(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190820
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】樹脂枠および電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20221220BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20221220BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/289 101
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099272
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 雄太
(72)【発明者】
【氏名】多田 悟
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA07
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC13
5H040CC15
5H040CC25
5H040CC34
5H040CC35
5H040CC38
5H040JJ03
5H040LL06
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】電池セルの位置ずれを抑制できる樹脂枠を提供する。
【解決手段】電池セル2を保持する樹脂枠は、位置決め部と、突起部350とを備えている。位置決め部は、電池セル2の上面に当接して、電池セル2の上面の上下方向の位置を決める。突起部350は、樹脂枠の底部に設けられている。突起部350は、電池セル2の厚み方向に突き出している。突起部350は、電池セル2の厚み方向に対して傾斜する傾斜部356を有している。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルを保持する樹脂枠であって、
前記電池セルの一方側の面に当接して前記一方側の面の位置を決める位置決め部と、
前記樹脂枠の、前記一方側とは反対の他方側に設けられ、前記電池セルの厚み方向に突き出し、前記厚み方向に対して傾斜する傾斜部を有する、突起部と、を備える、樹脂枠。
【請求項2】
前記電池セルの前記他方側の面を支持する支持部と、
前記支持部よりも前記他方側に設けられ、前記厚み方向に対して傾斜する傾斜面とをさらに備える、請求項1に記載の樹脂枠。
【請求項3】
前記傾斜部が前記厚み方向に対して傾斜する角度は、前記傾斜面が前記厚み方向に対して傾斜する角度よりも大きい、請求項2に記載の樹脂枠。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記突起部の先端に向かうにつれて前記他方側に傾斜する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂枠。
【請求項5】
電池セルと、前記電池セルを保持する樹脂枠とを交互に積層した電池モジュールであって、
前記樹脂枠は、前記電池セルの一方側の面に当接して前記一方側の面の位置を決める位置決め部と、前記樹脂枠の、前記一方側とは反対の他方側に設けられ、前記電池セルと前記樹脂枠との積層方向に突き出し、前記積層方向に対して傾斜する傾斜部を有する、突起部と、を有し、
前記突起部は、前記積層方向に隣り合う樹脂枠と干渉する、電池モジュール。
【請求項6】
前記突起部は、前記積層方向に隣り合う樹脂枠に保持される電池セルに、前記一方側へ向かう方向の力を作用する、請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記樹脂枠は、前記電池セルの前記他方側の面を支持する支持部と、前記支持部よりも前記他方側に設けられ、前記積層方向に対して傾斜する傾斜面とをさらに有する、請求項5または請求項6に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記傾斜部が前記積層方向に対して傾斜する角度は、前記傾斜面が前記積層方向に対して傾斜する角度よりも大きい、請求項7に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記傾斜部は、前記突起部の先端に向かうにつれて前記他方側に傾斜する、請求項5から請求項8のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂枠および電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-050200号公報(特許文献1)には、所定の配列方向に沿って配列された複数の電池セルを含む、電池モジュールが記載されている。電池セルは、樹脂製のセルホルダによって保持されている。隣り合うセルホルダの一方には、突出部が設けられている。隣り合うセルホルダの他方には、突出部が配置される凹部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献には、突出部を凹部に挿入することで隣り合うセルホルダ同士を位置決めできると記載されている。しかし、セルホルダにより保持される電池セルの位置を直接決めるものではないため、電池セルの位置が安定しない可能性がある。
