(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190842
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車載制御装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/54 20200101AFI20221220BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01R31/54
G01M17/007 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099305
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】田辺 至
【テーマコード(参考)】
2G014
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB24
2G014AB38
2G014AC18
(57)【要約】
【課題】GND断線の傾向を検知できる車載制御装置を提供することである。
【解決手段】定電源とGNDとの間に複数の抵抗やトランジスタを設け、トランジスタをオンしたときの定電源とGNDとの間の所定点での電圧の違いにより、車載制御装置のGNDラインが断線傾向時に生じる抵抗成分の増加を検知し、現在の状態が正常、断線傾向、及び完全断線のいずれであるかを切り分け、GNDラインが完全に断線する前に、GND断線傾向を検知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
GND断線の傾向に応じて増加する抵抗成分によって変化する電圧を取り込む電圧取込部と、
前記電圧取込部で取り込んだ電圧に基づきGNDの正常、断線傾向、及び完全断線を切り分けて診断する診断部と、
を有する
ことを特徴とする車載制御装置。
【請求項2】
前記診断部は、前記抵抗成分が正常時から変化していない場合にも、GNDの正常及び完全断線を切り分けて診断可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の車載制御装置。
【請求項3】
前記抵抗成分は、GND端子とシステムGNDを接続する導体が有する抵抗である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車載制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車載制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車載制御装置の一例として、車両のバッテリー等の電源供給装置により作動する車載制御装置が知られている。
【0003】
車載制御装置は、GND端子を有する。車載制御装置のGND端子が何らかの要因により断線した場合、車載制御装置が意図しない動作をし、車載制御装置が搭載される上位システムや、同列の他制御装置の正常動作を阻害し、異常状態を誘発するおそれがある。
【0004】
そこで、車載制御装置のGND端子が断線した場合、異常を検知する技術として、GNDラインの状態をGND断線モニタ回路で監視し、GNDラインが断線した際、マイコンが断線検知するという技術が知られている(例えば特開2020-139787号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特開2020-139787号公報に記載された技術では、断線が発生した後に検知するため、GND断線が発生した際の異常状態を事前に検知し阻止することはできない。また、任意のタイミングでGND断線を検知する診断を実施しているため、GND断線が発生し、それを検知するまでに時間的な遅れが発生する。
【0007】
本発明の目的は、GND断線の傾向を検知できる車載制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0009】
本発明は、GND断線の傾向に応じて増加する抵抗成分によって変化する電圧を取り込む電圧取込部と、前記電圧取込部で取り込んだ電圧に基づきGNDの正常、断線傾向、及び完全断線を切り分けて診断する診断部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、GND断線の傾向を検知できる車載制御装置を提供することができる。
【0011】
上記した以外の本発明の課題、構成、作用及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車載制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の車載制御装置1のGND断線検知回路の自己診断時の動作を示すフロー図である。
【
図3】
図1の車載制御装置1のGNDの状態判断時の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る車載制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【0015】
車載制御装置1は、演算処理を行うCPU10を有する。CPU10は、アナログ信号の取り込みを行うAD入力ポート11と、デジタル信号の出力を行うDO出力ポート12を有する。
【0016】
車載制御装置1は、DO出力ポート12によりON/OFFするトランジスタ(T1)70と、トランジスタ(T1)70のベース抵抗である抵抗(R4)80および抵抗(R5)90と、を有する。車載制御装置1は、トランジスタ(T1)70のソース抵抗であって定電源(Vcc)20に接続される抵抗(R1)30及び抵抗(R2)40と、抵抗(R1)30と抵抗(R2)40との交点(a)100に接続される抵抗(R3)50と、を有する。車載制御装置1は、AD入力ポート11と抵抗(R3)50との間に接続されるコンデンサ(C1)60を有する。車載制御装置1は、GND端子110を有する。トランジスタ(T1)70のドレインは、GND端子110に接続される。GND端子110は、抵抗成分(R0)130を有する導体を介し、システムGND120に接続される。なお、本実施例では、車載制御装置1は、1つのGND端子を有するが、本発明はこれに限られるものではなく、複数のGND端子を有するものであってもよい。車載制御装置1のGND断線検知回路は、
