けられた動画情報を参照できるようにしている。
(第3の特徴点の効果)
第3の特徴点によれば、候補の選択時に、正常時の圧力測定値に関連付けられた動画情報を参照できる。
【0071】
(第4の特徴点)
第4の特徴点は、印刷システム10であって、制御部200が、吸着パッド83と分離ノズル74との圧力測定値の数値情報を記憶部210から読み出し、一定時間の吸着パッド83の負圧のピーク値の平均値をとり、分離ノズル74から供給するエアーの正圧のピーク値の平均値をとり、平均値の推移を、波形を用いて表示部120に表示する圧力波形処理部281を備えている。
(第4の特徴点の効果)
第4の特徴点によれば、吸着パッド83の圧力測定値を、波形を用いて表示することができる。
これにより、オペレーターは、圧力測定値の波形を見ることで、セパレート部30の運転状態を把握できるほか、波形の異常から、不良箇所を推測できる。
【0072】
(第5の特徴点)
第5の特徴点は、印刷システム10であって、制御部200に、用紙50の縦サイズと、横サイズと、単位面積当たりの重量情報とを少なく含む用紙情報及び圧力目標値を、用紙50の種類毎に登録する用紙情報登録部291と、新規の用紙50について、新たに入力された用紙50の種類と用紙情報とを登録する新規用紙登録部292と、用紙情報登録部291に既に登録されている既登録用紙のうちから、新規用紙登録部292に登録された新規用紙の種類と一致する既登録用紙を抽出し、抽出した既登録用紙の用紙情報と、新規用紙の用紙情報とを比較して、既登録用紙の縦サイズ差分、横サイズ差分、単位面積当たりの重量情報差分を算出する用紙差分算出部293と、縦サイズ差分に第1係数を予め設定し、横サイズ差分に第2係数を予め設定し、単位面積当たりの重量情報差分に第3係数を予め設定し、第1係数、第2係数及び第3係数は「0<=係数<=1」の範囲内にあり、下記の式(1)を用いて、既登録用紙に対する新規用紙の類似度を演算する類似度演算部294と、印刷部20から受信した稼働信号に基づき単位時間当たりの実際回転数を求め、仕様上の単位時間当たりの最高回転数を仕様最高回転数として、実際回転数を仕様最高回転数で除算した値に対する重みづけである第4係数を予め設定し、印刷部20から受信した稼働停止信号に基づき単位時間当たりの停止発生回数を求め、停止発生回数の修正値である第5係数を予め設定し、下記の式(2)を用いて、新規用紙を用いた場合の安定稼働度を演算する安定稼動度演算部295と、同じ既登録用紙の類似度と安定稼働度とを各々乗算し、既登録用紙の乗算値を取得し、乗算値のうち、値の最も大きい乗算値を最大乗算値とし、最大乗算値を有する既登録用紙について、用紙情報登録部291に照合し、圧力目標値を抽出し、抽出した圧力目標値を推奨値とし、表示部120に推奨値演算部296と、を備えている。
類似度=1/|縦サイズ差分|×第1係数+|横サイズ差分|×第2係数+|単位面積当たりの重量情報差分|×第3係数 ・・・ 式(1)
安定稼働度=(実際回転数/仕様最高回転数)×第4係数-(停止発生回数×第5係数) ・・・ 式(2)
【0073】
(第5の特徴点の効果)
第5の特徴点によれば、新規の用紙50の登録時に、圧力目標値の推奨値を表示できる。
これにより、オペレーターは、推奨値を選択するほか、圧力目標値を新規に作成することもできる。
【符号の説明】
【0074】
10 印刷システム
20 印刷部
30 セパレート部
40 フィーダーボード
50 用紙
51 積層部
60 用紙載置部
70 用紙分離部
71 正面捌き
72、73 横捌き
74 分離ノズル
75 正圧ポンプ
76 正面捌き用正圧ポンプ
77 横捌き用正圧ポンプ
80 用紙吸着部
81 1吸い部
82 2吸い部
83 吸着パッド
84 負圧ポンプ
90 エアー圧測定部
91 第2エアー圧測定部
100 エアー圧調整部
101 エアーバルブ
102 ロータリーバルブ
110 手動操作部
111 手動コック
112 手動ツマミ
120 表示部
130 カメラ
200 制御部
210 記憶部
220 圧力設定部
230 停止回数計測部
240 正常時分類部
250 圧力比較部
260 目標値予測部
270 動画関連付け部
280 予知保全部
281 圧力波形処理部
282 保全状態監視部
283 圧力損失判定部
284 圧力異常判定部
290 適正圧力指示部
291 用紙情報登録部
292 新規用紙登録部
293 用紙差分算出部
294 類似度演算部
295 安定稼動度演算部
296 推奨値演算部
300 データベース
301 生産管理DB
302 レシピ管理DB
303 チョコ停DB
A10~A50 正面捌き用分離ノズル
B10~B30 左側横捌き用分離ノズル
C10~C30 左側横捌き用分離ノズル
D10~D40 1吸い用吸着パッド
E10~E50 2吸い用吸着パッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13