(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022190908
(43)【公開日】2022-12-27
(54)【発明の名称】球状断熱フィラー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09C 3/00 20060101AFI20221220BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20221220BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20221220BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20221220BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221220BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221220BHJP
C01F 7/025 20220101ALI20221220BHJP
C01F 7/441 20220101ALI20221220BHJP
C09C 1/64 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C09C3/00
C08L101/14
C08K3/22
C09D17/00
C09D7/61
C09D201/00
C01F7/025
C01F7/441
C09C1/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021099428
(22)【出願日】2021-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】000215800
【氏名又は名称】テイカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002206
【氏名又は名称】弁理士法人せとうち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清島 恵介
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳誉
【テーマコード(参考)】
4G076
4J002
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AA10
4G076AB02
4G076AB08
4G076BA15
4G076BA39
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4G076BA45
4G076BA49
4G076BB08
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4G076BC07
4G076BC08
4G076BD01
4G076BD02
4G076CA03
4G076CA12
4G076CA28
4G076CA40
4G076DA02
4G076DA30
4J002AB021
4J002AB041
4J002AB051
4J002AD011
4J002BB221
4J002BE021
4J002BG011
4J002BG121
4J002BJ001
4J002DE146
4J002DJ017
4J002FA096
4J002FD016
4J002GH01
4J002GT00
4J037AA18
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4J037AA25
4J037CC23
4J037CC26
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4J037FF13
4J038DB001
4J038DG001
4J038HA146
4J038HA166
4J038NA13
(57)【要約】
【課題】平均細孔直径が大きく、全細孔容積と比表面積が高く、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーを提供する。
【解決手段】多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーであって、前記多孔質アルミニウム化合物が、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、全細孔容積が1~2.5cm
3/gであり、平均細孔直径が10~70nmであり、比表面積が100~350m
2/gであり、平均円形度が0.8以上である球状断熱フィラー。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーであって、
前記多孔質アルミニウム化合物が、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
全細孔容積が1~2.5cm3/gであり、平均細孔直径が10~70nmであり、比表面積が100~350m2/gであり、平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状断熱フィラー。
【請求項2】
請求項1に記載の球状断熱フィラーを含む樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の球状断熱フィラーを含む樹脂組成物からなる断熱用塗料。
【請求項4】
請求項3に記載の断熱用塗料が塗布されてなる塗工物。
【請求項5】
請求項1に記載の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法であって、
