(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190834
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B25J5/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099293
(22)【出願日】2021-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】長末 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS05
3C707BS10
3C707CS08
3C707KT01
3C707KT05
(57)【要約】
【課題】作業対象物に対して自律的に作業を行うことが可能なロボットシステムを提供する。
【解決手段】カメラ及びエンドエフェクタを有するロボット25と、ロボット25を搭載し、作業対象物10に対する作業位置に経由する無人搬送車35と、無人搬送車35及びロボット25を制御する制御装置40とを備える。作業対象物10は内部の作業領域を開閉する扉体を備える。制御装置40は、無人搬送車35を作業位置に経由させて、カメラにより扉体を撮像し、得られた画像を基に、扉体が開状態にあるか否かを確認する扉体確認処理と、扉体が開状態にあると確認されたとき、ロボットを動作させて、作業領域内で、エンドエフェクタを用いた作業を行う作業処理とを実行するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像するカメラ、及び作業対象物に対して作用するエンドエフェクタを有するロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記作業対象物に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備えたロボットシステムであって、
前記作業対象物は、内部に設定された作業領域と外部とを仕切るとともに、前記作業領域と外部とを連通する開口部を開閉する扉体を備え、
前記作業対象物に対して設定される作業位置は、前記ロボットのエンドエフェクタを前記作業領域内に進入可能な位置であり、
前記制御装置は、
前記無人搬送車を作業位置に経由させて、前記カメラにより前記扉体を撮像し、得られた画像を基に、前記扉体が開状態にあるか否かを確認する扉体確認処理と、
前記扉体が開状態にあると確認されたとき、前記ロボットを動作させて、前記作業領域内で、前記エンドエフェクタを用いた作業を行う作業処理とを実行するように構成されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記扉体確認処理を実行して扉体が開状態にあることが確認された後、前記作業処理を開始する前に、撮像された前記画像を基に、撮像方向において、前記開口部の少なくとも一部を塞ぐ位置である閉塞位置に操作盤があるか否かを確認する操作盤確認処理を実行し、
前記操作盤が閉塞位置に無いことが確認されたとき、前記作業処理を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記操作盤確認処理において、前記操作盤が閉塞位置に在ることが確認されたとき、前記作業処理を開始する前に、撮像された前記画像を基に、操作盤に設けられた取手を認識して、前記エンドエフェクタを前記取手に係合させた後、前記操作盤を閉塞位置の外側に移動させる操作盤退避処理を実行するように構成されていることを特徴とする請求項2記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記作業対象物は工作機械であり、該工作機械は前記作業領域内でワークを加工するように構成され、
前記制御装置は、前記作業処理において、前記ロボットに、前記作業領域内のワークを交換する作業を実行させるように構成された請求項1から3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記作業処理を実行した後、前記ロボットを動作させて、前記操作盤に設けられた加工開始ボタンを、前記エンドエフェクタを用いて押下するように構成されていることを特徴とする請求項4記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記工作機械は、その扉体に透明な部材で構成される視認部を有し、該視認部を通して外部から作業領域を観察可能に構成され、
前記制御装置は、前記扉体確認処理において、前記扉体が閉状態にあることが確認されたとき、前記カメラにより、前記視認部を通して前記作業領域内を撮像し、得られた画像を解析して、ワークの加工が完了するまでの残加工時間を推定する加工時間推定処理を実行するように構成されていることを特徴とする請求項4又は5記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記加工時間推定処理を実行した後、推定された残加工時間が予め定められた基準時間よりも短いときは、前記無人搬送車を前記作業位置に待機させ、残加工時間が前記基準時間よりも長いときは、前記作業位置から他の作業位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項6記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記作業対象物はパレット交換装置であり、前記作業領域内にパレットが配設され、
前記制御装置は、前記作業処理において、前記ロボットに、前記作業領域内のパレットに取り付けられたワークを交換する作業を実行させるように構成された請求項1から3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記作業処理を完了後、撮像された前記画像を基に、操作盤に設けられた扉体を閉じる扉閉ボタンを認識して、前記エンドエフェクタを用いて扉閉ボタンを押下するように構成されていることを特徴とする請求項8記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車、及びこの無人搬送車上に搭載されたロボットを備えたロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述したロボットシステムの一例として、国際公開第2018/92222号(下記特許文献1)に開示された自走ロボットが知られており、この特許文献1には、複数の自走ロボットにより複数の工作機械に対して被加工物を搬送するように構成され工作機械システムが開示されている。
