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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190867
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】インダクタ部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20221220BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20221220BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
H01F41/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099355
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100221512
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FF01
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB13
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】外部電極の素体からの剥がれを低減できるインダクタ部品を提供する。
【解決手段】インダクタ部品は、フィラーを含む素体と、前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと、前記素体内に設けられ、前記コイルに電気的に接続され、外面が前記素体から露出する外部電極とを備え、
前記素体は、前記外部電極と前記素体の内部側で接触し、前記外部電極に沿って配置される外部電極接触部と、前記素体の中心点を含み、前記コイル、前記外部電極および前記外部電極接触部から離隔した中心部とを有し、
前記外部電極接触部における前記フィラーの含有率は、前記中心部における前記フィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラーを含む素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体内に設けられ、前記コイルに電気的に接続され、外面が前記素体から露出する外部電極と
を備え、
前記素体は、
前記外部電極と前記素体の内部側で接触し、前記外部電極に沿って配置される外部電極接触部と、
前記素体の中心点を含み、前記コイル、前記外部電極および前記外部電極接触部から離隔した中心部と
を有し、
前記外部電極接触部における前記フィラーの含有率は、前記中心部における前記フィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下である、インダクタ部品。
【請求項2】
前記素体は、さらに、前記コイルと接触し、前記コイルに沿って配置されるコイル接触部を備え、
前記コイル接触部における前記フィラーの含有率は、前記中心部における前記フィラーの含有率よりも小さい、請求項1に記載のインダクタ部品。
【請求項3】
前記外部電極接触部における前記フィラーの含有率は、前記コイル接触部における前記フィラーの含有率よりも大きい、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記素体は、焼結体である、請求項1から3の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記素体は、ガラスを含む、請求項4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記フィラーは、アルミナである、請求項1から5の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記コイルと前記外部電極は、銀を含む、請求項1から6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
ガラス成分およびフィラーを含む素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回され、ガラス成分を含むコイルと、
前記素体内に設けられ、前記コイルに電気的に接続され、外面が前記素体から露出する外部電極と
を備え、
前記素体は、
前記コイルと接触し、前記コイルに沿って配置されるコイル接触部と、
前記外部電極と前記素体の内部側で接触し、前記外部電極に沿って配置される外部電極接触部と
を有し、
前記外部電極接触部の前記フィラーの含有率は、前記コイル接触部の前記フィラーの含有率と同じかそれよりも大きく、
前記外部電極接触部のSi元素の含有率は、前記コイル接触部のSi元素の含有率よりも小さい、インダクタ部品。
【請求項9】
前記外部電極は、ガラス成分を含まない、請求項8に記載のインダクタ部品。
【請求項10】
素体の材料として、ガラス材とフィラーを含む絶縁ペーストを準備し、コイルの材料として、ガラス材と導電材を含むコイル用導体ペーストを準備し、外部電極の材料として、ガラス材と導電材のうちの少なくとも導電材を含む外部電極用導体ペーストを準備する工程と、
前記絶縁ペーストと、前記コイル用導体ペーストおよび前記外部電極用導体ペーストとを、交互に積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と
を備え、
