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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190900
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】乗用型苗移植機と育苗箱
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20221220BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
A01C11/02 350E
A01G9/02 610K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099414
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
【テーマコード(参考)】
2B064
2B327
【Fターム(参考)】
2B064AA05
2B064AA07
2B064AB01
2B064AC01
2B064BA04
2B064BA08
2B064BA09
2B064BA12
2B327NA01
2B327ND03
2B327QA05
2B327QD02
2B327SA15
2B327SA28
(57)【要約】
【課題】苗掬い板にて予備苗載台に載置された育苗箱からマット状苗を掬い取って苗載台に補給する作業は、作業者が掬い取ったマット状苗が載っている苗掬い板を片手で持って苗植付部の苗載台に向けて差し出し、他方の手でマット状苗が滑落しないようにマット状苗を押えながら行なう。この補給作業は、作業を無理な姿勢で行なわなければならず、作業性が悪く作業効率も悪いものであった。そこで、容易に作業効率良く苗補給が行なえる乗用型苗移植機と育苗箱を提供する。
【解決手段】苗補給装置70は、側壁枠2と側壁枠2に抜き差し自在の底板3から構成した育苗箱1を載せる載置面72aを上部に設け、その下方に水平に付勢された水平状態とその上に載ったマット状苗Nの重みで後傾状態に回動する回動板72cを設け、後傾状態の回動板72c下端部を苗載台51の苗載置部51a上部に連通させる。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(11)に苗植付部(13)を設け、該苗植付部(13)の苗載台(51)上部に対向して苗補給装置(70)を設けた乗用型苗移植機において、苗補給装置(70)が、側壁枠(2)と該側壁枠(2)に抜き差し自在の底板(3)から構成した育苗箱(1)を載せる載置面(72a)を上部に設け、該載置面(72a)内方に育苗箱(1)から下方に移動するマット状苗(N)が通過する空間部を設け、該空間部の下方位置に機体左右方向の枢支軸(71a)にて枢支され付勢装置にて水平又は略水平に付勢された水平状態とマット状苗(N)の重みで後部が下方に位置する後傾状態に回動する回動板(72c)を設け、該後傾状態の回動板(72c)下端部を苗載台(51)の苗載置部(51a)上部に連通させる構成としたことを特徴とする乗用型苗移植機。
【請求項2】
苗補給装置(70)を苗載台(51)の左右方向に設けた複数の苗載置部(51a)の上部に沿って左右方向に移動自在に設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機。
【請求項3】
苗補給装置(70)を枢支軸(71a)まわりに回動自在に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗用型苗移植機。
【請求項4】
側壁枠(2)と該側壁枠(2)に抜き差し自在の底板(3)にて構成したことを特徴とする育苗箱。
【請求項5】
側壁枠(2)の短辺側の一側(2a)に底板(3)が抜き差しできる貫通孔(4)を設け、短辺側の他側(2b)内側及び2つの長辺側(2c)内側に貫通孔(4)と連通し底板(3)が抜き差しできる溝(5)を設けたことを特徴とする請求項4に記載の育苗箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体に苗植付部を装着した乗用型苗移植機と該乗用型苗移植機にマット状苗を供給する育苗箱に関する。
【背景技術】
【0002】
