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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190814
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電子機器および電子機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/12 20060101AFI20221220BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20221220BHJP
   B23K 26/36 20140101ALI20221220BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20221220BHJP
   B23K 35/40 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L23/12 Z
H01L23/12 Q
H05K3/00 N
B23K26/36
B23K35/14 Z
B23K35/40 340Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099262
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 成実
(72)【発明者】
【氏名】玉井 雄大
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD00
4E168DA32
4E168DA40
4E168DA43
(57)【要約】
【課題】半導体モジュールにおいて、はんだ層に起因した不良を低減することが好ましい。
【解決手段】金属配線を備える電子機器であって、金属配線は、はんだ層で覆われている複数の第1領域と、複数の第1領域の内2つの第1領域の間に設けられる第2領域と、窒素量が20atoms%以上である第3領域とを有し、酸素量が第2領域、第1領域、第3領域の順に大きい電子機器を提供する。窒素量が第3領域、第1領域、第2領域の順に大きくてよい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属配線を備える電子機器であって、
前記金属配線は、
はんだ層で覆われている複数の第1領域と、
前記複数の第1領域の内2つの第1領域の間に設けられる第2領域と、
窒素量が20atoms%以上である第3領域と
を有し、
酸素量が前記第2領域、前記第1領域、前記第3領域の順に大きい
電子機器。
【請求項2】
窒素量が前記第3領域、前記第1領域、前記第2領域の順に大きい
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1領域の酸素量は、30atoms%未満である
請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1領域の酸素量は、25atoms%未満である
請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2領域の酸素量は、30atoms%以上である
請求項1から4いずれか一項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2領域の酸素量は、50atoms%以下である
請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
前記第1領域の酸素量は、10atoms%以上である
請求項1から6のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項8】
前記第1領域の窒素量は、20atoms%以下である
請求項1から7のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項9】
前記第2領域の窒素量は、10atoms%未満である
請求項1から8のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記第2領域の窒素量は、前記第1領域の窒素量の半分以下である
請求項1から9のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項11】
前記第2領域の酸素量は、前記第1領域の酸素量の2倍以上である
請求項1から10のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項12】
前記第2領域の最小幅は、150μm以上である
請求項1から11のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項13】
金属配線を備える電子機器の製造方法であって、
前記金属配線に第1レーザー光を照射する第1レーザー照射段階と、
前記金属配線に前記第1レーザー光と異なるエネルギー密度の第2レーザー光を照射する第2レーザー照射段階と
