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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190832
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】押圧治具および移載装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20221220BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20221220BHJP
   G09F 9/00 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
G09F9/30 360
H01L33/00 L
G09F9/00 304B
G09F9/00 338
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099290
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】磯野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 一幸
(72)【発明者】
【氏名】浅田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】武政 健一
【テーマコード(参考)】
5C094
5F142
5G435
【Fターム(参考)】
5C094AA35
5C094BA03
5C094BA25
5C094GB01
5F142EA02
5F142EA34
5F142FA32
5F142GA02
5G435AA12
5G435AA17
5G435BB04
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】レーザ光の照射による温度上昇を抑制することができる押圧治具または移載装置を提供すること。
【解決手段】押圧治具は、LED素子が設けられた素子基板を、LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板に押圧する押圧治具であって、押圧治具は、LED素子に照射されるレーザ光を透過する板状部材と、板状部材を冷却する冷却部と、を含む。移載装置は、LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板を載置するステージと、LED素子にレーザ光を照射するレーザ照射部と、レーザ光を透過する板状部材および板状部材を冷却する冷却部を含み、LED素子が設けられた素子基板を回路基板に押圧する押圧治具と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子が設けられた素子基板を、前記LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板に押圧する押圧治具であって、前記押圧治具は、
前記LED素子に照射されるレーザ光を透過する板状部材と、
前記板状部材を冷却する冷却部と、を含む、押圧治具。
【請求項2】
前記冷却部は、前記板状部材の周辺部に設けられている、請求項1に記載の押圧治具。
【請求項3】
前記冷却部は、ヒートシンクである、請求項1または請求項2に記載の押圧治具。
【請求項4】
前記冷却部は、水冷式である、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の押圧治具。
【請求項5】
前記冷却部は、前記板状部材の内部に設けられている、請求項1に記載の押圧治具。
【請求項6】
前記板状部材は、石英ガラスである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の押圧治具。
【請求項7】
LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板を載置するステージと、
前記LED素子にレーザ光を照射するレーザ照射部と、
前記レーザ光を透過する板状部材および前記板状部材を冷却する冷却部を含み、前記LED素子が設けられた素子基板を前記回路基板に押圧する押圧治具と、を含む、移載装置。
【請求項8】
前記冷却部は、前記板状部材の周辺部に設けられている、請求項7に記載の移載装置。
【請求項9】
前記冷却部は、ヒートシンクである、請求項7または請求項8に記載の移載装置。
【請求項10】
前記冷却部は、水冷式である、請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項11】
前記冷却部は、前記板状部材の内部に設けられている、請求項7に記載の移載装置。
【請求項12】
前記板状部材は、石英ガラスである、請求項7乃至請求項11のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項13】
さらに、前記押圧治具と前記素子基板との間に、パターニングされた遮光マスクを含む、請求項7乃至請求項12のいずれか一項に記載の移載装置。
【請求項14】
