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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190897
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】土壌改良方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/147 20190101AFI20221220BHJP
   C09K 17/40 20060101ALI20221220BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C02F11/147
C09K17/40 P ZAB
B01J20/26 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099408
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】細川 一樹
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 好太
(72)【発明者】
【氏名】高矢 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洋克
【テーマコード(参考)】
4D059
4G066
4H026
【Fターム(参考)】
4D059AA09
4D059BF16
4D059BJ00
4D059DA02
4D059DA03
4D059DA08
4D059DB11
4D059DB13
4D059DB14
4D059DB19
4D059DB24
4D059EB01
4D059EB11
4D059EB20
4G066AC12B
4G066AC17B
4G066CA43
4G066DA15
4G066FA37
4H026CA04
4H026CC02
(57)【要約】
【課題】含水土壌の改質を効果的に行い得る土壌改良方法を提供することで、運搬等の取り扱いが容易な土壌を迅速且つ安価に実現する。
【解決手段】含水土壌を改質する土壌改良方法であって、前記含水土壌に、当該含水土壌に含まれる水分を略完全に吸水させるための添加量である必要添加量より少なくなるように、吸水性を有する土壌改良剤を添加する添加工程と、前記土壌改良剤を添加した土壌を攪拌する攪拌工程と、を包含し、前記攪拌工程において、前記土壌の状態が安定する前に攪拌を停止する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水土壌を改質する土壌改良方法であって、
前記含水土壌に、当該含水土壌に含まれる水分を略完全に吸水させるための添加量である必要添加量より少なくなるように、吸水性を有する土壌改良剤を添加する添加工程と、
前記土壌改良剤を添加した土壌を攪拌する攪拌工程と、
を包含し、
前記攪拌工程において、前記土壌の状態が安定する前に攪拌を停止する土壌改良方法。
【請求項2】
前記攪拌工程において、攪拌開始から攪拌停止までの時間が20~70秒である請求項1に記載の土壌改良方法。
【請求項3】
前記含水土壌は、粘土と砂とを2:8~8:2(重量比)の割合で含有し、土壌全体の含水率が15~30重量%である請求項1又は2に記載の土壌改良方法。
【請求項4】
前記必要添加量は、前記土壌改良剤に少量ずつ水を添加することによって形成される膨潤ゲルにおいて、当該膨潤ゲルから水が滲出し始めた時点の添加した水の重量に対する前記土壌改良剤の重量に基づいて求められる請求項1~3の何れか一項に記載の土壌改良方法。
【請求項5】
前記土壌改良剤は、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーを含有する請求項1~4の何れか一項に記載の土壌改良方法。
【請求項6】
前記土壌改良剤は、無機フィラーをさらに含有する請求項5に記載の土壌改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含水土壌を改質する土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事、建設工事、鉄道工事、地下工事、トンネル掘削工事等により発生した土壌には、比較的多くの水分が含まれているため流動し易く、そのままの状態では運搬等の取り扱いが困難である場合が多い。そこで、このような水分を多く含む土壌(以降、「含水土壌」と称する。)の性状を改質すべく、従来から土壌改良剤を用いた土壌改良方法が行われている。
【0003】
例えば、無機凝結性化合物と水溶性高分子化合物とを含有する泥土の改質剤を用いた方法があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の技術は、特に、アルカリ系の土木薬剤を用いた工事で発生するアルカリ性の泥土の改質を目的としており、含水率の高い泥土の流動性を抑えることで、運搬の容易化を図ろうとしたものである。
【0004】
また、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子化合物と、ソジウムモンモリロナイト等のフィロケイ酸塩鉱物の粉末とからなる固化剤を用いた方法があった(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2の技術は、従来の固化剤と同一の添加量において、含水土壌の固化スピードの向上を図ろうとしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10-165998号公報
【特許文献2】特開平4-103689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
含水土壌の改質にあたっては、改質対象となる含水土壌の性状を十分に把握し、それに応じて適切な処理を行う必要があるが、そのためには、使用する土壌改良剤の種類よりも寧ろ、土壌改良剤の使い方(方法)が極めて重要であることを本発明者らは知見した(具体的な内容については、後述の「発明を実施するための形態」において詳述する。)。
【0007】
ところが、上記の特許文献1や特許文献2の技術を含めて、従来の土壌改良方法では、使用する土壌改良剤の成分等については種々検討されているものの、土壌改良剤の使い方については、十分な検討がなされていなかったのが現状である。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、含水土壌の改質を効果的に行い得る土壌改良方法を提供することで、運搬等の取り扱いが容易な土壌を迅速且つ安価に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明にかかる土壌改良方法の特徴構成は、
