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特開2022-190847ゴムラテックス配合物、手袋の製造方法及び手袋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190847
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ゴムラテックス配合物、手袋の製造方法及び手袋
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/02 20060101AFI20221220BHJP
   A41D 19/04 20060101ALI20221220BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20221220BHJP
   A41D 19/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221220BHJP
   C08L 101/14 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L21/02
A41D19/04 B
A41D19/015 610Z
A41D19/00 P
C08K3/04
C08L101/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099314
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】591161900
【氏名又は名称】ショーワグローブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】岸原 英敏
【テーマコード(参考)】
3B033
4J002
【Fターム(参考)】
3B033AA27
3B033AB10
3B033AB14
3B033AC03
3B033AC04
3B033BA01
4J002AB033
4J002AC011
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC091
4J002BC072
4J002BE023
4J002BG041
4J002BH012
4J002CK021
4J002DA036
4J002EV257
4J002FD116
4J002FD317
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】本発明は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造可能なゴムラテックス配合物の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係るゴムラテックス配合物は、ゴムラテックスを主成分とする手袋用のゴムラテックス配合物であって、カーボンブラックと、アニオン系界面活性剤と、非イオン系分散剤と、水溶性高分子とが添加されており、上記カーボンブラックのDBP吸油量が250ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ揮発分が0.3質量%以上1.0質量%未満であり、上記カーボンブラック100質量部に対する上記水溶性高分子の添加量が、8質量部以上50質量部以下であり、上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量が、38質量部以上200質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムラテックスを主成分とする手袋用のゴムラテックス配合物であって、
カーボンブラックと、アニオン系界面活性剤と、非イオン系分散剤と、水溶性高分子とが添加されており、
上記カーボンブラックのDBP吸油量が250ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ揮発分が0.3質量%以上1.0質量%未満であり、
上記カーボンブラック100質量部に対する上記水溶性高分子の添加量が、8質量部以上50質量部以下であり、
上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量が、38質量部以上200質量部以下であるゴムラテックス配合物。
【請求項2】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量が、0.6質量部以上9.5質量部以下である請求項1に記載のゴムラテックス配合物。
【請求項3】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記アニオン系界面活性剤の添加量が、0.05質量部以上1.0質量部以下である請求項1又は請求項2に記載のゴムラテックス配合物。
【請求項4】
上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤の質量比が、0.2以上285以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のゴムラテックス配合物。
【請求項5】
上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計質量比が、0.5以上300以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のゴムラテックス配合物。
【請求項6】
手型を凝固剤溶液へ浸漬する第1浸漬工程と、
上記第1浸漬工程後の手型をゴムラテックス配合物へ浸漬する第2浸漬工程と、
上記第2浸漬工程後の手型を乾燥させる乾燥工程と
を備え、
上記ゴムラテックス配合物が、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のゴムラテックス配合物である手袋の製造方法。
【請求項7】
少なくとも第2指領域の掌側の外面に露出する導電部を備え、
上記導電部が、ゴムを主成分とし、かつカーボンブラックが添加されており、
上記ゴム100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量が、0.6質量部以上9.5質量部以下であり、
上記導電部の表面抵抗値が、10Ω以上10Ω以下である手袋。
【請求項8】
繊維製の編み手袋本体を備え、
上記編み手袋本体が、導電性繊維を含み、
上記導電部が、上記編み手袋本体の外面側に積層されている請求項7に記載の手袋。
【請求項9】
上記導電部の体積抵抗値が、10Ω以上10Ω以下である請求項7又は請求項8に記載の手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムラテックス配合物、手袋の製造方法及び手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用、工業用を問わずタッチパネルにより操作するデバイスが増加している。このようなタッチパネルとしては、静電容量式で動作するものが一般的である。静電容量式タッチパネルは、人体(例えば指先)とタッチパネルとの間で電荷が移動することによる容量結合により動作する。このため、例えば手袋を着用していると、この容量結合が弱まり、タッチパネルの反応性が低下する場合がある。
【0003】
タッチパネルの反応性を低下させないためには、手袋に導電性を付与し、手袋と近接又は接触するタッチパネルに対して静電容量や電界、磁界等を変化させ、タッチ位置として検知させる必要がある。導電性を付与した手袋としては、ゴムラテックスに酸性処理カーボンブラックを配合したゴムラテックス配合物を用いて加熱成形した手袋が公知である(特開2003-321581号公報参照)。
【0004】
カーボンブラックは、添加量が多くなると、手袋被膜が硬くなり易い。手袋被膜が硬くなると、手袋の屈曲性が低下し、物を掴みにくいといった作業性の問題が生じる。このゴムラテックス配合物では、酸性処理カーボンブラックを用いることで、配合物の状態でカーボンブラックが凝集化、ゲル化することを抑止し、比較的少ない添加量で低抵抗化を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-321581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のゴムラテックス配合物で、タッチパネルの反応性を低下させない程度に低抵抗化を図るためには、ゴムラテックス100質量部に対するカーボンブラックの配合量を例えば20質量部以上とする必要が生じる。一方で、タッチパネルの操作に対して成形される手袋には高い柔軟性が求められる。このため、さらにカーボンブラックの配合量を低減した手袋が求められている。
【0007】