【0005】
本開示では、電池セルの位置ずれを抑制できる、樹脂枠および電池モジュールが提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、電池セルを保持する樹脂枠が提案される。樹脂枠は、位置決め部と、突起部とを備えている。位置決め部は、電池セルの一方側の面に当接して、電池セルの一方側の面の位置を決める。突起部は、樹脂枠の、一方側とは反対の他方側に設けられている。突起部は、電池セルの厚み方向に突き出している。突起部は、電池セルの厚み方向に対して傾斜する傾斜部を有している。
【0007】
本開示のある局面に従うと、電池セルと、電池セルを保持する樹脂枠とを交互に積層した電池モジュールが提案される。樹脂枠は、位置決め部と、突起部とを有している。位置決め部は、電池セルの一方側の面に当接して、電池セルの一方側の面の位置を決める。突起部は、樹脂枠の、一方側とは反対の他方側に設けられている。突起部は、電池セルと樹脂枠との積層方向に突き出している。突起部は、電池セルと樹脂枠との積層方向に対して傾斜する傾斜部を有している。突起部は、積層方向に隣り合う樹脂枠と干渉する。
【0008】
このような樹脂枠および電池モジュールによれば、電池セルと樹脂枠とを交互に積層して積層方向に圧縮する際に、突起部は、隣り合う樹脂枠に保持される電池セルに、一方側へ向かう方向の力を作用する。電池セルの一方側の面が位置決め部に確実に当接するようになり、位置決め部によって電池セルの一方側の面が位置決めされる。したがって、電池セルの位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る樹脂枠および電池モジュールによれば、電池セルの位置ずれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る電池モジュールを概略的に示す斜視図である。
【
図2】電池セルの構成の一例を示す透視斜視図である。
【
図4】積層時の電池セルおよび樹脂枠の配置を示す模式図である。
【
図5】
図4中に示される領域Vを拡大して示す模式図である。
【
図6】圧縮時の電池セルおよび樹脂枠の配置を示す模式図である。
【
図7】
図6中に示される領域VIIを拡大して示す模式図である。
【
図8】第2実施形態に係る、積層時の電池セルおよび樹脂枠の配置を示す模式図である。
【
図9】
図8中に示される領域IXを拡大して示す模式図である。
【
図10】第2実施形態に係る、圧縮時の電池セルおよび樹脂枠の配置を示す模式図である。
【
図11】
図10中に示される領域XIを拡大して示す模式図である。
【
図12】第3実施形態に係る樹脂枠の正面図である。
【
図13】
図12中に示される領域XIIIを拡大して示す模式図である。
【
図14】第3実施形態に係る樹脂枠の背面図である。
【
図15】
図14中に示される領域XVを拡大して示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、実施形態に係る電池モジュール1を概略的に示す斜視図である。電池モジュール1を構成する電池セルの数は特に限定されるものではないが、以下では、セル数が27個である例について説明する。
図1に示されるように、電池モジュール1は、複数の電池セル201~227と、複数の樹脂枠3と、一対のエンドプレート41,42と、一対の拘束バンド51,52とを備えている。
【0013】
電池モジュール1では、複数の電池セル201~227と複数の樹脂枠3とを交互に積層することにより、積層体10が形成されている。以下では、積層体10の高さ方向をHと記載し、積層体10の積層方向をLと記載し、積層体10の幅方向をWと記載する。高さ方向Hは、積層体10の上下方向である。積層方向Lは、積層体10の長手方向である。幅方向Wは、積層体10の短手方向である。
【0014】
複数の電池セル201~227の各々は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。各電池セル201~227の構成は共通であり、電池セルを互いに区別しない場合には電池セル2と記載する。電池セル2の構成については
図2にて説明する。
【0015】
複数の樹脂枠3の各々は、積層方向Lに隣り合う2つの電池セル2の間に配置されている。
図1に示されるように積層体10の両端には電池セル2が配置され、複数の樹脂枠3の個数は、複数の電池セル2の個数よりも1個だけ少ない。積層体10に含まれる電池セル2の個数が27個である場合、樹脂枠3の個数は26個である。樹脂枠3の詳細な構造については
図3にて説明する。
【0016】
エンドプレート41,42は、たとえば金属材料によって形成されており、板状に形成されている。エンドプレート41は、積層方向Lにおける積層体10の一方端に配置されている。エンドプレート42は、積層方向Lにおける積層体10の他方端に配置されている。エンドプレート41,42は、積層体10を積層方向Lに両側から挟み込むように配置されている。エンドプレート41,42の各々と積層体10との間には、図示しない絶縁部材が配置されている。
【0017】