含水土壌を改質する土壌改良方法であって、
前記含水土壌に、当該含水土壌に含まれる水分を略完全に吸水させるための添加量である必要添加量より少なくなるように、吸水性を有する土壌改良剤を添加する添加工程と、
前記土壌改良剤を添加した土壌を攪拌する攪拌工程と、
を包含し、
前記攪拌工程において、前記土壌の状態が安定する前に攪拌を停止することにある。
【0010】
土壌の改質作業において、含水土壌に吸水性を有する土壌改良剤を添加するにあたり、通常は、含水土壌に含まれる水分を略完全に吸水させるための添加量である必要添加量が添加される。この状態で土壌を攪拌すると、含水土壌は徐々に粒状化される。ところが、土壌改良剤の添加量を上記の必要添加量より少なくすると、含水土壌は攪拌に伴って徐々に粒状化されていくが、土壌の状態が安定する前に土壌改良剤を添加した土壌の攪拌を停止させると、全く予期せぬことに、運搬等の取り扱いが可能な程度に性状を保った土壌が得られることが判明した。そこで、本発明では、攪拌工程において、土壌の状態が安定する前に土壌の攪拌を停止する。従って、本構成の土壌改良方法によれば、従来の土壌改良方法では必要とされていた多量の薬剤や大掛かりな処理装置を使用しなくても、含水土壌の改質を効果的に行うことが可能となり、運搬等の取り扱いが容易な土壌を迅速且つ安価に得ることができる。
【0011】
本発明にかかる土壌改良方法において、
前記攪拌工程において、攪拌開始から攪拌停止までの時間が20~70秒であることが好ましい。
【0012】
本構成の土壌改良方法によれば、攪拌工程において、攪拌開始から攪拌停止までの時間が20~70秒であれば、土壌の状態が安定する前(土壌が軟化又は流動化する前)に土壌の表面が一時的に固化した状態が長続きするため、運搬等の取り扱いが可能な程度の一定の性状を保った土壌を確実に得ることができる。
【0013】
本発明にかかる土壌改良方法において、
前記含水土壌は、粘土と砂とを2:8~8:2(重量比)の割合で含有し、土壌全体の含水率が15~30重量%であることが好ましい。
【0014】
本構成の土壌改良方法によれば、改質対象の含水土壌について、粘土と砂とを2:8~8:2(重量比)の割合で含有し、土壌全体の含水率が15~30重量%であるものとすることで、土木工事、建設工事、鉄道工事、地下工事、トンネル掘削工事等により発生する殆どの土壌を処理対象とすることができる。
【0015】
本発明にかかる土壌改良方法において、
前記必要添加量は、前記土壌改良剤に少量ずつ水を添加することによって形成される膨潤ゲルにおいて、当該膨潤ゲルから水が滲出し始めた時点の添加した水の重量に対する前記土壌改良剤の重量に基づいて求められることが好ましい。
【0016】
本構成の土壌改良方法によれば、土壌改良剤の必要添加量を、土壌改良剤に少量ずつ水を添加することによって形成される膨潤ゲルにおいて、当該膨潤ゲルから水が滲出し始めた時点の添加した水の重量に対する土壌改良剤の重量に基づいて求めることで、土壌改良剤の種類や特性、スペック等に関わらず、その土壌改良剤の最適な添加量を決定することができる。
【0017】
本発明にかかる土壌改良方法において、
前記土壌改良剤は、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーを含有することが好ましい。
【0018】
本構成の土壌改良方法によれば、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーを含有する土壌改良剤を使用することで、含水土壌の改質を特に効果的に行うことができ、従来のような多量の薬剤や大掛かりな処理装置を使用しなくても、必要十分な性状の土壌を実現することができる。
【0019】
本発明にかかる土壌改良方法において、
前記土壌改良剤は、無機フィラーをさらに含有することが好ましい。
【0020】
本構成の土壌改良方法によれば、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーに加えて、無機フィラーをさらに含有する土壌改良剤を使用することで、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーの分散性が向上し、含水土壌の改質をさらに効果的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の土壌改良方法の実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態や実施例に限定されるものではない。
【0022】
<含水土壌>
本発明の土壌改良方法は、土壌改良剤を用いて含水土壌を改質するものである。本発明が処理対象とする含水土壌は、含水率が5~50重量%、好ましくは10~30重量%であり、主成分として、砂(平均粒径が概ね2~0.6mm)、シルト(平均粒径が概ね0.6~0.004mm)、粘土(平均粒径が概ね0.004mm以下)等の比較的粒径が小さい粒子を含む土壌である。ただし、礫等の比較的粒径が大きい粒子を含む土壌であっても、本発明の処理対象となり得る。また、本発明の土壌改良方法は、特に、粘土と砂とを2:8~8:2(重量比)の割合で含有する土壌を好適に処理することができる。このような土壌であれば、土木工事、建設工事、鉄道工事、地下工事、トンネル掘削工事等により発生する殆どの土壌が処理対象となるため、本発明の土壌改良方法を多くの現場で実施することができる。
【0023】
<土壌改良剤>
本発明の土壌改良方法で使用する土壌改良剤としては、その種類は特に限定されないが、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーを含有することが好ましい。親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーは、主に、含水土壌の改質に寄与する成分である。また、土壌改良剤は、親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーに加えて、無機フィラーをさらに含有することがより好ましい。無機フィラーは、主に、含水土壌に添加した親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーの分散性の向上に寄与する成分である。本発明の土壌改良方法では、このような土壌改良剤(薬剤)を使用することで、含水土壌の性状(硬さ、脆さ、保形性等)を特に効果的に向上させることができる。
