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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190849
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】抽出装置および抽出方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221220BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221220BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20221220BHJP
   G06T 7/215 20170101ALI20221220BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650
G06T7/00 650B
G06T7/20
G06T7/20 100
G06T7/215
G06T7/60 300A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099316
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村角 周樹
(72)【発明者】
【氏名】垣田 直士
(72)【発明者】
【氏名】三野 敦
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
5L096BA02
5L096BA04
5L096CA02
5L096DA03
5L096FA04
5L096FA66
5L096GA13
5L096HA04
(57)【要約】
【課題】カーブミラーに映る移動物体の抽出精度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る抽出装置は、検出部と、判定部と、設定部と、抽出部とを備える。検出部は、自車両の進行方向を撮像した撮像画像からカーブミラーを検出する。判定部は、検出部によって検出されたカーブミラーの外縁のオプティカルフローが示す第1移動量に基づき、自車両が移動状態か停止状態かを判定する。設定部は、判定部による判定結果が停止状態である場合に、移動状態である場合に比べて閾値を低く設定する。抽出部は、カーブミラーの内部のオプティカルフローが示す第2移動量が設定部によって設定された閾値を超える物体をカーブミラーに映る移動物体として抽出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の進行方向を撮像した撮像画像からカーブミラーを検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記カーブミラーの外縁のオプティカルフローが示す第1移動量に基づき、前記自車両が移動状態か停止状態かを判定する判定部と、
前記判定部による判定結果が前記停止状態である場合に、前記移動状態である場合に比べて閾値を低く設定する設定部と、
前記カーブミラーの内部のオプティカルフローが示す第2移動量が前記設定部によって設定された前記閾値を超える物体を前記カーブミラーに映る移動物体として抽出する抽出部と
を備えることを特徴とする抽出装置。
【請求項2】
前記抽出部は、
前記移動物体のうち、前記自車両へ接近する接近物体を抽出すること
を特徴とする請求項1に記載の抽出装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記第1移動量が第1閾値未満である場合に、停車状態カウンタを増加させ、前記第1移動量が前記第1閾値以上である場合に、移動状態カウンタを増加させるカウンタ部と、
前記停車状態カウンタまたは前記移動状態カウンタの値が切替閾値を超えた場合に、前記移動状態または前記停止状態の判定結果を切り替える切替部と
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の抽出装置。
【請求項4】
前記カウンタ部は、
前記停車状態カウンタまたは前記移動状態カウンタのうち、一方のカウンタの値を増加させた場合に、他方のカウンタの値をリセットすること
を特徴とする請求項3に記載の抽出装置。
【請求項5】
前記切替部は、
前記停車状態カウンタに対する前記切替閾値について、前記移動状態カウンタに対する前記切替閾値よりも高い値の前記切替閾値を用いること
を特徴とする請求項3または4に記載の抽出装置。
【請求項6】
自車両の進行方向を撮像した撮像画像からカーブミラーを検出する検出工程と、
