IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝デバイス&ストレージ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-磁気ディスク装置 図1
  • 特開-磁気ディスク装置 図2
  • 特開-磁気ディスク装置 図3
  • 特開-磁気ディスク装置 図4
  • 特開-磁気ディスク装置 図5
  • 特開-磁気ディスク装置 図6
  • 特開-磁気ディスク装置 図7
  • 特開-磁気ディスク装置 図8
  • 特開-磁気ディスク装置 図9
  • 特開-磁気ディスク装置 図10
  • 特開-磁気ディスク装置 図11
  • 特開-磁気ディスク装置 図12
  • 特開-磁気ディスク装置 図13
  • 特開-磁気ディスク装置 図14
  • 特開-磁気ディスク装置 図15
  • 特開-磁気ディスク装置 図16
  • 特開-磁気ディスク装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190907
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20221220BHJP
   G11B 21/21 20060101ALI20221220BHJP
   G11B 5/39 20060101ALI20221220BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B21/21 E
G11B5/31 D
G11B5/39
G11B5/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099427
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 岳
【テーマコード(参考)】
5D034
5D091
【Fターム(参考)】
5D034BA02
5D034BB12
5D091AA10
5D091CC30
(57)【要約】
【課題】主磁極部の磁気ディスク面への接触を回避することができる磁気ディスク装置を提供すること。
【解決手段】磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ディスクにデータをライトするライト素子、及び磁気ディスクに対する浮上量を調整するヒータ素子を含む磁気ヘッドと、ヒータ素子に供給する電力を制御する制御部と、磁気ディスクにライトしたデータの記録品質を測定した測定結果に基づいて設定されるヒータ値を設定する設定部と、を備える。また、制御部は、設定部に設定されるヒータ値に基づいて、ヒータ素子に供給する電力を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクと、
前記磁気ディスクにデータをライトするライト素子、及び前記磁気ディスクに対する浮上量を調整するヒータ素子を含む磁気ヘッドと、
前記ヒータ素子に供給する電力を制御する制御部と、
前記磁気ディスクにライトしたデータの記録品質を測定した測定結果に基づいて設定されるヒータ値を設定する設定部と、
を備え、
前記制御部は、前記設定部に設定される前記ヒータ値に基づいて、前記ヒータ素子に供給する電力を制御する、
磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記磁気ヘッドは、前記磁気ディスクにライトされたデータをリードするリード素子を含み、
前記ヒータ値は、前記リード素子がリードしたデータの信号振幅のオフトラックプロファイルの測定結果から得られる半値幅に基づいて前記設定部に設定される、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記ヒータ値は、前記半値幅が広いほど、前記ヒータ素子に供給する電力が小さくなるように前記設定部に設定される、
請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記磁気ディスクと、前記磁気ヘッドとの組を複数含み、
複数の前記磁気ヘッドのうち、前記半値幅が最も広い前記磁気ヘッドに供給する電力の電力値を第1電力値とし、前記半値幅が最も狭い前記磁気ヘッドに供給する電力の電力値を第2電力値とした場合、
前記ヒータ値は、前記第1電力値が前記第2電力値より小さくなるように、前記設定部に設定される、
