(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190839
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】くくり罠の捕獲遠隔解除システム
(51)【国際特許分類】
A01M 23/28 20060101AFI20221220BHJP
A01M 23/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A01M23/28
A01M23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099301
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 あや理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】傳刀 章雄
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA32
2B121BA51
2B121BA58
2B121EA21
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】
くくり罠に非狩猟動物(保護動物)が誤って捕獲されてしまった場合に、その解除を遠方から安全に行えるシステムを提供する。
【解決手段】
くくり罠(T)の捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)の口径収縮状態を弛緩しないように固定保持する収縮止め装置(F)が、そのワイヤー(11)の挾持可能な向かい合う一対の開閉アーム(25L)(25R)と、その両開閉アームを閉合固定するために串刺し貫通されたロックピン(31)と、そのロックピンを直線的に進退作動させるためのソレノイドアクチュエーター(32)とから成り、ユーザーが携帯する無線リモコン(C)の遠隔操作によって上記アクチュエーターを、そのロックピンが両開閉アームの何れか一方又は双方から引き抜かれるように退動させて、その両開閉アームを開放するように定めた。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏み板と、先端部がループとして巻き曲げられた所要長さの捕獲ワイヤーと、上記ループの口径を常時収縮する方向へ弾圧付勢すべく、その捕獲ワイヤーの途中に設置されたバネ機構と、そのバネ機構による上記ループの口径収縮状態を弛緩しないように固定保持する収縮止め装置とを備え、
上記踏み板の下降をトリガーとして口径収縮する捕獲ワイヤーのループにより、狩猟動物の脚を締め付け捕獲するくくり罠において、
上記ループの収縮止め装置が、
捕獲ワイヤーと平行な枢支軸線の廻りに開閉して、そのワイヤーを挟持し得る向かい合う一対の開閉アームと、
その両開閉アームの何れか一方又は双方から捕獲ワイヤーに向かって螺入されることにより、そのワイヤーへ先端部が押し付け固定されたセットボルトと、
両開閉アームの先端部へ串刺す如く貫通されることにより、その両開閉アームを上記捕獲ワイヤーの挾持状態に閉合固定するロックピンと、
そのロックピンを進退作動させるためのアクチュエーターとから成り、
ユーザーが携帯する無線リモコンの遠隔操作によって上記アクチュエーターを、そのロックピンが両開閉アームの何れか一方又は双方から引き抜かれるように退動させて、その両開閉アームを開放することを特徴とするくくり罠の捕獲遠隔解除システム。
【請求項2】
アクチュエーターがソレノイドから成り、そのソレノイドへ無線リモコンの遠隔操作によって通電した時のみ、そのアクチュエーターの出力軸であるロックピンが両開閉アームの何れか一方又は双方から引き抜き退動されるように設定したことを特徴とする請求項1記載のくくり罠の捕獲遠隔解除システム。
【請求項3】
アクチュエーターが両開閉アームの何れか一方に付属一体化されていると共に、
そのアクチュエーターの出力軸であるロックピンが、両開閉アームの枢支軸線並びに捕獲ワイヤーと平行に進退作動されるように定めたことを特徴とする請求項1又は2記載のくくり罠の捕獲遠隔解除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はくくり罠の捕獲遠隔解除システムに係り、殊更狩猟動物以外の動物が誤って捕獲されてしまった場合に、その捕獲状態の解除をくくり罠の遠方から行えるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、野生の猪や鹿、ヌートリア、その他の狩猟動物を捕獲するくくり罠は、基本的に踏み板と、先端部にループが形成されると共に根元部が立木やその他の固定物に取り付けられた長い一本物の捕獲ワイヤーと、上記ループの口径を常時収縮する(絞る)方向へ弾圧付勢するために、その捕獲ワイヤーの途中に設置されたバネ機構と、そのバネ機構の付勢力による上記ループの口径収縮(絞り)状態を固定保持するセットボルトから成る。
【0003】
そして、狩猟動物による踏み板の踏み下げをトリガーとして口径収縮する(絞られる)上記捕獲ワイヤーのループにより、その狩猟動物の脚を締め付け(くくり)捕獲するようになっている。
【0004】
つまり、くくり罠は箱罠(檻)や囲い罠、その他の各種罠と異なって、捕獲された動物が暴れて激しく動けば動く程、捕獲ワイヤーのループがその動物の脚を直に傷付ける如く、ますます強く締め続けることになるため、その一旦締め付けられた捕獲状態をもはや自動的に解除することはできず、上記動物によってくくり罠が破損されてしまうことさえも起こるのである。
【0005】
この点、獣道を通行する人間や猟犬が誤って捕獲された場合であれば、その猟犬の飼い主である猟師や農林業従事者、その他の罠管理人がくくり罠に近づいて、その捕獲状態を人手作業により解除すれば良いが、特に最近各地で出没している熊が誤って捕獲された場合には、非常に危険であるため、そのくくり罠に近づくことができず、急遽専門家に頼んで麻酔銃により熊を眠らせ、その間に捕獲状態を解除して放獣するほかなく、そのための特別な労力と時間並びに費用を負担しなければならない。
