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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190906
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】塗装システム
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20221220BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B12/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099426
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敬二
(72)【発明者】
【氏名】秋元 峻
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 力
【テーマコード(参考)】
4F035
【Fターム(参考)】
4F035AA03
4F035BB03
4F035BB06
4F035BB32
4F035CA02
4F035CB13
4F035CB29
4F035CC02
4F035CD06
4F035CD13
4F035CD18
4F035CD19
(57)【要約】
【課題】被塗物を搬送しながら塗装するにあたり、塗装ブース長の短縮が可能な塗装システムを提供する。
【解決手段】ボディ100を所定の搬送経路に沿って搬送しながら、当該ボディ100に塗装を行う塗装システム10であって、搬送経路に跨って配置されたゲート機構30と、複数のスプレーノズル52が並設された複数のスプレー機構50と、ゲート機構30に配置され各スプレー機構50を個別に支持する複数のシャフト機構40と、を備え、各シャフト機構40は、それぞれが支持するスプレー機構50の外板被塗面に対する塗装距離を調節可能に構成され、搬送経路に沿ってゲート機構30を見たときに、各スプレー機構50を外板被塗面の全面又は一部を塗装することができるように配置可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物を所定の搬送経路に沿って搬送しながら、当該被塗物の外板被塗面に塗装を行う塗装システムであって、
前記搬送経路に跨って配置されたゲート機構と、
複数のスプレーノズルが並設された複数のスプレー機構と、
前記ゲート機構に配置され前記各スプレー機構を個別に支持する複数のシャフト機構と、を備え、
前記各シャフト機構は、それぞれが支持する前記スプレー機構の前記外板被塗面に対する塗装距離を調節可能に構成され、前記搬送経路に沿って前記ゲート機構を見たときに、前記各スプレー機構を前記外板被塗面の全面又は一部を塗装することができるように配置可能に構成されていることを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
前記ゲート機構は、前記搬送経路の両脇に配置された一対の柱部と、当該一対の柱部に亘って設けられた貫部とを備えており、
前記各シャフト機構は、前記柱部及び前記貫部のそれぞれにおいて整列されて配置されており、前記柱部における列と前記貫部における列とが一致させられている又は前記搬送経路の前後方向においてずらされていることを特徴とする請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記シャフト機構は、前記スプレー機構を、少なくとも前記搬送経路に沿った軸心周りに回動可能、前記搬送経路と直交する軸心周りに回動可能、又は前記外板被塗面に沿って揺動可能に支持することを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記各シャフト機構は、隣り合う前記スプレー機構を同位相で揺動可能に支持していることを特徴とする請求項3に記載の塗装システム。
【請求項5】
前記ゲート機構は、少なくとも、前記搬送方向に沿って移動可能、又は、前記外板被塗面に対する姿勢が変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の塗装システム。
【請求項6】
前記スプレー機構は、前記スプレーノズルがエアー霧化ノズルから構成されたエアー霧化スプレー機構であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の塗装システム。
【請求項7】
当該塗装システムの制御をする制御機構が備えられ、