請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
磁気ディスクと、
前記磁気ディスクにデータをライトするライト素子、前記磁気ディスクに対する浮上量を調整するヒータ素子、及び前記ライト素子によりデータのライトをアシストするアシスト素子を含む磁気ヘッドと、
前記ヒータ素子に供給する電力を制御する制御部と、
前記アシスト素子の抵抗値に基づいて設定されるヒータ値を設定する設定部と、
を備え、
前記制御部は、前記設定部に設定される前記ヒータ値に基づいて、前記ヒータ素子に供給する電力を制御する、
磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記ヒータ値は、前記アシスト素子の抵抗値が高いほど、前記ヒータ素子に供給する電力が小さくなるように前記設定部に設定される、
請求項5に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記磁気ディスクと、前記磁気ヘッドとの組を複数含み、
複数の前記磁気ヘッドのうち、前記抵抗値が最も高い前記磁気ヘッドに供給する電力の電力値を第3電力値とし、前記抵抗値が最も低い前記磁気ヘッドに供給する電力の電力値を第4電力値とした場合、
前記ヒータ値は、前記第3電力値が前記第4電力値より小さくなるように、前記設定部に設定される、
請求項6に記載の磁気ディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ヘッドを製造する後工程において、磁気ヘッドに含まれる素子を研磨およびイオンビームエッチングにより削り込み、素子高さを調整する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-14792号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0257145号明細書
【特許文献3】米国特許第7583462号明細書
【特許文献4】米国特許第10672419号明細書
【特許文献5】米国特許第8339725号明細書
【特許文献6】特開2009-259376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既述のように素子高さを削り込むことにより、主磁極部の凹凸が磁極の幅に応じて変化する。具体的には、磁極の幅が広くなるほど突出し高さが大きくなる。このため、とりわけ磁極幅の大きい磁気ヘッドの場合、磁気ディスク表面の突起部との接触が生じる場合がある。このように、主磁極部と磁気ディスク表面との接触が生じると、主磁極部における摩耗、及びコンタミネーションが生じやすくなる。
【0005】
実施形態は、主磁極部の磁気ディスク面への接触を回避することができる磁気ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係る、磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、前記磁気ディスクにデータをライトするライト素子、及び前記磁気ディスクに対する浮上量を調整するヒータ素子を含む磁気ヘッドと、前記ヒータ素子に供給する電力を制御する制御部と、前記磁気ディスクにライトしたデータの記録品質を測定した測定結果に基づいて設定されるヒータ値を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記ヒータ値に基づいて、前記ヒータ素子に供給する電力を制御する。
【0007】
一実施形態に係る、磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、前記磁気ディスクにデータをライトするライト素子、前記磁気ディスクに対する浮上量を調整するヒータ素子、及び前記ライト素子によりデータのライトをアシストするアシスト素子を含む磁気ヘッドと、前記ヒータ素子に供給する電力を制御する制御部と、前記アシスト素子の抵抗値に基づいて設定されるヒータ値を記憶する記憶部と、を備え、前記制御部は、前記記憶部に記憶される前記ヒータ値に基づいて、前記ヒータ素子に供給する電力を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る磁気ディスク装置の構成の一例を概略的に示すブロック図。
図2】同実施形態に係る浮上状態の磁気ヘッドおよび磁気ディスクの一例を示す側面図。
図3】同実施形態に係る磁気ヘッドのヘッド部および磁気ディスクの一部を拡大して概略的に示す断面図。