前記多孔質アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウムであり、
硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、
アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と、
ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る工程と、
前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と、
気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程とを有する方法。
【請求項6】
請求項1に記載の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法であって、
前記アルミニウム化合物が、アルミナであり、
硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、
アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と、
ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る工程と、
前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と、
気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程と、
550~1100℃で焼成する工程とを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均細孔直径が大きく、全細孔容積と比表面積が高く、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナを得る方法として、硫酸塩とアルミニウム塩とを混合して得られる水酸化アルミニウムを焼成する方法が知られている。このような方法で得られるアルミナの中でも、細孔直径が大きく、細孔容積の高いアルミナは、触媒担体として主に使用されている。
【0003】
特許文献1には、BET比表面積が80~200m2/g、平均細孔径が310~500Å、全細孔容積が1.1~2cm3/g、及び酸化アルミニウム粉体全量100重量部に対する硫黄酸化物の含有量が0.15~5重量部であることを特徴とする酸化アルミニウム粉体が記載されている。こうして得られる酸化アルミニウム粉体は、貴金属の分散性が良好であり、触媒活性が高いため、貴金属を担持する触媒担体として好適に用いることができるとされている。しかしながら、特許文献1には、これら酸化アルミニウム粉体を断熱用途に使用することの記載も示唆もなかった。ここで、断熱性を向上させるためには酸化アルミニウム粉体を樹脂に高充填することが求められるが、特許文献1のような比表面積が大きく粒子形状がいびつな酸化アルミニウム粉体を高充填することは非常に困難であり、また樹脂と混合して得られる樹脂組成物の粘度も高くなる場合があり、改善が望まれていた。
【0004】
特許文献2には、アルミニウム塩水溶液をスプレーノズルで噴霧し、300~600℃の乾燥ゾーン、次いで600~1600℃の熱分解ゾーンを通過させる噴霧熱分解法でγ-アルミナを主成分とする中空粒子を得、得られたγ-アルミナを主成分とする中空粒子を1000~1150℃に加熱することを特徴とする、中空室を区画する殻を有する微小アルミナ中空粒子であって、形状が平均円形度0.85以上、平均粒子径が1μm~20μm、前記殻の厚みが500nm以下、粒子を構成する成分の95%以上がαアルミナである微小アルミナ中空粒子の製造法が記載されている。こうして得られる微小アルミナ中空粒子は、熱伝導率が小さく、熱安定性にも優れるため、薄膜を必要とする断熱性、遮熱性材料として有用であるとされている。しかしながら、特許文献2に記載のアルミナ中空粒子はαアルミナであり、当該αアルミナはγアルミナよりも熱伝導率が高く、多孔質ではなく細孔容積が小さいものとなるため、樹脂と混合して得られる樹脂組成物の断熱効果が不十分となる場合があり、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6772122号
【特許文献2】特許第6316153号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、平均細孔直径が大きく、全細孔容積と比表面積が高く、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーであって、前記多孔質アルミニウム化合物が、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、全細孔容積が1~2.5cm3/gであり、平均細孔直径が10~70nmであり、比表面積が100~350m2/gであり、平均円形度が0.8以上であることを特徴とする球状断熱フィラーを提供することによって解決される。
【0008】
このとき、前記球状断熱フィラーを含む樹脂組成物が好適な実施態様であり、前記球状断熱フィラーを含む樹脂組成物からなる断熱用塗料が好適な実施態様である。前記断熱用塗料が塗布されてなる塗工物も好適な実施態様である。
【0009】
上記課題は、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法であって、前記多孔質アルミニウム化合物が、水酸化アルミニウムであり、硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と、ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る工程と、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程とを有する球状断熱フィラーの製造方法を提供することによっても解決される。
