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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190852
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】車両用電池パック構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20221220BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221220BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221220BHJP
   H01M 50/271 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M50/204 201
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M50/271 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099319
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】秋月 信也
(72)【発明者】
【氏名】大平 慎也
(72)【発明者】
【氏名】今塩屋 竜也
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB22
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235HH03
5H040AA32
5H040AS07
5H040CC05
5H040CC13
5H040CC20
5H040JJ02
5H040JJ03
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】アッパーケースとロアーケースと間の接続部に液体が直接掛かるのを抑制する。
【解決手段】車両用電池パック構造は、アッパーケースの外周縁部の少なくとも一部に取り付けられ、ロアーケースの側面よりも水平方向外方に位置する外縁部を有するカバー部材を備える。カバー部材の外縁部には、ロアーケースの側面に向けて延出する下壁部が形成される。ロアーケースの側面には、下壁部より上側の領域から突出し、先端部が下壁部の先端部よりも水平方向外方に位置している凸壁部が形成される。アッパーケースの外周縁部又はカバー部材には、凸壁部の先端部よりも水平方向内方の位置において上下方向に延在し、かつ、下端部がロアーケースの側壁の上端部より低い位置に位置する縦壁部が形成される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルを収容可能なロアーケースと、
前記ロアーケースを上方から覆うように配設されるアッパーケースと、
前記アッパーケースの外周縁部の少なくとも一部に取り付けられ、前記ロアーケースの側面より水平方向外方に位置する外縁部を有するカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材の外縁部には、前記ロアーケースの側面に向けて延出する下壁部が形成され、
前記ロアーケースの側面には、前記下壁部より上方の領域から突出し、先端部が前記下壁部の先端部よりも水平方向外方に位置している凸壁部が形成されており、
前記アッパーケースの外周縁部又は前記カバー部材には、前記凸壁部の先端部よりも水平方向内方の位置において上下方向に延在し、かつ、下端部が前記ロアーケースの側壁の上端部より低い位置に位置する縦壁部が形成された、
車両用電池パック構造。
【請求項2】
前記ロアーケースの側面と、前記下壁部の先端部と、の間には下方に開口する第1の隙間が形成され、
前記カバー部材と、前記凸壁部の先端部と、の間には下方に開口する第2の隙間が形成されている、請求項1に記載の車両用電池パック構造。
【請求項3】
前記縦壁部と、前記凸壁部とは、互いに異なる金属からなり、
前記縦壁部の下端部と、前記凸壁部とは、非接触の状態となるように離間している、請求項1又は2に記載の車両用電池パック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池パック構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、トレーの底部に形成したリブを用いて、バッテリーを載置する載置部から仕切る水受け部を、トレーの側壁に接して設けると共に、水受け部と接するトレーの側壁の溝の部分にガスケットの継ぎ目を配置した、電動車両に搭載するバッテリーパックを構成するトレーを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-65419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用電池パックでは、高圧洗車機による洗車の際や、車両が濡れた路面を走行する際に、動水圧の高い水、又は洗浄液等の液体が車両用電池パックのアッパーケースとロアーケースとの接続部に向けて射出され、当該液体が接続部に直接掛かるおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、アッパーケースとロアーケースと間の接続部に液体が直接掛かるのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両用電池パック構造は、アッパーケースの外周縁部の少なくとも一部に取り付けられ、ロアーケースの側面よりも水平方向外方に位置する外縁部を有するカバー部材を備える。