図1に示した各抵抗やトランジスタによって構成される。
【0017】
本実施形態の車載制御装置1は、GND端子110の断線を検知するためのGND断線検知回路を有し、このGND断線検知回路による検知機能が正しく機能することを事前に確認する自己診断機能を有することを特徴とする。
【0018】
まず、この自己診断機能について
図2のフロー図を用いて説明する。
図2は、
図1の車載制御装置1のGND断線検知回路の自己診断時の動作を示すフロー図である。
【0019】
まず、ステップ200において、車載制御装置1は、当該車載制御装置1の電源投入(ON)を受け、動作を開始する。
【0020】
次に、ステップ201において、車載制御装置1の電源投入により、CPU10が起動される。CPU10は、起動されると、DO出力ポート12をHi(High)出力とする。
【0021】
次に、ステップ202において、DO出力ポート12がHi出力となることで、抵抗(R4)80を介し、トランジスタ(T1)70がONし、定電源(Vcc)20からシステムGND120の間が導通する。
【0022】
次に、ステップ203において、トランジスタ(T1)70がONすることで、一定の電圧を有する定電源(Vcc)20から、抵抗(R1)30と抵抗(R2)40とGNDラインの抵抗成分(R0)130を経由して、システムGND120に電流が流れる。その際、前記抵抗構成により、交点(a)100にVcc×(R2+R0)/(R1+R2+R0)の電圧が発生する。DO出力ポート12がHi出力のとき、この電圧値であれば正常であり、異なれば異常である。
【0023】
次に、ステップ204において、交点(a)100に発生した電圧は、抵抗(R3)50とコンデンサ(C1)60で構成されるフィルターを介し、CPU10のAD入力ポート11に入力される。CPU10は、AD入力ポート11から、交点(a)100に発生した電圧を取り込む。この処理は、GND断線の傾向に応じて増加する抵抗成分によって変化する電圧を取り込む電圧取込部の一例である。
【0024】
次に、ステップ205において、CPU10は、DO出力ポート12がHiのときにAD入力ポート11に取り込まれる交点(a)100の電圧を記録する。
【0025】
次に、ステップ206において、CPU10は、DO出力ポート12をLo(Low)出力とする。
【0026】
次に、ステップ207において、DO出力ポート12がLoとなることで、抵抗(R4)を介し、トランジスタ(T1)70がOFFし、定電源(Vcc)20からシステムGND120の間が遮断される。
【0027】
次に、ステップ208において、トランジスタ(T1)70がOFFするため、一定の電圧を有する定電源(Vcc)20の電圧が交点(a)100に発生する。DO出力ポート12がLo出力のとき、この電圧値であれば正常であり、異なれば異常である。
【0028】
次に、ステップ209において、交点(a)100に発生した電圧は、抵抗(R3)50とコンデンサ(C1)60で構成されるフィルターを介し、CPU10のAD入力ポート11に入力される。
【0029】
次に、ステップ210において、CPU10は、DO出力ポート12がLoのときにAD入力ポート11に取り込まれる交点(a)100の電圧を記録する。
【0030】
次に、ステップ211において、CPU10は、DO出力ポート12がHiのとき、およびLoのときの交点(a)100の電圧値を判定し、DO出力ポート12がHiのとき、およびLoのときの交点(a)100の電圧値が正常値の場合は、ステップ212へ移行する。一方で、DO出力ポート12がHiのとき、およびLoのときの交点(a)100の電圧値が異常値の場合は、ステップ213へ移行する。CPU10で判断する交点(a)100の電圧の正常値と異常値は、
図1に示したGND断線検知回路を構成する抵抗やトランジスタの定数によって任意に定義する。
【0031】
次に、ステップ212において、CPU10は、ステップ211で正常と判断したため、GND断線検知回路が「正常」と診断する。
【0032】
次に、ステップ213において、CPU10は、ステップ211で異常と判断したため、GND断線検知回路が「異常」と診断する。
【0033】
以上の
図2に示した処理により、車載制御装置1のGND断線検知回路の診断を実施でき、正常に回路が動作することを事前に確認することができる。実際にGNDの断線が発生した際には、GND断線検知回路によってGNDの断線を検知することができる。
【0034】
次に、
図3を参照して、車載制御装置1のGNDの状態判断時の動作を説明する。
図3は、
図1の車載制御装置1のGNDの状態判断時の動作を示すフロー図であって、
図3(A)は、GND正常時の動作を示す図であり、
図3(B)は、GND断線の傾向が発生した場合の動作を示す図であり、
図3(C)は、完全なGND断線が発生した場合の動作を示す図である。
【0035】
まず、
図3(A)を参照して、GND正常時の動作フロー300について説明する。
【0036】
まず、ステップ301において、車載制御装置1は、当該車載制御装置1の電源投入(ON)を受け、動作を開始する。
【0037】
次に、ステップ302において、車載制御装置1の電源投入により、CPU10が起動され、CPU10は、起動されると、DO出力ポート12をHi出力とする。
【0038】
次に、ステップ303において、DO出力ポート12がHi出力となることで、抵抗(R4)80を介し、トランジスタ(T1)70がONし、定電源(Vcc)20からシステムGND120の間が導通する。
【0039】