【0003】
前記自走ロボットは、無人搬送車と、この無人搬送車上に設けられた3軸以上の自由度を持つマニピュレータとを備えて構成され、位置基準情報としての電波やレーザ光を観測することで、自身のおよその位置を認識しながら目標位置付近まで移動し、この後、目標物又は目標物に取り付けられたマーカをカメラにより認識することによって、精密な位置決めをするように構成されている。
【0004】
また、前記工作機械システムは、工作機械ごとに作業要求を送出する工作機械制御部と、この工作機械制御部から送出された工作機械ごとの作業要求に基づき、複数の自走ロボットごとに作業可能時刻をそれぞれ決める自走ロボット制御部と、計画された自走ロボットごとの作業可能時刻を比較し、作業可能時刻が早い自走ロボットに要求作業を実行させる判定部とが備えられている。
【0005】
斯くして、この工作機械システムによれば、オペレータが予め自走ロボットの作業時刻を予測しなくても、工作機械と自走ロボットとで、自動的に各種作業の作業可能時刻を決め、適切なタイミングで適切な自走ロボットに実行させることができる、とのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した従来の工作機械システムには、上記のようなメリットがある反面、以下に説明するような問題があった。
【0008】
即ち、従来の工作機械の中には、自動化のために、チャックの開閉等についての駆動指令や動作完了について、外部装置と通信する機能を有するものが存在するが、このような先進的な工作機械においても、更に、作業要求を送出する機能を付与するなど、当該工作機械を改造する必要があり、工作機械システムを構築するためのコストが嵩むという問題があった。
【0009】
また、判定部により、複数の自走ロボットを統括的に制御しているため、その処理が複雑になるとともに、判定部という特別な制御装置を設ける必要があるため、この面においても、工作機械システムを構築するためのコストが高くなるという問題があった。
【0010】
また、自走ロボットは判定部からの指令が無ければ工作機械に対して作業できない状態にあるため、その動作上の自由度が与えられていない状態となっている。
【0011】
以上の背景からすれば、自走ロボット(ロボットシステム)が工作機械の状態を判断して、当該工作機械に対して自律的に動作することができれば、作業要求を送出する機能を工作機械に付与する必要が無く、また、判定部という特別な制御装置を設ける必要がないため、上記工作機械システムを低コストで実現することができる。
【0012】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、作業対象物に対して自律的に作業を行うことが可能なロボットシステムの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、
画像を撮像するカメラ、及び作業対象物に対して作用するエンドエフェクタを有するロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記作業対象物に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備えたロボットシステムであって、
前記作業対象物は、内部に設定された作業領域と外部とを仕切るとともに、前記作業領域と外部とを連通する開口部を開閉する扉体を備え、
前記作業対象物に対して設定される作業位置は、前記ロボットのエンドエフェクタを前記作業領域内に進入可能な位置であり、
前記制御装置は、
前記無人搬送車を作業位置に経由させて、前記カメラにより前記扉体を撮像し、得られた画像を基に、前記扉体が開状態にあるか否かを確認する扉体確認処理と、
前記扉体が開状態にあると確認されたとき、前記ロボットを動作させて、前記作業領域内で、前記エンドエフェクタを用いた作業を行う作業処理とを実行するように構成されたロボットシステムに係る。
【0014】
このロボットシステムは、内部に作業領域を有する作業対象物に対して作業を行うように構成され、当該作業対象物は、その作業領域が扉体によって外部から仕切られ、扉体は作業領域と外部とを連通する開口部を開閉するように構成される。
【0015】
そして、ロボットシステムの制御装置は、当該作業対象物に対して作業を行う際には、まず、無人搬送車を当該作業対象物に対して設定された作業位置に経由させた後、カメラにより扉体を撮像し、得られた画像を基に、扉体が開状態にあるか否かを確認する扉体確認処理を実行する。そして、扉体が開状態にある場合には、当該作業対象物は、ロボットが作業可能な待ち状態にあると判断されるので、前記制御装置は、ロボットを動作させて、作業対象物の作業領域内において、エンドエフェクタを用いた作業(作業処理)を実行させる。
【0016】
以上のように、本発明に係るロボットシステムによれば、扉体が開状態にあるか否かを確認することによって、作業対象物が待ち状態にあるか否かを判別し、作業対象物が待ち状態にあると判断された場合には、ロボットを動作させて、当該作業対象物に対して予定された作業を実行するように構成されているので、ロボットは、自律した状態で作業対象物に対して作業を行うことができる。したがって、当該ロボットシステムにより作業対象物に対して作業を行うシステムを、従来の工作機械システムに比べて、低コストで実現することができる。尚、作業内容によっては、当該ロボットシステムは、特に通信機能を有しない作業対象物に対しても作業を実行することができる。
【0017】
上記態様(第1の態様)のロボットシステムにおいて、前記制御装置は、前記扉体確認処理を実行して扉体が開状態にあることが確認された後、前記作業処理を開始する前に、撮像された前記画像を基に、撮像方向において、前記開口部の少なくとも一部を塞ぐ位置である閉塞位置に、言い換えれば、開口部と重なる位置に操作盤があるか否かを確認する操作盤確認処理を実行し、前記操作盤が閉塞位置に無いことが確認されたとき、前記作業処理を実行するように構成されているのが好ましい。