前記制御機構は、当該被塗物の設計時の外板被塗面の形状データ、前記被塗物を搬送する前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データ、又は、前記被塗物を搬送しながら塗装直前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データに基づいて、前記各シャフト機構を個別に制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の塗装システム。
【請求項8】
当該塗装システムの制御をする制御機構が備えられ、
前記制御機構は、当該被塗物の設計時の外板被塗面の形状データ、前記被塗物を搬送する前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データ、又は、前記被塗物を搬送しながら塗装直前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データに基づいて、前記各スプレーノズル又は前記各スプレー機構からの塗料の噴射を制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の塗装システム。
【請求項9】
当該塗装システムの制御をする制御機構が備えられ、
前記制御機構は、前記被塗物の外板被塗面が有する特徴点と、前記搬送経路に規定された基準点に基づいて、前記搬送経路上における前記被塗物の位置と向きとを特定可能に構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物を所定の搬送経路に沿って搬送しながら、当該被塗物の外板被塗面に塗装を行う塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車、鉄道車両、航空機等の被塗物に塗装を行う塗装システムにおいては、当該被塗物を塗装室内の所定の搬送経路に沿って搬送しながら、当該搬送経路に沿って配置された複数のロボットアームにそれぞれ支持されたスプレー機構によって当該被塗物に塗装を行っている。
【0003】
当該スプレー機構としては回転霧化ノズル等が用いられ、当該ロボットアームとしては、直交二軸型、直交三軸型、又は多関節六軸型のロボットアームが用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-506305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような従来の塗装システムにおいては、ロボットアームに支持されたスプレー機構を被塗物の外板被塗面に沿って自在に可動させるためのスペースが必要であった。さらに、従来の塗装システムにおいては、搬送経路に沿って複数台のロボットアームを設置する構成であるため、塗装ブース長が長くなりがちであった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、被塗物を搬送しながら塗装するにあたり、塗装ブース長の短縮が可能な塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための本発明に係る塗装システムの特徴構成は、被塗物を所定の搬送経路に沿って搬送しながら、当該被塗物の外板被塗面に塗装を行う塗装システムであって、前記搬送経路に跨って配置されたゲート機構と、複数のスプレーノズルが並設された複数のスプレー機構と、前記ゲート機構に配置され前記各スプレー機構を個別に支持する複数のシャフト機構と、を備え、前記各シャフト機構は、それぞれが支持する前記スプレー機構の前記外板被塗面に対する塗装距離を調節可能に構成され、前記搬送経路に沿って前記ゲート機構を見たときに、前記各スプレー機構を前記外板被塗面の全面又は一部を塗装することができるように配置可能に構成されている点にある。
【0008】
均一な塗膜厚さを実現するためには、スプレー機構を外板被塗面から適切な塗装距離に位置させる必要がある。例えば、被塗物の外板被塗面が複雑な形状をしている場合には、ゲート機構を通過する外板被塗面の形状変化に合わせて、スプレー機構の位置を変更させる必要がある。
【0009】
上述の構成によると、各スプレー機構は、搬送経路に沿ってゲート機構を見たときに、塗着効率のよい適切な塗装距離から外板被塗面の全面又は一部を塗装することができるように配置させられるため、被塗物をゲート機構に一度通過させるだけで全面又は一部を高品質に塗装することができるため、塗装に要する搬送距離の短縮ができるようになった。