前記外部電極用導体ペーストの前記ガラス材の含有率は、前記コイル用導体ペーストの前記ガラス材の含有率よりも小さい、インダクタ部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開2018-131353号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタ部品は、素体と、素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと、素体に設けられ、コイルに電気的に接続された外部電極とを有する。素体は、低誘電率および低誘電損失を満たすためにガラス成分を含み、さらに、強度を向上するためにフィラーを含む。
【0003】
また、WO2016/076024号公報(特許文献2)には、インダクタ部品のコイルを形成するための導体ペーストにガラスを添加することが記載されている。さらに、WO2007/080680号公報(特許文献3)には、コイルおよび外部電極を同時に形成するため、同じ導体ペーストを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-131353号公報
【特許文献2】WO2016/076024号公報
【特許文献3】WO2007/080680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のようなインダクタ部品を実際に以下のように製造した。
【0006】
まず、素体の材料として、絶縁ペーストを準備し、コイルの材料および外部電極の材料として、導体ペーストを準備した。絶縁ペーストは、ガラス材とフィラーを含む。導体ペーストは、ガラス材と導電材を含む。その後、絶縁ペーストと、導体ペーストとを、交互に積層して積層体を形成し、積層体を焼成して、インダクタ部品を製造した。なお、絶縁ペーストのガラス材では、強度向上のため、フィラーを含有させ、導体ペーストのガラス材では、コイルおよび外部電極の表面形状を滑らかにするため、フィラーを含有させなかった。
【0007】
ところが、前記インダクタ部品では、外部電極が素体から剥がれるおそれがあることが分かった。本願発明者は、外部電極の剥がれについて以下のように鋭意検討を行って原因を見出した。
【0008】
まず、本願発明者は、上述のように製造したインダクタ部品を切断して観察した。このインダクタ部品の簡略断面図を図5に示す。図5に示すように、外部電極300と接触し外部電極300に沿う素体200の領域(以下、外部電極接触部201という。)が、素体200の他の領域202と異なっていた。なお、図5では、便宜上、素体200のハッチングを省略して描いている。
【0009】
そこで、図6に示すように、図5の一部のSEM画像を取得し、このSEM画像をもとに元素分析を行った。この結果、他の領域202には、多くのフィラーが含まれている一方、外部電極接触部201には、ほとんどフィラーが含まれておらず、ほぼガラス成分のみであった。このように、外部電極接触部201は、フィラーがないため、強度が弱く、このため、外部電極300が、外部電極接触部201にて素体200から剥がれるおそれがあることが分かった。
【0010】
また、本願発明者は、フィラーのない外部電極接触部が形成される原因を以下のように突き止めた。
【0011】
外部電極用導体ペーストを焼成すると、隣接する導電材(例えば、金属粉)は、局部収縮(ネッキング)して焼結し、金属部になる。このとき、ガラス材(例えば、ガラス粉)は、軟化し、金属部の間を流動してガラス部になる。この際、軟化したガラス部は、導電材の収縮により外側に押し出され、導電材の焼結体である外部電極の外周縁へ移動して、素体の一部となる。このように外部電極の外周縁に押し出されたガラス部は、素体が含むガラス材と異なり、フィラーを含んでおらず、このガラス部により、外部電極接触部が形成される。
【0012】
そこで、本開示は、外部電極の素体からの剥がれを低減できるインダクタ部品およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
フィラーを含む素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回されたコイルと、
前記素体内に設けられ、前記コイルに電気的に接続され、外面が前記素体から露出する外部電極と
を備え、
前記素体は、
前記外部電極と前記素体の内部側で接触し、前記外部電極に沿って配置される外部電極接触部と、
前記素体の中心点を含み、前記コイル、前記外部電極および前記外部電極接触部から離隔した中心部と
を有し、
前記外部電極接触部における前記フィラーの含有率は、前記中心部における前記フィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下である。
【0014】
ここで、フィラーの含有率は、素体の断面における単位面積当たりのフィラーの面積である。素体の中心部とは、素体の中心点から半径10μm以内の部分をいう。中心点とは、例えば、素体が長方形である場合、素体の長さ、幅、および高さの半分となる位置にある点である。
【0015】
前記実施形態によれば、外部電極接触部におけるフィラーの含有率は、中心部におけるフィラーの含有率とほぼ同等となる。このため、外部電極の周囲における外部電極接触部の強度を向上でき、外部電極の素体からの剥がれを低減できる。
【0016】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記素体は、さらに、前記コイルと接触し、前記コイルに沿って配置されるコイル接触部を備え、
前記コイル接触部における前記フィラーの含有率は、前記中心部における前記フィラーの含有率よりも小さい。
【0017】
前記実施形態によれば、コイルの周囲におけるコイル接触部は、柔らかく、つまり、コイル接触部の軟化点は、低い。このため、コイル用導体ペーストに含まれる導電材およびガラス材の挙動に関して、焼成時に、導電材は、軟化したガラス材の中で柔軟に動きながら焼結することができ、この結果、導電材の焼結体であるコイルの表面形状が滑らかになる。したがって、高周波において、コイルの電気抵抗が下がり、Q値を向上できる。