【0010】
また、上記課題は、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法であって、前記アルミニウム化合物が、アルミナであり、硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、
アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と、ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る工程と、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程と、550~1100℃で焼成する工程とを有する球状断熱フィラーの製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、平均細孔直径が大きく、全細孔容積と比表面積が高く、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーを提供することができる。当該フィラーを樹脂と混合して得られる樹脂組成物は粘度が低く、当該樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の熱伝導率が低いため、断熱用塗料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1で得られたフィラーのSEM像を示した図である。
【
図2】比較例1で得られたフィラーのSEM像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の球状断熱フィラーは、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーであって、前記多孔質アルミニウム化合物が、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、全細孔容積が1~2.5cm3/gであり、平均細孔直径が10~70nmであり、比表面積が100~350m2/gであり、平均円形度が0.8以上であることを特徴とする。このように、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーであって、全細孔容積、平均細孔直径及び比表面積がそれぞれ一定範囲にあり、平均円形度が一定以上であることにより、樹脂と混合して得られる樹脂組成物の粘度が低く、当該樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の熱伝導率が低いため、断熱用塗料として好適に用いることができることが明らかとなった。後述する実施例と比較例との対比から明らかなように、平均細孔直径が大きく、かつ全細孔容積と比表面積が高いが、平均円形度が低い場合、樹脂と混合して得られる樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、当該樹脂組成物の成形が困難であった。また、全細孔容積又は比表面積が小さくなると、樹脂と混合して得られる樹脂組成物の粘度を低くできるが、当該樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の熱伝導率が高くなり、断熱性能が低下することが確認された。このことから、上記構成を全て満たすことにより、断熱用塗料として好適に用いることが可能な球状断熱フィラーが得られるため、本発明の意義は大きい。
【0014】
本発明の球状断熱フィラーは、多孔質アルミニウム化合物からなるものであり、前記多孔質アルミニウム化合物は、アルミナ及び水酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種である。前記アルミナと前記水酸化アルミニウムは、それぞれシリカが含有されていてもよい。すなわち、前記アルミナがシリカ含有アルミナであることが好適な実施態様であり、前記水酸化アルミニウムがシリカ含有水酸化アルミニウムであることが好適な実施態様である。シリカを含有することにより全細孔容積を大きくできる利点を有する。
【0015】
前記多孔質アルミニウム化合物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、前記多孔質アルミニウム化合物全量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましい。シリカの含有量が0.1質量部未満の場合、高温下で全細孔容積が小さくなるおそれがあり、1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましい。一方、シリカの含有量が20質量部を超える場合、全細孔容積が小さくなるおそれがあり、15質量部以下であることが好ましく、12質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0016】
前記多孔質アルミニウム化合物がシリカを含有する場合、アルミナの含有量は、前記多孔質アルミニウム化合物全量100質量部に対して、80~99.9質量部であることが好ましい。アルミナの含有量が80質量部未満の場合、全細孔容積が小さくなるおそれがあり、82質量部以上であることがより好ましく、85質量部以上であることが更に好ましく、90質量部以上であることが特に好ましく、92質量部以上であることが最も好ましい。一方、アルミナの含有量が99.9質量部を超える場合、高温下で全細孔容積が小さくなるおそれがあり、99.5質量部以下であることがより好ましく、97質量部以下であることが更に好ましい。
