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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190884
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】通信中継システムおよび無線装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/04 20090101AFI20221220BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20221220BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20221220BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20221220BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20221220BHJP
   H04B 7/024 20170101ALI20221220BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04W16/04
H04W16/26
H04W88/08
H04W16/28
H04B7/0413 300
H04B7/024
H04L27/26 113
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099394
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】土井 敏則
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067EE02
5K067EE10
5K067KK02
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】複数の子機を協調させて無線リソースを効率的に活用可能な通信中継システムおよび無線装置を提供する。
【解決手段】実施形態の通信中継システムは、基地局と移動局との間の無線通信に係る無線信号を伝送するため、前記基地局と信号の送受が可能な親機と、前記親機との間で信号を伝送すると共に前記移動局と無線通信する複数の子機と、を有し、検出部と、判定部と、割当部とを備える。検出部は、複数の子機と無線通信が可能な位置に移動局が存在することを検出し、判定部は、前記無線通信が可能な位置に存在する前記移動局と無線通信を行うための通信リソースを前記複数の子機のうちいずれに割り当てるかを判定し、割当部は、前記判定部の判定結果に応じて、前記子機に通信リソースの割り当てを行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動局との間の無線通信に係る無線信号を伝送するため、前記基地局と信号の送受が可能な親機と、前記親機との間で信号を伝送すると共に前記移動局と無線通信する複数の子機と、を有する通信中継システムであって、
前記複数の子機と無線通信が可能な位置に前記移動局が存在することを検出する検出部と、
前記無線通信が可能な位置に存在する前記移動局と無線通信を行うための通信リソースを前記複数の子機のうちいずれに割り当てるかを判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に応じて、前記子機に通信リソースの割り当てを行う割当部と
を具備する通信中継システム。
【請求項2】
さらに、前記複数の子機の通信リソースの空き状況をそれぞれ検出するリソース検出部を備え、
前記判定部は、前記リソース検出部の検出結果に応じて、前記無線通信が可能な位置に存在する前記移動局と無線通信を行うための通信リソースを前記複数の子機のうちいずれに割り当てるかを判定する、
請求項1に記載の通信中継システム。
【請求項3】
前記判定部は、前記リソース検出部の検出結果に応じて、前記無線通信が可能な位置に存在する前記移動局と無線通信を行うための通信リソースを前記複数の子機のうちいずれか1つに割り当てる判定を行う、
請求項2に記載の通信中継システム。
【請求項4】
複数の通信事業者に係る基地局と移動局との間の通信に係る信号を伝送し、前記移動局に対し前記通信に係る無線信号を送信する複数の子機と親機とを有する通信中継システムであって、
前記移動局が加入するサービスの通信事業者を検出する事業者検出部と、
前記事業者検出部が検出した通信事業者以外の通信事業者が利用する周波数帯域の前記無線信号を前記子機から送信しないように制御する停波制御部と
を具備する通信中継システム。
【請求項5】
複数の通信事業者に係る基地局と送受信が可能な親機との間で信号伝送すると共に、移動局に無線信号を送信する無線装置であって、
前記移動局が加入するサービスの通信事業者を検出する事業者検出部と、
前記事業者検出部が検出した通信事業者以外の通信事業者が利用する周波数帯域の無線信号を送信しないように制御する停波制御部と
を具備する無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、通信中継システムおよび無線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2020年に日本国内においても5G(第5世代移動通信システム)による携帯電話の商用サービスがスタートした。5Gにおいて注目される技術の1つとしてビームフォーミングがある。これは1つのアンテナ上の複数のアンテナ素子を協調動作させ、任意の方向に電波のビームを形成することで、無線通信が可能なエリア(カバーエリア)の拡大や複数ユーザとの同時通信によるセル容量拡大を実現する機能であり、一般的には超多素子のアンテナ(Massive MIMO)との組合せにより実現される。
【0003】
ところで、5G以前より、移動通信システムにおいて、屋内における無線通信を可能とするエリア対策として、DAS(Distributed Antenna System)システムが用いられている。DASシステムは、移動局と基地局との間の通信に係る信号を中継伝送するものであって、親機と分散配置された複数の子機からなる。親機は、1つの基地局の信号を複数の子機に分配し、各子機は、それぞれのアンテナから同一の下り信号を出力することで、1つのセルとしてエリアを構築する。
【0004】