【0024】
親水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体、ポリカルボン酸系ポリマー等が挙げられる。高吸水性ポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸系ポリマー(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム)、ポリメタクリル酸系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、カルボキシメチルセルロース系ポリマー等が挙げられる。これらのうち、好ましいポリマーは、親水性ポリマーの一種であるポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体、及び高吸水性ポリマーの一種であるポリアクリル酸ナトリウムであり、より好ましいポリマーは、ポリアクリル酸ナトリウムである。
【0025】
無機フィラーとしては、アルカリ土類金属の塩類を使用することができ、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸バリウム等が挙げられる。これらのうち、好ましい無機フィラーは、炭酸カルシウムであり、その中でも結晶性炭酸カルシウムがより好ましい。結晶性炭酸カルシウムとしては、工業薬品として市販されているものを使用できるが、結晶性炭酸カルシウムが主成分である大理石を粉砕したものを使用してもよい。
【0026】
親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーと無機フィラーとの配合比率は、重量比で、10/90~30/70に設定されていることが好ましく、15/85~20/80に設定されていることがより好ましい。親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーと無機フィラーとの配合比率が上記の範囲に設定されていれば、含水土壌の改質がより促進されるとともに、取り扱いが容易な土壌を得ることができる。
【0027】
土壌改良剤には、必要に応じて、その他の成分を配合することも可能である。その他の成分としては、消泡剤、pH調整剤、溶剤、増粘剤、安定化剤、着色剤、消臭剤、抗菌剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0028】
<土壌改良方法>
本発明の土壌改良方法では、含水土壌に土壌改良剤を添加する添加工程と、土壌改良剤を添加した土壌を攪拌する攪拌工程とを実施する。
【0029】
添加工程では、含水土壌に、当該含水土壌に含まれる水分を略完全に吸水させるための添加量(以下、本明細書において「必要添加量」と称する。)より少なくなるように、吸水性を有する土壌改良剤を添加する。ここで、必要添加量は、土壌改良剤に少量ずつ水を添加することによって形成される膨潤ゲルにおいて、当該膨潤ゲルから水が滲出し始めた時点の添加した水の重量に対する土壌改良剤の重量に基づいて求めることができる。例えば、土壌改良剤として、スペックとして吸水倍率が300%と標榜されている市販の工業用ポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性ポリマー)と、結晶性炭酸カルシウム(無機フィラー)とを含む薬剤50gを使用する場合、当該薬剤(土壌改良剤)に少量ずつ水を添加していくと、当該土壌改良剤に含まれるポリアクリル酸ナトリウムは吸水しながら徐々に膨潤する。ここで、当該土壌改良剤におけるポリアクリル酸ナトリウムと結晶性炭酸カルシウムとの配合比を20/80(すなわち、ポリアクリル酸ナトリウム10g、結晶性炭酸カルシウム40g)とし、例えば、水の添加量が20mL(≒20g)に達したとき、ポリアクリル酸ナトリウムはそれ以上の吸水ができなくなって膨潤ゲルから水が滲出し始めたとする。この場合、ポリアクリル酸ナトリウムの実際の吸水倍率は300%ではなく200%であるから、水10gに対する土壌改良剤の必要添加量は、
10 × (100/200) × (50/10) = 25g
と見積もることができる。このようにして土壌改良剤の必要添加量を求めることで、土壌改良剤の種類や特性、標榜されているスペック等に関わらず、その土壌改良剤の最適な添加量を決定することができる。例えば、土壌改良剤を粉砕して微細化すると、吸水倍率等の当初のスペックが変化することがあるが、このような場合でも、そのときの土壌改良剤の状態における最適な添加量を決定することができる。
【0030】
攪拌工程では、必要添加量より少ない土壌改良剤を添加した含水土壌の攪拌を行う。このとき含水土壌は、徐々に粒状化される。そして、このまま攪拌を続けると、粒状化されつつある土壌は、土壌改良剤で吸収しきれなかった水分の存在により軟化又は流動化し、その後は、状態が殆ど変化しない安定状態となる。ここで、土壌の状態が安定する前に攪拌を停止すると、全く予期せぬことに、含水土壌はある程度の性状を保ち続け、運搬等の取り扱いが可能な土壌が得られるという特異的な現象が起こることが判明した。そこで、本発明者らは、攪拌工程において、土壌の状態が安定する前に、必要添加量より少ない土壌改良剤を添加した土壌の攪拌を停止することとした。このように、本発明では、これまでの常識に捕らわれず、従来では寧ろしてはいけないこととされていた不十分な攪拌(低攪拌)を敢えて実施することで、含水土壌の改質を効果的に行うことが可能となった。その結果、運搬等の取り扱いが容易な土壌を迅速且つ安価に得ることができるようになった。このように、本発明の土壌改良方法は、従来のような多量の薬剤や大掛かりな処理装置を使用しなくても、必要十分な性状の土壌を実現することができるという点で、その利用価値は極めて大きいものと言える。
【0031】
ところで、本発明の土壌改良方法で実施する攪拌工程の中で、敢えて低攪拌を行うと、運搬等の取り扱いが可能な程度の性状を保った土壌が得られるという現象については、その詳細については未だ明らかではないが、一つの仮説として、土壌改良剤に含まれる親水性ポリマー及び/又は高吸水性ポリマーが含水土壌の水分を吸収して土壌粒子を巻き込みながら膨潤していく過程で、土壌の表面が一時的に(見かけ上)固まるためと考えられ、さらに無機フィラーを添加した場合は、当該無機フィラーが核となって土壌粒子どうしが集合し、上記の土壌の表面が一時的に固まる現象がより一層顕著に現れるためと考えられる。