次に、ステップ304において、トランジスタ(T1)70がONすることで、一定の電圧を有する定電源(Vcc)20から、抵抗(R1)30と抵抗(R2)40とGNDラインの抵抗成分(R0)130を経由して、システムGND120に電流が流れる。その際、前記抵抗構成により、交点(a)100にVcc×(R2+R0)/(R1+R2+R0)の電圧が発生する。
【0040】
次に、ステップ305において、CPU10は、AD入力ポート11から、交点(a)100に発生した電圧を取り込む。CPU10は、この取込んだ電圧があらかじめ設定した正常値の範疇であれば、GNDが「正常」と診断する。
【0041】
次に、
図3(B)を参照して、GND断線の傾向が発生した場合の動作フロー310について説明する。
【0042】
まず、ステップ311~ステップ313までは、
図3(A)のステップ301~ステップ303までと同じ処理なので説明を省略する。
【0043】
次に、ステップ314において、トランジスタ(T1)70がONすることで、一定の電圧を有する定電源(Vcc)20から、抵抗(R1)30と抵抗(R2)40とGNDラインの抵抗成分(R0)130を経由して、システムGND120に電流が流れる。その際、GNDに断線の傾向が発生した場合、GNDラインの抵抗成分(R0)130は抵抗値が高くなる傾向になると推定できる。そこで、例えば、GND正常時のGNDライン抵抗成分(R0)130=0Ω、GND断線傾向発生時のGNDライン抵抗成分(RO)130=100Ωと仮定すると、GND正常時の交点(a)100の電圧はVcc×(R2+0Ω)/(R1+R2+0Ω)となり、GND断線傾向発生時の交点(a)100の電圧は、Vcc×(R2+100Ω)/(R1+R2+100Ω)となる。このことから、CPU10は、GND正常時とGND断線傾向発生時とを判別することができる。
【0044】
次に、ステップ315において、CPU10は、AD入力ポート11から、交点(a)100に発生した電圧を取り込む。CPU10は、この取込んだ電圧を、正常時の電圧と比較し、取込んだ電圧が正常時の電圧よりも高かった場合、ステップ316に進む。
【0045】
次に、ステップ316において、CPU10は、GNDが「断線傾向あり」と診断する。
【0046】
本実施形態ではGND断線傾向発生時のGNDライン抵抗成分(R0)130を100Ωと仮定して説明したが、本技術を適用する車載制御装置が搭載されるシステム構成により、適切な判定値を任意で選定できるのは言うまでもない。
【0047】
次に、
図3(C)を参照して、完全なGND断線が発生した場合の動作の動作フロー320について説明する。
【0048】
まず、ステップ321~ステップ323までは、
図3(A)のステップ301~ステップ303までと同じ処理なので説明を省略する。
【0049】
次に、ステップ324において、トランジスタ(T1)70がONすることで、一定の電圧を有する定電源(Vcc)20から、抵抗(R1)30と抵抗(R2)40とGNDラインの抵抗成分(R0)130を経由して、システムGND120に電流が流れる。その際、GNDが完全に断線した場合、GNDラインの抵抗成分(R0)130は抵抗=無限大になる。この場合、交点(a)100の電圧は、定電源(Vcc)20と同一になる。このことから、例えば、CPU10は、GND断線時の交点a100の判定電圧を前述のGND断線傾向発生時の判定電圧より高く、かつ、定電源Vcc20の電圧より低い判定電圧に設定することで、GND断線傾向発生時とGND完全断線時を誤判断することなく、切り分けて判定することができる。
【0050】
次に、ステップ325において、CPU10は、AD入力ポート11から、交点(a)100に発生した電圧を取り込む。CPU10は、この取込んだ電圧があらかじめ設定したGND完全断線時の電圧の範疇であれば、GNDが「完全断線」と診断する。
【0051】
本実施形態によれば、車載制御装置1において、GND110の断線の傾向を検知し、車載制御装置1のGNDが完全に断線する前に、断線の傾向を検知し適切な処理をすることが可能となるため、より高度な故障検知処理を実現する
上記したステップ304および305、ステップ315および316、並びにステップ324および325の処理は、電圧取込部で取り込んだ電圧に基づきGNDの正常、断線傾向、及び完全断線を切り分けて診断する診断部の一例である。
【0052】
なお、本発明による車載制御装置は、例えば、CPU10と、CPU10のAD入力ポート(端子)11と、CPU10のDO出力ポート(端子)12と、DO出力ポート(端子)12でON/OFF可能なトランジスタ(T1)70と、定電圧Vcc20が複数の抵抗を介し、トランジスタ(T1)70のソース端子に接続され、前述の複数の抵抗の分圧電圧をCPU10のAD入力ポート11に入力され、トランジスタ(T1)70のドレイン端子が、車載制御装置1のGND端子110に接続され、車載制御装置1のGND端子110が抵抗成分(R0)130を有するGNDラインがシステムGND120に接続され、前述のトランジスタ(T1)70をON/OFFした際、GNDラインの抵抗成分(R0)の抵抗値により、前記複数の抵抗の分圧電圧が変化することを特徴とする。
【0053】
なお、本発明による車載制御装置は、GNDラインの抵抗成分(R0)が実際に変化しなくても、事前に構成されたGND検出回路の動作が正常に作動することが確認可能なことを特徴とする。
【0054】
なお、本発明による車載制御装置は、GNDラインが完全に断線する直前の抵抗成分(R0)の抵抗値変化をモニタすることで、GNDラインが完全に断線する以前にその傾向を検知できることを特徴とする。
【0055】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…車載制御装置、10…CPU、11…AD入力ポート、12…DO出力ポート、20…定電源(Vcc)、30…抵抗(R1)、40…抵抗(R2)、50…抵抗(R3)、60…コンデンサ(C1)、70…トランジスタ(T1)、80…抵抗(R4)、90…抵抗(R5)、100…交点a、110…GND端子、120…システムGND、130…抵抗成分(R0)