【0010】
本発明によれば、従来のようなロボットアームに支持された回転霧化ノズルによって塗装を行う構成の塗装システムに比べて、塗装に要する搬送距離を最大1/15に短縮することができるようになった。
【0011】
被塗物の搬送方向をX方向としたときに、スプレー機構は、X方向やX方向に直交する方向において、スプレーノズルの配置数が多いほどスプレー機構及びシャフト機構の数を少なくすることができる。一方、X方向やX方向に直交する方向において、スプレーノズルの配置数が多いほど外板被塗面が曲面や傾斜面を有する場合に、各スプレーノズルと外板被塗面との距離が不均一となるため、塗膜厚さや平滑度の観点から塗装品質が保ち難い。このため、スプレーノズルの配置数は、目標塗膜厚さ、被塗物の搬送速度、及び、スプレーノズルの塗装能力に基づいて、外板被塗面の形状に応じた塗装品質が確保できるように決定される。
【0012】
各スプレー機構は、同一の構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。例えば、各スプレー機構が異なる構成をとる場合には、それぞれのスプレー機構が有するスプレーノズルの配置数や、配置パターンを異ならせることが考えられる。
【0013】
例えば、被塗物が自動車のボディであるような場合に、外板被塗面において曲率が小さな領域(例えば、ボンネットやルーフ)に対応するスプレー機構においては、スプレーノズルの配置数を多く構成し、曲率が大きな領域(例えば、フェンダー)に対応するスプレー機構においては、スプレーノズルの配置数を少なく構成することが考えられる。
【0014】
すなわち、外板被塗面が曲面や傾斜面であるときは、スプレーノズルの配置数が多すぎると、すべてスプレーノズルが同時に外板被塗面からの最適な塗装距離を維持できないため、このようなスプレー機構においては搬送方向に沿った方向において、スプレーノズルの配置数を少なく設定することによって、塗装品質を確保することができる。
【0015】
本発明においては、前記ゲート機構は、前記搬送経路の両脇に配置された一対の柱部と、当該一対の柱部に亘って設けられた貫部とを備えており、前記各シャフト機構は、前記柱部及び前記貫部のそれぞれにおいて整列されて配置されており、前記柱部における列と前記貫部における列とが一致させられている又は前記搬送経路の前後方向においてずらされていると好適である。
【0016】
例えば、シャフト機構が、一列となるように配置されている構成であると、被塗物の搬送方向におけるゲート機構の寸法をコンパクトにすることができる。
【0017】
シャフト機構が、搬送経路の前後方向に複数列となるように配置されている構成であると、被塗物をゲート機構に一度通過させるだけで全面又は一部を複数回塗装することができる。
【0018】
柱部におけるシャフト機構の列と貫部におけるシャフト機構の列とが搬送経路の前後方向においてずらされていると、柱部におけるシャフト機構のスプレー機構と、貫部におけるシャフト機構のスプレー機構とが接触するような虞が回避できる。
【0019】
本発明においては、前記シャフト機構は、前記スプレー機構を、少なくとも前記搬送経路に沿った軸心周りに回動可能、前記搬送経路と直交する軸心周りに回動可能、又は前記外板被塗面に沿って揺動可能に支持すると好適である。
【0020】
均一な塗膜厚さを実現するためには、スプレー機構を外板被塗面に対して正対させる必要がある。例えば、被塗物の外板被塗面が複雑な形状をしている場合には、ゲート機構を通過する外板被塗面の形状変化に合わせて、スプレー機構の姿勢を変更させる必要がある。上述の構成によると、シャフト機構は、外板被塗面と正対していないスプレー機構においては、シャフト機構が当該スプレー機構を、搬送経路に沿った軸心周りに回動させたり、搬送経路と直交する軸心周りに回動させたりすることにより、塗装品質を確保することができる。
【0021】
また、シャフト機構によって、スプレー機構を外板被塗面に沿って揺動させることにより、スプレー機構に配置された隣り合うスプレーノズルどうしの間を塗装することができる。したがって、シャフト機構によるスプレー機構の揺動幅はスプレーノズルのピッチより大きければよい。なお、揺動により、当該揺動方向に塗装範囲を広げたり、隣り合うスプレー機構の塗装範囲の重なりを調節したり回避したりすることができる。
【0022】
本発明においては、前記各シャフト機構は、隣り合う前記スプレー機構を同位相で揺動可能に支持していると好適である。
【0023】
上述の構成によると、隣り合うスプレー機構どうしが接触する虞がないため、スプレー機構どうしの間隔を狭めて配置することができる。