カバー部材の外縁部には、ロアーケースの側面に向けて延出する下壁部が形成される。ロアーケースの側面には、下壁部より上側の領域から突出し、先端部が下壁部の先端部よりも水平方向外方に位置している凸壁部が形成される。アッパーケースの外周縁部又はカバー部材には、凸壁部の先端部よりも水平方向内方の位置において上下方向に延在し、かつ、下端部がロアーケースの側壁の上端部より低い位置に位置する縦壁部が形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アッパーケースとロアーケースと間の接続部に液体が直接掛かるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る車両用電池パック構造について説明するための図であり、車両における車両用電池パックの配設位置を示す模式的部分側面図である。
図2】実施形態に係る車両用電池パック構造について説明するための図であり、車両における車両用電池パックの配設位置を示す模式的部分平面図である。
図3】実施形態に係る車両用電池パック構造における、車両用電池パックの平面図である。
図4】実施形態に係る車両用電池パック構造における、車両用電池パックの部分背面図である。
図5】実施形態に係る車両用電池パック構造における、車両用電池パックの斜視図である。
図6】実施形態に係る車両用電池パック構造における、図5で示した車両用電池パックの要部を示す斜視図であり、カバー部材と、アッパーケースと、ロアーケースとの配設関係を示す図である。
図7】実施形態に係る車両用電池パック構造について説明するための、図6のA-A線に沿った模式的部分断面図であって、アッパーケース、ロアーケース、及びカバー部材の配設関係を示す図である。
図8】実施形態に係る車両用電池パック構造について説明するための、図6のB-B線に沿った模式的部分断面図であって、アッパーケース、ロアーケース、及びカバー部材の配設関係を示す図である。
図9】実施形態に係る車両用電池パック構造の作用効果について説明するための図であって、濡れた路面を走行する車両の車輪から、車両用電池パックに向けて水等の液体が射出された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る車両用電池パック構造について説明する。なお、各図中のFR,RRは、車両前後方向前方、後方を、LH,RHは、車幅方向左方、右方を、UP,DNは、車両上下方向上方、下方のそれぞれを示す。また、車幅方向における車両中心側を車幅方向内方といい、車幅方向内方とは反対側を車幅方向外方という。各図中では車幅方向内方をISで示し、車幅方向外方をOSで示す。なお、以下の説明では、車両前後方向前方、後方、車両上下方向上方、下方を、それぞれ単に「車両前方」「車両後方」「上方」「下方」と称する。なお、同一の機能を有する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
実施形態に係る車両用電池パック構造は、図1及び図2に例示するように、図示しない電動モータにより駆動する電気自動車である車両Vの駆動用電力を供給する車両用電池パック1に用いられる。図示した例では、車両Vの下方側に車両用電池パック1が配設される。
【0011】
車両用電池パック1は、図3乃至図6に示すように、図示しない電池モジュールを収容する外装部材としての筐体5を有する。筐体5は、中空の方形箱形の形状を有し、1以上の単電池を内蔵した電池モジュールを内部に収納する。例示した筐体5は、全体として車両上下方向の寸法が車両前後方向又は車幅方向の寸法に比べて小さい扁平形状を有する。なお、筐体5の形状は、車両用電池パック1の形状、寸法、又は車両における配設方法等に応じて適宜設定することができる。なお、筐体5は、電池モジュールの容量、電圧、温度等を管理するコントローラ、スイッチ、リレー等の図示しない補機類を収容してもよい。
【0012】
筐体5は、アッパーケース6、及びロアーケース10を含む。車両用電池パック1は、例えば筐体5の周縁部に設けられたブラケット等の固定具を介して、図示しないボルト等の締結具によって、サイドメンバ、クロスメンバ等の図示しない車体骨格部材に締結され、車両Vにおいて固定されてもよい。
【0013】