前記検出工程によって検出された前記カーブミラーの外縁のオプティカルフローが示す第1移動量に基づき、前記自車両が移動状態か停止状態かを判定する判定工程と、
前記判定工程による判定結果が前記停止状態である場合に、前記移動状態である場合に比べて閾値を低く設定する設定工程と、
前記カーブミラーの内部のオプティカルフローが示す第2移動量が前記設定工程によって設定された前記閾値を超える物体を前記カーブミラーに映る移動物体として抽出する抽出工程と
を含むことを特徴とする抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抽出装置および抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周囲を撮像した撮像画像からカーブミラーを抽出し、カーブミラーに映る特徴点の移動ベクトルに基づいて、自車両に近づいてくるあるいは自車両から遠ざかる移動物体を抽出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-234999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、カーブミラーに映る移動物体の抽出精度を向上させる点において改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カーブミラーに映る移動物体の抽出精度を向上させることができる抽出装置および抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る抽出装置は、検出部と、判定部と、設定部と、抽出部とを備える。前記検出部は、自車両の進行方向を撮像した撮像画像からカーブミラーを検出する。前記判定部は、前記検出部によって検出された前記カーブミラーの外縁のオプティカルフローが示す第1移動量に基づき、前記自車両が移動状態か停止状態かを判定する。前記設定部は、前記判定部による判定結果が前記停止状態である場合に、前記移動状態である場合に比べて閾値を低く設定する。前記抽出部は、前記カーブミラーの内部のオプティカルフローが示す第2移動量が前記設定部によって設定された前記閾値を超える物体を前記カーブミラーに映る移動物体として抽出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カーブミラーに映る移動物体の抽出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、抽出方法の概要を示す図である。
図2図2は、抽出装置のブロック図である。
図3図3は、判定部のブロック図である。
図4図4は、カウンタ部および切替部による処理の一例を示す図である。
図5A図5Aは、接近物体の抽出処理の一例を示す図である。
図5B図5Bは、接近物体の抽出処理の一例を示す図である。
図6図6は、管理装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示すステップS103の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する抽出装置および抽出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
まず、図1を用いて、実施形態に係る抽出装置および抽出方法の概要について説明する。図1は、抽出方法の概要を示す図である。なお、実施形態に係る抽出方法は、図1に示す抽出装置1によって実行される。
【0011】
図1に示すように、抽出装置1は、たとえば、自車両MCに搭載される。たとえば、抽出装置1は、自車両MCの進行方向(たとえば、前方)を撮像するカメラを備えたドライブレコーダであり、カメラで撮像した撮像画像から障害物を検出する障害物検知機能を有する。
【0012】
たとえば、図1に示すように、自車両MCがT字路へこれから進入する場面を想定すると、通常、自車両MCの運転者は、カーブミラーMを目視することで、交差点に他方向から進入する他車両Cの存在を認識する。
【0013】
これに対して、抽出装置1は、撮像画像に対する画像処理を行うことで、カーブミラーMに映る他車両C等の障害物を検出する。また、抽出装置1は、障害物を検出すると、たとえば、その存在を運転者へ報知することで、交差点における衝突事故を未然に防ぐ、いわゆるドライブアシスト機能を有する。なお、ここでいう障害物とは、他車両Cのみならず、歩行者、バイク、自転車などといったT字路において自車両MCと衝突する可能性がある移動物体を指すものとする。
【0014】