【0024】
本発明においては、前記ゲート機構は、少なくとも、前記搬送方向に沿って移動可能、又は、前記外板被塗面に対する姿勢が変更可能に構成されていると好適である。
【0025】
被塗装物が、例えば自動車のボディであるような場合に、フロントやリアを塗装する必要がある。シャフト機構によるスプレー機構の回動や揺動のための可動範囲を大きく構成しなくても、ゲート機構の搬送経路に対する位置や、ゲート機構自体の姿勢を変更することによって、スプレー機構を適切な塗装距離や塗装姿勢とすることができる。
【0026】
本発明においては、前記スプレー機構は、前記スプレーノズルがエアー霧化ノズルから構成されたエアー霧化スプレー機構であると好適である。
【0027】
エアー霧化スプレー機構は、外板被塗面からの最適な塗装距離が30~100mmと近く、均一な塗膜厚さを実現するためには、エアー霧化スプレー機構を外板被塗面から適切な塗装距離に位置させる必要があるが、上述のように各シャフト機構は、各エアー霧化スプレー機構を外板被塗面に対して近づけたり遠ざけたりさせることができるため、各エアー霧化スプレー機構は、それぞれ塗着効率のよい適切な塗装距離からの塗装が可能となる。
【0028】
ところで、エアー霧化スプレー機構が有するエアー霧化ノズルは小粒径塗料ミスト数が少ないこと等から塗料が飛び散り難いため、例えば回転霧化ノズルのようなスプレーノズルよりも塗着効率がよい。しかし、エアー霧化ノズルは、所定時間当たりの塗料噴射量が少ないことから、塗装に長い時間を要する。
【0029】
このようなエアー霧化スプレー機構をロボットアームに支持させて塗装を行う場合には、被塗物の搬送速度を低下させたり、搬送方向に沿って複数台のロボットアームを設置させたりする必要があるため、塗装に要する時間や搬送距離が長くなってしまう。
【0030】
上述の構成のように、ゲート機構に複数のエアー霧化スプレー機構を、搬送経路に沿ってゲート機構を見たときに、被塗物の外板被塗面の全面又は一部に対応するように並設させることによって、塗物をゲート機構に一度通過させるだけで全面又は一部を高品質に塗装することができるため、塗装に要する搬送距離の短縮ができるようになった。
【0031】
また、エアー霧化スプレー機構が有するエアー霧化ノズルは塗着効率が90%程度と、よいこと、及び塗装ブース長を短縮できることから当該塗装に要する給排気量を、多関節ロボットに回転霧化ノズルを取り付けて行う塗装に要する給排気量の最大1/45にまで削減することができるようになった。したがって、被塗物に塗着しなかった塗料ミストを塗装室から排出するために、従来の塗装システムでは必要であった大掛かりな給排気設備や、排出した塗料ミストを回収するための回収設備を簡略化できる。
【0032】
本発明においては、当該塗装システムの制御をする制御機構が備えられ、前記制御機構は、当該被塗物の設計時の外板被塗面の形状データ、前記被塗物を搬送する前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データ、又は、前記被塗物を搬送しながら塗装直前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データに基づいて、前記各シャフト機構を個別に制御可能に構成されていると好適である。
【0033】
被塗物の外板被塗面の形状に応じて、隣り合うスプレー機構であっても最適な塗装距離や塗装姿勢が異なるため、制御機構は上述のように各スプレー機構を個別に外板被塗面からの最適な塗装距離に位置させたり、外板被塗面に対して最適な塗装姿勢とさせたりすることができ、塗装品質を保つことができる。
【0034】
なお、各シャフト機構の制御は、シャフト機構毎に行ってもよいし、隣り合う所定の数のシャフト機構群毎に行ってもよい。
【0035】
本発明においては、当該塗装システムの制御をする制御機構が備えられ、前記制御機構は、当該被塗物の設計時の外板被塗面の形状データ、前記被塗物を搬送する前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データ、又は、前記被塗物を搬送しながら塗装直前に測定された当該被塗物の外板被塗面の形状データに基づいて、前記各スプレーノズル又は前記各スプレー機構からの塗料の噴射を制御可能に構成されていると好適である。
【0036】
各スプレーノズルや各スプレー機構は噴射の制御が可能であり、噴射状態及び非噴射状態も切り替え可能であるため、塗膜厚さを均一にしたり、不均一にしたり、スプレーパターンを自由に変更することができる。
【0037】