5GシステムにDASシステムを単純に適用した場合、前述のように、各子機からは同じ信号が出力され、これにより、分散配置された子機がそれぞれ同じ方向(方位)にビームを形成することになるため、効率的に無線リソースを活用していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6567438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数の子機を協調させて無線リソースを効率的に活用可能な通信中継システムおよび無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の通信中継システムは、基地局と移動局との間の無線通信に係る無線信号を伝送するため、前記基地局と信号の送受が可能な親機と、前記親機との間で信号を伝送すると共に前記移動局と無線通信する複数の子機と、を有し、検出部と、判定部と、割当部とを備える。検出部は、複数の子機と無線通信が可能な位置に移動局が存在することを検出し、判定部は、前記無線通信が可能な位置に存在する前記移動局と無線通信を行うための通信リソースを前記複数の子機のうちいずれに割り当てるかを判定し、割当部は、前記判定部の判定結果に応じて、前記子機に通信リソースの割り当てを行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】通信中継システムを含む移動通信システムを示す図。
図2図1に示した親機の構成例を示す図。
図3図1に示した子機の構成例を示す図。
図4図1に示した子機の無線通信部の一部の構成例を示す図。
図5図1に示した子機によるビームフォーミングを説明するための図。
図6図1に示した子機によるビームフォーミングを説明するための図。
図7図1に示した子機によるビームフォーミングを説明するための図。
図8図1に示した子機による移動局の高速サーチ例を示す図。
図9図1に示した子機による移動局の低速サーチ例を示す図。
図10図1に示した子機による移動局の追尾サーチ例を示す図。
図11図1に示した子機による移動局の追尾サーチ例を示す図。
図12図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
図13図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
図14図1に示した子機による移動局のサーチ例を示す図。
図15図1に示した子機の処理を説明するためのフローチャート。
図16図15に示した処理による送信制御を説明するための図。
図17図1に示した親機の処理を説明するためのフローチャート。
図18図17に示した処理による協調ビーム制御を説明するための図。
図19図17に示した処理による協調ビーム制御を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態に係わる通信中継システムについて説明する。
図1は、第5世代移動通信システム、いわゆる5Gの一部を示すものである。この移動通信システムは、5Gコアネットワーク(5th Generation Core network)5GCと、無線アクセスネットワークNR(New radio)を備える。図1の例では、無線アクセスネットワークNRに、通信中継システムを含めて示している。
【0010】
5Gコアネットワーク5GCは、無線アクセスネットワークNRを制御し、トラフィックを束ねて外部のネットワーク(インターネットIN、外部の電話網ENなど)とやりとりを行うものであり、その中枢としてコア装置Cを備える。コア装置Cは、例えば、認証・セキュリティ管理、セッション管理、ポリシー制御、パケット転送等を行う。
【0011】
一方、無線アクセスネットワークNRは、複数の基地局装置(例えば、図1のgNB(gNodeB)1、gNB2)を備える。基地局装置gNB1、gNB2は、コア装置Cによって制御され、それぞれ移動局UE(User Equipment)と無線通信可能なエリア(いわゆる、セルあるいはカバーエリア)を形成する。
【0012】
より具体的には、基地局装置gNB1は、ビルの屋上や専用の鉄塔に設けられたアンテナ装置ANを通じて、カバーエリア内の移動局UEと無線通信し、移動局UEをコア装置Cを通じて5Gコアネットワーク5GCに接続する。
【0013】
また基地局装置gNB1は、アンテナ装置AN上の多数のアンテナ素子における信号の位相を制御するマッシブMIMO(Massive MIMO)によってビームフォーミングを行い、通信容量の増大などに寄与している。
【0014】
基地局装置gNB2は、基地局装置gNB1と同様の機能を備えるが、アンテナ装置ANの代わりに分散アンテナシステムDASを通じて移動局UEと無線通信し、移動局UEをコア装置Cを通じて5GコアネットワークNWに接続する。
【0015】
分散アンテナシステムDASは、本実施形態に関わる通信中継システムの一例であって、特殊な場所(例えば、建造物や地下街、その他構造物の内部、過疎地あるいは過密地、鉄塔建設が困難や制限のある地域、イベント会場などといったアンテナ装置ANの非常設場所など)において、アンテナ装置ANに比して相対的に小規模なカバーエリアを形成するために用いられ、図1に示すように、親機MU(Master Unit)、子機RU(Remote Unit)1~RU3、アンテナAN1~AN3を備える。
【0016】
なお、図1では、分散アンテナシステムDASを無線アクセスネットワークNR内に示しているが、5Gコアネットワーク5GCや基地局装置gNB2によって制御されるものとは限らず、分散アンテナシステムDASが自律してビームフォーミングなどの制御を行うことができる。
【0017】
親機MUは、当該分散アンテナシステムDASの各部を統括して制御するものであって、図1に示した基地局装置gNB2(例えば、通信事業者A社の基地局装置)と同軸ケーブル(例えば、100MHzバンド×4本の4×4MIMO構成)によって接続されるとともに、同様にして、図示しない他の通信事業者B社、C社の各基地局装置gNB2と別の同軸ケーブルによって接続される。すなわち、親機MUは、複数の通信事業者A社、B社、C社の各gNodeBと、それぞれ同軸ケーブルによって接続される。
【0018】
また、親機MUは、アンテナAN1~AN3とそれに対応する子機RU1~RU3を介して接続される移動局UEを、移動局UEの使用者が加入する通信事業者の基地局装置gNB2に接続して、通信中継装置としての役割を担うものである。
【0019】
アンテナAN1~AN3は、それぞれ対応する子機RU1~RU3に1対1で接続されており、それぞれ多数のアンテナ素子を備え、送信RF信号および/または受信RF信号の位相調整により指向性が制御(ビームフォーミング)されるマッシブMIMO(Massive MIMO)に対応したものである。なお、アンテナ素子は、例えば、4×4個を1グループとし、4グループで構成され、グループ毎に指向性が制御され得る。