【0018】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部電極接触部における前記フィラーの含有率は、前記コイル接触部における前記フィラーの含有率よりも大きい。
【0019】
前記実施形態によれば、外部電極接触部の強度を向上して外部電極の素体からの剥がれを低減しつつ、コイル接触部の軟化点を低くしてコイルの表面形状を滑らかにできる。
【0020】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記素体は、焼結体である。好ましくは、前記素体は、ガラスを含む。
【0021】
前記実施形態によれば、焼成工程を経てインダクタ部品を製造しても、外部電極接触部におけるフィラーの含有率は、中心部におけるフィラーの含有率とほぼ同等とすることができ、外部電極の素体からの剥がれを低減できるインダクタ部品を容易に製造することができる。また、焼結体は外力による割れや欠けが発生する場合があるため、外部電極接触部の強度向上が効果的に発揮される。
【0022】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記フィラーは、アルミナである。
【0023】
前記実施形態によれば、素体が、例えば、ガラス成分を含む場合、アルミナの曲げ強度は、ガラス材の曲げ強度の約10倍であるため、素体の強度をより向上できる。
【0024】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記コイルと前記外部電極は、銀を含む。
【0025】
前記実施形態によれば、銀の電気抵抗率は小さいため、コイルと外部電極の電気抵抗を低減でき、電力損失を低減できる。
【0026】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
ガラス成分およびフィラーを含む素体と、
前記素体内に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻き回され、ガラス成分を含むコイルと、
前記素体内に設けられ、前記コイルに電気的に接続され、外面が前記素体から露出する外部電極と
を備え、
前記素体は、
前記コイルと接触し、前記コイルに沿って配置されるコイル接触部と、
前記外部電極と前記素体の内部側で接触し、前記外部電極に沿って配置される外部電極接触部と
を有し、
前記外部電極接触部の前記フィラーの含有率は、前記コイル接触部の前記フィラーの含有率と同じかそれよりも大きく、
前記外部電極接触部のSi元素の含有率は、前記コイル接触部のSi元素の含有率よりも小さい。
【0027】
ここで、フィラーの含有率は、素体の断面における単位面積当たりのフィラーの面積である。Si元素の含有率は、素体の断面における単位面積当たりのSi元素の面積である。外部電極接触部のフィラーの含有率は、コイル接触部のフィラーの含有率と同じかそれよりも大きくとは、コイル接触部のフィラーの含有率が、ゼロであることを含む。
【0028】
前記実施形態によれば、外部電極接触部では、コイル接触部と比べて、フィラーの含有率は大きく、Si元素、すなわちガラス成分の含有率は小さくなるため、外部電極の周囲においてフィラーが存在する。このため、外部電極の周囲における外部電極接触部の強度を向上でき、外部電極の素体からの剥がれを低減できる。
【0029】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記外部電極は、ガラス成分を含まない。
【0030】
前記実施形態によれば、外部電極の表面にガラス成分がないため、外部電極にめっきを施す際、めっきの外部電極に対する付着性をより向上できる。
【0031】
好ましくは、インダクタ部品の製造方法の一実施形態では、 素体の材料として、ガラス材とフィラーを含む絶縁ペーストを準備し、コイルの材料として、ガラス材と導電材を含むコイル用導体ペーストを準備し、外部電極の材料として、ガラス材と導電材のうちの少なくとも導電材を含む外部電極用導体ペーストを準備する工程と、
前記絶縁ペーストと、前記コイル用導体ペーストおよび前記外部電極用導体ペーストとを、交互に積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と
を備え、
前記外部電極用導体ペーストの前記ガラス材の含有率は、前記コイル用導体ペーストの前記ガラス材の含有率よりも小さい。
【0032】
前記実施形態によれば、外部電極用導体ペーストを焼成すると、隣接する導電材(例えば、金属粉)は、局部収縮して焼結し、金属部になる。このとき、ガラス材(例えば、ガラス粉)は、軟化し、金属部の間を流動してガラス部になる。この際、軟化したガラス部は、導電材の収縮により外側に押し出され、導電材の焼結体である外部電極の外周縁へ移動して、素体の一部となる。このように外部電極の外周縁に押し出されたガラス部により、外部電極接触部が形成される。ここで、外部電極用導体ペーストのガラス材の含有率は、コイル用導体ペーストのガラス材の含有率よりも小さいとは、外部電極用導体ペーストのガラス材の含有率が、ゼロの場合を含む。すなわち、外部電極用導体ペーストに含まれるガラス材は、少ないかゼロであるため、外部電極の周囲における外部電極接触部へのガラス材の押し出しを低減することで、外部電極接触部の強度を向上でき、外部電極の素体からの剥がれを低減できる。なお、ペーストにおけるガラス材の含有率とは、ペーストの全体重量に対する、ペースト中に混合されたガラス材の重量の割合(重量%)である。
【発明の効果】
【0033】
本開示の一態様であるインダクタ部品およびその製造方法によれば、外部電極の素体からの剥がれを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】インダクタ部品の第1実施形態を示す透視斜視図である。
図2】インダクタ部品の分解斜視図である。
図3】インダクタ部品の断面図である。
