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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190848
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】カバー構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/317 20210101AFI20221220BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M50/317 201
H01M50/325
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099315
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁人
(72)【発明者】
【氏名】小池 英貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】池田 明弘
(72)【発明者】
【氏名】有馬 俊輔
【テーマコード(参考)】
5H012
【Fターム(参考)】
5H012BB08
5H012CC10
5H012GG05
5H012JJ10
(57)【要約】
【課題】ガス排出部に液体が直接掛かるのを抑制するとともに、ガス排出部から排出されたガスの円滑な放出を可能にすることである。
【解決手段】カバー構造は、車両用電池パックの筐体内で発生したガスを排出するガス排出部と、ガス排出部を覆うように設けられるカバー部材と、を備える。カバー部材の上縁部と、筐体の側面のうちガス排出部の上方に延在する上方領域と、の間には、上方に開口する第1開口部が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電池パックの筐体の側面に配設される、当該筐体内で発生したガスを排出するガス排出部と、
前記筐体の側面において、前記ガス排出部を覆うように設けられるカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材の上縁部と、前記筐体の側面のうち前記ガス排出部の上方に延在する上方領域と、の間には、上方に開口する第1開口部が形成される、
車両用電池パックのガス排出部のカバー構造。
【請求項2】
前記カバー部材の下縁部と、前記筐体の側面のうち前記ガス排出部の下方に延在する下方領域と、の間で下方に開口する第2開口部が形成され、
前記ガス排出部の下方には、前記第2開口部と連なるように形成される下壁部が設けられている、請求項1に記載のカバー構造。
【請求項3】
前記第2開口部の開口面積は、前記第1開口部の開口面積よりも小さい、請求項2に記載のカバー構造。
【請求項4】
前記下壁部は前記第2開口部に向けて下り勾配に傾斜する、請求項2又は3に記載のカバー構造。
【請求項5】
前記ガス排出部は、前記筐体の側面に対して筐体外方に移動して前記ガスを排出するように構成された弁体を含み、
前記カバー部材の、前記ガス排出部から離間して、前記筐体の側面のうち少なくとも前記ガス排出部と対向する対向壁部は第3開口部を備え、
前記第3開口部の少なくとも一部は、前記弁体の移動方向と平行な軸方向視において、前記弁体の外周縁部よりも内側に配設される、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、正極と負極と電解質とを内部に密封するケース本体を有するとともに、該ケース本体の内圧が予め設定された規定圧力となったときに開裂して、該ケース本体の内圧を外部に放出する安全弁が、該ケース本体に設けられてなる二次電池用ケースを開示している。安全弁は、ケース本体の内側に膨出したドーム形状を呈する、該ケース本体よりも薄肉の薄肉部を有して構成されている。