前記レーザ照射部は、波長の異なる2種類の前記レーザ光を照射する、請求項7乃至請求項13のいずれか一項に記載の移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、LED(Light Emitting Diode)素子を移載する移載装置に関する。また、本発明の一実施形態は、移載装置で用いられる押圧治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代の表示装置として、各画素に微小なLED素子を実装したマイクロLEDディスプレイの開発が進められている。マイクロLEDディスプレイは、画素回路が形成された回路基板に複数のLED素子が実装された構造を有する。
【0003】
回路基板にマイクロLED素子を実装する方法には、様々な方法がある。例えば、マイクロLED素子が設けられた素子基板と回路基板とを密着し、レーザ光を照射してマイクロLED素子を素子基板から回路基板に移載する、いわゆるレーザリフトオフ法と呼ばれる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第10096740号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、レーザリフトオフの際に遮光マスクを用いてレーザ光を照射しているが、レーザ光を遮光マスクが吸収し、遮光マスクの温度が上昇する問題があった。また、遮光マスクだけでなく、素子基板および回路基板もレーザ光を吸収し、マイクロLED素子の熱によるダメージを受ける問題もあった。
【0006】
本発明の一実施形態は、LED素子のレーザリフトオフにおいて、レーザ光の照射による温度上昇を抑制することができる移載装置を提供することを目的の一つとする。また、本発明の一実施形態は、レーザ光の照射による温度上昇を抑制することができる押圧治具を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る押圧治具は、LED素子が設けられた素子基板を、LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板に押圧する押圧治具であって、押圧治具は、LED素子に照射されるレーザ光を透過する板状部材と、板状部材を冷却する冷却部と、を含む。
【0008】
また、本発明の一実施形態に係る移載装置は、LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板を載置するステージと、LED素子にレーザ光を照射するレーザ照射部と、レーザ光を透過する板状部材および板状部材を冷却する冷却部を含み、LED素子が設けられた素子基板を回路基板に押圧する押圧治具と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る移載装置の模式図である。
図2A】本発明の一実施形態に係る移載装置の押圧治具の模式的な斜視図である。
図2B】本発明の一実施形態に係る移載装置の押圧治具の模式的な平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示すフローチャート図である。
図4A】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図4C】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図4D】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図4E】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図4F】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図4G】本発明の一実施形態に係る移載装置を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る移載装置を利用して製造される表示装置の概略の構成を示す平面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る移載装置を利用して製造される表示装置の回路構成を示すブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係る移載装置を利用して製造される表示装置の画素回路の構成を示す回路図である。
図8】本発明の一実施形態に係る移載装置を利用して製造される表示装置の画素の構成を示す断面図である。
図9A】本発明の一実施形態に係る押圧治具の模式的な斜視図である。
図9B】本発明の一実施形態に係る押圧治具の模式的な断面図である。
図10A】本発明の一実施形態に係る押圧治具の模式的な斜視図である。
図10B】本発明の一実施形態に係る押圧治具の模式的な断面図である。
図11A】本発明の一実施形態に係る押圧治具の模式的な斜視図である。
図11B】本発明の一実施形態に係る押圧治具の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができる。本発明は、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合がある。しかしながら、図面は、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