【0006】
これと同様な事態は熊だけに限らず、例えば猿やニホンカモシカなどの非狩猟動物(保護動物)でも、その捕獲時には狂乱状態となって激しく暴れ動くため、危険であることに変わりなく、これらの野生動物が出没する地域では、くくり罠猟の断念を余儀なくされるのである。
【0007】
このようなくくり罠による非狩猟動物の誤捕獲を問題視した対策案が、特許文献1、2に例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3211051号公報
【特許文献2】特許第6355663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
先ず、特許文献1に開示された罠(1)の構成では、断面倒立ハ字形をなす一対の挟み板(13a)(13b)から、一対(2本)のロック解除紐(19a)(19b)が相反する方向へ張り出し延長されており、非狩猟動物(保護動物)が誤って捕獲された場合、そのロック解除紐(19a)(19b)を離れた場所から引っ張ることによって、両挟み板(13a)(13b)を下方へ開放させるようになっているが、一対(2本)のロック解除紐(19a)(19b)は相反する方向へ、しかも弛緩した配線状態として地面に埋められており、地表は天候によって変化するため、その埋めた本人でなければ、両ロック解除紐(19a)(19b)の配線方向性を明確に知ることができず、また両挟み板(13a)(13b)を常時閉合(収縮)する方向へ付勢しているバネ(26a)(26b)の圧力に抗して、そのロック解除紐(19a)(19b)を強く引っ張る必要があることとも相俟ち、1人では両挟み板(13a)(13b)を容易・確実に開放させることができない。
【0010】
あくまでも、上記ロック解除紐(19a)(19b)を引っ張るという人手作業によって、一対の挟み板(13a)(13b)を開放させる方式であるため、その挟み板(13a)(13b)から張り出し延長するロック解除紐(19a)(19b)の配線が長い程、その引っ張り作業を円滑・軽快に行うことができず、逆にその配線が短い程、罠(1)に近づくこととなるため、誤捕獲された非狩猟動物が上記熊であるような場合、作業者にとって甚だ危険であり、未だ使用上の安全性と利便性に劣る。
【0011】
特許文献1の段落[0050]には、罠(1)から離れた安全な場所又はロック解除紐(19a)(19b)の配線長さについて、2m~4mの数値が記載されているが、この程度では未だ危険であるため、到底使用することができない。
【0012】
次に、特許文献2に開示された捕獲罠装置(10)の構成では、索条体(ワイヤー)(12)における先端のループ部(20)から根元の固定物(立木)(T1)に至るまでの配線途中が、分岐索条体(ゴムチューブ)(18)を介して別な固定物(立木)(T2)又は同じ上記固定物(T1)に取り付けられており、非狩猟動物(保護動物)が誤って捕獲された場合、その分岐索条体(18)は切断されず、
図7のように伸縮するだけにとどまり、上記非狩猟動物の怪我を防止すべく緩衝するようになっているが、机上での理論としてはともかく、実際上体重の大小(引っ張り力の強弱)のみによって、狩猟動物と非狩猟動物(保護動物)とを区別することはできず、その非狩猟動物が上記熊である場合には、妥当しないこととなる。
【0013】
それにもまして、上記分岐索条体(18)は誤捕獲された非狩猟動物(保護動物)である猟犬やカモシカなどが怪我しないように緩衝するだけであって、
図7からも明白なように、その動物は依然としてループ部(20)による脚の締め付けられた捕獲状態にあり、解放(放獣)されてはいない。そのため、上記した特許文献1と同様に、やはり非狩猟動物に近づいて、人手作業により捕獲状態を解除し、放獣しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明はこのような諸問題の抜本的な解決を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では踏み板と、先端部がループとして巻き曲げられた所要長さの捕獲ワイヤーと、上記ループの口径を常時収縮する方向へ弾圧付勢すべく、その捕獲ワイヤーの途中に設置されたバネ機構と、そのバネ機構による上記ループの口径収縮状態を弛緩しないように固定保持する収縮止め装置とを備え、
【0015】
上記踏み板の下降をトリガーとして口径収縮する捕獲ワイヤーのループにより、狩猟動物の脚を締め付け捕獲するくくり罠において、
【0016】
上記ループの収縮止め装置が、
【0017】
捕獲ワイヤーと平行な枢支軸線の廻りに開閉して、そのワイヤーを挟持し得る向かい合う一対の開閉アームと、
【0018】
その両開閉アームの何れか一方又は双方から捕獲ワイヤーに向かって螺入されることにより、そのワイヤーへ先端部が押し付け固定されたセットボルトと、
【0019】
両開閉アームの先端部へ串刺す如く貫通されることにより、その両開閉アームを上記捕獲ワイヤーの挾持状態に閉合固定するロックピンと、
【0020】
そのロックピンを進退作動させるためのアクチュエーターとから成り、
【0021】
ユーザーが携帯する無線リモコンの遠隔操作によって上記アクチュエーターを、そのロックピンが両開閉アームの何れか一方又は双方から引き抜かれるように退動させて、その両開閉アームを開放することを特徴とする。
【0022】
また、請求項2ではアクチュエーターがソレノイドから成り、そのソレノイドへ無線リモコンの遠隔操作によって通電した時のみ、そのアクチュエーターの出力軸であるロックピンが両開閉アームの何れか一方又は双方から引き抜き退動されるように設定したことを特徴とする。
【0023】
更に、請求項3ではアクチュエーターが両開閉アームの何れか一方に付属一体化されていると共に、
【0024】