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものであり、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造可能なゴムラテックス配合物、このゴムラテックス配合物を用いた手袋の製造方法及びタッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少ないカーボンブラックの添加量で高い導電性を得るには、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路を多数確保する必要がある。この導電通路の確保に対し、本発明者は、ゴムラテックス中でのカーボンブラックの配合安定性の向上、すなわちカーボンブラックを原因とする凝集化、ゲル化を抑止し、分散性を向上させることに着目した。一般に、導電性のカーボンブラックはゴムラテックス中で不安定であり、配合安定性が悪い。その結果、ゴムラテックス及びカーボンブラックを含むゴムラテックス配合物を用いて成形される被膜中ではカーボンブラックを原因とする凝集が生じ易く、カーボンブラック同士が連なって延び難い。つまり、導電通路の確保が困難となる。このため、所望の導電性を得るには、カーボンブラックの多量添加を必要としていると考えられる。これに対し、本発明者は、アニオン系界面活性剤と、非イオン系分散剤と、水溶性高分子とを適度に加えることで、カーボンブラックの配合安定性が著しく向上し、被膜の導電性を向上できることをつきとめ、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の一態様に係るゴムラテックス配合物は、ゴムラテックスを主成分とする手袋用のゴムラテックス配合物であって、カーボンブラックと、アニオン系界面活性剤と、非イオン系分散剤と、水溶性高分子とが添加されており、上記カーボンブラックのDBP吸油量が250ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ揮発分が0.3質量%以上1.0質量%未満であり、上記カーボンブラック100質量部に対する上記水溶性高分子の添加量が、8質量部以上50質量部以下であり、上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量が、38質量部以上200質量部以下である。
【0010】
当該ゴムラテックス配合物は、DBP吸油量及び揮発分が上記範囲内のカーボンブラックを含むので、配合安定性を高めるとともに成形される被膜の導電性を確保し易い。また、当該ゴムラテックス配合物は、上記添加量を満たす非イオン系分散剤及び水溶性高分子が添加されており、さらにアニオン系界面活性剤を添加している。この配合により当該ゴムラテックス配合物におけるカーボンブラックの配合安定性を高めることができる。このため、当該ゴムラテックス配合物を用いて成形される被膜では、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路を確保し易く、少ない添加量で高い導電性を示す。従って、当該ゴムラテックス配合物を用いることで、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造することができる。
【0011】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量としては、0.6質量部以上9.5質量部以下が好ましい。このようにカーボンブラックの添加量を上記範囲内とすることで、成形される被膜の高い柔軟性を維持しつつ、導電性を高めることができる。
【0012】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記アニオン系界面活性剤の添加量としては、0.05質量部以上1.0質量部以下が好ましい。このように上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記アニオン系界面活性剤の添加量を上記範囲内とすることで、当該ゴムラテックス配合物の経時安定性や手袋の製造の容易性を確保しつつ、導電性を高められる。
【0013】
上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤の質量比としては、0.2以上285以下が好ましい。このように上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤の質量比を上記範囲内とすることで、当該ゴムラテックス配合物の経時安定性、カーボンブラックの分散性及び手袋製造の容易性を確保しつつ、製造される手袋の導電性を高められる。
【0014】
上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計質量比としては、0.5以上300以下が好ましい。このように上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤との合計質量比が上記範囲内となるように水溶性高分子を添加することで、カーボンブラックの配合安定性及び導電性をさらに高めることができる。
【0015】
本発明の別の一態様に係る手袋の製造方法は、手型を凝固剤溶液へ浸漬する第1浸漬工程と、上記第1浸漬工程後の手型をゴムラテックス配合物へ浸漬する第2浸漬工程と、上記第2浸漬工程後の手型を乾燥させる乾燥工程とを備え、上記ゴムラテックス配合物が、本発明のゴムラテックス配合物である。
【0016】
当該手袋の製造方法は、本発明のゴムラテックス配合物を用いるので、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路を確保し易く、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造することができる。
【0017】
本発明のさらに別の一態様に係る手袋は、少なくとも第2指領域の掌側の外面に露出する導電部を備え、上記導電部が、ゴムを主成分とし、かつカーボンブラックが添加されており、上記ゴム100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量が、0.6質量部以上9.5質量部以下であり、上記導電部の表面抵抗値が、10Ω以上10Ω以下である。
【0018】
当該手袋は、上記導電部のカーボンブラックの添加量が上記範囲内でありながら、上記導電部の表面抵抗値が上記範囲内の高い導電性を有する。つまり、当該手袋では、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路が多数確保されていると考えられる。このため、当該手袋は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する。
【0019】
繊維製の編み手袋本体を備え、上記編み手袋本体が、導電性繊維を含み、上記導電部が、上記編み手袋本体の外面側に積層されているとよい。このように導電性繊維を含む編み手袋本体と上記導電部とを組み合わせることで静電気放電(ESD、Electro-static discharge)が抑えられるため、可燃性のガス、蒸気、粉塵等による火災や爆発を防止する防爆性を高めることができる。
【0020】
上記導電部の体積抵抗値としては、10Ω以上10Ω以下が好ましい。このように上記導電部の体積抵抗値を上記範囲内とすることで、当該手袋の柔軟性を維持しつつ、高い防爆性を付与することができる。
【0021】
ここで、「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分をいう。「DBP吸油量」とは、カーボンブラック100gが吸収するDBP(ジブチルフタレート)量であり、ASTM D 2414に準拠し、サンプル量9gで測定される量である。
【0022】
また、「カーボンブラックの揮発分」は以下の方法で測定できる。磁性るつぼ(直径15mm、高さ30mm、容量10mL)及び落とし蓋を950±20℃で30分間空焼きした後、デシケータ中で室温(25℃)まで冷却し、上記磁性るつぼ及び上記落とし蓋の質量(MA)を0.1mg単位の精度で秤量した。次いで、カーボンブラック2gを、上記磁性るつぼ中に蓋下2mmを越えない程度に押し詰めて上記落とし蓋をし、その質量(MB)を0.1mg単位の精度で秤量した。その後、電気炉で950±20℃、7分間の加熱を行い、デシケータ中で室温(25℃)まで冷却して、再度、質量(MC)を0.1mg単位の精度で秤量して、以下の式1により揮発分を算出した。
揮発分[質量%]=(MB-MC)/(MB-MA)×100 ・・・1
【0023】
「表面抵抗値」及び「体積抵抗値」は以下の方法で測定できる。導電部が指部に加えて掌部にも存在し、指部と掌部とで導電性が同等である場合は、表面抵抗値及び体積抵抗値は、それぞれEN規格であるEN16350、EN61340-2-3:2016 8に従って測定する。なお、測定試料は、導電性(表面抵抗値)又は防爆性(体積抵抗値)が要求されている部位(例えば指部、以下「測定対象部位」ともいう)から切り出される。ただし、導電部が指部のみの場合や、指部と掌部とで導電性が異なる場合など、測定対象部位から測定試料が採取できない場合は、表面抵抗値はEN16350、EN61340-2-3:2016 10に従って測定し、体積抵抗値はANSI/ESD SP15.1-2005に従って測定する。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明のゴムラテックス配合物は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造することができる。また、このゴムラテックス配合物を用いて製造された手袋及び本発明の手袋は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る手袋の製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る手袋を掌側から見た模式的斜視図である。