図4】インダクタ部品の第2実施形態を示す断面図である。
図5】従来のインダクタ部品の簡略断面図である。
図6】従来のインダクタ部品の画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0036】
(第1実施形態)
<インダクタ部品の構成>
図1は、インダクタ部品の第1実施形態を示す透視斜視図である。図2は、インダクタ部品の分解斜視図である。図1図2に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10内に設けられ軸に沿って螺旋状に巻き回されたコイル20と、素体10内に設けられコイル20に電気的に接続され、外面が素体10から露出する第1外部電極30および第2外部電極40とを有する。図1では、素体10は、構造を容易に理解できるよう、透明に描かれているが、半透明や不透明であってもよい。
【0037】
インダクタ部品1は、第1、第2外部電極30,40を介して、図示しない実装基板の配線に電気的に接続される。インダクタ部品1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ部品1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
【0038】
素体10は、長さ、幅および高さを有し、長さが幅および高さより大きい直方体形状である。図示するように、X方向は、素体10の長さ方向であり、Y方向は、素体10の幅方向であり、Z方向は、素体10の高さ方向である。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。素体10の表面は、長さ方向の両端側にある第1端面15および第2端面16と、幅方向の両端側にある第1側面13および第2側面14と、高さ方向の両端側にある底面17および天面18とを含む。
なお、底面17は、第1、第2外部電極30,40がともに露出する面であり、第1端面15は第1外部電極30のみが露出する面、第2端面16は第2外部電極40のみが露出する面である。素体10では、この第1、第2外部電極30,40の露出位置に基づいて、長さ、幅および高さを定義することができる。
【0039】
素体10は、複数の絶縁層11を積層して構成される。絶縁層11の積層方向は、素体10の第1、第2端面15,16および底面17に、平行な方向(Y方向)である。すなわち、絶縁層11は、XZ平面に広がった主面を有する層状である。本願における「平行」とは、厳密な平行関係に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮し、実質的な平行関係も含む。なお、素体10は、焼成などによって、複数の絶縁層11同士の界面が明確となっていない場合がある。
【0040】
素体10は、ガラスおよびフィラーを含む。具体的に述べると、絶縁層11は、硼珪酸ガラスを主成分とする材料からなる。例えば、絶縁層11は、B、Si、OおよびKを含む非晶質材料からなる母材と、結晶性フィラーとを含有する。素体10が結晶性フィラーを含有すると、素体10は、インダクタ部品の実装時の衝撃や実装基板のたわみ時の応力によるクラックの発生を抑制することができる。つまり、インダクタ部品1の強度を高めることができる。
【0041】
B、Si、OおよびKを含む非晶質材料は、例えば、B、Si、OおよびKを含む硼珪酸ガラスである。非晶質材料は、硼珪酸ガラス以外に、例えば、SiO2、B23、K2O、Li2O、CaO、ZnO、Bi23、および/またはAl23などを含むガラス、例えば、SiO2-B23-K2O系ガラス、SiO2-B23-Li2O-Ca系ガラス、SiO2-B23-Li2O-CaO-ZnO系ガラス、またはBi23-B23-SiO2-Al23系ガラスを含んでもよい。
【0042】
結晶性フィラーは、例えば、Al、Si、Ti、Zr、Ca、Mg、FeおよびMnの何れかを含むことが好ましい。結晶性フィラーが上記元素の何れかを含むと、インダクタ部品1の強度をさらに向上させることができる。
【0043】
コイル20は、例えば、Ag、Cu、Auやこれらを主成分とする合金などの導電性材料から構成される。コイル20は、絶縁層11の積層方向に沿って、螺旋状に巻き回されている。コイル20の第1端は、第1外部電極30に接続され、コイル20の第2端は、第2外部電極40に接続されている。なお、本実施形態では、コイル20と第1、第2外部電極30,40とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、コイルと外部電極とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0044】
コイル20は、軸が素体10の幅方向と平行となるように、軸に沿って巻回されている。つまり、コイル20の軸は、絶縁層11の積層方向(Y方向)と一致する。コイル20の軸は、コイル20の螺旋形状の中心軸を意味する。
【0045】
コイル20は、巻回部23と、巻回部23の第1端と第1外部電極30の間に接続された第1引出部21と、巻回部23の第2端と第2外部電極40の間に接続された第2引出部22とを有する。本実施形態では、巻回部23と第1、第2引出部21,22とは一体化されており、明確な境界は存在しないが、これに限られず、巻回部と引出部とが異種材料や異種工法で形成されることにより、境界が存在していても良い。
【0046】
巻回部23は、軸に沿って螺旋状に巻回されている。つまり、巻回部23とは、軸に平行な方向からみたときに重なり合う螺旋状に巻回された部分を指す。第1、第2引出部21,22とは、重なり合う部分から外れた部分を指す。巻回部23は、軸方向からみて、略長方形に形成されているが、この形状に限定されない。巻回部23の形状は、例えば、円形、楕円形、その他の多角形などであってもよい。