図4】同実施形態に係る浮上状態における磁気ヘッドの記録ヘッド先端部および磁気ディスクの一部を拡大して概略的に示す断面図。
図5】同実施形態に係る浮上状態における磁気ヘッドの記録ヘッド先端部および磁気ディスクの一部を拡大して概略的に示す断面図。
図6】同実施形態に係る磁極幅に対する突出し高さの一例を示す図。
図7】同実施形態に係る記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む後工程前の状態の一例を示す図。
図8】同実施形態に係る記録ヘッド主磁極製膜面を削込み量が小さい状態の一例を示す図。
図9】同実施形態に係る記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む量が大きい状態の一例を示す図。
図10】同実施形態に係る半径方向(オフトラック方向)に対する再生信号振幅の大きさの一例を示す図。
図11】同実施形態に係る主磁極幅に対するヒータパワーの大きさの一例を示す図。
図12】同実施形態に係るライト時間に対するBER悪化量の関係の一例を示す図。
図13】第2実施形態に係る記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む後工程前の状態の一例を示す図。
図14】同実施形態に係る記録ヘッド主磁極製膜面を削込み量が小さい状態の一例を示す図。
図15】同実施形態に係る記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む量が大きい状態の一例を示す図。
図16】同実施形態に係るアシスト素子抵抗値に対する突出し高さの一例を示す図。
図17】同実施形態に係るアシスト素子抵抗値に対するヒータパワーの大きさの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置であるハードディスクドライブ(以下、「HDD」という。)の構成の一例を概略的に示すブロック図である。図2は、浮上状態の磁気ヘッドおよび磁気ディスクの一例を示す側面図である。図3は、磁気ヘッドのヘッド部および磁気ディスクの一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【0011】
図1に示すように、HDD10は、矩形状の筐体11と、筐体11内に配設された記録媒体としての磁気ディスク12と、磁気ディスク12を支持および回転するスピンドルモータ14と、磁気ディスク12に対してデータの書込み、読出しを行う複数の磁気ヘッド16と、を備えている。また、HDD10は、磁気ヘッド16を磁気ディスク12上の任意のトラック上に移動するとともに位置決めするヘッドアクチュエータ18を備えている。ヘッドアクチュエータ18は、磁気ヘッド16を移動可能に支持するサスペンションアッセンブリ20と、このサスペンションアッセンブリ20を回動させるボイスコイルモータ(VCM)22とを含んでいる。
【0012】
HDD10は、ヘッドアンプIC30、メインコントローラ40およびドライバIC48を備えている。ヘッドアンプIC30は、例えば、サスペンションアッセンブリ20に設けられ、磁気ヘッド16に電気的に接続されている。メインコントローラ40およびドライバIC48は、例えば、筐体11の背面側に設けられた図示しない制御回路基板に構成されている。メインコントローラ40は、R/Wチャネル(RDC)42と、メモリ43と、ハードディスクコントローラ(HDC)44と、マイクロプロセッサ(MPU)46と、を備えている。メインコントローラ40は、ヘッドアンプIC30に電気的に接続されると共に、ドライバIC48を介してVCM22及びスピンドルモータ14に電気的に接続されている。R/Wチャネル(RDC)42は、磁気ヘッド16に記録信号を出力し、又は、磁気ヘッド16からリードする再生信号を復号する。メモリ43は、ヒータ設定部431を含む。ヒータ設定部431は、後述するヒータ19a,19bに供給する電圧値であるヒータ値が設定される。どのようにヒータ値が設定されるかについての詳細は、後述する。ハードディスクコントローラ(HDC)44は、ホストコンピュータとのインタフェースを構成する。HDD10は、ハードディスクコントローラ(HDC)44を介して、図示しないホストコンピュータに接続可能である。
【0013】