予備苗載台を装備した走行車体に苗植付部を装着した乗用型苗移植機が一般的である。そして、予備苗載台に載置された育苗箱のマット状苗を苗植付部の苗載台に補給するには、苗掬い板にて予備苗載台に載置された育苗箱からマット状苗を掬い取り、苗載台に補給している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-144018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗掬い板にて予備苗載台に載置された育苗箱からマット状苗を掬い取り、苗載台に補給する作業は、走行車体に搭乗している作業者が掬い取ったマット状苗が載っている苗掬い板を片手で持って苗植付部の苗載台に向けて差し出し、他方の手でマット状苗が滑落しないようにマット状苗を押えながら行なう。この補給作業は、作業を無理な姿勢で行なわなければならず、作業性が悪く作業効率も悪いものであった。また、苗掬い板を走行車体に積載しておく保管場所も必要となる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、容易に作業効率良く苗補給が行なえる乗用型苗移植機と育苗箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車体11に苗植付部13を設け、該苗植付部13の苗載台51上部に対向して苗補給装置70を設けた乗用型苗移植機において、苗補給装置70が、側壁枠2と該側壁枠2に抜き差し自在の底板3から構成した育苗箱1を載せる載置面72aを上部に設け、該載置面72a内方に育苗箱1から下方に移動するマット状苗Nが通過する空間部を設け、該空間部の下方位置に機体左右方向の枢支軸71aにて枢支され付勢装置にて水平又は略水平に付勢された水平状態とマット状苗Nの重みで後部が下方に位置する後傾状態に回動する回動板72cを設け、該後傾状態の回動板72c下端部を苗載台51の苗載置部51a上部に連通させる構成とした乗用型苗移植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、苗補給装置70の載置面72aに載置した育苗箱1の底板3を側壁枠2から引き抜くと、マット状苗Nが育苗箱1から下方に移動して回動板72c上に載った状態となり、回動板72cは、その上に載ったマット状苗Nの重みで後部が下方に回動して苗載台51の苗載置部51a上部に連通した状態となり、マット状苗Nは回動板72c上を滑落して苗載台51の苗載置部51aに補給される。よって、容易に且つ効率よく苗補給作業が行える。
【0008】
請求項2記載の発明は、苗補給装置70を苗載台51の左右方向に設けた複数の苗載置部51aの上部に沿って左右方向に移動自在に設けた請求項1に記載の乗用型苗移植機である。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、苗補給装置70を苗載台51の左右方向に設けた複数の苗載置部51aの上部に沿って左右方向に移動自在に設けたので、苗補給装置70を複数の苗載置部51aの上部に沿って左右方向に移動させて、各苗載置部51aに作業性良く苗補給することができる。
【0010】
請求項3記載の発明は、苗補給装置70を枢支軸71aまわりに回動自在に設けた請求項1または請求項2に記載の乗用型苗移植機である。
【0011】
請求項4記載の発明は、側壁枠2と該側壁枠2に抜き差し自在の底板3にて構成した育苗箱である。
【0012】
請求項4記載の発明によれば、側壁枠2と該側壁枠2に抜き差し自在の底板3にて構成した育苗箱としたので、底板3を側壁枠2から引き抜いて、マット状苗Nを容易に下方に取り出すことができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、側壁枠2の短辺側の一側2aに底板3が抜き差しできる貫通孔4を設け、短辺側の他側2b内側及び2つの長辺側2c内側に貫通孔4と連通し底板3が抜き差しできる溝5を設けた請求項4に記載の育苗箱である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の育苗箱の作用説明用斜視図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1のB-B断面図である。
図4】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の育苗箱の作用説明用側面図である。
図5】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の育苗箱の作用説明用拡大側面図である。
図6】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の育苗箱の作用説明用側面図である。
図7】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の育苗箱の作用説明用拡大側断面図である。
図8】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の側面図である。
図9】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の作用説明用要部斜視図である。
図10】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の作用説明用要部側面図である。
図11】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の作用説明用要部側面図である。