本発明の実施形態を説明する際、回路基板からLED素子に向かう方向を「上」とし、その逆の方向を「下」とする。ただし、「上に」または「下に」という表現は、単に、各要素の上限関係を説明しているにすぎない。例えば、回路基板の上にLED素子が配置されるという表現は、回路基板とLED素子との間に他の部材が介在する場合も含む。さらに、「上に」または「下に」という表現は、平面視において各要素が重畳する場合だけでなく、重畳しない場合をも含む。
【0012】
本発明の実施形態を説明する際、既に説明した要素と同様の機能を備えた要素については、同一の符号または同一の符号にアルファベット等の記号を付して、説明を省略することがある。また、ある要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がある場合は、その要素を示す符号の後に、R、GまたはBの記号を付して区別する。ただし、その要素について、RGBの各色に区別して説明する必要がない場合は、その要素を示す符号のみを用いて説明する。
【0013】
<第1実施形態>
[1.移載装置10の構成]
図1図2Bを参照して、本発明の一実施形態に係る移載装置10について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る移載装置10の模式図である。また、図2Aおよび図2Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る移載装置10の押圧治具200の模式的な斜視図および平面図である。
【0014】
図1に示すように、移載装置10は、ステージ100、押圧治具200、レーザ照射部300、および遮光マスク400を含む。押圧治具200は、ステージ100の上方に配置されている。また、レーザ照射部300は、押圧治具200の上方に配置されている。但し、レーザ照射部300の配置はこれに限られない。レーザ照射部300は、押圧治具200の上方からレーザ光を照射することができる構成であればよい。遮光マスク400は、ステージ100と押圧治具200との間に配置されている。
【0015】
ステージ100は、LED素子を駆動する画素回路が設けられた回路基板900を支持する。そのため、ステージ100は、回路基板900を載置するための平坦面を有する。例えば、回路基板900は、ガラス基板または可撓性を有する樹脂基板である。ガラス基板または樹脂基板上には複数のTFT(Thin Film Transistor)によって画素回路が形成されており、回路基板900は、TFT基板900と言い換えてもよい。詳細は後述するが、LED素子を移載するときには、回路基板900上に、LED素子が設けられた素子基板800が載置される。
【0016】
押圧治具200は、素子基板800のLED素子がステージ100上の回路基板900と密着するように、素子基板800を押圧する。より具体的には、押圧治具200は、素子基板800上に遮光マスク400を配置した後に、遮光マスク400を介して素子基板800を押圧し、保持することができる。押圧治具200は、外力が加えられることによって素子基板800を押圧してもよい。また、押圧治具200は、押圧力を検出することができるように、圧力センサを具備していてもよい。
【0017】
図2Aおよび図2Bに示すように、押圧治具200は、板状部材210およびヒートシンク220を含む。板状部材210は、レーザ照射部300から照射される所定の波長のレーザ光を透過する。板状部材210として、例えば、石英ガラスなどを用いることができる。ヒートシンク220は、板状部材210の周辺部において、板状部材210と接して設けられている。換言すると、ヒートシンク220は、レーザ光が照射される透過領域230の周囲に設けられている。ヒートシンク220は、板状部材210の熱を吸収し、または放熱することができる。すなわち、ヒートシンク220は、板状部材210を冷却する冷却部として機能することができる。ヒートシンク220として、例えば、アルミニウム、鉄、もしくは銅などの金属材料、またはこれらの金属材料を含む合金材料など、熱伝導率の高い金属材料を用いることができる。
【0018】
ヒートシンク220は、複数の突起(フィン)を有する。図2Aに示すヒートシンク220のフィンの形状は平板状であるが、フィンの形状はこれに限られない。フィンは、ヒートシンク220の表面積が大きくなる形状であればよい。例えば、フィンの形状は、剣山状または蛇腹状であってもよい。
【0019】
ヒートシンク220には、ファンが設置されていてもよい。ファンを回転させてヒートシンク220の周囲の空気を対流させることにより、ヒートシンク220の放熱の効率が向上する。
【0020】
レーザ照射部300は、押圧治具200の透過領域230を介してLED素子にレーザ光を照射する。レーザ照射部300は、波長の異なる2種類のレーザ光を照射することができる。詳細は後述するが、レーザ照射部300は、赤外領域または近赤外領域に波長を有する第1レーザ光と、紫外領域に波長を有する第2レーザ光を照射することができる。第1レーザ光の光源として、YAGレーザまたはYVOレーザなどの固体レーザを用いることができる。また、第2レーザ光の光源として、YAGレーザもしくはYVOレーザなどの固体レーザ、またはエキシマレーザなどを用いることができる。
【0021】