を備え、
前記第1レーザー照射段階および第2レーザー照射段階によって前記金属配線に、
複数の第1領域と、
前記複数の第1領域の内2つの第1領域の間に設けられる第2領域と、
窒素量が20atoms%以上である第3領域と
が形成され、
前記第1領域を覆うようにはんだ層を形成するはんだ層形成段階を更に備え、
酸素量が前記第2領域、前記第1領域、前記第3領域の順に大きい
電子機器の製造方法。
【請求項14】
前記第1レーザー照射段階において、前記第1領域が形成される領域に前記第1レーザー光を照射し、
前記第2レーザー照射段階において、前記第2領域が形成される領域に前記第2レーザー光を照射する
請求項13に記載の電子機器の製造方法。
【請求項15】
前記第1レーザー照射段階において、前記第1領域が形成される領域および前記第2領域が形成される領域に前記第1レーザー光を照射し、
前記第2レーザー照射段階において、前記第2領域が形成される領域に前記第2レーザー光を照射する
請求項13に記載の電子機器の製造方法。
【請求項16】
前記第2レーザー光のエネルギー密度は、0.06W/mm以上である
請求項13から15のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項17】
前記第2レーザー光のエネルギー密度は、0.10W/mm以下である
請求項16に記載の電子機器の製造方法。
【請求項18】
前記第1レーザー光のエネルギー密度は、0.06W/mm未満である
請求項13から17のいずれか一項に記載の電子機器の製造方法。
【請求項19】
前記第1レーザー光のエネルギー密度は、0.015W/mm以上である
請求項18に記載の電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器および電子機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体モジュール等の電子機器にレーザー光を照射して、クリーニング・洗浄する技術が知られている(例えば、特許文献1-3参照)。また、接合部材であるはんだ層が設けられている電子機器にレーザー光を照射して、はんだ層の濡れ広がりを抑制する技術が知られている(例えば、特許文献4-6参照)。
特許文献1 特開平10-189639号公報
特許文献2 特開2017-98302号公報
特許文献3 特開平6-71467号公報
特許文献4 国際公開第2013-153673号
特許文献5 特開2008-207207号公報
特許文献6 特開2009-218280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体モジュールにおいて、はんだ層に起因した不良を低減することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、電子機器を提供する。電子機器は、金属配線を備えてよい。金属配線は、複数の第1領域を有してよい。第1領域は、はんだ層で覆われていてよい。金属配線は、第2領域を有してよい。第2領域は、複数の第1領域の内2つの第1領域の間に設けられてよい。金属配線は、第3領域を有してよい。第3領域は、窒素量が20atoms%以上であってよい。酸素量が第2領域、第1領域、第3領域の順に大きくてよい。
【0005】
窒素量が第3領域、第1領域、第2領域の順に大きくてよい。
【0006】
第1領域の酸素量は、30atoms%未満であってよい。第1領域の酸素量は、25atoms%未満であってよい。第2領域の酸素量は、30atoms%以上であってよい。第2領域の酸素量は、50atoms%以下であってよい。第1領域の酸素量は、10atoms%以上であってよい。
【0007】
第1領域の窒素量は、20atoms%以下であってよい。第2領域の窒素量は、10atoms%未満であってよい。
【0008】
第2領域の窒素量は、第1領域の窒素量の半分以下であってよい。第2領域の酸素量は、第1領域の酸素量の2倍以上であってよい。
【0009】
第2領域の最小幅は、150μm以上であってよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、電子機器の製造方法を提供する。電子機器は、金属配線を備えてよい。電子機器の製造方法は、第1レーザー照射段階を備えてよい。第1レーザー照射段階において、金属配線に第1レーザー光を照射してよい。電子機器の製造方法は、第2レーザー照射段階を備えてよい。第2レーザー照射段階において、金属配線に第1レーザー光と異なるエネルギー密度の第2レーザー光を照射してよい。第1レーザー照射段階および第2レーザー照射段階によって金属配線に、複数の第1領域と、複数の第1領域の内2つの第1領域の間に設けられる第2領域と、窒素量が20atoms%以上である第3領域とが形成されてよい。電子機器の製造方法は、はんだ層形成段階を備えてよい。はんだ層形成段階において、第1領域を覆うようにはんだ層を形成してよい。酸素量が第2領域、第1領域、第3領域の順に大きくてよい。
【0011】