図12】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の作用説明用要部斜視図である。
図13】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の作用説明用要部側面図である。
図14】本発明における実施の形態を示す乗用型田植機の作用説明用要部側面図である。
図15】本発明における他の実施形態を示す乗用型田植機の要部平面図である。
図16】本発明における他の実施形態を示す乗用型田植機の要部正面図である。
図17】本発明における他の実施形態を示す乗用型田植機の(a)要部斜視図(その一)、(b)要部斜視図(その二)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0016】
<育苗箱>
育苗箱1は、平面視で長方形の側壁枠2と該側壁枠2に抜き差し自在の底板3から構成される。
【0017】
側壁枠2は、短辺側の一側2aに底板3が抜き差しできる貫通孔4を設け、短辺側の他側2b内側及び2つの長辺側2c内側に貫通孔4と連通し底板3が抜き差しできる溝5を設けている。
【0018】
底板3は、一側に上方に立ち上がった把持部6を設け、底板3全体に複数の水抜き孔7を設けている。
【0019】
従って、作業者が底板3の把持部6を持って、側壁枠2の短辺側の一側2aの貫通孔4から底板3の先端を差し込んでいくと、底板3は側壁枠2の2つの長辺側2cの溝5に沿って差し込まれ、最後に短辺側の他側2bの溝5に先端が嵌入して、育苗箱1は平面視で長方形の箱状となる。
【0020】
そして、育苗箱1内に床土を入れ、播種し、覆土し、潅水して、一般的な育苗方法で発芽させ育苗すると、図4に示すようにマット状苗Nができる。
【0021】
育苗箱1からマット状苗Nを取り出すには、図5に示すように、片方の手で育苗箱1の短辺側の一側2aを押さえて他方の手で把持部6を持って、底板3を側壁枠2から引き抜くと、マット状苗Nを容易に下方に取り出すことができる(図6参照)。
【0022】
この際に、図5に示すように、把持部6の位置は、育苗箱1の短辺側の一側2a上面よりも距離Aだけ低くなるように構成しているので、片方の手で育苗箱1の短辺側の一側2aを押さえて他方の手で把持部6を持って底板3を側壁枠2から引き抜く作業が容易に行える。
【0023】
また、図3に示すように、2つの長辺側2c及び短辺側の他側2bの溝5より下方の側壁は、距離Bだけ後退した構成としているので、底板3を側壁枠2から引き抜いてマット状苗Nを下方に取り出す際に、マット状苗Nの床土部分が溝5に引っ掛かって崩れるのを防止できる。
【0024】
また、図7に示すように、底板3を側壁枠2から引き抜く際に、マット状苗Nの床土Naは、短辺側の一側2aの内壁で規制されて動かない。そして、底板3の水抜き孔7から下方に伸びている根Nbは、短辺側の一側2aの貫通孔4下側の内壁で剥ぎ取られて下方に落下し、苗取り出し作業後の育苗箱1の清掃が容易である。
【0025】
以上要するに、育苗箱1は、側壁枠2と該側壁枠2に抜き差し自在の底板3から構成されるので、底板3を側壁枠2から引き抜いて、マット状苗Nを容易に下方に取り出すことができる。
【0026】
<乗用型苗移植機>
図8は、本発明の乗用型苗移植機の典型例である施肥装置を装着した乗用型田植機10の側面図である。この施肥装置付き乗用型田植機10は、走行車体11の後側に昇降リンク装置12を介して苗植付部13が昇降可能に装着され、走行車体11の後部上側に施肥装置14の本体部分が設けられている。なお、乗用型苗移植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0027】
走行車体11は、駆動輪である左右一対の前輪15,15及び左右一対の後輪16,16を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース17が配置され、そのミッションケース17の左右側方に前輪ファイナルケース18,18が設けられ、該左右前輪ファイナルケース18,18の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪15,15が各々取り付けられている。また、ミッションケース17の背面部にメインフレーム19の前端部が固着されており、そのメインフレーム19の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース20,20がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース20,20から外向きに突出する後輪車軸に後輪16,16が取り付けられている。
【0028】