第1引出部21は、巻回部23、すなわち上記重なり合う螺旋状に巻回された部分から外れて第1外部電極30に接続された部分を指す。第2引出部22は、同様に、巻回部23から外れて第2外部電極40に接続された部分を指す。
【0047】
コイル20は、軸に沿って積層された複数のコイル配線24と、軸に沿って延在して軸方向に隣り合うコイル配線24を接続するビア配線26とを有する。複数のコイル配線24は、それぞれが平面に沿って巻回され、電気的に直列に接続されながら螺旋を構成している。
【0048】
コイル配線24は、軸方向に直交する絶縁層11の主面(XZ平面)上に巻回されて形成される。コイル配線24の巻回数は、1周未満であるが、1周以上であってもよい。ビア配線26は、絶縁層11を厚み方向(Y方向)に貫通する。そして、積層方向に隣り合うコイル配線24は、ビア配線26を介して、電気的に直列に接続される。このように、複数のコイル配線24は、互いに電気的に直列に接続されながら、螺旋を構成している。コイル配線24は、1層のコイル導体層25から構成される。なお、コイル配線24は、互いに面接触する複数のコイル導体層25から構成されていてもよい。
【0049】
第1外部電極30および第2外部電極40は、例えば、コイル20と同様の導電性材料から構成される。第1外部電極30は、第1端面15および底面17に連続して設けられている。第1外部電極30は、第1端面15および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。第2外部電極40は、第2端面16および底面17に連続して設けられている。第2外部電極40は、第2端面16および底面17から露出するように素体10に埋め込まれている。
【0050】
第1外部電極30および第2外部電極40は、素体10(絶縁層11)に埋め込まれた複数の第1外部電極導体層33および第2外部電極導体層43が積層された構成を有している。外部電極導体層33は、第1端面15および底面17に沿って延在しており、外部電極導体層43は、第2端面16および底面17に沿って延在している。これにより、素体10内に外部電極30,40を埋め込むことができるため、素体10に外部電極を外付けする構成に比べて、インダクタ部品の小型化又は同一実装面積における素体10の体積の大型化を図ることができる。また、コイル20と外部電極30,40を同一工程で形成することができ、コイル20と外部電極30,40との間の位置関係のばらつきを低減することで、インダクタ部品1の電気的特性のばらつきを低減することができる。
なお、第1外部電極30および第2外部電極40においては、第1外部電極導体層33同士および第2外部電極導体層43同士は、図示しないビア配線によって、互いに接続される。
【0051】
図3は、インダクタ部品1の素体10の中心点10aを含むXZ断面図である。なお、図3では、便宜上、素体10のハッチングを省略して描いている。図3に示すように、素体10は、第1外部電極接触部101、第2外部電極接触部102および中心部103を有する。
【0052】
第1外部電極接触部101は、第1外部電極30と素体10の内部側で接触し、第1外部電極30に沿って配置される。第2外部電極接触部102は、第2外部電極40と素体10の内部側で接触し、第2外部電極40に沿って配置される。
【0053】
中心部103は、素体10の中心点10aを含み、コイル20、第1、第2外部電極30,40および第1、第2外部電極接触部101,102から離隔している。素体10の中心部103とは、素体10の中心点10aから半径10μm以内の部分をいう。中心点10aとは、素体10のX方向、Y方向およびZ方向のそれぞれの半分となる点である。
【0054】
第1外部電極接触部101におけるフィラーの含有率は、中心部103におけるフィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下である。第2外部電極接触部102におけるフィラーの含有率は、中心部103におけるフィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下である。
【0055】
ここで、フィラーの含有率は、以下のようにして算出する。素体10の中心点10aを通りXZ平面に平行な断面のSEM画像を取得し、このSEM画像をもとに元素分析を行って、フィラーの含有率を判別する。具体的に述べると、このSEM画像から、中心部103における単位面積当たりのフィラーに特有の成分である元素のマッピングされた面積を求め、同様にして、第1外部電極接触部101における単位面積当たりのフィラーの面積を求め、また、第2外部電極接触部102における単位面積当たりのフィラーの面積を求める。なお、Si元素の含有率は、上記と同様に行う。例えば、上記において、Si元素のマッピングされた面積を求めればよい。
【0056】
なお、素体10の中心点10aを通りXZ平面に平行な断面であっても、例えば、隣り合う第1外部電極導体層33の層間を通って、第1外部電極導体層33自体に交差しない場合がある。このとき、かかる断面付近のXZ断面であって第1外部電極導体層33に交差する断面において、第1外部電極接触部101におけるフィラーの含有率を測定する。第2外部電極接触部102におけるフィラーの含有率の測定についても同様である。
【0057】
上記構成によれば、第1、第2外部電極接触部101,102におけるフィラーの含有率は、それぞれ、中心部103におけるフィラーの含有率とほぼ同等となる。このため、第1、第2外部電極30,40の周囲における第1、第2外部電極接触部101,102の強度を向上でき、第1、第2外部電極30,40の素体10からの剥がれを低減できる。
【0058】
ここで、第1、第2外部電極接触部101,102のフィラー含有率は、それぞれ、中心部103のフィラー含有率とほぼ同等となるため、第1、第2外部電極接触部101,102の材料と中心部103の材料とが、ほぼ同じ場合がある。このとき、従来の外部電極接触部と異なり、第1、第2外部電極接触部101,102は、素体10の他の領域(特に、第1、第2外部電極接触部101,102近傍の領域)と区別がつかない場合がある。
