(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190868
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】バッテリ制御装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/387 20190101AFI20221220BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20221220BHJP
G01R 31/3842 20190101ALI20221220BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20221220BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20221220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/3828
G01R31/3842
G01R31/367
H01M10/48 P
H02J7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099356
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 健大
(72)【発明者】
【氏名】吉田 寛史
(72)【発明者】
【氏名】須貝 信一
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216AB01
2G216BA02
2G216BA03
2G216BA65
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB02
5G503DA04
5G503DA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】本明細書は、バッテリの満充電容量を高い精度で推定する技術を提供する。
【解決手段】バッテリ制御装置は、バッテリの満充電容量を学習する。バッテリ制御装置は、充放電電流の積算値に基づいて、充電が終了した各タイミングで満充電容量の推定値を算出する算出部を備える。バッテリ制御装置は、満充電容量の今回の推定値を算出することに応じて、満充電容量の今回の学習値を算出する学習部を備える。今回の学習値は、「今回の学習値=前回の推定値×(1-反映係数)+今回の推定値×反映係数」の数式に基づいて算出される加重移動平均値である。反映係数は、前回の学習値に対する今回の推定値の比率である変化比率が1より大きくなることに応じて大きくなる係数である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの満充電容量を学習するバッテリ制御装置であって、
充放電電流の積算値に基づいて、充電が終了した各タイミングで満充電容量の推定値を算出する算出部と、
満充電容量の今回の推定値を算出することに応じて、満充電容量の今回の学習値を算出する学習部であって、前記今回の学習値は、「今回の学習値=前回の推定値×(1-反映係数)+今回の推定値×反映係数」の数式に基づいて算出される加重移動平均値である、前記学習部と、
を備え、
前記反映係数は、前回の学習値に対する今回の推定値の比率である変化比率が1より大きくなることに応じて大きくなる係数である、バッテリ制御装置。
【請求項2】
前記変化比率の1からの増分量が予め定められたしきい値以上になることに応じて、前記反映係数が非連続的に大きくなっている、請求項1に記載のバッテリ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、再充電が可能なバッテリの制御装置に関する。特に、満充電容量を正確に推定することのできるバッテリ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、経時劣化により満充電容量が変化する。満充電容量とは、充電率100%に対応するバッテリの電気容量を意味する。満充電容量が変化すると、バッテリの充電率(残容量と満充電容量の比)と、バッテリの実際の残容量が整合しなくなる。従ってバッテリ制御装置は、定期的に満充電容量を再推定して学習値を更新することが望ましい。
【0003】