また、該ケース本体の内圧が規定圧力となったときに開裂する開裂溝が、該薄肉部の厚さ方向一方の面のみに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5990064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筐体内で発生したガスを排出し、当該ガスを車両外部に放出するためのガス排出部を備える車両用電池パックでは、高圧洗車機による洗車の際や、車両が濡れた路面を走行する際に、動水圧の高い水、又は洗浄液等の液体がガス排出部に向けて射出され、当該液体がガス排出部に直接掛かるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、ガス排出部に液体が直接掛かるのを抑制するとともに、ガス排出部から排出されたガスの円滑な放出を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るカバー構造では、車両用電池パックの筐体内で発生したガスを排出するガス排出部と、ガス排出部を覆うように設けられるカバー部材と、を備える。カバー部材の上縁部と、筐体の側面のうちガス排出部の上方に延在する上方領域と、の間には、上方に開口する第1開口部が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガス排出部に液体が直接掛かるのを抑制するとともに、ガス排出部から排出されたガスの円滑な放出を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るカバー構造について説明するための図であり、車両における車両用電池パック、ガス排出部、及びカバー部材の配設関係を示す模式的部分背面図である。
図2】実施形態に係るカバー構造について説明するための図であり、車両用電池パック車両後方側の車幅方向左方側におけるガス排出部、及びカバー部材の配設関係を示す模式的部分背面図である。
図3】実施形態に係るカバー構造の、車両用電池パックのロアーケースの構造を示す部分平面図である。
図4】実施形態に係るカバー構造における、車両用電池パックのロアーケースの構造を示す部分斜視図である。
図5】実施形態に係るカバー構造における、ロアーケース、及びガス排出部の配設関係を示す部分斜視図である。
図6】実施形態に係るカバー構造の、車両用電池パック車両後方側の車幅方向左方側におけるロアーケース、ガス排出部、及びカバー部材の配設関係を示す部分斜視図であり、図5のガス排出部をカバー部材で覆った状態を示す図である。
図7】実施形態に係るカバー構造の、車両用電池パック車両後方側の車幅方向左方側における、通常状態でのロアーケース、ガス排出部、及びカバー部材の配設関係を示す、図6のA-A線に沿った部分断面図である。
図8】実施形態に係るカバー構造の、車両用電池パック車両後方側の車幅方向左方側における、高圧状態でのロアーケース、ガス排出部、及びカバー部材の配設関係を示す、図7に相当する部分断面図である。
図9】実施形態に係るカバー構造の、車両用電池パック車両後方側の車幅方向左方側におけるロアーケース、及びガス排出部の配設関係を示す部分背面図である。
図10】実施形態に係るカバー構造の、車両用電池パック車両後方側の車幅方向左方側におけるロアーケース、ガス排出部、及びカバー部材の配設関係を示す部分背面図であり、図9に係るガス排出部をカバー部材で覆った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係るカバー構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方を、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車両上下方向上方、下方のそれぞれを示す。また、車幅方向における車両中心側を車幅方向内方といい、車幅方向内方とは反対側を車幅方向外方という。各図中では車幅方向内方をISで示し、車幅方向外方をOSで示す。なお、以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車両上下方向上方、下方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「上方」「下方」と称する。なお、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態に係るカバー構造は、例えば図1に示す、図示しない電動モータにより駆動する電気自動車である車両Vの駆動用電力を供給する車両用電池パック1に用いられる。車両用電池パック1は車両Vの下方側に配設される。