【0032】
攪拌工程における攪拌時間(低攪拌)は、攪拌開始から攪拌停止までの時間が20~70秒であることが好ましく、30~60秒であることがより好ましい。上記の撹拌時間で土壌の攪拌を行うと、土壌の状態が安定する前(土壌が軟化又は流動化する前)に土壌の表面が一時的に固化した状態が長続きするため、運搬等の取り扱いが可能な程度の一定の性状を保った土壌を確実に得ることができる。
【実施例0033】
本発明の土壌改良方法の効果を確認するため、模擬土壌による土壌改良試験を実施した。模擬土壌には、粘土(平均粒径が概ね0.004mm以下)と、砂(平均粒径が概ね2~0.6mm)との混合土を使用した。土壌改良剤には、親水性ポリマーであるポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体を含む薬剤(実施例1~25)、並びに高吸水性ポリマーであるポリアクリル酸ナトリウムを含む薬剤(実施例26~67)を使用した。なお、実施例1~67の土壌改良剤には、無機フィラーとして結晶性炭酸カルシウムを配合した。土壌の性状を評価するため、テーブルフロー値、及びコーン指数の測定を行い、さらに土壌の外観を目視により評価した。テーブルフロー値、及びコーン指数の測定方法、並びに目視による外観の評価基準を以下に示す。
【0034】
<テーブルフロー値>
JIS R 5201に規定される「セメントの物理試験方法」の「12 フロー試験」に準拠してテーブルフロー試験を行った。ただし、JIS R 5201によれば、落下回数は15秒間に15回とされているが、本実施例では、落下回数は50秒間に50回とした。
【0035】
具体的には、フローテーブルの中央にフローコーンを載置し、模擬土壌を二層に分けて充填した。各層の全面を突き棒で夫々15回突き、フローコーンに模擬土壌を適宜補充して表面を均した。その後、フローコーンを速やかに垂直方向に持ち上げ、50秒間に50回の落下運動を与えた。そして、フローテーブル上に広がった模擬土壌の最大径:a(mm)と、当該最大径に対して垂直な方向における径:b(mm)とを測定し、これをテーブルフロー値:a(mm)×b(mm)とした。
【0036】
なお、テーブルフロー値の測定に使用した試験装置は、株式会社東京篠原製のプレート試験器(モルタルフローテーブル SS-C-409)である。
【0037】
<コーン指数>
JIS A 1228に規定される「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠してコーン試験を行った。
【0038】
具体的には、模擬土壌を4.75mmの篩に掛け、篩を通過した試料を三層に分けて内径100mmの突固め試験用モールドに充填した。各層を2.5kgのランマーで30cmの高さから落下させて夫々25回突き、供試体を作製した。
【0039】
次に、供試体の上端面の中央にコーンペネトロメーターを鉛直に立て、これを1cm/秒の速度で供試体に貫入させ、コーン先端の貫入量が供試体の上端面から50mm、75mm、100mmとなったときの貫入抵抗力を求めた。そして、下記の式(1)に示すように、上記三点の貫入抵抗力の平均値をコーン先端の底面積で除してコーン指数を求めた。
= Q/A × 10 ・・・(1)
:コーン指数(kN/m
:平均貫入抵抗力(N)
A:コーン先端の底面積(cm
【0040】
なお、コーン指数の測定に使用した試験装置は、株式会社東京篠原製のコーン測定器(施工管理用ペネトロメータ― SS-S-325)、敷き詰めランマー(SS-S-263)、コーン型枠(SS-S-263)である。
【0041】
<目視による外観の評価基準>
攪拌直後の模擬土壌(処理土壌)の外観について、目視で土壌表面に水分が明確には確認されないものを「良好」とし、目視で土壌表面から水分が滲み出ていると認められるものを「不良」とした。
【0042】
<1>ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体(親水性ポリマー)を含有する土壌改良剤による試験
〔実施例1~4、比較例1〕
模擬土壌1L(粘土:砂=2:8、含水率約20重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を5g又は10g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例1~4)。なお、実施例1~4の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から30gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例1)。その後、夫々の攪拌終了後の土壌(以下、「処理土壌」と称する。)について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0043】
〔実施例5、比較例2〕
模擬土壌1L(粘土:砂=2:8、含水率約15重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を1.25g添加し、ホバートミキサーで30秒攪拌した。なお、実施例5の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から20gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例2)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0044】
〔実施例6~9、比較例3〕
模擬土壌1L(粘土:砂=5:5、含水率約25重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を15g又は20g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例6~9)。なお、実施例6~9の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から35gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例3)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0045】
〔実施例10~13、比較例4〕
