(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190819
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20221220BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099270
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 心路
(72)【発明者】
【氏名】竹本 満厚
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB19
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC06
5H605EA06
5H605EB10
5H605EB16
5H605EC01
5H605EC04
5H605EC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リード線に傷が入る虞を低減することができるモータを提供する。
【解決手段】モータ1は、シャフト11を有するロータ10と、軸受20の径方向外方に位置するステータ32を有する静止部30と、ステータ32と電気的に接続されるリード線40と、を備える。静止部30は、軸受20の径方向外方に位置し、かつ、ステータ32の径方向内方に位置し、軸受20を支持するとともに、ステータ32を支持するハウジング31と、ステータ32の軸方向下方に位置し、ハウジング31が固定されるベース部34と、ベース部34に固定される固定部材35と、を有する。固定部材35は、軸方向下方から見て、シャフト11の軸方向下端に位置するシャフト下端部を覆って位置するカバー部351を有する。カバー部351は、軸方向に開口する開口部351aを有する。軸方向下方から見て、開口部351aは、シャフト11の内周面よりも径方向内側に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる中心軸を中心として回転する筒状のシャフトを有するロータと、
前記シャフトの径方向外方に位置し、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記軸受の径方向外方に位置するステータを有する静止部と、
前記ステータと電気的に接続されるリード線と、を備え、
前記静止部は、
前記軸受の径方向外方に位置し、かつ、前記ステータの径方向内方に位置し、前記軸受を支持するとともに、前記ステータを支持するハウジングと、
前記ステータの軸方向下方に位置し、前記ハウジングが固定されるベース部と、
前記ベース部に固定される固定部材と、を有し、
前記固定部材は、軸方向下方から見て、前記シャフトの軸方向下端に位置するシャフト下端部を覆って位置するカバー部を有し、
前記カバー部は、軸方向に開口する開口部を有し、
軸方向下方から見て、前記開口部は、前記シャフトの内周面よりも径方向内側に位置する、モータ。
【請求項2】
前記カバー部の前記開口部の面積は、前記リード線の断面積よりも大きい、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記固定部材は、前記カバー部に固定されて前記開口部と内部が繋がる筒部をさらに有し、
前記筒部は、前記カバー部から前記シャフトの内部を軸方向上方に向かって延びて位置する、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項4】
前記筒部は、前記シャフトの前記内周面との間に間隙を介して前記シャフトの内部に位置する、請求項3に記載のモータ。
【請求項5】
前記筒部の上端は、前記シャフトの上端よりも軸方向上方に位置する、請求項3または4に記載のモータ。
【請求項6】
前記筒部の上端は、前記シャフトの上端と軸方向において同じ位置にある、請求項3または4に記載のモータ。
【請求項7】
前記筒部の上端は、前記シャフトの上端よりも軸方向下方に位置する、請求項3または4に記載のモータ。
【請求項8】
前記固定部材は、前記筒部の上端と繋がる傾斜部を有し、
前記傾斜部は、軸方向下方から軸方向上方に向かうにつれて、中心軸に近づく方向に傾斜し、
前記傾斜部の上端は、軸方向に開口する、請求項7に記載のモータ。
【請求項9】
前記固定部材は、前記シャフトの外部に位置する、請求項1または2に記載のモータ。
【請求項10】
前記リード線の一部は、前記カバー部の前記開口部および前記シャフトの内部に位置する、請求項1から9のいずれかに記載のモータ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のモータと、
前記モータの前記ロータに固定される回転対象物と、を備える、電気機器。
【請求項12】