ところで、たとえば、撮像画像からカーブミラーの鏡面内のオプティカルフローを算出することで、カーブミラーに映る障害物の動きや位置を認識することが可能である。たとえば、T字路に近づく移動物体は、鏡面内に映る大きさや向きが変化するので、その移動速度に応じたオプティカルフローが検出される。そのため、オプティカルフローの大きさが所定の判定閾値を超える物体がカーブミラーに映る障害物として検出される。
【0015】
しかしながら、実際には、障害物に加え、自車両MCも走行する。そのため、カーブミラーの鏡面内のオプティカルフローから障害物を検出する場合には、障害物自体の移動成分に加え、自車両MCの移動成分をも考慮する必要がある。
【0016】
より具体的には、他車両Cが一定の速度で走行していたとすると、自車両MCが停車している場合には、自車両MCが走行している場合に比べて、カーブミラーに映る他車両Cのオプティカルフローが小さい値を取りやすくなる。言い換えれば、自車両MCが走行している場合には、自車両MCが停車している場合に比べて、カーブミラーに映る他車両Cのオプティカルフローが大きい値を取りやすくなる。
【0017】
これに対して、障害物のオプティカルフローに対する閾値を一定としておくと、障害物の未抽出や誤抽出を招きやすく、障害物の抽出精度の低下につながるおそれがある。
【0018】
そこで、実施形態に係る抽出装置1では、自車両MCの走行状態を判定するとともに、判定結果に応じて、障害物を検出するためのオプティカルフローの閾値を切り替えることにした。
【0019】
具体的には、図1に示すように、抽出装置1は、まず、撮像画像Iから撮像画像Iに映るカーブミラーMを検出する(ステップS1)。抽出装置1は、たとえば、撮像画像Iに対する所定のエッジ抽出処理等によってカーブミラーMの外縁Maを検出するとともに、検出した外縁Maの内部をカーブミラーMの鏡面Mmとして検出する。
【0020】
ここで、カーブミラーM自体は固定されて設置されているので、カーブミラーMの外縁MaのオプティカルフローFaは、自車両MCの移動状態を示すこととなる。すなわち、自車両MCが完全に停車している場合には、撮像画像Iに映るカーブミラーMの位置は変化しないので、外縁MaのオプティカルフローFaは検出されない。一方、たとえば、自車両MCがカーブミラーMに向かって走行している場合には、撮像画像Iに映るカーブミラーMは位置や大きさが相対的に変化するので移動速度に応じたオプティカルフローFaが検出されることになる。
【0021】
そのため、抽出装置1は、カーブミラーMの外縁MaのオプティカルフローFaが示す第1移動量に基づき、自車両MCの走行状態を判定する(ステップS2)。なお、たとえば、第1移動量は、単位時間当たりの自車両MCの移動距離に対応し、オプティカルフローFaの大きさに対応する。
【0022】
たとえば、抽出装置1では、ステップS2の判定において、第1移動量が第1閾値Th1を超える場合に、自車両MCが移動状態であると判定し、第1移動量が第1閾値Th1以下である場合に、自車両MCが停止状態であると判定する。なお、たとえば、移動状態とは、自車両MCとカーブミラーMとの間の相対位置が変化している状態のことを示し、停止状態とは、自車両MCとカーブミラーMとの相対位置が変化していない状態のことを示す。
【0023】
つづいて、抽出装置1は、ステップS2の判定結果に応じて、カーブミラーMから障害物を抽出するための閾値を設定する(ステップS3)。自車両MCが移動状態である場合、障害物となる他車両Cに加え、自車両MCがカーブミラーMに近づくことになるので、自車両MCが停止状態である場合に比べて、鏡面Mm内のオプティカルフローFm(すなわち、カーブミラーMに映る障害物に対応するオプティカルフロー)が大きくなる。
【0024】
そのため、ステップS3の処理において、抽出装置1では、自車両MCが停止状態であると判定した場合には、自車両MCが移動状態である場合よりも低い値の停止閾値Th22へ設定する。また、この際、抽出装置1では、自車両MCが移動状態であると判定した場合には、第2閾値を停止閾値Th22よりも値の高い移動閾値Th21へ設定する。
【0025】
その後、抽出装置1は、カーブミラーMの内部のオプティカルフローが示す第2移動量がステップS3において設定した第2閾値を超える物体について、カーブミラーMに映る移動物体、すなわち、T字路へ近づく移動物体として抽出する(ステップS4)。
【0026】
すなわち、抽出装置1は、自車両MCが移動状態である場合には、第2移動量が移動閾値Th21を超える物体を移動物体として抽出し、自車両MCが停止状態である場合には、第2移動量が停止閾値Th22を超える物体を移動物体として抽出することになる。
【0027】