【0017】
なお、本発明の球状断熱フィラーには、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、他の成分が含有されていても構わない。前記多孔質アルミニウム化合物全量100質量部に対して、他の成分の含有量は、通常、2質量部以下である。
【0018】
本発明の球状断熱フィラーにおいて、平均細孔直径は10~70nmである。平均細孔直径が10nm未満の場合、断熱性能が低下するおそれがある。平均細孔直径は、12nm以上であることが好ましく、特に球状断熱フィラーがアルミナからなる場合には、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、26nm以上であることが更に好ましい。一方、平均細孔直径が70nmを超える場合、細孔内の空気が対流し、断熱性能が低下するおそれがあり、48nm以下であることが好ましく、45nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることが更に好ましい。本発明において、平均細孔直径(nm)は、比表面積(m
2/g)と全細孔容積(cm
3/g)から下記式により求められる。
【数1】
【0019】
本発明の球状断熱フィラーにおいて、全細孔容積は1~2.5cm3/gである。全細孔容積が1cm3/g未満の場合、空気の容積が少ないため断熱性能が低下するおそれがある。全細孔容積は、1.1cm3/g以上であることが好ましく、1.2cm3/g以上であることがより好ましく、1.3cm3/g以上であることが更に好ましく、1.35cm3/g以上であることが特に好ましい。一方、全細孔容積が2.5cm3/gを超えるためには、超臨界乾燥などの特殊な乾燥方法が別途必要となり、製造コストが高くなるおそれがあり、2.2cm3/g以下であることが好ましく、2cm3/g以下であることがより好ましく、1.8cm3/g以下であることが更に好ましく、1.6cm3/g以下であることが特に好ましい。本発明において、全細孔容積(cm3/g)は、相対圧p/p0=0.990でのN2ガス吸着量を液体状態のN2の体積に換算することにより求められる。
【0020】
本発明の球状断熱フィラーにおいて、比表面積(「BET比表面積」と呼ぶことがある)は、100~350m2/gである。比表面積が100m2/g未満の場合、全細孔容積が小さくなり、平均細孔直径が大きな球状断熱フィラーが得られず、断熱性能が低下するおそれがある。比表面積は、120m2/g以上であることが好ましく、155m2/g以上であることがより好ましく、170m2/g以上であることが更に好ましく、180m2/g以上であることが特に好ましく、190m2/g以上であることが最も好ましい。一方、比表面積が350m2/gを超える場合、平均細孔直径が大きな球状断熱フィラーが得られず、断熱性能が低下するおそれがある。比表面積は、340m2/g以下であることが好ましく、320m2/g以下であることがより好ましく、300m2/g以下であることが更に好ましく、280m2/g以下であることが特に好ましい。本発明における比表面積(m2/g)は、圧力pにおいてN2分子が固体表面に吸着するときのガス吸着量vと、p/p0(相対圧p0:飽和水蒸気圧)との関係(吸着等温線)に対し、BET理論を適用することにより算出される。
【0021】
本発明の球状断熱フィラーにおいて、平均円形度は0.8以上である。後述する実施例で説明されるように、電子顕微鏡で得られたSEM像から200個程度の粒子をサンプリングし、粒子の最大径に対する最小径の比を円形度と定義し、各粒子の円形度を測定して平均値を算出することにより平均円形度が求められる。前記サンプリングする粒子の数は、数10~数100の間で適宜調整して構わない。平均円形度は、0.82以上であることが好ましく、0.85以上であることがより好ましく、0.88以上であることが更に好ましく、0.9以上であることが特に好ましく、0.92以上であることが最も好ましい。なお、円形度が1の場合は真球であり、本発明において平均円形度は1以下である。
【0022】
本発明の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法としては特に限定されない。多孔質アルミニウム化合物が水酸化アルミニウムである場合は、硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と(以下、「中和工程」と略記することがある)、アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と(以下、「熟成工程」と略記することがある)、ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る工程と(以下、「洗浄工程」と略記することがある)、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と(以下、「再スラリー化工程」と略記することがある)、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程(以下、「造粒工程」と略記することがある)とを行うことによって、水酸化アルミニウムからなる球状断熱フィラーを好適に得ることができる。
【0023】
多孔質アルミニウム化合物がアルミナである場合は、造粒工程の後に、550~1100℃で焼成する工程(以下、「焼成工程」と略記することがある)を行うことによって、アルミナからなる球状断熱フィラーを好適に得ることができる。
【0024】