【0020】
この実施形態では、説明を簡明にするために、各アンテナAN1~AN3は、上記グループに対応した最大4個のビームを同時に任意の方向に形成するビームフォーミングを行うものとして説明し、後に詳述する親機MUについても、説明を簡明にするために、上記4個のビームに対応した同時に最大で4個のストリームを処理(中継)するものとして説明する。
【0021】
なお、実際の装置では、最大4個に限定されるものではなく、3以下や5以上でもよい。また各アンテナAN1~AN3が形成するビーム数は、固定したものでなく、使用するアンテナ素子数を可変するなどして動的に変化させてもよい。
【0022】
子機RU1~RU3は、前述したように、対応するアンテナAN1~AN3に1対1で接続されるとともに、親機MUと光通信回線を介して通信できるように接続可能なものである。接続方式としては、図1に示すように、子機RU1~RU3がディジーチェーン(Daisy Chain)方式により親機MUに接続される以外に、子機RU1~RU3がそれぞれ直接、親機MUに接続される方法(スター型、図示しない)も考えられる。
【0023】
以下の説明において、説明の冗長と構成の対応関係の混乱を避けるために、「子機RUn」と表記して説明することがある。「子機RUn」として説明する場合、子機RU1~RU3のいずれにも共通した説明である。すなわち、「n」を1~3のいずれとして読むことができる。
【0024】
同様に、「アンテナANn」として表記して説明することがある。この場合、子機RUnに接続されたアンテナであることを意味し、アンテナAN1~AN3のいずれかである。すなわち、「n」を1~3のいずれとして読むことができ、子機RUnには、アンテナANnが接続される。
【0025】
子機RUnは、アンテナANnに対して位相調整によるビームフォーミングを行うことが可能であるとともに、受信信号強度の計測と上記ビームフォーミングによって、移動局UEが存在する方向を検出(サーチ)し、さらには、移動する移動局UEを追随して通信することができる。
【0026】
ビームフォーミングについてより具体的に説明すると、アップリンクについて子機RUnは、アンテナANnによって得られたRF信号に対して位相調整(ビームフォーミング)を行う。この例では、前述したように、アンテナANnは、最大4個のビームに対応する受信RF信号を同時に得ることが可能であり、また、前述した3つの通信事業者のいずれの周波数帯域にも対応する。
【0027】
そして子機RUnは、各ビームに対応する受信RF信号をダウンコンバートして、同時に最大4個のビームにそれぞれ対応する4個の受信信号に復調する。そして、子機RUnは、それぞれ復調した受信信号をシリアルに束ねた後、電気信号から光信号に変換(光搬送波を変調)して、上記光通信回線を通じて親機MUに伝送する。なお、上記受信信号に含まれるストリームをULストリーム信号と称する。
【0028】
一方、ダウンリンクについて子機RUnは、上記光通信回線を通じて親機MUから伝送される光信号のうち、自機(子機RUn)宛ての光信号を検出して、その光信号を電気信号に変換し、同時に最大で4個のストリームにそれぞれ対応する信号(以下、DLストリーム信号と称する)に復調する。
【0029】
そして、子機RUnは、上記DLストリーム信号を用いて、通信事業者に対応する周波数帯域の搬送波を変調した送信RF信号を生成して、この送信RF信号をアンテナANnに出力して空間に放射する。この例では、前述したように、アンテナANnは、最大4個のDLストリーム信号毎にビームを形成するビームフォーミングが可能であり、また、前述した3つの通信事業者のいずれの周波数帯域にも対応する。
【0030】
次に、親機MUについて詳細に説明する。図2は、親機MUの構成例を示すものである。すなわち、親機MUは、ポートP、制御部100、伝送部110、UL(Up Link)信号処理部120、DL(Down Link)信号処理部130、記憶部140を備える。
【0031】
ポートPは、外部から複数本の光通信回線(例えば、1本当たり25Gビット/s)を収容し、この光通信回線を介して子機RU1と接続されるとともに、内部に対しては、UL信号処理部120とDL信号処理部130に接続される。
【0032】
なお、図2の例では、光通信回線を介して物理的に直接接続されるのは子機RU1であるが、上記光通信回線には、子機RU2、RU3との間でやり取りされる光信号も多重化されているため、ポートPは、実質的に、子機RU2、RU3と接続されており、いずれの子機RU1~RU3とも光信号による通信(光信号の送受信)が可能である。
【0033】
アップリンクについてポートPは、子機RU1から送られる光信号を逆多重化して、複数の光信号に分離し、各光信号を電気信号に変換して復調し、複数の電気通信信号を得る。この複数の電気通信信号は、子機RU1~RU3における各ビームにそれぞれ対応する受信信号(すなわち、ULストリーム信号)であって、パラレルにUL信号処理部120に出力される。
【0034】
そしてポートPは、各受信信号に含まれる、子機RU1~RU3より送られた情報を検出する情報検出部として機能する。例えば、上記受信信号を監視し、この受信信号に含まれる移動局UEからの通信開始要求(PRACH)の検出や、各受信信号(ULストリーム信号)に割り当てられたストリームIDの検出などを行う。
【0035】
また、ポートPの情報検出部としての機能により、上記受信信号から、送信元(子機RU1~RU3のいずれか)の識別情報を検出し、子機RU1~RU3毎に、カバーエリア内に位置する移動局UEの識別情報、その移動局UEのカバーエリア内での位置を示す位置情報(後述するビームID)、その移動局UEの使用者が加入する通信事業者を示す事業者IDを検出する。これらの検出結果は、制御部100に通知される。
【0036】
一方、ダウンリンクについてポートPは、DL信号処理部130からのDLストリーム信号が入力される。そして、ポートPは、入力されたDLストリーム信号にあて先となる子機RU1~RU3の識別情報を付加して、電気信号から光信号に変換(光搬送波の変調)して、これらの光信号を多重化して上記光通信回線を通じて子機RU1~RU3に伝送する。
【0037】
伝送部110は、各通信事業者A社、B社、C社の基地局装置gNB2に接続される通信回線(同軸ケーブル)をそれぞれ収容し、この通信回線を通じて各社の基地局装置gNB2と通信を行うものである。具体的には、アップリンクについて伝送部110は、UL信号処理部120から入力されたUL信号を対応する通信事業者の基地局装置gNB2に伝送する。一方、ダウンリンクについて伝送部110は、上記通信回線を通じて各通信事業者の基地局装置gNB2から伝送されるDLストリーム信号を受信し、DL信号処理部130に出力する。
