(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190889
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】乗客コンベアの制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/00 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B66B31/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099399
(22)【出願日】2021-06-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤木 透央
【テーマコード(参考)】
3F321
【Fターム(参考)】
3F321EA02
3F321EA03
3F321EB07
3F321EC06
3F321EC07
3F321EC08
3F321EC09
3F321EC10
(57)【要約】
【課題】乗客検出センサが乗客を検出しない非検出状態で故障をしているのか、乗客が存在しないために非検出状態が継続しているかの判断を行うことができる乗客コンベアの制御装置を提供する。
【解決手段】投光第1センサ74aに電源を接続し、受光第1センサ74bから出力されるセンサ信号がON状態からOFF状態になったときに乗客を検出したと判断し、乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、投光第1センサ74aの電源を遮断し、受光第1センサ74bのセンサ信号がON状態のままであれば、受光第1センサ74bが異常であると判断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客検出センサに電源を接続し、前記乗客検出センサのスイッチング素子よりなる出力部から出力されるセンサ信号がON状態からOFF状態になったときに乗客を検出したと判断し、
前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、前記乗客検出センサの前記電源を遮断し、前記乗客検出センサのセンサ信号がON状態のままであれば、前記乗客検出センサが異常であると判断する、
ことを特徴とする乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
前記乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、前記乗客検出センサの前記電源を遮断し、前記出力部からの前記センサ信号がOFF状態になれば、前記乗客検出センサが正常であると判断して、前記乗客検出センサの前記電源を再び接続する、
請求項1に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
投光部と受光部を有する乗客検出センサの前記投光部からの光信号を前記受光部が受光しないときに、乗客を検出したと判断し、
前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、前記投光部からパルス状の光信号を前記受光部に投光し、前記受光部がパルス状の前記光信号を受光しないときには、前記乗客検出センサが異常であると判断する、
ことを特徴とする乗客コンベアの制御装置。
【請求項4】
前記乗客検出センサが異常であると判断したときは、前記乗客の有無にかかわらず定格速度で連続運転する、
請求項1又は3に記載の乗客コンベアの制御装置。
【請求項5】
前記乗客検出センサが前記乗客を検出しないときは、前記乗客非検出時間のカウントを開始し、
前記乗客検出センサが前記乗客を検出したときは、前記乗客コンベアを定格速度で運転すると共に、前記乗客非検出時間をリセットする、
請求項1又は3に記載の乗客コンベアの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアでは、乗降口に乗客検出センサが設けられ、この乗客検出センサが乗客を一定時間検出しない場合には、運転速度を低速にしたり停止させたりする自動運転を行っているものがある。
【0003】
このような自動運転を行う乗客コンベアにおいて、使用している乗客検出センサが正常又は異常かの診断をするために、保守員が点検時に動作を確認するか、又は、乗客検出センサを予め複数設けて、それぞれの検出状態を比較し、いずれかの乗客検出センサが故障していないかの判断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4173859号公報
【特許文献2】特許第6453424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような乗客コンベアの乗客検出センサにおいて、乗客を検出しない非検出状態が通常より長く継続している場合には、本当に乗客が存在していないために非検出状態が継続しているのか、又は、乗客検出センサが故障して非検出状態になっているかが不明であるという問題点があった。