ロアーケース10は電池セルを収容可能に構成された部材である。ロアーケース10は上方が開口した有底箱形の部材であり、平面視で略矩形の形状を備え、例えばアルミニウムにより構成される。ロアーケース10の周縁部には、ロアーケース10の外部と、電池セル等を収容可能な内部と、を水平方向に仕切る側壁11が立設されている。筐体5の側面は、側壁11の水平方向外方側の側面12により構成される。また、ロアーケース10の側面12は、後述する凸壁部13を備える。
【0014】
ロアーケース10の底部には1以上の電池モジュールを配設可能である。ロアーケース10の車両後方側の領域では、電池モジュールが上下に2段以上積まれていてもよい。なお、複数の電池モジュール同士の間には、電池モジュール同士を電気的に接続する、図示しないバスバ等の配線部材が配置されている。
【0015】
アッパーケース6は、平面視で略矩形の形状を備える板状の部材であり、例えば鉄から構成されている。なお、カチオン型電着塗装等の方法を用いてアッパーケース6を防錆処理してもよい。また、アッパーケース6の外周縁部7には後述する縦壁部8が形成されている。
【0016】
アッパーケース6はロアーケース10を上方から覆うように配設される。アッパーケース6でロアーケース10の上方の開口を閉じることにより、筐体5の内部が密閉される。図7及び図8に示すように、アッパーケース6の外周縁部7と、ロアーケース10の側壁11の上端部11aとがボルト16によって締結されることで、アッパーケース6とロアーケース10とが接続され、接続部15が構成される。接続部15はアッパーケース6と、ロアーケース10の上端部11aとの間に形成される隙間であり、後述するシール部材17を含んでいてもよい。
【0017】
図示した例では、ロアーケース10の側壁11の上端部に下方に向けて延在するネジ穴11bを所定の間隔で複数設けられている。アッパーケース6の外周縁部7にはネジ穴11bに対応する位置に上下方向に貫通する貫通穴7aが設けられている。貫通穴7aを通じて上方からボルト16をネジ穴11bに螺合することにより、アッパーケース6とロアーケース10とが接続される。なお、図示した例では中空の側壁11にネジ穴11bを有する別部材を配設しているが、中実の側壁11にネジ穴11bを直接形成してもよい。
【0018】
アッパーケース6とロアーケース10との間にゴム材料等で構成されたシール部材17を介在させて、接続部15を構成してもよい。図示した例では、ロアーケース10の側壁11の上面に沿って延在するシール部材17aと、シール部材17aの水平方向内方側に配設されるシール部材17bと、が接続部15に介在している。
【0019】
なお、図3乃至図6に例示するように、アッパーケース6の車両後方側の領域には、ロアーケース10に配設された電池モジュールの段数に応じて、車両前方側の領域よりも車両上方に向けて膨出する膨出部が形成されてもよい。これにより、車両後方側により多くの電池モジュールを配設することができ、車両用電池パック1を全体として薄型化し省スペース化しつつ、より多くの電池容量を確保することができる。
【0020】
カバー部材20は、接続部15の少なくとも一部を筐体5の側方から覆うように設けられる部材であり、アッパーケース6の外周縁部7の少なくとも一部に取り付けられる。図5に示す例では、カバー部材20は筐体5の車両前方側における車幅方向左方側、及び右方側、並びに車両後方側における車幅方向左方側、及び右方側において、所定の範囲で接続部15を覆うように延在している。なお、アッパーケース6の外周縁部7の全周にわたってカバー部材20を延設してもよい。
【0021】
図7及び図8に例示するカバー部材20は、その延在方向に垂直な断面において略C字状の形状を有し、上壁部21、側壁部22、及び下壁部24を備える。カバー部材20は樹脂、又は金属等から構成されていてもよい。カバー部材20を取り付けることにより、カバー部材20と、ロアーケース10の側面12との間には空間Sが形成される。
【0022】
上壁部21はアッパーケース6の外周縁部7の上に配設されており、図6に示すように外周縁部7に沿って延在する。また、図7及び図8に示すように、上壁部21は、アッパーケース6の外周縁部7よりも水平方向外方に延出している。なお、水平方向内方とは、水平方向における筐体5の外部から内部に向く方向をいい、水平方向外方とは、水平方向内方とは反対向きの方向をいう。図7及び図8においては、車幅方向内方が水平方向内方に相当し、車幅方向外方が水平方向外方に相当する。
【0023】
上壁部21の、ロアーケース10の側壁11に設けられたネジ穴11bに対応する位置には、上下方向に貫通する貫通穴21aが設けられている。ボルト16とネジ穴11bとを螺合する際に、ボルト16を貫通穴21aに通して、ボルト16の頭部とアッパーケース6の外周縁部7との間に上壁部21を介在させることよって、上壁部21はアッパーケース6、及びロアーケース10に共締めされる。
【0024】
側壁部22は、上壁部21の水平方向外方側の縁部から下方に延在する壁部である。側壁部22の下端は後述する凸壁部13よりも下方に位置する。そのため、側壁部22と、ロアーケース10の側面12とは水平方向に対向する。