【0038】
UL信号処理部120は、制御部100の制御にしたがって、ポートPから入力される各ビームの受信信号を通信事業者毎に加算する信号加算処理を施し、通信事業者毎に上記UL信号として伝送部110に出力する。
【0039】
DL信号処理部130は、制御部100の制御にしたがって、伝送部110から入力される各通信事業者のDLストリーム信号を多重化してポートPに出力する多重化処理を施す。
【0040】
制御部100は、親機MUの各部を統括して制御する制御中枢であって、ワークメモリ(図示しない)と、後述する記憶部140から上記ワークメモリに読み込んだ制御プログラムおよび制御データなどに基づいて処理を実行するプロセッサ(図示しない)を備え、これらにより各種制御機能を実現する。なお、制御部100は、検出部、判定部、割当部、リソース検出部の一例である。
【0041】
具体的な制御としては、制御部100は、子機RU1~RU3を通じた移動局UEと基地局装置gNB2との間の通信中継制御を行うものであって、ポートPから通知される検出結果や、基地局装置gNB2から伝送されるDLストリーム信号などに基づいて、子機RU1~RU3に対し、ストリームの割り当て制御や、協調ビームフォーミング制御を行う。
【0042】
ストリームの割り当て制御は、子機RU1~RU3の能力(対応できるストリーム数など)、現時点で割り当てているストリーム数などを含む子機情報や、移動局UEの位置情報などを含む移動局情報を記憶および管理(更新)し、この子機情報や移動局情報に基づく総合的な判断を行い、子機RU1~RU3に対してストリームの割り当てを行う。
【0043】
また協調ビームフォーミング制御は、子機RU1~RU3毎に、無線リソースの使用状況(空き状況)を管理するものであって、無線リソースの使用状況に応じて、子機RU1~RU3のカバーエリアが重なる場所に位置する移動局UEに対して、複数の子機が協調してビームフォーミングを行うように制御を行う。
【0044】
より具体的には、例えば、子機RU1のカバーエリアと子機RU2のカバーエリアが重なる場所に移動局UEが位置し、かつ、両子機RU1、RU2に無線リソースの余裕がある場合には、子機RU1と子機RU2がそれぞれ移動局UEに対して送信および/または受信を行うようにビームフォーミングを行う。
【0045】
一方、例えば、子機RU1のカバーエリアと子機RU2のカバーエリアが重なる場所に移動局UEが位置し、かつ、子機RU1に無線リソースの余裕がない場合には、子機RU2が移動局UEに対して送信および/または受信を行うようにビームフォーミングを行う。
【0046】
記憶部140は、制御部100が使用する制御プログラムおよび制御データを記憶するとともに、子機ビームIDマップデータ140aなどを記憶する。上記制御プログラムおよび上記制御データは、製造時に予めインストールされる他、工注設定時に図示しない外部インタフェースを通じてインストールや更新が行われたり、コア装置Cなどの5Gコアネットワーク5GC上のサーバと通信してインストールや更新が行われる。
【0047】
子機ビームIDマップデータ140aは、協調ビームフォーミング制御で用いられるデータであって、当該親機MUの配下にある子機RU1~RU3がそれぞれ記憶するビームIDマップデータ240aをまとめたデータテーブルである。ビームIDマップデータ240aの詳細については、後述する。
【0048】
具体的には、子機ビームIDマップデータ140aは、子機RU1~RU3がそれぞれ形成可能な各ビームの方向を示す座標にビームIDを対応付けたマップ状のデータであって、このデータに含まれるビーム方向のうち、子機RU1~RU3間でカバーエリアが重なる部分(子機間でビームが重なる部分)のビーム方向については、オーバーラップエリアOAのビーム方向として識別するための識別情報(例えば、重畳フラグ)が付与されている。
【0049】
次に、子機RU1~RU3について、詳細に説明する。図3は、子機RUn(RU1~RU3)の構成例を示すものである。すなわち、子機RUnは、制御部200、通信部210、信号処理部220、無線通信部230、記憶部240を備え、アンテナANnが接続される。
【0050】
通信部210は、光通信回線を通じて親機MUと光通信信号を送受信するものであって、収容するポートを少なくとも2つ備え、一方のポートに収容する光通信回線を通じて入力された光通信信号を増幅して、他方のポートに収容する光通信回線を通じて出力する光通信中継器としての中継機能と、光通信回線に対して光通信信号の分岐や多重化を行う分岐多重化機能と、光信号と電気信号との間を相互に変換する変復調器としての変復調機能などを備える。
【0051】
なお、変復調器としては、光通信回線を通じて光信号を受信し、光/電変換して電気的な通信信号(DLストリーム信号)を得る光/電変換機能と、後述する信号処理部220から入力された電気的な通信信号(ULストリーム信号)を光通信信号に電/光変換して、光通信回線を通じて送信する電/光変換機能を備える。
【0052】
信号処理部220は、基地局装置gNB2と所定の通信プロトコルにしたがって通信を行うものである。当該システムの下り方向(基地局装置から子機へ)については、通信部210にて得られた通信信号を復調および復号して、宛先を識別する識別情報に基づいて、当該子機RUn宛てのDLストリーム信号を検出し、制御部200に出力する。
【0053】
一方、当該システムの上り方向については、制御部200から与えられた基地局装置gNB2宛ての信号を搬送波の変調に用いてULストリーム信号を生成し、通信部210に出力する。なお、ULストリーム信号には、送信元(子機RU1~RU3のいずれか)の識別情報が信号処理部220もしくは制御部200によって付加される。
【0054】
無線通信部230は、アンテナANnを通じて、移動局UEと無線通信を行うものであって、無線アクセス方式としては、5Gに準拠した方式を採用する。このため、移動局UEは、分散アンテナシステムDASを通じて通信を行う場合でも、図1に示したアンテナANを通じて基地局装置gNB1と通信する場合と同じ無線アクセス方式により無線通信を行うことができる。
【0055】
また無線通信部230は、制御部200の指示にしたがって、アンテナANn上の多数のアンテナ素子における信号(送信RF信号および/または受信RF信号)の位相を制御するマッシブMIMOによってビームフォーミングを行う。
【0056】