レーザ照射部300は、レーザ光を走査して複数のLED素子に照射してもよく、レーザ光を複数に分割して同時に複数のLED素子に照射してもよい。また、レーザ照射部300は、レーザ光を線状または矩形上に形成して同時に複数のLED素子に照射してもよい。
【0022】
遮光マスク400は、レーザ光を透過する領域(例えば、開口部)とレーザ光を遮光する領域とを含む。そのため、遮光マスク400により、素子基板800の所定のLED素子のみにレーザ光が照射されるように調整することができる。
【0023】
なお、図示しないが、移載装置10は、素子基板800または回路基板900をステージ100上に搬送する搬送部を含んでいてもよい。また、移載装置10は、素子基板800と回路基板900との位置を調整するアライメント部を含んでいてもよい。
【0024】
[2.移載装置10によるLED素子の移載方法]
図3図4Gを参照して、本発明の一実施形態に係る移載装置10を用いたLED素子の移載方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る移載装置10を用いたLED素子の移載方法を示すフローチャート図である。図4A図4Gは、本発明の一実施形態に係る移載装置10を用いたLED素子の移載方法を示す模式的な断面図である。
【0025】
図3のステップS100では、回路基板900が、ステージ100上に載置される(図4A参照)。回路基板900は、絶縁表面を有する支持基板910上に、各々がLED素子を駆動する複数の画素回路920および画素回路920に接続された接続電極930が形成されている。支持基板910として、ガラス基板、樹脂基板、セラミックス基板、または金属基板などを用いることができる。画素回路は、支持基板上に形成されたTFTから形成される。接続電極930は、実装されるLED素子の構造に対応して形成されている。接続電極930として、錫(Sn)などの導電性を有する金属材料を用いることができる。接続電極930の厚さは、0.2μm以上5μm以下、好ましくは、1μm以上3μm以下である。なお、回路基板900の構造および画素回路920の詳細については、後述する。
【0026】
図3のステップS200では、素子基板800が、回路基板900の接続電極930と素子基板800のLED素子820Rとが対向するように、回路基板900上に載置される(図4B参照)。素子基板800は、半導体基板810に、赤色に発光する複数のLED素子820Rが設けられた基板である。半導体基板810として、サファイア基板などを用いることができる。LED素子820Rは、サファイア基板上に成長させた窒化ガリウムなどの半導体材料を含む。半導体材料は、発光色に応じて適宜決定すればよい。
【0027】
LED素子820Rの端子電極830Rは、複数の接続電極930のうち、赤色に対応する画素の接続電極930と重畳している。このとき、各接続電極930と各端子電極830Rとの間に、接着層(図示せず)を設けることにより、素子基板800を仮に固定してもよい。
【0028】
なお、上記では、LED素子820Rが、半導体基板810上に設けられている構成を説明したが、LED素子820Rは、ガラス基板または樹脂基板に設けられていてもよい。すなわち、ガラス基板または樹脂基板をキャリア基板として、LED素子820Rを移載することもできる。
【0029】
図3のステップS300では、遮光マスク400が、素子基板800上に配置される(図4C参照)。遮光マスク400は、複数の開口部400aを有する。複数の開口部400aは、例えば、赤色に対応する画素、緑色に対応する画素、または青色に対応する画素のピッチ(画素間の間隔)に合わせて配置されている。図4Cでは、開口部400aが、LED素子820Rが配置される位置と重畳している。
【0030】
図3のステップS400では、押圧治具200が、遮光マスク400上に配置され、遮光マスク400を介して素子基板800を押圧する(図4D参照)。これにより、LED素子820Rの端子電極830Rと接続電極930とを確実に密着させることができる。また、押圧治具200の押圧により、押圧治具200の板状部材210、遮光マスク400、および素子基板800が密着する。
【0031】
図3のステップS500では、レーザ照射部300が、第1レーザ光310をLED素子820に照射し、接続電極930とLED素子820Rとを一括して接合する(図4E参照)。このプロセスは、第1レーザ光310の照射により、接続電極930と端子電極830Rとを溶融接合させるプロセスである。なお、第1レーザ光310は、押圧治具200の透過領域230および遮光マスク400の開口部400aを透過し、LED素子820の端子電極830に照射される。
【0032】
上述したように、第1レーザ光310は、赤外領域または近赤外領域に波長を有し、端子電極830または接続電極930で吸収される。第1レーザ光310の照射により、接続電極930と端子電極830Rとの間に共晶合金で構成される合金層940が形成される。上述したとおり、接続電極930は、錫(Sn)で構成される。他方、端子電極830Rは、金(Au)で構成される。すなわち、合金層940として、Sn-Au共晶合金で構成された層が形成される。但し、接続電極930および端子電極830Rとしては、互いに共晶合金を形成し得る材料であれば、他の金属材料を用いてもよい。
【0033】