第1レーザー照射段階において、第1領域が形成される領域に第1レーザー光を照射してよい。第2レーザー照射段階において、第2領域が形成される領域に第2レーザー光を照射してよい。
【0012】
第1レーザー照射段階において、第1領域が形成される領域および第2領域が形成される領域に第1レーザー光を照射してよい。
【0013】
第2レーザー光のエネルギー密度は、0.06W/mm以上であってよい。第2レーザー光のエネルギー密度は、0.10W/mm以下であってよい。
【0014】
第1レーザー光のエネルギー密度は、0.06W/mm未満であってよい。第1レーザー光のエネルギー密度は、0.015W/mm以上であってよい。
【0015】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の比較例に係る電子機器200の一例を示す図である。
図2図1における領域Aの一例を示す図である。
図3】本発明の比較例に係る電子機器300の一例を示す図である。
図4図3における領域Bの一例を示す図である。
図5】本発明の一つの実施形態に係る電子機器100の一例を示す図である。
図6図5における領域Cの一例を示す図である。
図7】電子機器100の製造方法の一例を説明する図である。
図8】レーザー光のエネルギー密度と照射領域のESCA元素検出量の関係を示す図である。
図9】電子機器100の製造方法の他の例を説明する図である。
図10】レーザー照射装置のレーザー照射のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0018】
本明細書においては半導体チップの深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または電子機器の実装時における方向に限定されない。
【0019】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体チップの上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体チップの上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体チップの上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0020】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0021】
図1は、本発明の比較例に係る電子機器200の一例を示す図である。本例において、電子機器200は、半導体チップが載置される半導体モジュールである。電子機器200は、インバータ等の電力変換装置として機能してよい。電子機器200は、半導体チップを有さない素子であってもよい。電子機器200は、コンデンサ等を有してもよい。電子機器200は、放熱板20、絶縁基板21、金属配線26、はんだ層30、はんだ層32、半導体チップ40およびリードフレーム60を備える。
【0022】
電子機器200は、1つ以上の絶縁基板21を備える。絶縁基板21のいずれか一方の面には、金属配線26が設けられ、絶縁基板21の他方の面には、放熱板20が設けられている。金属配線26には、所定の回路パターンが設けられている。金属配線26は、銅板またはアルミニウム板、あるいはこれらの材料にめっきを施した板を、窒化ケイ素セラミックスや窒化アルミニウムセラミックス等の絶縁基板21に直接接合あるいはろう材層を介して接合することで、構成されてよい。
【0023】
金属配線26には、1つ以上の半導体チップ40が載置される。図1の例では、1つの半導体チップ40が載置される。はんだ層30は、金属配線26の上方に設けられる。はんだ層30は、半導体チップ40またはリードフレーム60を金属配線26に接合する。はんだ層30は、はんだ層32と同一の材料であってよい。半導体チップ40は、絶縁基板21を囲む樹脂ケース(不図示)や樹脂ケースに充填される封止樹脂(封止樹脂)といった樹脂パッケージにより保護される。なお、樹脂ケースを設けず、封止樹脂によるトランスファーモールド等で半導体チップ40等を保護してもよい。
【0024】
半導体チップ40は、IGBT、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードおよびこれらを組み合わせたRC(Reverse Conducting)-IGBT、並びにMOSトランジスタ等を含んでよい。
【0025】
本例の半導体チップ40は、上面および下面に金属電極(例えば、エミッタ電極とコレクタ電極)が形成された縦型のチップである。半導体チップ40は、下面に形成された金属電極により金属配線26と接続され、上面に形成された金属電極により配線部材(本例ではリードフレーム60)と接続される。なお、半導体チップ40は縦型のチップに限定されない。半導体チップ40は、ワイヤ等により金属配線26と接続される金属電極を上面に有していてもよい。
【0026】
放熱板20は、絶縁基板21等を介して、半導体チップ40を放熱する。放熱板20の下面には、内部に水等の冷媒を含む冷却部が設けられてもよい。