そのアクチュエーターの出力軸であるロックピンが、両開閉アームの枢支軸線並びに捕獲ワイヤーと平行に進退作動されるように定めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
請求項1の構成によれば、くくり罠にユーザーの意図しない非狩猟動物(保護動物)が誤って捕獲されてしまった場合に、ユーザーが持参する無線リモコンを遠隔操作して、捕獲ワイヤーにおけるループの上記収縮止め装置をなすアクチュエーターにより、その出力軸(プランジャー)であるロックピンを両開閉アームの一方又は双方から引き抜かれるように退動させて、その両開閉アームを開放し、上記非狩猟動物(保護動物)の捕獲状態を自ずとすばやく解除するようになっているため、その動物が特に危険な熊であっても、そのくくり罠に近づくことなく、また麻酔銃を用意する必要もなく、遠方から安全に放獣することができ、冒頭に述べた従来技術の諸問題を完全に解消し得るのである。
【0026】
また、上記誤捕獲の状態を解除するために必要な構成としても、くくり罠の捕獲ワイヤーを挟持し得る開閉アームと、その閉合固定用ロックピン並びにそのロックピンの進退作動用アクチュエーターから成る言わば一製品としての上記収縮止め装置と、そのアクチュエーターを遠隔操作する無線リモコンがあれば足り、例えばくくり罠に捕獲される野生動物の監視カメラや、これにより撮影された映像のモニターテレビ、狩猟動物であるか否かを判定するコンピューターなどが不要であるため、農林業従事者でも複数のくくり罠に対して安価に適用実施することができ、容易に便利良く使える効果がある。
【0027】
特に、請求項2の構成を採用するならば、上記収縮止め装置のアクチュエーターがソレノイドから成り、そのソレノイドに通電した時のみアクチュエーターの出力軸(プランジャー)であるロックピンが、両開閉アームの何れか一方又は双方から引き抜き退動されるようになっているため、いたずらに電力を消費するおそれがなく、ランニングコストの不要なシステムとして提供できる効果がある。
【0028】
更に、請求項3の構成を採用するならば、上記ロックピンを進退作動させるためのアクチュエーターが、両開閉アームの何れか一方に付属一体化されているため、これらの構成を含む一製品としての上記収縮止め装置を、既製の如何なるくくり罠に対しても汎用的に後付け使用することができ、特にそのうちの両開閉アームは捕獲ワイヤーへ、その途中からでも挟み付ける(跨る)如く容易に吊り掛けることができ、そのワイヤーへ通し込む必要がないので、くくり罠の設置作業や仕掛け作業を誰でも便利良く行える効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係るくくり罠の設置状態を示す全体概略説明図である。
【
図2】
図1のくくり罠を拡大して示す平面図である。
【
図3】捕獲ワイヤーにおけるループの口径収縮用バネ機構とその収縮止め装置を抽出して示す平面図である。
【
図5】
図3の右側(捕獲ワイヤーの基端側/後側)から見た正面図である。
【
図7】上記収縮止め装置における向かい合う一対の開閉アームを抽出して示す分解斜面図である。
【
図12】くくり罠における第1センサー(トリガーセンサー)の設置状態を示す部分拡大平面図である。
【
図14】くくり罠の変形実施形態を示す断面模式図である。
【
図15】上記バネ機構の変形実施形態を示す平面模式図である。
【
図16】くくり罠の捕獲通報システムを示す概略構成図である。
【
図17】
図13から抽出した第1センサー(トリガーセンサー)の拡大断面模式図である。
【
図18】
図1から抽出した第2センサー(ワイヤーセンサー)の拡大断面模式図である。
【
図19】上記第1センサー(トリガーセンサー)と第2センサー(ワイヤーセンサー)の概略構成を示すブロック図である。
【
図20】上記捕獲通報システムの動作シーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態を詳述すると、そのくくり罠(T)の概略全体を示した
図1、2において、(10)は平面視の矩形や円形などに造形された枠体であり、後述する捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)を受け止める受け桟(13)を備えている。(14)はその枠体(10)と相似な矩形や円形などをなす踏み板であり、その中心部からは前後一対の向かい合うループ保持体取付け用ブラケット(15)が一体的に垂立されている。
【0031】
上記捕獲ワイヤー(11)は所要長さの連続一本物として、その先端部(前端部)がループ(11a)を形作るように巻き曲げられていると共に、基端部(後端部)が樹木や支柱、その他の固定物(16)へ取り付け固定されるようになっている。
【0032】
また、捕獲ワイヤー(11)の中途部には上記ループ(11a)の口径を常時収縮する(絞る)方向へ弾圧付勢するバネ機構(B)が設置されている。
【0033】
そのバネ機構(B)は
図3、4、6に示すような一定長さのバネ収容管(17)と、その先端(フロント)キャップ(18)と、バネ収容管(17)の内部に封入されたコイルバネ(19)と、そのコイルバネ(19)を圧縮する(押し縮める)ために、上記バネ収容管(17)へ基端側(後側)から摺動自在に差し込み嵌合されたバネ圧縮管(20)とから成り、これらが捕獲ワイヤー(11)へ順次通し込まれた設置状態にある。(21)は同じく捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)への分岐境界部に通し込まれた締付け(絞り)環、(22)はその締付け環(21)と上記先端キャップ(18)との相互間に介在するスペーサー管であり、これも捕獲ワイヤー(11)に通し込まれている。
【0034】