特許文献1の技術では、満充電容量の前回の学習値に、満充電容量の今回の測定値に対して重み係数を乗じた値を加算することで、満充電容量の学習値を更新している。重み係数を用いた加重移動平均をとることで、センサのエラーなどが原因による、満充電容量の学習値の急激な変化を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
満充電容量の実容量よりも満充電容量の学習値を高い側に学習してしまうと、過充電や過放電の懸念がある。そのため電池保護の観点から、満充電容量の学習値を実容量よりも低い側に学習(補正)する場合がある。学習値が実容量よりも低い側に更新され続けると、学習値が実容量に対して大きく低下した値に設定されてしまう場合がある。満充電容量の学習値が実容量から乖離してしまい、バッテリの容量を有効に活用することができなくなるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するバッテリ制御装置は、バッテリの満充電容量を学習する装置である。バッテリ制御装置は、充放電電流の積算値に基づいて、充電が終了した各タイミングで満充電容量の推定値を算出する算出部を備える。バッテリ制御装置は、満充電容量の今回の推定値を算出することに応じて、満充電容量の今回の学習値を算出する学習部を備える。今回の学習値は、「今回の学習値=前回の推定値×(1-反映係数)+今回の推定値×反映係数」の数式に基づいて算出される加重移動平均値である。反映係数は、前回の学習値に対する今回の推定値の比率である変化比率が1より大きくなることに応じて大きくなる係数である。
【0007】
変化比率が1より大きくなるほど(すなわち、前回の学習値よりも今回の推定値の方が大きくなるほど)、前回の学習値が実容量に対して低い側へ乖離していると判断することができる。この場合に、反映係数を大きくすることによって、今回の学習値を算出する際の今回の推定値の重みを大きくすることができる。今回の推定値は前回の学習値よりも大きいため、今回の推定値の影響を大きくすることにより、今回の学習値を前回の学習値よりも高くなるように学習(補正)することができる。学習値を実容量に近づけることが可能となる。
【0008】
変化比率の1からの増分量が予め定められたしきい値以上になることに応じて、反映係数が非連続的に大きくなっていてもよい。
【0009】
本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】満充電容量の学習値の算出フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(車両1の構成)
図1に、車両1の電力系のブロック図を示す。車両1には、バッテリ制御装置(制御装置10)が搭載されている。車両1は、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHV)や電気自動車(EV)である。車両1は、モータ25、メインバッテリ21、インバータ26を備えている。
メインバッテリ21には、充放電可能に構成されたリチウムイオン電池などの二次電池が用いられる。インバータ26が、メインバッテリ21の出力電力(直流電力)をモータ25の駆動電力(三相交流電力)に変換する。モータ25は、車両の慣性エネルギを使って回生電力を発電する場合がある。回生電力は、インバータ26にて直流電力に変換されてメインバッテリ21に充電される。
【0012】
また、メインバッテリ21は、家庭用コンセントなどの外部電源50によって充電される場合がある。メインバッテリ21には、高電圧リレー27を介して電力注入口28が接続されている。電力注入口28には、外部電源50が接続され得る。
図1では、外部電源50は仮想線で描いてある。
【0013】
メインバッテリ21には降圧コンバータ41も接続されている。降圧コンバータ41は、メインバッテリ21の出力電力の電圧を補器バッテリ42の電圧へ下げる。降圧コンバータ41で降圧された電力は、補器バッテリ42に供給されるとともに、複数の補器43、44に供給される。補器43、44とは、補器バッテリ42の電力で駆動されるデバイスの総称である。
【0014】
車両1は、メインバッテリ21のOCV(Open Circuit Voltage)を計測する電圧センサ22、メインバッテリ21に出入りする積算電流を計測する電流センサ23、メインバッテリ21の温度を計測する温度センサ24、を備えている。センサ22~24の計測値は、制御装置10に送られる。
【0015】