エンジン21はメインフレーム19の上に搭載されており、該エンジン21の回転動力が、ベルト伝動装置22及びHST23を介してミッションケース17に伝達される。ミッションケース17に伝達された回転動力は、ミッションケース17の該ケース内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース18,18に伝達されて前輪15,15を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース20,20に伝達されて後輪16,16を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体11の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部13へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置14へ伝動される。
【0029】
エンジン21の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪15,15を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0030】
昇降リンク装置12は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム19の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部13に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部13がローリング自在に連結されている。メインフレーム19に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部13がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0031】
苗植付部13は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、苗載台51、苗植付装置52、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ69等を備えている。
【0032】
苗植付部13の下部には中央にセンターフロートとしてのフロート55、その左右両側にサイドフロートとしてのフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロートとしてのフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部13を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0033】
施肥装置14は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63まで導き、施肥ガイド63の前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0034】
苗植付部13には、整地装置の一例である整地ロータ27が取り付けられている。
【0035】
また、走行車体11の前部左右両側には、左右支持フレーム49,49に各々支持された補給用の苗を載せておく左右一対の予備苗載台38,38が設けられている。
【0036】
左右予備苗載台38,38は、それぞれ傾斜支持部材で上下三段に構成され、最上段の第1予備苗載台38a、第2予備苗載台38b及び第3予備苗載台38cからなっている。
【0037】
最上段の第1予備苗載台38aの中央部側面と第2予備苗載台38bの最前部側面がそれぞれ回動軸38a1,38b1の回りに回動自在に第1移動リンク部材39aの両端で支持され、また最上段の第1予備苗載台38aの最後部側面と最下段の第3予備苗載台38cの最前部側面が第2移動リンク部材39bの両端でそれぞれ回動軸38a2,38c1の回りに回動自在に支持され、また第2予備苗載台38bの中央部側面が回動軸38b2の回りに回動自在に前記第2移動リンク部材39bの中央部で支持され、さらに第2予備苗載台38bの最後部側面と最下段の第3予備苗載台38cの中央部側面とがそれぞれ回動軸38b3,38c2の回りに回動自在に第3移動リンク部材39cの両端で支持されている。
【0038】
第2予備苗載台38bは機体(支持フレーム49)に固定されており、第2予備苗載台38bを中心とし、その上下に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cが配置され、全体として上下三段に配置される積層状態と第2予備苗載台38bを中心とし、その前後に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cがそれぞれ配置され、全体として第1移動リンク部材39a,第2移動リンク部材39b,第3移動リンク部材39cをほぼ同一平面上に配置替えすることができる。すなわち、第2移動リンク部材39bは、その中央部が第2予備苗載台38bの中央部の両側に設けられた回動支点により支持されているので、第2移動リンク部材39bを回動させて、第1、第3予備苗載台38a,38cを第2予備苗載台38bの前後に移動させて、第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを同一平面上に配置することで機体前部から苗載台51前方位置に至る広い平面状態となる。