上記バネ機構(B)のコイルバネ(19)は、その捕獲ワイヤー(11)に沿うバネ圧縮管(20)の移動操作によって押し縮められ、延いては上記捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)の口径が収縮されることになる。そのため、上記バネ圧縮管(20)の移動阻止位置如何によって、そのループ(11a)の口径収縮力を強く又は弱く調整することができる。
【0035】
何れにしても、そのループ(11a)の口径収縮状態は上記バネ機構(B)のバネ圧縮管(20)を、捕獲ワイヤー(11)の基端側(後側)から受け止める収縮止め装置(F)によって固定保持されるようになっている。
【0036】
そのループ(11a)の収縮止め装置(F)は
図3~9に抽出して示す如く、捕獲ワイヤー(11)と平行な枢支軸(23)を備えた蝶番(24)によって、先端部(下端部)から左右方向へ開閉できる向かい合う一対の開閉アーム(25L)(25R)と、その両開閉アーム(25L)(25R)を上記捕獲ワイヤー(11)の挾持状態に閉合固定する施錠手段(L)と、両開閉アーム(25L)(25R)の何れか一方又は双方から捕獲ワイヤー(11)に向かって、進退自在に螺入操作されることにより、そのワイヤー(11)へ先端部が押し付け固定されることになる1本又は2本のセットボルト(26)とから成る。
【0037】
即ち、その構成を一層具体的に詳述すると、上記収縮止め装置(F)の両開閉アーム(25L)(25R)は
図3~7のように、左右方向から見て互いに同じほぼ倒立L字形で、且つ前後方向から見て互いに同じほぼL字形をなし、捕獲ワイヤー(11)へ上方から言わば跨がる如く吊り掛けられて、そのワイヤー(11)を左右方向から挟持し得るようになっている。
【0038】
しかも、両開閉アーム(25L)(25R)における何れか一方又は双方の上部には、その左右方向から捕獲ワイヤー(11)を目指すネジ孔(27)が貫通形成されており、そのネジ孔(27)へねじ込み操作するセットボルト(26)の先端部を、上記ワイヤー(11)へ強く押し付け固定することによって、そのワイヤー(11)に沿う両開閉アーム(25L)(25R)の移動を阻止するようになっている。
【0039】
向かい合う開閉アーム(25L)(25R)の双方にセットボルト(26)の受け入れ用ネジ孔(27)を開口形成する場合、その一対のネジ孔(27)同士は合致連通する状態として、両開閉アーム(25L)(25R)に貫通形成されても良いが、その互いの位置ズレした関係状態に開口分布してもさしつかえない。何れにしても、そのセットボルト(26)としては回動工具の不要な蝶ボルトを採用することが好ましい。
【0040】
また、両開閉アーム(25L)(25R)のうち、その何れか一方(
図5、7の左側)の開閉アーム(25L)における先端部(下端部)の前半は凸起(28L)として、他方の開閉アーム(25R)の前半に向かって(横向きに)張り出されており、その先端部(下端部)の残る後半が他方の開閉アーム(25R)における凸起(28R)の受け入れ溝(29L)として切り欠かれている。
【0041】
これとの言わば逆に、残る他方(同じく
図5、7の右側)の開閉アーム(25R)における先端部(下端部)の後半はやはり凸起(28R)として、上記した一方の開閉アーム(25L)の後半に向かって(横向きに)張り出されており、その先端部(下端部)の残る前半が上記した一方の開閉アーム(25L)における上記凸起(28L)の受け入れ溝(29R)として切り欠かれている。
【0042】
つまり、両開閉アーム(25L)(25R)における何れか一方の張り出し凸起(28L)(28R)が残る他方の凸起受け入れ溝(29R)(29L)へ受け入れられて整然と嵌合し、その何れか一方の張り出し凸起(28L)(28R)と他方の開閉アーム(25L)(25R)における上記一方の凸起受け入れ溝(29R)(29L)を切り欠かれていないままの状態にある先端部(下端部)とが、前後位置関係での直列状態に並ぶようになっている。
【0043】
そして、その何れか一方(
図5、7の右側)の開閉アーム(25R)における張り出し凸起(28R)と、残る他方(同じく
図5、7の左側)の開閉アーム(25L)における上記した一方の凸起受け入れ溝(29L)を切り欠かれていない状態の先端部(下端部)には、その前後位置関係での互いに合致連通するロックピン受け入れ孔(30a)(30b)が、上記蝶番(24)の枢支軸(23)と平行に貫通形成されている。
【0044】
更に、上記収縮止め装置(F)の両開閉アーム(25L)(25R)を閉合固定する施錠手段(L)は、その両開閉アーム(25L)(25R)の先端部(下端部)に貫通形成された上記ロックピン受け入れ孔(30a)(30b)へ、抜き差し自在に差し込み貫通されるロックピン(31)と、そのロックピン(31)を出力軸又はプランジャーとして上記捕獲ワイヤー(11)と平行な前後方向に沿い進退作動させるためのアクチュエーター(32)とから成り、そのアクチュエーター(32)が両開閉アーム(25L)(25R)における何れか一方(
図5、7の左側)の先端部(下端部)に付属一体化されている。(33)はその先端部(下端部)から前向き(又は後向き)一体的に張り出されたアクチュエーター用取付け架台である。
【0045】
その場合、両開閉アーム(25L)(25R)へ互いに合致連通する一対のロックピン受け入れ孔(30a)(30b)を開口形成して、アクチュエーター(32)の出力軸(プランジャー)である長いロックピン(31)を、その双方へ差し込み貫通させるように設定してもさしつかえないが、その短いロックピン(31)を予め図示する左側開閉アーム(25L)のロックピン受け入れ孔(30a)へ差し込んでおき、その位置から残る右側開閉アーム(25R)のロックピン受け入れ孔(30b)に対してのみ、抜き差し自在に差し込むべく進退作動させることの方が好ましい。
【0046】