前記回転対象物は、前記モータの前記シャフトの内部に配置される前記リード線と電気的に接続される、請求項11に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されたモータがある。上記モータでは、ステータである固定子からリード線が引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータと電気的に接続されるリード線が、回転するシャフトと接触すると、リード線に傷が入る虞がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、リード線に傷が入る虞を低減することができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、上下方向に延びる中心軸を中心として回転する筒状のシャフトを有するロータと、前記シャフトの径方向外方に位置し、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記軸受の径方向外方に位置するステータを有する静止部と、前記ステータと電気的に接続されるリード線と、を備え、前記静止部は、前記軸受の径方向外方に位置し、かつ、前記ステータの径方向内方に位置し、前記軸受を支持するとともに、前記ステータを支持するハウジングと、前記ステータの軸方向下方に位置し、前記ハウジングが固定されるベース部と、前記ベース部に固定される固定部材と、を有し、前記固定部材は、軸方向下方から見て、前記シャフトの軸方向下端に位置するシャフト下端部を覆って位置するカバー部を有し、前記カバー部は、軸方向に開口する開口部を有し、軸方向下方から見て、前記開口部は、前記シャフトの内周面よりも径方向内側に位置する。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、リード線に傷が入る虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態に係るモータの概略の構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、モータが有する固定部材の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、モータを有する電気機器の概略の構成を示す断面図である。
【
図6】
図6は、モータの他の構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、モータのさらに他の構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、モータのさらに他の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、モータのさらに他の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、モータのシャフトの回転中心となる軸を「中心軸」と呼ぶ。そして、中心軸が延びる方向を「軸方向」と呼ぶ。本明細書では、軸方向を上下方向として、各部の形状および位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義が、モータの使用時の向きおよび位置関係を限定するわけではない。
【0010】
本明細書では、軸方向の一方を「上」とし、軸方向の他方を「下」とする。したがって、「上方」とは、軸方向上方を意味し、「下方」とは、軸方向下方を意味する。なお、図面では、適宜、軸方向上方を+Zの符号で示し、軸方向下方を-Zの符号で示す。また、軸方向において、部材の上方の端部を「軸方向上端」または単に「上端」と呼び、部材の下方の端部を「軸方向下端」または単に「下端」と呼ぶ。さらに、部材において、上方を向く面を「上面」と呼び、下方を向く面を「下面」と呼ぶ。
【0011】
本明細書では、中心軸を起点として中心軸と直交する方向を「径方向」と呼ぶ。そして、径方向において、中心軸に近づく方向を「径方向内方」と呼び、中心軸から離れる方向を「径方向外方」と呼ぶ。また、中心軸を中心として描かれる円弧に沿う方向を「周方向」と呼ぶ。
【0012】
〔1.モータの概略の構成〕
図1は、本発明の例示的な実施形態に係るモータ1の概略の構成を示す断面図である。
図2は、モータ1の底面図である。モータ1は、アウターロータ型モータである。モータ1は、ロータ10と、軸受20と、静止部30と、リード線40とを有する。
【0013】
(1-1.ロータ)
ロータ10は、回転子とも呼ばれる。ロータ10は、シャフト11と、マグネット12と、ロータヨーク13と、蓋部14と、鍔部15と、を有する。
【0014】
シャフト11は、上下方向に延びる中心軸CAを中心に回転する。シャフト11は、例えばステンレス等の金属からなる筒状の部材で構成される。すなわち、モータ1は、上下方向に延びる中心軸CAを中心として回転する筒状のシャフト11を有するロータ10を備える。
【0015】