【0006】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、乗客検出センサが乗客を検出しない非検出状態において、乗客が存在しないために非検出状態が継続しているのか、又は乗客検出センサが故障しているのかの判断を行うことができる乗客コンベアの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、乗客検出センサに電源を接続し、前記乗客検出センサのスイッチング素子よりなる出力部から出力されるセンサ信号がON状態からOFF状態になったときに乗客を検出したと判断し、前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、前記乗客検出センサの前記電源を遮断し、前記乗客検出センサのセンサ信号がON状態のままであれば、前記乗客検出センサが異常であると判断することを特徴とする、乗客コンベアの制御装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの左側から見た説明縦断面図である。
【
図3】投光第1センサと投光第2センサの回路図である。
【
図4】エスカレータの乗客を検出する電気的構成のブロック図である。
【
図5】乗客検出センサの診断を行うときのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態の乗客コンベアについて図面を参照して説明する。
【実施形態1】
【0010】
本発明の実施形態1の乗客コンベアについて
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態では、乗客コンベアとしてエスカレータ10で説明する。
【0011】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の全体の構造について
図1を参照して説明する。
図1は、エスカレータ10を左側面から見た説明図である。但し、エスカレータ10の内部構造をわかりやすくするために、エスカレータ10の左側の部材の図示を省略している。エスカレータ10の前後方向を説明するときは、上階から下階を見下ろし、上階が後側、下階が前側とする。
【0012】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて前後方向に沿って支持されている。
【0013】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の踏段スプロケット24,24、左右一対のベルトスプロケット27,27が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機21と、この減速機21の出力軸に取り付けられた駆動小スプロケット19と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスク式の電磁ブレーキ23とを有している。左右一対の踏段スプロケット24,24には、同軸に駆動大スプロケット17が取り付けられ、駆動小スプロケット19との間に無端状の駆動チェーン22が架け渡されている。左右一対の踏段スプロケット24,24と左右一対のベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結され同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20や電磁ブレーキ23などを制御する制御装置50が設けられている。
【0014】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内部には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の踏段スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端状の踏段チェーン28,28が架け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28の間には、複数の踏段30の左右一対の第1輪301,301が一定間隔毎に連結されている。モータ20が回転すると踏段30の第1輪301は、トラス12に固定された不図示の第1輪専用の案内レールを走行し、踏段30の第2輪302は、トラス12に固定された第2輪専用の案内レール25を走行する。
【0015】
トラス12の上部の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部には手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。
【0016】
左右一対の欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられている。正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。左右一対の欄干36の側面下部には、スカートガード44がそれぞれ設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。