【0011】
図2に示すように、車両用電池パック1の筐体5の側面9のうち、車両後方側の側面には、筐体5の内部で発生したガスを排出するガス排出部10が配設されている。筐体5に内蔵された電池モジュールからガスが発生すると、当該ガスはガス排出部10から車両V外部に排出される。
【0012】
車両用電池パック1は、図示しない電池モジュールを収容する外装部材としての筐体5を有する。筐体5は、中空の方形箱形の形状を有し、1以上の単電池を内蔵した電池モジュールを内部に収納する。例示した筐体5は、全体として車両上下方向の寸法が車両前後方向又は車幅方向の寸法に比べて小さい扁平形状を有する。なお、筐体5の形状は、車両用電池パック1の形状、寸法、又は車両における配設方法等に応じて、適宜設定することができる。なお、筐体5は、電池モジュールの容量、電圧、温度等を管理するコントローラ、スイッチ、リレー等の図示しない補機類を収容してもよい。
【0013】
筐体5は、アッパーケース6、及びロアーケース7を含む。アッパーケース6とロアーケース7とは、その周縁部において図示しないボルト等の締結具を介して締結される。なお、アッパーケース6とロアーケース7との接触部には、ゴム材料等で構成された図示しないシール部材が介在してもよい。車両用電池パック1は、例えば筐体5の周縁部を図示しないボルト等の締結具を介してサイドメンバ、クロスメンバ等の図示しない車体骨格部材に締結され、車両Vにおいて固定される。
【0014】
ロアーケース7は、図3及び図4に示すように、上方が開口した有底箱形の部材であり、平面視で略矩形の形状を備える。ロアーケース7の底部70には1以上の電池モジュールが配設される。また、ロアーケース7の車両後方側の領域では、電池モジュールが上下に2段以上積まれていてもよい。なお、図に例示するように、複数の電池モジュール同士を離間させるように、底部70を区分する仕切り60を設けてもよい。このようにすることで、車両用電池パック1に外力が加わった際の電池モジュール同士の接触を抑制することができる。なお、複数の電池モジュール同士の間には、電池モジュール同士を電気的に接続する、図示しないバスバ等の配線部材が配置されている。
【0015】
アッパーケース6は、平面視で略矩形の形状を備える板状の部材である。アッパーケース6でロアーケース7の上方の開口を閉じることにより、筐体5の内部が密閉される。また、アッパーケース6の車両後方側の領域には、ロアーケース7に配設された電池モジュールの段数に応じて、車両前方側の領域よりも車両上方に向けて膨出する膨出部が形成されてもよい。これにより、車両後方側により多くの電池モジュールを配設することができ、車両用電池パック1を全体として薄型化し省スペース化しつつ、より多くの電池容量を確保することができる。
【0016】
ロアーケース7は筐体5の内部と外部とを水平方向に仕切る周壁部8を備える。周壁部8の少なくとも一部は断面中空構造となっており、略矩形の断面形状を備える。より具体的には、図3図4図7、及び図8に示すように、周壁部8はロアーケース7の底部70に立設され筐体5の側面9を構成する外壁部8aと、外壁部8aよりも筐体内部側に立設された内壁部8bとを含んでいる。外壁部8aと内壁部8bとの間には隙間が形成され、当該隙間は車両前方側から車両後方側にかけて延在し、ガス排出路8cを構成する。例えば、電池モジュールからガスが発生した場合には、図3の矢印Bに示すように当該ガスは筐体5の内部において車両前方側に設けられたガス排出路入口8dからガス排出路8cに流入する。流入したガスは、ガス排出路8c内を流れ、後述するガス排出部10を介して車両用電池パック1の後方へと排出される。
【0017】
実施形態に係るカバー構造では、図5乃至図10に示すように、車両用電池パック1は、ガス排出部10と、カバー部材20と、第1開口部30と、を備える。なお、図5乃至図10においては、車幅方向左方が車幅方向外方に相当し、車幅方向右方が車幅方向内方に相当する。
【0018】