制御装置10は、コンピュータ11、記憶装置12、イグニションオフ時間カウンタ13、を備えている。制御装置10は、車両1の走行駆動系(すなわち、インバータ26)を制御するとともに、センサ22~24の計測値に基づいてメインバッテリ21を制御する装置である。記憶装置12は、例えばEEPROMを備えている。記憶装置12は、各種のプログラム(例:満充電容量の推定値や学習値の算出プログラム)や、各種のデータ(例:満充電容量の推定値および学習値の履歴データ、イグニションオフ時間、反映係数マップ)を記憶する。イグニションオフ時間カウンタ13は、イグニションスイッチがオフ状態とされている期間(イグニションオフ時間)を計測する装置である。
【0016】
記憶装置12に格納された算出プログラムをコンピュータ11が実行するとき、制御装置10は、満充電容量の推定値を算出する算出部、および、満充電容量の学習値を算出する学習部として機能する。満充電容量の推定値および学習値は、ユーザの日々の使用(充電)タイミングで取得することができる。取得された推定値および学習値の履歴は、記憶装置12に記憶される。
【0017】
(満充電容量の学習値の算出方法)
図2を用いて、制御装置10を用いた満充電容量の学習値の算出フローについて説明する。
図2のフローは、例えば、車両1の充電開始に応じて開始される。
【0018】
ステップS10において制御装置10は、メインバッテリ21の充電が終了したか否かを判断する。SOCが上限値に到達するか、電力注入口28が外部電源50から取り外された場合に、終了判断してもよい。
【0019】
ステップS20において制御装置10は、充電が終了したタイミングで、満充電容量の今回の推定値EVnを算出する。満充電容量の推定値は、センサ22~24の計測値、および、イグニションオフ時間を用いて算出することができる。推定値の算出方法には、周知の各種の方法を用いることができる。本実施例では、デルタSOC(State Of Charge)法を用いて算出している。なお、SOCの単位は[%]である。デルタSOC法では、開始SOC、終了SOC、ステップS4で積算した電流(充電された電流量)を用いて、満充電容量を算出することができる。デルタSOC法は周知であるため、詳細な説明を省略する。
【0020】
ステップS30において制御装置10は、前回の学習値LVn-1に対する今回の推定値EVnの比率である変化比率CRを算出する。学習値LVは、後述するように、推定値EVの加重移動平均値である。ステップS40において制御装置10は、算出した変化比率CRが1よりも大きいか否かを判断する。否定判断される場合にはステップS60へ進み、肯定判断される場合にはステップS45へ進む。
【0021】
ステップS45において制御装置10は、変化比率CRの1からの増分量が、予め定められたしきい値TV以上であるか否かを判断する。本実施例では、しきい値TVは0.1とした。よってステップS45では、変化比率CRが1.1以上であるか否かが判断される。換言すると、今回の推定値EVnが前回の学習値LVn-1の1.1倍(110%)以上であるか否かが判断される。
【0022】
しきい値TVの設定方法は様々であって良い。しきい値TVは、推定値EVを算出する場合の誤差見積量以上としてもよい。推定値EVの誤差見積量は、電圧センサ22の誤差、電流センサ23の誤差、充電電流値の誤差、分極影響、劣化SOC-OCVカーブ影響、などの各種の誤差を積算した量である。今回の推定値EVnの前回の学習値LVn-1に対する増分量が、しきい値TV以上である場合には、誤差見積量を超過するため、今回の推定値EVnの測定誤差に問題があるのではなく、前回の学習値LVn-1の算出時の誤差に問題があることを特定することができる。すなわち、前回の学習値LVn-1が必要以上に低く学習されてしまった場合であり、今回の学習値LVnを高く学習(補正)する必要がある場合であると判断することができる。
【0023】
またしきい値TVは、制限値IwinやDwinを考慮して定めることができる。制限値Iwinは、メインバッテリ21の充電時において、メインバッテリ21に含まれるセルの負極表面にリチウム金属が析出しないように設定される充電電力の制限値である。制限値Dwinは、各セルのハイレート劣化を抑制するために設定される充電電力の制限値である。制限値IwinおよびDwinは、学習値LVに基づいて調整される。この制限値IwinおよびDwinの調整では、満充電容量の実容量と学習値LVとの間の誤差に対して、許容マージンが設定されている。しきい値TVは、この許容マージン以下に設定すればよい。これにより、今回の推定値EVnの前回の学習値LVn-1に対する増分量が、しきい値TV以上である場合には、実容量と学習値LVとの間の誤差が許容マージンを超過してしまう可能性があると特定することができる。この場合にも、今回の前回の学習値LVnを高く学習(補正)する必要があると判断することができる。