【0017】
手摺りベルト38は、ベルトスプロケット27が踏段スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。例えば、
図1に示すように、踏段30が下降しているときは、手摺りベルト38は、欄干36の上端部にある手摺りレール39に沿って下階側に向かって走行し、下階側のインレット部48から正面スカートガード42内に進入し、欄干36の側面下部にあるスカートガード44内を上へ移動し、複数の案内ローラ66を経てベルトスプロケット27に架け渡されて駆動力が与えられ、その後、複数の案内ローラ64を経て上階側のインレット部46から正面スカートガード40の外に現れる。また、回転するベルトスプロケット27に、走行する手摺りベルト38を押圧するための押圧部材68が、ベルトスプロケット27の下方に設けられている。
【0018】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の間の乗降口である機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が進入したり、引き出されたりする。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0019】
(2)乗客を検出するための構造
次に、上記エスカレータ10において、乗り込んでくる乗客を検出する構造について
図1~
図3を参照して説明する。まず、乗客を検出するための乗客検出センサの取り付け位置について説明する。
【0020】
図1と
図2に示すように、上階側のエスカレータ10の乗降口には、左右一対の上左ポール72と上右ポール70が立設されている。上左ポール72と上右ポール70は、金属製の円柱である。上右ポール70の上部には、投光側乗客検出第1センサ(以下、「投光第1センサ」という)74aが設けられ、上左ポール72の上部には、その投光第1センサ74aから投光された光信号を受ける受光側乗客検出第1センサ(以下、「受光第1センサ」という)74bが設けられている。投光第1センサ74aと受光第1センサ74bをまとめて呼ぶときは、「上第1センサ74」という。また、上右ポール70の下部には、投光側乗客検出第2センサ(以下、「投光第2センサ」という)76aが設けられ、上左ポール72の下部には、受光側乗客検出第2センサ(以下、「受光第2センサ」という)76bが設けられている。投光第2センサ76aと受光第2センサ76bとをまとめて呼ぶときは、「上第2センサ76」という。
【0021】
図1と
図2に示すように、下階側のエスカレータ10の乗降口には、左右一対の下左ポール82と下右ポール80が立設されている。下左ポール82と下右ポール80は、金属製の円柱である。下右ポール80の上部には、投光側乗客検出第1センサ(以下、「投光第1センサ」という)84aが設けられ、下左ポール82の上部には、受光側乗客検出第1センサ(以下、「受光第1センサ」という)84bが設けられている。投光第1センサ84aと受光第1センサ84bをまとめて呼ぶときは、「下第1センサ84」という。また、下右ポール80の下部には、投光側乗客検出第2センサ(以下、「投光第2センサ」という)86aが設けられ、下左ポール82の下部には、受光側乗客検出第2センサ(以下、「受光第2センサ」という)86bが設けられている。投光第2センサ86aと受光第2センサ86bとをまとめて呼ぶときは、「下第2センサ86」という。
【0022】
上記で説明した上第1センサ74、上第2センサ76、下第1センサ84、下第2センサ86が、乗客を検出するための乗客検出センサである。
【0023】
上第2センサ76と下第2センサ86は、上第1センサ74と下第1センサ84で検出できない身長が低い子供などの乗客を検出するために設けられたものである。
【0024】
次に、投光第1センサ74aと受光第1センサ74bよりなる上第1センサ74の構造について
図3の回路図を参照して説明する。
【0025】
上第1センサ74は光電センサである。投光第1センサ74aは、光電センサの投光側であって光ダイオード90を有し、この光ダイオード90が直流電源92と制御装置50内部にあるスイッチ94と直列に接続されている。エスカレータ10が運転を開始し、乗客の検出を行う場合には、制御装置50がスイッチ94をON状態とし、直流電源92から光ダイオード90に直流電流が供給され、光ダイオード90から光信号を出力する。
【0026】
受光第1センサ74bは、光電センサの受光側であり、npn型の光トランジスタ96を有し、投光第1センサ74aから光信号が入力するとON状態となり、制御装置50にセンサ信号を出力する。制御装置50は、センサ信号が入力していると乗客が検出されていないと判断する。そして、