【0039】
また、第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを積層状態又は平面状態に並べ替えるときには、第1、第2、第3移動リンク部材39a,39b,39cの作動を電動モータで行う。このとき、電動モータの作動スイッチは、操縦者側と苗植付部13周りの別の場所に居る補助者側の2個所に設けると作業性がよい。
【0040】
苗載台51は、左右方向に6つの苗載置部51aが側壁51bで区切られて一体構成され、その上部裏面に設けた左右方向のレール51cがフレームを兼ねる伝動ケース50に基部が固着された支持枠体65の支持ローラ65aに摺動自在に支持されて左右方向にスライド移動し、各苗載置部51aに載置されたマット状苗Nが苗送りベルト51dで横一列分の苗が一斉に苗取出口51eに向けて送られる構成である。
【0041】
(苗補給装置70)
苗載台51前上端部と平面状態にした予備苗載台38後端部の間には、苗補給装置70が設けられている。
【0042】
苗補給機構としての苗補給装置70は、走行車体11のメインフレーム19後部に基部が固定された門型状の支持フレーム71と補給装置72で構成される。
【0043】
支持フレーム71は、ステンレス製の丸パイプ材にて正面視で門型状に形成され、上部が機体左右方向に水平で苗載台51前上端部に沿うレール部71aとなっている。
【0044】
補給装置72は、支持フレーム71の枢支軸としてのレール部71aに回動及び左右移動自在に設けられており、把持部73を持って回動及び左右移動することができる。
【0045】
そして、補給装置72は、上面に育苗箱1の側壁枠2底面を載置する平面視で長方形枠状の載置面72aを設けたホッパ状部72bと該載置面72aの内方空間に枢支軸としてのレール部71aに回動自在に設けられた回動板72cで構成される。
【0046】
載置面72aは、把持部73を第3予備苗載台38c後端部に設けたフック74に係止させた状態で、前部が予備苗載台38後端部(第3予備苗載台38c後端部)に連通する構成となっている。(補給装置72は、レール部71aに対して後部が重い構成となっており、レール部71a回りに前部が上方に向けて回動する形態であり、載置面72aが水平から若干後傾する状態でそれ以上の後傾が規制される構成となっている。)
ホッパ状部72bは、載置面72aの下方を周囲壁面で囲ったホッパ形状であり、後下部に苗載台51の苗載置部51a上端と上から接当して連通する案内板72dが形成されている。また、案内板72d上方の後壁下部には、マット状苗Nが通過できるように開口72eが形成されている。
【0047】
回動板72cは、レール部71aに回動自在に設けられており、付勢機構で載置面72aの内方空間位置に水平状に収まる構成とし、回動板72c上にマット状苗Nが載るとその重みで後部が下方に回動する。なお、回動板72cの左右幅は、育苗箱1の側壁枠2内方空間に入る幅としている。
【0048】
<苗補給作業>
第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cを平面状態にして、その上面に載置した育苗箱1からマット状苗Nを取り出して苗載台51に補給するには、把持部73を第3予備苗載台38c後端部に設けたフック74に係止させ苗補給装置70の載置面72a前部が予備苗載台38後端部(第3予備苗載台38c後端部)に連通する状態とし、ホッパ状部72bの案内板72dを苗載台51の苗載置部51a上端に上から接当した状態とする。
【0049】
そして、予備苗載台38後端(第3予備苗載台38c後端)まで移動させた育苗箱1を苗補給装置70の載置面72a上に移動して載せる。
【0050】
そして、片方の手で育苗箱1の短辺側の一側2aを押さえて他方の手で把持部6を持って底板3を側壁枠2から引き抜くと、マット状苗Nが育苗箱1から下方に移動して回動板72c上に載った状態となる。
【0051】
すると、回動板72cは、その上に載ったマット状苗Nの重みで後部が下方に回動し、案内板72dを介して苗載台51の苗載置部51a上端に連通した状態となり、マット状苗Nは回動板72c上を滑落して苗載台51の苗載置部51aに補給される。
【0052】
また、他の苗載置部51aに補給する場合には、予備苗載台38後端(第3予備苗載台38c後端)まで移動させた育苗箱1を苗補給装置70の載置面72a上に移動して載せた後に、把持部73を持って第3予備苗載台38c後端部に設けたフック74から外して下方に押して苗補給装置70をレール部71a回りに後部が上動する方向に回動させて、載置面72a前部が予備苗載台38後端部から下方に離れた状態とすると共に案内板72dが苗載台51の苗載置部51a上端から上方に離れた状態にして、把持部73を持って補給する苗載置部51aの位置まで苗補給装置70をレール部71aに沿って左右移動させ、レール部71a回りに後部が下動する方向に回動させて、案内板72dが苗載台51の苗載置部51a上端に上から接当した状態とする。