模擬土壌1L(粘土:砂=5:5、含水率約20重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を10g又は15g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例10~13)。なお、実施例10~13の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から30gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例4)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0046】
〔実施例14~15、比較例5〕
模擬土壌1L(粘土:砂=5:5、含水率約15重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を5g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例14~15)。なお、実施例14~15の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から25gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例5)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0047】
〔実施例16~19、比較例6〕
模擬土壌1L(粘土:砂=8:2、含水率約30重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を35g又は40g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例16~19)。なお、実施例16~19の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から45gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例6)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0048】
〔実施例20~23、比較例7〕
模擬土壌1L(粘土:砂=8:2、含水率約25重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を5g又は10g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例20~23)。なお、実施例20~23の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から35gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例7)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0049】
〔実施例24~25、比較例8〕
模擬土壌1L(粘土:砂=8:2、含水率約20重量%)に対して、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体と結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を2.5g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例24~25)。なお、実施例24~25の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から30gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例8)。その後、夫々の処理土壌について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0050】
実施例1~25、及び比較例1~8の測定結果を以下の表1~6に示す。なお、各表において、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体を「PA/PAA共重合体」と略称する。テーブルフロー値については、120mm×120mm以内であれば良好と判断され、コーン指数については、200kN/m以上であれば良好と判断される。ただし、全体的な評価については、テーブルフロー値、及びコーン指数の他、処理土壌の外観も考慮し、良好なものからA~Cの三段階で行なった。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
上記の表1~6に示した試験結果より、ポリアクリル酸/ポリアクリルアミド共重合体(親水性ポリマー)を含有する土壌改良剤を用いた場合の本発明にかかる土壌改良方法について、以下の新たな知見が得られた。
【0058】
(1―1)粘土:砂が2:8、含水率が約20重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を5g/L又は10g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例1~4)。また、攪拌時間を30秒としたもの(実施例1、3)より60秒としたもの(実施例2、4)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例1)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0059】
(1―2)粘土:砂が2:8、含水率が約15重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を1.25g/Lに設定すると、攪拌時間が30秒で運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例5)。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例2)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0060】
(1―3)粘土:砂が5:5、含水率が約25%の土壌において、土壌改良剤の添加量を15g/L又は20g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例6~9)。なお、攪拌時間を30秒としたもの(実施例6、8)と60秒としたもの(実施例7、9)とで土壌の性状に大きな差はみられなかった。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例3)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0061】