このように、実施形態に係る抽出装置1では、自車両MCが移動状態か停止状態かに応じて、移動物体を抽出するための第2閾値を動的に設定するとともに、設定した第2閾値に基づき、カーブミラーMに映る移動物体を抽出する。
【0028】
この際、実施形態に係る抽出装置1では、自車両MCが停止状態である場合には、移動状態である場合に比べて、第2閾値を低く設定し、自車両MCが移動状態である場合には、停止状態である場合に比べて、第2閾値を高く設定する。
【0029】
これにより、実施形態に係る抽出装置1では、自車両MCが停止状態である場合に、より小さいオプティカルフローFmを有する障害物を抽出することが可能となるので、障害物の未抽出を抑制することができる。
【0030】
また、実施形態に係る抽出装置1では、自車両MCが移動状態である場合には、自車両MCの移動に伴い変化するオプティカルフローを考慮して、より大きなオプティカルフローFmを有する障害物のみを検出することで、障害物の誤抽出を抑制することができる。
【0031】
したがって、実施形態に係る抽出装置1によれば、カーブミラーMに映る移動物体の抽出精度を向上させることができる。
【0032】
次に、図2を用いて、実施形態に係る抽出装置1の構成例について説明する。図2は、抽出装置1のブロック図である。なお、図2には、抽出装置1に加え、カメラ100およびディスプレイ110を併せて示す。カメラ100は、自車両MCの進行方向を所定周期で撮像する。たとえば、カメラ100は、魚眼レンズ等のレンズと、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子とを備える。
【0033】
ディスプレイ110は、車載ディスプレイであり、抽出装置1によって抽出された障害物に関する各種情報(たとえば、警告画像)を表示する。また、ディスプレイ110は、音声出力部を有し、障害物に関する各種情報として警告音を出力することにしてもよい。また、ディスプレイ110として、たとえば、自車両MCのフロントガラスに映像を投影するヘッドアップディスプレイを採用することにしてもよい。
【0034】
図2に示すように、抽出装置1は、記憶部10と、制御部20とを備える。記憶部10は、たとえば、不揮発性メモリやデータフラッシュ、ハードディスクドライブといった記憶デバイスで構成される。記憶部10には、ミラー検知情報11、特徴点情報12および各種プログラムなどが記憶される。
【0035】
ミラー検知情報11は、カーブミラーMの検出結果に関する各種情報である。たとえば、自車両MCと、検出したカーブミラーMの相対位置、大きさ、向き等に関する情報がミラー検知情報11として記憶部10に記憶される。
【0036】
特徴点情報12は、撮像画像Iから抽出した特徴点に関する各種情報である。たとえば、特徴点ごとの時系列変化に関する情報が特徴点情報12として記憶部10に記憶される。なお、特徴点の時系列変化に基づき、上述したオプティカルフローが算出され、第1移動量および第2移動量が算出されることになる。
【0037】
制御部20は、検出部21と、判定部22と、設定部23と、抽出部24と、出力部25とを備え、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0038】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部20の検出部21、判定部22、設定部23、抽出部24および出力部25として機能する。
【0039】
また、制御部20の検出部21、判定部22、設定部23、抽出部24および出力部25の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0040】
検出部21は、自車両MCの進行方向を撮像した撮像画像IからカーブミラーMを検出する。まず、検出部21は、カメラ100から撮像画像Iを取得し、カーブミラーMの形状に対応するミラー形状を抽出する。
【0041】
たとえば、検出部21は、円形状、楕円形状、四角形状のエッジ部分(外縁)を有する形状をミラー形状として抽出する。つづいて、検出部21は、抽出したミラー形状の外縁(エッジ部分)をカーブミラーMの外縁Maとして検出し、外縁Maの内側を鏡面Mmとして検出する。
【0042】
また、検出部21は、カーブミラーMの向きを検出する。たとえば、検出部21は、外縁Maの傾き(たとえば、楕円における主軸の回転角度)に基づき、カーブミラーMの向きを検出する。具体的には、検出部21は、外縁Maが右側に傾いている場合(回転角度>0)、カーブミラーMの向きを右向きとして検出し、外縁Maが左側に傾いている場合(回転角度<0)、カーブミラーMの向きを左向きとして検出する。