例えば、スプレー機構を回動させたときや、外板被塗面の形状が平面でないようなときに、隣り合うスプレー機構の塗装範囲が重なることがあり、隣り合うスプレー機構からの塗料の噴射量が一定あるとすると、塗装範囲が重なる部分においては塗膜が厚くなってしまう。塗装範囲が重なる両スプレー機構においては、少なくともいずれかのスプレーノズル又はスプレー機構からの塗料の噴射量を減少ないし非噴射状態とすることによって、塗装範囲が重なる部分においても塗膜厚さが均一とさせることができるため、塗装品質を保つことができる。
【0038】
また、スプレーノズルやスプレー機構からの塗料の噴射量が一定であるとすると、被塗物の搬送速度が速いときは塗膜厚さが薄くなり、被塗物の搬送速度が遅いときは塗膜厚さが厚くなる。被塗物の搬送速度に応じて、スプレーノズルやスプレー機構からの塗料の噴射量を制御することによって、所望の塗膜厚さを得ることができる。なお、必要の塗膜厚さが得られるように、当該塗装範囲においては、スプレー機構においてスプレーノズルを複数列配置したり、スプレー機構を複数列備えたりしてもよい。
【0039】
また、外板被塗面が曲面や傾斜面であるときは、投影塗装面積に対して実塗装面積が大きく、つまり、見かけの単位時間あたりの塗装能力が相対的に低くなるため、このようなスプレー機構においては搬送方向に沿った方向において、スプレーノズルやスプレー機構からの塗料の噴射量を増加させることによって、塗装品質を確保することができる。
【0040】
被塗物の外板被塗面の端部においては、スプレーノズルやスプレー機構が塗装すべき外板被塗面が無いような場合もある。このような場合には、当該スプレーノズルやスプレー機構を非噴射状態とすることによって、塗料の無駄な消費を回避することができる。
【0041】
なお、スプレーノズルやスプレー機構からの塗料の噴射の制御は、スプレーノズル毎やスプレー機構毎に行ってもよいし、例えば、隣り合う所定の数のスプレーノズル群毎や、隣り合う所定のスプレー機構群毎に行ってもよい。また、例えばスプレー機構において複数列のスプレーノズルが配置されているときは、当該スプレーノズルの列毎であってもよいし、スプレー機構が複数列配置されているときは、当該スプレー機構の列毎であってもよい。
【0042】
本発明においては、当該塗装システムの制御をする制御機構が備えられ、前記制御機構は、前記被塗物の外板被塗面が有する特徴点と、前記搬送経路に規定された基準点に基づいて、前記搬送経路上における前記被塗物の位置と向きとを特定可能に構成されていると好適である。
【0043】
上述の構成によると、搬送経路における被塗物の実際の位置や向きを特定できるため、精度よくシャフト機構を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明に係る塗装システムの正面図である。
図2図1に示す塗装システムの側面図である。
図3図1に示す塗装システムの平面図である。
図4】ボディのフロントと塗装の説明図である。
図5】シャフト機構の伸縮、スプレー機構の回動の説明図である。
図6】シャフト機構の伸縮、スプレー機構の回動の説明図である。
図7】スプレー機構の揺動の説明図である。
図8】スプレー機構の説明図である。
図9】別実施形態に係るスプレー機構の説明図である。
図10】別実施形態に係るゲート機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係る塗装システムの実施形態を図面に基づいて説明する。図1図2図3及び図4には、被塗物としての自動車のボディ100を塗装する塗装システム10が示されている。なお、図1図2図3及び図4においてボディ100の搬送方向をX方向とし、ボディ100の搬送方向に水平面内において直交する方向をY方向とし、ボディ100の搬送方向に垂直面内において直交する方向をZ方向とする。
【0046】
塗装システム10は、塗装ブースの内部にボディ100を所定の搬送経路に沿って搬送するコンベア機構20と、コンベア機構20によって搬送されるボディ100に跨って配置されるゲート機構30と、ゲート機構30に配置された複数のシャフト機構40と、各シャフト機構40に支持された複数のスプレー機構50と、当該塗装システム10の制御を行う制御機構(図示せず)等を備えている。
【0047】
ゲート機構30は、コンベア機構20による搬送経路の両脇に配置された一対の柱部31と、当該柱部31に亘って設けられた貫部32とを備えており、図示しない移動機構によって、コンベア機構20による搬送経路に沿って移動可能となっている。なお、ゲート機構30は、柱部31の下端を中心に回動可能に構成されていたり、貫部32が柱部31に沿って上下に移動可能に構成されていたりしてもよい。