(1―4)粘土:砂が5:5、含水率が約20重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を10g/L又は15g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例10~13)。また、攪拌時間を30秒としたもの(実施例10、12)より60秒としたもの(実施例11、13)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例4)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0062】
(1―5)粘土:砂が5:5、含水率が約15重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を5g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例14~15)。なお、攪拌時間を30秒としたもの(実施例14)と60秒としたもの(実施例15)とで土壌の性状に大きな差はみられなかった。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例5)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0063】
(1―6)粘土:砂が8:2、含水率が約30重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を35g/L又は40g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例16~19)。また、攪拌時間を30秒としたもの(実施例16、18)より60秒としたもの(実施例17、19)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例6)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0064】
(1―7)粘土:砂が8:2、含水率が約25重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を5g/L又は10g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例20~23)。また、攪拌時間を30秒としたもの(実施例20、22)より60秒としたもの(実施例21、23)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例7)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0065】
(1―8)粘土:砂が8:2、含水率が約20重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を2.5g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例24~25)。また、攪拌時間を30秒としたもの(実施例24)より60秒としたもの(実施例25)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例8)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0066】
<2>ポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性ポリマー)を含有する土壌改良剤による試験
〔実施例26~31、比較例9〕
模擬土壌1L(粘土:砂=2:8、含水率約20重量%)に対して、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80、18/72、15/85に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を5g又は10g添加し、ホバートミキサーで30秒攪拌した(実施例26~31)。なお、実施例26~31の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から30~35gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例9)。その後、夫々の攪拌終了後の土壌(以下、「処理土壌」と称する。)について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0067】
〔実施例32~43、比較例10〕
模擬土壌1L(粘土:砂=5:5、含水率約25重量%)に対して、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80、18/72、15/85に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を20g又は30g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例32~43)。なお、実施例32~43の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から35~40gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例10)。その後、夫々の攪拌終了後の土壌(以下、「処理土壌」と称する。)について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0068】
〔実施例44~49、比較例11〕
模擬土壌1L(粘土:砂=5:5、含水率約20重量%)に対して、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を5g、10g又は20g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例44~49)。なお、実施例44~49の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から25gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例11)。その後、夫々の攪拌終了後の土壌(以下、「処理土壌」と称する。)について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0069】