拘束バンド51,52は、樹脂枠3の上下にそれぞれ配置されている。拘束バンド51は積層体10の上方に配置されており、拘束バンド52は積層体10の下方に配置されている。拘束バンド51,52の一方の端部は、エンドプレート41に固定されている。拘束バンド51,52の他方の端部は、エンドプレート42に固定されている。拘束バンド51,52は、積層体10を挟み込んだ状態のエンドプレート41とエンドプレート42とを互いに拘束(結合)する。
【0018】
図2は、電池セル2の構成の一例を示す透視斜視図である。
図2に示されるように、電池セル2は、略直方体形状を有する角型セルである。電池セル2と樹脂枠3とを積層した積層体10の積層方向Lは、電池セル2の短手方向(電池セル2の厚み方向)に相当する。
【0019】
電池セル2のケース内部には電極体64が収容されている。電極体64は、たとえば、正極65と負極66とがセパレータ67を介して積層され、さらに筒状に捲回されることにより形成されている。電極体64は、捲回型に限られず、積層型であってもよい。電極体64は、図示しない電解液に含浸されている。
【0020】
電池セル2のケースの上面には、開口が形成されている。この開口は蓋体61によって封止されている。蓋体61は、電池セル2の上面を構成している。蓋体61には、正極端子62および負極端子63が設けられている。正極端子62および負極端子63の各々の一方端は、蓋体61から外部に突出している。正極端子62および負極端子63は、電池セル2の上面から上方に突き出している。正極端子62および負極端子63の各々の他方端は、ケース内部において、内部正極端子および内部負極端子(いずれも図示せず)にそれぞれ電気的に接続されている。
【0021】
図示しないが、隣り合う2つの電池セル2は、バスバーにより互いに電気的に接続されている。より具体的には、2つの電池セル2が直列接続される場合、一方の電池セル2の正極端子62と他方の電池セル2の負極端子63とが、電気的に接続されている。バスバーは、たとえば正極端子62および負極端子63に溶接されている。
【0022】
図3は、樹脂枠3の一例を示す斜視図である。樹脂枠3は、ポリプロピレン(polypropylene)などの樹脂材料により形成されている。各樹脂枠3は、積層方向Lに配列された隣り合う2つの電池セル2の間に配置されており、当該2つの電池セル2を電気的に絶縁したり、当該2つの電池セル2の位置を保持したりする機能を有している。各樹脂枠3が、電池セル2を冷却する機能をさらに有していてもよい。
【0023】
図3に示されるように、樹脂枠3は、本体部310と、一対の側壁部320,330と、底部340とを有している。本体部310は、平板形状を有している。側壁部320,330と底部340とは、本体部310に対して積層方向Lに突き出している。本体部310、側壁部320,330および底部340によって取り囲まれた空間に電池セル2が収容されて、電池セル2は樹脂枠3によって保持される。
【0024】
側壁部320は、電池セル2の収容空間に向く対向面321を有している。側壁部330は、電池セル2の収容空間に向く対向面331を有している。
図3に示される、樹脂枠3が電池セル2を保持していない状態で、対向面321と対向面331とは互いに向き合っている。電池セル2が樹脂枠3により保持された状態で、対向面321,331は、それぞれ電池セル2に対向する。
【0025】
側壁部320の対向面321から、幅方向リップ322が突き出している。側壁部330の対向面331は、幅方向Wにおける電池セル2の位置を決める基準面P2として機能する。樹脂枠3に保持された電池セル2に対して、幅方向リップ322が幅方向Wの力を作用する。これにより電池セル2は対向面331(基準面P2)に押し付けられて、幅方向Wにおける電池セル2の位置決めがなされる。
【0026】
樹脂枠3の上部に、一対の位置決め部323,333が設けられている。位置決め部323,333は、樹脂枠3に保持された電池セル2の上面に当接して、電池セル2の上面の高さ方向Hにおける位置を決める。位置決め部323,333の下面を通り積層方向Lおよび幅方向Wに延びる平面は、高さ方向Hにおける電池セル2の位置を決める基準面P1として機能する。
【0027】
底部340から上方向に、高さ方向リップ342,343が突き出している。樹脂枠3に保持された電池セル2は、その下面が高さ方向リップ342,343に接触して、高さ方向リップ342,343上に搭載される。高さ方向リップ342,343は、本開示に係る、電池セル2の下面を支持する支持部に相当する。
【0028】
図4は、積層時の電池セル2および樹脂枠3の配置を示す模式図である。
図5は、
図4中に示される領域Vを拡大して示す模式図である。
図4には、電池セル2が樹脂枠3によって保持された組立体が、例示的に積層方向Lに4つ並べられ、各組立体間には隙間があり、各組立体が積層方向Lに加圧はされていない状態が図示されている。樹脂枠3の本体部310は、電池セル2に対向する表面311と、表面311とは反対側の裏面312とを有している。樹脂枠3に保持された電池セル2の上面に位置決め部323,333が当接することで、電池セル2の上面の高さ方向Hにおける位置決めがなされる。
【0029】
図5に示されるように、樹脂枠3は、突起部350を有している。突起部350は樹脂枠3の下部に設けられており、本体部310の裏面312から電池セル2の厚み方向(積層方向L。