そしてまた無線通信部230は、移動局UEからの受信信号強度(例えば、RSSI)を計測し、この計測結果を移動局UEの識別情報に対応付けて、制御部200に通知する。また、通信事業者毎に、使用する周波数帯域が異なるため、上記周波数帯域毎、すなわち、通信事業者別に受信信号強度を検出して、検出結果を制御部200に通知する。
【0057】
無線通信部230における通信事業者別の受信信号強度は、例えば図4に示すような構成で検出することができる、図4では、無線信号の送受信や変復調に関わる構成については省略し、上述したような通信事業者別に受信信号強度を検出するための構成を示している。
【0058】
この検出のための構成として無線通信部230は、信号制御部231と、出力スイッチ(SW)232と、下り用ハイブリッド回路233と、送信用増幅器234と、サーキュレータ235と、受信用増幅器236と、上り用ハイブリッド回路237と、バンドパスフィルタ238と、RSSI検出部239とを備える。
【0059】
信号制御部231は、ダウンリンクの無線周波の信号を各通信事業者が利用する周波数帯域ごとに分けて出力スイッチ232に出力する。出力スイッチ232は、通信事業者毎の出力スイッチを備え、信号制御部231によって出力スイッチのON/OFFが制御され、これにより、各通信事業者(の周波数帯域)毎に、信号を選択的に出力することができる。
【0060】
下り用ハイブリッド回路233は、出力スイッチ232から入力された信号を1つの無線周波の信号に合成し、送信用増幅器234に出力する。
【0061】
送信用増幅器234は、下り用ハイブリッド回路233から入力された無線周波の信号を高周波増幅し、サーキュレータ235を関してアンテナANnに出力する。アンテナANnからは、上記信号が空間に放射され、移動局UEに向けて送信される。
【0062】
一方、移動局UEから送信された無線信号は、アンテナANnで受信された後、サーキュレータ235を介して受信用増幅器236に出力される。受信用増幅器236は、アンテナANnが移動局UEから受信した無線周波の信号を高周波増幅し、上り用ハイブリッド回路237に出力する。
【0063】
上り用ハイブリッド回路237は、受信用増幅器236から入力された信号を、通信事業者の数だけ分配して、バンドパスフィルタ238に出力する。
【0064】
バンドパスフィルタ238は、通信事業者が利用する周波数帯域毎の帯域通過フィルタを備え、各フィルタは、それぞれ対応する通信事業者が利用する周波数帯域の信号のみを出力する。
【0065】
RSSI検出部239は、各通信事業者の周波数帯域について受信強度(RSSI)を検出し、検出結果を制御部200に通知する。通知を受けた制御部200は、信号制御部231に対して、信号出力を行う通信事業者を指定する通知を行い、この指定にしたがって信号制御部231は、指定された通信事業者の無線信号だけが出力されるように、出力スイッチ232をON/OFF制御する。
【0066】
再び、図3に戻って、子機RUnの構成について説明する。
制御部200は、子機RUnの各部を統括して制御する制御中枢であって、ワークメモリ(図示しない)と、後述する記憶部240から上記ワークメモリに読み込んだ制御プログラムおよび制御データなどに基づいて処理を実行するプロセッサ(図示しない)を備え、これらにより各種制御機能を実現する。なお、制御部200は、事業者検出部、停波制御部の一例である。
【0067】
具体的な制御機能として制御部200は、当該子機RUnと無線接続される移動局UEを、親機MUおよび基地局装置gNB2を介して5Gコアネットワーク5GCに接続するための通信制御機能の他に、少なくとも、ビームフォーミング制御機能200a、サーチ制御機能200b、協調制御機能200cを備えるとともに、これらの機能を統合して実行する処理機能を備える。
【0068】
通信制御機能は、通信部210および信号処理部220を通じて基地局装置gNB2から送られるダウンリンクの通信信号について、通信事業者を検出し、上記通信信号を上記通信事業者の周波数帯域で無線通信部230が送信を行うように制御する。
【0069】
また通信制御機能は、無線通信部230が移動局UEから受信したアップリンクの信号について、通信事業者を検出し、上記移動局UEから受信した通信信号を上記通信事業者の基地局装置gNB2に伝送するように信号処理部220および通信部210を制御する。
【0070】
ビームフォーミング制御機能200aは、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御し、後述するビームIDマップデータ240aに基づいて、ビームの指向する方向や距離、ビーム幅を可変し、また、移動局UEに割り当てたストリーム数などに応じて、所定のアルゴリズムにしたがったビームフォーミングを行う。
【0071】
ビームの指向する方向や距離、ビーム幅については、例えば図5に示すような制御をビームフォーミング制御機能200aは行う。すなわち、ビームフォーミング制御機能200aは、必要に応じて、ビームの幅を狭めた鋭い狭ビームNBと、ビームの幅を拡げた広ビームWBを選択的に任意の方向や距離にフォーミングすることができる。
【0072】
図5は、ビームフォーミング制御機能200aによってフォーミングされるビームの形成位置(方向)を示すものである。この例では、子機RUnのカバーエリアをx-y平面に規定し、プリセットされた座標(x、y)に向けてビーム幅の狭い狭ビームNB(x、y)をフォーミングするように、ビームフォーミング制御機能200aがビーム制御を行う。またビームフォーミング制御機能200aは、上記x-y平面の4つの各象限に向けて、ビーム幅の広い広ビームWBm(mは1~4のいずれか)をフォーミングするように、ビーム制御を行うことができる。
【0073】
移動局UEに対するストリーム数の割り当てについては、例えば図6に示すような制御をビームフォーミング制御機能200aは行う。すなわち、ビームフォーミング制御機能200aは、例えば図6(a)に示すように、アンテナANn上の多数のアンテナ素子を、4つのストリームに対応するように、4つのグループGr1~Gr4に分けて、各グループごとに任意の方向に指向性を制御する。
【0074】
1つの移動局UEがアンテナANnのカバーエリア内に存在し、2つのストリームを上記移動局UEに割当てる場合、例えば、図6(b)に示すように、グループGr1によるストリームと、グループGr2によるストリームを移動局UEの存在する方向に指向させるビームフォーミングを行う。
【0075】
また、1つの移動局UEがアンテナANnのカバーエリア内に存在し、4つのストリームを上記移動局UEに割当てる場合、例えば、図6(c)に示すように、グループGr1~Gr4による各ストリームを移動局UEの存在する方向に指向させるビームフォーミングを行う。