【0018】
この態様(第2の態様)では、操作盤が前記閉塞位置にあるときに、ロボットが作業対象物に対して作業を行うと、ロボットと操作盤が干渉する虞がある。したがって、操作盤が閉塞位置に無いことが確認されたときに、ロボットが作業対象物に対して作業を行うようにすることで、ロボットと操作盤が干渉するのを回避することができる。
【0019】
また、上記第2の態様において、前記制御装置は、前記操作盤確認処理で、前記操作盤が閉塞位置に在ることが確認されたとき、前記作業処理を開始する前に、撮像された前記画像を基に、操作盤に設けられた取手を認識して、前記エンドエフェクタを前記取手に係合させた後、前記操作盤を閉塞位置の外側に移動させる操作盤退避処理を実行するように構成されているのが好ましい。
【0020】
この態様(第3の態様)では、前記操作盤確認処理において、操作盤が閉塞位置に在ることが確認されたとき、ロボットによって、操作盤を閉塞位置からその外側に移動させるようにしているので、ロボットが作業対象物に対して作業を行う際に、ロボットと操作盤が干渉するのを防止することができる。
【0021】
上記第1から第3のいずれかの態様において、前記作業対象物は工作機械であり、該工作機械は前記作業領域内でワークを加工するように構成され、
前記制御装置は、前記作業処理において、前記ロボットに、前記作業領域内のワークを交換する作業を実行させるように構成された態様(第4の態様)としても良い。
【0022】
また、この第4の態様において、前記制御装置は、前記作業処理を実行した後、前記ロボットを動作させて、前記操作盤に設けられた加工開始ボタンを、前記エンドエフェクタを用いて押下するように構成された態様(第5の態様)としても良い。
【0023】
上記第4又は第5の態様において、前記工作機械は、その扉体に透明な部材で構成された視認部を有し、該視認部を通して外部から作業領域を観察可能に構成され、
前記制御装置は、前記扉体確認処理において、前記扉体が閉状態にあることが確認されたとき、前記カメラにより、前記視認部を通して前記作業領域内を撮像し、得られた画像を解析して、ワークの加工が完了するまでの残加工時間を推定する加工時間推定処理を実行するように構成された態様(第6の態様)としても良い。
【0024】
また、この第6の態様において、前記制御装置は、前記加工時間推定処理を実行した後、推定された残加工時間が予め定められた基準時間よりも短いときは、前記無人搬送車を前記作業位置に待機させ、残加工時間が前記基準時間よりも長いときは、前記作業位置から他の作業位置に移動させるように構成された態様(第7の態様)としても良い。
【0025】
また、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記作業対象物はパレット交換装置であり、前記作業領域内にパレットが配設され、
前記制御装置は、前記作業処理において、前記ロボットに、前記作業領域内のパレットに取り付けられたワークを交換する作業を実行させるように構成された態様(第8の態様)としても良い。
【0026】
そして、この第8の態様において、前記制御装置は、前記作業処理を完了後、撮像された前記画像を基に、操作盤に設けられた扉体を閉じる扉閉ボタンを認識して、前記エンドエフェクタを用いて扉閉ボタンを押下するように構成された態様(第9の態様)としても良い。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るロボットシステムによれば、扉体が開状態にあるか否かを確認することによって、作業対象物が待ち状態にあるか否かを判別し、作業対象物が待ち状態にあると判断された場合には、ロボットを動作させて、当該作業対象物に対して予定された作業を実行するように構成されているので、ロボットは、自律した状態で作業対象物に対して作業を行うことができる。したがって、ロボットシステムにより作業対象物に対して作業を行うシステムを、従来の工作機械システムに比べて、低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に係る生産システムを示した平面図である。
【
図2】本実施形態に係る生産システムの構成を示したブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るロボットシステムを示した斜視図である。
【
図4】本実施形態のロボットシステムにおける自律作業を示したフローチャートである。
【
図5】本実施形態のロボットシステムにおける自律作業を説明するための説明図である。
【
図6】本実施形態のロボットシステムにおける自律作業を説明するための説明図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る生産システムを示した平面図である。
【
図8】
図7における前方、即ちロボットシステム側から見た正面図である。
【
図9】他の実施形態のロボットシステムにおける自律作業を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1及び
図2に示すように、本例の生産システム1は、ロボットシステム24、工作機械10、周辺装置としての材料ストッカ21及び製品ストッカ22などから構成され、前記ロボットシステム24は、無人搬送車35、この無人搬送車35に搭載されるロボット25、並びにロボット25及び無人搬送車35を制御する制御装置40などから構成される。
【0031】
前記工作機械10は、数値制御装置(図示せず)によって制御される複合加工型のNC工作機械であって、
図5に示すように、ワークを把持するチャック15が装着されるワーク主軸、旋削工具などが配設されるタレット14、並びに回転工具13等が保持される工具主軸12を有する刃物台11などを加工領域内に備えており、旋削加工及びミーリング加工の双方を行うことができるようになっている。
【0032】
また、前記加工領域は、開閉可能なドア(扉体)16によって外部と仕切られており、ドア16を開くことによって加工領域の前側が開口され、ロボット25がこの開口から加工領域内に入り込むことができるようになっている。また、このドア16には、外部から加工領域内を視認することができる透明な窓部(視認部)16aが設けられている。更に、ドア16に向かってその右側方には、