図5においては図中の左右方向)に突き出している。突起部350は、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に対して傾斜して延びている。本実施形態では、突起部350の全体が、厚み方向に対して傾斜する傾斜部を構成している。本実施形態の傾斜部は、突起部350の先端に向かうにつれて上方に向かうように傾斜している。
【0030】
高さ方向リップ342,343の下方に、傾斜面346が設けられている。傾斜面346は、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に対して傾斜して延びている。本実施形態の傾斜面346は、樹脂枠3の本体部310から離れるにつれて上方に向かうように傾斜している。
【0031】
図6は、圧縮時の電池セル2および樹脂枠3の配置を示す模式図である。
図7は、
図6中に示される領域VIIを拡大して示す模式図である。
図1を参照して説明したエンドプレート41,42の間に積層体10が挟まれて、エンドプレート41,42が拘束バンド51,52によって拘束されることにより、電池セル2が樹脂枠3によって保持された組立体が、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に加圧される。各電池セル2は、隣り合う組立体の樹脂枠3の裏面312に接触している。
【0032】
各樹脂枠3の突起部350が、積層方向Lに隣り合う樹脂枠3と干渉している。具体的には、突起部350は、隣り合う樹脂枠3の傾斜面346に突き当たっている。積層方向Lに対して傾斜する傾斜面346に対して、突起部350からの応力が加わる。積層体10を積層方向Lに圧縮する際に、突起部350は、傾斜面346の上方の高さ方向リップ342,343、さらに高さ方向リップ342に搭載されて支持されている電池セル2に、
図7に示されるように上向きの力Fを作用する。
【0033】
上述した説明と一部重複する記載もあるが、実施形態の樹脂枠3および電池モジュール1の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。
【0034】
図3,4に示されるように、樹脂枠3は、電池セル2の上面に当接して上面の高さ方向の位置を決める位置決め部323,333を備えている。
図5に示されるように、樹脂枠3は、樹脂枠3の底部に設けられ、電池セル2の厚み方向(電池セル2と樹脂枠3との積層方向L)に突き出る、突起部350を備えている。突起部350は、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に対して傾斜して延びている。
【0035】
図4,5に示される、電池セル2と樹脂枠3とを交互に配置して電池セル2の厚み方向(積層方向L)に積層した状態では、電池セル2と隣り合う樹脂枠3との間に隙間がある。
図6,7に示される、電池セル2と樹脂枠3とを積層方向Lに圧縮する圧縮過程で、突起部350は、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に隣り合う樹脂枠3と干渉する。積層体10を積層方向Lに圧縮する際に、突起部350は、隣り合う樹脂枠3に保持される電池セル2に、上方向の力Fを作用する。
【0036】
電池セル2の上面が、位置決め部323,333に確実に当接するようになり、位置決め部323,333によって電池セル2の上面が基準面P1に位置決めされる。したがって、積層体10内の電池セル2の、高さ方向Hにおける位置ずれが抑制される。電池セル2の上面の位置が安定することにより、隣り合う電池セル2同士を電気的に接続するために正極端子62および負極端子63を溶接する工程などの、後工程における、積層体10の品質不良を低減することができる。
【0037】
また、突起部350が電池セル2に上方向の力Fを作用することにより、電池セル2に対して下方向に加わる応力に対する強度(剛性)が向上する。これにより、溶接工程などの後工程において電池セル2に下向きの応力が印加された際の、電池セル2の下方向への位置ずれを抑制することができる。
【0038】
図5に示されるように、樹脂枠3は、高さ方向リップ342,343と、傾斜面346とをさらに備えている。高さ方向リップ342,343は、電池セル2の下面を支持する。傾斜面346は、高さ方向リップ342,343よりも下方に設けられている。
図6,7に示される圧縮過程で、突起部350は、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に隣り合う樹脂枠3の傾斜面346に突き当たる。突起部350が傾斜面346を押圧する力の分力成分として、上向きの力が発生する。これにより、隣り合う樹脂枠3に保持される電池セル2に対し、確実に上方向の力Fを作用させることができる。
【0039】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る、積層時の電池セル2および樹脂枠3の配置を示す模式図である。
図9は、
図8中に示される領域IXを拡大して示す模式図である。第2実施形態の樹脂枠3は、突起部350の形状において、第1実施形態とは異なっている。
【0040】
具体的には、
図9に示されるように、突起部350の上面が、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に対して傾斜して延びる傾斜部356を構成している。傾斜部356は、突起部350の先端に向かうにつれて下方に向かうように傾斜している。電池セル2の厚み方向(積層方向L)に対して傾斜部356が傾斜する角度は、電池セル2の下方の傾斜面346が傾斜する角度よりも、大きくなっている。