筒状のシャフト11は、中空シャフトとも呼ばれる。シャフト11は、内周面11aを有する。内周面11aは、シャフト11において最も径方向内方に位置する面であり、中心軸CAを周方向に囲む。
【0016】
シャフト11は、シャフト上端部111と、シャフト下端部112と、を有する。シャフト上端部111は、シャフト11の上端に位置する。すなわち、シャフト11は、軸方向上端にシャフト上端部111を有する。シャフト下端部112は、シャフト11の下端に位置する。すなわち、シャフト11は、軸方向下端にシャフト下端部112を有する。
【0017】
マグネット12は、後述するステータ32よりも径方向外方に位置し、中心軸CAを周方向に囲む。マグネット12は、単一のリング状で構成されてもよい。また、マグネット12は、周方向に複数配置されてもよい。
【0018】
ロータヨーク13は、マグネット12の径方向外方に位置してマグネット12を支持する。ロータヨーク13は、中心軸CAを周方向に囲む形状に形成される。マグネット12およびロータヨーク13は、蓋部14に支持される。
【0019】
蓋部14は、例えば金属で構成される。なお、蓋部14は、樹脂で構成されてもよい。蓋部14は、静止部30の後述するハウジング31およびステータ32を上方から覆う。
【0020】
鍔部15は、蓋部14の径方向外方に位置し、蓋部14に固定される。鍔部15は、例えば金属で構成される。なお、鍔部15は、樹脂で構成されてもよい。鍔部15には、例えば
図4に示す回転対象物OBが取り付けられる。なお、回転対象物OBの詳細については後述する。
【0021】
上記の蓋部14は、軸方向に貫通する貫通孔14Pを有する。シャフト11は、蓋部14の貫通孔14Pに圧入される。これにより、シャフト11、マグネット12、ロータヨーク13、蓋部14および鍔部15を、中心軸CAを中心に一体的に回転させることができる。
【0022】
(1-2.回転部)
軸受20は、シャフト11の径方向外方に位置する。軸受20は、シャフト11を中心軸CAの周りに回転可能に支持する。すなわち、モータ1は、シャフト11の径方向外方に位置し、シャフト11を回転可能に支持する軸受20を備える。
【0023】
軸受20は、例えばボールベアリングで構成される。なお、軸受20は、スリーブベアリングで構成されてもよい。本実施形態では、軸受20は、軸方向に離間して2つ配置されるが、軸受20の個数は特に限定されない。
【0024】
(1-3.静止部)
静止部30は、ハウジング31と、ステータ32と、回路基板33と、ベース部34と、固定部材35と、を有する。
【0025】
ハウジング31は、中心軸CAを周方向に囲む筒状に形成される。ハウジング31は、例えば金属で構成されるが、樹脂で構成されてもよい。ハウジング31は、軸受20の径方向外方で、かつ、ステータ32の径方向内方に位置する。そして、ハウジング31は、軸受20を径方向内側で支持し、かつ、ステータ32を径方向外側で支持する。すなわち、静止部30は、軸受20の径方向外方に位置し、かつ、ステータ32の径方向内方に位置し、軸受20を支持するとともに、ステータ32を支持するハウジング31を有する。
【0026】
ステータ32は、軸受20の径方向外方で、かつ、ロータ10のマグネット12よりも径方向内方に位置する。すなわち、静止部30は、軸受20の径方向外方に位置するステータ32を有する。ステータ32は、ステータコア321と、インシュレータ322と、コイル323と、を有する。
【0027】
ステータコア321は、例えばケイ素鋼板等の電磁鋼板を上下に積層して構成される。インシュレータ322は、絶縁性を有する樹脂で構成される。インシュレータ322は、ステータコア321の外面を囲んで設けられる。コイル323は、インシュレータ322を介して、ステータコア321の周囲に巻き回された導線で構成される。コイル323は、回路基板33と電気的に接続される。これにより、コイル323には、回路基板33から駆動電流が供給される。
【0028】
回路基板33は、インシュレータ322に取り付けられる。回路基板33には、図示しないDCジャックが設けられる。上記DCジャックには、図示しないケーブルが接続される。これにより、上記ケーブルを介して回路基板33にDC電力が供給される。
【0029】
図2に示すように、回路基板33の下面には、コネクタ33aと、電子部品33bと、が設けられる。
図1に示すリード線40は、コネクタ33aを介して回路基板33と電気的に接続される。上述の通り、回路基板33は、ステータ32のコイル323と電気的に接続される。したがって、リード線40は、回路基板33を介してステータ32と電気的に接続される。すなわち、モータ1は、ステータ32と電気的に接続されるリード線40を備える。リード線40は、複数のケーブルを束ねて構成される。
【0030】
電子部品33bは、例えば、サーミスタなどの温度センサで構成される。図示はしないが、回路基板33は、ホール素子、フォトセンサなどの他の電子部品も有する。
【0031】