図1に示す矢示方向に回動可能になった操作盤17が設けられている。
【0033】
前記材料ストッカ21は、工作機械10で加工される加工前のワーク(材料)をストックする装置であり、
図1において、工作機械10の左隣に配設されている。また、前記製品ストッカ22は、工作機械10で加工された加工済のワーク(製品又は半製品)を収納する装置であり、
図1において、工作機械10の右隣に配設されている。
【0034】
図1及び
図3に示すように、前記無人搬送車35は、その上面である載置面36に前記ロボット25が搭載され、また、オペレータが携帯可能な操作盤37が付設されている。尚、この操作盤37は、データの入出力を行う入出力部、当該無人搬送車35及びロボット25を手動操作する操作部、並びに画面表示可能なディスプレイなどを備えている。
【0035】
また、無人搬送車35は、工場内における自身の位置を認識可能なセンサ(例えば、レーザ光を用いた距離計測センサ)を備えており、前記制御装置40による制御の下で、前記工作機械10、材料ストッカ21及び製品ストッカ22が配設される領域を含む工場内を無軌道で走行するように構成され、本例では、前記工作機械10、材料ストッカ21及び製品ストッカ22のそれぞれに対して設定された各作業位置に経由する。尚、本例では、前記制御装置40は、この無人搬送車35内に配設されている。
【0036】
前記ロボット25は、マニピュレータ部である第1アーム26、第2アーム27及び第3アーム28の3つのアームを備えた多関節型のロボットであり、第3アーム28の先端部にはエンドエフェクタとしてのハンド29が装着され、更に、当該第3アーム28の側部には支持部材30が取り付けられている。そして、この支持部材30には、同じくエンドエフェクタとしての一対のカメラ31及び操作ロッド32が装着されている。尚、本例では、ロボット25が
図3に示した姿勢を取るとき、操作ロッド32はカメラ31の上方に位置するとともに、カメラ31及び操作ロッド32は、カメラ31の撮像光軸と操作ロッド32の軸線とが平行になるように配設されている。また、操作ロッド32は、その先端部が軸方向に伸縮可能、或いは、弾性変位可能に設けられている。
【0037】
そして、ロボット25は、前記制御装置40による制御の下で、これらハンド29、カメラ31及び操作ロッド32をxr軸,yr軸及びzr軸の直交3軸で定義される3次元空間内で移動させる。尚、xr軸,yr軸及びzr軸の直交3軸で定義される座標系をロボット座標系と称する。また、本例では、xr軸は無人搬送車35の前面とほぼ平行に設定されている。
【0038】
前記制御装置40は、
図2に示すように、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43、マップ情報記憶部44、手動運転制御部45、自動運転制御部46、マップ情報生成部47、位置認識部48及び入出力インターフェース49から構成される。そして、制御装置40は、この入出力インターフェース49を介して、前記材料ストッカ21、製品ストッカ22、ロボット25、無人搬送車35及び操作盤37に接続している。尚、制御装置40は、工作機械10、材料ストッカ21及び製品ストッカ22と通信によって接続されている。
【0039】
前記制御装置40は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、前記手動運転制御部45、自動運転制御部46、マップ情報生成部47、位置認識部48及び入出力インターフェース49は、コンピュータプログラムによってその機能が実現される。また、動作プログラム記憶部41、移動位置記憶部42、動作姿勢記憶部43及びマップ情報記憶部44はRAMなどの適宜記憶媒体から構成される。
【0040】
前記手動運転制御部45は、オペレータにより前記操作盤37から入力される操作信号に従って、前記無人搬送車35及びロボット25を動作させる機能部である。即ち、オペレータは、この手動運転制御部45による制御の下で、操作盤37を用いた、前記無人搬送車35及びロボット25の手動操作を実行することができる。
【0041】
具体的には、手動運転制御部45は、前記操作盤37から、例えば、前記無人搬送車35を、水平面内で当該無人搬送車35に対して設定された直交2軸(xr軸、yr軸)の各方向に移動させる信号が入力されると、入力された信号に対応する方向に、対応する距離だけ、当該無人搬送車35を移動させ、前記xr軸及びyr軸と直交するzr軸(鉛直軸)回りに旋回させる信号が入力されると、入力された信号に応じて当該無人搬送車35を旋回させる。
【0042】
また、操作盤37から、前記ロボット25の先端部(ハンド29、カメラ31及び操作ロッド32)を、前記xr軸、yr軸及びzr軸の各方向に移動させる信号が入力されると、手動運転制御部45は、入力された信号に対応する方向に、対応する距離だけ、ロボット25の先端部を移動させる。また、手動運転制御部45は、操作盤37から前記ハンド29を開閉させる信号が入力されると、これに応じて当該ハンド29を開閉させ、操作盤37から前記カメラ31を動作させる信号が入力されると、これに応じて当該カメラ31を動作させる。
【0043】
前記動作プログラム記憶部41は、自動生産時に前記無人搬送車35及び前記ロボット25を自動運転するための自動運転用プログラム、並びに後述する工場内のマップ情報を生成する際に前記無人搬送車35を動作させるためのマップ生成用プログラムを記憶する機能部である。自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムは、例えば、前記操作盤37に設けられた入出力部から入力され、当該動作プログラム記憶部41に格納される。
【0044】
尚、この自動運転用プログラムには、無人搬送車35が移動する目標位置としての移動位置、移動速度及び無人搬送車35の向きに関する指令コードが含まれ、また、ロボット25が順次動作する当該動作に関する指令コード、及び前記カメラ31の操作に関する指令コードが含まれる。また、マップ生成用プログラムは、前記マップ情報生成部47においてマップ情報を生成できるように、無人搬送車35を無軌道で工場内を隈なく走行させるための指令コードが含まれる。