尚、図示の実施形態では両開閉アーム(25L)(25R)の先端部(下端部)へ互いに合致連通するロックピン受け入れ孔(30a)(30b)を、前後位置関係での直列状態に各々開口形成すると共に、アクチュエーター(32)の出力軸(プランジャー)であるロックピン(31)を、両開閉アーム(25L)(25R)の枢支軸線並びに捕獲ワイヤー(11)と平行な前後方向へ進退作動させるようになっているが、上記ロックピン(31)とそのロックピン受け入れ孔(30a)(30b)は両開閉アーム(25L)(25R)の枢支軸線並びに捕獲ワイヤー(11)と直交する左右(横)方向へ延在させるように構成しても良い。
【0047】
図示実施形態のアクチュエーター(32)はソレノイドから成り、そのソレノイド(32a)に通電されていない状態では、アクチュエーター(32)の出力軸(プランジャー)である上記ロックピン(31)に電磁力が作用しておらず、そのロックピン(31)はリターンバネ(図示省略)の付勢力により、両開閉アーム(25L)(25R)の先端部(下端部)を串刺し貫通するように進出作動されていて、その両開閉アーム(25L)(25R)を閉合固定している。
【0048】
これによって、上記捕獲ワイヤー(11)が挟持状態に保たれ、その状態にある両開閉アーム(25L)(25R)の左右方向から捕獲ワイヤー(11)に向かって、セットボルト(26)が強く押し付け固定されることにより、上記バネ機構(B)における就中バネ圧縮管(20)の後退するおそれはなく、捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)の口径収縮状態が不慮に弛緩したり、まして解除されたりすることはない。
【0049】
他方、ユーザーが後述する無線リモコン(C)の遠隔操作により、上記ソレノイド(32a)に通電すれば、そのリターンバネ(図示省略)の弾圧力に抗して、そのアクチュエーター(32)の出力軸(プランジャー)である上記ロックピン(31)が電磁力により、そのロックピン受け入れ孔(30a)(30b)に沿って両開閉アーム(25L)(25R)の何れか一方又は双方から引き抜き退動され、その両開閉アーム(25L)(25R)が自ずと瞬時に開放して、延いては上記バネ機構(B)のバネ圧縮管(20)が後退し、その圧縮されていたコイルバネ(19)が弛緩し、捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)の口径収縮状態が解除されるようになっている。
【0050】
上記無線リモコン(C)としては近距離からソレノイド(32a)に通電して、そのアクチュエーター(32)の出力軸であるロックピン(31)を進退作動させ得る無線通信器であれば足りるが、使用するために特別の許可を必要とせず、しかも最大2kmの間隔距離を無線通信できる特定小電力トランシーバーや、ZigBee(登録商標)通信規格を利用できる近距離無線通信器などを採用することが好ましい。
図10の符号(34)は上記アクチュエーター(32)の電源スイッチをオン操作する無線リモコン(C)の押しボタン、(35)はその操作による電源スイッチのオン状態を表示するランプである。
【0051】
尚、上記ソレノイド(32a)から成るアクチュエーター(32)の電源スイッチを含む制御回路や、その電源となるバッテリー、無線リモコン(C)からの無線信号受信器などは図示省略してある。上記ソレノイド(32a)はリターンバネを有しない自己保持型(永久磁石の内蔵型)のそれに代えても良い。また、上記ロックピン(31)を直線的に進退作動させることができるアクチュエーター(32)である限り、上記ソレノイドから成るもの(電磁アクチュエーター)以外に、電動モーターから成るアクチュエーターなどを採用してもさしつかえない。
【0052】
上記捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)は
図2、11のような左右一対として、平面視の向かい合う円弧形状をなし、その切り離し両端基部が上記踏み板(14)のループ保持体取付け用ブラケット(15)へ、ほぼ水平な支点軸(36)によって起伏的な回動自在に枢着されている。
【0053】
(37)は両ループ保持体(12)の円弧面(凸曲面)に列設されたワイヤー受け入れ凹周溝であって、外向き(横向き)に拡開するほぼV字状をなし、その両ループ保持体(12)のワイヤー受け入れ凹周溝(37)へ掛け渡す状態として、上記捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)が係脱自在に係止されるようになっている。
【0054】
その場合、踏み板(14)が上記枠体(10)よりも小さな相似の矩形や円形などとして、その枠体(10)の囲い内部を昇降し得る収容状態にあるに比し、左右一対のループ保持体(12)における円弧形状の先端部は、
図12、13のように枠体(10)の上記受け桟(13)によって下方から受け止められたほぼ水平の伏倒状態にあり、その状態において上記凹周溝(37)へ受け入れた捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)を、予めの拡大した一定口径に保持している。
【0055】
つまり、捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)が上記バネ機構(B)の就中バネ圧縮管(20)による口径収縮力に抗して、狩猟動物の脚(A)を包囲し得るように強制的に拡張されているのである。
【0056】
そして、このような準備状態にあるくくり罠(T)の踏み板(14)が、狩猟動物による踏み下げを受けて下降すると、これをトリガーとして一緒に下降する左右一対のループ保持体(12)が、その支点軸(36)を中心として円弧形状の先端部から一挙に起立するよう回動作用するため、そのバネ機構(B)による予めの口径収縮力を付勢された状態にある捕獲ワイヤー(11)が、その両ループ保持体(12)の上記凹周溝(37)から勢い良く弾き出され解放(離脱)することになると同時に、そのループ(11a)の口径がすばやく収縮されるのである。
【0057】