【0025】
また、カバー部材20の、ロアーケース10の側面12よりも水平方向外方に位置する部分は外縁部23を構成している。換言すれば、カバー部材20は、ロアーケース10の側面12よりも水平方向外方に位置する外縁部23を有する。図示した例では、外縁部23は、上壁部21のうちロアーケース10の側面12よりも水平方向外方に位置する部分と、側壁部22と、下壁部24とを含む。
【0026】
カバー部材20の外縁部23には、ロアーケース10の側面12に向けて延出する下壁部24が形成される。図示した例では、側壁部22の下端から下壁部24が車幅方向内方に向けて延出している。
【0027】
下壁部24の、その延出する方向における先端に位置する先端部24aは、ロアーケース10の側面12と離間するように設定される。そのため、側面12と、下壁部24の先端部24aと、の間には、下方に開口する第1の隙間30が形成されている。なお、図示した例では、側面12と先端部24aとが接触することがないように、側面12と先端部24aとの間の全域にわたって第1の隙間30が延在するが、これに限定されない。側面12と、下壁部24の先端部24aとは部分的に接触してもよい。なお、ある実施形態では、第1の隙間30の、その延在する方向を横切る方向である幅方向における寸法は1mm~5mmである。
【0028】
なお、図6に示すように、上壁部21の上方側には、カバー部材20が延在する方向を横切る方向にリブ25が延設されていてもよい。また、側壁部22の筐体5とは反対側の側面で上下方向にリブ25が延在していてもよい。リブ25を設けることで、カバー部材20の剛性を高め、外力が入力されたことによるカバー部材20の変形を抑制することができる。なお、リブ25の配設位置は、車両用電池パック1の形状、車両Vに対する取付方法、車両用電池パック1の周囲に配設される部材との位置関係等に応じて適宜設定することができる。
【0029】
凸壁部13は、図7及び図8に示すように、ロアーケース10の側面12であって下壁部24より上方の領域から、水平方向外方に突出するように形成されている。図示した例では、ロアーケース10の側面12のうち、下壁部24より上方に延在する領域である上方領域12aから、カバー部材20の側壁部22に向けて凸壁部13が延出している。また、凸壁部13と下壁部24とは接触することがないように離間して配設されているが、これに限定されない。凸壁部13と下壁部24とは部分的に接触していてもよい。
【0030】
凸壁部13の先端部13aは下壁部24の先端部24aよりも水平方向外方に位置している。図示した例では、先端部13aは先端部24aよりも車幅方向外方に位置している。そのため、凸壁部13と下壁部24とは平面視において少なくとも一部が重なるように配設されている。
【0031】
凸壁部13の、その延出する方向における先端に位置する先端部13aは、カバー部材20の側壁部22と離間するように設定されている。そのため、カバー部材20と、凸壁部13の先端部13aと、の間には下方に開口する第2の隙間35が形成されている。なお、図示した例では、側壁部22と先端部13aとが接触することがないように、側壁部22と、凸壁部13の先端部13aとの間の全域にわたって第2の隙間35が延在するが、これに限定されない。側壁部22と、凸壁部13の先端部13aとが部分的に接触していてもよい。なお、ある実施形態では、第2の隙間35の、その延在する方向を横切る方向である幅方向における寸法は1mm~5mmである。
【0032】
縦壁部8は、図示した例では、アッパーケース6の外周縁部7を下方に屈曲することにより形成されており、外周縁部7から凸壁部13に向けて延出している。また、縦壁部8は凸壁部13の先端部13aよりも車幅方向内方において、ロアーケース10の側面12に沿って下方に延在する。即ち、縦壁部8は、凸壁部13の先端部13aよりも水平方向内方の位置においてロアーケース10の側面12に沿って下方に延出している。なお、縦壁部8はロアーケース10の側面12よりも水平方向外方の位置において下方に延出してもよい。その場合、縦壁部8と、ロアーケース10の側面12とは所定の距離を隔てて離間するように隙間が形成される。
【0033】
縦壁部8の下端部8aは、ロアーケース10の側壁11の上端部11aより低い位置に位置する。また、下端部8aと、凸壁部13とは、間に第3の隙間40を介在させて上下方向において対向する。なお、下端部8aと凸壁部13との間の全域にわたって第3の隙間40が延在してもよい。換言すれば、縦壁部8の下端部8aと、凸壁部13とは、非接触の状態となるように離間して配設されてもよい。なお、ある実施形態では、第3の隙間40の、その延在する方向を横切る方向である幅方向における寸法は1mm~5mmである。
【0034】
縦壁部8の構成は図示した例に限定されない。例えば、カバー部材20の上壁部21の、アッパーケース6の外周縁部7よりも車幅方向外方の領域に、下方に向けて延出する縦壁部8を形成してもよい。換言すれば、縦壁部8は、アッパーケース6の外周縁部7又はカバー部材20に、凸壁部13の先端部13aよりも水平方向内方の位置において上下方向に延在するように形成されている。