図3図3は、図2の手袋を手の甲側から見た模式的斜視図である。
図4図4は、図2とは異なる手袋を掌側から見た模式的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るゴムラテックス配合物、手袋の製造方法及び手袋について詳説する。
【0027】
〔ゴムラテックス配合物〕
本発明の一態様に係るゴムラテックス配合物は、ゴムラテックスを主成分とする手袋用のゴムラテックス配合物である。当該ゴムラテックス配合物は、カーボンブラックと、アニオン系界面活性剤と、非イオン系分散剤と、水溶性高分子とが添加されている。
【0028】
<ゴムラテックス>
上記ゴムラテックスは、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、ウレタンゴム、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム等の単独重合体、共重合体、又はそれらのカルボキシ変性重合体であり、単独又は複数をブレンドしたものである。
【0029】
上記ゴムラテックスは、ゲル分が多い方が配合物中で上記カーボンブラックと安定的に存在する。上記ゴムラテックスのポリマー鎖に分岐が少ない場合にゲル分は減少し、分岐が多い場合にゲル分は増加する。上記ゴムラテックスのゲル分は、NBRの場合、MEK不溶分率として評価できる。上記ゴムラテックスのMEK不溶分率の下限としては10質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、30質量%がさらに好ましい。一方、上記ゴムラテックスのMEK不溶分率の上限としては、80質量%が好ましく、75質量%がより好ましく、73質量%がさらに好ましい。上記ゴムラテックスのMEK不溶分率が上記下限未満であると、当該ゴムラテックス配合物中での上記カーボンブラックの安定性が低下するおそれがある。逆に、上記ゴムラテックスのMEK不溶分率が上記上限を超えると、当該ゴムラテックス配合物による被膜の成膜性が低下するおそれがある。同様にNRの場合、トルエン不要分率として評価することができ、トルエン不要分率の下限としては、50%が好ましい。トルエン不溶分率の上限は、特に限定されないが、90%が好ましく、85%がより好ましい。
【0030】
ここで、MEK不溶分率は、以下の方法で測定できる。まず、ゴムラテックスをイオン交換水で全固形分が30質量%となるように希釈する。この希釈したラテックスを内径10cmのガラスシャーレに5g秤量し、30℃のオーブンで15時間乾燥させ、水分を除去することで、平均厚さ約0.05mmのフィルムを得る。上記フィルムを約5mm角の試験片に細かく切り、質量が約0.2gとなるように試験片を測り取った後、その質量を有効数字4桁で測定する(この質量をW[g]とする)。この試験片をあらかじめ質量を測定している#80の金属メッシュのカゴ(底面約2cm角、約9g)に入れる。次に、メチルエチルケトン(MEK)100mlに、上記試験片の入ったカゴを浸漬し、23℃以上25℃以下で24時間静置する。静置後、MEKから引き上げたカゴを30秒間軽く振って余分なMEKを滴下させる。さらに、上記試験片の入ったカゴを30℃で3時間、続いて105℃で30分乾燥させ、上記試験片の入ったカゴの全質量を測定する。測定済みのカゴの質量との差から乾燥後の試験片の質量を算出する(この質量をB[g]とする)。算出した質量から、以下の式2によりこの試験片に対する個別の不溶分率が求められる。これを4つの試験片に対して実施し、その算術平均を不要分率とする。なお、トルエン不溶分率についても、上述のMEKをトルエンとすることで同様に測定できる。
個別不溶分率[質量%]=B/W×100 ・・・2
【0031】
<カーボンブラック>
使用するカーボンブラックのDBP吸油量の下限としては、250ml/100gであり、300ml/100gがより好ましい。一方、上記カーボンブラックのDBP吸油量の上限としては、600ml/100gであり、500ml/100gがより好ましい。
当該ゴムラテックス配合物では、上記カーボンブラックのDBP吸油量を上記下限以上とするので、カーボンブラックの一次凝集体の凝集構造が導電通路を確保し易くなる。このため当該ゴムラテックス配合物により形成される被膜の導電性(以下、単に「導電性」ともいう)を確保し易い。上記カーボンブラックのDBP吸油量が上記下限未満であると、導電性を得るために上記カーボンブラックを多量に添加する必要が生じ、当該ゴムラテックス配合物により成形される被膜の柔軟性(以下、単に「柔軟性」ともいう)が不足するおそれがある。逆に、上記カーボンブラックのDBP吸油量が上記上限を超えると、上記カーボンブラックの分散性が低下し、配合安定性が低下するおそれがある。なお、DBP吸油量が上記範囲内のカーボンブラックとしては、例えばケッチェンブラック(登録商標)を挙げることができる。
【0032】
上記カーボンブラックのBET比表面積の下限としては、250m/gが好ましく、500m/gがより好ましい。一方、上記カーボンブラックのBET比表面積の上限としては、1500m/gが好ましく、1200m/gがより好ましい。BET比表面積を上記下限以上とすることで、カーボンブラックに細孔が増加し、コンダクティブホールが増加する。また、上記ゴムラテックス中のポリマー分子が上記細孔に入り込むことで上記カーボンブラック同士の距離が近づき、導電性をさらに発現し易くすることができる。逆に、上記カーボンブラックのBET比表面積が上記上限を超えると、上記カーボンブラックの分散性が低下し、配合安定性が低下するおそれがある。なお、「BET比表面積」とは、ASTM D 3037に準拠して測定される値を指す。
【0033】
上記カーボンブラックの揮発分の下限としては、0.3質量%であり、0.4質量%がより好ましい。一方、上記カーボンブラックの揮発分の上限は、1.0質量%未満であり、0.9質量%未満がより好ましい。上記揮発分は、上記カーボンブラックが有するカルボキシル基などの官能基の量に関係する。官能基が少ないほど導電性が高まるが、上記カーボンブラックの結晶性が高まり、配合安定性が低下するおそれがある。すなわち、上記揮発分が上記下限未満であると、上記カーボンブラックの配合安定性が低下するおそれがある。逆に、上記揮発分が上記上限以上であると、導電性が低下するおそれがある。
【0034】
また、上記カーボンブラックの灰分は、0.9質量%以下が好ましい。灰分、すなわち不純物が少ない方が導電性を高められる。上記カーボンブラックの灰分の下限値は特に限定されず、0質量%であってもよいが、通常0.01質量%程度である。なお、「カーボンブラックの灰分」は、ASTM D 1506に準拠して測定される値を指す。
【0035】
上記カーボンブラックのpHは、6以上10以下が好ましい。上記カーボンブラックのpHを上記範囲内とすることで、導電性を高められる。なお、上記カーボンブラックのpHは下記の方法で測定できる。カーボンブラック1g±0.01gを0.01g単位の精度で秤量して20mLビーカーに採取後、1mLのエチルアルコールと、あらかじめ沸騰させた蒸留水10mLとを加え、カーボンブラックの分散液とし、時計皿で蓋をして、25℃の恒温室にて60分間放冷した。上記分散液が25℃になっていることを確認し、pH標準液4、7、9で公正したpHメーターを用いて、測定開始から1分後の指示値を読み取り、pH値とした。
【0036】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量の下限としては、0.6質量部が好ましく、2質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましい。一方、上記カーボンブラックの添加量の上限としては、9.5質量部が好ましく、8質量部がより好ましく、7質量部がさらに好ましい。上記カーボンブラックの添加量が上記下限未満であると、導電性が不十分となるおそれがある。逆に、上記カーボンブラックの添加量が上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。
【0037】
上記カーボンブラックは、水分散体として用意されていることが好ましい。すなわち、上記カーボンブラックは、詳細は後述する上記非イオン系分散剤を用いて分散され、その後、上記ゴムラテックスと混合されることが好ましい。このように上記カーボンブラックを上記非イオン系分散剤で分散させ、その後上記ゴムラテックスと混合することで、当該ゴムラテックス配合物における上記カーボンブラックの分散安定性を向上することができる。このカーボンブラックの分散安定性は、導電性に大きく寄与し、分散安定性が悪いと上記カーボンブラックを原因とする凝集が発生し易くなる。これは当該ゴムラテックス配合物から得られる手袋の導電性の低下につながり、ひいては上記カーボンブラックの添加量増加を招き、上記手袋を硬化させる。上記手袋の硬化は、上記手袋が対象物すなわちタッチパネル等に沿いにくく、すなわちその硬さによりタッチパネルを反応させるための接触面積が小さくなることを意味し、タッチパネルの反応性の低下につながる。
【0038】