【0053】
そして、上記と同様にして底板3を側壁枠2から引き抜くと、マット状苗Nが育苗箱1から下方に移動して回動板72c上に載った状態となり、回動板72cがその上に載ったマット状苗Nの重みで後部が下方に回動し、案内板72dを介して苗載台51の苗載置部51a上端に連通した状態となり、マット状苗Nは回動板72c上を滑落して苗載台51の苗載置部51aに補給される。
【0054】
また、畦又は道路に置いている育苗箱1を苗載台51に補給する場合は、乗用型田植機10の前部を畦又は道路に着けて停止し、畦又は道路に居る作業者が畦又は道路に置いている育苗箱1を平面状態にした予備苗載台38の前端部(第1予備苗載台38a)に載置する。
【0055】
そして、機体に登場している作業者は、予備苗載台38の前端部に載置された育苗箱1を予備苗載台38上(平面状態にした第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38c上)を後方にスライド移動させ、予備苗載台38後端(第3予備苗載台38c後端)まで移動させた育苗箱1を苗補給装置70の載置面72a上に移動して載せる。
【0056】
そして、上記と同様にして、苗補給装置70にて苗載台51の各苗載置部51aに補給する。
【0057】
以上要するに、苗載台51上端前部に設けた苗補給装置70は、側壁枠2と該側壁枠2に抜き差し自在の底板3から構成した育苗箱1を載せる載置面72aを上部に設け、該載置面72a内方に育苗箱1から下方に移動するマット状苗Nが通過する空間部を設け、該空間部の下方位置に機体左右方向の枢支軸71a(レール部71a)にて枢支され付勢装置にて水平又は略水平に付勢された水平状態とその上に載ったマット状苗Nの重みで後部が下方に位置する後傾状態に回動する回動板72cを設け、該後傾状態の回動板72c下端部を苗載台51の苗載置部51a上端に連通させる構成としたので、育苗箱1の底板3を側壁枠2から引き抜くと、マット状苗Nが育苗箱1から下方に移動して回動板72c上に載った状態となり、回動板72cは、その上に載ったマット状苗Nの重みで後部が下方に回動して苗載台51の苗載置部51a上端に連通した状態となり、マット状苗Nは回動板72c上を滑落して苗載台51の苗載置部51aに補給される。よって、容易に且つ効率よく苗補給作業が行える。
【0058】
<他の実施形態>
図15図17は、乗用型田植機の他の実施形態を示す。
【0059】
即ち、走行車体11前部の機体左右方向中央部に設けたフロントカバー32内に水冷式エンジン21を搭載して、フロントエンジン仕様の乗用型田植機とする。
【0060】
そして、フロントカバー32右側方には、蝶ボルト等で着脱自在のラジエータカバー80をフロントカバー32とは別カバーとして設け、ラジエータカバー80内に水冷式エンジン21のラジエータ81を設ける。
【0061】
従って、水冷式エンジン21のラジエータ81を機体左右中心から右方にオフセットして配置して水冷式エンジン21を機体左右方向中央部に搭載したので、機体の左右バランスが良くなり、水田走行性能が良好である。
【0062】
また、ラジエータカバー80は、フロントカバー32とは別カバーとして着脱自在としたので、気温が高い環境下で田植作業を行う場合に、該ラジエータカバー80を外してラジエータ81をむき出しとすることにより、ラジエータ81の冷却機能が上げてオーバーヒートを防ぐことができる。
【0063】
ラジエータ81を機体左右中心から右方にオフセットして配置することにより、機体前部右側方のフロアステップ35が狭くなり作業者が通ることができなくなるが、その狭くなった機体前部右側方のフロアステップ35に図17(a)および(b)に示すような空の育苗箱1の収納枠90や肥料袋91を載置する肥料載置枠92を装備して、狭くなった機体前部右側方のフロアステップ35上の空間を活用することができる。
【0064】
なお、ラジエータ81を含めた水冷式エンジン21全体としては、機体左右方向の右側にオフセットして配置した状態となるので、機体前部左側方のフロアステップ35は広くなり、作業者は該広くなった機体前部左側方のフロアステップ35を通って機体前部からの乗降が容易に且つ作業性良く行える。
【符号の説明】
【0065】
1 育苗箱
2 側壁枠
2a 側壁枠2の短辺側の一側
2b 側壁枠2の短辺側の他側
2c 側壁枠2の長辺側
3 底板
4 貫通孔
5 溝
11 走行車体
13 苗植付部
51 苗載台
51a 苗載置部
70 苗補給装置
71a 枢支軸(レール部)
72a 載置面
72c 回動板
N マット状苗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17