【0027】
半導体チップ40の上面は、接合部材であるはんだ層32を介して配線部材に接続される。本例の配線部材は、リードフレーム60である。リードフレーム60は、銅またはアルミニウム等の金属材料で形成された部材である。リードフレーム60は、ニッケル等により表面の少なくとも一部がメッキされていてもよい。また、リードフレーム60は、樹脂等により表面の少なくとも一部がコーティングされていてもよい。リードフレーム60は、板状の部分を有してよい。板状とは、対向して設けられた2つの主面の面積が、他の面の面積よりも大きい形状を指す。リードフレーム60は、少なくとも、半導体チップ40と接続する部分が板状であってよい。リードフレーム60は、1枚の金属板を折り曲げることで、形成されてよい。
【0028】
リードフレーム60は、半導体チップ40と、金属配線26とを電気的に接続する。リードフレーム60には、主電流が流れてよい。ここで、主電流とは、半導体チップ40に流れる電流のうち、最大の電流である。本例のリードフレーム60は、チップ接続部62、架橋部64、回路パターン接続部66および足部68を含む。チップ接続部62は、半導体チップ40の上面と接続する部分である。回路パターン接続部66は、金属配線26の上面に接続される部分である。チップ接続部62および回路パターン接続部66は、XY面とほぼ平行な板状の部分であってよい。従って、チップ接続部62および回路パターン接続部66は、半導体チップ40の上面とほぼ平行な板状の部分であってよい。なお、ほぼ平行とは、例えば角度が10度以下の状態を指す。
【0029】
足部68は、Z軸方向に延伸する部分である。架橋部64は、足部68を介して、チップ接続部62および回路パターン接続部66を接続する。架橋部64は、金属配線26等の導電部材から離れて設けられている。本例の架橋部64は、金属配線26等の上方に設けられており、チップ接続部62から回路パターン接続部66まで、金属配線26等を跨ぐように設けられている。
【0030】
はんだ層32は、半導体チップ40の上面とリードフレーム60のチップ接続部62の下面との間に形成される。はんだ層32は、半導体チップ40とチップ接続部62とを機械的および電気的に接続する。本例において、はんだ層32は、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。また、はんだ層32は、側面にフィレットを有していてもよい。はんだ層32は、半導体チップ40の上面とリードフレーム60のチップ接続部62の下面との間にのみ設けられてもよい。
【0031】
図2は、図1における領域Aの一例を示す図である。図2において、金属配線26、はんだ層30および半導体チップ40の配置を示している。
【0032】
金属配線26に、表面汚れ27が存在する場合がある。本明細書において表面汚れ27とは、窒素元素に起因した汚れを含む。表面汚れ27が存在していると、はんだ層30を形成する際に、はんだが均質に濡れ拡がらず、はんだ層30にボイド31が形成されてしまう。ボイド31が存在すると、半導体チップ40と金属配線26の接合不良が発生してしまう恐れがある。また、表面汚れ27が窒素元素に起因した汚れを含むため、ボイド31は、はんだ層30と金属配線26の界面近傍に形成され、通常の検査手法で検出することは困難である。
【0033】
図3は、本発明の比較例に係る電子機器300の一例を示す図である。図3の電子機器300は、リードフレーム60-2およびリードフレーム60-2の下方に設けられたはんだ層30を更に備える点で、図1の電子機器200とは異なる。電子機器300のリードフレーム60-2近傍以外の構成は、電子機器200と同一であってよい。なお、図3のリードフレーム60-1は、図1のリードフレーム60と同一である。リードフレーム60-2は、はんだ層30を介して金属配線26と接合する。
【0034】
図4は、図3における領域Bの一例を示す図である。図4において、金属配線26、はんだ層30、半導体チップ40およびリードフレーム60-2の配置を示している。
【0035】
電子機器が小型化すると、半導体チップ40や配線部材の設置間隔が狭まる。したがって、はんだ層30が濡れ拡がった場合、他のはんだ層30と接触してしまうことが考えられる。図4において、半導体チップ40の下方のはんだ層30は、リードフレーム60-2のはんだ層30と接触している。はんだ層30が接触していると、はんだ層30の厚さが各半導体チップ40や各配線部材下に必要とされるはんだ層の厚さから逸脱してしまう恐れがある。図4の例では、半導体チップ40およびリードフレーム60-2の下方のはんだ30が薄くなっているため、半導体チップ40およびリードフレーム60-2がそれぞれ傾いている。よって、電子機器300では不良品が発生する恐れがある。
【0036】
図5は、本発明の一つの実施形態に係る電子機器100の一例を示す図である。図5の電子機器100は、金属配線26が第1領域72および第2領域74を有する点で図3の電子機器300と異なる。図5の金属配線26以外の構成は、図3と同一であってよい。
【0037】