上記水分散体において、上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤の添加量の下限としては、30質量部が好ましく、40質量部がより好ましく、50質量部がさらに好ましい。一方、上記非イオン系分散剤の添加量の上限としては、150質量部が好ましく、140質量部がより好ましく、130質量部がさらに好ましい。上記非イオン系分散剤の添加量が上記下限未満であると、上記カーボンブラックを安定して分散させることができず、上記カーボンブラックを原因とする凝集が発生して導電性が低下するおそれがある。逆に、上記非イオン系分散剤の添加量が上記上限を超えると、手袋への成形が困難となるおそれがある。
【0039】
<アニオン系界面活性剤>
上記アニオン系界面活性剤は、上記ゴムラテックスの安定性を高め、上記カーボンブラックを原因とする凝集の発生を抑止することができる。アニオン系界面活性剤が添加されていない場合、上記ゴムラテックスの安定性が不十分となり、上記カーボンブラックを加えた際にその凝集が発生したり、粘度が上昇してゴムラテックス配合物として使用できなかったり、塩凝固法で被膜を作る際の成膜性が悪化したりする傾向がある。
【0040】
上記アニオン系界面活性剤としては、公知のものを使用でき、例えば脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチルアルキル硫酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などを挙げることができる。
【0041】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記アニオン系界面活性剤の添加量の下限としては、0.05質量部が好ましく、0.1質量部がより好ましく、0.2質量部がさらに好ましい。一方、上記アニオン系界面活性剤の添加量の上限としては、1.0質量部が好ましく、0.8質量部がより好ましく、0.7質量部がさらに好ましい。上記アニオン系界面活性剤の添加量が上記下限未満であると、カーボンブラックを原因とする凝集、それに伴う導電性の低下、当該ゴムラテックス配合物の経時安定性の低下等が発生するおそれがある。逆に、上記アニオン系界面活性剤の添加量が上記上限を超えると、上記ゴムラテックスの安定性が高まり過ぎ、かえって凝固性が低下して手袋の製造が困難になるおそれがある。
【0042】
<非イオン系分散剤>
当該ゴムラテックス配合物では、非イオン系分散剤を使用する。非イオン系の分散剤は、上記カーボンブラックに対する安定性が高い。
【0043】
上記非イオン系分散剤としては、公知のものを使用でき、例えば変性アクリルポリマー、ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステルやアルキルエーテル等、又はそれらの誘導体、スチレンやα-メチルスチレンなどのスチレン類とアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、スチレン類と無水マレイン酸の共重合体などが挙げられる。中でもスチレンやα-メチルスチレンなどのスチレン類とアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体、例えばスチレン-メトキシポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、もしくはスチレン類と無水マレイン酸との共重合体、例えばスチレン-無水マレイン酸共重合体が好ましい。
【0044】
カーボンブラックを添加したゴムラテックスの配合物の安定性は、上記ゴムラテックスの安定化のためのアニオン系界面活性剤と、カーボンブラックの安定化のための非イオン系分散剤の比率に依存する傾向があることを、本発明者は知得している。すなわち、上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤の質量比の下限としては、0.2が好ましく、1.0がより好ましく、2.5がさらに好ましい。一方、上記非イオン系分散剤の質量比の上限としては、285が好ましく、110がより好ましく、45がさらに好ましい。上記非イオン系分散剤の質量比を上記下限以上とすることで、当該ゴムラテックス配合物の経時安定性、カーボンブラックの分散性及び手袋製造の容易性を確保し易くすることができる。また、上記非イオン系分散剤の質量比が上記下限未満であると、当該ゴムラテックス配合物中で上記カーボンブラックを原因とする凝集が発生し、導電性が低下するおそれがある。逆に、上記非イオン系分散剤の質量比が上記上限を超えると、成膜時にカーボンブラック同士が連なることを阻害し、十分な導電通路が形成されないおそれがある。
【0045】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記非イオン系分散剤の添加量の下限としては、0.6質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。一方、上記非イオン系分散剤の添加量の上限としては、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましい。上記非イオン系分散剤の添加量が上記下限未満であると、当該ゴムラテックス配合物中で上記カーボンブラックを原因とする凝集が発生し、導電性が低下するおそれがある。逆に、上記非イオン系分散剤の添加量が上記上限を超えると、成膜時にカーボンブラック同士が連なることを阻害し、十分な導電通路が形成されないおそれがある。
【0046】
<水溶性高分子>
当該ゴムラテックス配合物における上記カーボンブラックの安定性は、上記水溶性高分子を添加することで、さらに高めることができる。特に上記カーボンブラックとしてDBP吸油量が大きいカーボンブラックを用いる場合、上記カーボンブラックの連なりが長くなり易く、当該ゴムラテックス配合物の粘度が高くなる傾向にある。上記水溶性高分子はこのような場合に上記カーボンブラックを安定化させる効果を奏する。
【0047】
なお、上記カーボンブラックが水分散体として用意されている場合、上記非イオン系分散剤を用いて分散されているとよいことを述べた。一方、この水溶性高分子は、上記水分散体が上記ゴムラテックスに混合される前に、上記ゴムラテックスと混合されていることが好ましい。つまり、上記非イオン系分散剤と上記水溶性高分子とを添加することで、上記水分散体での上記カーボンブラックの安定性を高めるための非イオン系分散剤の添加量と、当該ゴムラテックス配合物での上記カーボンブラックの安定性を高めるための上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量とを独立して制御できるようになる。従って、当該ゴムラテックス配合物における上記カーボンブラックの安定性を高め易い。
【0048】
上記水溶性高分子としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ-N,N-ジメチルアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレン、ポリ(2-メトキシエトキシエチレン)、ポリビニルスルホン酸、ポリビニリデンフルオライド、アミロース、アラビアゴム、カゼイン、アルギン酸、またはそれらの塩などが挙げられる。中でも当該ゴムラテックス配合物を用いて成膜した後、洗浄により取り除くことが容易なカルボキシメチルセルロース及びポリビニルアルコールが好ましい。なお、上記ゴムラテックスがNBRを含む場合、成膜加工性の観点からポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0049】
上記高分子化合物としてポリビニルアルコールを用いる場合、部分ケン化(ケン化度88mol%以下)、中間ケン化(ケン化度88mol%超98mol%以下)又は完全ケン化(ケン化度98mol%超)されたものを用いることができるが、ポリビニルアルコールの溶解性と当該ゴムラテックス配合物の粘度との関係から中間ケン化されたものが好ましい。
【0050】
上記アニオン系界面活性剤に対する上記水溶性高分子の質量比の下限としては、0.06が好ましく、0.25がより好ましく、0.5がさらに好ましい。一方、上記水溶性高分子の質量比の上限としては、60が好ましく、15がより好ましく、10がさらに好ましい。上記水溶性高分子の質量比が上記下限未満であると、上記水溶性高分子を添加する効果が十分に得られないおそれがある。逆に、上記水溶性高分子の質量比が上記上限を超えると、当該ゴムラテックス配合物の安定性が高くなり過ぎ、手袋成形時に配合物のたれが発生し、成形性が悪化するおそれがある。
【0051】
上記水溶性高分子は、上記カーボンブラックによって当該ゴムラテックス配合物が不安定化することを防止している。つまり、当該ゴムラテックス配合物中での上記カーボンブラックの安定性は、上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量で決まると考えられる。上記アニオン系界面活性剤に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計質量比の下限としては、0.5が好ましく、2がより好ましく、4がさらに好ましい。一方、上記合計質量比の上限としては、300が好ましく、120がより好ましく、50がさらに好ましい。上記合計質量比が上記下限未満であると、上記カーボンブラックの安定性が低下し凝集物が発生し、導電性が低下するおそれがある。逆に、上記合計質量比が上記上限を超えると、上記カーボンブラックの安定性が高くなり過ぎ、手袋成形時に配合物のたれが発生し、成形性が悪化するおそれがある。