多孔質アルミニウム化合物がシリカ含有水酸化アルミニウムである場合は、別途、珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種を添加してシリカ含有水酸化アルミニウムスラリーを得る工程(以下、「シリカ含有工程」)を行うことが好適な実施態様である。シリカ含有工程は、中和工程と熟成工程の間に行うことが好ましいが、後述する熟成工程と同時に行ってもよい。次いで、熟成工程の後に、洗浄工程、再スラリー化工程、及び造粒工程を行うことにより、シリカ含有水酸化アルミニウムからなる球状断熱フィラーを好適に得ることができる。すなわち、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法であって、前記多孔質アルミニウム化合物が、シリカ含有水酸化アルミニウムであり、硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種を添加してシリカ含有水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と、ろ過、洗浄を行ってシリカ含有水酸化アルミニウムケーキを得る工程と、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程とを有する方法が好適に採用される。
【0025】
また、多孔質アルミニウム化合物がシリカ含有アルミナである場合は、上記シリカ含有水酸化アルミニウムと同様に、中和工程と熟成工程の間にシリカ含有工程を行うことが好適な実施態様である。シリカ含有工程は、中和工程と熟成工程の間に行うことが好ましいが、後述する熟成工程と同時に行ってもよい。次いで、熟成工程の後に、洗浄工程、再スラリー化工程、造粒工程、及び焼成工程を行うことにより、シリカ含有アルミナからなる球状断熱フィラーを好適に得ることができる。すなわち、多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法であって、前記アルミニウム化合物が、シリカ含有アルミナであり、硫酸塩とアルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種を添加してシリカ含有水酸化アルミニウムスラリーを得る工程と、アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する工程と、ろ過、洗浄を行ってシリカ含有水酸化アルミニウムケーキを得る工程と、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程と、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程と、550~1100℃で焼成する工程とを有する方法が好適に採用される。
【0026】
中和工程で用いられる硫酸塩としては特に限定されないが、硫酸アルミニウムが好適に用いられる。硫酸アルミニウム等の硫酸塩の代わりに硝酸アルミニウムを使用すると、全細孔容積と平均細孔直径が大きな多孔質アルミニウム化合物を得ることができず、断熱性能が低下するおそれがある。したがって、本発明の中和工程において、硫酸塩を用いることが好適な実施態様であり、硫酸アルミニウムを用いることがより好適な実施態様である。また、中和工程で用いられるアルミニウム塩としては特に限定されないが、アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリウム等のアルミン酸アルカリ金属塩が好適に用いられる。
【0027】
中和工程において、前記硫酸塩と前記アルミニウム塩とを反応させることにより水酸化アルミニウムスラリーが得られることになるが、pHを4以上7未満に保持する観点から、前記硫酸塩と前記アルミニウム塩とを同時添加することが好適な実施態様である。水酸化アルミニウムスラリーを得る際のpHが4以上7未満に保持できなかった場合、全細孔容積と平均細孔直径が大きな多孔質アルミニウム化合物を得ることができず、断熱性能が低下するおそれがある。したがって、前記硫酸塩と前記アルミニウム塩とを同時添加してpHを4以上7未満に保持しながら水酸化アルミニウムスラリーを得る方法を採用することが好適な実施態様である。中和工程におけるpHは4.5以上であることがより好ましく、4.8以上であることが更に好ましく、5以上であることが特に好ましい。一方、中和工程におけるpHは6.5以下であることがより好ましく、6.2以下であることが更に好ましく、6以下であることが特に好ましい。
【0028】
中和工程における反応温度としては特に限定されないが、10~90℃であることが好ましい。反応温度が10℃未満の場合、平均細孔直径が小さくなり、断熱性能が低下するおそれがあり、25℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが更に好ましい。一方、反応温度が90℃を超える場合、全細孔容積と平均細孔直径が大きな多孔質アルミニウム化合物を得ることができず、断熱性能が低下するおそれがあり、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることが更に好ましく、65℃以下であることが特に好ましい。
【0029】
中和工程における反応時間としては特に限定されないが、1~120分であることが好ましい。反応時間が1分未満の場合、得られる多孔質アルミニウム化合物の細孔制御が困難になるおそれがあり、5分以上であることがより好ましく、10分以上であることが更に好ましい。一方、反応時間が120分を超える場合、生産性が低下するおそれがあり、60分以下であることがより好ましく、25分以下であることが更に好ましい。
【0030】