ガス排出部10は、車両用電池パック1の筐体5の側面9に配設されており、筐体5の内部で発生したガスを排出する。図2に示すように、ガス排出部10は筐体5の側面9のうち車両後方側に位置する側面であって、延出壁部5aの下方に配設される。延出壁部5aは、筐体5の周縁部から水平方向に延出する壁部であり、例えばアッパーケース6又はロアーケース7の周縁部から水平方向に延出するフランジである。また、図1に示すように、ガス排出部10は、側面9のうち車両後方側に位置する側面の車幅方向左方側と車幅方向右方側の各々に配設されている。また、ガス排出部10の各々の車幅方向外方近傍には車両Vの後輪Wが配設されている。
【0019】
ガス排出部10は、図7及び図8に例示するように、開口部11、及び弁体12を含む。開口部11は、筐体5の外壁部8aの車両後方側に設けられている。開口部11は車両後方に向けて開口しており、開口断面は略円形の形状を有する。弁体12は開口部11に車両後方から挿嵌され、開口部11を閉塞する。弁体12は車両前後方向視で開口部11よりも大きい略円形の形状を備える。
【0020】
図5及び図9に例示するように、弁体12は、外周縁部12aにシール部14を備えてもよい。シール部14は例えばゴム等の弾性材料から構成され、ある実施形態ではEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)から構成されていてもよい。シール部14を備えることにより、弁体12で開口部11をより確実に閉塞することができる。
【0021】
図7に示すように、通常状態では弁体12により開口部11が閉塞されている。換言すれば、ガス排出部10は閉じた状態である閉弁状態となっており、ガス排出部10によって筐体5の内部と外部とが仕切られる。なお、通常状態とは、筐体5の内部にガスが発生しておらず、内部圧力が規定値より低い状態である。
【0022】
高圧状態になると、図8に示すように弁体12は筐体外方に移動し、開口部11の周縁部と弁体12との間に隙間が形成される。このとき、ガス排出部10は開いた状態である開弁状態となる。なお、高圧状態とは、筐体5の内部にガスが発生し筐体5の内部圧力が規定値以上に上昇した状態である。なお、水平方向における筐体5の外部から内部を向く方向を筐体内方といい、筐体内方とは反対向きの方向を筐体外方という。
【0023】
開弁状態では、ガス排出部10を介して筐体5の内部と外部とが連通するため、図8の矢印C又は矢印Dに示すように、筐体内部で発生したガスはガス排出部10から車両外部に排出される。ガスが排出されることにより、筐体5の内部圧力は低下し、通常状態となる。そして、弁体12は筐体内方に移動し、再び図7に示す閉弁状態となる。
【0024】
このように、弁体12は、筐体5の側面9に対する筐体外方である車両後方に移動可能に構成されている。そして、ガス排出部10は、弁体12の移動により閉弁状態と開弁状態を切り替え可能に構成されている。
【0025】
ある実施形態では、このような弁体12は、弁体12のガス排出路8c側の端部に、図示しない複数のバネ板を弁体12径方向外方に延設することで構成することができる。当該バネ板は例えば金属、又は樹脂により弾性変形可能に構成されている。通常状態では、ガス排出路8c側における開口部11の周囲の領域に当該バネ板が当接することで、弁体12が開口部11に対して固定され、閉弁状態となる。高圧状態では、当該バネ板が弾性変形することで弁体12が車両後方に移動し、開弁状態となる。開弁状態でガスを排出した後は、当該バネ板の弾性復元力により弁体12が車両前方に移動し、再び閉弁状態となる。
【0026】
なお、ガス排出部10の配設位置は図示した例に限定されない。例えば、筐体5の車幅方向左方側の側面、又は車幅方向右方側の側面にガス排出部10を設けてもよい。その場合には、弁体12は、筐体5の側面9に対する筐体外方である車幅方向左方、又は車幅方向右方に移動可能である。換言すれば、弁体12は、筐体5の側面9に対して筐体外方に移動してガスを排出するように構成されている。
【0027】
なお、ガス排出部10の形状、又は寸法は、車両用電池パック1の寸法、形状、車体Vにおける車両用電池パック1の取付位置、取付方法等に応じて適宜設定することができる。また、ある実施形態では、ガス排出部10は、筐体5の外壁部8aよりも厚さの薄い平板で開口部11を閉塞することにより構成されてもよい。その場合には、筐体5の内部圧力が規定値以上になるとガス排出部10が開裂して、ガスを排出することができる。
【0028】