ベース部34は、ステータ32の下方に位置する。ベース部34は、周方向に環状に形成される。上記のハウジング31は、ベース部34の上面に固定される。すなわち、静止部30は、ステータ32の軸方向下方に位置し、ハウジング31が固定されるベース部34を有する。
【0032】
本実施形態では、ベース部34は、例えば金属で構成され、ハウジング31と一体的に形成される。なお、例えばハウジング31を樹脂で形成し、ベース部34を金属で形成してもよい。この場合、ハウジング31とベース部34とは、例えば接着剤による接着や圧入などの手法で接続される。
【0033】
図2に示すように、ベース部34は、リード線挿通部34aと、電子部品露出部34bと、を有する。リード線挿通部34aおよび電子部品露出部34bは、ベース部34において、周方向にずれて位置する。リード線挿通部34aは、ベース部34の径方向外方から径方向内方に向かって窪んだ切り欠きで構成されている。なお、リード線挿通部34aは、ベース部34において軸方向に貫通する孔であってもよい。回路基板33のコネクタ33aに接続されたリード線40は、リード線挿通部34aを通って下方に引き出される。これにより、リード線40とベース部34との干渉が防止される。
【0034】
回路基板33からリード線挿通部34aを通って下方に引き出されたリード線40は、
図4に示すように、首振り移動する回転対象物OBと電気的に接続される。
【0035】
電子部品露出部34bも、リード線挿通部34aと同様に、ベース部34の径方向外方から径方向内方に向かって窪んだ切り欠きで構成されている。なお、電子部品露出部34bは、ベース部34において軸方向に貫通する孔であってもよい。回路基板33の下面に設けられた電子部品33bは、電子部品露出部34bを介して下方に露出する。これにより、電子部品33bの軸方向の高さが高い場合でも、ベース部34との干渉を防ぎつつ、電子部品33bを回路基板33に保持することができる。
【0036】
上記の構成において、コイル323に駆動電流が供給されると、ステータコア321に径方向の磁束が生じる。ステータコア321の磁束によって生じる磁界と、マグネット12によって生じる磁界とが作用し、ロータ10の周方向にトルクが発生する。このトルクにより、シャフト11を含むロータ10が、中心軸CAを中心として回転する。
【0037】
〔2.固定部材について〕
次に、静止部30が有する固定部材35について、
図1~
図3に基づいて説明する。
図3は、固定部材35の外観を示す斜視図である。固定部材35は、静止部30のベース部34に下方から固定される。すなわち、静止部30は、ベース部34に固定される固定部材35を有する。固定部材35のベース部34への固定は、例えば圧入によって行われるが、接着、ねじ止めなどの他の手法によって行われてもよい。固定部材35は、例えば樹脂で構成されるが、金属で構成されてもよい。
【0038】
固定部材35は、カバー部351を有する。カバー部351は、下方から見て、シャフト11のシャフト下端部112を覆って位置する。すなわち、固定部材35は、軸方向下方から見て、シャフト11の軸方向下端に位置するシャフト下端部112を覆って位置するカバー部351を有する。
【0039】
カバー部351は、開口部351aを有する。開口部351aは、カバー部351を中心軸CAの方向に開口して設けられる。すなわち、カバー部351は、軸方向に開口する開口部351aを有する。カバー部351を下方から見たとき、
図2に示すように、カバー部351の開口部351aの形状は、円形である。言い換えれば、開口部351aの外形を規定する縁351Eの形状は、円形である。なお、開口部351aの形状は、円形に限定されるわけではなく、四角形などの多角形状であってもよい。
【0040】
カバー部351の開口部351aは、下方から見て、シャフト11の内周面11aよりも径方向内側に位置する。すなわち、軸方向下方から見て、開口部351aは、シャフト11の内周面11aよりも径方向内側に位置する。
【0041】
図1および
図3に示すように、固定部材35は、筒部352をさらに有する。筒部352は、筒部上端部352aと、筒部下端部352bと、を有する。筒部上端部352aは、筒部352の上端に位置する。すなわち、筒部352は、軸方向上端に筒部上端部352aを有する。筒部下端部352bは、筒部352の下端に位置する。すなわち、筒部352は、軸方向下端に筒部下端部352bを有する。
【0042】
筒部352は、カバー部351の上方に位置する。筒部下端部352bは、カバー部351に固定される。筒部352の内部は、カバー部351の開口部351aと繋がる。すなわち、固定部材35は、カバー部351に固定されて開口部351aと内部が繋がる筒部352を有する。なお、カバー部351と筒部352とは、一体的に形成されてもよい。
【0043】
筒部352は、カバー部351の径方向内側端部からシャフト11の内部を上方に向かって延びて位置する。すなわち、筒部352は、カバー部351からシャフト11の内部を軸方向上方に向かって延びて位置する。