〔実施例50~61、比較例12〕
模擬土壌1L(粘土:砂=8:2、含水率約30重量%)に対して、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80、18/72、15/85に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を30g又は40g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例50~61)。なお、実施例50~61の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から40~50gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例12)。その後、夫々の攪拌終了後の土壌(以下、「処理土壌」と称する。)について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0070】
〔実施例62~67、比較例13〕
模擬土壌1L(粘土:砂=8:2、含水率約25重量%)に対して、ポリアクリル酸ナトリウムと結晶性炭酸カルシウムとの配合比率を重量比で20/80に設定した薬剤(本発明の土壌改良剤)を10g、20g又は30g添加し、ホバートミキサーで30秒又は60秒攪拌した(実施例62~67)。なお、実施例62~67の模擬土壌における薬剤の必要添加量は、別途実施した薬剤の吸水試験(詳細については省略)から30gと求められている。また、比較のため、薬剤を添加しない模擬土壌について、ホバートミキサーで30秒攪拌した(比較例13)。その後、夫々の攪拌終了後の土壌(以下、「処理土壌」と称する。)について、テーブルフロー値、及びコーン指数を求めた。
【0071】
実施例26~67、及び比較例9~13の測定結果を以下の表7~14に示す。テーブルフロー値については、120mm×120mm以内であれば良好と判断され、コーン指数については、200kN/m以上であれば良好と判断される。ただし、全体的な評価については、テーブルフロー値、及びコーン指数の他、処理土壌の外観も考慮し、良好なものからA~Cの三段階で行なった。
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
【表13】
【0079】
【表14】
【0080】
上記の表7~14に示した試験結果より、ポリアクリル酸ナトリウム(高吸水性ポリマー)を含有する土壌改良剤を用いた場合の本発明にかかる土壌改良方法について、以下の新たな知見が得られた。
【0081】
(2―1)粘土:砂が2:8、含水率が約20重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を5g/L又は10g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例26~31)。また、ポリアクリル酸ナトリウムの含有量が多い土壌改良剤(実施例26、27)の方が良好な性状の土壌が得られる傾向が見られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例9)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0082】
(2―2)粘土:砂が5:5、含水率が約25重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を20g/L又は30g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例32~43)。また、攪拌時間を30秒としたもの(例えば、実施例34)より60秒としたもの(例えば、実施例35)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例10)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0083】
(2―3)粘土:砂が5:5、含水率が約20重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を5g/L、10g/L又は20g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例44~49)。なお、攪拌時間を30秒としたもの(実施例44、46、48)と60秒としたもの(実施例45、47、49)とで土壌の性状に大きな差はみられなかった。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例11)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0084】
(2―4)粘土:砂が8:2、含水率が約30重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を30g/L又は40/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例50~61)。また、攪拌時間を30秒としたもの(例えば、実施例60)より60秒としたもの(例えば、実施例61)の方が良好な性状の土壌が得られた。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例12)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【0085】
(2―5)粘土:砂が8:2、含水率が約25重量%の土壌において、土壌改良剤の添加量を10g/L、20g/L又は30g/Lに設定すると、運搬等の取り扱いが容易な良好な性状の土壌が得られた(実施例62~67)。なお、攪拌時間を30秒としたもの(実施例62、64、66)と60秒としたもの(実施例63、65、67)とで土壌の性状に大きな差はみられなかった。ところが、さらに土壌の攪拌を継続すると、土壌は流動化し、運搬等の取り扱いが困難なものとなった(データ示さず)。土壌改良剤を添加しないもの(比較例13)については、良好な性状の土壌は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の土壌改良方法は、土木工事、建設工事、鉄道工事、地下工事、トンネル掘削工事等により発生した様々な土壌(特に、含水土壌)の改質に利用することができる。