接続電極930と端子電極830Rとの間に共晶合金で構成された合金層940が形成されることにより、接続電極930と端子電極830Rとが合金層940を介して接合される。その結果、接続電極930に対して、強固にLED素子820Rを実装することができる。
【0034】
図3のステップS600では、レーザ照射部300が、第2レーザ光320をLED素子820に照射し、半導体基板810とLED素子820Rとを一括して分離する(図4F参照)。このプロセスは、いわゆるレーザリフトオフプロセスである。具体的には、第2レーザ光320の照射により、半導体基板810と複数のLED素子820Rとの境界部分を変性させ、半導体基板810から複数のLED素子820Rを分離するプロセスである。
【0035】
上述したように、第2レーザ光320は紫外領域に波長を有し、LED素子820で吸収される。第2レーザ光320の照射により、LED素子820Rの表層部分(半導体基板810との境界部分)が変性して、半導体基板810とLED素子820Rとが分離される。
【0036】
第2レーザ光320を照射した後、半導体基板810と各LED素子820Rとを分離する。以上のプロセスを経て、図4Gに示すように、回路基板900上に、LED素子820Rを実装することができる。
【0037】
図4Gに示す状態を得た後、図3に示したステップS200~ステップS600を繰り返して、順次、緑色に発光するLED素子820Gおよび青色に発光するLED素子820Bが回路基板900上に実装される。
【0038】
ステップS500における第1レーザ光310の照射およびステップS600における第2レーザ光320の照射により、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度が上昇する場合がある。しかしながら、本実施形態では、押圧治具200に冷却部(ヒートシンク220)が設けられ、押圧によって板状部材210、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900が密着されていることにより、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の熱が板状部材210に伝導され、ヒートシンク220が板状部材210に伝導された熱を吸収し、または放熱することができる。そのため、押圧治具200は、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができる。したがって、押圧治具200を含む移載装置10では、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができるため、所定の位置に対するLED素子820の移載の精度が向上する。また、LED素子820または回路基板900への熱によるダメージを軽減することができる。
【0039】
[3.表示装置20の構成]
図5図8を参照して、本発明の一実施形態に係る移載装置10を利用して製造される表示装置20について説明する。
【0040】
[3-1.表示装置20の構成の概略]
図5は、本発明の一実施形態に係る移載装置10を利用して製造される表示装置20の構成の概略を示す平面図である。図5に示すように、表示装置20は、回路基板900、フレキシブルプリント回路基板1010(FPC1010)、およびICチップ1020を有する。また、表示装置20は、表示領域20a、周辺領域20b、および端子領域20cに区分される。
【0041】
表示領域20aは、LED素子820を含む複数の画素が行方向(D1方向)および列方向(D2方向)に配置された領域である。具体的には、表示領域20aには、LED素子820Rを含む画素950R、LED素子820Gを含む画素950G、およびLED素子820Bを含む画素950Bが配置されている。表示領域20aは、映像信号に応じた画像を表示する領域として機能する。
【0042】
周辺領域20bは、表示領域20aの周囲の領域である。周辺領域20bには、各画素950に設けられた画素回路920を制御するためのドライバ回路(図6に示すデータドライバ回路1030およびゲートドライバ回路1040)が設けられた領域である。
【0043】
端子領域20cは、ドライバ回路に接続された複数の配線が集約された領域である。フレキシブルプリント回路基板1010は、端子領域20cにおいて複数の配線に電気的に接続される。外部装置(図示せず)から出力された映像信号(データ信号)または制御信号は、フレキシブルプリント回路基板1010に設けられた配線(図示せず)を介して、ICチップ1020に入力される。ICチップ1020は、映像信号に対して信号処理を行い、または表示制御に必要な制御信号を生成する。ICチップ1020から出力された映像信号および制御信号は、フレキシブルプリント回路基板1010を介して、表示装置20に入力される。
【0044】
[3-2.表示装置20の回路構成]
図6は、本発明の一実施形態に係る移載装置10を利用して製造される表示装置20の回路構成を示すブロック図である。図6に示すように、表示領域20aには、各画素950に対応して、複数の画素回路920が行方向(D1方向)および列方向(D2方向)に設けられている。すなわち、画素950R、画素950G、および画素950Bに対応して、それぞれ画素回路920R、画素回路920Gおよび画素回路920Bが設けられている。
【0045】