多孔質アルミニウム化合物が、シリカ含有水酸化アルミニウム及び/又はシリカ含有アルミナである場合に採用されるシリカ含有工程では、珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種を添加することにより、前記水酸化アルミニウムスラリーと、珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種とが接触し、シリカ含有水酸化アルミニウムスラリーを得ることができる。このシリカ含有工程は、単独で行ってもよいし、後述する熟成工程と同時に行ってもよい。珪酸ナトリウム及びシリカゾルとしては、公知のものを使用することができる。シリカゾルのシリカ濃度としては、1~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種の使用量を変更することにより、得られる多孔質アルミニウム化合物におけるシリカ含有量を調整することができる。
【0031】
本発明の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーの製造方法において、アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種のpH調整剤を添加する熟成工程を行うことが好ましい。中和工程を行った直後に熟成工程を行ってもよいし、珪酸ナトリウム及びシリカゾルからなる群から選択される少なくとも1種を添加し、前記シリカ含有工程と熟成工程とを同時に行ってもよいし、前記シリカ含有工程の後に熟成工程を行ってもよい。また、熟成工程を複数回行っても構わない。本発明者は、前記pH調整剤を添加して熟成工程を行わなかった場合には、平均細孔直径が大きな多孔質アルミニウム化合物が得られなかったことを確認している。したがって、前記pH調整剤を添加する熟成工程を行うことが好適な実施態様である。中でも、後工程で夾雑物等を容易に取り除くことができる観点から、アンモニア水、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムからなる群から選択されるpH調整剤を少なくとも2種併用することが好適な実施態様である。
【0032】
前記pH調整剤を添加する工程において、前記水酸化アルミニウムスラリーにおける酸化アルミニウム換算固形分100質量部に対して、前記pH調整剤を25質量部以上添加することが好適な実施態様である。前記pH調整剤の添加量が25質量部未満の場合、得られるシリカ含有アルミナ粉体の全細孔容積と平均細孔直径が小さくなるおそれがあり、更に塩基量が高くなるおそれがある。前記pH調整剤の添加量は、30質量部以上であることがより好ましい。一方、コスト高となる観点から、前記pH調整剤の添加量は、200質量部以下であることが好ましい。
【0033】
熟成工程における反応温度としては特に限定されないが、40~105℃であることが好ましい。反応温度が40℃未満の場合、平均細孔直径が小さくなり、断熱性能が低下するおそれがあり、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましい。一方、反応温度は、通常、105℃以下であり、95℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが更に好ましい。
【0034】
熟成工程における反応時間としては特に限定されないが、1分~2時間であることが好ましい。反応時間が1分未満の場合、平均細孔直径が小さくなり、断熱性能が低下するおそれがあり、3分以上であることがより好ましく、5分以上であることが更に好ましい。一方、反応時間が2時間を超える場合、全細孔容積に変化はなく熟成効果は小さいため、1.8時間以下であることがより好ましく、1.5時間以下であることが更に好ましい。
【0035】
熟成工程におけるpHとしては特に限定されないが、前記pH調整剤を添加してpHを7.5~11に調整することが好ましい。熟成工程におけるpHが7.5未満の場合、平均細孔直径が小さくなり、断熱性能が低下するおそれがあるとともに、夾雑物等が残存するおそれがある。熟成工程におけるpHは8以上であることがより好ましい。一方、熟成工程におけるpHが11を超える場合、平均細孔直径が小さくなり、断熱性能が低下するおそれがあり、pHは10以下であることがより好ましく、9以下であることが更に好ましい。
【0036】
前記熟成工程を行った後に、ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る洗浄工程を行うことが好適な実施態様である。洗浄工程を行うことにより、得られる多孔質アルミニウム化合物における夾雑物を取り除くことが可能となる。ろ過、洗浄方法としては公知の方法が採用される。夾雑物を十分に取り除く観点から、ろ過、洗浄を行って水酸化アルミニウムケーキを得る洗浄工程の後、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させて水酸化アルミニウムスラリーとし、再度ろ過、洗浄を行うことが好適な実施態様である。このとき、再分散後の水酸化アルミニウムスラリーを40~90℃に加熱し、アンモニア水等を加えてpHを7.5~11に調整することが好ましい。
【0037】
前記洗浄工程を行った後に、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する工程を行うことが好適な実施態様である。この再スラリー化工程には、前記水酸化アルミニウムケーキを水で再分散させてから、水溶性高分子を添加して再スラリー化する方法だけでなく、水溶性高分子を含む水に対して前記水酸化アルミニウムケーキを添加して再スラリー化する方法も含まれる。これにより、平均円形度が一定以上の球状断熱フィラーが得られることになる。再スラリー化工程で用いられる水溶性高分子としては特に限定されず、無変性ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体類;デンプン、ペクチン、アルギン酸又はその塩、ゼラチン等の天然物;ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドなどが挙げられる。中でも、水溶性高分子がポリビニルアルコール及びセルロース誘導体類からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ポリビニルアルコールであることがより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度としては、500~3000であることが好ましく、1000~2500であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、通常、JIS K6726-1994の記載に準じて測定した平均重合度を意味する。