【0048】
各シャフト機構40は、それぞれが支持するスプレー機構50の、ボディ100の外板被塗面に対する塗装距離を調節可能に構成され、コンベア機構20による搬送経路に沿ってゲート機構30を見たときに、各スプレー機構50を外板被塗面の全面又は一部を塗装することができるように配置可能に構成されている。
【0049】
本実施形態においては、柱部31には、複数のシャフト機構40がZ方向に沿って一列となるように配置され、貫部32には、複数のシャフト機構40がY方向に沿って一列となるように配置され、柱部31におけるシャフト機構40の列と貫部32におけるシャフト機構40の列とがX方向に沿って前後にずらされている。これにより、柱部31におけるシャフト機構40のスプレー機構50と、貫部32におけるシャフト機構40のスプレー機構50とが接触するような虞が回避できる。なお、各スプレー機構50は、例えば400~500mm程度のピッチとなるように配置されている。
【0050】
シャフト機構40は、シリンダ41と当該シリンダ41に対して電磁的に進退制御されるロッド42とを有する複動型のアクチュエータから構成されている。ただし、シャフト機構40は、シリンダ41と当該シリンダ41に対して油圧や空気圧により進退制御されるロッド42とを有する複動型のアクチュエータから構成されていてもよい。
【0051】
各シャフト機構40は、シリンダ41に対してロッド42が進退することにより、ロッド42の先端に支持されたスプレー機構50をボディ100の外板被塗面に対して近づけたり遠ざけたりさせることができる。
【0052】
これにより、各スプレー機構50は、それぞれ塗着効率のよい適切な塗装距離、例えば外板被塗面から30~100mmの位置からの塗装が可能となる。
【0053】
さらに、シャフト機構40はロッド42の先端に支持機構43を備えており、スプレー機構50は支持機構43を介してシャフト機構40に支持されている。
【0054】
支持機構43は、電気制御されるサーボモータ等を有し、スプレー機構50を、X方向に沿った軸心周りに回動可能(図5参照)、Y方向又はZ方向に沿った軸心周りに回動可能(図6参照)、及び、ボディ100の外板被塗面に沿ってY方向ないしZ方向に揺動可能(図7参照)に支持するように構成されている。支持機構43は、隣り合うスプレー機構50を同位相で揺動可能に支持している。なお、回動可能角度は、支持機構43の進退方向を中心として±90度以上となっている。また、揺動可能距離は50mmとなっている。ただし回動可能角度や揺動可能距離はこの限りではない。さらに、支持機構43は、隣り合うスプレー機構50の位相をずらして揺動可能に支持していてもよい。
【0055】
これにより、シャフト機構40によって、スプレー機構50をボディ100の外板被塗面に対して適正な塗装姿勢とさせることができる。例えば、X方向から見て、ボディ100の外板被塗面と正対していないスプレー機構50においては、スプレー機構50を回動させることによって、当該外板被塗面に対して正対させることができる。
【0056】
さらには、シャフト機構40は、スプレー機構50を、X方向に沿った軸心周りに回動させたり、Y方向又はZ方向に沿った軸心周りに支持する回動させたりすることにより、搬送されるボディ100の外板被塗面における同じ箇所に塗装をしたり、外板被塗面の形状が平面でないような場合であっても塗装をしたりできるため、塗装品質を確保することができる。
【0057】
また、シャフト機構40によって、スプレー機構50を外板被塗面に沿って揺動させることにより、当該揺動方向に塗装範囲を広げることができたり、隣り合うスプレー機構50の塗装範囲の重なりを調節したり回避したりすることができる。
【0058】
本実施形態においては、各スプレー機構50はエアー霧化スプレー機構から構成されており、当該エアー霧化スプレー機構は、ノズルヘッド51と、当該ノズルヘッド51に直線的に並設された複数のエアー霧化ノズル52と、各エアー霧化ノズル52に塗料を供給する塗料供給機構と、各エアー霧化ノズル52にエアーを供給するエアー供給機構と、各エアー霧化ノズル52の塗料の噴射状態と非噴射状態とを切り替える前記切替機構等とを備えている。
【0059】
図8に示すように、ノズルヘッド51は、10個のエアー霧化ノズル52が、隣り合うものどうしが30mmのピッチで、貫部32に設けられるシャフト機構40が支持するスプレー機構50においてはY方向に沿って、柱部31に設けられるシャフト機構40が支持するスプレー機構50においてはZ方向に沿って直線状に並設されている。当該スプレー機構50からの塗料の噴射量は、100cc/minに設定されている。エアー霧化ノズル52は小粒径塗料ミスト数が少ないこと等から塗料が飛び散り難く、結果として塗着効率が良い。