図6又は図10に示すように、ガス排出部10は車両前後方向視でカバー部材20により覆われている。換言すれば、カバー部材20は、筐体5の側面9において、ガス排出部10を覆うように設けられる。カバー部材20は車両前後方向視で略矩形の形状を有する板部材であり、例えば鉄、アルミニウム等の金属や、樹脂から構成されてもよい。なお、図1に示すカバー部材20は、側面9のうち車両後方側に位置する側面の車幅方向左方側と車幅方向右方側の各々に配設されたガス排出部10を覆っている。また、図示した例では、カバー部材20の各々は上下方向軸に対して互いに線対称の形状を備える。
【0029】
カバー部材20の周縁部には、当該周縁部から側面9に沿って延在するフランジ部22が形成されていてもよい。図示した例では、カバー部材20は、下壁部21b、又は側壁部21c,21dから側面9に沿って延在するフランジ部22を備え、フランジ部22と側面9とは当接している。また、カバー部材20は、フランジ部22を介して側面9に対して位置決めピン等の位置決め部材で位置決めされ、ボルト等の締結具により固定されている。なお、カバー部材20はフランジ部22を側面9に接着することにより、側面9に対して固定されてもよい。
【0030】
カバー部材20は、対向壁部21を有する。対向壁部21は、側面9のうち少なくともガス排出部10と車両前後方向において対向する。対向壁部21は、上縁部20a、下縁部20b、側縁部20c、及び側縁部20dで囲まれた領域である。また、図7及び図8に示すように、対向壁部21とガス排出部10とは非接触状態となるように離間している。そのため、対向壁部21とガス排出部10との間には空間Sが介在する。換言すれば、対向壁部21は、ガス排出部10から離間して、筐体5の側面9のうち少なくともガス排出部10と対向する壁部である。
【0031】
図示した例では、対向壁部21の上縁部20aは、ガス排出部10のうち最も上方に位置する部分である上端部10aよりも上方に位置する。対向壁部21の下縁部20bは、ガス排出部10のうち最も下方に位置する下端部10bよりも下方に位置する。対向壁部21の車幅方向内方側の側縁部20cは、ガス排出部10のうち最も車幅方向内方に位置する側端部10cよりも車幅方向内方に位置する。対向壁部21の車幅方向外方側の側縁部20dは、ガス排出部10のうち最も車幅方向外方に位置する側端部10dよりも車幅方向外方に位置する。
【0032】
カバー部材20は下縁部20bと、筐体5の側面9のうちガス排出部10の下方に延在する下方領域9bと、の間に延在する下壁部21bを備える。図示した例では、カバー部材20の下方側が側面9に向けて屈曲されることで下壁部21bが形成されている。
【0033】
なお、下壁部21bの態様は図示した例に限定されない。例えば、下壁部21bは側面9の下方領域9bに、下縁部20bに向けて立設されていてもよい。換言すれば、下壁部21bは、下縁部20bと、下方領域9bと、の間に介設される壁部である。
【0034】
下縁部20bと、下方領域9bと、の間には、下方に開口する第2開口部40が形成されている。また、下壁部21bは、ガス排出部10の下方において、第2開口部40と連なるように形成されている。図示した例では、下縁部20bの一部と、下方領域9bと、の間を離間させ隙間を設けることにより、空間Sと連通する下向きの開口である第2開口部40が、下壁部21bに隣接するように形成されている。なお、下壁部21bを車幅方向外方に配設し、第2開口部40を車幅方向内方に配設してもよい。また、下壁部21bは第2開口部40に向けて下り勾配に傾斜するように構成されてもよい。なお、第2開口部40は、下壁部21bの一部を下向きに開口することにより、形成されてもよい。
【0035】
側縁部20cと側方領域9cとの間、又は側縁部20dと側方領域9dとの間にはそれぞれ、側壁部21c、又は側壁部21dが介設される。側方領域9c,9dは、側面9のうちガス排出部10の側方に延在する領域である。図示した例のように、カバー部材20の車幅方向内方側が側面9に向けて屈曲されることで側壁部21cを形成してもよい。また、カバー部材20の車幅方向外方側が側面9に向けて屈曲されることで側壁部21dが形成されてもよい。
【0036】
また、図に示すように、下壁部21bと側壁部21dとは、所定の曲率半径で湾曲する曲壁部21eで接続されてもよい。曲壁部21eを備えることにより、下壁部21bと側壁部21dとは、所定の曲率半径で湾曲する曲壁を含む壁部を全体として構成することとなる。なお、ある実施形態では、下壁部21bと側壁部21cとが曲壁部21eで接続されてもよい。