図1で示したモータ1では、筒部上端部352aは、シャフト上端部111よりも上方に位置する。すなわち、筒部352の上端は、シャフト11の上端よりも軸方向上方に位置する。
【0044】
図1および
図2に示すように、シャフト11の内部において、筒部352は、シャフト11の内周面11aよりも径方向内方に間隙Tだけ離れて位置する。すなわち、筒部352は、シャフト11の内周面11aとの間に間隙Tを介してシャフト11の内部に位置する。
【0045】
図4は、上記構成のモータ1を有する電気機器500の概略の構成を示す断面図である。電気機器500は、モータ1に加えて、回転対象物OBを備える。回転対象物OBは、モータ1によって回転される対象となる対象物である。回転対象物OBとしては、例えば、スピーカ、サーキュレータ、タブレット、テレビ、鏡、などが考えられる。なお、回転対象物OBは、これらの例には限定されない。
【0046】
回転対象物OBは、モータ1が有するロータ10の鍔部15に取り付けられる。回転対象物OBの鍔部15への取り付けについては、接着、ねじ止めなど、種々の方法を採用することができる。
【0047】
ロータ10に取り付けられた回転対象物OBには、前述のリード線40が電気的に接続される。つまり、リード線40の一端は回路基板33と電気的に接続され、他端は回転対象物OBと電気的に接続される。これにより、リード線40を介して、回路基板33から回転対象物OBに各種の情報を出力することができる。上記情報としては、例えば回路基板33のホール素子およびフォトセンサで検知されるロータ10の回転位置情報、サーミスタで検知される温度情報などがある。また、リード線40を介して、回路基板33から回転対象物OBに電力を供給することもできる。
【0048】
上記のリード線40は、筒状のシャフト11の内部を通って位置する。これにより、
図4に示すように、軸方向において、回路基板33と回転対象物OBとがステータ32に対して互いに反対側に位置する構成であっても、リード線40をモータ1の径方向外方に露出させることなく、回路基板33と回転対象物OBとをリード線40によって電気的に接続することが可能となる。したがって、リード線40がモータ1の径方向外方に露出することによって外観品質が損なわれる事態を低減することができる。
【0049】
ロータ10が中心軸CAを中心として回転すると、ロータ10に固定された回転対象物OBも中心軸CAを中心として回転する。ここで、ロータ10が周方向に回転するときの基準位置を、回転角度0度の位置とする。そして、ロータ10が基準位置から周方向の一方向に回転できる最大角度を+A°とする。また、ロータ10が基準位置から周方向の逆方向に回転できる最大角度を-A°とする。なお、Aの値は、絶対値で180°未満の角度とするが、適宜設定可能である。
【0050】
ロータ10を基準位置から周方向の一方向に+A°の位置まで回転させ、その後、ロータ10を周方向の逆方向に-A°の位置まで回転させる。このような回転方向の切り替えを繰り返し行うことにより、ロータ10に固定された回転対象物OBを、周方向に±A°の角度で首振り移動させることができる。なお、ロータ10の周方向の回転速度は、コイル323に流す駆動電流の大きさを調整することにより、適宜設定可能である。
【0051】
本実施形態では、モータ1の静止部30が、上述した固定部材35を有する。これにより、
図4に示すように、リード線40が、固定部材35のカバー部351が有する開口部351aを通って、筒状のシャフト11の内部を通過するレイアウトを採用することが可能となる。
【0052】
このとき、カバー部351は、静止部30のベース部34に固定される。このため、固定部材35は静止状態である。また、リード線40は静止部30のステータ32、つまり、静止状態のステータ32と電気的に接続される。このため、リード線40が筒状のシャフト11の内部を通過するときにおいて、カバー部351の開口部351aの縁351Eに接触したとしても、リード線40が縁351Eと擦れることを防止できる。
【0053】
また、カバー部351の開口部351aは、シャフト11の内周面11aよりも径方向内側に位置する。したがって、
図4に示すように、リード線40がシャフト11の内部を下方から上方に通過するときにおいて、シャフト下端部112とリード線40との間には、カバー部351の開口部351aの縁351Eが位置する。このため、ロータ10の回転によってシャフト11が回転した場合でも、リード線40がシャフト下端部112に直接接触することが抑制される。
【0054】
このように、リード線40がカバー部351の開口部351aを通ってシャフト11の内部を通過するレイアウトを採用した場合でも、(1)リード線40が開口部351aの縁351Eと擦れることを防止できる。また、(2)シャフト11が回転した場合でも、リード線40がシャフト下端部112に直接接触することが抑制される。この2点の理由により、リード線40に傷が入る虞を低減することができる。
【0055】