【0038】
水溶性高分子の配合量としては、前記水酸化アルミニウムケーキ100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。水溶性高分子の配合量が0.01質量部未満の場合、平均円形度が一定以上の球状断熱フィラーが得られず、樹脂と混合して得られる樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、当該樹脂組成物の成形が困難となるおそれがある。水溶性高分子の配合量は、0.02質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることが更に好ましく、0.2質量部以上であることが特に好ましい。一方、水溶性高分子の配合量が20質量部を超える場合、平均細孔直径が小さくなり断熱性能が低下するおそれがあり、18質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが更に好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0039】
前記再スラリー化工程を行った後に、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥して造粒する工程を行うことが好適な実施態様である。造粒工程を行うことにより、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーを好適に得ることができる。造粒工程における乾燥方法としては特に限定されず、気流乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥等が挙げられる。中でも、乾燥と同時に平均円形度が一定以上の球状断熱フィラーを得る観点から、気流乾燥及び噴霧乾燥からなる群から選択される少なくとも1種により乾燥する方法が好適に採用される。乾燥温度としては、100~300℃であることが好ましい。
【0040】
上述のように、前記造粒工程を行うことにより、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなる球状断熱フィラーを好適に得ることができるが、前記多孔質アルミニウム化合物がアルミナである場合、前記多孔質アルミニウム化合物がシリカ含有アルミナである場合、造粒工程の後に300~1100℃で焼成する焼成工程を行うことが好適な実施態様である。焼成温度が300℃未満の場合、平均細孔直径の大きな多孔質アルミニウム化合物が得られないおそれがあり、500℃以上であることがより好ましく、600℃以上であることが更に好ましく、650℃以上であることが特に好ましい。一方、焼成温度が1100℃を超える場合、平均細孔直径が低下するおそれがあり、1050℃以下であることがより好ましく、1000℃以下であることが更に好ましく、950℃以下であることが特に好ましい。
【0041】
上述のようにして得られる本発明の球状断熱フィラーは、平均細孔直径が大きく、全細孔容積と比表面積が高く、平均円形度が一定以上の多孔質アルミニウム化合物からなるものである。当該球状断熱フィラーを、各種シート、封止材、筐体、塗料、分散体等の材料に添加して使用することが好適な実施態様である。これら各種材料を構成する樹脂に当該球状断熱フィラーが含まれることが好ましく、かかる観点から当該球状断熱フィラーを含む樹脂組成物が好適な実施態様である。特に、当該フィラーを樹脂と混合して得られる樹脂組成物は粘度が低く、当該樹脂組成物を硬化して得られる樹脂硬化物の熱伝導率が低いため、断熱用塗料として好適に用いることができる。当該断熱用塗料が塗布されてなる塗工物も好適な実施態様である。
【実施例0042】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0043】
(1)BET比表面積、全細孔容積、平均細孔直径の測定
マイクロトラック・ベル株式会社製「BELSORP mini」を用いて測定した。各実施例と比較例で得られたフィラーの測定前において、試料表面や細孔内に物理吸着している水分などを取り除くため、前処理として真空排気しながら加熱した。真空度は10
-2Pa、温度は150℃であった。比表面積(m
2/g)は、圧力pにおいてN
2分子が固体表面に吸着するときのガス吸着量vと、p/p
0(相対圧p
0:飽和水蒸気圧)との関係(吸着等温線)に対し、BET理論を適用することにより算出した。
全細孔容積(cm
3/g)は、相対圧p/p
0=0.990でのN
2ガス吸着量を液体状態のN
2の体積に換算することにより求めた。
平均細孔直径(nm)は、比表面積(m
2/g)と全細孔容積(cm
3/g)から下記式により求めた。
【数2】
【0044】
(2)シリカ含有量の測定
波長分散型蛍光X線分析装置(株式会社リガク製「Supermini Rigaku」)を用いて、各実施例と比較例で得られたフィラー全量100質量部に対するシリカ(SiO2)の含有量を測定した。粉末試料を数10~数100kNで加圧し、ペレット状に成形することにより測定した。X線管球のターゲット材質にはPdを用い、真空排気系にて試料から発生する蛍光X線を検出し、SiO2換算値をシリカ(SiO2)の含有量とした。