また、ヘッドアンプIC30は、記録電流供給回路81と、アシスト素子電流供給回路82と、ヒータ電圧供給回路83と、リード電圧供給回路84と、を備えている。記録電流回路81は、記録ヘッド(ライト素子を含む)54に電流を供給する。アシスト素子電流供給回路82は、アシスト素子65に電流を供給する。ヒータ電圧供給回路83は、ヒータ19a,ヒータ19b(ヒータ素子)に電圧を印加する。リード電圧供給回路84は、再生ヘッド(リード素子を含む)54に電圧を印加する。記録電流供給回路81と、アシスト素子電流供給回路82と、ヒータ電圧供給回路83と、リード電圧供給回路84とは、それぞれRDC42と電気的に接続される。また、記録電流供給回路81、アシスト素子電流供給回路82、ヒータ電圧供給回路83、リード電圧供給回路84は、それぞれ磁気ヘッド16の記録ヘッド58、アシスト素子65、ヒータ19a,ヒータ19b、再生ヘッド54と電気的に接続される。
【0014】
図1および図2に示すように、磁気ディスク12は、ディスク面に対して垂直方向に異方性をもつ記録層を有する垂直磁気記録媒体である。具体的には、磁気ディスク12は、例えば、直径約2.5インチ(6.35cm)の円板状に形成され非磁性体からなる基板101を有している。基板101の各表面には、下地層としての軟磁性層102と、その上層部に、磁気記録層103と保護膜104とが順次積層されている。磁気ディスク12は、スピンドルモータ14のハブに互いに同軸的に嵌合されている。磁気ディスク12は、スピンドルモータ14により所定の速度で矢印B方向に回転される。
【0015】
サスペンションアッセンブリ20は、筐体11に回動自在に固定された軸受部24と、軸受部24から延出した複数のサスペンション26と、を有している。図2に示すように、磁気ヘッド16は、各サスペンション26の延出端に支持されている。磁気ヘッド16は、サスペンションアッセンブリ20に設けられた配線部材28を介して、ヘッドアンプIC30に電気的に接続されている。
【0016】
次に、磁気ヘッド16の構成について詳細に説明する。
図2および図3に示すように、磁気ヘッド16は浮上型のヘッドとして構成され、ほぼ直方体状に形成されたスライダ15と、スライダ15の流出端(トレーリング)側の端部に形成されたヘッド部17とを有している。スライダ15は、例えば、アルミナとチタンカーバイドの焼結体(アルチック)で形成され、ヘッド部17は複数層の薄膜により成されている。
【0017】
スライダ15は、磁気ディスク12の表面に対向する矩形状のABS(空気支持面)13を有している。スライダ15は、磁気ディスク12の回転によってディスク表面とABS13との間に生じる空気流Cにより、磁気ディスク12の表面から所定量浮上した状態に維持される。空気流Cの方向は、磁気ディスク12の回転方向Bと一致している。スライダ15は、空気流Cの流入側に位置するリーディング端15aおよび空気流Cの流出側に位置するトレーリング端15bを有している。
【0018】
図3に示すように、ヘッド部17は、スライダ15のトレーリング端15bに薄膜プロセスで再生ヘッド54および記録ヘッド58を形成した、分離型の磁気ヘッドである。ヘッド部17の記録再生浮上量を制御するため、記録ヘッド58の奥行き側に記録ヒータ19aが配置され、再生ヘッド54の奥行き側に再生ヒータ19bが配置されている。
【0019】
再生ヘッド54は、磁気抵抗効果を示す磁性膜による再生素子(リード素子)55と、この再生素子55のトレーリング側およびリーディング側に磁性膜55を挟むようにシールド膜を配置した上部シールド56および下部シールド57と、で構成されている。これら再生素子55、上部シールド56、下部シールド57の下端は、スライダ15のABS13に露出している。再生ヘッド54は、図示しない電極、配線、および配線部材28を介して、ヘッドアンプIC30に接続され、読み取ったデータをヘッドアンプIC30に出力する。
【0020】
記録ヘッド58は、再生ヘッド54に対して、スライダ15のトレーリング端15b側に設けられている。記録ヘッド58は、磁気ディスク12の表面に対して垂直方向の記録磁界を発生させる高透磁率材料からなる主磁極(ライト素子)60、トレーリングシールド(ライトシールド、第1シールド)となるリターン磁極62、および、リーディングシールド(第2シールド)となるリーディングコア64を有している。主磁極60とリターン磁極62とは磁路を形成する第1磁気コアを構成し、主磁極60とリーディングコア64とは磁路を形成する第2磁気コアを構成している。記録ヘッド58は、第1磁気コアに巻き付けられた第1コイル(記録コイル)70と、第2磁気コアに巻き付けられた第2コイル(記録コイル)72とを有している。