図2に示すように、乗客が上左ポール72と上右ポール70との間を通過すると、光ダイオード90からの光信号が遮断され、光トランジスタ96が光信号を受光できずOFF状態となってセンサ信号が制御装置50に入力せず、制御装置50は乗客が通過したと判断できる。
【0027】
一方、投光第1センサ74aのスイッチ94がOFF状態で光ダイオード90から光信号が出力されていない場合には、受光第1センサ74bの光トランジスタ96はOFF状態でセンサ信号が制御装置50に入力しない。それにもかかわらず、光トランジスタ96がON状態でセンサ信号が制御装置50に入力し続けるときは、光トランジスタ96の端子間が絶縁破壊等によって導通状態となって、短絡故障(ON故障)していると制御装置50は判断できる。
【0028】
上第2センサ76と下第1センサ84と下第2センサ86は、上記で説明した上第1センサ74と同様の構造を有している。
【0029】
(3)エスカレータ10の電気的構成
エスカレータ10における乗客を検出する電気的構成のブロック図について、
図4を参照して説明する。
【0030】
エスカレータ10の制御装置50には、上階側の投光第1センサ74aと受光第1センサ74bよりなる上第1センサ74、投光第2センサ76aと受光第2センサ76bよりなる上第2センサ76が接続され、下階側の投光第1センサ84aと受光第1センサ84bよりなる下第1センサ84、投光第2センサ86aと受光第2センサ86bよりなる下第2センサ86が接続されている。また、この制御装置50には、モータ20をインバータ制御する駆動回路98が接続されている。
【0031】
制御装置50は、上第1センサ74、上第2センサ76、下第1センサ84、及び下第2センサ86のいずれかが乗客を検出したときには、駆動回路98を用いてモータ20をインバータ駆動させ、踏段30を定格速度(20~30m/分)で走行させる。そして、全ての乗客検出センサが乗客を検出しなくなってから予め定められた第1時間(例えば、15分間)が経過すると、モータ20を停止させ、停止待機状態とする。この制御方法を「自動運転モード」という。
【0032】
(4)乗客検出センサの診断方法
次に、乗客検出センサ(上第1センサ74、上第2センサ76、下第1センサ84、下第2センサ86)が正常であるか、又は異常であるかの診断方法について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0033】
まず、エスカレータ10を下降運転させる場合は、乗客を検出するために上階側の上第1センサ74、上第2センサ76を動作させ、下階側の下第1センサ84、下第2センサ86は停止させておく。以下の説明では、エスカレータ10が下降運転している場合について説明する。
【0034】
ステップS1において、エスカレータ10の制御装置50は、自動運転モードを開始し、ステップS2に進む。
【0035】
ステップS2において、制御装置50は、モータ20をインバータ制御し、定格速度で下降運転を行い、ステップS3に進む。
【0036】
ステップS3において、上第1センサ74及び上第2センサ76の両方又はどちらか一方が乗客を検出した場合には、ステップS3を続ける(Yの場合)。そして乗客を検出しない場合には、ステップS4に進む(Nの場合)。
【0037】
ステップS4において、上第1センサ74及び上第2センサ76が両方共に乗客を検出しなくなってから、第1時間(例えば15分)経過していればステップS5に進み(Yの場合)、経過していなければステップS3に戻る(Nの場合)。
【0038】
ステップS5においては、乗客を検出しなくなってから第1時間がすでに経過しているので、制御装置50は、節電のために運転を停止して停止待機状態とし、また、乗客非検出時間のカウントを開始し、ステップS6に進む。
【0039】
ステップS6において、停止待機状態中に上第1センサ74及び上第2センサ76の両方又はどちらか一方が乗客を検出した場合にはステップS7に進み(Yの場合)、検出しなかった場合にはステップS9に進む(Nの場合)。
【0040】
乗客を検出した場合のステップS7においては、制御装置50は、定格速度運転を開始し、ステップS8に進む。
【0041】
続くステップS8において、上記ステップS6で上第1センサ74及び上第2センサ76の両方又はどちらか一方が乗客を検出したため、制御装置50は、これら乗客検出センサは正常であると判断し、ステップS3に戻る。
【0042】
一方、乗客を検出しなかった場合のステップS9においては、停止待機状態を開始してからカウントし始めた乗客非検出時間が第2時間(例えば30分)に到達していればステップS10に進み(Yの場合)、第2時間に到達していなければステップS6に戻る(Nの場合)。
【0043】
ステップS10においては、乗客非検出時間がすでに第2時間を超えているので、制御装置50は、乗客が検出されるべき通常の時間を超えたと判断し、投光第1センサ74aと投光第2センサ76aのそれぞれのスイッチ94,94をOFF状態にして、直流電源92,92をそれぞれ遮断し、ステップS11に進む。また、乗客非検出時間をリセットする。
【0044】