【0045】
前記マップ情報記憶部44は、無人搬送車35が走行する工場内に配置される機械、装置、機器など(装置等)の配置情報を含むマップ情報を記憶する機能部であり、このマップ情報は前記マップ情報生成部47によって生成される。
【0046】
前記マップ情報生成部47は、前記制御装置40の自動運転制御部46による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納されたマップ生成用プログラムに従って無人搬送車35を走行させた際に、前記センサによって検出される距離データから工場内の空間情報を取得するとともに、工場内に配設される装置等の平面形状を認識し、例えば、予め登録された装置等の平面形状を基に、工場内に配設された具体的な装置、本例では、工作機械10、材料ストッカ21及び製品ストッカ22の位置、平面形状等(配置情報)を認識する。そして、マップ情報生成部47は、得られた空間情報及び装置等の配置情報を工場内のマップ情報として前記マップ情報記憶部44に格納する。
【0047】
前記位置認識部48は、前記センサによって検出される距離データ、及び前記マップ情報記憶部44に格納された工場内のマップ情報を基に、工場内における無人搬送車35の位置及び姿勢を認識する機能部であり、この位置認識部48によって認識される無人搬送車35の位置及び姿勢に基づいて、当該無人搬送車35の動作が前記自動運転制御部46によって制御される。
【0048】
前記移動位置記憶部42は、前記無人搬送車35が移動する具体的な目標位置としての移動位置であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した具体的な移動位置を記憶する機能部であり、この移動位置には、上述した工作機械10、材料ストッカ21及び製品ストッカ22に対して設定される各作業位置が含まれる。尚、この移動位置は、例えば、前記手動運転制御部45による制御の下、前記操作盤37により前記無人搬送車35を手動運転して、目標とする各位置に移動させた後、前記位置認識部48によって認識される位置データを前記移動位置記憶部42に格納する操作によって設定される。この操作は所謂ティーチング操作と呼ばれる。
【0049】
前記動作姿勢記憶部43は、前記ロボット25が所定の順序で動作することによって順次変化するロボット25の姿勢(動作姿勢)であって、前記動作プログラム中の指令コードに対応した動作姿勢に係るデータを記憶する機能部である。この動作姿勢に係るデータは、前記手動運転制御部45による制御の下で、前記操作盤37を用いたティーチング操作により、当該ロボット25を手動運転して、目標とする各姿勢を取らせたときの、当該各姿勢におけるロボット25の各関節(モータ)の回転角度データであり、この回転角度データが動作姿勢に係るデータとして前記動作姿勢記憶部43に格納される。
【0050】
ロボット25の具体的な動作姿勢は、前記材料ストッカ21、工作機械10及び製品ストッカ22において、それぞれ設定される。例えば、材料ストッカ21では、当該材料ストッカ21に収納された加工前ワークを取り出すための各作業姿勢(各取出姿勢)が設定される。また、工作機械10では、加工済ワークをチャック15から取り出して、加工前ワークを当該チャック15に装着するための各作業姿勢、即ち、ワークの交換動作のための各作業姿勢が設定される。また、前記製品ストッカ22では、工作機械10から取り出した加工済ワークを当該製品ストッカ22内に収納するための各作業姿勢が設定される。
【0051】
前記自動運転制御部46は、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラム及びマップ生成用プログラムの何れかを用い、当該プログラムに従って無人搬送車35、ロボット25、ハンド29及びカメラ31を動作させる機能部である。その際、前記移動位置記憶部42及び動作姿勢記憶部43に格納されたデータが必要に応じて使用される。
【0052】
特に、自動運転制御部46は、工作機械10に対するワーク交換作業では、無人搬送車35、ロボット25、ハンド29及びカメラ31を
図4に示した手順で動作させる。
【0053】
即ち、自動運転制御部46は、工作機械10に対して設定されたアプローチ位置に無人搬送車35を移動させる(ステップS1)。このアプローチ位置は、工作機械10に対して設定された作業位置の手前に相当する位置であり、
図1に示すように、ロボット25は、カメラ31を工作機械10に向けた姿勢を取っている。
【0054】
次に、自動運転制御部46は、カメラ31を駆動して工作機械10のドア16を含む領域を撮像するとともに、撮像された画像をカメラ31から受信し、受信した画像を解析してドア16が開状態にあるか否か、言い換えれば、工作機械10に対して作業可能かどうかを判別する処理(ドア(扉体)確認処理)を実行する(ステップS2)。そして、
図5に示すように、ドア16が開かれている場合には、更に、当該画像から、操作盤17の位置を確認し、撮像方向において、ドア16が開くことによって形成される加工領域の開口部の少なくとも一部を塞ぐ位置(閉塞位置)に、言い換えれば、開口部と重なる位置に操作盤17があるか否かを確認する処理を行う(この処理を操作盤確認処理という)(ステップS3)。
【0055】
そして、操作盤17が前記閉塞位置の外側に在るとき、即ち、操作盤17が加工領域の開口部を閉塞する位置に無いときには、自動運転制御部46は、次に、ロボットシステム24を駆動して、工作機械10に対して、ワークの交換動作を実行させる(ステップS4)。
【0056】
例えば、自動運転制御部46は、無人搬送車35を工作機械10に対して設定された作業位置に移動させた後、ロボット25の先端部を工作機械10の加工領域内に進入させて、チャック15に把持された加工済みのワークをハンド29により把持させた後、工作機械10にアンクランプ信号を送信して、チャック15に開動作を実行させ、ついで、ロボット25の先端部を加工領域内から退出させて、ハンド29に把持した加工済みのワークを無人搬送車35の載置面36上に載置させる。
【0057】