【0060】
なお、ノズルヘッド51における各エアー霧化ノズル52の配置は上述の構成に限らない。ノズルヘッド51において各エアー霧化ノズル52はY方向又はZ方向のみならず、全体として矩形状や円形状のスプレーパターンを構成するようにX方向にも配置されていてもよく、その際、エアー霧化ノズル52の配置は、図9に示すように、ドットマトリックス状であってもよいし、最密状であってもよい。これらは、ボディ100の外板被塗面の形状や塗装仕様等に応じて適宜変更可能である。
【0061】
前記塗料供給機構は、塗料を貯留する貯留タンクや、当該貯留タンクの塗料を供給する供給ポンプや、当該貯留タンクからエアー霧化ノズル52まで塗料を供給する供給ホース等を備えて構成されている。供給ポンプによって、貯留タンク内の塗料が供給ホースを介してエアー霧化ノズル52に供給される。
【0062】
前記エアー供給機構は、コンプレッサー及びエアホース等を備えて構成されている。当該コンプレッサーによって圧縮された空気がエアホースを介してエアー霧化ノズル52に供給されることによって、前記塗料供給機構によってエアー霧化ノズル52に供給される塗料が、霧化されて噴射される。
【0063】
エアー霧化ノズル52に供給される空気量としては、20~30L/分であることが望ましい。従来の塗装機では、霧化した塗料粒径に一定の分布幅があり、特に小粒径の塗料粒子は被塗物に塗着し難く、周辺気流に乗ってオーバースプレーとなるため、塗着率の向上には限度がある。これに対し、空気量が比較的小さいため吐出塗料の粒径分布幅が小さくなり、結果として小粒径の塗料粒子が少なくなることでオーバースプレーがほとんどなくなる。
【0064】
圧縮空気については、エアー霧化ノズル52からスパイラル状に吹出すように構成されることが望ましい。これにより空気の勢いが弱められるため、塗料の塗着効率がさらに向上する。
【0065】
前記切替機構は、流量調節バルブから構成され、各スプレー機構50からの塗料の噴射量を調節するためのものである。また、各エアー霧化ノズル52は、個別に噴射状態及び非噴射状態が切り替え可能となっている。これにより、塗膜厚さを均一にしたり、不均一にしたり、スプレーパターンを自由に変更することができる。なお、各エアー霧化ノズル52からの塗料の噴射量を調節可能に構成されていてもよい。
【0066】
前記制御機構は、制御盤等から構成され、いわゆる三次元測定により、ボディ100を搬送する前に測定された当該ボディ100の外板被塗面の形状データに基づいて、コンベア機構20によるボディ100の搬送及び搬送速度の制御や、ゲート機構30の移動の制御や、シャフト機構40のロッド42の進退の制御や、支持機構43の回動や揺動の制御や、スプレー機構50の前記塗料供給機構、前記エアー供給機構及び前記切替機構の制御を行うように構成されている。
【0067】
なお、三次元測定においては、ボディ100の外板被塗面が有する特徴点と、搬送経路に規定された基準点を測定可能であり、前記制御機構は当該特徴点と当該基準点に基づいて、搬送経路上におけるボディ100の位置と向きとを特定可能に構成されている。これにより、前記搬送経路におけるボディ100の実際の位置や向きを特定できるため、精度よくシャフト機構40を制御することができる。ただし、ボディ100の外板被塗面の形状データの測定は上記の測定方法によらず、他の測定方法によって行われてもよい。
【0068】
例えば、図5に示すように、スプレー機構50を回動させたときや、外板被塗面の形状が平面でないようなときに、隣り合うスプレー機構50の塗装範囲が重なることがある。隣り合うスプレー機構50による塗装範囲が重なる部分においては塗膜が厚くなるため、塗装範囲が重なる両スプレー機構50においては、少なくともいずれかのスプレー機構50が有するエアー霧化ノズル52のうち、当該塗装範囲が重なる部分に塗料を噴射するエアー霧化ノズル52を例えば非噴射状態としたり、当該エアー霧化ノズル52を有するスプレー機構50からの塗料の噴射量や、当該スプレー機構50の揺動幅を制御するなどして、全体として塗膜厚さが均一となるように制御することにより、塗装品質を保つことができる。
【0069】
また、ボディ100の外板被塗面の端部においては、スプレー機構50のエアー霧化ノズル52のうち塗装すべき外板被塗面が無いような場合もある。このような場合は、当該エアー霧化ノズル52を非噴射状態とすることによって、塗料の無駄な消費を回避することができる。