ステップS11において、受光第1センサ74b及び受光第2センサ76bのどちらか一方又は両方のセンサ信号がON状態のままである場合には、ステップS13に進み(Yの場合)、両方共にOFF状態になればステップS12に進む(Nの場合)。
【0045】
上記の通り、投光第1センサ74aと投光第2センサ76aの直流電源92をステップS10で遮断した場合に、受光第1センサ74bと受光第2センサ76aのセンサ信号がOFF状態となれば、制御装置50は、これら乗客検出センサは正常であると判断できる。従って、ステップS12において、制御装置50は、乗客を続けて検出するために投光第1センサ74aと投光第2センサ76aのそれぞれのスイッチ94,94をON状態にして、直流電源92,92を再び接続する。そしてステップS5に戻る。
【0046】
一方、受光第1センサ74bと受光第2センサ76bのどちらか一方又は両方がON状態のままであった場合、受光第1センサ74bと受光第2センサ76bのどちらか一方又は両方にON故障が生じているので、ステップS13において、制御装置50は自動運転モードを解除し、乗客の有無に関わらず定格速度で連続運転させる。そしてステップS14に進む。
【0047】
ステップS14において、受光第1センサ74bと受光第2センサ76bのどちらか一方又は両方にON故障が生じているので異常であると制御装置50は判断し、制御装置50内部のメモリにその旨を記録すると共に、外部の監視装置に対し異常である旨を発報する。そしてこの診断方法を終了する。
【0048】
上記の診断方法に加えて制御装置50は次の2つの診断方法も同時に行うことができる。
【0049】
第1の診断方法は、上第1センサ74が乗客を検出しているにもかかわらず、上第2センサ76が乗客を検出できない場合には、上第2センサ76のみが異常であると診断できる。これは、身長が高い乗客が通過すると、上第1センサ74と上第2センサ76の両方が乗客を検出しなければならないからである。
【0050】
第2の診断方法は、上第2センサ76が乗客を複数回(例えば、10回)連続して検出しているにもかかわらず、上第1センサ74が乗客を検出できない場合には、上第1センサ74のみが異常であると診断できる。
【0051】
以上、エスカレータ10を下降運転させる場合について説明したが、エスカレータ10を上昇運転させる場合は、乗客を検出するために下階側の下第1センサ84、下第2センサ86を動作させ、上階側の上第1センサ74、上第2センサ76は停止させておく。そして、上記と同様の診断の制御方法によって下階側の下第1センサ84と下第2センサ86が正常であるか異常であるかを診断できる。
【0052】
(5)効果
本実施形態によれば、自動運転モードにおける停止待機状態において、乗客を第2時間検出しない場合には、乗客検出センサ(上第1センサ74、上第2センサ76、下第1センサ84、下第2センサ86)に関して、ON故障しているか、又は乗客が本当に存在しないかを判断できる。
【実施形態2】
【0053】
次に、実施形態2のエスカレータ10の制御装置50について説明する。
【0054】
上記実施形態では、受光第1センサ74b又は受光第2センサ76bが故障であるか否かを判断するために、投光第1センサ74aと投光第2センサ76aの直流電源92を遮断したが、本実施形態ではこれに代えて、制御装置50により、投光第1センサ74aと投光第2センサ76aから、パルス状の光信号を出力させ、受光第1センサ74bと受光第2センサ76bのセンサ信号がそのパルス状の光信号に合わせてON/OFFした場合には、制御装置50はこれらのセンサが正常であると判断し、センサ信号のON状態が継続している場合には故障であると判断する。
【変更例】
【0055】
上記実施形態では、投光側の光電センサと受光側の光電センサが別体であったが、これに代えて、投光側と受光側が一体になった光電センサでもよく、例えばTOFセンサであってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、投光第1センサ74aと受光第1センサ74bを上右ポール70と上左ポール72に設けたが、これに代えてエスカレータ10の上階側の左右一対の正面スカートガード40,40にそれぞれ設けてもよい。また、乗降板32の左右両側にあるスカートガード44に設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、
図5のステップS9における乗客非検出時間について、本実施形態では停止待機状態になってからカウントを開始したが、これに代えて停止待機状態に入る前であっても、乗客を検出しなくなってから乗客非検出時間をカウントしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、左右一対の上左ポール72と上右ポール70の上部と下部にそれぞれ乗客検出センサを設けたが、これに代えて、左右一対の上左ポール72と上右ポール70の中央部に1個だけ設けてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、乗客検出センサのスイッチング素子としてnpn型の光トランジスタで説明したが、他のスイッチング素子(例えば、FETなど)であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0061】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