【0024】
ステップS45において否定判断される場合には、ステップS50をスキップしてステップS60へ進む。一方ステップS45において肯定判断される場合には、ステップS50へ進む。ステップS50において制御装置10は、充電終了時の終了SOCが予め定められた所定値以下であるか否かを判断する。終了SOCが所定値以下の場合には、充電された電流量が少ないため、満充電容量の今回の推定値EVnの誤差が大きい場合であると判断できる。所定値は適宜定めることができる。本実施例では、所定値を78%とした。ステップS50において肯定判断される場合には、フローを終了する。これにより、信頼性の低い今回の推定値EVnを用いて、学習値LVが高く補正されてしまうことを防止できる。
【0025】
一方、ステップS50において否定判断される場合には、ステップS60へ進む。ステップS60において制御装置10は、ステップS30で求めた変化比率CRに対応する反映係数RCを取得する。反映係数RCの求め方は様々であってよい。本実施例では、記憶装置12に記憶されている反映係数マップを用いて求めている。
【0026】
図3に、反映係数マップの例を示す。横軸は変化比率CRであり、縦軸は反映係数RCである。変化比率CRの1からの増分量がしきい値TV(0.1)以上の領域を、第1領域R1とする。すなわち第1領域R1は、変化比率CRが1.1以上の領域である。また、第1領域よりも変化比率CRが小さい領域を、第2領域R2とする。すなわち第2領域R2は、変化比率CRが1.1より小さい領域である。第2領域R2から第1領域R1に遷移することに応じて、反映係数RCが非連続的に大きくなっていることが分かる。すなわち、変化比率CRが第1領域R1内である場合に、反映係数RCを上昇させる(すなわち学習値LVを高く補正する)ことが分かる。これにより、前回の学習値LV
n-1の算出時に誤差が発生したと判断される場合にのみ、今回の学習値LV
nを高く補正することが可能となる。
【0027】
ステップS45において変化比率CRが1.1より小さいと判断された場合には、第2領域R2内の反映係数RC(0.05~0.1)が読み出される。一方、ステップS45において変化比率CRが1.1以上であると判断された場合には、第1領域R1内の反映係数RC(0.5)が読み出される。変化比率CRが1.1以上である場合の反映係数RCは、変化比率CRが1.1より小さい場合の反映係数RCに比して大きい。
【0028】
ステップS70において制御装置10は、ステップS60で読み出した反映係数RCを用いて、満充電容量の今回の学習値LVnを算出する。具体的には、下式(1)を用いて、加重移動平均値を算出する。
今回の学習値LVn=前回の推定値EVn-1×(1-反映係数RC)+今回の推定値EVn×反映係数RC ・・・式(1)
【0029】
ステップS80において制御装置10は、今回の推定値EVnおよび今回の学習値LVnを記憶装置12に記憶させる。そしてフローを終了する
【0030】
(第1の具体例)
図4を用いて、第1の具体例を説明する。第1の具体例は、変化比率CRが1.05である場合(前回の学習値LV
n-1に対して今回の推定値EV
nが1.05倍である場合)である。すなわち第1の具体例では、変化比率CRは、1より大きいが1.1よりも小さい。
図4の縦軸は満充電容量(%)であり、横軸は算出履歴である。本具体例では、n-1番目(前回)の学習値LV
n-1に基づいて、n番目(今回)の学習値LV
nを算出する場合について、説明する。また上限値LV
n-1_Uは、前回の学習値LV
n-1を1.1倍した値である。すなわち、前回の学習値LV
n-1から上限値LV
n-1_Uまでの増分IAは、しきい値TVに相当している。そして今回の推定値EV
nが上限値LV
n-1_U以上である場合には、学習値LVが高く補正される。なお、第1の具体例では変化比率CRが1.05であるため、今回の推定値EV
nは上限値LV
n-1_Uよりも小さい。
【0031】
第1の具体例では、ステップS45において変化比率CRが1.1より小さいと判断される(S45:NO)。そしてステップS60において、反映係数RCが「0.05」であると判断される(
図3、領域A1参照)。そしてステップS70に進み、下式(2)によって今回の学習値LV
nが算出される。
今回の学習値LV
n=前回の推定値EV
n-1×0.95+今回の推定値EV
n×0.05 ・・・式(2)
【0032】