【0037】
なお、図7及び図8に例示するように、側面9の下方領域9bには、第2開口部40に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面16が形成されていてもよい。図示した例では、傾斜面16は下壁部21b及び第2開口部40に向けて下り勾配に傾斜している。
【0038】
上縁部20aと、筐体5の側面9のうちガス排出部10の上方に延在する上方領域9aと、の間には、上方に開口する第1開口部30が形成されている。図示した例では、上縁部20aと、上方領域9aと、の間を離間させ隙間を設けることにより、空間Sと連通する上向きの開口である第1開口部30を形成している。また、上縁部20aは筐体5の延出壁部5aと車両上下方向で対向するため、第1開口部30の開口断面と、筐体5の延出壁部5aとは車両上下方向視において重なる。また、第2開口部40の開口面積は、第1開口部30の開口面積よりも小さく構成されている。
【0039】
なお、上縁部20aと、上方領域9aと、の間には図示しない上壁部が介設されてもよい。例えば、カバー部材20の上方側を側面9の上方領域9aに向けて屈曲することで、上縁部20aと上方領域9aとの間に延在する上壁部を設けてもよい。そのような場合には、上縁部20aと上方領域9aとの間には、第1開口部30が当該上壁部と連なるように配設されることとなる。
【0040】
対向壁部21は第3開口部50を備えてもよい。また、第3開口部50の少なくとも一部は、弁体12の移動方向と平行な軸方向視において、弁体12の外周縁部12aよりも内側に配設されてもよい。図示した例では、弁体12は車両後方に移動可能であるため、車両後方に向けて開口する複数の第3開口部50が、その少なくとも一部が車両前後方向視において弁体12の外周縁部12aよりも内側に位置するように形成されている。なお、第3開口部50は1つであってもよい。
【0041】
なお、カバー部材20の形状、又は寸法は、ガス排出部10、又は筐体5の側面9の形状、寸法に応じて適宜設定することができる。
【0042】
以下、実施形態に係るカバー構造の作用効果について説明する。
【0043】
(1)実施形態に係るカバー構造は、車両用電池パック1の筐体5の側面9に配設される、当該筐体5内で発生したガスを排出するガス排出部10と、筐体5の側面9において、ガス排出部10を覆うように設けられるカバー部材20と、を備える。カバー部材20の上縁部20aと、筐体5の側面9のうちガス排出部10の上方に延在する上方領域9aと、の間には、上方に開口する第1開口部30が形成される。
【0044】
このため、ガス排出部10はカバー部材20により覆われており、車両Vに洗浄液を噴射して洗車する際や、車両Vが濡れた路面を走行する際に、動水圧の高い水、洗浄液等の液体がガス排出部10に向けて射出されても、当該液体がガス排出部10に直接掛かるのを抑制することができる。更に、ガス排出部10からガスが排出された際には、車両用電池パック1の筐体5の側面9と、カバー部材20との間の空間Sにおける圧力の上昇を抑制できるように、例えば図8の矢印Cに示すように当該ガスが第1開口部30から放出される。即ち、実施形態に係るカバー構造によれば、ガス排出部10に液体が直接掛かるのを抑制するとともに、ガス排出部10から排出されたガスの円滑な放出を可能にすることができる。
【0045】
なお、第1開口部30の開口断面と、筐体5の延出壁部5aとは車両上下方向視において対向してもよい。これにより、上方から第1開口部30に向けて流れ落ちる液体は延出壁部5aに遮られる。そのため、第1開口部30から空間Sに液体が侵入するのを抑制することができる。
【0046】
(2)実施形態に係るカバー構造では、カバー部材20の下縁部20bと、筐体5の側面9のうちガス排出部10の下方に延在する下方領域9bと、の間で下方に開口する第2開口部40が形成され、ガス排出部10の下方には、第2開口部40と連なるように形成される下壁部21bが設けられている。
【0047】