【0070】
また、被塗物の搬送方向から見て、外板被塗面が曲面や傾斜面であるときは、投影塗装面積に対して実塗装面積が大きく、つまり、見かけの単位時間あたりの塗装能力が相対的に低くなるため、このようなスプレー機構50からの塗料の噴射量を増加させることによって、所望の塗膜厚さを得ることができる。
【0071】
なお、前記制御機構は、ボディ100を搬送しながら塗装直前に測定された外板被塗面の形状データに基づいて上述の制御を行うように構成されていてもよい。前記制御機構は、ボディ100の外板被塗面の設計時の形状データに基づいて上述の制御を行うように構成されていてもよい。
【0072】
また、前記制御機構は、各シャフト機構40毎や、各エアー霧化ノズル52毎に各制御を行ってもよいし、隣り合う所定の数のシャフト機構40群毎や、エアー霧化ノズル52群毎に各制御を行ってもよい。さらに、前記制御機構は、例えばスプレー機構50において複数列のエアー霧化ノズル52が配置されているときは、当該エアー霧化ノズル52の列毎であってもよいし、スプレー機構50が複数列配置されているときは、当該スプレー機構50の列毎に各制御を行ってもよい。
【0073】
上述した実施形態においては、柱部31には、複数のシャフト機構40がZ方向に沿って一列となるように配置され、貫部32には、複数のシャフト機構40がY方向に沿って一列となるように配置され、柱部31におけるシャフト機構40の列と貫部32におけるシャフト機構40の列とX方向にずれるように配置されていたが、この限りではない。例えば、柱部31には、複数のシャフト機構40がZ方向に沿って、X方向に前後する二列となるように配置され、貫部32には、複数のシャフト機構40がY方向に沿って、X方向に前後する二列となるように配置され、柱部31におけるシャフト機構40の列と貫部32におけるシャフト機構40の列とX方向にずれるように配置されていてもよい。なお、柱部31におけるシャフト機構40の列と貫部32におけるシャフト機構40の列とが一致するように配置されていてもよい。
【0074】
図10に示すように、シャフト機構40が、X方向に前後する複数列となるように配置されている構成であると、同じ外板被塗面に対して複数回の塗装が可能となる。
【0075】
上述した実施形態においては、各スプレー機構50は、同一の構成である場合について説明したが、この限りではない。各スプレー機構50は、異なる構成であってもよい。例えば、各スプレー機構50は、エアー霧化ノズル52の配置数や、配置パターンが異なっていてもよい。
【0076】
例えば、ボディ100のうち曲率が小さな外板被塗面であるボンネットやルーフ等に塗装を行うスプレー機構50においては、エアー霧化ノズル52の配置数を多く構成し、ボディ100のうち曲率が大きな外板被塗面であるフェンダー等に塗装を行うスプレー機構50においては、エアー霧化ノズル52の配置数を少なく構成することが考えられる。
【0077】
ボディ100の搬送方向から見て、外板被塗面が曲面や傾斜面であるときは、投影塗装面積に対して実塗装面積が大きく、つまり、見かけの単位時間あたりの塗装能力が相対的に低くなるため、このようなスプレー機構50においては搬送方向に沿った方向において、スプレーノズルの配置数を多く設定しておく。または、ゲート機構30において搬送方向に沿って複数列のスプレー機構50を配置する。
【0078】
上述した実施形態においては、スプレー機構50は、スプレーノズルとしてエアー霧化ノズル52を備えている場合について説明したが、これに限らない。スプレーノズルは、他の構成によるものであってもよい。その際、塗着効率の高いものの塗料の噴霧量が少ないスプレーノズルが好ましい。
【0079】
なお、上述のように図面を参照しつつ本発明を説明したが、本発明は当該図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る塗装システムは、例えば、自動車、鉄道車両、航空機等のボディや一般産業における塗装を行う技術分野において特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
10 :塗装システム
20 :コンベア機構
30 :ゲート機構
31 :柱部
32 :貫部
40 :シャフト機構
41 :シリンダ
42 :ロッド
43 :支持機構
50 :スプレー機構
51 :ノズルヘッド
52 :エアー霧化ノズル(スプレーノズル)
100 :ボディ(被塗物)
図1
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図10