上式(2)から分かるように、今回の推定値EVnに比して前回の推定値EVn-1の影響が十分に大きい。よって今回の学習値LVnは、前回の推定値EVn-1に近づくため、前回の学習値LVn-1よりも低く補正される。(矢印Y1参照)。
【0033】
(第2の具体例)
図5を用いて、第2の算出例を説明する。第2の具体例は、変化比率CRが1.15である場合(前回の学習値LV
n-1に対して今回の推定値EV
nが1.15倍である場合)である。すなわち第2の具体例では、今回の推定値EV
nは、上限値LV
n-1_Uよりも大きい。また第2の具体例では、終了SOCが所定値より大きい場合を説明する。
【0034】
第2の具体例では、ステップS45において変化比率CRが1.1以上であると判断される(S45:YES)。ステップS50において、終了SOCが所定値より大きいと判断される(S50:YES)。ステップS60において、反映係数RCが「0.50」であると判断される(
図3、領域A2参照)。そしてステップS70に進み、下式(3)によって今回の学習値LV
nが算出される。
今回の学習値LV
n=前回の推定値EV
n-1×0.50+今回の推定値EV
n×0.50 ・・・式(3)
【0035】
上式(3)から分かるように、今回の推定値EVnの影響を前回の推定値EVn-1と同等にすることができる。よって今回の学習値LVnは、今回の推定値EVnに近づくため、前回の学習値LVn-1よりも高く補正することができる。(矢印Y2参照)。
【0036】
(効果)
満充電容量の実容量よりも満充電容量の学習値LVを高い側に学習してしまうと、過充電や過放電の懸念がある。そのため電池保護の観点から、学習値LVの大半が、実容量よりも低い側ばらつくように学習(補正)する場合がある。すると、学習値LVが実容量よりも低い側に学習され続けることで誤差が蓄積し、学習値LVが実容量に対して大きく低下した値になってしまう場合がある。そこで本明細書の技術では、変化比率CR(前回の学習値LVn-1に対する今回の推定値EVnの比率)が1より大きくなるほど(すなわち、前回の学習値LVn-1よりも今回の推定値EVnの方が大きくなるほど)、前回の学習値LVn-1が実容量に対して低い側へ乖離していると判断する。そして、変化比率CRの1からの増分量がしきい値TV以上になった場合に、前回の学習値LVn-1が誤差により低く学習されてしまっていると判断し、反映係数RCを通常よりも大きくすることができる。これにより、今回の学習値LVnを算出する際の今回の推定値EVnの重みを大きくすることができるため、今回の学習値LVnを今回の推定値EVnに近づくように高くすることができる。その結果、今回の学習値LVnが前回の学習値LVn-1よりも高くなるように学習(補正)することが可能となる。今回の学習値LVnを実容量に近づけることが可能となる。
【0037】
学習値LVが予め定められた保証値よりも低い場合に、メインバッテリ21の保証(例:交換、返品、修理)を行う場合がある。しかし、学習値LVが実容量に対して大きく低下している場合には、保証の可否について正確に判断することが困難である。そこで本明細書の技術を用いることで、学習値LVが実容量に近づくように高くなるように学習(補正)することで、学習値LVと実容量との乖離を縮小することができる。本明細書の技術により信頼性が高められた学習値LVを保証値と比較することにより、保証の可否についてより正確な判断を行うことが可能となる。
【0038】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【0039】
(変形例)
図3では、変化比率CRが1より大きくなる場合の反映係数RCの変化が、非連続的である場合を説明したが、この形態に限られない。変化比率CRが1より大きくなることに応じて、反映係数RCが連続的に大きくなってもよい。反映係数RCは、変化比率CRの増加に対して直線的に大きくなってもよいし、曲線的に大きくなってもよい。
【0040】
図3では、第1領域R1における反映係数RCの値が0.50である場合を説明したが、この形態に限られない。第1領域R1における反映係数RCの値は、適宜定めることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1:車両 10:制御装置 11:コンピュータ 12:記憶装置 13:イグニションオフ時間カウンタ 21:メインバッテリ 22:電圧センサ 23:電流センサ 24:温度センサ CR:変化比率 EV:推定値 LV:学習値 TV:しきい値 RC:反映係数