図7は、本発明の一実施形態に係る移載装置10を利用して製造される表示装置20の画素回路920の構成を示す回路図である。画素回路920は、データ線921、ゲート線922、アノード電源線923およびカソード電源線924に囲まれた領域に配置されている。画素回路920は、選択トランジスタ926、駆動トランジスタ927、保持容量928およびLED素子820を含む。画素回路920のうち、LED素子820以外の回路要素は、回路基板900に設けられている。すなわち、回路基板900にLED素子820が実装されることにより画素回路920が完成する。但し、本明細書では、LED素子820を含まない回路構成を、便宜上、画素回路920として説明している場合がある。
【0046】
図7に示すように、選択トランジスタ926のソース電極、ゲート電極およびドレイン電極は、それぞれデータ線921、ゲート線922、および駆動トランジスタ927のゲート電極に接続される。駆動トランジスタ927のソース電極、ゲート電極およびドレイン電極は、それぞれアノード電源線923、選択トランジスタ926のドレイン電極およびLED素子820に接続される。駆動トランジスタ927のゲート電極とドレイン電極との間には保持容量928が接続される。すなわち、保持容量928は、選択トランジスタ926のドレイン電極に接続される。LED素子820は、アノードおよびカソードが、それぞれ駆動トランジスタ927のドレイン電極およびカソード電源線924に接続される。
【0047】
データ線921には、LED素子820の発光強度を決める階調信号が供給される。ゲート線922には、階調信号を書き込む選択トランジスタ926を選択するためのゲート信号が供給される。選択トランジスタ926がON状態になると、階調信号が保持容量928に蓄積される。その後、駆動トランジスタ927がON状態になると、階調信号に応じた駆動電流が駆動トランジスタ927を流れる。駆動トランジスタ927から出力された駆動電流がLED素子820に入力されると、LED素子820が階調信号に応じた発光強度で発光する。
【0048】
再び図6を参照すると、表示領域20aに対して列方向(D2方向)に隣接する位置には、データドライバ回路1030が配置される。また、表示領域20aに対して行方向(D1方向)に隣接する位置には、ゲートドライバ回路1040が配置される。なお、図6では、表示領域20aを両側に、2つのゲートドライバ回路1040が設けられているが、いずれか一方の側のみであってもよい。
【0049】
データドライバ回路1030およびゲートドライバ回路1040は、いずれも周辺領域20bに配置されている。但し、データドライバ回路1030を配置する領域は周辺領域20bに限られない。例えば、データドライバ回路1030は、フレキシブルプリント回路基板1010に配置されていてもよい。
【0050】
図7に示したデータ線921は、データドライバ回路1030からD2方向に延在し、各画素回路920における選択トランジスタ926のソース電極に接続される。ゲート線922は、ゲートドライバ回路1040からD1方向に延在し、各画素回路920における選択トランジスタ926のゲート電極に接続される。
【0051】
端子領域20cには、端子部1050が配置されている。端子部1050は、接続配線1051を介してデータドライバ回路1030と接続される。同様に、端子部1050は、接続配線1052を介してゲートドライバ回路1040と接続される。さらに、端子部1050は、フレキシブルプリント回路基板1010と接続される。
【0052】
[3-3.表示装置20の断面構造]
図8は、本発明の一実施形態に係る移載装置10を利用して製造される表示装置20の画素950の構成を示す断面図である。画素950は、支持基板910上に設けられた駆動トランジスタ927を有する。
【0053】
駆動トランジスタ927は、半導体層927a、ゲート絶縁層927b、およびゲート電極927cを含む。半導体層927aには、絶縁層927dを介してソース電極927eおよびドレイン電極927fが接続される。図示しないが、ゲート電極927cは、図7に示した選択トランジスタ926のドレイン電極に接続される。
【0054】
ソース電極927eおよびドレイン電極927fと同一の層には、配線961が設けられている。配線961は、図7に示したアノード電源線923として機能する。そのため、ソース電極927eおよび配線961は、平坦化層962の上に設けられた接続配線963によって電気的に接続される。平坦化層962は、ポリイミドまたはアクリルなどの樹脂材料を用いた透明な樹脂層である。接続配線963は、ITOなどの金属酸化物材料を用いた透明導電層である。ただし、この例に限らず、接続配線963として、その他の金属材料を用いることもできる。
【0055】
接続配線963の上には、窒化シリコン等で構成された絶縁層964が設けられる。絶縁層964の上には、アノード電極965およびカソード電極966が設けられる。本実施形態において、アノード電極965およびカソード電極966は、ITOなどの金属酸化物材料を用いた透明導電層である。アノード電極965は、平坦化層962および絶縁層964に設けられた開口を介してドレイン電極927fに接続される。
【0056】