【0021】
図3に示すように、主磁極60は、磁気ディスク12の表面に対してほぼ垂直に延びている。主磁極60の磁気ディスク12側の先端部60aは、ディスク面に向かって先細に絞り込まれ、例えば、断面が台形状に形成されている。主磁極60の先端面は、スライダ15のABS13に露出している。先端部60aのトレーリング側端面60bの幅は、磁気ディスク12におけるトラックの幅にほぼ対応している。
【0022】
軟磁性体で形成されたリターン磁極62は、主磁極60のトレーリング側に配置され、主磁極60の直下の磁気ディスク12の軟磁性層102を介して効率的に磁路を閉じるために設けられている。リターン磁極62は、ほぼL字形状に形成され、主磁極60に接続される第1接続部50を有している。第1接続部50は非導電体52を介して主磁極60の上部、すなわち、主磁極60のABS13から離れた部分、に接続されている。
【0023】
リターン磁極62の先端部62aは、細長い矩形状に形成され、その先端面は、スライダ15のABS13に露出している。先端部62aのリーディング側端面62bは、磁気ディスク12のトラックの幅方向に沿って延び、また、ABS13に対してほぼ垂直に延びている。このリーディング側端面62bは、主磁極60のトレーリング側端面60bとライトギャップWGを置いてほぼ平行に対向している。
【0024】
第1コイル70は、主磁極60およびリターン磁極62を含む磁気回路(第1磁気コア)に巻き付くように配置されている。第1コイル70は、例えば、第1接続部50の回りに巻付けられている。磁気ディスク12に信号を書き込む際、第1コイル70に記録電流を流すことにより、第1コイル70は、主磁極60を励起して主磁極60に磁束を流す。
【0025】
アシスト素子65は、ライトギャップWG内において、主磁極60の先端部60aとリターン磁極62との間に設けられ、その一部は、ABS13に露出している。アシスト素子65は、例えば高周波アシスト素子や熱アシスト素子から構成される。なお、アシスト素子65の下端面は、ABS13と面一に位置している場合に限らず、ABS13から高さ方向上方に離間していてもよい。
【0026】
図3に示すように、主磁極60とリターン磁極62とに接続端子91、92がそれぞれ接続され、これらの接続端子91、92は、配線を介してヘッドアンプIC30に接続される。これにより、ヘッドアンプIC30から主磁極60、アシスト素子65、リターン磁極62を通して電流を直列に通電できるように電流回路が構成されている。また、記録ヒータ19aと再生ヒータ19bとに接続端子97,98がそれぞれ接続され、これらの接続端子97,98は、配線を介してヘッドアンプIC30に接続される。
【0027】
図3に示すように、軟磁性体で形成されたリーディングコア64は、主磁極60のリーディング側に主磁極60と対向して設けられている。リーディングコア64は、ほぼL字形状に形成され、磁気ディスク12側の先端部64aは細長い矩形状に形成されている。この先端部64aの先端面(下端面)は、スライダ15のABS13に露出している。先端部64aのトレーリング側端面64bは、磁気ディスク12のトラックの幅方向に沿って延びている。このトレーリング側端面64bは、主磁極60のリーディング側端面とギャップを置いて対向している。このギャップは、非磁性体としての保護絶縁膜76によって覆われている。
【0028】
リーディングコア64は、磁気ディスク12から離間した位置で主磁極60との間のバックギャップに接合された第2接続部68を有している。この第2接続部68は、例えば、軟磁性体で形成され、主磁極60およびリーディングコア64とともに磁気回路を形成している。記録ヘッド58の第2コイル72は、主磁極60およびリーディングコア64を含む磁気回路(第2磁気コア)に巻きつくように配置され、この磁気回路に磁界を印加する。第2コイル72は、例えば、第2接続部68の回りに巻付けられている。なお、第2接続部68の一部に非導電体、もしくは、非磁性体を挿入してもよい。
【0029】
第2コイル72は、第1コイル70と反対向きに巻かれている。第1コイル70および第2コイル72は、端子95、96にそれぞれ接続され、これらの端子95、96は配線を介してヘッドアンプIC30に接続される。第2コイル72は、第1コイル70と直列に接続されてもよい。また、第1コイル70および第2コイル72は、別々に電流の供給を制御するようにしてもよい。第1コイル70および第2コイル72に供給する電流は、ヘッドアンプIC30およびメインコントローラ40によって制御される。