【0076】
サーチ制御機能200bは、無線通信部230を制御して、移動局UEが存在する方向および距離をサーチし、推定(検出)する。具体的には、無線通信部230によるマッシブMIMOを制御して、例えば、図7(a)に示すように、ビームの指向する方向を任意の範囲で20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を監視して、移動局UEが存在する方向と距離を検出する。図7(b)は、図7(a)に示した各ビームのタイミングを示したものであり、両図における濃淡の一致が方向とタイミングの対応関係を示している。
【0077】
より具体的には、サーチ制御機能200bで制御部200は、高速サーチ、低速サーチおよび追尾サーチを切り換えて、移動局UEをサーチすることができる。
【0078】
高速サーチでは、例えば、図8(a)に示すように、ビームの指向する方向(例えば、水平方向)の可変範囲を約120°に設定し、図8(b)に示すように20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を監視して、移動局UEの識別情報と移動局UEが存在する方向や距離を検出する。
【0079】
またこの高速サーチは、アンテナANn上のアンテナ素子の4つのグループGr1~Gr4毎に独立して実施される。各グループGr1~Gr4がサーチする方位は、工注設定時に任意に作業員が設定したり、記憶部240に累積的に記憶させた移動局UEの位置情報の統計データや学習データに基づいて、サーチ制御機能200bが自ら設定したり、設定を見直す更新を行うようにしてもよい。
【0080】
低速サーチでは、例えば、図9(a)に示すように、ビームの指向する方向(例えば、水平方向)の可変範囲を、前述の高速サーチ時の約120°よりも狭い約90°に設定し、図9(b)に示すように20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を高速サーチと同じ頻度で監視して、移動局UEの識別情報と移動局UEが存在する方向や距離を、より正確に検出する。
【0081】
またこの低速サーチは、アンテナANn上のアンテナ素子の4つのグループGr1~Gr4毎に独立して実施される。各グループGr1~Gr4がサーチする方位は、前述の高速サーチで検出した方向を中心に行うようにする。なお、サーチする方向の範囲を、工注設定時に作業員が限定したり、記憶部240に累積的に記憶させた移動局UEの位置情報の統計データや学習データに基づいてサーチ制御機能200bが自ら限定したり、限定の範囲を見直すようにしてもよい。
【0082】
追尾サーチでは、例えば、図10(a)に示すように、ビームの指向する方向(例えば、水平方向)の可変範囲を、前述の低速サーチ時の約90°よりも狭い、追尾可能な範囲(図10(a)の例では、約45°)に設定し、図10(b)に示すように20msごとに繰り返して掃引し、この間、無線通信部230が逐次検出する受信信号強度を監視して、移動局UEの識別情報と移動局UEが存在する方向や距離を、いっそう正確に検出する。
【0083】
ここで、例えば、図11(a)に示すように、移動局UEが移動した場合、制御部200は、各ビームの受信信号強度や、各方位の受信信号強度の大小関係やその変化が、図11(b)に示すようにわかるので、移動局UEの移動方向を推定でき、この推定結果にしたがって、移動局UEを追随するようにビームの指向方向を可変する。
【0084】
なお、上記追尾可能な範囲は、制御部200が、移動局UEの移動について学習したデータに基づいて、可変するようにしてもよい。また子機RUnと移動局UEとの距離を受信信号強度から推定し、上記可変範囲を可変するようにしてもよい。この場合、受信信号強度が相対的に高い場合には、子機RUnと移動局UEとの距離が近いと判定し、上記可変範囲を広め、一方、受信信号強度が相対的に低い場合には、子機RUnと移動局UEとの距離が遠いと判定し、上記可変範囲を狭める。
【0085】
またサーチ制御機能200bは、例えば図12(a)に示すように、アンテナANnに対しておおむね同じ方位に、複数の移動局UE1、UE2が存在する場合でも、2つのグループGr1、Gr2がそれぞれに設定された方向についてサーチすることができる。
【0086】
この場合、グループGr1による移動局UE1の受信信号強度の変化は、図12(b)に示すようなものとなり、グループGr2による移動局UE2の受信信号強度の変化は、図12(c)に示すようなものとなる。
【0087】
またこの場合、2つのグループGr1、Gr2は、制御部200によって互いに独立して制御されるので、例えば図13(a)に示すように、グループGr1が移動局UE1を追尾のための低速サーチを行っている際に、グループGr2が移動局UE2を高速サーチすることができる。
【0088】
この場合、グループGr1による移動局UE1の受信信号強度の変化は、図13(b)に示すようなものとなるのに対して、グループGr2による移動局UE2の受信信号強度の変化は、図13(c)に示すようなものとなる。
【0089】
サーチ制御機能200bは、アンテナ素子の1つのグループが2つ以上の移動局をサーチすることも可能である。具体的には、例えば図14(a)に示すように、アンテナANn上のグループGr1が2つの移動局UE1、UE2をサーチする。この場合、図14(b)に示すように、受信信号強度は2つのピークが現れるため、制御部200は、受信信号強度のピークを検出することで、移動局が存在する個数と、その方向を検出することができる。
【0090】
協調制御機能200cは、親機MUからの指示にしたがって、カバーエリアが重なる他の子機RUmと協調したビームフォーミングを行う制御機能である。この制御機能には、無線通信部230から通知される通信事業者別の受信信号強度に基づいて、無線通信部230が送信を行う周波数帯域を制御する機能も含まれる。詳細については、後述する。
【0091】
記憶部240は、制御部200が使用する制御プログラムおよび制御データを記憶するとともに、ビームIDマップデータ240aなどを記憶する。上記制御プログラムおよび上記制御データは、製造時に予めインストールされる他、工注設定時に図示しない外部インタフェースを通じてインストールや更新が行われたり、コア装置Cなどの5Gコアネットワーク5GC上のサーバと通信してインストールや更新が行われる。
【0092】
ビームIDマップデータ240aは、当該子機RUnのカバーエリアを例えば図5に示したようにビームの指向方向毎に区分して、各区分に対してビームIDを付与したビームの指向方向のマップデータである。より具体的には、カバーエリアをx-y平面に規定して区分し、各区分に指向する狭い狭ビームのビームIDをNB(x、y)とし、各象限に指向する広い広ビームのビームIDをWBmとして、ビームの指向方向をプリセットしたデータである。