金属配線26は、第1領域72を有する。第1領域72は、少なくとも一部がはんだ層30で覆われている領域である。図5において、第1領域72は、全体がはんだ層30で覆われている。第1領域72は、金属配線26の表面に設けられる。図5において、第1領域72は、金属配線26の上面に設けられる。金属配線26は、複数の第1領域72を有する。図5において、3つのはんだ層30の下方にそれぞれ第1領域72が設けられている。図5において、第1領域72の範囲を太線で示している。第1領域72は、水平方向において半導体チップ40よりも広範囲に設けられてよい。
【0038】
金属配線26は、第2領域74を有する。第2領域74は、複数の第1領域72の内2つの第1領域72の間に設けられる。第2領域74は、金属配線26の表面に設けられる。図5において、第2領域74は、金属配線26の上面に設けられる。第2領域74は、第1領域72よりも深く形成されてよい。
【0039】
金属配線26は、第3領域76を有する。第3領域76は、第1領域72または第2領域74が設けられる表面以外の金属配線26の表面に設けられる。本例では、第3領域76は、金属配線26の上面に設けられる。第3領域76は、金属配線26の側面に設けられてもよく、絶縁基板21と接する金属配線26の下面に設けられてもよい。
【0040】
本例において、金属配線26に所定のエネルギー密度のレーザー光を照射して第1領域72および第2領域74を形成する。レーザー光のエネルギー密度とは、レーザー光の強度の単位であり、具体的な数値は後述する。第3領域76は、金属配線26の内レーザー光が照射されない領域である。第1領域72および第2領域74は、レーザー光が照射されているため、窒素元素に起因した表面汚れを除去することができる。第3領域76は、レーザー光が照射されていないため、表面汚れが除去されていない。図9で詳細に説明するが、表面汚れが除去されていない第3領域76は、窒素量が20atoms%以上である。第1領域72および第2領域74は、窒素量が所定の量以下であってよい。本明細書において、窒素量とは、各領域で検出される窒素の量である。
【0041】
また、第1領域72を形成する際に用いられるレーザー光のエネルギー密度は、第2領域74を形成する際に用いられるレーザー光のエネルギー密度と異なっている。本例において第2領域74を形成する際に用いられるレーザー光のエネルギー密度は、第1領域72を形成する際に用いられるレーザー光のエネルギー密度より大きい。より大きいエネルギー密度を照射することで照射領域の酸素元素を増やすことができる。酸素元素を増やすことにより、はんだ層30の濡れ拡がりを抑制することができる。照射するエネルギー密度が第2領域74、第1領域72、第3領域76の順に大きくなっているため、酸素量が第2領域74、第1領域72、第3領域76の順に大きくなる。本明細書において、酸素量とは、各領域で検出される酸素の量である。
【0042】
なお第1領域72、第2領域74、第3領域76の配置の例は、図5に限定されない。例えば第2領域74は、金属配線26の上面と金属配線26の側面が接する角である角28近傍に配置される。第2領域74が角28近傍に配置されることにより、金属配線26の側面へのはんだ層30の濡れ拡がりを抑制することができる。また、第1領域72は、金属配線26の側面に設けられてもよい。第3領域76は、金属配線26の上面に設けられなくてもよい。
【0043】
図6は、図5における領域Cの一例を示す図である。領域Cにおいて、金属配線26、はんだ層30、半導体チップ40およびリードフレーム60-2の配置を示している。
【0044】
金属配線26が、第1領域72がレーザー光で形成されているため、はんだ層30におけるボイドの発生を抑制することができる。したがって、接合不良の発生を防ぐことができる。また、第2領域74の酸素量が第1領域72の酸素量、第3領域76の酸素量より大きくなっているため、はんだ層30の濡れ拡がりを抑制し、はんだ層30が接触してしまうことを防ぐことができる。以上より、はんだ層30に起因した不良を低減することができる。
【0045】
図6において、第2領域74の最小幅をD1とする。第2領域74の最小幅D1は、150μm以上であってよい。第2領域74の最小幅D1が小さすぎるとはんだ層30の接触が起こりやすくなるため、第2領域74の最小幅D1は150μm以上とすることが好ましい。第2領域74を形成する際に用いられるレーザー光のエネルギー密度を大きくするとはんだ層30の濡れ拡がりを更に抑制できるため、第2領域74の最小幅D1は、150μm以下であってもよい。
【0046】
図7は、電子機器100の製造方法の一例を説明する図である。電子機器100の製造方法は、第1レーザー照射段階S101、第2レーザー照射段階S102およびはんだ層形成段階S103を備える。第1レーザー照射段階S101の前において、絶縁基板21の上方に金属配線26を設ける。
【0047】
第1レーザー照射段階S101において、金属配線26に第1レーザー光82を照射する。第1レーザー照射段階S101において、第1領域72が形成される領域に第1レーザー光82を照射する。本例において、第1領域72が形成される領域にのみ第1レーザー光82を照射する。したがって、第1レーザー光82によって、第1領域72が形成される。図7において、第1レーザー光82を照射する範囲を矢印で表している。