アノード電極965およびカソード電極966は、それぞれ平坦化層967を介して実装パッド968aおよび968bに接続される。実装パッド968aおよび968bは、例えば、タンタル、タングステン等の金属材料で構成される。実装パッド968aおよび968bの上には、それぞれ接続電極930aおよび930bが設けられる。接続電極930aおよび930bは、図4Aに示した接続電極930に対応する。すなわち、接続電極930aおよび930bとして、錫(Sn)で構成される電極を配置する。
【0057】
接続電極930aおよび930bには、それぞれ、LED素子820の端子電極830aおよび830bが接合されている。上述したように、端子電極830aおよび203bは、金(Au)で構成される電極である。また、図4Eを参照して説明したとおり、接続電極930aと端子電極830aとの間には、図示しない合金層(図4Eに示した合金層940)が存在する。
【0058】
図7に示したように、LED素子820の端子電極830aは、駆動トランジスタ927のドレイン電極927fに接続されたアノード電極965に接続される。LED素子820の端子電極830bは、カソード電極966に接続される。カソード電極966は、図7に示したカソード電源線924と電気的に接続される。
【0059】
なお、図8では、フリップチップ型のLED素子820を示したが、LED素子820として、フェイスアップ型を用いることもできる。
【0060】
本実施形態に係る移載装置10を利用して製造される表示装置20は、押圧治具200の押圧によってLED素子820が強固に実装されるとともに、押圧治具200の冷却によってLED素子820または回路基板900の熱ダメージが軽減される。
【0061】
<第2実施形態>
図9Aおよび図9Bを参照して、移載装置10の押圧治具200と異なる押圧治具200Aについて説明する。図9Aおよび図9Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る押圧治具200Aの模式的な斜視図および断面図である。より具体的には、図9Bは、図9Aに示すA1-A2線に沿って切断された押圧治具200Aの断面図である。なお、以下では、押圧治具200Aの構成が押圧治具200の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0062】
図9Aに示すように、押圧治具200Aは、板状部材210およびヒートシンク220Aを含む。ヒートシンク220Aは、板状部材210の周辺部において、板状部材210と接して設けられている。また、ヒートシンク220Aは、液体が供給される入口孔221Aおよび液体が排出される出口孔222Aを含む。ヒートシンク220が空冷式であるのに対し、ヒートシンク220Aは水冷式である。すなわち、押圧治具200Aでは、図9Bに示すように、ヒートシンク220A内に流路223Aが設けられおり、入口孔221Aから供給された液体は、流路223Aを流れ、出口孔222Aから排出される。
【0063】
なお、ヒートシンク220Aに供給される液体は、例えば、水であるが、これに限られない。ヒートシンク220Aに供給される液体は、フッ素系の冷媒であってもよい。また、ヒートシンク220Aに供給される液体は、チラーまたはポンプを用いて循環されていてもよい。
【0064】
押圧治具200Aでは、ヒートシンク220A内を流れる液体が、ヒートシンク220Aと接する板状部材210の熱を吸収することができる。すなわち、本実施形態では、押圧治具200Aに冷却部(ヒートシンク220A)が設けられていることにより、レーザ光の照射によって遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900で生じた熱が板状部材210に伝導され、ヒートシンク220Aが板状部材210に伝導された熱を吸収し、または放熱することができる。そのため、押圧治具200Aは、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができる。したがって、押圧治具200Aを用いて素子基板800から回路基板900にLED素子820を移載すれば、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができるため、所定の位置に対するLED素子820の移載の精度が向上する。また、LED素子820または回路基板900への熱によるダメージを軽減することができる。
【0065】
<第3実施形態>
図10Aおよび図10Bを参照して、別の押圧治具200Bについて説明する。図10Aおよび図10Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る押圧治具200Bの模式的な斜視図および断面図である。より具体的には、図10Bは、図10Aに示すB1-B2線に沿って切断された押圧治具200Bの断面図である。なお、以下では、押圧治具200Bの構成が押圧治具200の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0066】
図10Aに示すように、押圧治具200Bは、板状部材210およびヒートシンク220Bを含む。ヒートシンク220Bは、板状部材210の周辺部において、板状部材210と接して設けられている。図10Bに示すように、ヒートシンク220Bは、板状部材210の周辺部において、上面および下面だけでなく、側面にも接して設けられている。すなわち、ヒートシンク220Bは、板状部材210と接する面積が大きいため、板状部材210からヒートシンク220Bへの熱伝導も大きくなる。