(38)は上記ループ保持体(12)の先端側を下方から受け止め支持すべく、踏み板(14)の左右両端部に取り付けられた一対の調整ネジであり、これを上下方向へ進退操作することによって、そのループ保持体(12)の起伏的な回動角度を予め零となる水平の伏倒状態に調整準備することができるようになっている。
【0058】
(39)はくくり罠(T)の設置時に、作業者が誤って踏み板(14)を押し下げる危険防止用のストッパーピンであり、上記枠体(10)へ左右方向から抜き差し自在に差し込むようになっている。そのストッパーピン(39)はくくり罠(T)の設置後に抜き取られ、踏み板(14)が枠体(10)の内部で下降し得る準備状態に保たれることは、言うまでもない。
【0059】
上記構成のくくり罠(T)を狩猟動物が生息する地域(Z)へ設置作業するに当っては、左右一対のループ保持体(12)におけるループ受け入れ凹周溝(37)へ、捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)を係止させた後、そのワイヤー(11)の弛みを無くすため、予め捕獲ワイヤー(11)に通し込まれているバネ機構(B)のバネ圧縮管(20)を、前方へ押し動かして、そのバネ収容管(17)内のコイルバネ(19)を圧縮すると共に、そのバネ圧縮管(20)を後退しないように受け止めるべく、その収縮止め装置(F)の両開閉アーム(25L)(25R)を上記ワイヤー(11)の挟持状態に閉合固定して、その左右方向からセットボルト(26)をねじ込み操作することにより、その先端部をワイヤー(11)へ強く押し付け固定しておく。
【0060】
その場合、上記アクチュエーター(32)のプランジャー(出力軸)であるロックピン(31)は、上記ワイヤー(11)の挟持状態に閉合固定された両開閉アーム(25L)(25R)の先端部(下端部)を、そのワイヤー(11)と平行に串刺し貫通する施錠状態として、そのソレノイド(32a)へ通電しない状態に保つ。
【0061】
そして、このような捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)の口径収縮状態にある両ループ保持体(12)を、上記枠体(10)の内部へ挿入セットし、そのループ保持体(12)の先端部を枠体(10)の受け桟(13)へ載置させて、ストッパーピン(39)の差し込みにより、上記ループ保持体(12)と踏み板(14)を下降しない安全状態に保った上、その枠体(10)を狩猟動物の通路となる地面(G)に設けた凹所(40)へ、ほぼ水平の設置状態に収納して、上記枠体(10)からストッパーピン(39)を抜き取ることにより、そのループ保持体(12)と踏み板(14)が下降し得る状態に準備する。
【0062】
更に、上記捕獲ワイヤー(11)の基端部(後端部)を
図1のように樹木の幹や杭、支柱、その他の固定物(16)に取り付け、その地面(G)に沿って延長するワイヤー(11)や枠体(10)、ループ保持体(12)を上方から木の葉や草、その他によって全体的に被覆し、くくり罠(T)の見えない状態に設置するのである。
【0063】
このような設置状態において、猪や鹿、その他の狩猟動物が上記踏み板(14)を踏み下げれば、
図13の仮想線から示唆されるように、その踏み板(14)と一緒に下降する左右一対の上記ループ保持体(12)は、その支点軸(36)の廻りにすばやく起立して、そのワイヤー受け入れ凹周溝(37)から捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)が勢い良く弾き出され解放(離脱)すると同時に、そのループ(11a)の口径が自ずと収縮することにより、狩猟動物の脚(A)を強力に締め付け(くくり)捕獲することになる。
【0064】
尚、先には
図1~13に基づき、踏み板(14)の下降に連れて起立的に回動するループ保持体(12)を説示したが、要するに捕獲ワイヤー(11)のループ保持体(12)がトリガーとして下降することにより、ワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)し得る限り、例えば
図14(イ)のような踏み板(14)の下降により、枠体(10)への取付け支点軸(41)を中心として、伏倒的に回動するループ保持体(12)や、
図14(ロ)のような踏み板(14)との一体物として、一緒の直線的に下降するループ保持体(12)などを採用しても良い。その場合、ループ保持体(12)の設置を省略して、踏み板(14)だけの設置にとどめてもさしつかえない。(42)は折損可能な爪楊枝などの支持ピンを示している。
【0065】
また、先の
図1~13に示したくくり罠(T)は、バネ収容管(17)に封入されたコイルバネ(19)と、そのバネ圧縮管(20)から成るバネ機構(B)を備えているが、このような実施形態のくくり罠(T)のみに限らず、
図15のような捕獲ワイヤー(11)に通し込まれた切り離し両端部(43a)(43b)が、中途のコイル部(43c)を支点として常時拡開する方向へ弾圧付勢された蔓巻バネ(43)から成るバネ機構(B)を備えたくくり罠(T)についても、その捕獲ワイヤー(11)に押し付けられるセットボルト(44)に代えて、上記構成の収縮止め装置(F)をそのまま適用実施することができる。
【0066】
その蔓巻きバネ(43)の切り離し一端部(43b)を捕獲ワイヤー(11)の基端部(後端部)側から、収縮止め装置(F)における両開閉アーム(25L)(25R)の閉合固定によって移動不能に施錠してあれば、同じくバネ(43)の切り離し他端部(43a)が捕獲ワイヤー(11)におけるループ(11a)の口径を常時収縮する方向へ弾圧付勢することになり、そのためその収縮止め装置(F)の両開閉アーム(25L)(25R)を開放することによって、そのループ(11a)の口径収縮状態を瞬時に解除することができるからである。
【0067】
更に、図示の実施形態ではユーザーが自己の管理している複数のくくり罠(T)を、言わば無駄にパトロールしなくても良いように、その各くくり罠(子機)(T)から中継基地局(親機)(R)とウェブサーバ(管理サーバ)(W)並びにインターネット(N)を介してユーザー端末(U)へ、狩猟動物の捕獲された状態検知情報を配信するようになっている。