【0048】
第1レーザー光82は、レーザー照射装置(本明細書では不図示)により照射されてよい。第1レーザー光82は、一例として、パルスレーザーである。レーザー照射装置は、第1レーザー光82を連続で照射する。レーザー光の直径を大きくしすぎるとエネルギー密度を大きくできなくなり、一方レーザー光の直径を小さくしすぎるとスループットが低くなる。レーザー光の直径は、エネルギー密度、スループットの観点で適切に設定することが好ましい。第1レーザー光82の直径は、一例として、100μm以下である。また第1レーザー光82の波長は、一例として、600nm以下である。なお、第1レーザー光82のエネルギー密度は、図9において説明する。
【0049】
第2レーザー照射段階S102において、金属配線26に第2レーザー光84を照射する。第2レーザー光84は、第1レーザー光82と異なるエネルギー密度である。第2レーザー照射段階S102において、第2領域74が形成される領域に第2レーザー光84を照射する。本例において、第2領域74が形成される領域にのみ第2レーザー光84を照射する。したがって、第2レーザー光84によって、第2領域74が形成される。図7において、第2レーザー光84を照射する範囲を矢印で表している。第1レーザー照射段階S101および第2レーザー照射段階S102によって、金属配線26に第1領域72と、第2領域74と、第3領域76とが形成される。
【0050】
第2レーザー光84は、第1レーザー光82と同様にレーザー照射装置により照射されてよい。第1レーザー光82と第2レーザー光84は、同一のレーザー照射装置により照射されてよい。第2レーザー光84は、一例として、パルスレーザーである。レーザー照射装置は、第2レーザー光84を連続で照射する。同一のレーザー照射装置の場合、レーザー照射装置の出力設定や周波数設定を変更することにより、第2レーザー光84を第1レーザー光82と異なるエネルギー密度にすることができる。第2レーザー光84の直径は、一例として、50μm以下である。また第2レーザー光84の波長は、一例として、600nm以下である。なお、第2レーザー光84のエネルギー密度は、図9において説明する。
【0051】
はんだ層形成段階S103において、はんだ層30を形成する。はんだ層30は、第1領域72を覆うように形成する。はんだ層30は、必要な分量の板はんだを溶融、凝固することで形成されてよい。板はんだは、半導体チップ40またはリードフレーム60と金属配線26の間に配置されてよい。はんだ層30は、電子機器100を水素還元炉内に入れ、加熱冷却のプロセスを経ることで形成される。第1領域72を覆うようにはんだ層30が形成されるため、ボイドの発生を抑制し、接合不良の発生を防ぐことができる。
【0052】
図8は、レーザー光のエネルギー密度と照射領域のESCA元素検出量の関係を示す図である。ESCA(Electorn Spectroscopy for Chemical Analysis)とは、表面分析の手法であり、X線光電分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy)とも呼ばれる。図8において、横軸に該当するエネルギー密度のレーザー光を照射した照射領域のESCA元素検出量を示している。図8において、酸素および窒素のESCA元素検出量を示している。
【0053】
図8に示されるように、レーザー光のエネルギー密度を大きくするほど、照射領域の酸素量は大きくなる。したがって、第2レーザー光84のエネルギー密度を第1レーザー光82のエネルギー密度より大きくすることにより、酸素量が第2領域74、第1領域72、第3領域76の順に大きくすることができる。
【0054】
また図8に示されるように、レーザー光のエネルギー密度を大きくするほど、照射領域の窒素量は小さくなる。したがって、第1領域72および第2領域74は、レーザー光が照射されているため、窒素元素に起因した表面汚れを除去することができる。
【0055】
本例において、第2レーザー光84のエネルギー密度は、0.06W/mm以上である。また、第2レーザー光84のエネルギー密度は、0.10W/mm以下であってよい。本例において、第1レーザー光82のエネルギー密度は、0.06W/mm未満である。第1レーザー光82のエネルギー密度は、0.015W/mm以上であってよい。第1レーザー光82および第2レーザー光84のエネルギー密度をこのように設定することで、第1領域72、第2領域74および第3領域76を形成することができる。
【0056】
第1領域72は、第1レーザー光82が照射される領域である。したがって、図8に示す通り、第1領域72の酸素量は、30atoms%未満であってよい。第1領域72の酸素量は、25atoms%未満であってもよい。第1領域72の酸素量は、20atoms%未満であってもよい。第1領域72の酸素量は、10atoms%以上であってよい。第1領域72の酸素量は、15atoms%以上であってもよい。