また、固定部材35の筒部352は、カバー部351からシャフト11の内部を上方に向かって延びて位置する。この構成では、リード線40がシャフト11の内部を通過するときに、シャフト11の内周面11aとリード線40との間に、筒部352が位置する。これにより、シャフト11が回転した場合でも、リード線40がシャフト11の内周面11aと直接接触することが抑制される。その結果、リード線40が、回転するシャフト11の内周面11aと接触することによって傷つく虞を低減することができる。
【0056】
また、径方向において、筒部352とシャフト11の内周面11aとの間には間隙Tが存在する。これにより、シャフト11が回転しても、筒部352はシャフト11と非接触となる。したがって、筒部352が、回転するシャフト11と接触して損傷する虞を低減することができる。
【0057】
また、筒部352の上端は、シャフト11の上端よりも上方に位置する。この構成では、
図4に示すように、リード線40がシャフト11の内部を下方から上方に通過し、シャフト上端部111を出て径方向外方に折れ曲がるレイアウトを採用した場合に、シャフト上端部111とリード線40との間に筒部上端部352aが位置する。このため、シャフト11が回転したときに、リード線40がシャフト上端部111に直接接触することが抑制される。したがって、リード線40が、回転するシャフト上端部111と接触することによって傷つく虞を低減することができる。
【0058】
図5は、固定部材35の底面図である。カバー部351を下方から見たときの開口部351aの面積をS1(mm
2)とする。また、リード線40の断面積をS2(mm
2)とする。本実施形態では、S1>S2である。すなわち、カバー部351の開口部351aの面積は、リード線40の断面積よりも大きい。
【0059】
このようなS1とS2との関係により、リード線40は開口部351aを通過することが可能となる。つまり、
図4で示すように、リード線40がカバー部351の開口部351aを通るモータ1のレイアウトを実現することができる。
【0060】
また、
図4の構成では、リード線40の一部は、カバー部351の開口部351aおよびシャフト11の内部に位置する。
【0061】
リード線40がカバー部351の開口部351aおよびシャフト11の内部に位置する構成では、少なくともシャフト下端部112とリード線40との間に、カバー部351の開口部351aの縁351Eが位置する。これにより、リード線40が少なくともシャフト下端部112に直接接触することが抑制される。したがって、シャフト11が回転した場合でも、リード線40が傷つく虞を低減することができる。
【0062】
特に、リード線40の一部が開口部351aおよび筒部352の内部に位置する構成では、シャフト11の内周面11aとリード線40との間に筒部352が存在する。筒部352の存在により、リード線40がシャフト11の内周面11aと直接接触することが抑制される。したがって、シャフト11が回転した場合でも、リード線40がシャフト11の内周面11aとの接触によって傷つく虞を低減することができる。
【0063】
また、
図4に示すように、本実施形態の電気機器500は、上述したモータ1と、モータ1のロータ10に固定される回転対象物OBと、を備える。
【0064】
この構成では、電気機器500において、リード線40が固定部材35の開口部351aおよびシャフト11の内部を通って回転対象物OBに電気的に接続されるレイアウトを実現することができる。このような電気機器500のレイアウトでは、少なくともシャフト下端部112とリード線40との間に、カバー部351の開口部351aの縁351Eが位置する。これにより、リード線40が少なくともシャフト下端部112に直接接触することが抑制される。したがって、電気機器500において、モータ1のシャフト11が回転し、これに伴って、回転対象物OBが周方向に回転した場合でも、リード線40が傷つく虞を低減することができる。
【0065】
また、電気機器500において、
図4に示すように、回転対象物OBは、モータ1のシャフト11の内部に配置されるリード線40と電気的に接続される。このように、回転対象物OBがリード線40と電気的に接続された電気機器500の構成において、リード線40が、回転するシャフト11と接触して傷つく虞を低減することができる。
【0066】
〔3.モータの他の構成〕
図6は、モータ1の他の構成を示す断面図である。モータ1に適用する固定部材35は、
図6の構成であってもよい。
図6の構成では、固定部材35の筒部上端部352aは、シャフト上端部111と軸方向において同じ位置にある。すなわち、筒部352の上端は、シャフト11の上端と軸方向において同じ位置にある。
【0067】
固定部材35が
図6の構成であっても、シャフト上端部111と、シャフト11の内部を通るリード線40との間に筒部上端部352aを位置させて、リード線40がシャフト上端部111に直接接触することを抑制することができる。これにより、リード線40が、回転するシャフト上端部111と接触することによって傷つく虞を低減することができる。