【0068】
図16はその通報システムの概略的な構成を示すブロック図であり、上記くくり罠(T)の各個には無線式の第1センサー(以下、トリガーセンサーということもある)(S1)と、同じく無線式の第2センサー(以下、ワイヤーセンサーということもある)(S2)とが設置されている。その第1、2センサー(S1)(S2)が狩猟動物の捕獲検知センサーとして、両者から検知出力信号を受けた場合に、くくり罠(T)による狩猟動物の捕獲状態であると判定するようになっている。
【0069】
上記トリガーセンサー(S1)は、言わばトリガーとなるくくり罠(T)の踏み板(14)又はこれと一緒に動く上記ループ保持体(12)が捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)したか否か検知するものであって、ホールICを使った磁気センサー(45)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)から成り、
図13、17のような永久磁石(46)が上記ループ保持体(12)の先端部から張り出す取付片(12a)に取り付けられている一方、磁性体(47)の皿頭付きボルトなどがループ保持体(12)の先端部を受け止める上記枠体(10)の受け桟(13)に取り付けられていて、その磁性体(ボルト)(47)が磁化したか否かを検知し、磁化していなければ(吸着力の解除状態)、上記ループ保持体(12)が捕獲ワイヤー(11)のループ(11a)を弾き出し解放(離脱)した状態、延いてはそのループ(11a)の口径収縮力により狩猟動物の脚(A)を締め付け(くくり)捕獲した状態として、その捕獲したことの検知出力信号を発するようになっている。(48)は上記磁性体(ボルト)(47)の固定ナットである。
【0070】
そして、上記トリガーセンサー(S1)の検知出力信号は
図19のブロック図に示す如く、その送信部(49)から第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)の受信部(50)へ、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fiなどのシステムを利用して近距離無線通信されることになる。(51)は上記磁気センサー(45)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)を内蔵した制御ボックスであり、上記枠体(10)の内部における就中受け桟(13)の下面に取り付けられている。(52)はセンサー基板(マイコン)であり、CPU(53)やメモリー(54)などを具備している。(55)は電源供給用のバッテリーである。
【0071】
他方、上記第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)は捕獲ワイヤー(11)の伸縮や振動を検知するものであって、図示実施形態の場合上記トリガーセンサー(S1)と実質的に同じ磁気センサー(56)又は磁気型の近接スイッチ(無接点スイッチ)から成り、
図1、18のような磁性体(57)の皿頭付きボルトなどが制御ボックス(58)へ、その皿頭の下向き露出状態に取り付けられている一方、永久磁石(59)が上記捕獲ワイヤー(11)の中途部から上向く分岐ワイヤー(60)の上端部に取り付けられており、その磁性体(ボルト)(57)が磁化したか否かを検知し、磁化していなければ(吸着力の解除状態)、上記捕獲ワイヤー(11)がその分岐ワイヤー(60)も含む全体として激しく振動した状態、つまり捕獲された狩猟動物が暴れ動いたことの検知出力信号を発するようになっている。(61)は上記制御ボックス(58)に対する磁性体(ボルト)(57)の固定ナットである。
【0072】
その場合、制御ボックス(58)は
図1のように、固定物(16)である樹木の枝などに取り付けられている。(62)はそのワイヤーセンサー(S2)の制御ボックス(58)に内蔵されたセンサー基板(マイコン)であり、CPU(63)やメモリー(64)などを有しており、そのCPU(63)ではGPSを利用した位置検出部(65)が検出する位置情報を取得する。
【0073】
また、上記トリガーセンサー(S1)から入力した検知情報とワイヤーセンサー(S2)の磁気センサー(56)から出力した検知情報とを一緒にして、
図19のブロック図に示す如く、その送信部(66)から中継基地局(親機)(R)へ例えばLPWAやLTEなどのシステムを利用して遠距離無線通信する。(67)はバッテリーである。
【0074】
この点、図示の実施形態ではトリガーセンサー(S1)の検知出力信号を一旦ワイヤーセンサー(S2)の受信部(50)へ送信し、そのワイヤーセンサー(S2)の送信部(66)から中継基地局(R)へ、両センサー(S1)(S2)の検知出力信号をまとめて送信するようになっているが、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を各別に中継基地局(R)へ無線送信(モバイル通信)するように定めても良い。
【0075】
要するに、中継基地局(R)は各地域(Z)に設置されている複数のくくり罠(T)とデータ通信を行って、その上記第1、2センサー(S1)(S2)によるくくり罠(T)の捕獲状態検知情報を受信し、インターネット(N)を介してデータセンターや捕獲支援センターなどのウェブサーバ(管理サーバ)(W)へ送信(通報)するようになっている。
【0076】
尚、上記ワイヤーセンサー(S2)としても消費電力の少ない磁気センサー(56)を説明したが、捕獲ワイヤー(11)の伸縮や振動を検知し得るならば、その磁気センサー(56)に代わるモーションセンサーや振動センサー、加速度センサーなどを採用しても良い。
【0077】
上記データセンターや捕獲支援センターなどのウェブサーバ(管理サーバ)(W)は、