【0057】
また第1領域72の窒素量は、20atoms%以下であってよい。第1領域72の窒素量は、15atoms%以下であってもよい。第1領域72の窒素量は、5atoms%以上であってよい。第1領域72の窒素量は、10atoms%以上であってもよい。
【0058】
第2領域74は、第2レーザー光84が照射される領域である。したがって、図8に示す通り、第2領域74の酸素量は、30atoms%以上であってよい。第2領域74の酸素量は、35atoms%以上であってもよい。第2領域74の酸素量は、50atoms%以下であってよい。第2領域74の酸素量は、45atoms%以下であってもよい。第2領域74の酸素量は、第1領域72の酸素量の2倍以上であってよい。
【0059】
また第2領域74の窒素量は、10atoms%未満であってよい。第2領域74の窒素量は、5atoms%未満であってもよい。第2領域74の窒素量は、第1領域72の窒素量の半分以下であってよい。
【0060】
第3領域76は、レーザー光が照射されない領域である。したがって、図8に示す通り第3領域76の窒素量は、20atoms%以上であってよい。第3領域76の窒素量は、25atoms%以上であってもよい。本例において、窒素量が第3領域76、第1領域72、第2領域74の順に大きくなる。第3領域76の酸素量は、10atoms%未満であってよい。
【0061】
以上のように、第1レーザー光82および第2レーザー光84のエネルギー密度を制御することにより、第1領域72、第2領域74および第3領域76を形成することが可能である。なお第1領域72、第2領域74および第3領域76の酸素量、窒素量は、はんだ層30を除去して解析してよい。第1領域72、第2領域74および第3領域76の酸素量、窒素量は、酸素、窒素がない雰囲気下で解析されることが好ましい。
【0062】
図9は、電子機器100の製造方法の他の例を説明する図である。電子機器100の製造方法は、第1レーザー照射段階S201、第2レーザー照射段階S202およびはんだ層形成段階S203を備える。第2レーザー照射段階S202は、図7の第2レーザー照射段階S102と同一であってよい。はんだ層形成段階S203は、図7のはんだ層形成段階S103と同一であってよい。
【0063】
第1レーザー照射段階S201において、金属配線26に第1レーザー光82を照射する。第1レーザー照射段階S201において、第1領域72が形成される領域および第2領域74が形成される領域に第1レーザー光82を照射する。つまり、第2領域74には、第1レーザー光82および第2レーザー光84が照射される。図9において、第1レーザー光82を照射する範囲を矢印で表している。本例において、第2領域74が形成される領域にも第1レーザー光82を照射しているため、第2領域74の酸素量を増やすことができる。なお本例において、第1レーザー光82および第2レーザー光84のエネルギー密度は、図8で説明した例と同一であってよい。
【0064】
図10は、レーザー照射装置のレーザー照射のフローチャートを示す図である。処理開始に際し、レーザー処理装置が処理を開始する(S301)。
【0065】
処理開始の後、レーザー処理装置は、プログラムを読み込む。プログラムの内容は、レーザー光照射条件の情報を含む(S302)。レーザー光照射条件の情報とは、例えば、金属配線26における照射領域の範囲の情報または照射するレーザー光のエネルギー密度の情報を含む。レーザー光照射条件は、あらかじめプログラムに登録することができる。
【0066】
次に、電子機器100を搬入する(S303)。電子機器100を搬入した後、レーザー照射を開始する(S304)。レーザー処理装置は、読み込んだプログラムに基づいて、レーザー光を照射する。レーザー処理装置は、第1レーザー照射段階および第2レーザー照射段階を連続で実施してよい。レーザー照射後、電子機器100を搬出する(S305)。したがって、1つのレーザー処理装置で第1レーザー照射段階および第2レーザー照射段階を連続で実施することができる。
【0067】
電子機器100を搬出した後、別の電子機器100を搬入してよい。S303からS305は、処理する電子機器100の個数分繰り返されてよい。なおその際、各電子機器100のレーザー光照射条件は、それぞれ設定してよい。すべての電子機器100を処理した後、処理を終了する(S306)。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0069】
20・・放熱板、21・・絶縁基板、26・・金属配線、27・・表面汚れ、28・・角、30・・はんだ層、31・・ボイド、32・・はんだ層、40・・半導体チップ、60・・リードフレーム、62・・チップ接続部、64・・架橋部、66・・回路パターン接続部、68・・足部、72・・第1領域、74・・第2領域、76・・第3領域、82・・第1レーザー光、84・・第2レーザー光、100・・電子機器、200・・電子機器、300・・電子機器
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