次に、自動運転制御部46は、前もって前記材料ストッカ21から取り出して、同じく無人搬送車35の載置面36上に載置した加工前ワークをハンド29により把持させた後、ロボット25の先端部を工作機械10の加工領域内に進入させて、チャック15の把持位置に加工前ワークを位置させた後、工作機械10にクランプ信号を送信して、チャック15に閉動作を実行させてチャック15に加工前ワークを把持させ、この後、ロボット25の先端部を加工領域内から退出させる。
【0058】
以上のようにして、ロボットシステム24にワーク交換動作を実行させた後、自動運転制御部46は、ロボット25の先端部に設けられたカメラ31を撮像姿勢にした後、カメラ31を駆動して、操作盤17が含まれる画像を撮像させ、得られた画像をカメラ31から受信する。そして、自動運転制御部46は、受信した画像を解析して、操作盤17に設けられたスタートボタン19の位置を認識した後、ロボット25を操作して操作ロッド32の先端部をスタートボタン19に押し当てて、工作機械10に加工を実行させる(ステップS5)。
【0059】
操作盤17には、スタートボタン19に対して所定の位置関係となるように識別図形20が設けられており、自動運転制御部46は、画像解析によってこの識別図形20の位置を認識した後、この識別図形20の位置を基準にスタートボタン19の位置を認識する。尚、前記カメラ31は所謂ステレオカメラであり、ステレオカメラ31によって撮像された画像を解析することで、カメラ31と識別図形20との間の相対的な位置関係を算出することができる。
【0060】
次に、自動運転制御部46は、再度カメラ31を駆動して工作機械10のドア16を含む画像を撮像させた後、撮像された画像をカメラ31から受信し、受信した画像を解析してドア16が閉状態にあるか否かを確認し(ステップS6)、ドア16が閉状態にある場合には、工作機械10が正常に加工を実行していると判断して、当該工作機械10に対する作業を終了する。一方、ステップS6において、ドア16が開状態にあると判断された場合には、工作機械10に異常が生じていると判断されるため、アラームを出力して(ステップS12)、当該工作機械10に対する作業を終了し、他の作業、例えば他の作業対象物(工作機械など)に対する作業を行う。
【0061】
また、前記ステップS2において、工作機械10のドア16が開状態にないと判断される場合には(
図6参照)、自動運転制御部46は、更に、最初の確認かどうかを判別し(ステップS7)、最初の確認である場合には、次に、カメラ31により、窓部16aを通して加工領域内の画像を撮像させた後(ステップS8)、カメラ31から受信した画像を解析して、ワークの形状を認識し、得られたワーク形状から残加工時間を推定し(ステップS9)、推定された残加工時間が予め設定された閾値(基準時間)以内であれば、ドア16が開かれるまで待機し(ステップS7)、残加工時間が閾値(基準時間)を超えていれば、当該工作機械10に対する作業を終了して(ステップS10)、他の作業を行う。
【0062】
尚、前記基準時間は、ロボットシステム24が他の作業を行うのではなく、その場で待機して、当該工作機械10における加工が完了された後、当該工作機械10に対してワーク交換動作を行う方が効率的であると判断される時間であって、経験的に設定される。また、ワーク形状は、撮像画像からワークの輪郭を抽出することによって認識することができ、残加工時間は、予め取得されたワークの形状と残加工時間との関係から、例えば、パターンマッチング手法によって推定することができる。
【0063】
また、前記ステップS3において、操作盤17が閉塞位置に在ると判断された場合には、自動運転制御部46は、撮像された画像から、操作盤17に設けられた取手18の位置を認識した後、ロボット25を操作してハンド29を当該取手18に係合させ、ついで、ロボット25を動作させて、操作盤17が閉塞位置の外側に位置するように移動(退避)させた後(ステップS11)、ロボットシステムにワーク交換動作を実行させる(ステップS4)。
【0064】
上述したように、操作盤17には、識別図形20が設けられており、この識別図形は、取手18に対して所定の位置関係を有している。したがって、自動運転制御部46は、画像解析によってこの識別図形の位置を認識した後、この識別図形の位置を基準に取手18の位置を認識する。また、カメラ31、言い換えればハンド29と識別図形との間の相対的な位置関係は、画像を解析することによって算出することができる。
【0065】
以上のように構成された本例の生産システム1によれば、ロボットシステム24は、前記制御装置40の自動運転制御部46による制御の下で、前記動作プログラム記憶部41に格納された自動運転用プログラムが実行され、この自動運転用プログラムに従って、無人搬送車35及びロボット25が動作されて、無人の自動生産が実行される。
【0066】
そして、ロボットシステム24が工作機械10に対して作業を行う際には、まず、工作機械10のドア16が開状態にあるか否かを確認することによって、工作機械10が待ち状態にあるか否かを判別し、ドア16が開状態にあることで、工作機械10が待ち状態にあると判断された場合には、ロボット25を動作させて、当該工作機械10に対してワーク交換動作を実行するように構成されているので、ロボット25は、自律した状態で工作機械10に対して作業を行うことができる。
【0067】
このように、本例のロボットシステム24では、自律した状態で工作機械10に対して作業を行うことができるので、ロボットシステム24及び工作機械10から構成される生産システム1を、従来に比べて、低コストで実現することができる。尚、作業内容によっては、当該ロボットシステム24は、通信機能を有しない工作機械に対しても作業を実行することができる。
【0068】
また、本例のロボットシステム24では、ドア16が開状態にあることが確認された後、操作盤17の位置を確認し、操作盤17が閉塞位置に無いことが確認された場合、或いは、操作盤17が閉塞位置に在る場合には、当該操作盤17を閉塞位置の外に退避させた後、ワークの交換動作を実行するように構成されているので、ワーク交換動作にあたり、ロボット25と操作盤17とが干渉するのを回避することができる。
【0069】