【0030】
次に、磁気ヘッド16の浮上状態の一例について説明する。
図4及び図5は、浮上状態における磁気ヘッド16の記録ヘッド先端部および磁気ディスク12の一部を拡大して概略的に示す断面図である。図6は、主磁極幅に対する突出し高さの一例を示す図である。図7図8図9は、磁気ヘッド16の記録ヘッド主磁極製膜面におけるヘッド後工程前後の形状を概略的に示す断面図である。より詳細には、図7は、記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む後工程前の状態の一例を示す図であり、図8は、記録ヘッド主磁極製膜面を削込み量が小さい状態の一例を示す図であり、図9は、記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む量が大きい状態の一例を示す図である。
【0031】
図4に示すように、磁気ディスク12上を浮上しているときの磁気ヘッド16の記録ヘッド近傍を拡大すると、主磁極部(主磁極60の先端部分)は他の領域に対して、僅かに突き出ている。この突き出し高さW1は、図7図8図9に示すように、ヘッド後工程で素子高さを削り込む際、クランプ(CMP)等の研磨工程後にイオンビームエッチング(IBE)で素子高さが浮上面200となるよう調整される。主磁極部は、とりわけ高い透磁率が要求されるためイオンミリングレートが低いFe,Coといった磁性金属材料の含有率が高い。このため、図8図9に示すように、相対的に浮上面200に対し突き出る形となる。加えて、エッチングの際は、図7図8図9に示すように、クロストラック幅方向のサイドからのミリング影響もあるため、磁極の幅が狭い図8に示すヘッドの突出し高さW3に対し、図9に示す磁極の幅が広いヘッドの突出し高さW4(>W3)の方が突出し高さは大きくなる。その結果、図6に示すように、磁極幅、つまり、磁極の物理幅が広いほど、突出し高さWが大きくなるような関係になる。
【0032】
一方で、図4図5のように、摩耗やコンタミネーション、媒体突起といったヘッドディスクインタフェース(HDI)要因(以下、「HDI障害」ともいう。)による記録ヘッド16の記録能力低下を防止するためには、主磁極60の先端からディスク面までの保証Spacingを維持する必要がある。このため、図4に示すように、主磁極60の幅が狭く、突き出し高さW1が小さいヘッドに対し、図5に示すように、主磁極60の幅が広く、突き出し高さW2(>W1)が大きいヘッドでは、スライダ15全体の浮上量バックオフ(BO)を、突き出し高さ×Cos(θ)の差分だけ引き上げる必要が生じる。ここで、θはスライダ15浮上時のピッチ角であり、一般的には、100~150uradである。
【0033】
本実施形態では、主磁極60の幅は、次のように測定する。
図10は、オフトラック方向位置(半径方向位置)に対する再生信号振幅の大きさの一例を示す図である。図10に示すように、1トラックライトされたデータの再生信号振幅をRDC42にてオフトラック位置を変えながら測定する。これにより、MPU46は、同振幅のオフトラックプロファイルの半値幅を取得することができる。この半値幅の結果、つまり、主磁極60の幅に基づき、MPU46は、スライダ15全体の浮上量を設定する。具体的には、MPU46は、次のように設定する。
【0034】
図11は、主磁極60の幅(以下、「主磁極幅」ともいう。)に対するヒータパワーの大きさの一例を示す図である。
図11から、主磁極幅とヒータパワーとの間には、比例関係があることがわかる。したがって、MPU46は、図10のように測定した半値幅に応じて、スライダ15全体の浮上量をヒータ19aのパワーを変更することで調整する。具体的には、MPU46は、メモリ43のヒータ設定部431に、測定した半値幅に応じたヒータ値(本実施形態では、電圧値)を設定する。このヒータ値は、半値幅が広いほど、ヒータ19aに供給する電力が小さくなるように設定される。このヒータ値の設定は、例えば、HDD10の出荷時に実行される。
【0035】
なお、主磁極幅が広いほどビットエラーレイト(BER)やオーバーライト(OW)特性が良くなり、ヒータパワーとの間に比例関係を有する(図示省略)。このため、MPU46は、測定したBER、又はOWに基づいて、ヒータ値をヒータ設定部431に設定するようにしてもよい。また、磁気ヘッド16内に複数のヒータを有する場合には、MPU46は、トラック走行方向位置で主磁極に最も近いヒータ19a以外のヒータ19bのヒータ値も併せて変更してもよいし、さらに、全てのヒータに供給する電力、つまり、総電力値を調整してヒータ設定部431に設定することにより、スライダ15全体の浮上量を調整してもよい。