【0043】
検出部21は、カーブミラーMおよびカーブミラーMの向きを検出すると、検出結果を記憶部10にミラー検知情報11として書き込む。なお、ここでの向きは、カメラ100の光軸に対して右向きか左向きかを示す。
【0044】
判定部22は、検出部21によって検出されたカーブミラーMの外縁MaのオプティカルフローFaが示す第1移動量に基づき、自車両Mcが移動状態か停止状態かを判定する。
【0045】
図3は、判定部22のブロック図である。図3に示すように、判定部22は、たとえば、カウンタ部22aと、切替部22bとを備える。カウンタ部22aは、第1移動量が第1閾値Th1未満である場合に、停止状態カウンタを増加させ、第1移動量が第1閾値Th1以上である場合に、移動状態カウンタを増加させる。
【0046】
具体的には、カウンタ部22aは、カーブミラーMの外縁Maの特徴点に基づくオプティカルフローFa(図1参照)を算出し、算出したオプティカルフローFaから自車両MCの単位時間当たりの移動距離を示す第1移動量を算出する。そして、カウンタ部22aは、第1移動量に基づき、移動状態カウンタまたは停止状態カウンタの更新を行う。なお、第1移動量は、複数のオプティカルフローFaの平均値や中間値であってもよく、代表値であってもよい。
【0047】
切替部22bは、停止状態カウンタまたは移動状態カウンタの値が切替閾値を超えた場合に、移動状態または停止状態の判定結果を切り替える。ここで、図4を用いてカウンタ部22aおよび切替部22bによる処理の具体例について説明する。
【0048】
図4は、カウンタ部22aおよび切替部22bにより処理の具体例を示す図である。なお、図4のAは、第1移動量の推移を示し、図4のBおよびCは、それぞれ移動状態カウンタ、停止状態カウンタの値の推移を示す。
【0049】
たとえば、カウンタ部22aは、図4のAに示す第1移動量が第1閾値Th1を超える場合に、図4のBに示す移動状態カウンタの値を増加させていき、第1移動量が第1閾値Th1を下回る場合に、図4のCに示す停止状態カウンタの値を増加させていく。
【0050】
切替部22bは、移動状態カウンタの値が切替閾値Th31を超えた時点で、自車両MCの走行状態を停止状態から移動状態へ切り替える。また、切替部22bは、停止状態カウンタの値が切替閾値Th32を超えた時点で、自車両MCの走行状態を移動状態から停止状態へ切り替える。
【0051】
そのため、図4の例では、時刻t11において移動状態カウンタの値が切替閾値Th31を超えるので、切替部22bは、時刻t11において、自車両MCの走行状態を停止状態から移動状態へ切り替えることになる。
【0052】
その後、図4の例では、時刻t12において、停止状態カウンタの値が切替閾値Th32を超えるので、切替部22bは、時刻t12において自車両MCの走行状態を移動状態から停止状態へ切り替えることになる。このように、移動状態カウンタまたは停止状態カウンタの値に基づき、自車両MCの走行状態を判定することで、ノイズ等による誤判定を抑制することができる。
【0053】
また、カウンタ部22aは、たとえば、第1移動量が第1閾値Th1を下回った場合に、移動状態カウンタの値をリセットし、第1移動量が第1閾値Th1を上回った場合に、停止状態カウンタの値をリセットする。
【0054】
すなわち、カウンタ部22aは、移動状態カウンタまたは停止状態カウンタのうち、一方のカウンタの値を増加させる場合には、他方のカウンタの値をリセットする。これにより、切替部22bは、移動状態カウンタまたは停止状態カウンタの値が時間的にある程度連続して増加しない場合には、走行状態の切り替えを行わないことになる。
【0055】
つまり、走行状態の切り替えにヒステリシスを持たせることで、ノイズを除去した状態で移動状態および停止状態の切り替えを行うことができ、ある程度の確度を持った走行状態の判定を行うことができる。
【0056】
ところで、上述のように、カーブミラーMに映る移動物体を抽出するための第2閾値は、自車両MCが移動状態である場合には、移動閾値Th21を用い、停止状態である場合には、移動閾値Th21よりも小さい値の停止閾値Th22を用いることとしている(図1参照)。
【0057】
そのため、たとえば、自車両MCが停止状態である場合には、移動状態である場合に比べて、移動物体の誤抽出が増えることが懸念される。そのため、たとえば、図4のB、Cに示す移動状態カウンタに用いる切替閾値Th31と、停止状態カウンタに用いる切替閾値Th32とを異なる値とすることにしてもよい。
【0058】