【0059】
このように、第1、第2外部電極接触部101,102が、素体10の他の領域と区別がつかない場合も考慮して、第1外部電極接触部101は、第1外部電極30から少なくとも5μmまでの領域とし、第2外部電極接触部102は、第2外部電極40から少なくとも5μmまでの領域とする。
なお、第1外部電極接触部101または第2外部電極接触部102のフィラーの含有率が、中心部103のフィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下であってもよい。
【0060】
好ましくは、素体10は、さらに、コイル接触部104を有する。コイル接触部104は、コイル20と接触し、コイル20に沿って配置される。つまり、コイル接触部104は、各コイル配線24の外面に沿って配置され、各コイル配線24の外面を覆う。コイル接触部104におけるフィラーの含有率は、中心部103におけるフィラーの含有率よりも小さい。
【0061】
上記構成によれば、コイル20の周囲におけるコイル接触部104は、柔らかく、つまり、コイル接触部104の軟化点は、低い。このため、コイル用導体ペーストに含まれる導電材およびガラス材の挙動に関して、焼成時に、導電材は、軟化したガラス材の中で柔軟に動きながら焼結することができ、この結果、導電材の焼結体であるコイル20の表面形状が滑らかになる。したがって、高周波において、コイル20の電気抵抗が下がり、Q値を向上できる。
【0062】
なお、コイル接触部104のフィラー含有率は、中心部103のフィラー含有率とほぼ同等であってもよく、このとき、コイル接触部104は、素体10の他の領域(特に、コイル接触部104近傍の領域)と区別がつかない場合がある。このような場合も考慮して、コイル接触部104は、コイル20(コイル配線24)から少なくとも2μmまでの領域とする。
好ましくは、第1外部電極接触部101におけるフィラーの含有率は、コイル接触部104におけるフィラーの含有率よりも大きい。また、第2外部電極接触部102におけるフィラーの含有率は、コイル接触部104におけるフィラーの含有率よりも大きい。
【0063】
上記構成によれば、第1、第2外部電極接触部101,102の強度を向上して第1、第2外部電極30,40の素体10からの剥がれを低減しつつ、コイル接触部104の軟化点を低くしてコイル20の表面形状を滑らかにできる。
【0064】
なお、第1外部電極接触部101または第2外部電極接触部102のフィラーの含有率が、コイル接触部104のフィラーの含有率よりも大きくてもよい。
【0065】
好ましくは、素体10は、焼結体である。上記構成によれば、焼成工程を経てインダクタ部品1を製造しても、第1、第2外部電極接触部101,102におけるフィラーの含有率は、中心部103におけるフィラーの含有率とほぼ同等とすることができ、第1、第2外部電極30,40の素体10からの剥がれを低減できるインダクタ部品1を容易に製造することができる。また、焼結体は外力による割れや欠けが発生する場合があるため、第1、第2外部電極接触部101,102の強度向上が効果的に発揮される。
【0066】
なお、素体10は、樹脂であってもよい。この場合、外部電極接触部のフィラーの含有率を何らかの方法で中心部のフィラーの含有率と同等となるようにすればよい。例えば、ガラス体に外部電極を作成し焼成した後に、ガラス体をエッチングで削って外部電極を切り出して、その後に、外部電極を樹脂で固めてもよい。
【0067】
好ましくは、フィラーは、アルミナである。上記構成によれば、素体10が、例えば、ガラス成分を含む場合、アルミナの曲げ強度は、ガラス材の曲げ強度の約10倍であるため、素体10の強度をより向上できる。
【0068】
好ましくは、コイル20と第1、第2外部電極30,40は、銀を含む。上記構成によれば、銀の電気抵抗率は小さいため、コイル20と第1、第2外部電極30,40の電気抵抗を低減でき、電力損失を低減できる。
【0069】
<インダクタ部品の製造方法>
次に、インダクタ部品1の製造方法について説明する。
【0070】
まず、素体10の材料として、ガラス材とフィラーを含む絶縁ペーストを準備する。コイル20の材料として、ガラス材と導電材を含むコイル用導体ペーストを準備する。第1、第2外部電極30,40の材料として、ガラス材と導電材のうちの少なくとも導電材を含む外部電極用導体ペーストを準備する。外部電極用導体ペーストのガラス材の含有率は、コイル用導体ペーストのガラス材の含有率よりも小さいものを用いる。
【0071】
その後、絶縁ペーストと、コイル用導体ペーストおよび外部電極用導体ペーストとを、交互に積層して積層体を形成し、積層体を焼成する。
【0072】
外部電極用導体ペーストを焼成すると、隣接する導電材(例えば、金属粉)は、局部収縮して焼結し、金属部になる。このとき、ガラス材(例えば、ガラス粉)は、軟化し、金属部の間を流動してガラス部になる。この際、軟化したガラス部は、導電材の収縮により外側に押し出され、導電材の焼結体である外部電極30,40の外周縁へ移動して、素体10の一部となる。このように外部電極30,40の外周縁に押し出されたガラス部により、外部電極接触部101,102が形成される。なお、コイル接触部104の形成についても同様である。
【0073】
したがって、外部電極用導体ペーストに含まれるガラス材は、少ないかゼロであるため、外部電極30,40の周囲における外部電極接触部101,102へのガラス材の押し出しを低減することで、外部電極接触部101,102のフィラーの含有率を、コイル接触部104のフィラーの含有率に比べて、中心部103のフィラーの含有率に近づけることができる。例えば、外部電極接触部101,102のフィラーの含有率を、中心部103のフィラーの含有率とほぼ同等とできる。この結果、外部電極接触部101,102の強度を向上でき、外部電極30,40の素体10からの剥がれを低減できる。