【0036】
図12は、ライト時間に対するBER悪化量の関係の一例を示す図である。より詳細には、図12は、本実施形態のHDD10と、本実施形態と異なる他の磁気ディスク装置とにおいて、磁極幅が広く、突出し高さが大きい磁気ヘッド16で長時間ライト動作を継続した場合の記録データのビットエラーレイト(BER)変動の一例を示している。ここで、他の磁気ディスク装置とは、既述のようにヒータ設定部341のヒータ値の調整をしていない磁気ディスク装置である。
【0037】
図12に示すように、他の磁気ディスク装置においては、主磁極幅(突出し高さ)に応じてスライダ15の浮上量が調整されない。このため、主磁極60の先端からディスク面までのSpacingが、保障可能なSpacingより相対的に小さくなり、信頼性が低下する。このように信頼性が低下すると、長時間経過するとビットエラーレイトの劣化が生じる。一方、本実施形態のHDD10においては、主磁極幅(突出し高さ)に応じてスライダ15の浮上量が調整される。このため、例えば、既述の図5に示す主磁極幅の広い磁気ヘッド16によるSpacing低下起因の摩耗等を抑制できる。図12においては、本実施形態のHDD10では、ライト時間が長時間になっても、ビットエラーレイト劣化を抑制できていることが確認できる。したがって、HDD10は、主磁極部の磁気ディスク12のディスク面への接触を回避することができ、主磁極部における摩耗、及びコンタミネーションの発生等のHDI障害の発生を防止することができる。
【0038】
なお、上記第1実施形態では、磁気ヘッド16にアシスト素子が含まれる場合で説明したが、これに限るものではない。例えば、磁気ヘッドにアシスト素子が含まれない磁気ディスク装置にも既述の技術を適用することができる。
【0039】
また、上記第1実施形態では、磁気ディスク12と、磁気ヘッド16とが1組の場合を例に挙げて説明したが、HDD10は、磁気ディスク12と、磁気ヘッド16との組が複数含む場合もある。このように構成されるHDD10の場合、複数の磁気ヘッド16のうち、半値幅が最も広い磁気ヘッド16に供給する電力の電力値を第1電力値とし、半値幅が最も狭い磁気ヘッド16に供給する電力の電力値を第2電力値とした場合、ヒータ設定部431に設定される各磁気ヘッド16のヒータ値においては、少なくても第1電力値が第2電力値より小さくなるように、ヒータ値設定部431に設定されるようにしてもよい。さらに、全ての磁気ヘッド16のヒータ19a,19bに供給される電力値が第2電力値より小さくなるようにしてもよい。これにより、HDD10が、磁気ディスク12と、磁気ヘッド16との組を複数有する場合にも、主磁極部における摩耗、及びコンタミネーションの発生等のHDI障害の発生を防止することができる。
【0040】
(第2実施形態)
既述の第1実施形態では、主磁極60の幅に基づいてヒータ値を設定する場合を説明したが、本第2実施形態では、アシスト素子65の抵抗値に基づいてヒータ値を設定する点が異なっている。以下では、アシスト素子65の抵抗値に基づいてヒータ値をヒータ設定部431に設定する構成について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一の構成には、同一の符号を付し、これらについては詳細な説明は省略する。
【0041】
図13図14図15は、磁気ヘッド16の記録ヘッド主磁極製膜面におけるヘッド後工程前後の形状を概略的に示す断面図である。より詳細には、図13は、記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む後工程前の状態の一例を示す図であり、図14は、記録ヘッド主磁極製膜面を削込み量が小さい状態の一例を示す図であり、図15は、記録ヘッド主磁極製膜面を削り込む量が大きい状態の一例を示す図である。図16は、アシスト素子抵抗値に対する突出し高さの一例を示す図である。
【0042】
既述の図5に示すように、ヘッド後工程で素子高さを削り込む際、クランプ(CMP)等の研磨工程後にイオンビームエッチング(IBE)で素子高さが浮上面200となるよう調整されるのは第2実施形態でも同様である。また、図13に示すように、主磁極が奥行側(図示上側)で広がる形状を有する。このため、その削り込み量次第によっても、残る主磁極の幅が変わり、磁極の突出し高さWが左右される。