【0067】
本実施形態では、押圧治具200Bに冷却部(ヒートシンク220B)が設けられていることにより、レーザ光の照射によって遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900で生じた熱が板状部材210に伝導され、ヒートシンク220Bが板状部材210に伝導された熱を吸収し、または放熱することができる。そのため、押圧治具200Bは、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができる。したがって、押圧治具200Bを用いて素子基板800から回路基板900にLED素子820を移載すれば、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができるため、所定の位置に対するLED素子820の移載の精度が向上する。また、LED素子820または回路基板900への熱によるダメージを軽減することができる。
【0068】
<第4実施形態>
図11Aおよび図11Bを参照して、さらに別の押圧治具200Cについて説明する。図11Aおよび図11Bは、それぞれ、本発明の一実施形態に係る押圧治具200Cの模式的な斜視図および断面図である。より具体的には、図11Bは、図11Aに示すC1-C2線に沿って切断された押圧治具200Cの断面図である。なお、以下では、押圧治具200Cの構成が押圧治具200の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0069】
図11Aに示すように、押圧治具200Cは、板状部材210Cを含む。板状部材210Cは、液体が供給される入口孔211Cおよび液体が排出される出口孔212Cを含む。すなわち、押圧治具200Cでは、図11Bに示すように、板状部材210C内に流路213Cが設けられており、入口孔211Cから供給された液体は、流路213Cを流れ、出口孔212Cから排出される。
【0070】
押圧治具200Cでは、板状部材210C内を流れる液体が、板状部材210Cの熱を奪うことができる。そのため、本実施形態では、押圧治具200Cの板状部材210Cの内部に冷却部が設けられていることにより、レーザ光の照射によって遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900で生じた熱が板状部材210Cに伝導され、板状部材210C内部の冷却部が伝導された熱を吸収し、または放熱することができる。そのため、押圧治具200Cは、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができる。したがって、押圧治具200Cを用いて素子基板800から回路基板900にLED素子820を移載すれば、遮光マスク400、素子基板800、および回路基板900の温度上昇を抑制することができるため、所定の位置に対するLED素子820の移載の精度が向上する。また、LED素子820または回路基板900への熱によるダメージを軽減することができる。
【0071】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または工程の追加、省略、もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0072】
また、上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0073】
10:移載装置、 20:表示装置、 20a:表示領域、 20b:周辺領域、 20c:端子領域、 100:ステージ、 200、200A、200B、200C:押圧治具、 210、210C:板状部材、 211C:入口孔、 212C:出口孔、 213C:流路、 220、220A、220B:ヒートシンク、 221A:入口孔、 222A:出口孔、 223A:流路、 230:透過領域、 300:レーザ照射部、 310:第1レーザ光、 320:第2レーザ光、 400:遮光マスク、 400a:開口部、 800:素子基板、 810:半導体基板、 820、820B、820G、820R:LED素子、 830、830a、830b、830R:端子電極、 900:回路基板、 910:支持基板、 920、920B、920G、920R:画素回路、 921:データ線、 922:ゲート線、 923:アノード電源線、 924:カソード電源線、 926:選択トランジスタ、 927:駆動トランジスタ、 927a:半導体層、 927b:ゲート絶縁層、 927c:ゲート電極、 927d:絶縁層、 927e:ソース電極、 927f:ドレイン電極、 928:保持容量、 930:接続電極、 930a:接続電極、 940:合金層、 950、950B、950G、950R:画素、 961:配線、 962:平坦化層、 963:接続配線、 964:絶縁層、 965:アノード電極、 966:カソード電極、 967:平坦化層、 968a、968b:実装パッド、 1010:フレキシブルプリント回路基板(FPC)、 1020:ICチップ、 1030:データドライバ回路、 1040:ゲートドライバ回路、 1050:端子部、 1051:接続配線、 1052:接続配線
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B