【0052】
また、上記カーボンブラック100質量部に対する上記水溶性高分子の添加量の下限としては、8質量部であり、9質量部がより好ましい。一方、上記水溶性高分子の添加量の上限としては、50質量部であり、18質量部がより好ましい。上記水溶性高分子の添加量が上記下限未満であると、当該ゴムラテックス配合物中で上記カーボンブラックを原因とする凝集が生じ易くなるおそれがある。逆に、上記水溶性高分子の添加量が上記上限を超えると、手袋成形時に配合物のたれが発生し、成形性が悪化するおそれがある。
【0053】
上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記水溶性高分子の添加量の下限としては、0.06質量部が好ましく、0.2質量部がより好ましく、0.3質量部がさらに好ましい。一方、上記水溶性高分子の添加量の上限としては、3質量部が好ましく、1.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。上記水溶性高分子の添加量が上記下限未満であると、当該ゴムラテックス配合物中で上記カーボンブラックを原因とする凝集が生じ易くなるおそれがある。逆に、上記水溶性高分子の添加量が上記上限を超えると、上記カーボンブラックの安定性が高くなり過ぎ、手袋成形時に配合物のたれが発生し、成形性が悪化するおそれがある。
【0054】
上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量の下限としては、38質量部であり、50質量部がより好ましい。一方、上記合計添加量の上限としては、200質量部であり、150質量部がより好ましい。上記合計添加量が上記下限未満であると、当該ゴムラテックス配合物中で上記カーボンブラックを原因とする凝集が生じ、必要な導電性が得られないおそれがある。そして、過剰添加で導電性を確保する必要が生じ、手袋が硬くなるおそれがある。逆に、上記合計添加量が上記上限を超えると、当該ゴムラテックス配合物の安定性が高まり過ぎるため、手袋成形時に配合物のたれが発生し、成形性が悪化するおそれや、カーボンブラックの導電通路の形成を阻害する恐れがある。
【0055】
当該ゴムラテックス配合物における上記アニオン系界面活性剤、上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の質量比としては、1:0.2以上285以下:0.06以上60以下が好ましく、1:1以上112以下:0.25以上15以下がより好ましく、1:2.5以上45以下:0.5以上10以下がさらに好ましい。また、上記非イオン系分散剤に対する上記水溶性高分子の質量比としては、0.1以上10以下が好ましい。上記アニオン系界面活性剤、上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の質量比を上記範囲内とすることで、当該ゴムラテックス配合物での上記カーボンブラックの安定性を高め、上記カーボンブラックの添加量を増大させることなく、導電性の高い手袋を成形することができる。これにより柔軟で反応性の高い手袋を提供することができる。
【0056】
<その他の添加剤>
当該ゴムラテックス配合物には、加硫剤、加硫促進剤、金属酸化物、金属塩、金属酸化物塩、顔料、老化防止剤、増粘剤、アルカリ安定剤、感熱剤、感熱点降下剤、造膜助剤などの添加剤が添加されていても良い。なお原料を発泡機で泡立てて使用する場合、別途、既知の起泡剤や泡安定剤を添加することも可能である。
【0057】
上記水溶性高分子としてカルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールを添加している場合、塩凝固加工性が低下する傾向があるので、上記金属酸化物の一種である酸化亜鉛を添加すると良い。上記ゴムラテックスの固形分100質量部に対する上記酸化亜鉛の添加量の下限としては、1.0質量部が好ましく1.5質量部がより好ましい。一方、上記酸化亜鉛の添加量の上限としては、5質量部が好ましく、3.5質量部がより好ましい。上記範囲内の添加量の酸化亜鉛を添加することで、凝固加工性の低下を抑止できる。また、感熱剤との併用で熱により粘度が上昇するような配合系とすることが好ましい。
【0058】
また、当該ラテックス配合物の機械的安定性を向上させるために、アルカリ安定剤を加えることで、pHを9.0以上11.2以下とするとよい。上記アルカリ安定剤としては、水酸化カリウムやアンモニア等を挙げることができる。
【0059】
<ゴムラテックス配合物の製造方法>
当該ゴムラテックス配合物は、上記ゴムラテックスに、上記カーボンブラック、上記アニオン系界面活性剤、上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子を添加する工程を備える製造方法により、製造することができる。
【0060】
上記ゴムラテックスは、予め希釈により低粘度に調整することが好ましい。このように低粘度化することで、上記カーボンブラックを分散し易くすることができる。
【0061】
上記カーボンブラック、上記アニオン系界面活性剤、上記非イオン系分散剤を添加する前における上記調整後のゴムラテックスの粘度の上限としては、B型粘度計を用いた測定において1000mPa・sが好ましく、500mPa・sがより好ましい。一方、希釈量によっては固形分の割合が低下し、成形時の被膜の厚さが薄くなるが、加工性に影響がない限り特に限定されない。上記調整後のゴムラテックスの粘度の下限としては、例えば10mPa・sとできる。
【0062】
上述のように上記カーボンブラックは、上記非イオン系分散剤を用いて分散された水分散体として用意されていることが好ましい。また、上記ゴムラテックスへの添加は、上記水溶性高分子、上記カーボンブラック及び上記非イオン系分散剤を含む水分散体の順に行われることが好ましい。上記アニオン系界面活性剤の添加順序は特に限定されないが、水溶性高分子添加前が好ましい。
【0063】
その他の添加剤を加える場合は、上記アニオン系界面活性剤の添加の後に添加するとよい。上記水溶性高分子とその他の添加剤との添加順序は問わない。
【0064】
<利点>
当該ゴムラテックス配合物は、DBP吸油量が250ml/100g以上600ml/100g以下であり、かつ揮発分が0.3質量%以上1.0質量%未満のカーボンブラックを含むので、配合安定性を高めるとともに成形される被膜の導電性を確保し易い。また、当該ゴムラテックス配合物は、上記カーボンブラック100質量部に対する上記水溶性高分子の添加量が8質量部以上50質量部以下であり、上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤及び上記水溶性高分子の合計添加量が38質量部以上200質量部以下である非イオン系分散剤及び水溶性高分子が添加されており、さらにアニオン系界面活性剤を添加している。この配合により当該ゴムラテックス配合物におけるカーボンブラックの配合安定性を高めることができる。このため、当該ゴムラテックス配合物を用いて成形される被膜では、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路を確保し易く、少ない添加量で高い導電性を示す。従って、当該ゴムラテックス配合物を用いることで、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造することができる。
【0065】
〔手袋の製造方法〕
本発明の別の一態様に係る手袋の製造方法は、図1に示すように、手型を凝固剤溶液へ浸漬する第1浸漬工程S1と、第1浸漬工程S1後の手型をゴムラテックス配合物へ浸漬する第2浸漬工程S2と、第2浸漬工程S2後の手型を乾燥させる乾燥工程S3とを備える。当該手袋の製造方法は、上記ゴムラテックス配合物が、本発明のゴムラテックス配合物である。
【0066】
[第1実施形態]
当該手袋の製造方法を用いることで、図2及び図3に示すように、それ自体が本発明の一実施形態である手袋1を製造することができる。
【0067】
<手袋>
当該手袋1は、少なくとも第2指領域Aの掌側の外面に露出する導電部1aを備える。具体的には、当該手袋1は、繊維製の編み手袋本体10と、導電部1aを構成する被膜層20とを備えている。
【0068】
(編み手袋本体)
編み手袋本体10は、着用者の掌及び手の甲を覆うよう袋状に形成された本体部10aと、着用者の第1指乃至第5指をそれぞれ覆うよう本体部10aから延設された有底筒状の第1指部乃至第5指部10bと、第1指部乃至第5指部10bとは反対方向に延設された筒状の裾部10cとを有する。
【0069】
編み手袋本体10を構成する糸としては、綿糸、ポリエステル糸、ナイロン糸、ポリエチレン糸、ポリプロピレン糸、アクリル糸、パラアラミド糸、メタアラミド糸、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)糸、超高分子量ポリエチレン糸、延伸ポリエチレン糸、ガラス繊維糸、金属繊維糸、及びそれらの複合糸等が挙げられる。また、伸縮性を付与するために天然ゴム、ポリウレタンなどを素材とする弾性糸も併せて使用することができる。
【0070】