【0041】
傾斜部356と傾斜面346との傾斜する角度に差を設けることにより、
図8,9に示される積層体10の圧縮前の積層時点では、突起部350が隣り合う樹脂枠3と干渉しない構成とされている。
【0042】
図10は、第2実施形態に係る、圧縮時の電池セル2および樹脂枠3の配置を示す模式図である。
図11は、
図10中に示される領域XIを拡大して示す模式図である。傾斜部356と傾斜面346との傾斜する角度に差を設けることにより、圧縮過程において突起部350が傾斜面346の下方に誘い込まれ、
図10,11に示されるように、突起部350の傾斜部356が隣り合う樹脂枠3の傾斜面346と干渉する構成とされている。
【0043】
第2実施形態の樹脂枠3および電池モジュール1によれば、積層体10を積層方向Lに圧縮する際に、突起部350を、隣り合う樹脂枠3と確実に干渉させることができる。このとき突起部350が、隣り合う樹脂枠3に保持される電池セル2に、上方向の力Fを作用することで、位置決め部323,333によって電池セル2の上面が基準面P1に位置決めされる。したがって、積層体10内の電池セル2の、高さ方向Hにおける位置ずれを抑制することができる。
【0044】
第2実施形態の樹脂枠3において、突起部350は先端に向かうにつれて先細る形状を有している。突起部350の形状を規定することにより、樹脂枠3の成型性を向上することができる。
【0045】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態に係る樹脂枠3の正面図である。
図13は、
図12中に示される領域XIIIを拡大して示す模式図である。
図14は、第3実施形態に係る樹脂枠3の背面図である。
図15は、
図14中に示される領域XVを拡大して示す模式図である。
図12,13には、樹脂枠3の本体部310の表面311が図示されており、
図14,15には、樹脂枠3の本体部310の裏面312が図示されている。
【0046】
第1および第2実施形態では、突起部350が、突起部350の先端に向かうにつれて上下方向に向かう傾斜部を有している。これに対し第3実施形態では、電池セル2の厚み方向(積層方向L)に対して直角方向に、傾斜が設置されている。
【0047】
具体的には、
図13に示されるように、樹脂枠3は、高さ方向リップ342の下方に、幅方向W(
図13においては図中の左右方向)において樹脂枠3の側壁部320から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜面346を有している。
図15に示されるように、樹脂枠3は底部に、紙面垂直方向手前側に突き出る突起部350を有している。突起部350は、幅方向W(
図15においては図中の左右方向)において樹脂枠3の側壁部320から離れるにつれて下方に傾斜する傾斜部356を有している。
【0048】
このような構成を備えている第3実施形態の樹脂枠3および電池モジュール1によっても、積層体10を積層方向Lに圧縮する際に、突起部350を、隣り合う樹脂枠3と確実に干渉させることができる。このとき突起部350が、隣り合う樹脂枠3に保持される電池セル2に、上方向の力Fを作用することで、位置決め部323,333によって電池セル2の上面が基準面P1に位置決めされる。したがって、積層体10内の電池セル2の、高さ方向Hにおける位置ずれを抑制することができる。
【0049】
傾斜部356と傾斜面346との傾斜する角度には差が設けられており、傾斜部356が傾斜する角度が傾斜面346が傾斜する角度よりも大きくなっている。高さ方向Hにおいて傾斜面346と傾斜部356とが一部重なるように樹脂枠3を形成することで、突起部350を隣り合う樹脂枠3の傾斜面346に確実に干渉させることができる。
【0050】
これまでの実施形態の説明においては、電池セル2の上面から正極端子62および負極端子63が上方に突き出し、突起部350が樹脂枠3の底部に設けられて隣り合う電池セルに上向きの力Fを作用することで、電池セル2の上面の位置決めをする例について説明した。上側が実施形態における「一方側」に相当し、下側が実施形態における「他方側」に相当する。この例に限られず、位置決め部323,333は電池セル2のいずれかの面に当接し、位置決め部323,333の当接する側とは反対側に突起部350が設けられて、隣り合う樹脂枠3と干渉する突起部350が電池セル2に対して位置決め部323,333の当接する側に向かう方向の力を作用する構成としてよい。電池セル2において端子が側面に設けられる場合、位置決め部323,333は、その端子が設けられた側面を位置決めするものであってよい。
【0051】
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 電池モジュール、2 電池セル、3 樹脂枠、10 積層体、41,42 エンドプレート、51,52 拘束バンド、62 正極端子、63 負極端子、310 本体部、311 表面、312 裏面、320,330 側壁部、321,331 対向面、322 幅方向リップ、323,333 位置決め部、340 底部、342,343 高さ方向リップ、346 傾斜面、350 突起部、356 傾斜部、H 高さ方向、L 積層方向、P1,P2 基準面、W 幅方向。