【0045】
(3)円形度の測定
株式会社日立ハイテクノロジーズ社製走査型電子顕微鏡(SEM)で各実施例と比較例で得られたフィラーを観察した。得られた二次元像において、200個程度の粒子をサンプリングした。粒子の最大径に対する最小径の比を円形度と定義し、各粒子の円形度を測定して、これらの平均値を平均円形度として算出した。
【0046】
(4)塗料粘度の測定
ウレタン樹脂(三洋化成工業株式会社製「ユーコートUWS-145」)42g、水0.4g、及び各実施例と比較例で得られたフィラー10gをディスパー(プライミクス社製「ラボ・リューション(登録商標)」)を用いて1500rpmで10分攪拌して塗料を調整した。B型粘度計(東機産業株式会社「TVB-10R」)で回転数60rpm、25℃の粘度を測定した。
【0047】
(5)熱伝導率の測定
エポキシ樹脂(DIC株式会社製「EPICLON830」)5g、エポキシ樹脂硬化剤(日進EM株式会社製「MNA」)4.7g、硬化促進剤(DMP-30)0.04g、及び各実施例と比較例で得られたフィラー7gを混合し、ディスパー(プライミクス社製「ラボ・リューション(登録商標)」)を用いて1500rpmで10分攪拌して塗料を調整した。これを型に流し込み、80℃で2時間静置した後、120℃で12時間反応させてフィラー含有樹脂硬化物を作製した。樹脂硬化物を30mm×30mmにカットし、熱伝導率測定装置(HC-074、英弘精機社製)を用いて熱伝導率の測定を行った。
【0048】
実施例1
市水400Lを2m3のタンクに投入し、約40℃に加熱した後、攪拌しながらAl2O3濃度104g/Lの硫酸アルミニウム水溶液400Lを25L/min、Al2O3濃度250g/Lのアルミン酸ソーダ水溶液230Lを14.4L/minの速度にて定速ポンプを用いて異なる注入口より連続的に添加し、水酸化アルミニウムスラリー液を得た。添加操作を続けた16分間の温度は、約40℃、pHは5~6であり、反応後のpHは5.5であった。続いて作製したスラリー液を攪拌し、SiO2濃度30wt.%のSiO2ゾル10.5kgを投入した後、重炭酸アンモニウム50kgと24%アンモニア水をpH調整剤として併用し、pHを8.2に調整した。水酸化アルミニウムスラリーを80℃で10分間加熱し、24%アンモニア水にてpH8.2に再調整した後30分間熟成を行い、ろ過水洗を行った。得られたろ過ケーキを市水に再分散させ、1500Lのシリカ含有水酸化アルミニウムスラリーとし、再度80℃にて30分間熟成した後、24%アンモニア水にてpH8.2に調整して、ろ過水洗を行った。得られたケーキを市水(1000L)に分散し、重合度約1500のポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製「ポリビニルアルコール(重合度約1500)」)0.5kgを加えて攪拌することで、スラリー化した。得られたスラリーに対して、気流式乾燥機を用いて170℃で乾燥を行い、球状のシリカ含有水酸化アルミニウムを得た。その後焼成炉に入れて大気雰囲気下にて800℃で2時間焼成して球状のシリカ含有アルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0049】
実施例2
実施例1において、ポリビニルアルコールの使用量を3kgとした以外は、実施例1と同様にしてシリカ含有アルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
実施例1において、ポリビニルアルコールの使用量を0.1kgとした以外は、実施例1と同様にしてシリカ含有アルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0051】
実施例4
実施例1において、SiO2ゾルを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてシリカ含有アルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0052】
実施例5
実施例1において、800℃で2時間の焼成をしなかった以外は、実施例1と同様にしてシリカ含有水酸化アルミニウムを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0053】
比較例1
実施例1において、ポリビニルアルコールを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてシリカ含有アルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0054】
比較例2
市販のγアルミナ紛体AKP-G15(住友化学株式会社)100kgと重合度約1500のポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製「ポリビニルアルコール(重合度約1500))0.5kgを市水にてスラリー化し、気流式乾燥機を用いて120℃で乾燥し、その後焼成炉に入れて大気雰囲気下にて800℃で2時間焼成して球状のアルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0055】
比較例3
市販のαアルミナ紛体AKP-3000(住友化学株式会社)100kgと重合度約1500のポリビニルアルコール(富士フイルム和光純薬株式会社製「ポリビニルアルコール(重合度約1500))0.5kgを市水にてスラリー化し、気流式乾燥機を用いて170℃で乾燥し、その後焼成炉に入れて大気雰囲気下にて800℃で2時間焼成して球状のアルミナを得た。上記(1)~(5)に記載の方法にしたがって得られた結果を表1に示す。
【0056】