【0093】
また子機RU1~RU3が、互いにカバーエリアの一部が重なるように配置されており、この重なった部分としてオーバーラップエリアOAが存在し、子機間で空間的に同じ位置にビームを指向させることが可能で、各子機RU1~RU3がそれぞれ上記ビームIDを設定している。
【0094】
このため、親機MUが記憶部140に記憶する子機ビームIDマップデータ140aは、前述したように、配下にある子機RU1~RU3の上記ビームIDマップデータ240aをまとめたデータテーブルであるとともに、オーバーラップエリアOA内のビームIDについては、オーバーラップエリアOAのビーム方向であることを示す識別情報(例えば、重畳フラグ)が付与されている。
【0095】
次に、通信中継システムの動作について説明する。
まず、子機RUnにおける子機ビームフォーム処理について説明する。図15は、上記子機ビームフォーム処理の制御フローを説明するためのフローチャートである。
【0096】
当該通信中継システムの運用が開始されると、子機RUnにおいては、制御部200が、いくつかの制御フローを並行して実行するが、その1つが図15に示す制御フローである。図15に示す制御フローは、子機RUnの動作が停止されるか、親機MUなどから子機RUnに対して停止命令があるまで、繰り返し実行される。
【0097】
まず、ステップS1501において制御部200は、サーチ制御機能200bにより、無線通信部230を制御して、移動局UEが存在する位置を推定(検出)するとともに、この移動局UEの使用者がサービスに加入する通信事業者をその受信信号から検出して、ステップS1502に移行する。
【0098】
具体的には、サーチ制御機能200bにより無線通信部230を制御して、ビームの指向方向を変化させながら受信信号強度を検出して、移動局UEが存在する方向や距離をサーチし、ビームIDマップデータ240aに基づいて、移動局UEが見つかった方向や距離に対応するビームIDを移動局UEの位置として検出する。
【0099】
ステップS1502において制御部200は、当該子機RUnのカバーエリア内に存在する移動局UEがサービスに加入する通信事業者を検出し、ステップS1503に移行する。
【0100】
具体的には、協調制御機能200cにより無線通信部230を制御して、各通信事業者の周波数帯域について受信信号強度を検出する。そして、この検出結果が閾値以上となる周波数帯域については、利用者(移動局UE)がいる通信事業者と判定し、一方、閾値未満の場合には、利用者がいないと通信事業者と判定する。
【0101】
なお、ステップS1502における通信事業者の検出は、ステップS1501で検出した移動局UEに基づいて、行うようにしてもよい。すなわち、ステップS1501で検出した移動局UEから受信した信号に基づいて、この移動局UEが加入するサービスの通信事業者を特定するようにしてもよい。
【0102】
ステップS1503において制御部200は、協調制御機能200cにより、ステップS1502の検出結果に基づいて、当該子機RUnが中継し得る通信事業者のうち、当該子機RUnのカバーエリア内に利用者がいない通信事業者があるか否かを判定する。
【0103】
ここで、利用者がいない通信事業者がある場合には、ステップS1504に移行し、一方、利用者がいない通信事業者がない場合(すべての通信事業者の利用者がいる場合)には、ステップS1505に移行する。
【0104】
ステップS1504において制御部200は、協調制御機能200cにより、利用者がいる通信事業者についてのみ、ダウンリンクの無線信号が送信されるように無線通信部230を制御し、ステップS1505に移行する。
【0105】
より具体的には、協調制御機能200cにより、利用者がいる通信事業者を無線通信部230内の信号制御部231に通知する。これにより信号制御部231は、通知された通信事業者に対応する周波数帯域の無線信号のみを下り用ハイブリッド回路233に出力するように、出力スイッチ232内のスイッチをON制御にする。このため、制御部200から通知されなかった通信事業者に対応する周波数帯域の無線信号については停波されることになる。
【0106】
ステップS1505において制御部200は、協調制御機能200cにより、ステップS1501で検出した移動局UEの位置(ビームID)と、この移動局UEが加入するサービスの通信事業者の識別情報(事業者ID)を親機MUに報告し、ステップS1506に移行する。
【0107】
ステップS1506において制御部200は、協調制御機能200cにより、親機MUからビームフォーミングに関する指示を受信し、ステップS1507に移行する。この指示は、ステップS1505で親機MUに報告した情報に基づいて行われ得るもので、ビームIDや事業者IDが含まれる。
【0108】
ステップS1507において制御部200は、ビームフォーミング制御機能200aにより、ステップS1506で受信した指示(ビームIDや事業者ID)にしたがった方向と距離、通信事業者の周波数帯域に対してビームフォーミングを行うように、無線通信部230を制御し、ステップS1501に移行する。
【0109】
すなわち、以上のような子機ビームフォーム処理によれば、例えば図16に示すように、子機RU1~RU3の各カバーエリアにおいて、それぞれ異なる通信事業者のユーザの移動局UE1~UE3が存在する場合に、各子機RU1~RU3は、利用者がいる通信事業者の周波数帯域についてのみ無線信号の送信を行う。
【0110】
このため、システムとしては、各子機RU1~RU3における消費電力の節約を行うことができ、また移動局UEにとっては、他の無線信号の影響が抑制されて通信品質の向上が期待できる。特に、子機RU1~RU3間でカバーエリアが重なる位置や、子機同士が近接する場合などにおいては、従前と比べていっそうの通信品質の向上が期待できる。
【0111】
次に、親機MUにおける親機ビームフォーム処理について説明する。図17は、上記親機ビームフォーム処理の制御フローを説明するためのフローチャートである。
【0112】
当該通信中継システムの運用が開始されると、親機MUにおいては、制御部100が、いくつかの制御フローを並行して実行するが、その1つが図17に示す制御フローである。図17に示す制御フローは、親機MUの動作が停止されるか、コア装置Cなどから親機MUに対して停止命令があるまで、繰り返し実行される。
【0113】