具体的には、切替閾値Th31に比べて、切替閾値Th32に高い値とする。これにより、自車両MCの走行状態は、移動状態から停止状態へ切り替わりにくく、より移動状態として維持されやすくなる。つまり、移動状態から停止状態へと移行させにくくすることで、停止状態とすることによる誤抽出を抑制することができる。
【0059】
なお、切替閾値に代えて、たとえば、移動状態カウンタおよび停止状態カウンタの増加率を変更することにしてもよい。この場合、移動状態カウンタの増加率を停止状態カウンタの増加率よりも大きくすることで、同様の効果を享受することができる。
【0060】
図2の説明に戻り、設定部23について説明する。設定部23は、判定部22による判定結果が停止状態である場合に、移動状態である場合に比べて閾値を低く設定する。すなわち、設定部23は、判定部22による判定結果が切り替わった場合に、切り替わり後の判定結果にあわせて閾値を設定する。
【0061】
たとえば、設定部23は、判定部22による判定結果が移動状態である場合、図1に示したように、閾値を移動閾値Th21に設定し、判定結果が停止状態である場合には、移動閾値Th21よりも低い値の停止閾値Th22に設定する。
【0062】
抽出部24は、カーブミラーMの内部(すなわち、鏡面Mm)のオプティカルフローFmが示す第2移動量が設定部23によって設定された閾値を超える物体をカーブミラーMに映る移動物体として抽出する。
【0063】
抽出部24は、鏡面Mm内のオプティカルフローFmを算出し、オプティカルフローFmが示す第2移動量と、設定部23によって設定された閾値とを比較する。この際、自車両MCが移動状態である場合には、閾値は移動閾値Th21となり、抽出部24は、第2移動量が移動閾値Th21を超える物体をカーブミラーMに映る移動物体として抽出する。
【0064】
また、自車両MCが停止状態である場合には、閾値は停止閾値Th22となり、抽出部24は、第2移動量が停止閾値Th22を超える物体をカーブミラーMに映る移動物体として抽出する。
【0065】
また、抽出部24は、抽出した移動物体のうち、自車両MCへ接近する接近物体を抽出することにしてもよい。すなわち、カーブミラーMに映る移動物体のうち、自車両MCの運転者に注意喚起が必要な接近物体のみを抽出することにしてもよい。
【0066】
図5Aおよび図5Bは、接近物体の抽出処理の一例を示す図である。図5Aに示すように、T字路において、自車両MCから見て、カーブミラーMが右向きに設置される場合において、自車両MCおよび他車両CがともにT字路に接近する場合を想定する。
【0067】
この場合、他車両Cは図中右から左へ移動するので、カーブミラーMに映る他車両CのオプティカルフローFmは左向きとなる。そのため、抽出部24は、オプティカルフローFmが閾値を超える移動物体のうち、オプティカルフローFmが左向き成分を持つ移動物体について接近物体として抽出する。
【0068】
一方、たとえば、図5Bに示すように、他車両Cが左から右側へT字路から遠ざかる場合において、カーブミラーMに映る他車両CのオプティカルフローFmは右向きとなる。そのため、抽出部24は、オプティカルフローFmが閾値を超える移動物体であっても、オプティカルフローFmが右向き成分を持つ移動物体について接近物体として抽出しない。
【0069】
このように、抽出部24は、移動物体のうち、接近物体を抽出することで、自車両MCの運転者にとってより有益な情報のみを提供することができる。つまり、注意喚起に必要な情報のみを提供することができる。なお、カーブミラーMの向きが逆(左向き)である場合には、上記のオプティカルフローFmに対する接近判定の向きは逆転する。
【0070】
図2の説明に戻り、出力部25について説明する。出力部25は、たとえば、抽出部24によって抽出された接近物体に関する情報を出力する。たとえば、出力部25は、警告画像を生成し、生成した警告画像をディスプレイ110へ出力する。これにより、ディスプレイ110には、警告画像が表示され、運転者に対して注意喚起を図ることができる。なお、出力部25は、注意喚起を促すテキストを出力することにしてもよいし、音声を出力することにしてもよい。
【0071】
次に、図6および図7を用いて、実施形態に係る抽出装置1が実行する処理手順について説明する。図6は、抽出装置1が実行する処理手順を示す図である。図7は、図6に示すステップS103の処理手順を示す図である。なお、以下に示す処理手順は、制御部20によって繰り返し実行される。
【0072】
図6に示すように、抽出装置1は、まず、撮像画像Iを取得すると(ステップS101)、撮像画像IからカーブミラーMを検出する(ステップS102)。つづいて、抽出装置1は、自車両MCの走行状態を判定し(ステップS103)、ステップS103の判定結果に応じて、閾値を設定する(ステップS104)。