このため、例えば、車両Vを持ち上げて下方から洗浄液を噴射して洗車する際や、車両Vが濡れた路面を走行する際に、動水圧の高い液体が車両Vの下方からガス排出部10に向けて射出された場合であっても、当該液体は下壁部21bに遮られ、ガス排出部10に直接掛かることが抑制される。これにより、より確実にガス排出部10に液体が直接掛かるのを抑制することができる。更に、空間Sに液体が侵入した場合であっても、当該液体を図10の矢印Eで示すように第2開口部40から放出することができる。
【0048】
なお、ガス排出部10は、筐体5の側面9のうち車両後方側の側面に配設され、下壁部21bは第2開口部40よりも車幅方向外方に配設されてもよい。車両Vが濡れた路面を走行する際には、後輪Wからガス排出部10に向けて動水圧の高い液体が射出される場合がある。そのような場合に、車幅方向外方かつ下方からガス排出部10に向けて液体が射出されても、当該液体は下壁部21bで遮蔽される。そのため、より確実にガス排出部10に当該液体が直接掛かることが抑制される。
【0049】
(3)実施形態に係るカバー構造では、第2開口部40の開口面積は、第1開口部30の開口面積よりも小さい。
【0050】
このため、車両Vの下方から射出された動水圧の高い液体がガス排出部10に直接掛かるのをより確実に抑制するとともに、車両用電池パック1の筐体5の内部で発生したガスを、より確実に第1開口部30から放出することができる。更に、空間Sに液体が侵入した場合であっても、当該液体を第2開口部40から放出することができる。
【0051】
(4)実施形態に係るカバー構造では、下壁部21bは第2開口部40に向けて下り勾配に傾斜する。
【0052】
このため、空間Sに液体が侵入した場合であっても、当該液体は下壁部21bの勾配に沿って第2開口部40へと流れる。従って、当該液体をより確実に第2開口部40から放出することができる。
【0053】
なお、側縁部20c,20dと側方領域9c,9dとの間には、側壁部21c,21dが介設され、下壁部21bと、側壁部21c,21dとは曲壁部21eで接続されてもよい。これにより、空間Sに液体が侵入した場合であっても、当該液体は側壁部21c,21d、又は曲壁部21eを経由して下壁部21bに流れ、更に、下壁部21bに沿って第2開口部40へと流れる。従って、当該液体をより確実に第2開口部40から放出することができる。
【0054】
なお、側面9の下方領域9bには、第2開口部40に向けて下り勾配に傾斜する傾斜面16が形成されていてもよい。これにより、空間Sに液体が侵入した場合であっても、当該液体は傾斜面16に沿って第2開口部40へと流れる。従って、当該液体をより確実に第2開口部40から放出することができる。
【0055】
(5)実施形態に係るカバー構造では、ガス排出部10は、筐体5の側面9に対して筐体5外方に移動してガスを排出するように構成された弁体12を含む。カバー部材20の、ガス排出部10から離間して、筐体5の側面9のうち少なくともガス排出部10と対向する対向壁部21は第3開口部50を備える。第3開口部50の少なくとも一部は、弁体12の移動方向と平行な軸方向視において、弁体12の外周縁部12aよりも内側に配設される。
【0056】
このため、ガス排出部10からガスが排出された際には、図8の矢印Dに示すように、当該ガスを第3開口部50から放出することができる。従って、当該ガスをより円滑に放出することができる。更に、ガス排出部10に向けて動水圧の高い液体が射出された場合であっても、当該液体はカバー部材20の対向壁部21によって遮られる。そのため、弁体12の外周縁部12aに当該液体が直接掛かるのを、より確実に抑制することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、電気自動車を例にとって説明したが、実施形態に係るカバー構造が、ハイブリッド車の駆動用電力を供給する車両用電池パックなどにも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用電池パック
5 筐体
9 側面
9a 上方領域
9b 下方領域
10 ガス排出部
12 弁体
12a 外周縁部
20 カバー部材
20a 上縁部
20b 下縁部
21 対向壁部
21b 下壁部
30 第1開口部
40 第2開口部
50 第3開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10