【0074】
好ましくは、外部電極接触部101,102のフィラーの含有率が、中心部103のフィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下となるように、準備工程において、外部電極用導体ペーストのガラス材の含有率を調整する。
【0075】
なお、準備工程において、外部電極用導体ペーストのガラス材の含有率を、コイル用導体ペーストのガラス材の含有率よりも小さくする代わりに、外部電極用導体ペーストのフィラーの含有率を、コイル用導体ペーストのフィラーの含有率よりも大きくしてもよい。この場合であっても、外部電極接触部101,102のフィラーの含有率を、コイル接触部104のフィラーの含有率に比べて、中心部103のフィラーの含有率に近づけることができ、この結果、外部電極接触部101,102の強度を向上でき、外部電極30,40の素体10からの剥がれを低減できる。
【0076】
(第2実施形態)
図4は、インダクタ部品の第2実施形態を示すXZ平面に平行な断面図である。第1実施形態では、外部電極接触部のフィラー含有率と中心部のフィラー含有率とを比較しているが、第2実施形態では、外部電極接触部のフィラー含有率とコイル接触部のフィラー含有率とを比較し、かつ、外部電極接触部のガラス成分含有率としてのSi元素含有率とコイル接触部のガラス成分含有率としてのSi元素含有率とを比較する。第2実施形態において、この第1実施形態との相違点以外のその他の構成は、特に記載しない限り、第1実施形態と同じ構成であり、その説明を省略する。
【0077】
図4に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、第1、第2外部電極接触部101,102のフィラーの含有率は、それぞれ、コイル接触部104のフィラーの含有率と同じかそれよりも大きい。また、第1、第2外部電極接触部101,102のSi元素の含有率は、それぞれ、コイル接触部104のSi元素の含有率よりも小さい。ここで、フィラーの含有率およびSi元素の含有率は、第1実施形態で説明した測定方法により、算出される。
【0078】
上記構成によれば、第1、第2外部電極接触部101,102では、コイル接触部104と比べて、フィラーの含有率は大きく、Si元素、すなわちガラス成分の含有率は小さくなるため、第1、第2外部電極30,40の周囲においてフィラーが存在する。このため、第1、第2外部電極30,40の周囲における第1、第2外部電極接触部101,102の強度を向上でき、第1、第2外部電極30,40の素体10からの剥がれを低減できる。
【0079】
なお、第1外部電極接触部101または第2外部電極接触部102のフィラーの含有率が、コイル接触部104のフィラーの含有率よりも大きくてもよい。また、第1外部電極接触部101または第2外部電極接触部102のSi元素の含有率が、コイル接触部104のSi元素の含有率よりも小さくてもよい。
【0080】
好ましくは、第1、第2外部電極30,40は、それぞれ、ガラス成分を含まない。上記構成によれば、第1、第2外部電極30,40の表面にガラス成分がないため、第1、第2外部電極30,40にめっきを施す際、めっきの第1、第2外部電極30,40に対する付着性をより向上できる。例えば、外部電極用導体ペーストにガラス材を含めないことで、焼成時に、第1、第2外部電極30,40と素体10の内部側で接触し第1、第2外部電極30,40に沿って配置される第1、第2外部電極接触部101,102へのガラス材の流出が発生せず、第1、第2外部電極接触部101,102の強度を、素体10の他の領域(コイル接触部104を除く)と同等にできる。
【0081】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。具体的に述べると、コイルの数量および外部電極の数量を増加してもよく、コイルを構成するコイル配線の数量を増加または減少してもよい。
【0082】
前記第1、前記第2実施形態では、コイルの軸は、素体の側面に直交しているが、素体の端面に直交してもよく、または、素体の底面に直交してもよい。
【0083】
前記第1、前記第2実施形態では、外部電極は、素体の端面および底面に連続して設けられているが、素体の端面または底面のみに設けられていてもよく、または、素体の端面、底面および天面に連続して設けられていてもよい。
【0084】
第1実施形態において、外部電極の数量は、1つまたは3つ以上であってもよい。外部電極が3つ以上在する場合、つまり、外部電極接触部が3つ以上存在する場合、少なくとも1つの外部電極接触部のフィラーの含有率は、中心部のフィラーの含有率に対して0.9倍以上1.1倍以下であってもよい。また、少なくとも1つの外部電極接触部のフィラーの含有率は、コイル接触部のフィラーの含有率よりも大きくてもよい。
【0085】
第2実施形態において、外部電極の数量は、1つまたは3つ以上であってもよい。外部電極が3つ以上在する場合、つまり、外部電極接触部が3つ以上存在する場合、少なくとも1つの外部電極接触部のフィラーの含有率は、コイル接触部のフィラーの含有率よりも大きくてもよい。また、少なくとも1つの外部電極接触部のSi元素の含有率は、コイル接触部のSi元素の含有率よりも小さくてもよい。
【0086】
(実施例)
以下、インダクタ部品1の製造方法の実施例を説明する。
【0087】
まず、硼珪酸ガラスを主成分とする絶縁ペーストをスクリーン印刷によりキャリアフィルム等の基材上に塗布することを繰り返して、絶縁層を形成する。この絶縁層は、コイル導体層よりも外側に位置する外層用絶縁層となる。なお、基材は任意の工程にて絶縁層から剥がされ、インダクタ部品の状態では残らない。
【0088】