10・・・エスカレータ、20・・・モータ、50・・・制御装置、70・・・上右ポール、72・・・上左ポール、74a・・・投光第1センサ、74b・・・受光第1センサ、90・・・光ダイオード、92・・・直流電源、94・・・スイッチ、96・・・光トランジスタ、98・・・駆動回路
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口に2個の乗客検出センサが設けられ、
それぞれの前記乗客検出センサは、投光センサと受光センサを有し、
それぞれの前記投光センサに電源を接続し、前記投光センサのスイッチング素子よりなる出力部から光信号を出力し、前記光信号を受信して前記受光センサのセンサ信号がON状態からOFF状態になったときに乗客を検出したと判断し、
前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、2個の乗客検出センサの前記投光センサの前記電源を同時に遮断し、少なくとも一方の前記乗客検出センサの前記受光センサのセンサ信号がON状態のままであれば、当該乗客検出センサが異常であると判断し、また、少なくとも一方の前記乗客検出センサの前記センサ信号がOFF状態になれば、当該乗客検出センサが正常であると判断して、正常な当該乗客検出センサの前記投光センサの前記電源を再び接続し、
2個の前記乗客検出センサが共に異常であると判断したときは、前記乗客の有無にかかわらず定格速度で連続運転する、
ことを特徴とする乗客コンベアの制御装置。
【請求項2】
乗降口に2個の乗客検出センサが設けられ、
投光部と受光部を有するそれぞれの乗客検出センサの前記投光部からの光信号を前記受光部が受光しないときに、乗客を検出したと判断し、
前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、2個の乗客検出センサの前記投光部からパルス状の光信号を前記受光部に同時に投光し、少なくとも一方の前記乗客検出センサの当該受光部がパルス状の前記光信号を受光しないときには、当該乗客検出センサが異常であると判断し、また、少なくとも一方の前記乗客検出センサの当該受光部がパルス状の前記光信号を受光すれば、当該乗客検出センサが正常であると判断し、
2個の前記乗客検出センサが共に異常であると判断したときは、前記乗客の有無にかかわらず定格速度で連続運転する、
する、
ことを特徴とする乗客コンベアの制御装置。
【請求項3】
前記乗客検出センサが前記乗客を検出しないときは、前記乗客非検出時間のカウントを開始し、
前記乗客検出センサが前記乗客を検出したときは、前記乗客コンベアを定格速度で運転すると共に、前記乗客非検出時間をリセットする、
請求項1又は2に記載の乗客コンベアの制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の実施形態は、乗降口に2個の乗客検出センサが設けられ、それぞれの前記乗客検出センサは、投光センサと受光センサを有し、それぞれの前記投光センサに電源を接続し、前記投光センサのスイッチング素子よりなる出力部から光信号を出力し、前記光信号を受信して前記受光センサのセンサ信号がON状態からOFF状態になったときに乗客を検出したと判断し、前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、2個の乗客検出センサの前記投光センサの前記電源を同時に遮断し、少なくとも一方の前記乗客検出センサの前記受光センサのセンサ信号がON状態のままであれば、当該乗客検出センサが異常であると判断し、また、少なくとも一方の前記乗客検出センサの前記センサ信号がOFF状態になれば、当該乗客検出センサが正常であると判断して、正常な当該乗客検出センサの前記投光センサの前記電源を再び接続し、2個の前記乗客検出センサが共に異常であると判断したときは、前記乗客の有無にかかわらず定格速度で連続運転する、ことを特徴とする乗客コンベアの制御装置である。また、本発明の実施形態は、乗降口に2個の乗客検出センサが設けられ、投光部と受光部を有するそれぞれの乗客検出センサの前記投光部からの光信号を前記受光部が受光しないときに、乗客を検出したと判断し、前記乗客を検出しない乗客非検出時間が一定時間継続した場合に、2個の乗客検出センサの前記投光部からパルス状の光信号を前記受光部に同時に投光し、少なくとも一方の前記乗客検出センサの当該受光部がパルス状の前記光信号を受光しないときには、当該乗客検出センサが異常であると判断し、また、少なくとも一方の前記乗客検出センサの当該受光部がパルス状の前記光信号を受光すれば、当該乗客検出センサが正常であると判断し、2個の前記乗客検出センサが共に異常であると判断したときは、前記乗客の有無にかかわらず定格速度で連続運転する、ことを特徴とする乗客コンベアの制御装置である。