まず、ステップS1701において制御部100は、子機RUnからステップS1505の報告、すなわち、子機RUnのカバーエリアにおける移動局UEの位置(ビームID)と通信事業者の識別情報(事業者ID)についての報告を受信し、ステップS1702に移行する。
【0114】
ステップS1702において制御部100は、子機ビームIDマップデータ140aに基づいて、ステップS1701で受信した移動局UEの位置(ビームID)が、他の子機のカバーエリアに含まれるか否か、すなわち上記ビームIDに基づく移動局UEの位置が、他の子機のカバーエリアと重なる位置(オーバーラップエリアOA)であるか否かを分析(判定)し、ステップS1703に移行する。なお、上記ビームIDに重畳フラグが付与されているか否かで判定できる。
【0115】
ステップS1703において制御部100は、ステップS1702の分析結果、オーバーラップエリアOAに移動局UEが存在する場合に、当該子機RUnと上記他の子機のそれぞれについて、ステップS1701で報告を受けた通信事業者の無線リソースの空き状況(例えば、空いている数)を検出して、余裕があるか否かを分析(あるいは判定)し、ステップS1704に移行する。
【0116】
なお、ここでいう無線リソースとは、OFDM通信におけるリソースブロックや、子機RUnによって形成可能なビームの数、ビームを形成するためのアンテナ素子などが考えられる。またここでは、無線リソースとして説明したが、より広義に、通信リソースであってもよい。この通信リソースには、上述した無線リソースだけでなく、親機MUとの間の光通信回線を用いた通信に関わるリソースも含まれ、すなわち、通信リソースの定義については、通信分野の当業者にとって理解される範囲を含む。
【0117】
ステップS1704において制御部100は、ステップS1703の分析結果に基づき、当該子機RUnと上記他の子機のそれぞれに無線リソースの余裕がある場合には、オーバーラップエリアOAに存在する移動局UEに対して、当該子機RUnと上記他の子機がそれぞれ上記位置にビームを指向させることと無線リソースを割り当てることを含む指示を生成し、ステップS1705に移行する。
【0118】
一方、当該子機RUnと上記他の子機のうち、いずれかに無線リソースの余裕がない場合には、当該子機RUnと上記他の子機のうち、無線リソースに余裕のある少なくとも1つの子機がオーバーラップエリアOAにビームを指向させることと無線リソースを割り当てることを含む指示を生成し、ステップS1705に移行する。
【0119】
なお、複数の子機が移動局UEとそれぞれ通信を行う場合、ダウンリンクについては、各子機が互いに異なるストリームを送信して伝送速度を向上させるようにしてもよいし、あるいは、各子機が互いに同じストリームを送信することで、移動局UEにおける合成電力を高めて通信の安定性を向上させるようにしてもよい。これらの制御は、親機MUの制御部100によってなされる。
【0120】
ステップS1705において制御部100は、ステップS1704で生成した指示を、対応する子機に送信し、ステップS1701に移行する。上記指示には、ビームの方向を示すためのビームIDと、周波数帯域を示すための通信事業者の識別情報(事業者ID)を少なくとも含む。ここで送られた指示は、前述のステップS1506などにて子機で受信される。
【0121】
すなわち、以上のような親機ビームフォーム処理によれば、例えば、図18に示すように、子機RU1とRU2のカバーエリアが重なるオーバーラップエリアOAに移動局UEが存在する場合に、無線リソースに余裕があると、子機RU1とRU2は親機MUの指示にしたがって、オーバーラップエリアOAに存在する移動局UEに対してそれぞれビームを形成して通信を行う。
【0122】
一方、図18と同様に子機RU1とRU2のカバーエリアが重なるオーバーラップエリアOAに移動局UEが存在する場合に、無線リソースに余裕がない場合には、図19に示すように、子機RU1とRU2は親機MUの指示にしたがって、一方の子機(図19では、子機RU2)だけがオーバーラップエリアOAに存在する移動局UEに対してビームを形成して通信を行う。
【0123】
まとめると、上記構成の通信中継システムでは、子機RU1~RU3毎に、カバーエリア内に存在する移動局UEが加入する通信事業者を検出し、移動局UEが存在しない通信事業者については、その周波数帯域の無線信号を送信しないようにしている。
【0124】
したがって、上記構成の通信中継システムによれば、不要な無線信号を子機RUnが送信しないため、システムとしての消費電力を抑制できるとともに、他の通信事業者の移動局UEや他の子機のカバーエリアに影響しうる無線信号の送信が抑制され、通信品質の向上が期待できる。
【0125】
また上記構成の通信中継システムでは、複数の子機間でカバーエリアが重なるオーバーラップエリアOAに移動局UEが存在する場合には、親機MUの制御の元、複数の子機間で協調した通信のためのリソース割り当てを行うことができる。このため、カバーエリアの改善やキャパシティの向上が期待できる。
【0126】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0127】
例えば、上記実施形態では、利用者がいない通信事業者の周波数帯域に無線信号を送信しないようにするための判断を子機RUnが行う場合を例に挙げて説明したが、親機MUの制御部100が判断するようにしてもよい。すなわち、親機MUの制御部が、事業者検出部、停波制御部として機能してもよい。
【0128】
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0129】
5GC…Gコアネットワーク、100…制御部、110…伝送部、120…UL信号処理部、130…DL信号処理部、140…記憶部、140a…子機ビームIDマップデータ、200…制御部、200a…ビームフォーミング制御機能、200b…サーチ制御機能、200c…協調制御機能、210…通信部、220…信号処理部、230…無線通信部、231…信号制御部、232…出力スイッチ、233…下り用ハイブリッド回路、234…送信用増幅器、235…サーキュレータ、236…受信用増幅器、237…上り用ハイブリッド回路、238…バンドパスフィルタ、239…RSSI検出部、240…記憶部、240a…ビームIDマップデータ、AN…アンテナ装置、AN1~AN3…アンテナ、EN…外部の電話網、Gr1~Gr4…グループ、Gr1…グループ、Gr2…グループ、IN…インターネット、MU…親機、NR…無線アクセスネットワーク、P…ポート、RU1~RU3…子機、UE1~UE3…移動局、gNB1,gNB2…基地局装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19