編み手袋本体10を構成する糸には、紡績糸、フィラメント糸又は複合糸等の単糸や双糸などを用いることができる。上記糸として紡績糸を用いる場合、単糸や双糸などを組み合わせた状態の綿番手で3.3番手以上100番手以下に相当する太さの糸を使用することができる。上記糸としてフィラメント糸を用いる場合、単糸や双糸などを組み合わせた状態で、50dtex以上1500dtex以下に相当する太さの糸を使用することができる。紡績糸とフィラメント糸の両方、あるいはこれらの複合糸を使用する場合は、すべての糸を組み合わせた状態で50dtex以上1500dtex以下に相当する太さで使用することができる。
【0071】
編み手袋本体10は、導電性繊維を含むことが好ましい。導電性繊維を含む編み手袋本体10と導電部1aとを組み合わせることで、静電気放電が抑えられるため、可燃性のガス、蒸気、粉塵等による火災や爆発を防止する防爆性を高めることができる。
【0072】
上記導電性繊維としては、カーボン複合有機繊維、金属酸化物複合有機繊維、金属化合物複合有機繊維、金属メッキの有機繊維などを挙げることができ、例えば株式会社クラレ製クラカーボ(登録商標)、株式会社セーレン製ベクトロン(登録商標)、日本蚕毛染色株式会社製サンダーロン(登録商標)、ミツフジ株式会社製AGposs(登録商標)などを用いることができる。
【0073】
(被膜層)
被膜層20、すなわち導電部1aは、編み手袋本体10の外面側に積層されている。導電部1aは、図2及び図3に示す当該手袋1では、編み手袋本体10の掌側の裾部10cの一部を除く全面に形成されているが、少なくとも第2指領域Aの掌側の外面に形成されていればよい。
【0074】
被膜層20は、本発明のゴムラテックス配合物を使用し、それを編み手袋本体10表面に形成し、固めたものであり、発泡構造であることが好ましい。このように発泡構造とすることで、被膜層20の柔軟性が向上し、タッチパネルに沿いやすくなり、タッチパネルの反応性を高められる。
【0075】
被膜層20が発泡構造である場合、被膜層20に含まれる空気含有率といては、10%以上60%以下が好ましい。上記空気含有率を上記下限以上とすることで、柔軟性を高められる。一方、上記空気含有率を上記上限以下とすることで、被膜層20の強度を維持できる。なお、「空気含有率」は、掌中央部分から切り出した試験片の断面をマイクロスコープで100倍以上200倍以下で観察し、被膜部分に含まれる空隙部分の割合から求められる。
【0076】
導電部1aは、ゴムを主成分とし、かつカーボンブラックを有している。
【0077】
上記ゴムの主成分としては、上述した本発明のゴムラテックス配合物に含まれるゴムラテックスのゴム成分と同様のものを挙げることができる。
【0078】
上記カーボンブラックとしては、上述した本発明のゴムラテックス配合物に含まれるカーボンブラックと同様のものを挙げることができる。
【0079】
導電部1aにおける上記ゴム100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量の下限としては、0.6質量部であり、2質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましい。一方、上記カーボンブラックの添加量の上限としては、9.5質量部であり、8質量部がより好ましく、7質量部がさらに好ましい。上記カーボンブラックの添加量が上記下限未満であると、導電性が不十分となるおそれがある。逆に、上記カーボンブラックの添加量が上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。
【0080】
導電部1aの表面抵抗値の下限としては、10Ωであり、10Ωがより好ましい。一方、導電部1aの表面抵抗値の上限としては、10Ωである。導電部1aの表面抵抗値を上記下限未満とするには、上記カーボンブラックの添加量を多くする必要が生じ、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。逆に、導電部1aの表面抵抗値が上記上限を超えると、例えばタッチパネルの反応性が悪化するおそれがある。
【0081】
導電部1aの体積抵抗値の下限としては、10Ωが好ましく、10Ωがより好ましい。一方、導電部1aの体積抵抗値の上限としては、10Ωが好ましい。導電部1aの体積抵抗値を上記下限未満とするには、上記カーボンブラックの添加量を多くする必要が生じ、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。逆に、導電部1aの体積抵抗値が上記上限を超えると、高い防爆性を付与することが困難となるおそれがある。
【0082】
導電部1aの30%伸び時のモジュラスの上限値としては、25N/cmが好ましく、18N/cmがより好ましく、13N/cmがさらに好ましい。上記モジュラスが上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。一方、上記モジュラスの下限値としては、特に限定されないが、手袋としての強度を保たつ観点から、1N/cmが好ましく、2N/cmがより好ましい。なお、「30%伸び時のモジュラス」は、以下の方法で測定できる。手袋の指部から1cm×6cmで試験片を切り出し、40mmの間隔をあけたチャックにセットし、引張速度500mm/minで引っ張り、30%伸びた時のモジュラス値をこの試験片に対する個別の30%伸び時のモジュラスの値とする。これを4つの試験片に対して実施し、その算術平均を30%伸び時のモジュラスとする。
【0083】
導電部1aの平均厚さの下限としては、0.1mmが好ましく、0.15mmがより好ましい。一方、導電部1aの平均厚さの上限としては、1.0mmが好ましく、0.8mmがより好ましく、0.6mmがさらに好ましい。導電部1aの平均厚さが上記下限未満であると、導電部1aの耐摩耗性が低下するおそれや、導電性の確保が困難となるおそれがある。逆に、導電部1aの平均厚さが上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。なお、「平均厚さ」は、掌中央部から指の長さ方向に切り出した試験片の断面を50倍の倍率で観察し、幅4mmの間を200μmの間隔で測定した20点の厚さの算術平均である。
【0084】
<当該手袋の製造方法>
以下、当該手袋1の製造方法の各工程について説明する。
【0085】
(第1浸漬工程)
第1浸漬工程S1では、用意された編み手袋本体10を手型に被せ、この手型を凝固剤溶液に浸漬し、引き上げた後、上記凝固剤溶液の溶媒を揮発させる。用意する編み手袋10としては、上述の糸を13ゲージ以上26ゲージ以下の手袋編機で編成したものを挙げることができる。
【0086】
上記凝固剤溶液としては、公知のもの、例えば多価金属塩や有機酸を含むメタノール溶液や水溶液等を用いることができる。中でも多価金属塩を含むことが好ましい。上記凝固剤溶液に多価金属塩を含ませることで、被膜層20を形成するためのゴムラテックスの編み手袋本体10への過剰な浸透を抑止し易い。
【0087】
上記多価金属塩としては、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛、酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいが、2種以上を組合せて使用することもできる。
【0088】
上記凝固剤溶液における上記多価金属塩の含有量の下限としては、溶媒100質量部に対して0.1質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましい。一方、上記多価金属塩の含有量の上限としては、被膜層20の編み手袋本体10からの剥離を抑止できれば特に限定されないが、溶媒100質量部に対して5質量部が好ましく、4質量部がより好ましい。
【0089】
また、上記有機酸としては、酢酸、クエン酸等を挙げることができる。上記凝固剤溶液における上記有機酸の含有量としては、溶媒100質量部に対して5質量部以上50質量部以下が好ましい。この有機酸は、単独で使用することもできるが、多価金属塩と混合して使用することが好ましい。多価金属塩と混合して使用することで、被膜層20の厚みが薄くなることを抑止できる。また、それぞれを単独で用いる場合よりも上記凝固剤溶液の成膜能力の制御が容易となる。
【0090】
上記手型を上記凝固剤溶液に浸漬させる際の手型の温度としては、編み手袋本体10への凝固剤の浸透の観点から40℃以上70℃以下が好ましい。
【0091】
上記凝固剤溶液への浸漬及び引き上げ後に溶媒を揮発させる温度としては、25℃以上70℃以下が好ましく、溶媒を揮発させる時間(揮発時間)の下限としては、10秒が好ましい。一方、上記揮発時間の上限としては、特に限定されないが、生産性の観点から600秒が好ましい。この溶媒の揮発により次工程におけるゴムラテックスの浸透を制御することができるので、被膜層20が編み手袋本体10の内部まで浸透して手袋内面の触感を低下させることを抑止しつつ、形成された被膜層20が剥離することを防止できる。このゴムラテックスの浸透の制御の観点から、上記揮発時間は、溶媒がメタノールである場合は、10秒以上180秒以下がより好ましく、溶媒が水である場合は、30秒以上600秒以下がより好ましい。
【0092】
(第2浸漬工程)
第2浸漬工程S2では、第1浸漬工程S1後の編み手袋本体10に覆われた手型を当該ゴムラテックス配合物に浸漬し、引き上げる。