図16のブロック図に示すようなCPU(68)やメモリー(69)などを有する制御部(70)のほか、受信部(71)と表示部(72)並びに配信部(73)も具備しており、上記くくり罠(T)の捕獲状態検知情報とその位置情報を中継基地局(R)から、インターネット(N)を経由して受信部(71)に受信し、その情報をCPU(68)において判定の上、表示部(72)に表示すると共に、配信部(73)からインターネット(N)を介して電子メールなどにより、ユーザー端末(U)へ配信するようになっている。
【0078】
つまり、ウェブサーバ(W)における制御部(70)のCPU(68)は
図20の動作シーケンス図に示す如く、上記くくり罠(T)の第1センサー(トリガーセンサー)(S1)と第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)とが反応して、その両センサー(S1)(S2)の検知出力信号を上記中継基地局(R)から受信した場合に、そのくくり罠(T)に狩猟動物が捕獲された状態であると判定して、その捕獲通報をユーザー端末(U)へ配信するのである。
【0079】
その場合、上記ウェブサーバ(W)のCPU(68)はくくり罠(T)のワイヤーセンサー(S2)から位置検出部(GPS)(65)によって検出したくくり罠(T)の位置情報を取得し、その情報から特定した地図やその地図上の位置を、ユーザー端末(U)へ配信するようになっているが、そのウェブサーバ(W)はインターネット(N)に接続されているため、上記くくり罠(T)の捕獲状態検知情報や位置情報は、ユーザー端末(U)からダウンロードすることも可能である。
【0080】
但し、上記GPSを利用せずに、各地域(Z)におけるくくり罠(T)の設置されている位置を特定して、ウェブサーバ(W)の表示部(72)へ表示することにより、そのくくり罠(T)の位置情報をユーザー端末(U)から知得して共有できるようにしても良い。
【0081】
上記ユーザー端末(U)はパソコン(PC)やタブレット端末、スマートフォンなどのモバイル、その他のインターネット(N)を介して上記ウェブサーバ(W)と通信できる機器であれば足りるが、そのユーザー端末(U)を使用するユーザーとしては、上記くくり罠(T)を設置する地域(Z)の農家(農林業従事者)が想定されているが、そのくくり罠(T)の管理人であれば誰でも良く、地方自治体の農林課・獣害対策課に所属する職員や捕獲委託業者などもユーザーとなり得る。
【0082】
そして、上記ウェブサーバ(W)の制御部(70)において、くくり罠(T)による狩猟動物の捕獲状態であると判定された場合、その捕獲通報がユーザーの使用するユーザー端末(U)へ配信されるので、ユーザーとしてはくくり罠(T)の設置現場へ出向し、その狩猟動物の駆除(止め刺し)やくくり罠(T)の仕掛け直し(リセット)などを行えば良く、自己の管理しているくくり罠(T)をいたずらにパトロールする必要がなくなる。
【0083】
但し、くくり罠(T)には目標とする狩猟動物の猪や鹿などに限らず、非狩猟動物(保護動物)である熊やニホンカモシカなどが誤って捕獲されてしまうこともあり、特に上記第2センサー(ワイヤーセンサー)(S2)も検知出力信号を発するような時は、大きな熊の捕獲されている確率が高い。
【0084】
そこで、ユーザーが上記くくり罠(T)の設置現場へ出向する際には、無線リモコン(C)のほかに双眼鏡や望遠鏡なども携帯し、安全に確保できる適当な間隔距離から、その双眼鏡や望遠鏡などによりくくり罠(T)を目視・観察して、その捕獲された野生動物が狩猟動物か、又は非狩猟動物(保護動物)かを見分けた上、その後者の熊やニホンカモシカなどである場合は、無線リモコン(C)の押しボタン(34)を操作し、上記捕獲ワイヤー(11)における収縮止め装置(F)のソレノイド(32a)に通電して、アクチュエーター(32)によりロックピン(31)を両開閉アーム(25L)(25R)の何れか一方又は双方から引き抜く方向へ退動させるのである。
【0085】
そうすれば、両開閉アーム(25L)(25R)は自ずと瞬時に開放し、そのセットボルト(26)による捕獲ワイヤー(11)の押し付け固定力がなくなり、バネ機構(B)のバネ圧縮管(20)はコイルバネ(19)の復元力を受けて、捕獲ワイヤー(11)に沿い後方へ移動するため、そのループ(11a)の口径収縮状態が弛緩することになる。その結果、上記非狩猟動物(保護動物)の捕獲状態を遠方から危険なく解除して、放獣することができる。
【0086】
尚、図示の実施形態ではくくり罠(T)の捕獲通報システムを採用しており、そのくくり罠(T)に野生動物が捕獲された状態を、ユーザー端末(U)へ通報するようになっているが、このような通報システムを採用していない場合でも、上記と同様にユーザーが無線リモコン(C)と双眼鏡や望遠鏡などを携帯して、自己の管理している複数のくくり罠(T)をパトロールすることにより、やはりくくり罠(T)に誤って捕獲された熊やニホンカモシカなどの非狩猟動物(保護動物)を、そのくくり罠(T)に近づくことなく安全に放獣できることに変わりはない。
【符号の説明】
【0087】
(10)・・・・枠体
(11)・・・・捕獲ワイヤー
(11a)・・・ループ
(12)・・・・ループ保持体
(14)・・・・踏み板
(15)・・・・ブラケット
(16)・・・・固定物(立木など)
(17)・・・・バネ収容管
(19)・・・・コイルバネ
(20)・・・・バネ圧縮管
(23)・・・・枢支軸
(24)・・・・蝶番
(25L)(25R)・・・開閉アーム
(26)(44)・・・セットボルト
(27)・・・・ネジ孔
(28L)(28R)・・・張り出し凸起
(29L)(29R)・・・凸起受け入れ溝
(30a)(30b)・・・ロックピン受け入れ孔
(31)・・・・ロックピン(プランジャー/出力軸)
(32)・・・・アクチュエーター
(33)・・・・(アクチュエーター用)取付け架台
(A)・・・・・動物の脚
(B)・・・・・バネ機構
(C)・・・・・無線リモコン
(F)・・・・・収縮止め装置
(L)・・・・・施錠手段
(T)・・・・・くくり罠