【0068】
図7は、モータ1のさらに他の構成を示す断面図である。モータ1に適用する固定部材35は、
図7の構成であってもよい。
図7の構成では、固定部材35の筒部上端部352aは、シャフト上端部111よりも下方に位置する。すなわち、筒部352の上端は、シャフト11の上端よりも軸方向下方に位置する。
【0069】
リード線40がシャフト11の内部を下方から上方に通過するレイアウトを採用した場合、シャフト11の内周面11aの一部とリード線40との間に筒部352が位置する。このため、シャフト11が回転したときに、リード線40がシャフト11の内周面11aに直接接触することが抑制される。これにより、リード線40が、回転するシャフト11の内周面11aと接触することによって傷つく虞を低減することができる。
【0070】
図8は、モータ1のさらに他の構成を示す断面図である。モータ1に適用する固定部材35は、
図8の構成であってもよい。
図8の構成では、固定部材35は、傾斜部353を有する。傾斜部353は、筒部352の上端に固定される。すなわち、固定部材35は、筒部352の上端と繋がる傾斜部353を有する。
【0071】
傾斜部353は、傾斜上端部353aと、傾斜下端部353bと、を有する。傾斜上端部353aは、傾斜部353の上端に位置する。すなわち、傾斜部353は、軸方向上端に傾斜上端部353aを有する。傾斜下端部353bは、傾斜部353の下端に位置する。すなわち、傾斜部353は、軸方向下端に傾斜下端部353bを有する。傾斜下端部353bは、筒部上端部352aに固定される。これにより、傾斜部353が筒部352の上端に繋がる。なお、傾斜部353は、筒部352と一体的に形成されてもよい。
【0072】
傾斜部353は、下方から上方に向かって開口径が小さくなるテーパー形状で形成される。すなわち、傾斜部353は、軸方向下方から軸方向上方に向かうにつれて、中心軸CAに近づく方向に傾斜する。そして、傾斜上端部353aは、軸方向に開口する。すなわち、傾斜部353の上端は、軸方向に開口する。
【0073】
図8の構成では、リード線40が筒部352の内部を下方から上方に向かい、傾斜上端部353aの開口を通過するときに、リード線40は傾斜部353によって中心軸CAに近づく方向に案内される。これにより、傾斜上端部353aの開口を通過したリード線40と、シャフト11の内周面11aとの距離が広がる。その結果、リード線40がシャフト上端部111に接触しにくくなる。したがって、リード線40がシャフト上端部111に接触して傷つく虞を低減することができる。
【0074】
図9は、モータ1のさらに他の構成を示す断面図である。
図10は、
図9の固定部材35の斜視図である。モータ1に適用する固定部材35は、上述したカバー部351のみで構成されてもよい。この場合、固定部材35は、シャフト11の外部に位置する。つまり、固定部材35は、シャフト11の内部には存在しない。
【0075】
固定部材35がシャフト11の外部に位置する構成であっても、つまり、固定部材35がカバー部351のみで構成される場合でも、リード線40がシャフト11の内部を通過するときにおいて、シャフト下端部112とリード線40との間には、カバー部351の開口部351aの縁351Eが位置する。このため、シャフト11が回転したときに、リード線40がシャフト下端部112に直接接触することが抑制される。したがって、リード線40が、回転するシャフト11との接触によって傷つく虞を低減することができる。
【0076】
〔4.その他〕
本実施形態では、固定部材35、つまり、リード線40とシャフト11との接触を防止するための部材を、モータ1に設ける構成について説明した。しかし、上記部材は、回転対象物OBに設けられてもよい。例えば、上記部材を筒状で構成し、回転対象物OBに固定する。そして、上記部材を回転対象物OBから下方に延ばし、シャフト11の内部に位置させる。ステータ32と電気的に接続されたリード線40を、上記部材の下方から内部に通し、上記部材の上方に位置する回転対象物OBと電気的に接続することにより、リード線40とシャフト11とが接触する虞を低減して、リード線40が傷つく虞を低減することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。また、上記実施形態やその変形例は適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のモータは、例えば回転対象物を首振りさせる電気機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 モータ
10 ロータ
11 シャフト
11a 内周面
20 軸受
30 静止部
31 ハウジング
32 ステータ
34 ベース部
35 固定部材
351 カバー部
351a 開口部
351E 縁
352 筒部
353 傾斜部
40 リード線
500 電気機器
CA 中心軸
OB 回転対象物
T 間隙