【0093】
なお、被覆層20を発泡構造とする場合、当該ゴムラテックス配合物を発泡機で泡立てたものを使用するとよい。
【0094】
(乾燥工程)
乾燥工程S3では、当該ゴムラテックス配合物への浸漬により形成されたラテックス被膜の水分を蒸発させる。この乾燥工程S3は、例えば公知のオーブンを用いて行うことができる。
【0095】
水分を蒸発させる温度としては、50℃以上100℃以下が好ましい。上記温度が上記
下限未満であると、未乾燥のラテックス被膜が垂れてくるおそれがあり、被膜層20が不均一となるおそれがある。逆に、上記温度が上記上限を超えると、急速な乾燥により乾燥ムラが生じ易くなり、被膜層20が不均一となるおそれがある。
【0096】
被膜層20に含有する水分が少なくなったところで、100℃以上140℃以下の温度で固化させる固化ステップを含むことが好ましい。また、上記固化ステップ前に、被膜層20からブリード、ブルーミングした添加剤を水洗にて除去する添加剤除去ステップを乾燥工程に組み込んでも良い。上記添加剤除去ステップで、上記固化ステップの前に水洗することで、編み手袋本体10や被膜層20の変色を防止する点で好ましい。
【0097】
製造効率の観点から、乾燥工程S3で水分を蒸発させる時間としては、10分以上80分以下が好ましく、上記固化ステップで固化させる時間としては、10分以上80分以下が好ましい。
【0098】
なお、第2浸漬工程S2と乾燥工程S3とは、複数回繰り返して行ってもよい。これらの工程を複数回行うことで、形成される被膜層20の均一性が向上する。繰り返し回数としては、製造効率の観点から3回以下が好ましい。
【0099】
<利点>
当該手袋の製造方法は、本発明のゴムラテックス配合物をゴムラテックス配合物とするので、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路を確保し易く、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造することができる。
【0100】
また、当該手袋の製造方法を用いて得られる当該手袋1は、導電部1aのカーボンブラックの添加量が0.6質量部以上9.5質量部以下でありながら、導電部1aの表面抵抗値が10Ω以上10Ω以下の高い導電性を有する。つまり、当該手袋1では、カーボンブラック同士が連なって延びる導電通路が多数確保されていると考えられる。このため、当該手袋1は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する。
【0101】
[第2実施形態]
図1に示す当該手袋の製造方法を用いることで、図4に示す手袋2を製造することもできる。
【0102】
<手袋>
当該手袋2は、少なくとも第2指領域Aの掌側の外面に露出する導電部2aを備える。具体的には、当該手袋2は、導電部2aを構成する被膜30を備えている。
【0103】
被膜30は、着用者の手本体を覆うよう袋状に形成された本体部30aと、着用者の第1指乃至第5指をそれぞれ覆うよう本体部30aから延設された5本の指部30bと、着用者の手首を覆うよう本体部30aから指部30bとは反対方向に延設された筒状の裾部30cとを有する。
【0104】
被膜30すなわち導電部2aは、ゴムを主成分とし、かつカーボンブラックを有している。
【0105】
上記ゴムの主成分としては、上述した本発明のゴムラテックス配合物に含まれるゴムラテックスのゴム成分と同様のものを挙げることができる。
【0106】
上記カーボンブラックとしては、上述した本発明のゴムラテックス配合物に含まれるカーボンブラックと同様のものを挙げることができる。
【0107】
導電部2aにおける上記ゴム100質量部に対する上記カーボンブラックの添加量の下限としては、0.6質量部であり、2質量部がより好ましく、3質量部がさらに好ましい。一方、上記カーボンブラックの添加量の上限としては、9.5質量部であり、8質量部がより好ましく、7質量部がさらに好ましい。上記カーボンブラックの添加量が上記下限未満であると、導電性が不十分となるおそれがある。逆に、上記カーボンブラックの添加量が上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。
【0108】
導電部2aの表面抵抗値の下限としては、10Ωであり、10Ωがより好ましい。一方、導電部2aの表面抵抗値の上限としては、10Ωである。導電部2aの表面抵抗値を上記下限未満とするには、上記カーボンブラックの添加量を多くする必要が生じ、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。逆に、導電部2aの表面抵抗値が上記上限を超えると、例えばタッチパネルの反応性が悪化するおそれがある。
【0109】
導電部2aの体積抵抗値の下限としては、10Ωが好ましく、10Ωがより好ましい。一方、導電部2aの体積抵抗値の上限としては、10Ωが好ましい。導電部2aの体積抵抗値を上記下限未満とするには、上記カーボンブラックの添加量を多くする必要が生じ、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。逆に、導電部2aの体積抵抗値が上記上限を超えると、高い防爆性を付与することが困難となるおそれがある。
【0110】
導電部2aの30%伸び時のモジュラスの上限値としては、12N/cmが好ましく、10N/cmがより好ましく、8N/cmがさらに好ましい。上記モジュラスが上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。一方、上記モジュラスの下限値としては、特に限定されないが、手袋としての強度を保たつ観点から、0.3N/cmが好ましく、0.5N/cmがより好ましい。
【0111】
導電部2aの平均厚さの下限としては、0.06mmが好ましく、0.08mmがより好ましい。一方、導電部1aの平均厚さの上限としては、0.4mmが好ましく、0.3mmがより好ましい。導電部1aの平均厚さが上記下限未満であると、導電部2aの強度が不足するおそれや、導電性の確保が困難となるおそれがある。逆に、導電部1aの平均厚さが上記上限を超えると、柔軟性が不足し、例えばタッチパネルの操作感が悪化するおそれがある。
【0112】
<当該手袋の製造方法>
以下、当該手袋2の製造方法の各工程について説明する。
【0113】
(第1浸漬工程)
第1浸漬工程S1では、手型を直接凝固剤溶液へ浸漬し、引き上げた後、上記凝固剤溶液の溶媒を蒸発させる。
【0114】
上記凝固剤溶液としては、使用する多価金属塩の含有量を溶媒100質量部に対して5質量部以上100質量部以下とする点以外は、第1実施形態で述べた第1浸漬工程S1で用いられる凝固剤溶液と同様のものを用いることができる。また、上記手型を上記凝固剤溶液に浸漬させる際の手型の温度、溶媒を揮発させる温度及び溶媒を揮発させる時間についても、第1実施形態で述べた第1浸漬工程S1と同様とすることができるので、詳細説明を省略する。
【0115】
(第2浸漬工程)
第2浸漬工程S2では、第1浸漬工程S1後の上記手型を当該ゴムラテックス配合物に浸漬し、引き上げる。
【0116】
成形性の観点から1度の浸漬で形成されるラテックス被膜の平均厚さは0.05mm以上0.6mm以下とすることが好ましい。つまり、厚みのある被膜30を形成する場合は、複数回の当該ゴムラテックス配合物への浸漬により被膜30を形成することが好ましい。上記浸漬を複数回行う場合、浸漬間でラテックス被膜の水分の蒸発を行うため、第2浸漬工程S2と後述する乾燥工程S3とを複数回繰り返して行うとよい。
【0117】
(乾燥工程)
乾燥工程S3では、当該ゴムラテックス配合物への浸漬により形成されたラテックス被膜の水分を蒸発させる。乾燥工程S3は、第1実施形態で述べた乾燥工程S3と同様に行うことができる。
【0118】
<利点>
当該手袋の製造方法を用いることで、被膜30のみで構成される手袋2についても、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋とすることができる。
【0119】
[その他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0120】
第1実施形態の手袋の被膜層や第2実施形態の手袋の被膜に凹凸を設けて、当該手袋に滑り止め効果や視覚的効果を付与することもできる。上記被膜層又は上記被膜に凹凸を設ける方法としては、例えば手型に予め所望の凹凸をつけておき、その形状を転写する方法を挙げることができる。
【実施例0121】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、当該発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
[ゴムラテックス配合物]
<No.1>
ゴムラテックスとして、NBRラテックスである日本ゼオン社製「Lx550」を準備した。
【0123】
カーボンブラックとして、導電性カーボンを含む水分散体であるライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「W311N」(導電性カーボンの比表面積は800m/g、DBP吸油量は365ml/100g、揮発分は0.4質量%、pH7)を準備した。上記カーボンブラック水分散体は、非イオン系分散剤を用いて分散されている。上記カーボンブラック100質量部に対する上記非イオン系分散剤の添加量は、102質量部とした。