また、本例のロボットシステム24では、ドア16が開状態にない場合には、窓部16aを通してカメラ31により加工領域内の画像を撮像し、得られた画像を解析してワークの残加工時間を推定し、推定された残加工時間が予め設定された基準以内であれば、当該工作機械10における加工が完了されるまで、無人搬送車35及びロボット25をアプローチ位置で待機させるようにしているので、当該ロボットシステム24の動作効率を高めることができる。
【0070】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7に示すように、本例の生産システム100は、ロボットシステム24及び工作機械101から構成される。尚、ロボットシステム24は、上述した第1の実施形態に係る構成と同じ構成である。
【0071】
また、本例の工作機械101は、所謂横型のマシニングセンタであって、ベッド102、コラム103、主軸頭104、テーブル105及びパレット交換装置120などを備えている。また、パレット交換装置120は、パレット載置台121及び交換アーム122などから構成され、交換アーム122が180°水平旋回することで、テーブル105上のパレットPと、パレット載置台121上のパレットPとが交換される。
【0072】
また、工作機械101は、前記ベッド102及びその上方の空間がカバー体109によって囲まれており、前記コラム103、テーブル105、パレット載置台121、交換アーム122などが、このカバー体109によって閉塞された空間内に位置している。また、交換アーム122の上面には、仕切り板123が立設されており、この仕切り板123によって、前記カバー体109によって囲まれた空間内が、前記コラム103及びテーブル105などが設けられる加工領域と、パレット載置台121が設けられる加工領域外とに仕切られている。
【0073】
また、前記パレット載置台121、並びにこれらを囲むカバー体109及び仕切り板123によって段取りステーションが構成される。そして、この段取りステーションを構成するカバー体109の内、仕切り板123と対向する部分には、開閉する2枚のドア110が設けられており(
図8参照)、このドア110を開くことにより、その開口部を介して、パレット載置台121上のパレットPに設けられた治具Jに対して、ワークの着脱を行うことができるようになっている。
【0074】
また、
図8に示すように、前記ドア110の向かって右側方には、操作盤125が設けられており、この操作盤125には、ドア110を開くための開ボタン126、ドア110を閉じるための閉ボタン127、及び段取りを完了したことを入力するための段取完了ボタン128が設けられ、更に、これら開ボタン126、閉ボタン127及び段取完了ボタン128の位置を認識するための識別図形129が設けられている。
【0075】
この生産システム100では、ロボットシステム24が工作機械101の段取りステーションに対してワークの交換動作を行う際には、自動運転制御部46は、無人搬送車35、ロボット25、ハンド29及びカメラ31を
図4に示した手順で動作させる。
【0076】
即ち、自動運転制御部46は、まず、段取りステーションに対して設定された作業位置に無人搬送車35を移動させた後(ステップS21)、カメラ31を駆動して工作機械101のドア110を含む領域を撮像し、得られた画像をカメラ31から受信して解析することにより、ドア110が開状態にあるか否か、言い換えれば、段取りステーション内のパレットPに対して作業可能かどうかを判別する処理(ドア(扉体)確認処理)を実行する(ステップS22)。そして、ドア110が開かれている場合には、無人搬送車35及びロボット25を駆動して、パレット載置台121上のパレットPに対して、設定されたワーク交換動作を実行させる(ステップS23)。例えば、ロボット25により加工済みのワークをパレットP上の治具Jから取り外して無人搬送車35の載置面36上に載置した後、同じく載置面36上に予め載置された加工前のワークをロボット25により把持して、パレットP上の治具Jに装着する。尚、このワーク交換動作は、ロボットシステム24と工作機械101との連係動作によって実行される。
【0077】
以上のようにして、無人搬送車35及びロボット25にワーク交換動作を実行させた後、自動運転制御部46は、ロボット25の先端部に設けられたカメラ31を撮像姿勢にした後、当該カメラ31を駆動して、操作盤125が含まれる画像を撮像させ、得られた画像をカメラ31から受信した後、この画像から操作盤125に設けられた閉ボタン127の位置を認識し、次いで、ロボット25を操作してその操作ロッド32の先端部を閉ボタン127に押し当てて、ドア110を閉じさせる(ステップS24)。
【0078】
尚、上述したように、操作盤125には、閉ボタン127に対して所定の位置関係となるように識別図形129が設けられており、自動運転制御部46は、画像解析によってこの識別図形129の位置を認識した後、この識別図形129の位置を基準に閉ボタン127の位置を認識する。また、上述したように、前記カメラ31は所謂ステレオカメラであり、ステレオカメラ31によって撮像された画像を解析することで、カメラ31と識別図形129との間の相対的な位置関係を算出することができる。
【0079】
次に、自動運転制御部46は、再度カメラ31を駆動してドア110を含む画像を撮像させた後、撮像された画像をカメラ31から受信し、受信した画像を解析してドア110が閉状態にあるか否かを確認し(ステップS25)、ドア16が閉状態にある場合には、工作機械101が正常な状態にあると判断して、ロボット25の操作ロッド32の先端部を段取完了ボタン128に押し当てて(ステップS26)、当該工作機械101に対する作業を終了する。一方、ステップS25において、ドア110が開状態にあると判断された場合には、工作機械101に異常が生じていると判断されるため、アラームを出力して(ステップS27)、当該工作機械101に対する作業を終了して、他の作業を実行する。また、前記ステップS22において、ドア110が閉状態にあることが確認された場合にも、段取りステーション内のパレットPに対して作業が不可能であるため、当該工作機械101に対する作業を終了して、他の作業を実行する。
【0080】