その後、絶縁層上に感光性導体ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、コイル導体層及び外部電極導体層を形成する。具体的には、絶縁層上にAgを金属主成分とする感光性導体ペーストをスクリーン印刷により塗布して、感光性導体ペースト層を形成する。さらに、感光性導体ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これによりコイル導体層および外部電極導体層が絶縁層上に形成される。この時、フォトマスクによりコイル導体層および外部電極導体層は所望のパターンに描くことができる。
【0089】
そして、絶縁層上に感光性絶縁ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、開口及びビアホールが設けられた絶縁層を形成する。具体的には、絶縁層上に感光性絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布して感光性絶縁ペースト層を形成する。さらに、感光性絶縁ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。この時、フォトマスクにより外部電極導体層の上方に開口を、コイル導体層の端部にビアホールを、それぞれ設けるよう、感光性絶縁ペースト層をパターニングする。
【0090】
その後、開口及びビアホールが設けられた絶縁層上に感光性導体ペースト層を塗布形成し、フォトリソグラフィ工程により、コイル導体層及び外部電極導体層を形成する。具体的には、開口及びビアホールを埋めるように絶縁層上にAgを金属主成分とする感光性導体ペーストをスクリーン印刷により塗布して、感光性導体ペースト層を形成する。さらに、感光性導体ペースト層にフォトマスクを介して紫外線等を照射し、アルカリ溶液等で現像する。これにより、開口を介して下層側の外部電極導体層に接続された外部電極導体層と、ビアホールを介して下層側のコイル導体層と接続されたコイル導体層とが絶縁層上に形成される。
【0091】
上記のような絶縁層とコイル導体層及び外部電極導体層を形成する工程を繰り返すことにより、複数の絶縁層上に形成されたコイル導体層からなるコイル及び複数の絶縁層上に形成された外部電極導体層からなる外部電極が形成される。さらに、コイル及び外部電極が形成された絶縁層上に、絶縁ペーストをスクリーン印刷により塗布することを繰り返して、絶縁層を形成する。この絶縁層は、コイル導体層よりも外側に位置する外層用絶縁層となる。なお、以上の工程において絶縁層上にコイル及び外部電極の組を行列状に形成すれば、マザー積層体を得ることができる。
【0092】
その後、ダイシング等によりマザー積層体を複数の未焼成の積層体にカットする。マザー積層体のカット工程では、カットにより形成されるカット面において外部電極をマザー積層体から露出させる。この際、一定量以上のカットずれが生じると、上記工程で形成されたコイル導体層の外周縁が端面または底面に出現する。
【0093】
そして、未焼成の積層体を所定条件で焼成しコイルおよび外部電極を含む素体を得る。この素体に対してバレル加工を施して適切な外形サイズに研磨するとともに、外部電極が積層体から露出している部分に、2μm~10μmの厚さを有するNiめっき及び2μm~10μmの厚さを有するSnめっきを施す。以上の工程を経て、0.4mm×0.2mm×0.2mmのインダクタ部品が完成する。
【0094】
なお、導体パターンの形成工法は、上記に限定されるものではなく、例えば、導体パターン形状に開口したスクリーン版による導体ペーストの印刷積層工法でも良いし、スパッタ法や蒸着法、箔の圧着等により形成した導体膜をエッチングによりパターン形成する方法であっても良いし、セミアディティブ法のようにネガパターンを形成してめっき膜により導体パターンを形成した後、不要部を除去する方法であっても良い。さらに、導体パターンを多段形成することにより高アスペクトすることで、高周波での抵抗による損失を低減することができる。より具体的には、上記導体パターンの形成を繰り返すプロセスであっても良いし、セミアディティブプロセスで形成した配線を繰り返し重ねるプロセスであっても良いし、積み重ねの一部をセミアディティブプロセスで形成し、その他はめっき成長させた膜をエッチングで形成するプロセスであっても良いし、セミアディティブプロセスで形成した配線をさらにめっきで成長させ高アスペクト化するプロセスを組み合わせても良い。
【0095】
また、導体材料は上記のようなAgペーストに限定されるものではなく、スパッタ法や蒸着法、箔の圧着、めっき等により形成されるAg,Cu,Auといった良導体のものであれば良い。また、絶縁層ならびに開口、ビアホールの形成方法は上記に限定されるものではなく、絶縁材料シートの圧着やスピンコート、スプレー塗布後、レーザーやドリル加工によって開口される方法でも良い。
【0096】
また、絶縁材料は上記のようなガラス、セラミックス材料に限定されるものではなく、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、ポリマー樹脂のような有機材料でも良いし、ガラスエポキシ樹脂のような複合材料でも良いが、誘電率、誘電損失の小さいものが望ましい。
【0097】
また、インダクタ部品のサイズは上記に限定されるものではない。また、外部電極の形成方法について、カットにより露出させた外部導体にめっき加工を施す方法に限定されるものではなく、カット後にさらに導体ペーストのディップやスパッタ法等によって外部電極を形成し、その上にめっき加工を施す方法でもよい。
【符号の説明】
【0098】
1,1A インダクタ部品
10 素体
10a 中心点
11 絶縁層
13 第1側面
14 第2側面
15 第1端面
16 第2端面
17 底面
18 天面
20 コイル
21 第1引出部
22 第2引出部
23 巻回部
24 コイル配線
25 コイル導体層
26 ビア配線
30 第1外部電極
40 第2外部電極
101 第1外部電極接触部
102 第2外部電極接触部
103 中心部
104 コイル接触部
図1
図2
図3
図4
図5
図6