【0035】
ある実施形態では、縦壁部8は鉄製のアッパーケース6の外周縁部を下方に屈曲して形成され、凸壁部13はアルミニウムから構成される。そのため、縦壁部8と、凸壁部13とは、互いに異なる金属から構成されることとなる。そのような場合であっても、縦壁部8の下端部8aと、凸壁部13とは離間し、非接触の状態であるため、互いの自然電位の差に起因する異種金属接触腐食を抑制することができる。
【0036】
以下、実施形態に係る車両用電池パック構造の作用効果について説明する。
【0037】
(1)実施形態に係る車両用電池パック構造は、電池セルを収容可能なロアーケース10と、ロアーケース10を上方から覆うように配設されるアッパーケース6と、アッパーケース6の外周縁部7の少なくとも一部に取り付けられ、ロアーケース10の側面12よりも水平方向外方に位置する外縁部23を有するカバー部材20と、を備え、カバー部材20の外縁部23には、ロアーケース10の側面12に向けて延出する下壁部24が形成され、ロアーケース10の側面12には、下壁部24より上方の領域から突出し、先端部13aが下壁部24の先端部24aよりも水平方向外方に位置している凸壁部13が形成されており、アッパーケース6の外周縁部7又はカバー部材20には、凸壁部13の先端部13aよりも水平方向内方の位置において上下方向に延在し、かつ、下端部8aがロアーケース10の側壁11の上端部11aより低い位置に位置する縦壁部8が形成される。
【0038】
例えば、図9に示すように、車両Vが濡れた路面Gを走行する場合には、車両Vの車輪W周辺から動水圧の高い水等の液体が矢印D乃至矢印Fで示すように、車両用電池パック1に対して射出される場合がある。そして、当該液体は車両用電池パック1の側方、又は下方に掛かるおそれがある。また、高圧洗車機を用いて車両Vを洗車する場合も同様に、動水圧の高い水、又は洗浄液等の液体が車両用電池パック1に掛かるおそれがある。そして、当該液体の一部はアッパーケース6とロアーケース10とが接続される接続部15に向けて入射することとなる。そのような場合であっても、実施形態に係る車両用電池パック構造によれば、接続部15に向けて射出された液体を、カバー部材20によって遮蔽することができる。更に、カバー部材20の下壁部24とロアーケース10の側面12との間に形成された第1の隙間30に向けて動水圧の高い液体が入射しても、凸壁部13及び縦壁部8で遮蔽され、接続部15に当該液体が直接掛かるのを抑制することができる。即ち、実施形態に係る車両用電池パック構造によれば、アッパーケース6とロアーケース10と間の接続部15に液体が直接掛かるのを抑制することができる。
【0039】
(2)実施形態に係る車両用電池パック構造では、ロアーケース10の側面12と、下壁部24の先端部24aと、の間には下方に開口する第1の隙間30が形成され、カバー部材20と、凸壁部13の先端部13aと、の間には下方に開口する第2の隙間35が形成されている。
【0040】
実施形態に係る車両用電池パック構造によれば、洗車の際や、車両Vが濡れた路面を走行する際に、カバー部材20とアッパーケース6の上面との隙間を経由して空間Sに水、又は洗浄液等の液体が侵入した場合であっても、図7及び図8の矢印Cに示すように、当該液体は第2の隙間35、又は第1の隙間30を経由して空間Sの外部に放出される。即ち、実施形態に係る車両用電池パック構造によれば、空間Sに侵入した液体を第1の隙間30から放出することができる。
【0041】
(3)実施形態に係る車両用電池パック構造では、縦壁部8と、凸壁部13とは、互いに異なる金属からなり、縦壁部8の下端部8aと、凸壁部13とは、非接触の状態となるように離間している。
【0042】
実施形態に係る車両用電池パック構造によれば、縦壁部8と凸壁部13との間に第3の隙間40が介在し、両者は接触しない。そのため、空間Sに液体が侵入した場合であっても、縦壁部8と凸壁部13とが当該液体を介して電気的に接続されることを抑制することができる。そのため、縦壁部8と凸壁部13とが互いに異なる金属から構成される場合における、両者の自然電位が異なることに起因する異種金属接触腐食の発生を抑制することができる。
【0043】
なお、上記実施形態では、電気自動車を例にとって説明したが、実施形態に係る車両用電池パック構造が、ハイブリッド車の駆動用電力を供給する車両用電池パックなどにも適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両用電池パック
6 アッパーケース
7 外周縁部
8 縦壁部
8a 下端部
10 ロアーケース
11 側壁
11a 上端部
12 側面
12a 上方領域
13 凸壁部
13a 先端部
20 カバー部材
23 外縁部
24 下壁部
24a 先端部
30 第1の隙間
35 第2の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9