【0043】
図14に示すように、削り込み量が少ない場合、主磁極の幅は狭く、突出し高さW5は小さくなる。一方、図15に示すように、削り込み量が大きい場合、主磁極60の幅は広くなり、突き出高さW6(>W5)も大きくなる。このように削り込み量に応じて、アシスト素子65の高さ方向(図示の上下方向)の長さも変わる。これにより、アシスト素子65の抵抗値自体も変化する。図14に示すように、アシスト素子65の素子長さが長い場合は抵抗値が低くなり、図15に示すように、アシスト素子65の素子長さが短い場合は抵抗値が高くなる。その結果、図16に示すように、アシスト素子抵抗値が高いほど、突出し高さが大きくなるような関係になる。
【0044】
図17は、アシスト素子抵抗値に対するヒータパワーの大きさの一例を示す図である。図17から、アシスト素子抵抗値とヒータパワーとの間には、比例関係があることがわかる。したがって、MPU46は、測定したアシスト素子抵抗値に応じて、スライダ15全体の浮上量をヒータ19aのパワーを変更することで調整する。具体的には、MPU46は、メモリ43のヒータ設定部431に、測定したアシスト素子抵抗値に応じたヒータ値(本実施形態では、電圧値)を設定する。このヒータ値は、アシスト素子65の抵抗値が高いほど、ヒータ19aに供給する電力が小さくなるように設定される。
【0045】
このように、MPU46は、アシスト素子65のアシスト抵抗値に応じて、ヒータ19aのパワーを変更し、スライダ15全体の浮上量を調整することでも、既述の図5に示す磁極幅の広い磁気ヘッド16によるSpacing低下起因の摩耗等を抑制できる。したがって、HDD10は、第1実施形態と同様に、主磁極部の磁気ディスク面への接触を回避することができ、主磁極部における摩耗、及びコンタミネーションの発生等のHDI障害の発生を防止することができる。
【0046】
また、上記第2実施形態では、磁気ディスク12と、磁気ヘッド16とが1組の場合を例に挙げて説明したが、HDD10は、磁気ディスク12と、磁気ヘッド16との組が複数含む場合もある。このように構成されるHDD10の場合、複数の磁気ヘッド16のうち、抵抗値が最も高い磁気ヘッド16に供給する電力の電力値を第3電力値とし、抵抗値が最も低い磁気ヘッド16に供給する電力の電力値を第4電力値とした場合、ヒータ設定部431に設定される各磁気ヘッド16のヒータ値においては、少なくとも第3電力値が第4電力値より小さくなるように、ヒータ値設定部431に設定されるようにしてもよい。さらに、全ての磁気ヘッド16のヒータ19a,19bに供給される電力値が第4電力値より小さくなるようにするようにしてもよい。これにより、HDD10が、磁気ディスク12と、磁気ヘッド16との組を複数有する場合にも、主磁極部における摩耗、及びコンタミネーションの発生等のHDI障害の発生を防止することができる。
【0047】
さらに、上記実施形態では、HDD10の出荷時に、ヒータ設定部431にヒータ値を設定する場合で説明したが、ヒータ値を設定するタイミングは、これに限るものではない。例えば、出荷後において、ユーザがHDD10を使用する環境に応じて、再度、ヒータ値を設定することが可能なように構成してもよい。この場合、図11に示す主磁極幅とヒータパワーとの関係を示すグラフを、例えば、メモリ43に記憶しておき、MPU46は、図10に示したような、オフトラック方向位置と再生信号振幅との関係を測定して半値幅を算出し、算出した半値幅に応じたヒータ値をヒータ設定部431に設定するようにしてもよい。これにより、HDD10は、出荷後の環境に応じて最適なヒータ値をヒータ設定部431に設定することが可能になる。
【0048】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
10…磁気ディスク装置、11…筐体、12…磁気ディスク、13…ABS、14…スピンドルモータ、15…スライダ、16…磁気ヘッド、17…ヘッド部、18…ヘッドアクチュエータ、30…ヘッドアンプIC、40…メインコントローラ、43…メモリ、54…再生ヘッド、58…記録ヘッド、60…主磁極、62…リターン磁極、64…リーディングコア、65…アシスト素子、81…記録電流供給回路、82…アシスト素子電流供給回路、83…ヒータ電圧供給回路、84…リード電圧供給回路、431…ヒータ設定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17