以上のように構成された本例の生産システム100によれば、ロボットシステム24が工作機械101に対して作業を行う際には、まず、工作機械101のドア110が開状態にあるか否かを確認することによって、段取りステーションに対して作業可能かどうかを判別し、ドア110が開状態にあることで、段取りステーションに対する作業が可能であると判断された場合には、ロボット25を動作させて、当該工作機械101に対してワーク交換動作を実行するように構成されているので、ロボット25は、自律した状態で工作機械101に対して作業を行うことができる。
【0081】
このように、本例のロボットシステム24では、自律した状態で工作機械101に対して作業を行うことができるので、ロボットシステム24及び工作機械101から構成される生産システム100を、従来に比べて、低コストで実現することができる。
【0082】
以上、本発明の具体的な実施の形態について説明したが、本発明が採り得る態様は、何ら上例のものに限定されるものではない。
【0083】
例えば、上例では、ロボットシステム24が作業する対象物として、工作機械10,101を例示したが、このロボットシステム24を適用可能な作業対象物は、このような工作機械10,101に限られるものではなく、他の工作機械や、工作機械以外の他の装置、機械であっても良い。
【0084】
また、ロボットシステム24も上例の構成に限られるものでは無く、他の構成のものを適用することができる。
【0085】
繰り返しになるが、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0086】
1 生産システム
10 工作機械
16 ドア(扉体)
16a 窓部
17 操作盤
21 材料ストッカ
22 製品ストッカ
24 ロボットシステム
25 ロボット
29 ハンド
31 カメラ
32 操作ロッド
35 無人搬送車
40 制御装置
41 動作プログラム記憶部
42 移動位置記憶部
43 動作姿勢記憶部
44 マップ情報記憶部
45 手動運転制御部
46 自動運転制御部
47 マップ情報生成部
48 位置認識部
【手続補正書】
【提出日】2021-10-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像するカメラ、及び作業対象物に対して作用するエンドエフェクタを有するロボットと、
前記ロボットを搭載し、前記作業対象物に対して設定された作業位置に経由する無人搬送車と、
前記無人搬送車及びロボットを制御する制御装置とを備えたロボットシステムであって、
前記作業対象物は、内部に設定された作業領域と外部とを仕切るとともに、前記作業領域と外部とを連通する開口部を開閉する扉体を備え、
前記作業対象物に対して設定される作業位置は、前記ロボットのエンドエフェクタを前記作業領域内に進入可能な位置であり、
前記制御装置は、
前記無人搬送車を作業位置に経由させて、前記カメラにより前記扉体を撮像し、得られた画像を基に、前記扉体が開状態にあるか否かを確認する扉体確認処理と、
前記扉体が開状態にあると確認されたとき、前記ロボットを動作させて、前記作業領域内で、前記エンドエフェクタを用いた作業を行う作業処理とを実行するように構成され、
更に、前記扉体確認処理を実行して扉体が開状態にあることが確認された後、前記作業処理を開始する前に、撮像された前記画像を基に、撮像方向において、前記開口部の少なくとも一部を塞ぐ位置である閉塞位置に操作盤があるか否かを確認する操作盤確認処理を実行し、前記操作盤が閉塞位置に無いことが確認されたとき、前記作業処理を実行するように構成されていることを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記操作盤確認処理において、前記操作盤が閉塞位置に在ることが確認されたとき、前記作業処理を開始する前に、撮像された前記画像を基に、操作盤に設けられた取手を認識して、前記エンドエフェクタを前記取手に係合させた後、前記操作盤を閉塞位置の外側に移動させる操作盤退避処理を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記作業対象物は工作機械であり、該工作機械は前記作業領域内でワークを加工するように構成され、
前記制御装置は、前記作業処理において、前記ロボットに、前記作業領域内のワークを交換する作業を実行させるように構成された請求項1又は2記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記作業処理を実行した後、前記ロボットを動作させて、前記操作盤に設けられた加工開始ボタンを、前記エンドエフェクタを用いて押下するように構成されていることを特徴とする請求項3記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記工作機械は、その扉体に透明な部材で構成される視認部を有し、該視認部を通して外部から作業領域を観察可能に構成され、
前記制御装置は、前記扉体確認処理において、前記扉体が閉状態にあることが確認されたとき、前記カメラにより、前記視認部を通して前記作業領域内を撮像し、得られた画像を解析して、ワークの加工が完了するまでの残加工時間を推定する加工時間推定処理を実行するように構成されていることを特徴とする請求項3又は4記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記加工時間推定処理を実行した後、推定された残加工時間が予め定められた基準時間よりも短いときは、前記無人搬送車を前記作業位置に待機させ、残加工時間が前記基準時間よりも長いときは、前記作業位置から他の作業位置に移動させるように構成されていることを特徴とする請求項5記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記作業対象物はパレット交換装置であり、前記作業領域内にパレットが配設され、
前記制御装置は、前記作業処理において、前記ロボットに、前記作業領域内のパレットに取り付けられたワークを交換する作業を実行させるように構成された請求項1又は2記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記作業処理を完了後、撮像された前記画像を基に、操作盤に設けられた扉体を閉じる扉閉ボタンを認識して、前記エンドエフェクタを用いて扉閉ボタンを押下するように構成されていることを特徴とする請求項7記載のロボットシステム。