【0124】
アニオン系界面活性剤として、花王社製「ネオペレックスG-15」(ドデジルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ソフト型))を準備した。また、水溶性高分子として、クラレ社製ポリビニルアルコール「ポバールPVA217」(けん化度88mol%、部分~中間けん化)を準備した。
【0125】
上記NBRラテックスの固形分100質量部に対して、上記アニオン系界面活性剤0.2質量部を16質量%の水溶液として上記NBRラテックスに添加した後、上記水溶性高分子0.3質量部を10質量%水溶液として添加して、10分間の攪拌をした。次に、上記カーボンブラックの水分散体を、上記NBRラテックスの固形分100質量部に対するカーボンブラックの固形分が2.5質量部(非イオン系分散剤は2.6質量部)となるように添加して、30分間の攪拌後、その他の添加剤として、表1に示す添加剤を表1に示す添加量(固形分)で添加し、No.1のゴムラテックス配合物を得た。なお、上記ゴムラテックス配合物の固形分は43質量%であり、残部は水とした。
【0126】
【表1】
【0127】
<No.2~No.24>
ゴムラテックスの種類、カーボンブラックの添加量、水溶性高分子の種類及びその添加量を表3に示すものとした以外は、No.1と同様にして、No.2~No.24のゴムラテックス配合物を得た。
【0128】
なお、表3で、NRゴムラテックスには、SUNWISE社製「LATZ」を用いた。また、NRゴムラテックスを用いる場合、その他の添加剤の種類と添加量(固形分)は表2に示す通りとし、上記ゴムラテックス配合物の固形分は54質量%であり、残部は水とした。
【0129】
【表2】
【0130】
また、水溶性高分子の種類について、PVA217は、No.1で使用した「ポバールPVA217」を示している。PVA117及びPVA424Hは、それぞれクラレ社製ポリビニルアルコールの「ポバールPVA117」(けん化度98mol%、完全けん化)及び「ポバールPVA424H」(けん化度80mol%、部分けん化)である。65SH50及びSM400は、それぞれ信越化学社製メチルセルロースの「メトローズ65SH50」(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)及び「メトローズSM400」(メチルセルロース)である。また、「-」は、水溶性高分子を添加していないことを示す。
【0131】
[評価]
No.1~No.24のゴムラテックス配合物について、機械的安定性及び成膜性を調べた。
【0132】
<機械的安定性>
HEIDON社製BL600撹拌機でタービン型撹拌翼を使用して、23℃のジャケットで一定温度のもと、500gのゴムラッテクス配合物を200rpmで撹拌した。その後、ゴムラテックス配合物がゲル化するまでの時間を目視にて観察し、以下の判断基準で評価した。結果を表3に示す。
(評価基準)
A : 7日以上安定していた。
B : 4日目で凝集した
C : 18時間で凝集した
D : 2時間で凝集した
【0133】
<成膜性>
フィルム状手袋を作製し、その被膜の成膜性を以下の判断基準で評価した。結果を表3に示す。
(評価基準)
A : クラックが認められず、良好である
B : クラックが微細であり、使用上問題がない
C : クラックが生じた
【0134】
なお、手袋の作製は、NBRゴムラテックス配合物とNRゴムラテックス配合物との場合で異なり、以下の手順とした。
【0135】
(NBRゴムラテックス配合物を用いる場合の手袋の作製)
70℃のオーブンで加温した表面コートの無い陶器製の手型を凝固剤(29質量%硝酸カルシウムのメタノール溶液)に浸け、70℃オーブンで1分間乾燥させた。次に上記手型をNBRゴムラテックス配合物に浸漬した後、オーブンにて60℃で1時間、130℃で35分間の乾燥及び加硫を行った。フィルムを上記手型から反転させながら外し、30℃の水で45分間のリーチング後に70℃オーブンにて60分間乾燥させて、目的のフィルム状手袋を得た。
【0136】
(NRゴムラテックス配合物を用いる場合の手袋の作製)
70℃のオーブンで加温した表面コートの無い陶器製の手型を凝固剤(29質量%硝酸カルシウムのメタノール溶液)に浸け、70℃オーブンで1分間乾燥させた。次に上記手型をNRゴムラテックス配合物に浸漬した後、オーブンにて60℃で1時間、115℃で35分間乾燥及び加硫を行った。フィルムを上記手型から外し、30℃の水で45分間のリーチング後に70℃オーブンにて60分間乾燥させて、目的のフィルム状手袋を得た。
【0137】
【表3】
【0138】
表3の結果から、カーボンブラック100質量部に対する水溶性高分子の添加量が、8質量部以上50質量部以下であり、カーボンブラック100質量部に対する非イオン系分散剤及び水溶性高分子の合計添加量が、38質量部以上200質量部以下であるNo.1~No.17のゴムラテックス配合物では、機械的安定性及び手袋の成膜性に優れることが分かる。
【0139】
一方、上記水溶性高分子の添加量が8質量部に満たないNo.18~No.20及びNo.22~No.24のゴムラテックス配合物では、機械的安定性に劣り、上記非イオン系分散剤及び水溶性高分子の合計添加量が200質量部を超えるNo.21では成膜性に劣る。
【0140】
以上から、カーボンブラック100質量部に対する水溶性高分子の添加量を8質量部以上50質量部以下とし、カーボンブラック100質量部に対する非イオン系分散剤及び水溶性高分子の合計添加量を38質量部以上200質量部以下とすることで、機械的安定性及び手袋の成膜性に優れるゴムラテックス配合物が得られると言える。
【0141】
[手袋]
表4に示すゴムラテックス配合物(表3のNo.2のゴムラテックス配合物)を用いて、繊維製の編み手袋本体と、導電部を構成する被膜層とを備えるNo.25の手袋を作製した。手袋の作製手順は以下の通りである。
【0142】
(No.25の手袋の作製)
ウーリーナイロン312dtex(78dtex-24fの双糸を2本)を芯糸とし、カーボン複合有機繊維22dtex-3f(KBセーレン社製の「9R1」)を300T/Mで巻きつけた複合糸を島精機製「N-SFG 13G」を用いて編み手袋本体を編成した。平均厚さは、0.80mmであった。
【0143】
表4に示すNBRゴムラテックス配合物に、増粘剤(東亜合成社製「A-7075」)を用いて、粘度を1500mPa・s(B型粘度計)に調整した。次に、金属製の手型に上記編み手袋本体を被せ、70℃のオーブンで加温した上記手型を凝固剤(1.0質量%硝酸カルシウムメタノール溶液)に浸漬した後、室温で30秒間の乾燥をさせた。続いて、上記手型をNBRゴムラテックス配合物に浸漬し、85℃で20分間の乾燥後に離型し、30℃の水で45分間のリーチングをした後、130℃で35分間の加硫を行い、手型から外して目的の手袋を得た。なお、被膜層の平均厚さは、0.35mmであった。
【0144】
[評価]
No.25及びNo.2の手袋について、表面抵抗、体積抵抗、タッチパネル操作性及び30%伸び時のモジュラスを評価した。
【0145】
(表面抵抗値及び体積抵抗値)
表面抵抗値及び体積抵抗値の測定は、それぞれEN規格であるEN16350、EN61340-2-3:2016 8に従って行った。具体的には、作製した手袋の掌から試験片を切り取り、PROSTAT社製の抵抗測定器「PRS-812」で同心円リング電極を用い、上記規格の表面抵抗値及び体積抵抗値の測定手順に従って接続を行い、表示された抵抗値(Ω)を読み取った。結果を表4に示す。
【0146】
(タッチパネル操作性)
ナイロン製の円柱の棒(断面積16.3mm)に手袋を被せて、Apple社製「i-phone8」の画面とメインスイッチとが作動するか否かを、以下の評価基準で評価した。結果を表4に示す。
(評価基準)
A : ストレスなく動く
B : わずかにストレスを感じる
C : 全く動かない、又は狙ったところをタッチすることが困難である
【0147】
(30%伸び時のモジュラス)
手袋の指部から1cm×6cmで試験片を4つ切り出し、40mmの間隔をあけたチャックにセットし、引張速度500mm/minで引っ張り、30%伸びた時のモジュラス値を測定し、その平均値を30%伸び時のモジュラスとした。結果を表4に示す。
【0148】
【表4】
【0149】
表4の結果から、いずれの形態の手袋も、タッチパネルの操作に優れている。また、30%伸び時のモジュラスは、8N/cm以下であり、高い柔軟性を示している。以上から、本発明のゴムラテックス配合物を用いることで、手袋の形態に依らず、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
以上のように、本発明のゴムラテックス配合物は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する手袋を製造することができる。また、可能なゴムラテックス配合物、このゴムラテックス配合物を用いて製造された手袋及び本発明の手袋は、タッチパネル反応性に優れるとともに、高い柔軟性を有する。
【符号の説明】
【0151】
1、2 手袋
1a、2a 導電部
10 編み手袋本体
10a 本体部
10b 指部
10c 裾部
20 被膜層
30 被膜
30a 本体部
30b 指部
30c 裾部
A 第2指領域
図1
図2
図3
図4