【0073】
つづいて、抽出装置1は、カーブミラーMの鏡面Mm内のオプティカルフローFmおよびステップS104にて設定した閾値に基づいて、接近物体を抽出する(ステップS105)。
【0074】
つづいて、抽出装置1は、ステップS105の抽出結果に基づき、接近物体があるか否かを判定する(ステップS106)。抽出装置1は、接近物体がある場合(ステップS106;Yes)、警告情報を出力し(ステップS107)、処理を終了する。
【0075】
また、抽出装置1は、接近物体がなかった場合(ステップS106;No)、ステップS107の処理を省略して、処理を終了する。
【0076】
次に、図7を用いて、図6のステップS103の処理について説明する。図7に示すように、抽出装置1は、カーブミラーMの外縁MaのオプティカルフローFaから第1移動量を算出し(ステップS201)、第1移動量が移動閾値より大きいか否かを判定する(ステップS202)。
【0077】
抽出装置1は、ステップS202の判定において、第1移動量が移動閾値よりも大きかった場合(ステップS202:Yes)、移動状態カウンタの値を増加させる(ステップS203)。一方、抽出装置1は、ステップS202の判定において、第1移動量が移動閾値以下であった場合(ステップS202;No)、停止状態カウンタの値を増加させる(ステップS206)。なお、ステップS203およびステップS206の処理において、移動状態カウンタの値を増加させる場合には、停止状態カウンタの値をリセットし、停止状態カウンタの値を増加させる場合には、移動状態カウンタの値をリセットする。なお、リセットするとは、カウンタの値をゼロにすることを示す。
【0078】
つづいて、抽出装置1は、カウンタ(移動状態カウンタまたは停止状態カウンタ)の値が切替閾値に到達したか否かを判定する(ステップS204)。抽出装置1は、カウンタの値が切替閾値に到達したと判定した場合(ステップS204;Yes)、自車両MCの走行状態を切り替えて(ステップS205)、処理を終了する。
【0079】
また、抽出装置1は、ステップS204の判定において、カウンタの値が切替閾値に到達していないと判定した場合(ステップS204:No)、ステップS205の処理を省略して、処理を終了する。
【0080】
上述したように、実施形態に係る抽出装置1は、検出部21と、判定部22と、設定部23と、抽出部24とを備える。検出部21は、自車両MCの進行方向を撮像した撮像画像IからカーブミラーMを検出する。判定部22は、検出部21によって検出されたカーブミラーMの外縁MaのオプティカルフローFaが示す第1移動量に基づき、自車両MCが移動状態か停止状態かを判定する。
【0081】
設定部23は、判定部22による判定結果が停止状態である場合に、移動状態である場合に比べて閾値を低く設定する。抽出部24は、カーブミラーMの内部のオプティカルフローFmが示す第2移動量が設定部23によって設定された閾値を超える物体をカーブミラーMに映る移動物体として抽出する。
【0082】
したがって、実施形態に係る抽出装置1によれば、カーブミラーMに映る移動物体の抽出精度を向上させることができる。
【0083】
ところで、上述した実施形態では、自車両MCの前方を撮像した撮像画像IからカーブミラーMに映る移動物体を抽出する場合について説明したが、撮像画像Iは自車両MCの側方や後方を撮像したものであってもよい。
【0084】
また、上述した実施形態では、カーブミラーMに映る移動物体を抽出した場合に、自車両MCの運転者にその存在を報知する場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、本願発明を自動運転に適用することにしてもよい。たとえば、この場合、カーブミラーMに映る移動物体を抽出した場合に、減速等の各種衝突回避措置を行うようにしてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態では、自車両MCが移動状態である場合の移動閾値Th21と、停止状態である場合の移動閾値Th22との間で閾値を切り替える場合について説明したがこれに限定さるものではない。すなわち、たとえば、第1移動量に基づき、段階的に閾値を切り替えることにしてもよい。
【0086】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 抽出装置
21 検出部
22 判定部
22a カウンタ部
22b 切替部
23 設定部
24 抽出部
25 出力部
M カーブミラー
Ma 外縁
Mm 鏡面
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7